説明

一液型液状エポキシ樹脂組成物

【課題】 本発明は、PBTあるいはLCPを構成部材の一部とするリレーにおいて、120℃以下の温度で硬化可能で、高温多湿環境下でPBTあるいはLCPおよび金属端子との間に優れた密着性を有し、さらに半田リフロー処理における高温下での金属端子への密着性について改善された一液型液状エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂および潜在性硬化剤として(B)ジシアンジアミドおよび(C)ジヒドラジド化合物および(D)ジシアンジアミドおよびジヒドラジド化合物以外の潜在性硬化剤を必須成分として含有し、前記(B)の使用量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.5重量部から15重量部であり、かつ、前記(B)と(C)の使用量が合計で、エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部から30重量部である一液型エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子部品又は電気部品、さらに詳しくは、リレーの気密封止や絶縁封止用の一液型エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型電子部品又は電気部品特にリレーは、エレクトロニクス産業の発展とともに、その生産量も順調に伸びており、通信機器、OA機器、家電機器、自販機等使用される分野も多岐にわたっている。特にプリント配線基盤に搭載されるリレーが増加しつつある。その必要特性として、半田フラックスの侵入防止、部品の溶剤洗浄が可能であることあるいは半田リフロー処理後に気密性を保持できること等が挙げられ、樹脂等による完全気密封止型のリレーが多くなってきており、その信頼性要求は、ますます厳しくなっている。
【0003】
この様に、リレーとして、その気密性が強く要求されることに伴い、優れた封止材料が必要とされており、従来から、この様な目的のための封止樹脂としては、エポキシ樹脂が用いられていた。エポキシ樹脂組成物としては、ポリアミドアミン、酸無水物等の硬化剤とエポキシ樹脂とを使用直前に混合して使ういわゆる二液型エポキシ樹脂組成物と、潜在性硬化剤として、ジシアンジアミド等を予めエポキシ樹脂組成物と混合しておく、いわゆる一液型エポキシ樹脂組成物がある。
【0004】
一般に、二液型エポキシ樹脂組成物の欠点として、配合時の計量ミスによる硬化不良や配合後のポットライフが短い等が挙げられる。また、硬化剤にポリアミドアミン、脂肪族アミン等を用いた場合、硬化物の耐熱性が低く、封止後半田槽を通過後の気密不良が生じることが多い。また、同様に酸無水物を用いた場合は、硬化温度を高くしなければならないという欠点があった。従って、最近では材料ロスの少なく生産性の高い一液型エポキシ樹脂組成物に移行している。一方で、このような一液型エポキシ樹脂組成物に対しては、リレーの使用環境の多様化により高温多湿環境下での耐久性も必要になり、封止剤の性能向上が要求されている。リレーの構成部材は、端子材料、コイル、磁石等以外は、プラスチック材料が主体であるため、硬化温度は120℃以下が望まれている。一液型エポキシ樹脂組成物の潜在性硬化剤として、主に使用されているジシアンジアミドは高融点の化合物であり、前記硬化条件では未反応物が残る場合があり、かつ、得られる硬化物の耐熱性、耐湿性等が充分でなかった。
【0005】
本発明者らは、先に12−アミノドデカン酸とその他の潜在性硬化剤を必須成分とする樹脂組成物が、120℃以下の温度で硬化可能で、かつ、高温多湿環境(85℃85%RH)下でもPBTあるいはLCPおよび金属端子との密着性に優れた硬化物が得られることを見いだした(特許文献1)。 しかし、前記樹脂組成物を用いた場合においても半田リフロー処理における高温(200〜300℃)下での金属端子への密着性等が充分とは言えなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−67963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、PBTあるいはLCPを構成部材の一部とするリレーにおいて、120℃以下の温度で硬化可能で、高温多湿環境下でPBTあるいはLCPおよび金属端子との間に優れた密着性を有し、さらに半田リフロー処理における高温下での金属端子への密着性について改善された一液型液状エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)エポキシ樹脂および潜在性硬化剤として(B)ジシアンジアミドおよび(C)ジヒドラジド化合物および(D)ジシアンジアミドおよびジヒドラジド化合物以外の潜在性硬化剤を必須成分として含有し、前記(B)の使用量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.5重量部から15重量部であり、かつ、前記(B)と(C)の使用量が合計で、エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部から30重量部である一液型エポキシ樹脂組成物を用いることにより、120℃以下の温度で硬化可能で、高温多湿環境下でPBTあるいはLCPおよび金属端子との間に優れた密着性を有し、さらに半田リフロー処理における高温下でのPBTあるいはLCP及び金属端子への密着性について改善された硬化物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂は、一液型エポキシ樹脂組成物に用いられているエポキシ樹脂であれば、特に限定されないが、リレー封止用エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのエポキシ樹脂は単独あるいは混合で使用しても差し支えない。これらのエポキシ樹脂は、常温で液体でも固体でもよいが、好ましくは、常温で液状のものが使用される。
【0010】
本発明において用いられる(C)ジヒドラジド化合物としては、例えば、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド等を挙げることができ、これらのうち、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドが好ましい。
【0011】
本発明における(B)ジシアンジアミドおよび(C)ジヒドラジド化合物の使用量は、併用する(D)ジシアンジアミドおよびジヒドラジド化合物以外の潜在性硬化剤の量によって変化するが、エポキシ樹脂100重量部に対して、(B)は、0.5重量部から15重量部であり、かつ、(B)と(C)合計で1重量部から30重量部であり、好ましくはそれぞれ0.5重量部から15重量部である。
【0012】
本発明における(D)ジシアンジアミドおよびジヒドラジド化合物以外の潜在性硬化剤としては、硬化後の性能を阻害しないものであれば、特に限定されないが、例えば、第三級アミン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾールアダクト系化合物、アミンアダクト系化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物等が挙げられ、好ましくはイミダゾールアダクト系化合物、アミンアダクト系化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物を用いられる。 第三級アミン化合物としては例えば、ベンジルジメチルアミンや2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールに代表されるトリス(ジアルキルアミノアルキル)フェノール化合物が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾールアダクト系化合物としては、例えば、味の素テクノファイン社製アミキュアPN−23、アミキュアPN−R等が挙げられ、アミンアダクト系化合物としては、例えば、味の素テクノファイン社製アミキュアMY−24、アミキュアMY−Rや特開昭57−100127号公報に示されたアダクト系化合物等が挙げられ、変性脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、富士化成工業社製フジキュアーFXE−1000等が挙げられる。
【0013】
本発明における(D)ジシアンジアミドおよびジヒドラジド化合物以外の潜在性硬化剤は少なくとも1種以上含有していればよく、その使用量は、潜在性硬化剤の種類やジヒドラジド化合物あるいはジシアンジアミドの使用量によって変化するが、エポキシ樹脂100重量部に対して、通常、0.5重量部から30重量部であり、好ましくは3重量部から20重量部である。
【0014】
本発明の一液型液状エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤、カップリング剤、着色剤等を配合することができる。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラスフィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ等が挙げられ、カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、着色剤としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
【0015】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の調製方法は、通常のエポキシ樹脂組成物の調製方法と同様に一般的な撹拌混合装置と混合条件が適用される。使用される装置としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押出機等である。混合条件としてはエポキシ樹脂等を溶解および/または低粘度化し、撹拌混合効率を向上させるために加熱してもよい。また、摩擦発熱、反応発熱等を除去するために必要に応じて冷却してもよい。撹拌混合の時問は必要により定めればよく、特に制約されることはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を用いることにより、120℃以下の温度で硬化可能で、高温多湿環境下でPBTあるいはLCPおよび金属端子との間に優れた密着性を有し、さらに半田リフロー処理における高温下でのPBTあるいはLCPおよび金属端子への密着性について改善された硬化物が得られる。
【0017】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0018】
エポキシ樹脂100重量部、ジシアンジアミド1重量部、ジヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)1重量部と硬化剤A10重量部、アエロジル200 1重量部を混合した後、ミキシングロールを使って混練し、一液型エポキシ樹脂組成物を調製した。得られた一液型エポキシ樹脂組成物を被着材である銅(1.6×25×100mm)、LCP(2×25×100mm)に塗布し100℃で60分硬化させて試験片を作成した。作成した試験片を作成直後と270℃温風循環式恒温槽で10分暴露後あるいは85℃85%RH恒温恒湿槽で500時間曝露させたものにつき、銅−銅接着力およびLCP−LCP接着力をJISK6850における引張剪断接着強さの測定方法に準拠して、実施し、以下に示す基準に従って結果を判定した。
銅−銅接着力(MPa):
×:10未満、○:10以上
LCP−LCP接着力(MPa):
×:1.0未満、○:1.0〜2.0、◎:2.0を超える
【0019】
(実施例2〜5及び比較例1〜2)
表1および表2に示す割合で実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調製したものにつき物性試験を実施、判定した結果を表1および表2に示す。
【0020】
【表1】

D.E.R.331J:ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(ダウ・ケミカルジャパン社製)
ADH :アジピン酸ジヒドラジド
硬化剤A :ジメチルアミンのエポキシ樹脂アダクト硬化剤
アエロジル 200 (日本アエロジル社製)








【0021】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型電子部品又は電気部品を気密封止又は絶縁封止するエポキシ樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)ジシアンジアミド、(C)ジヒドラジド化合物および(D)ジシアンジアミドおよびジヒドラジド化合物以外の潜在性硬化剤を必須成分として含有し、前記(B)の使用量が、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.5重量部から15重量部であり、かつ、前記(B)および(C)の使用量が合計で、エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部から30重量部であることを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(D)がイミダゾールアダクト系化合物、アミンアダクト系化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
小型電子部品又は電気部品がリレーであることを特徴とする請求項1記載の一液型エポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−39543(P2007−39543A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224929(P2005−224929)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】