説明

一体型偏光板およびその製造方法

本発明はネガティブC−プレートの役割と偏光膜の透明保護層の役割を同時に果たすことができ、厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する透明フィルムを偏光膜の保護層として使用し、ネガティブC−プレートとして光学補償機能と偏光板との機能を同時に有する一体型偏光板およびその製造方法に関し、前記一体型偏光板はTACを保護層として使用する偏光板より高温、高湿での耐久性が優れており、液晶がONまたはOFF状態であるときに、厚さ方向にポジティブ複屈折率を有する液晶表示装置で向上した広視野角を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネガティブC−プレート(Negative C-plate)の役割と偏光板の役割を同時に行うことができる一体型偏光板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は透明保護層/偏光膜/透明保護層で構成される偏光板の基本構造において少なくとも一方の面の透明保護層が厚さ方向にネガティブ複屈折率を有するフィルムであって、より詳しくは、ネガティブC−プレートの役割と偏光板の役割を同時に行うことができる一体型偏光板およびその製造方法に関する。
【0003】
最近、液晶平板ディスプレイは、小型サイズである携帯用電話機、ノートブックモニターから重く大型サイズのディスプレイディバイスであるコンピュータモニターおよびテレビへと大面積化されていく傾向にある。とくに、重く大型サイズの液晶ディスプレイの場合、広い角度の広視野角において鮮明な画質を有し駆動セルON/OFF時の輝度コントラストを向上させることは競争力のあるディスプレイの品質を確保するのに重要である。
【0004】
このような理由から、二重ドメイン(Dual Domain)TN、ASM(Axially symmetric aligned microcell)、VA(Vertical Alignment)、SE(surrounding electrode)、PVA(Patterned VA)、IPS(In-Plane Switching)モードなどの多様な液晶モードのディスプレイが開発されている。これら各々のモードは固有の液晶配列をしており、固有の光学異方性を持っている。したがって、これら液晶モードの光学異方性により線状偏光された光の光軸の変化を補償するためには多様な光学異方性の補償フィルムが要求される。
【0005】
多様なモードの液晶ディスプレイの光学補償をするためには精密で効果的に光学異方性を制御できる光学フィルムを開発することが重要である。光学異方性は下記数式1と数式2のように面内位相差値であるRと面内高速軸(y軸)と厚さ方向(z軸)の位相差値であるRthに分けることができる。
【0006】
(数式1)
th=△(n−n)×d
【0007】
(数式2)
=△(n−n)×d
【0008】
前記数式1および2において、
は面内低速軸(x軸)の屈折率であり、nは面内高速軸(y軸)の屈折率であり、nは厚さ方向(z軸)の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。
【0009】
前記数式1および2によって算出されたRまたはRthのうち一方が他方の値よりも大きすぎる場合、一軸光学異方性を有する補償フィルムとして使用でき、その両方が0より大きく、互いに類似している場合には、二軸光学異方性を有する補償フィルムとして使用できる。
【0010】
一軸光学異方性を有する補償フィルムは、
【数1】

に大別され得る。液晶による偏光された光軸の補償のみを考慮する場合、理想的な補償フィルムは液晶層の光軸に鏡像の光軸を持っていなければならず、したがって、面方向の屈折率より厚さ方向の屈折率が大きく配向されたVAモードやTNモード液晶ディスプレイの場合、厚さ方向にネガティブ複屈折率(negative birefringence)を有するネガティブC−プレートが要求される。
【0011】
ネガティブC−プレートはR値が非常に小さいために、Rthは、高速軸の屈折率nとフィルムの面と入射光の角がθである場合、屈折率nθの差であるΔ(n−nθ)と光進行経路の長さとの積で表現されるRθを測定して、下記数式3で示される関係式から求めることができる。
【0012】
【数2】

前記数式3の式で、θは内角である。
【0013】
このようにネガティブC−プレートとして適用できる高分子材料は、ディスコチック液晶(たとえば、米国特許第5,583,679号明細書)と主鎖に平らなフェニル基を有しているポリイミド(たとえば、米国特許第5,344,916号明細書)がある。
【0014】
これらの材料は厚さ方向への複屈折率が非常に大きく、可視光線での光吸収があるため偏光膜の保護層として使用するのに適した厚さである30〜150μmで実現するのには困難がある。したがって、前記物質を偏光膜の保護層に使用する場合、透明保護層上に精密コーティングをして使用しなければならないので、コーティング工程時に発生する費用だけでなく、比較的に大きな複屈折率によりコーティング厚さの微小な差によっても大きい位相差の不均一をもたらし、コーティング基材フィルム表面に残っていたり、コーティング溶液に存在するホコリなどの異物による光学的欠陥などの問題がある。また、これら芳香族化合物を含む物質は波長によって位相差の変化率が大きいために前記材料を補償フィルムとして使用した場合、前記材料に起因する波長分散に対する補償も考慮しなければならない困難が伴う。
【0015】
従来の偏光板は、ポリビニルアルコール材質の偏光膜と、その両面に偏光膜を保護するトリアセテートセルロース(TAC)保護層で構成されている。このような偏光板は、厚さ方向の光学補償のために偏光板の保護層上に厚さ方向にネガティブ複屈折率を有するディスコチック液晶などの有機物質をコーティングしたり、粘着剤または接着剤を使用して一枚以上の微小な厚さ方向の複屈折率を有するフィルムを保護層上に積層する工程を使用して製造するので、製造工程が複雑であるため経済性において不利である。
【0016】
また、従来の偏光板の保護層であるTACは偏光膜の保護機能は優れているが、比較的に高い水分吸湿性を示すため、高温、高湿の環境で光漏れ、偏光度の低下などの問題が発生し、耐久性がよくない問題点がある。
【0017】
一方、環状オレフィンの共重合体は、文献などを通じて公知となっており、炭化水素の含量が高いために誘電定数が低く、吸湿性が低くて無定形であり、パイ−共役(π-conjugation)による可視光線領域での光吸収がないために優れた光透過性を備える。環状単量体を重合する方法は下記反応式1に示されているようにROMP(ring opening metathesis polymerization)、HROMP(ring opening metathesis polymerization followed by hydrogenation)、エチレンとの共重合および均一重合などがある。下記反応式1のように同じ単量体を利用して各々異なる重合方法を適用する場合、各々異なる構造を有する重合体が得られ、これら重合体の物性も各々異なる。
【0018】
【化1】

【0019】
均一系触媒を使用して付加重合で得られた環状オレフィン系付加重合体はROMPやエチレンとの共重合で形成される重合体とは異なり、全ての主鎖の単量体ユニットに剛くて性質がROMPやエチレンとの共重合で形成される重合体とは異なり、これらは、比較的により高いガラス転移温度を有する無定形高分子である。とくに、有機金属化合物を触媒として使用して付加重合で形成される分子量の比較的大きなポリノルボルネン系重合体はほとんど極性基のないアルキルノルボルネンであるかオレフィンとの共重合体または弱い極性のトリ−エトキシシリルノルボルネンを単量体とするが、これらは非常に低い誘電率を有しており、電気的に非常に優れた等方性を有する(J. Appl. Polym. Sci. Vol 80、p2328,2001)。
【0020】
炭化水素からなる重合体で置換基を導入する方法は重合体の化学的物理的特性を調節できる有用な方法である。しかし、度々このような置換基にある自由電子対が活性触媒点と反応して触媒の毒として作用するために置換基を重合体に導入するのは容易なことではない。置換基のある環状単量体を重合する場合、得られた重合体は分子量が低い。一般にノルボルネン系高分子は転移有機金属触媒を利用して重合するが、これら大部分の触媒はエステル基やアセテート基などの極性基を含む単量体を重合させるには低い活性を示し、生成された高分子は一般に分子量が10,000以下である(Risse et al.、Macromolecules、1996、Vol. 29、2755-2763; Risse et al.、Makromol. Chem. 1992、Vol. 193、2915-2927; Sen et al.、Organometallics 2001、Vol 20、2802-2812、Goodall et al.、USP5,705,503)。
【発明の開示】
【0021】
本発明は前記従来技術の問題点を考慮して、ネガティブC−プレートの役割と偏光膜の透明保護層の役割を同時に果たすことができる、厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する透明フィルムを偏光膜の保護層として使用してネガティブC−プレートとして光学補償機能と偏光板との機能を同時に有する一体型偏光板を提供することを目的とする。
【0022】
本発明の他の目的は、波長による複屈折率の変化が少ない厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する環状オレフィン系付加重合体を含有する透明フィルムを光学補償保護フィルムで偏光膜の少なくとも何れか一方の面に積層されている一体型偏光板およびその製造方法を提供することにある。本発明で定義する光学補償保護フィルムとは、厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する厚さ30〜200μm範囲であり、Rthが60〜1000nm範囲、より好ましくは50〜150μm範囲であり、Rthが100〜600nm範囲であり、また、偏光膜の保護層として使用されたフィルムのことである。
【0023】
本発明の他の目的は、環状オレフィンに導入する官能基の種類および含量を調節してフィルムの厚さ方向の複屈折率を調節できる透明フィルムを偏光膜の保護層として使用する一体型偏光板およびその製造方法を提供することにある。
【0024】
本発明のまた他の目的は、環状オレフィン系付加重合体を含む耐吸湿性に優れた透明フィルムを偏光膜の保護層として使用する耐久性に優れた偏光板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0025】
本発明のまた他の目的は、厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する環状オレフィン系付加重合体を含む透明フィルムを補償保護フィルムとして含む一体型偏光板を含む液晶表示装置を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は前記目的を達成するために、
a)偏光膜;および
b)環状オレフィン系付加重合体を含む透明フィルムの保護層
を含む偏光板を提供する。
【0027】
また、本発明は下記数式1で示されるリタデーション値(Rth)が60〜1000nmであり、一定の傾斜角で観察される二波長での位相差の比(R450/R550)が1〜1.05であり、(R650/R550)が0.95〜1である光学異方性透明フィルムを偏光膜の少なくとも何れか一方の面に積層した一体型偏光板を提供する(R450は波長450nmでの位相差値であり、R550は波長550nmでの位相差値であり、R650は波長650nmでの位相差値である):
【0028】
(数式1)
th=△(n−n)×d
【0029】
前記数式1で、
は波長550nmで測定される面内高速軸の屈折率であり、
は波長550nmで測定される厚さ方向の屈折率であり、
dはフィルムの厚さである。
【0030】
また、本発明は厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する偏光板の製造方法であって、
a)ノルボルネン系単量体を付加重合してノルボルネン系付加重合体を製造する工程;
b)前記ノルボルネン系付加重合体を溶媒に溶解してノルボルネン系付加重合体溶液を製造する工程;
c)前記ノルボルネン系付加重合体溶液を鏡面上にコーティングまたはキャスティングして乾燥するキャスティング工程;および
d)前記キャスティングされたフィルムを偏光膜と積層する工程
を含む偏光板の製造方法を提供する。
【0031】
また、本発明は環状オレフィン系付加重合体を含むネガティブC−プレート型光学異方性フィルムを偏光膜の保護層として含む一体型偏光板を含む液晶表示装置を提供する。
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本発明者らは、一般的な環状オレフィンの構造単位(conformational unit)が剛く、かさ高い、延長された(extended)構造を構成するために単分子での異方性を有していてもよく、また、延長された構造を有するノルボルネン系高分子に極性基を導入すれば、コンパクトな構造を有する高分子と比較して極性基の導入で分子間の相互作用が増加し、したがって、分子間の充填に方向性を有するようになって光学的および電気的に異方性をさらに有することを発見し、また、前記環状オレフィン付加重合体からなるフィルムは厚さ方向での位相差値が偏光膜の保護層として使用できる物性になり得る厚さ30〜200μmでRth値が60〜1000nmであり、より好ましくは厚さ50〜150μmでRth値が100〜600nmであり、これらは波長に対する変化が非常に少ないことを発見し、また、これら厚さ方向にネガティブ複屈折率を有するフィルム群は水分吸湿性が低く、PVAとの接着力も優れていて偏光膜の保護層として使用されるとき、優れた耐久性を有することを発見したので本発明を完成した。
【0034】
本発明は、厚さ方向の光学補償のために偏光膜の保護層上に厚さ方向にネガティブ複屈折率を有するディスコチック液晶などの有機物質をコーティングしたり粘着剤または接着剤を使用して一枚以上の微小な厚さ方向の複屈折率を有するフィルムを保護層上に積層する従来の偏光板と異なって、厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する環状オレフィン系補償保護フィルムを偏光膜の少なくとも一方の面に保護層として適用した一体型偏光板を提供することにある。
【0035】
本発明で定義する補償保護フィルムとは、厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する30〜200μm、より好ましくは50〜150μmのネガティブC−プレートをPVA偏光膜の保護層として使用できるフィルムのことであり、一体型偏光板とは、前記補償保護フィルムをPVA偏光膜の少なくとも何れか一方の面に積層した偏光板のことである。
【0036】
本発明はこのために、ネガティブC−プレート型の光学異方性フィルムを偏光膜の保護層として使用した一体型偏光板を提供する。とくにノルボルネン系単量体を付加重合方法で製造して得る環状オレフィン付加重合体を含有するフィルムを偏光膜の少なくとも何れか一方の面に保護層として使用した一体型偏光板とその製造方法および、これを含む液晶表示装置を提供することにある。
【0037】
本発明において、ノルボルネン系単量体を付加重合する方法で製造される環状オレフィン系付加重合体は下記の化学式1の単量体を単独で使用したり、あるいは二つ以上を利用して付加重合させた重合体を含む。
【0038】
【化2】

【0039】
前記化学式1で、
mは0〜4の整数であり、
、R、RおよびRは各々独立してまたは同時に、水素;ハロゲン;炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、アルケニルまたはビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキル;炭素数3〜20のアルキニル;または
炭素数1〜20の線状または分枝状ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のハロアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のハロアラルキル;炭素数3〜20のハロアルキニル;および少なくとも一つ以上の酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンまたはホウ素を含む非炭化水素極性基からなる群より選択される極性官能基であり、
前記R、R、RおよびRは水素、ハロゲンまたは極性官能基でない場合、RとRまたはRとRが互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基が形成されるか、あるいはRまたはRがRおよびRのうちの何れか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環基または炭素数6〜24の芳香族環化合物が形成される。
【0040】
前記化学式1の非炭化水素極性基は下記官能基から選択できるが、これらのみに限られるわけではない。
【0041】
たとえば、−C(O)OR、−RC(O)OR、−OR、−ROR、−OC(O)OR、−ROC(O)OR、−C(O)R、−RC(O)R、−OC(O)R、−ROC(O)R、−(RO)−OR、−(OR−OR、−C(O)−O−C(O)R、−RC(O)−O−C(O)R、−SR、−RSR、−SSR、−RSSR、−S(=O)R、−RS(=O)R、−RC(=S)R、−RC(=S)SR、−RSO、−SO、−RN=C=S、−NCO、R−NCO、−CN、−RCN、−NNC(=S)R、−RNNC(=S)R、−NO、−RNO
【化3】

【化4】

である。
【0042】
前記非炭化水素極性基において、各々のRは炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、ビニル、ハロビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキルまたはハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルまたはハロアラルキル;炭素数3〜20のアルキニルまたはハロアルキニルであり、
各々のR、RおよびRは水素;ハロゲン;炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、ビニル、ハロビニル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキルまたはハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール、アリールオキシ、ハロアリールオキシ;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルまたはハロアラルキル;炭素数3〜20のアルキニルまたはハロアルキニルであり、
各々のpは1〜10の整数である。
【0043】
本発明のノルボルネン系単量体は、下記の化学式2で示される少なくとも一つのノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン)単位を含む単量体を意味する。
【0044】
【化5】

【0045】
本発明のネガティブC−プレート型の光学異方性フィルム材質であるノルボルネン系付加重合体は、ノルボルネン系単量体を付加重合して製造される全ての環状オレフィン系重合体を使用でき、付加重合時に選択する触媒系によって多様な環状オレフィン系重合体を製造して使用できる。製造される付加重合体の種類としては非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体のホモ重合体、互いに異なる非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体同士の共重合体、極性官能基を含有するノルボルネン系単量体のホモ重合体、互いに異なる極性官能基を含有するノルボルネン系単量体同士の共重合体または非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体と極性官能基を含有するノルボルネン系単量体の共重合体などができる。とくに数平均分子量が10,000以上である極性基を有するノルボルネン系重合体を含有することが好ましい。これら付加重合方法は、通常の重合方法のように溶媒に重合しようとする単量体および触媒を混合して製造する。
【0046】
これら環状オレフィン系付加重合体は、特定の触媒系によって導入できる極性基の制限がなく、これら極性官能基または非極性官能基の種類と量を変えれば光学異方性を調節できる一連のポリマー重合が可能であり、このような重合体からLCDの厚さ方向に光学補償と偏光膜の保護層として使用できる補償保護フィルムとしての適用が可能である。
【0047】
前記極性基が導入された環状オレフィン系付加重合体は多様な方法で製造でき、とくにノルボルネン系単量体を10族遷移金属触媒下で付加重合して得るのが好ましい。
【0048】
より好ましくは、10族遷移金属化合物の触媒成分、15族元素を含む電子供与体になれる非共有電子対を有する有機化合物の助触媒成分および前記遷移金属に弱く配位できる陰イオンを供与できる13族元素を含む塩の助触媒成分を含む触媒系の触媒成分と前記化学式1のノルボルネン系単量体を接触させて付加重合する工程を含み、極性基が導入された環状オレフィン系重合体を高収率、高分子量で製造することである。
【0049】
また、エステル基やアセチル基などの極性基が含まれた環状オレフィン系重合体を製造する場合は、
i)10族遷移金属化合物;
ii)円錐角が少なくとも160度である中性の15族電子供与リガンドを含有する化合物;および
iii)前記i)の遷移金属に弱く配位できる陰イオンを供与できる塩
を含む触媒系の触媒成分と前記化学式1のノルボルネン系単量体より選択されるエステル基またはアセチル基の極性官能基を含むノルボルネン系単量体を接触させて付加重合する工程を含み、エステル基またはアセチル基の極性官能基を含む環状オレフィン系重合体を製造することが好ましい。しかし、極性官能基を含む環状オレフィン系重合体およびその製造方法はこれらのみに限定されるものではない。
【0050】
前記i)の10族遷移金属は、下記の化学式3で示される化合物または下記の化学式4で示される化合物が好ましい:
【0051】
(化学式3)
M(R)(R’)
【0052】
【化6】

【0053】
前記化学式3および化学式4において、
Mは10族金属であり、
RおよびR’は各々弱く配位できる陰イオンによって容易に離れる陰イオンの離脱基であって、ヒドロカルビル、ハロゲン、ナイトレート(硝酸塩、硝酸エステル)、アセテート(酢酸塩、酢酸エステル)、トリフルオロメタンスルホネート、ビストリフルオロメタンスルホンイミド、トシラート、カルボキシレート(カルボン酸塩、カルボン酸エステル)、アセチルアセトネート、カーボネート(炭酸塩、炭酸エステル)、アルミネート(アルミン酸塩、アルミン酸エステル)、ボレート(ホウ酸塩、ホウ酸エステル)、SbFなどのアンチモン酸塩、AsFなどの砒酸塩、PFまたはPOなどの(リン酸塩、リン酸エステル)、ClOなどの過塩素酸塩、(R’’)Nなどのアミドおよび(R’’)Pなどのリン化物からなる群より選択でき;
このとき、前記ヒドロカルビル陰イオンは水酸化物、炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、ビニルまたはハロビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキルまたはハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール;ヘテロ原子を含む炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルまたはハロアラルキル;および炭素数3〜20のアルキニルまたはハロアルキニルからなる陰イオン群より選択でき、
前記アセテートやアセチルアセトネート陰イオンは各々[R’’C(O)O]または[R’’’C(O)CHC(O)R’’’’]などのσ結合とπ結合を供与する陰イオンリガンドである。
【0054】
前記R’’、R’’’およびR’’’’は各々水素;ハロゲン;炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、ビニルまたはハロビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキルまたはハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール;ヘテロ原子を含む炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルまたはハロアラルキル;または炭素数3〜20のアルキニルまたはハロアルキニルである。
【0055】
前記ii)の円錐角が少なくとも160゜である中性の15族電子供与リガンドを含有する化合物は、下記の化学式5で示される化合物または化学式6で示される化合物が好ましい:
(化学式5)
P(R3−c[X(R
【0056】
前記化学式5の式で、
Xは酸素、硫黄、シリコンまたは窒素であり;
cは0〜3の整数であり;Xが酸素または硫黄であればdは1であり、Xがシリコンであればdは3であり、Xが窒素であればdは2であり;
cが3で、Xが酸素であれば二つまたは三つのRは酸素と互いに連結されて環群を形成でき;cが0であれば、二つのRは互いに連結されてホスファサイクル(phosphacycle)を形成でき;
は各々水素;炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、アルコキシ、アリル、アルケニルまたはビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキル;または炭素数3〜20のアルキニル;トリ(炭素数1〜10の線状または分枝状アルキル)シリル、トリ(炭素数1〜10の線状または分枝状アルコキシ)シリル;トリ(炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数5〜12のシクロアルキル)シリル;トリ(炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール)シリル;トリ(炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリールオキシ)シリル;トリ(炭素数1〜10の線状または分枝状アルキル)シロキシ;トリ(炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル)シロキシ;またはトリ(炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール)シロキシであり;このとき、各々の置換基は線状または分枝状ハロアルキルまたはハロゲンで置換できる。
【0057】
(化学式6)
(RP−(R)−P(R
【0058】
前記化学式6の式で、
は化学式5の式の定義と同一であり;
は炭素数1〜5の線状または分枝状アルキル、アルケニルまたはビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜20のアリール;または炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルである。
【0059】
また、前記iii)の前記i)の遷移金属に弱く配位できる陰イオンを供与できる塩は下記の化学式7で示される塩が好ましい:
(化学式7)
[Cat][Anion]
【0060】
前記化学式7の式で、
Catは水素;1族金属、2族金属または遷移金属の陽イオン;およびこれら陽イオンを含有する有機団からなる群より選択される陽イオンであり、この陽イオンには前記ii)の弱く結合する中性の15族電子供与化合物を結合でき;
Anionは前記化学式3で示される化合物の金属Mに弱く配位できる陰イオンであり、ボレート、アルミネート、SbF、PF、AlFSCF、SbFSO、AsF、ペルフルオロアセテート(CFCO)、ペルフルオロプロピオン酸塩(CCO)、ペルフルオロペルブチラート(CFCFCFCO)、過塩素酸塩(ClO)、p−トルエンスルホン酸塩(p−CHSO)、SOCF、ボラタベンゼンおよびハロゲンで置換されているか、または置換されていないカルバボラン(旧名:カルボラン)からなる群より選択される陰イオンであり;
aとbは各々陽イオンと陰イオンの個数を示し、それらが電気的に中性になるように電荷を合せる。
【0061】
前記化学式7の陽イオンを含む有機団は[NH(Rまたは[N(Rであるアンモニウム;[PH(Rまたは[P(R]+ホスホニウム;[C(Rであるカ−ボニウム;[Si(Rであるシリリウム;[Ag];[CpFe];および[H(OEtから選択されるのが好ましい。ここで、前記各々のRは炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロゲンで置換されたアルキルまたはシリルアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル;ハロゲンで置換されたシクロアルキルまたはシリルシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール;ハロゲンで置換されたアリールまたはシリルアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキル;またはハロゲンで置換されたアラルキルまたはシリルアラルキルである。
【0062】
また、前記化学式3、4および7のボレートまたはアルミネートは下記の化学式8で示される陰イオンまたは化学式9で示される陰イオンが好ましい:
(化学式8)
[M’(R)(R)(R10)(R11)]
(化学式9)
[M’(OR12)(OR13)(OR14)(OR15)]
【0063】
前記化学式8および化学式9の式で、
M’はホウ素かアルミニウムであり;
各々のR、R、R10,R11、R12、R13、R14およびR15はハロゲン;ハロゲンで置換されているか、または置換されていない炭素数1〜20の線状または分枝状アルキルまたはアルケニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキル;炭素数3〜20のアルキニル;炭素数3〜20の線状または分枝状トリアルキルシロキシ;または炭素数18〜48の線状または分枝状トリアリールシロキシである。
【0064】
この触媒系は、適当なリガンドを導入してエンド異性体のエステル基やアセチル基による触媒活性低下を避けることができる高活性の触媒系であって、エステル基やアセチル基の極性基を含む環状オレフィン系付加重合体を容易に製造できる。
【0065】
本発明の一体型偏光板にネガティブC−プレート型の補償保護フィルムを製造する時に使用される環状オレフィン系付加重合体は、可視光線領域で光吸収による光損失がなく、比較的に低い水分吸収率を示し、極性官能基が導入される場合、非極性官能基のみ存在する時に比べて高い表面張力を持っており、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムとの接着力も優れている。
【0066】
本発明の光学異方性フィルムは厚さ方向にネガティブ複屈折率を増加させるために前記化学式1のノルボルネン系単量体の官能基の中でもエステル基やアセチル基を導入することが好ましく、その他にもアルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、ハロゲン族元素を含む官能基を導入できるが、これに制限されるものではない。下記の実施例で示すようにノルボルネンに導入する置換基の種類と含量を変化させることによって屈折率とRth値を調節できる。
【0067】
一般に高いRth値を得るためには、前記化学式1のm値が大きい環状オレフィンを導入したり、極性官能基の含量を増やしたり、ノルボルネン系単量体の置換体の長さを決定するR、R、R、RおよびRに存在する炭素数を減らして置換体の長さを減らしたり、高い極性を有する官能基を導入したりあるいはRまたはRがRおよびRのうちの何れか一つと連結されてまたは炭素数6〜24の芳香族環化合物を形成した環状オレフィンを導入して達成できる。
【0068】
本発明の一体型偏光板に使用されるネガティブC−プレート型の補償保護フィルムは、前記で説明した環状オレフィン系付加重合体を溶媒に溶かして溶液キャスティング方法でフィルムまたはシート状に製造する。
【0069】
このようなフィルムは、非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体のホモ重合体、互いに異なる非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体同士の共重合体、極性官能基を含有するノルボルネン系単量体のホモ重合体、互いに異なる極性官能基を含有するノルボルネン系単量体等の共重合体または非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体と極性官能基を含有するノルボルネン系単量体の共重合体からフィルムを製造し、また、1種以上のこれら環状オレフィン系重合体の混合物(ブレンド)からもフィルムを製造できる。
【0070】
溶媒キャスティングに使用される有機溶媒は、環状オレフィン系付加重合体を溶かして適当な粘度を示す溶媒を使用することが好ましく、さらに好ましくは3〜12個の炭素原子を有するエーテル、3〜12個の炭素原子を有するケトン、3〜12個の炭素原子を有するエステル、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素および芳香族化合物群より1種以上選択できる。前記エーテル、ケトンおよびエステル化合物は環構造が有ってもよく、エーテル、ケトン、エステルの官能基を二つ以上有する化合物も使用でき、一つ以上の官能基とハロゲン元素を共に持っている化合物も使用できる。
【0071】
前記3〜12個の炭素原子を有するエーテルの例は、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタンまたはテトラヒドロフランなどがあり、3〜12個の炭素原子を有するエステルの例は、ぎ酸エチル、ぎ酸プロピル、ぎ酸ペンチル、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテートまたはペンチルアセテートなどがあり、ハロゲン化炭化水素は、好ましくは、1または4個の炭素原子、さらに好ましくは一つの炭素原子を有し、好ましいハロゲン原子は塩素であり、代表的な例としてはメチレンクロライドがある。また、芳香族化合物の例は、ベンゼン、トルエンまたはクロロベンゼンなどがある。
【0072】
環状オレフィン系付加重合体を溶媒に溶かして溶液キャスティング法でフィルムを調製する方法は、環状オレフィン系付加重合体を高分子含量5〜95重量%、さらに好ましくは、10〜60重量%で溶媒に投入し、常温で撹拌して製造するのが好ましい。このとき、製造された溶液の粘度は100〜50000cps、さらに好ましくは500〜20000cpsが溶媒キャスティングに好ましく、フィルムの機械的な強度と耐熱性、耐光性、取扱性を改善するために可塑剤、劣化防止剤、紫外線安定剤または帯電防止剤などの添加剤を添加できる。
【0073】
前記可塑剤としてはカルボン酸エステルまたはリン酸エステルを使用できる。カルボン酸エステルの例は、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)またはジエチルヘキシルフタレート(DEHP)などがあり、リン酸エステルの例はトリフェニルホスフェート(TPP)またはトリクレジルホスフェート(りん酸トリクレシル:TCP)などがある。これら低分子量の可塑剤を過度に多く使用すれば、フィルム表面への拡散による耐久性の低下などの問題が発生することがあるので、適当な水準(たとえば、0.1〜20重量%範囲)で使用することが好ましく、ガラス転移温度の高い環状オレフィン系付加重合体であるほど可塑剤の含量を増加させることが好ましい。
【0074】
前記劣化防止剤は、フェノール系誘導体または芳香族アミン系を使用することが好ましく、フィルムの光学的、機械的性質および耐久性を低下させない範囲で使用量を設定することが好ましい。
【0075】
前記フェノール系劣化防止剤の例としては、オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−3級ブチルフェニル)プロピオン酸塩(Ciba−Geigy社製造Irganox 1076)、テトラビス[メチレン−3−(3,5−ジ−3級ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩メタン(Ciba−Geigy社製造Irganox 1010)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(Ciba−Geigy社製造Irganox 1330)またはトリス−(3,5−ジ−3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソアミン(Ciba−Geigy社製造Irganox 3114)などがある。
【0076】
また、前記芳香族アミン系劣化防止剤の例はフェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンまたはN,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどがある。
【0077】
前記劣化防止剤は、過酸化物分解剤であるホスフェート系化合物またはサルファイド系化合物と共に使用できる。ホスフェート系過酸化物分解剤の例としてはトリス(2,4−ジ−3級ブチルフェニル)ホスフェート(Ciba−Geigy社製造Irgafos 168)などがあり、サルファイド系過酸化物分解剤の例は、ジラウリルサルファイド、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、メルカプトベンゾチアゾ−ル、テトラメチルチウラムジサルファイドなどがある。
【0078】
前記紫外線安定剤としては、ベンゾフェノン系、サリチル酸系またはベンゾトリアゾ−ル系を使用することが好ましく、ベンゾフェノン系紫外線安定剤の例としては、2−ヒドロキシ−4−オトキシベンゾフェノンまたは2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジオクトキシベンゾフェノンなどがあり、サリチル酸系紫外線安定剤の例としてはp−サリチル酸オクチルフェニルなどがあり、ベンゾトリアゾ−ル系紫外線安定剤の例としては2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾフェノンなどがある。
【0079】
前記帯電防止剤は、ポリノルボルネン溶液に混合して使用できる帯電防止剤であれば、いずれも使用でき、とくに表面固有抵抗が1010Ω以下であるのが好ましい。使用可能な帯電防止剤の種類としては非イオン系、陰イオン性または陽イオン性帯電防止剤などがある。
【0080】
非イオン系帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンステアリルアミンまたはポリオキシエチレンアルキルアミンなどがある。
【0081】
陰イオン性帯電防止剤は、硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類またはリン酸エステル塩類などがある。
【0082】
陽イオン性帯電防止剤は、脂肪族アミン塩類、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリン誘導体、ベタイン型高級アルキルアミノ誘導体、硫酸エステル誘導体またはリン酸エステル誘導体などがある。
【0083】
その他にもイオン性高分子化合物があり、日本特開昭49−23828号公報に開示された陰イオン性高分子化合物、日本特開昭55−734号公報、日本特開昭59−14735号公報、日本特開昭57−18175号公報に開示された主環中に解離基を有するイオネン型化合物、日本特開昭53−13223号公報に開示された陽イオン性高分子化合物と日本特開平5−230161号公報に開示されたグラフト共重合体などを帯電防止剤として使用できる。
【0084】
本発明の環状オレフィン系付加重合体溶液を鏡面状態で研磨された帯板や円筒またはガラス板の上にキャスティングまたはコーティングし、溶媒を乾燥して光学フィルムまたはシートを得ることができる。溶媒乾燥温度は使用する溶媒の種類に応じて選択できる。鏡面状態に研磨された金属あるいはガラスの基材は表面温度が常温以下であるのが良い。溶媒を十分に乾燥した後、形成されたフィルムまたはシートは金属またはガラス基材から剥離する。
【0085】
このようにして製造される本発明の環状オレフィン系付加重合体の光学フィルムは下記数式1で示されるリタデーション値(Rth)が60〜800nmを満足する光学異方性透明フィルムである:
(数式1)
th=△(n−n)×d
【0086】
前記数式1の式で、
は波長550nmで測定される面内高速軸の屈折率であり、
は波長550nmで測定される厚さ方向の屈折率であり、
dはフィルムの厚さである。
【0087】
とくにフィルム厚さを30〜200μmとした場合、Rth値が60〜1000nm、より好ましくはフィルム厚さを50〜150μmとした場合、Rth値が100〜600nmの範囲を有することができる。このフィルムは透明性が優れていて400〜800nmでの光透過度が90%以上であり、一定傾斜角での両波長間の位相差比の値(R450/R550)と(R650/R550)は各々1.05以下、0.95以上である平坦な波長分散特性を示す。前記R450は波長450nmでの位相差値であり、R550は波長550nmでの位相差値であり、R650は波長650nmでの位相差値である。このような平坦な波長分散特性は必要に応じて混合(ブレンド)または重合体への官能基導入で変化が可能である。実際に両波長での位相差比は(R450/R550)が1〜1.05、(R650/R550)が0.95〜1を示す。
【0088】
本発明の環状オレフィン系付加重合体の光学フィルムは、光学異方性を有しながらも接着性が非常に優れていてポリビニルアルコール(PVA)偏光膜に付着させて使用できる。また、必要時にコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、コーティング処理からなる群より1種以上選択される表面処理をして付着することもできる。
【0089】
本発明の環状オレフィン系付加重合体の光学異方性フィルムを偏光膜の保護層として積層した偏光板は、液晶表示装置に含まれて広い角度の広視野角で鮮明な画質を有して駆動セルのON/OFF時の輝度コントラストを向上させることができ、とくに電圧がONまたはOFF状態であるとき、液晶層の屈折率が
【数3】

(nは面内低速軸の屈折率であり、nは高速軸の屈折率であり、nは厚さ方向の屈折率である)の関係を満足する液晶モードの液晶表示装置を実現できる。
【0090】
本発明で使用される偏光膜は、PVAフィルムにヨードまたは二色性染料を染色して製造した偏光膜が好ましく、その製造方法は特定の方法に限定されない。
【0091】
本発明の一体型偏光板は前記厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する環状オレフィン系付加重合体から製造された補償保護フィルムを偏光膜の少なくとも何れか一方の面に積層することで完成できるが、このとき、偏光膜の他面の保護層は環状オレフィン系付加重合体から製造されたフィルムを含んだ透明光学フィルムであれば全て可能である。本発明の環状オレフィン系ネガティブC−プレートを偏光膜の保護層として積層するとき、面内の位相差がほとんどないために連続工程であるロール−トゥ−ロール(roll−to−roll)積層が可能である。偏光膜との積層は接着剤を利用した接着方式を使用できるが、このときに使用できる接着剤としては、PVA接着剤水溶液またはポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレン系接着剤、あるいはホットメルト型接着剤などがある。
【0092】
PVA接着剤を使用する場合、環状オレフィン系補償保護フィルムをコロナ放電またはプラズマ処理、イオンビ−ム処理などの表面処理を実施した後、ロールコーター、バ−コーター、ナイフコーターまたはキャピラリコーターなどでコーティングをし、完全に乾燥する前に二つのロールで加熱圧着したり常温圧着して積層できる。
【0093】
ポリウレタン系接着剤を使用する場合、光に露出して黄変のない脂肪族イソシアネート系を使用することが好ましく、1液型または2液型のドライラミネート用接着剤やイソシアネイトとヒドロキシ群との反応性が比較的低い場合、酢酸系、ケトン系、エーテル系および芳香族溶媒などで希釈された溶液型接着剤を使用することもできる。この時、粘度は5000cps以下の比較的低い方が良い。また、スチレンブタジエンゴム系接着剤、エポキシ系2液硬化型接着剤などもある。前記の各接着剤は保存安定性が優れていて400〜800nmでの光透過度が90%以上の優れたものが好ましい。この他にもホットメルト接着剤を環状オレフィン系補償保護フィルムにコーティングしたフィルムを偏光膜と加熱圧着ロールを使用して積層することもできる。
【0094】
接着力を向上させるために環状オレフィン系保護補償フィルムの表面にプライマー層をコーティングしたりコロナ放電処理、プラズマ処理、イオンビ−ム処理などを適用することもできる。また、十分な粘着力を発揮できれば粘着剤も適用できる。粘着剤は積層後、熱または紫外線(UV)によって十分な硬化が起こって機械的強度が接着剤水準に向上することが好ましく、界面粘着力も非常に大きくて粘着剤が付着された両側のフィルムのうちの何れか一方が破壊されなければ剥離されない程度の粘着力を有しているのが好ましい。
【0095】
粘着剤としては光学透明性に優れた天然ゴム、合成ゴムまたはエラストマー、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアクリレート、変性ポリオレフィン樹脂系粘着剤などと、これにイソシアネイトなどの硬化剤を添加した硬化型粘着剤などがある。
【0096】
また、現在広く使用されている偏光膜の保護層であるTAC(Triacetate cellulose)は比較的に高い水分吸湿性を示すので、高温、高湿環境での光漏れ、偏光度の低下などの問題が発生する。しかし、本発明の付加重合された環状オレフィン系から製造された透明フィルムを偏光膜の保護層として使用した偏光板はTACを保護フィルムとする偏光板より高温、高湿の環境での光漏れ、偏光度の低下において向上した耐久性を示す。
【0097】
以下の実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、実施例は本発明を例示するためのものであり、これらだけに限定されるものではない。
【0098】
[実施例]
製造例1
(ノルボルネンカルボン酸メチルエステルの重合)
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステルと精製されたトルエンを1:1重量比率で投入した。
【0099】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした、単量体に対して0.01モル%のPd(acac)と、単量体に対して0.01モル%のトリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒としてCHClに溶かした単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、20時間80℃で撹拌しながら反応させた。
【0100】
反応20時間後に反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸メチルエステル(PMeNB)重合体を得た。
【0101】
製造例2
(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル重合)
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸ブチルエステルノルボルネンと溶媒で精製されたトルエンを1:1重量比率で投入した。
【0102】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした単量体に対して0.01モル%のPd(acac)と単量体に対して0.01モル%のトリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒としてCHClに溶かした単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、20時間80℃で撹拌しながら反応させた。
【0103】
反応20時間後に反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル重合体(PBeNB)を得た。
【0104】
製造例3
(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル−ノルボルネンカルボン酸メチルエステル共重合(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル/ノルボルネンカルボン酸メチルエステル=7/3))
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステルとノルボルネンカルボン酸ブチルエステルを3:7モル比で投入し、精製されたトルエンを全単量体に対して1:1重量比で投入した。
【0105】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした単量体に対して0.01モル%のPd(acac)と単量体に対して0.01モル%のトリシクロヘキシルホスフィン、助触媒としてCHClに溶かした単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、20時間80℃で撹拌しながら反応させた。
【0106】
反応20時間後に反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル−ノルボルネンカルボン酸メチルエステル共重合体(PBe−7−Me−3−NB)を得た。
【0107】
製造例4
(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル−ノルボルネンカルボン酸メチルエステル共重合(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル/ノルボルネンカルボン酸メチルエステル=5/5))
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステルとノルボルネンカルボン酸ブチルエステルを5:5モル比で投入し、精製されたトルエンを全単量体に対して1:1重量比で投入した。
【0108】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした単量体に対して0.01モル%のPd(acac)と単量体に対して0.01モル%のトリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒にCHClに溶かした単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、20時間80℃で撹拌しながら反応させた。
【0109】
反応20時間後に反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸メチルエステルブチルエステル5:5共重合体(PBe−5−Me−5−NB)を得た。
【0110】
製造例5
(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル−ノルボルネンカルボン酸メチルエステル共重合(ノルボルネンカルボン酸ブチルエステル/ノルボルネンカルボン酸メチルエステル=3/7))
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステルとノルボルネンカルボン酸ブチルエステルを各々7:3モル比で投入し、精製されたトルエンを全単量体に対して1:1重量比で投入した。
【0111】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした全単量体に対して0.01モル%Pd(acac)と全単量体に対して0.01モル%トリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒としてCHClに溶かした全単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、20時間80℃で撹拌しながら反応させた。
【0112】
反応20時間後に前記反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸メチルエステルブチルエステル3:7共重合体(PBe−3−Me−7−NB)を得た。
【0113】
製造例6
(ノルボルネンカルボン酸メチルエステル−ブチルノルボルネン共重合(ノルボルネンカルボン酸メチルエステル/ブチルノルボルネン=3/7))
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステルとブチルノルボルネンを3:7モル比で投入し、精製されたトルエンを全単量体に対して1:1重量比で投入した。
【0114】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした全単量体に対して0.01モル%のPd(acac)と全単量体に対して0.01モル%のトリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒としてCHClに溶かした全単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、20時間、90℃で撹拌しながら反応させた。
【0115】
反応20時間後に反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸メチルエステル/ブチルノルボルネン3:7共重合体(PBu−7−Me−3−NB)を得た。
【0116】
製造例7
(ノルボルネンカルボン酸メチルエステル−ブチルノルボルネン共重合(ノルボルネンカルボン酸メチルエステル/ブチルノルボルネン=5/5))
重合反応機に単量体としてノルボルネンカルボン酸メチルエステルとブチルノルボルネンを5:5モル比で投入し、精製されたトルエンを全単量体に対して1:1重量比で投入した。
【0117】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした全単量体に対して0.01モル%のPd(acac)と全単量体に対して0.01モル%のトリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒としてCHClに溶かした全単量体に対して0.02モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、18時間、90℃で撹拌しながら反応させた。
【0118】
反応18時間後に反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて65℃で24時間乾燥し、ノルボルネンカルボン酸メチルエステル/ブチルノルボルネン5:5共重合体(PBu−5−Me−5−NB)を得た。
【0119】
製造例8
(アセテートノルボルネン重合)
重合反応機に単量体としてアセテートノルボルネンと精製されたトルエンを1:1重量比で投入した。
【0120】
この反応機に触媒としてトルエンに溶かした単量体に対して0.03モル%のPd(acac)と単量体に対して0.03モル%のトリシクロヘキシルホスフィンおよび助触媒としてCHClに溶かした単量体に対して0.06モル%のジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを投入し、17時間、80℃で撹拌しながら反応させた。
【0121】
反応17時間後に前記反応物を過剰のエタノールに投入して白色の共重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗でろ過して回収した共重合体を真空オーブンにおいて80℃で24時間乾燥し、ノルボルネンアセテート重合体(PAcNB)を得た。
【0122】
実施例1〜8
(フィルム調製)
前記製造例1〜8で製造されたノルボルネン系付加重合体に酸化防止剤としてIrganox 1010(Ciba社製造)を重合体に対して0.3重量%投入し、有機溶媒としてメチレンクロライドを使用して固形分20重量%溶液を製造した。この溶液を帯板キャスティング機(有効長さ:8m、幅:300mm)を使用して帯板上にキャスティングした。溶媒の乾燥後、帯板から剥離して厚さ偏差が2%以内の透明フィルムを得た。前記フィルムを100℃で4時間2次乾燥させた後、アッベ(Abbe)屈折計を利用して屈折率(n)を測定し、自動複屈折計(王子計測機器製造;KOBRA−21ADH)を利用して面内の位相差値(R)を測定し、入射光とフィルム面との角度が50度の時の位相差値(Rθ)を測定して、下記数式3にしたがって、フィルム厚さ方向の位相差値(Rth)を求めた。
【0123】
【数4】

【0124】
また、RとRth値をフィルムの厚さで割り算して屈折率差(n−n)と屈折率差(n−n)を求めた。表1に各透明フィルムの厚さと400〜800nmでの光透過度をまとめ、表2に各透明フィルムの(n−n)、Rθ、Rth、(n−n)をまとめた。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
また、n>nであるトリアセテートセルロース(TAC)フィルムを重ねてRθを測定した場合、全ての環状オレフィン系フィルムのRθ値が増加しており、これは環状オレフィン系フィルムのRthは厚さ方向でネガティブ複屈折率(n>n)によるものであることを示す。前記実施例2〜7で得た透明フィルムを自動複屈折計(王子計測機器社製造、KOBRA−21 ADH)を利用して入射角を50度にし波長が異なる(λ=479.4nm、548nm、629nm、747.7nm)場合のRθ値を測定し、標準波長(λ=550nm)でのRθ値との比であるR50(λ)/R50(λ)を求めて表3にまとめた。
【0128】
【表3】

【0129】
実施例9〜11
(一体型偏光板の製造)
PVAにヨードを染着配向させた偏光膜の一方の面にPVA水溶性接着剤(3重量%)を利用してNaOHで表面処理した厚さ80μmのTACを積層した後、表4に示すように実施例2〜4で製造された環状オレフィン系ネガティブC−plateである補償保護層の一方の面をコロナ放電処理した後、コロナ処理された面に前記水溶性接着剤をグラビアロールコーターでコーティングしてから、偏光膜の他面に積層ロールで積層し、80℃で8分間乾燥して楕円一体型偏光板を製造した。この時、コロナ放電処理速度は2m/分であり、処理量は0.4KV・A・分/m、コロナ放電周波数は10KHz前後、電極と誘電体ロールとの間の距離は1.8mmであった。
【0130】
前記方法で製造された一体型偏光板をコロナ放電処理されていない補償保護フィルムの面にアクリル系粘着剤を厚さ約30μmにコーティングした後、1.2mm厚さのガラス板に40x40mmサイズの直交状態で付着した後、センター部分で400〜700nmでの光透過度と偏光度を測定し、高温、高湿試験を60℃、90%RH相対湿度で500時間処理した後、中央部分で光透過度と偏光度の変化を測定して表4に示した。
【0131】
前記高温、高湿環境で処理された一体型偏光板における剥離、染み、気泡、シワなどの問題点が観察されることはなかった。また、前記各一体型偏光板の高温高湿試験後、複屈折率の変化もまた、比較的に小さくて正面から観察する時、試料位置別不均一コントラストの発生が少なかった。
【0132】
【表4】

【0133】
比較例1
前記実施例9〜11で使用したものと同一の偏光膜の両面にNaOH溶液で表面処理された厚さ80μmのTAC保護フィルムを水溶性PVA接着剤(3重量%水溶液)を使用してグラビアコーターで表面処理された面にコーティングし偏光膜の一方の面に積層した後、他面を同じ方法で積層して80℃で8分間乾燥して偏光板を得た。
【0134】
前記実施例9〜11で使用したものと同一のアクリル系粘着剤をTAC保護フィルム上に30μm厚さでコーティングした後、厚さ1.2mmのガラス板に40x40mmサイズの直交状態で付着した後、中央部分での光透過度と偏光度は各々43.43%および99.92%であった。高温高湿試験を60℃、90%RH相対湿度で500時間処理した後の透過度と偏光度は各々43.50%と99.75%であった。また、偏光膜の両面にTACを積層した偏光板は高温高湿試験後に複屈折率の変化の大きいために偏光板直交状態で観察する時の試料位置別不均一コントラストが大きかった。
【0135】
本発明の一体型偏光板によれば、従来の厚さ方向の光学補償のために偏光板の保護層にディスコチック液晶などの有機物質をコーティングするような工程を実施する必要がなく、環状オレフィン系付加重合体に導入される官能基の種類と含量によって厚さ方向屈折率の調節が可能なネガティブC−プレート型光学異方性補償保護フィルムを偏光膜の少なくとも何れか一方の面に付着して製造された一体型偏光板であって、TACを保護層として使用する偏光板より高温、高湿での耐久性が優れており、液晶がONまたはOFF状態であるときに、厚さ方向にポジティブ複屈折率を有する液晶表示装置で向上した広視野角を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)偏光膜;および
b)環状オレフィン系付加重合体を含む透明フィルムの保護層
からなる偏光板。
【請求項2】
前記透明フィルムがネガティブC−プレート型フィルムである請求項1記載の偏光板。
【請求項3】
前記透明フィルムが偏光膜の一方の面に積層された請求項1記載の偏光板。
【請求項4】
前記透明フィルムが偏光膜の両面に積層された請求項1記載の偏光板。
【請求項5】
前記透明フィルムが、該透明フィルムの厚さが30〜200μmに設定した場合、下記式で算出されるリタデーション値(Rth)が60〜1000nmである請求項1記載の偏光板:
th=△(ny−nz)×d
前記式で、
yは波長550nmで測定される面内高速軸の屈折率であり、
zは波長550nmで測定される厚さ方向の屈折率であり、
dはフィルムの厚さである。
【請求項6】
前記環状オレフィン系付加重合体が
i)下記の化学式1で示される化合物のホモ重合体;または
ii)下記の化学式1で示される化合物のうちの互いに異なる2種以上を共重合して得た共重合体
である請求項1記載の偏光板:
(化学式1)

前記化学式1の式で、
mは0〜4の整数であり、
1、R2、R3およびR4は各々独立してまたは同時に、水素;ハロゲン;炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、アルケニルまたはビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキル;炭素数3〜20のアルキニル;あるいは
炭素数1〜20の線状または分枝状ハロアルキル、ハロアルケニルまたはハロビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のハロアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のハロアラルキル;炭素数3〜20のハロアルキニル;および少なくとも1つ以上の酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンまたはホウ素を含む非炭化水素極性基からなる群より選択される極性官能基であり、
前記R1、R2、R3およびR4は水素、ハロゲンまたは極性官能基でない場合、R1とR2またはR3とR4が互いに連結されて炭素数1〜10のアルキリデン基が形成されるか、あるいはR1またはR2がR3およびR4のうちの何れか一つと連結されて炭素数4〜12の飽和または不飽和環基または炭素数6〜24の芳香族環化合物が形成される。
【請求項7】
前記化学式1の非炭化水素極性基が、−C(O)OR6、−R5C(O)OR6、−OR6、−R5OR6、−OC(O)OR6、−R5OC(O)OR6、−C(O)R6、−R5C(O)R6、−OC(O)R6、−R5OC(O)R6、−(R5O)p−OR6、−(OR5p−OR6、−C(O)−O−C(O)R6、−R5C(O)−O−C(O)R6、−SR6、−R5SR6、−SSR6、−R5SSR6、−S(=O)R6、−R5S(=O)R6、−R5C(=S)R6、−R5C(=S)SR6、−R5SO36、−SO36、−R5N=C=S、−NCO、R5−NCO、−CN、−R5CN、−NNC(=S)R6、−R5NNC(=S)R6、−NO2、−R5NO2
【化1】

【化2】

より選択され、
前記官能基において各々のR5は炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、ビニル、ハロビニル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキルまたはハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリールまたはハロアリール;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルまたはハロアラルキル;炭素数3〜20のアルキニルまたはハロアルキニルであり、
各々のR6、R7およびR8は水素、ハロゲン、炭素数1〜20の線状または分枝状アルキル、ハロアルキル、アルケニル、ハロアルケニル、ビニル、ハロビニル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数4〜12のシクロアルキルまたはハロシクロアルキル;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数6〜40のアリール、ハロアリール、アリールオキシまたはハロアリールオキシ;炭化水素で置換されているか、または置換されていない炭素数7〜15のアラルキルまたはハロアラルキル;炭素数3〜20のアルキニルまたはハロアルキニルであり、
各々のpは1〜10の整数である、
請求項6記載の偏光板。
【請求項8】
前記環状オレフィン系付加重合体が非極性官能基を含有する請求項1記載の偏光板。
【請求項9】
前記環状オレフィン系付加重合体が極性官能基を含有する請求項1記載の偏光板。
【請求項10】
前記環状オレフィン系付加重合体が極性官能基を含有するノルボルネン系単量体のホモ重合体または互いに異なる極性官能基を含有するノルボルネン系単量体同士の共重合体である請求項1記載の偏光板。
【請求項11】
前記環状オレフィン系付加重合体が非極性官能基を含有するノルボルネン系単量体と極性官能基を含有するノルボルネン系単量体の共重合体である請求項1記載の偏光板。
【請求項12】
前記透明フィルムが1種以上の環状オレフィン系付加重合体のブレンドを含む請求項1記載の偏光板。
【請求項13】
前記環状オレフィン系付加重合体が、ノルボルネン系単量体を10族の遷移金属触媒下で付加重合する工程を含む方法で製造される請求項1記載の偏光板。
【請求項14】
前記環状オレフィン系付加重合体が
極性官能基を含有するノルボルネン系単量体を
i)10族の遷移金属化合物の触媒成分;
ii)15族元素を含む、電子供与の役割を果たす非共有電子対を有する有機化合物の助触媒成分;および
iii)該遷移金属に弱く配位できる陰イオンを供与する13族元素を含む塩の助触媒成分
を含む触媒系の触媒成分と接触させて付加重合する工程
を含む方法で製造される請求項1記載の偏光板。
【請求項15】
前記偏光板が、
エステル基またはアセチル基の極性官能基を含むノルボルネン系単量体を
i)10族の遷移金属化合物;
ii)円錐角が少なくとも160度である中性の15族電子供与リガンドを含有する化合物;および
iii)前記i)の遷移金属に弱く配位できる陰イオンを供与できる塩
を含む触媒系の触媒成分と接触させて付加重合する工程を含む方法で製造されるエステル基またはアセチル基の極性官能基を含む環状オレフィン系付加重合体から調製された透明光学フィルムを含む請求項1記載の偏光板。
【請求項16】
前記透明フィルムが、環状オレフィン系付加重合体を溶媒に溶解した後、この溶液をキャスティングしてフィルムに調製する工程を含む溶液キャスティング法で製造される請求項1記載の偏光板。
【請求項17】
前記透明フィルムがコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理およびコーティング処理からなる群より1種以上選択される表面処理が実施された請求項1記載の偏光板。
【請求項18】
下記数式1で算出されるリタデーション値(Rth)が60〜1000nmであり、波長分散特性である一定傾斜角で観察される二つの波長での位相差比が(R450/R550)が1〜1.05であり、(R650/R550)が0.95〜1である(ここで、R450は波長450nmでの位相差値であり、R550は波長550nmでの位相差値であり、R650は波長650nmでの位相差値である)光学異方性透明フィルムを偏光フィルムの少なくとも一方の面に積層した一体型偏光板:
(数式1)
th=△(ny−nz)×d
前記数式1で、
yは波長550nmで測定される面内高速軸の屈折率であり、
zは波長550nmで測定される厚さ方向の屈折率であり、
dはフィルムの厚さである。
【請求項19】
前記光学異方性透明フィルムは400〜800nmでの光透過度が少なくとも90%である請求項18記載の一体型偏光板。
【請求項20】
前記光学異方性透明フィルムが、環状オレフィン系付加重合体を含む請求項18記載の一体型偏光板。
【請求項21】
前記光学異方性透明フィルムは厚さを30〜200μmとしたときの下記数式1で示されるリタデーション値(Rth)が60〜1000nmである請求項18記載の一体型偏光板:
(数式1)
th=△(ny−nz)×d
前記数式1で、
yは波長550nmで測定される面内高速軸の屈折率であり、
zは波長550nmで測定される厚さ方向の屈折率であり、
dはフィルムの厚さである。
【請求項22】
前記光学異方性フィルムの屈折率が
【数1】

の関係(nxは面内低速軸の屈折率であり、nyは高速軸の屈折率、nzは厚さ方向の屈折率)を満足する請求項18記載の一体型偏光板。
【請求項23】
前記偏光板が、ネガティブC−プレートの光学補償機能と偏光板の機能を同時に行う請求項18記載の一体型偏光板。
【請求項24】
厚さ方向にネガティブ複屈折率を有する偏光板の製造方法であって、
a)ノルボルネン系単量体を付加重合してノルボルネン系付加重合体を調製する工程;
b)該ノルボルネン系付加重合体を溶媒に溶解してノルボルネン系付加重合体溶液を調製する工程;
c)該ノルボルネン系付加重合体溶液を鏡面上にコーティングまたはキャスティングして乾燥するキャスティング工程;および
d)該キャスティングされたフィルムを偏光膜と積層する工程
を含む偏光板の製造方法。
【請求項25】
前記d)工程の積層が、c)工程のキャスティングをして得たフィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理またはコーティングする表面処理をした後に実施される請求項24記載の偏光板の製造方法。
【請求項26】
前記偏光板が、偏光膜の両面または何れか一方の面に備えられた保護層を含む請求項24記載の偏光板の製造方法。
【請求項27】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18記載の偏光板を含む液晶表示装置。
【請求項28】
前記液晶表示装置は、電圧がONまたはOFF状態であるときに、液晶層の屈折率が
【数2】

の関係(nxは面内低速軸の屈折率であり、nyは高速軸の屈折率、nzは厚さ方向の屈折率)を満足する液晶モードを含む請求項27記載の液晶表示装置。

【公表番号】特表2006−508403(P2006−508403A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501715(P2005−501715)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000226
【国際公開番号】WO2004/070463
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(303026660)エルジ・ケム・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】