説明

一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒

【課題】一酸化ガスセンサ、燃料電池のアノード等における使用に適した、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に有効な新規な触媒を提供する。
【解決手段】下記化学式(1):


(式中、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、基:-SO3M1(式中、M1は、水素原子、アルカリ金属又は−NHである)、又は基:−R−COOM2(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン
基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である)を示す。但し、R
の少なくとも一つは基:−R−COOM2である)で表されるロジウムポルフィリンを有効成分とする一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、作動温度が低いために取り扱いが容易であり、起動時間が速い等、起動性、運転操作性にも優れ、更に、電流密度が高く、小型軽量化が可能であること等から、小容量電源や移動電源として注目されている。固体高分子形燃料電池では、アノード触媒としては主として白金触媒が用いられているが、天然ガス、メタノール、ガソリンなどを改質して得られる水素を燃料とする場合には、改質によって生じた一酸化炭素が、白金に強く吸着して、触媒機能を大きく低下させるという問題がある。
【0003】
この様な一酸化炭素による触媒被毒を受けやすい低温型燃料電池の燃料極として、遷移金属又はその合金と、特定の有機金属錯体を組み合わせて用いた耐CO被毒性を有する燃料極用触媒等が報告されている(例えば、特許文献1等)。しかしながら、一酸化炭素を積極的に酸化除去するために有効な触媒は報告されていない。
【0004】
一方、一酸化炭素を電気的に検出するガスセンサとして、プロトン導電体にイオン化電極と参照電極とを接続し、イオン化電極における一酸化炭素の酸化反応によって生じるプロトン電流を検出して、一酸化ガス濃度を測定する構造のセンサが知られている(特許文献2)。
【0005】
このガスセンサでは、イオン化電極として、白金等の貴金属触媒が多量に用いられているためにコストが高く、しかも一酸化炭素酸化の過電圧が高いために、検出感度が劣るという欠点がある。
【特許文献1】特開平14−329500号公報
【特許文献2】特公平5−39509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した様な従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、一酸化ガスセンサ、燃料電池のアノード等における使用に適した、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に有効な新規な触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、ロジウムポルフィリン錯体の内で、特に、ピロール環にカルボキシアルキル基が少なくとも一個置換した特定のロジウムポルフィリン錯体が一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒として優れた活性を有するという従来知られていな特性を見出した。更に、該ロジウムポルフィリン錯体を導電性担体、特に、カーボンブラック上に担持させる場合には、一酸化炭素を低い過電圧で高効率に酸化することができ、しかも非常に微細な状態で担体上に分散担持させることができるために、貴金属使用量を大幅に減少させた場合にも十分な触媒活性を有するものとなることを見出した。更に、該ロジウムポルフィリン錯体の内で水溶性の化合物については、水溶液の状態においても一酸化炭素の電気化学的酸化触媒として優れた活性を有することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒及びその用途を提供するものである。
1. 下記化学式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、基:-SO3M1(式中、M1は、水素原子、アルカリ金属又は−NHである)、又は基:−R−COOM2(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン
基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である)を示す。但し、R
の少なくとも一つは基:−R−COOM2である)で表されるロジウムポルフィリンを有効成分とする一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
2. 化学式(1)において、R〜Rの少なくとも2個が基: −R−COOM2(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である)である上記項1に記載の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
3. 化学式(1)において、R及びRが基: −R−COOM2(式中、Rは直鎖状又
は分岐鎖状のアルキレン基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である
)である上記項2に記載の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
4. ロジウムポルフィリンが導電性担体に担持されたものである上記項1〜3のいずれかに記載の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
5. 導電性担体がカーボンブラックである上記項3に記載の触媒。
6. 上記項1〜5のいずれかに記載の触媒、及びアノード触媒物質を含む固体高分子形燃料電池用アノード極。
7. 上記項1〜5のいずれかに記載の触媒を、一酸化炭素検出部における一酸化炭素の酸化用触媒成分として含む一酸化炭素センサ。
8. 電解液、作用極、対極及び電源装置を含む、固体高分子形燃料電池用アノードガス中の一酸化炭素酸化除去装置において、作用極における一酸化炭素の酸化用触媒として、上記項1〜5のいずれかに記載の触媒を含むことを特徴とするアノードガス中の一酸化炭素酸化除去装置。
9. 上記項1〜5のいずれかに記載の触媒をアノード触媒物質として含む、一酸化炭素を燃料とする固体高分子形燃料電池用アノード極。
10.上記項9のアノード極を構成要素として含む、一酸化炭素を燃料とする固体高分子形燃料電池。
11.上記項1〜3のいずれかに記載の触媒を含む水溶液中において一酸化炭素を電気化学的に酸化させることを特徴とする一酸化炭素の酸化方法。
12.一酸化炭素によって被毒された白金触媒を、上記項1〜3のいずれかに記載の触媒を含む水溶液に接触させることを特徴とする白金触媒の触媒活性回復方法。
【0011】
本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒は、下記化学式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、基:-SO3M1(式中、M1は、水素原子、アルカリ金属又は−NHである)、又は基−R−COOM2(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基で
あり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である)を示す。但し、R〜R
少なくとも一つは、基:−R−COOM2である)で表されるロジウムポルフィリンを有効成
分とするものである。
【0014】
上記化学式(1)で表されるロジウムポルフィリンは、反応式:
CO + H2O →CO2+ 2H+ + 2e−
で表される一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して優れた活性を有するものである。よって、該ロジウムポルフィリンの存在下に一酸化炭素を電気化学的に酸化することによって、低い過電圧で効率よく一酸化炭素を酸化することが可能となる。
【0015】
更に、上記化学式(1)で表されるロジウムポルフィリンは、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して高い活性を有することに加えて、使用する配位子が主として天然物に近い構造であり、安全性が高く、しかも安価な化合物である。
【0016】
上記化学式において、アルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルなどの炭素数1〜5程度の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基が好ましい。
【0017】
ヒドロキシアルキル基のアルキル基部分としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルなどの炭素数1〜5程度の直鎖状又は分枝鎖状の低級アルキル基を例示できる。ヒドロキシ基は、該アルキル基の任意の炭素原子に置換することができる。
【0018】
アルケニル基としては、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチルアリル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル基等の炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖状アルケニル基を挙げることができる。
【0019】
基:-SO3M1において、M1は水素原子、アルカリ金属又は−NHである。これらの内で、アルカリ金属としては、K、Na等を例示できる。
【0020】
基:−R−COOM2において、R9で表されるアルキレン基としては、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、1−メチルトリメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキレン基を例示できる。M2で表されるアルキル基とアルカリ金属は、上記したものと同様である。
【0021】
上記化学式(1)で表されるロジウムポルフィリンにおいて、R〜Rの内の2個以上
が基:−R−COOM2である化合物は、特に一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して高い活性を有するものである。
【0022】
以下、ロジウムポルフィリン化合物の内で、好ましい化合物を記載する。
【0023】
【化3】

【0024】
尚、上記各化学式において、ポルフィリン環、炭素原子又は酸素原子に結合している基:−は、メチル基を示し、ポルフィリン環に結合している基:
【0025】
【化4】

【0026】
は、ビニル基を示す。
【0027】
上記化学式(1)で表されるロジウムポルフィリンの内で、R及びRが基:−R
−COOM2である化合物は、高い活性を有するものであり、特に、M2が水素原子又はアルカ
リ金属である化合物は、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して非常に高い活性を発揮するものである。また、基:−R−COOM2に加えて、アルキル基よりも電子供与性の高い置換基又は水溶性の高い置換基を有することが好ましく、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、又は基:-SO3M1を2個以上含むことがより好ましく、特に、ヒドロキシアルキル基、又は基:-SO3M1を2個以上有することが好ましい。
【0028】
上記化学式(1)で表されるロジウムポルフィリンは、化学式(2)
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、R〜Rは、上記に同じである)で表されるポルフィリン化合物とロジウム原子とでキレートを形成することによって得ることができる。例えばInorganica Chimica Acta 25 (1977) 215-218に記載されている方法により合成することが出来る。即ち、化学
式(2)で表されるポルフィリン化合物をエタノール等の溶媒に十分に溶解させた後、これにロジウムの塩、錯体等を添加して、加熱還流し、反応混合物を通常の方法により精製することにより目的とするロジウムポルフィリンを得ることができる。ロジウムの塩、錯体としてはテトラカルボニルジ-μ-クロロ二ロジウムが望ましい。用いる溶媒はポルフィリン化合物とロジウムの塩を両方溶解できれば特に制限はないがエタノールやメタノールが好ましい。加熱還流温度は溶媒の沸点より低ければ特に制限はないが、エタノールを用いた場合、60℃〜70℃程度が望ましい。
【0031】
上記したロジウムポルフィリンは、導電性担体に担持させることにより、二量化反応や不均化反応等の分子間反応を抑制して、ロジウムポルフィリンを安定化させることができ、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して高い触媒活性を有するものとすることができる。これは、該ロジウムポルフィリンが、導電性担体との相互作用によって該担体に強固に吸着担持されることによるものと思われる。
【0032】
導電性担体としては、特に限定はなく、例えば、従来から固体高分子形燃料電池用の触媒担体として用いられている各種の担体を用いることができる。この様な担体の具体例としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛等の炭素質材料を挙げることができる。これらの内で、カーボンブラックは、上記化学式で表されるロジウムポルフィリンとの相互作用が大きくロジウムポルフィリンを安定化させる働きが強く、更に、導電性に優れ、比表面積も大きいために、導電性担体として特に好ましい物質である。
【0033】
導電性担体の形状などについては特に限定はないが、例えば、平均粒径が0.1〜100μm程度、好ましくは1〜10μm程度のものを用いることができる。また、カーボンブラックを用いる場合には、例えば、BET法による比表面積が100〜800m/g程度の範囲内にあるものが好ましく、200〜300m/g程度の範囲内にあるものがより好ましい。この様なカーボンブラックの具体例としては、Vulcan XC-72R(Cabot社製)の商標名で市販されているものを用いることができる。
【0034】
導電性担体に担持させる方法としては、例えば、溶解乾燥法、気相法などの公知の方法を適用できる。
【0035】
例えば、溶解乾燥法では、ロジウムポルフィリンを有機溶媒に溶解させ、この溶液に導電性担体を加えて、例えば、数時間撹拌して、該担体にロジウムポルフィリンを吸着させた後、有機溶媒を乾燥させればよい。また、有機溶媒中にロジウムポルフィリンが多量に含まれる場合には、平衡に達するまでロジウムポルフィリンを導電性担体に吸着させた後、濾過することによって、導電性担体に吸着していないロジウムポルフィリンを除去して、該担体と相互作用しているロジウムポルフィリンのみを該担体の表面に残すことができる。
【0036】
この方法では、有機溶媒としては、ロジウムポルフィリンを溶解できるものであれば、特に限定なく使用できる。例えば、エタノール等の低級アルコールを好適に用いることができる。
【0037】
濾過によって得られた分散物を、さらに有機溶媒を用いて洗浄液が透明になるまで洗浄すれば、導電性担体との相互作用の弱いロジウムポルフィリンを洗い流すことができ、導電性担体に強固に吸着しているロジウムポルフィリンのみを含む高活性な触媒を得ることができる。
【0038】
気相法で担持させる場合には、例えば、プラズマ蒸着法、CVD法、加熱蒸着法などを公知の方法を採用できる。
【0039】
導電性担体上に担持させるロジウムポルフィリンの量については、特に限定はないが、例えば、導電性担体1gに対して、ロジウムポルフィリンを20μmol〜80μmol程度担持させればよく、30μmol〜70μmol程度担持させることが好ましい。
【0040】
ロジウムポルフィリンを有効成分とする本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒は、一酸化酸素を選択性よく電気化学的に酸化させることができるので、この様な特性が要求される各種の用途に用いることができる。
【0041】
例えば、天然ガス、メタノール、ガソリンなどを改質して得られる一酸化炭素を含む水素ガスを燃料とする固体高分子形燃料電池において、アノード触媒物質と組み合わせて用いることによって、一酸化炭素を選択的に酸化除去して、耐一酸化炭素被毒性に優れたアノード極を得ることができる。
【0042】
この場合のアノード極におけるアノード触媒物質としては、例えば、白金等の公知の触媒を用いることができる。本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒とアノード触媒物質の割合は、特に限定的ではないが、例えば、前者100重量部に対して、後者50〜500重量部程度の範囲から適宜決めればよい。一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒とアノード触媒物質は、それぞれ、別個の導電性担体に担持させて用いても良く、或いは、同一の担体に担持させても良い。同一の担体に担持させる場合には、例えば、白金等の触媒物質を担持させた担体上に、更に、上記した各種の方法でロジウムポルフィリンを担持させ
る方法、ロジウムポルフィリンを担持させた担体上に、更に、白金などの触媒物質を担持させる方法などを適用できる。
【0043】
アノード極の構造、及びこのアノード極を用いる固体高分子形燃料電池の構造については、特に限定はなく、公知の燃料電池と同様とすればよい。
【0044】
また、その他に、本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒は、例えば、電極反応を利用して一酸化炭素を検出するためのセンサとして用いることができる。この場合には、本発明の触媒を一酸化炭素の酸化用触媒として含むセンサを用い、検出方法としては、一酸化炭素の酸化反応によって生じる電流を検出する方法、電位差を検出する方法、プロトンを検出する方法等を採用できる。例えば、特公平5−39509号に記載されているガス検出装置におけるセンサと同様に、一酸化炭素を電極反応によって酸化させてプロトンを生成させるためのイオン化電極と、プロトン導電体と、プロトン導電体からプロトンを収受し、雰囲気中の酸素と反応させて水として排出するための参照電極とを有する、プロトン導電体ガスセンサとすることができる。この様な構造のガスセンサにおいて、イオン化電極における一酸化炭素の酸化用触媒として本発明の触媒を用いることができる。
【0045】
また、その他に、本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒は、例えば、天然ガス、メタノール、ガソリンなどを改質して得られる改質ガスをアノードガスとする固体高分子形燃料電池において、アノードガスを燃料電池に供給する前に、該アノードガスに含まれる一酸化炭素を電解によって酸化除去するための一酸化炭素酸化除去装置における一酸化炭素酸化用触媒として用いることができる。この様な一酸化炭素酸化除去装置は、例えば、電解液、作用極、対極及び電源装置を基本的な構成要素とするものである。
【0046】
該一酸化炭素酸化除去装置の概略図を図1に示す。該一酸化炭素酸化除去装置は、基本的には、通常の各種電解装置と同様の構造とすることができる。電解液としては、例えば、0.1〜1M程度の硫酸溶液等を用いることができる。本発明の触媒は、作用極における一酸化炭素の酸化用触媒として用いる。作用極では、炭素電極等の導電体を基材として用い、導電性を有するバインダにより本発明の触媒を該基材に固定すればよい。対極については特に限定はなく、通常の電解装置で用いられる各種電極を使用できる。例えば、白金電極などを用いることができる。電源装置としては、例えば、定電圧電源(ポテンシオスタット)などを用いることができる。更に、作用極を所定の電位に設定するために、通常、電解質溶液中に参照電極を設置する。参照電極としても、通常の電解装置において用いられている各種の電極を用いることができる。例えば、銀/塩化銀電極などを用いることができる。
【0047】
該一酸化炭素酸化除去装置では、例えば、電解液にアノードガスをバブリング等の方法で通気し、通気中に定電圧電源(ポテンショスタット)を使って参照極に対して作用極に正の電圧を印加することによって、アノードガス中に含まれる一酸化炭素を選択性よく電気化学的に酸化することができる。この際、作用極の触媒として本発明の触媒を用いることによって、低い過電圧で、燃料ガスを酸化することなく、一酸化炭素を電気化学的に酸化することができ、アノードガスの純化が可能となる。該一酸化炭素酸化除去装置からの排出ガスを固体高分子形燃料電池に供給することによって、純度の高い水素ガスを燃料電池に供給することが可能となる。
【0048】
更に、本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒は、一酸化炭素を燃料として用いる固体高分子形燃料電池のアノード触媒として用いることができる。通常、一酸化炭素が燃料ガスに少しでも含まれていると、触媒被毒の原因となることが知られているが、本発明の触媒を用いれば、被毒種である一酸化炭素自身を燃料として利用することが可能となる。
【0049】
本発明触媒をアノード触媒とする場合には、本発明触媒をアノード触媒物質として用いること以外は、アノード極の構造、及びこのアノード極を用いる固体高分子形燃料電池の構造については、特に限定はなく、公知の燃料電池と同様とすればよい。即ち、高分子電解質膜、電極触媒、膜−電極接合体、セル構造等については、公知の固体高分子形燃料電池と同様とすればよい。
【0050】
例えば、カソード極の触媒金属としては、従来から知られている種々の金属、金属合金などを使用することができる。具体例としては、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、白金−ルテニウムをはじめとする各種金属触媒、またはこれらの触媒微粒子をカーボンなどの担体上に分散させた担持触媒などが挙げられる。
【0051】
高分子電解質膜としては、パーフルオロカーボン系、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体系、ポリベンズイミダゾール系をはじめとする各種イオン交換樹脂膜、無機高分子イオン交換膜、有機―無機複合体高分子イオン交換膜等を使用することができる。
【0052】
固体高分子電解質膜と電極触媒との接合体は、公知の方法により作製することができる。例えば、触媒粉末と電解質溶液とを混合して作製した触媒インクを薄膜化させた後、電解質膜上にホットプレスする方法、あるいは直接高分子膜上に塗布・乾燥する方法などが適用される。
【0053】
得られた膜−電極接合体の両面をカーボンペーパー、カーボンクロスなどの集電体で挟んでセルに組み込むことによって、燃料電池セルを作製することができる。
【0054】
本発明の触媒をアノード触媒とする燃料電池では、一酸化炭素を燃料としてアノードに供給し、カソード側には、空気又は酸素を供給又は自然拡散させればよい。
【0055】
本発明の燃料電池の作動温度は、使用する電解質膜によって異なるが、通常0℃〜100℃ 程度であり、好ましくは10℃〜80℃ 程度である。
【0056】
また、一般式(1)で表されるロジウムポルフィリンの内で、水溶性の化合物、例えば、基:-SO3M1を有する化合物については、水溶液の状態においても一酸化炭素の電気化学的酸化触媒として優れた活性を有するものである。従って、一般式(1)で表される水溶性のロジウムポルフィリンを溶解した水溶液中に一酸化炭素を導入することによって、水溶液中において一酸化炭素の電気化学的酸化反応を進行させることができる。例えば、一酸化炭素を含む水溶液中で白金電極による電極反応を行う場合には、水溶性のロジウムポリフィリンを水溶液中に存在させることによって、白金電極の一酸化炭素による被毒を抑制することができる。
【0057】
また、燃料電池のアノード触媒などとして用いる白金触媒が一酸化炭素によって被毒された場合には、水溶性のロジウムポリフィリンを含む水溶液を被毒された白金触媒に接触させることによって、白金触媒の触媒活性を回復させることができる。例えば、燃料電池の燃料ガスの供給経路にロジウムポリフィリンを含む水溶液を供給して、該水溶液を白金触媒に接触させることによって、被毒された白金触媒の触媒活性を回復させることが可能である。
【0058】
ロジウムポルフィリンを水溶液として用いる場合には、ロジウムポルフィリンの濃度は、特に限定的ではないが、例えば0.05mM〜2mM程度とすることができる。また、反応温度については、例えば、25℃〜80℃程度とすることができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒によれば、一酸化炭素を低い過電圧で効率よく酸化させることができる。特に、ヒドロキシアルキル基又は基:-SO3M1を2個以上有する化合物は、一酸化炭素の電気化学的酸化に対して高い活性を有するものである。更に、本発明の触媒は、低コストであり、しかも天然ポルフィリンに近い構造をしており安全性が高い物質である。
【0060】
また、ロジウムポルフィリンを導電性担体に担持させる場合には、分子間反応を抑制して、ロジウムポルフィリンを安定化させることができ、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して高い触媒活性を有するものとなる。
【0061】
導電性担体がカーボンブラックである場合には、ロジウムポルフィリンを原子単位に近い状態で分散担持させることができるので、触媒金属の使用量を大幅に減少することができ、安価で高活性の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒とすることができる。
【0062】
また、ロジウムポルフィリンを水溶液として用いる場合にも、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対して優れた触媒活性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、製造例及び実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0064】
製造例1
ロジウムヘマトポルフィリンIXの製造例
下記化学式
【0065】
【化6】

【0066】
で表されるロジウムヘマトポルフィリンIXを以下の方法で製造した。
【0067】
まず、下記化学式
【0068】
【化7】

【0069】
で表される市販のヘマトポルフィリンIXを30 mg秤量し、100mLのエタノールに溶解させた後、テトラカルボニルジ-μ-クロロ二ロジウム(I) ([Rh2Cl2(CO)4])を10.6 mg加え、70℃で5時間、加熱還流を行った。還流後の溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、エタ
ノールに溶かし、紫外・可視分光スペクトル(UV-visスペクトル)を測定して、目的化合
物の生成を確認した。図2に紫外・可視分光スペクトルの吸光度曲線を示す。図2において、曲線Aが原料として用いたヘマトポルフィリンIXに対応し、曲線Bが目的物であるロジウムヘマトポルフィリンIXに対応する分光曲線である。
【0070】
実施例1
ロジウムヘマトポルフィリンIX担持カーボン触媒の作製
製造例1で得たロジウムヘマトポルフィリンIXを0.7 mMになるように10 mLのエタノー
ルに溶解させた後、このポルフィリン溶液にカーボンブラック(比表面積250 m/g、商標名:Vulcan XC 72R、Cabot社製)を31 mg加えた。容器を密閉した後、超音波洗浄器
に1分掛けることにより分散性をよくした。
【0071】
このカーボンブラックを懸濁させたポルフィリン溶液を、マグネティックスターラーで3時間攪拌したのち、東洋濾紙 (株)のNo.5C定量濾紙を用いて吸引濾過することにより溶媒を取り除いた。濾紙上のカーボンブラックを回収してロジウムヘマトポルフィリンIX担持カーボン触媒を得た。得られたロジウムヘマトポルフィリンIX担持カーボン触媒におけるロジウムヘマトポルフィリンIXの担持量は68μmol/gであった。
【0072】
触媒活性の評価
上記した方法で得たロジウムヘマトポルフィリンIX担持カーボン触媒を乳鉢で破砕し、5 mgを0.5 mLの混合溶媒(水:エタノール = 1 : 1)に懸濁させたのち、5 μLの5 % Nafion溶液 (Aldrich製)を加えた。この懸濁液を5分間超音波洗浄器に掛けることで、よく
分散させた後、回転ディスク電極の上に2 μLのせて乾燥させた。
【0073】
触媒の酸素還元活性評価はエー・エル・エス製のポテンショスタット(ALS model 711B)を用いて行った。回転数の制御はビー・エー・エス(株)製の回転数制御装置(BAS RDE-1)を用いて行った。触媒を塗布したグラッシーカーボンの回転ディスク電極を作用電
極とし、白金電極を対極、Ag/AgCl/KCl(sat.)電極を参照電極として用いた。電解液とし
ては0.1 M H2SO4を用いた。
【0074】
一酸化炭素のない条件でのロジウムポルフィリン担持カーボンのサイクリックボルタモグラム(CV)を図3の曲線Aとして示す。一酸化炭素ガスを電解セル中に7分間吹き込んだ後、電極を6400rpmで回転させながらリニアスイープボルタモグラムを測定すると、酸化電
流の上昇が観測され(曲線B)、COがロジウムポルフィリン錯体の触媒作用で電気化学的
に酸化されていることがわかる。一酸化炭素飽和下では-0.18 V (Ag/AgCl/KCl(sat.)基準)付近から酸化電流が上昇し始めており、一酸化炭素の酸化が低い過電圧で進行している
ことがわかる。
【0075】
実施例2
製造例1と同様の方法によって、市販のプロトポルフィリンIX用いて下記化学式
【0076】
【化8】

【0077】
で表されるロジウムプロトポルフィリンIXを作製した。得られたロジウムプロトポルフィ
リンIXを実施例1と同様の方法によって、カーボンブラックに担持させた。ロジウムプロトポルフィリンIXの担持量は54μmol/gであった。
【0078】
得られたロジウムプロトポルフィリンIX担持カーボン触媒を用いて実施例1と同様にして一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対する触媒活性を評価した。結果を図4に示す。
【0079】
一酸化炭素のない条件でのロジウムポルフィリン担持カーボンのサイクリックボルタモグラム(CV)を図4の曲線Aとして示す。一酸化炭素ガスを電解セル中に7分間吹き込んだ後CVを測定すると、酸化電流の上昇が観測され(曲線B)、COがロジウムポルフィリン錯体
の触媒作用で電気化学的に酸化されていることがわかる。一酸化炭素飽和下では-0.14 V (Ag/AgCl/KCl(sat.)基準)付近から酸化電流が上昇し始めており、一酸化炭素の酸化が低
い過電圧で進行していることがわかる。
【0080】
実施例3〜6
製造例1と同様の方法によって、下記表1に示すロジウムポルフィリン錯体を作製し、実施例1と同様の方法によって一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対する触媒活性を評価した。
【0081】
表1に、上記した方法で測定したサイクリックボルタモグラム(CV)から求めた5μAに
なるときの電圧(mV)、0Vの時の電流値(μA)、及び最大電流値(μA)を示す。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例7
製造例1と同様の方法によって(ただし溶媒としては、エタノールに代えて水を用い、還流温度は95℃とした)、市販のジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸を用いて、下記化学式
【0084】
【化9】

【0085】
で表されるロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸を作製した。得られたロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸を実施例1と同様の方法によって、カーボンブラックに担持させた。
【0086】
得られたロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸担持カーボン触媒を用いて実施例1と同様にして一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対する触媒活性を評価した。結果を図5に示す。
【0087】
一酸化炭素のない条件でのロジウムポルフィリン担持カーボンのサイクリックボルタモグラム(CV)を図5の曲線Aとして示す。一酸化炭素ガスを電解セル中に7分間吹き込んだ後CVを測定すると、酸化電流の上昇が観測され(曲線B)、COがロジウムポルフィリン錯体
の触媒作用で電気化学的に酸化されていることがわかる。一酸化炭素飽和下では−0.2V (Ag/AgCl/KCl(sat.)基準)付近から酸化電流が上昇し始めており、一酸化炭素の酸化が
低い過電圧で進行していることがわかる。
【0088】
水溶液中でのロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸の電気化学的一酸化炭素酸化能の評価
ロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸を、電解液である0.1 M H2SO4
に0.1mMの濃度で溶解させた溶液を測定試料として用い、グラッシーカーボン電極を
作用電極とし、白金電極を対極、可逆水素電極を参照電極として、一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対する触媒活性を評価した。測定温度は60℃とした。
【0089】
一酸化炭素のない条件で測定したロジウムポルフィリン担持カーボンのサイクリックボルタモグラム(CV)を図6の曲線Aとして示す。一酸化炭素ガスを電解セル中に7分間吹き込んだ後、サイクリックボルタモグラムを測定すると、酸化電流の上昇が観測され、COがロジウムポルフィリン錯体の触媒作用で電気化学的に酸化されていることがわかる(曲線B
)。一酸化炭素飽和下では0.2 V以下(RHE基準)でも酸化電流が上昇し始めており、一
酸化炭素の酸化が低い過電圧で進行していることがわかる。
【0090】
ロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸水溶液の白金触媒被毒抑制効果の確認試験
(1)ロジウムポルフィリンを含む水溶液による白金触媒被毒抑制効果について、以下の方法で定電位アンペロメトリー法により確認した。作用電極として白金の回転ディスク電極、参照電極として可逆水素電極、対極として白金電極を用いた。電解液は0.1 M H2SO4を使用した。測定は60℃で行った。
【0091】
まず、純水素ガスを電解液中に20分吹き込んだ後、水素ガスを吹き込んだまま電極電位を0.05Vに保持し、電極を3600rpmで回転させて、アンペロメトリーを行った。結果を図7に示す。
【0092】
図7から明らかなように、0.05Vへの電位保持を開始すると白金電極による水素酸
化電流が観測された。電位保持開始後553秒で、電解液中に吹き込むガスを0.1%COを含む水素ガスに切り替えると、水素酸化電流が急激に減少した。これにより、白金触媒がCOによって被毒されたことがわかる。更に、電位保持開始後1210秒で0.1%CO入り水素ガスから純水素ガスへと吹き込むガスを切り替えた。図7から、水素酸化電流が徐々に回復するがその速度は遅いことが確認できる。ここに、ロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸の水溶液を電解液中で0.1mMになるように加えると(電位保持開始後1950秒後)、水素酸化電流は急激に回復した。さらに、3044秒後に再
び0.1%CO入り水素ガスに切り替えると、水素酸化電流は減少するが、減少速度は錯体が電解液中に存在しないとき場合より小さかった。
【0093】
以上の結果から、水溶液中にロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸を存在させることにより、CO被毒された白金触媒の活性を回復でき、更に、白金触媒のCO被毒を抑制できることが判る。
【0094】
(2)0.1%COを含む水素ガスに代えて、0.01%のCOを含む水素を用いた場合についても、上記(1)と同様の方法で、白金触媒被毒抑制効果を確認した。結果を図8に示す。
【0095】
まず、0.05Vへの電位保持を開始すると白金電極による水素酸化電流が観測された
。次いで、電位保持開始後500秒で0.01%COを含む水素ガスに切り替えると、水素酸化電流が急激に減少し、0.01%COによっても白金触媒が被毒されることが確認できた。
【0096】
電位保持開始後1720秒で純水素ガスに戻すと水素酸化能は回復し始めた。電位保持開始後2080秒でロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸の水溶液を電解液中で0.1mMになるように加えると、水素酸化電流の回復は加速された。
【0097】
このあと、電位保持開始後2330秒で再び0.01%CO入りの水素ガスに戻すと、水素酸化電流は減少するが、減少速度は抑制され、ある電流領域で減少が止まることがわかった(電位保持開始後3500秒〜4500秒)。これはCOによる白金触媒の被毒速度に匹敵するほど、ロジウムポルフィリン錯体による白金触媒上のCO除去速度が速いことを示唆している。
【0098】
このあと、電位保持開始後4580秒で純水素ガスに戻し、5330秒後にロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸の水溶液を電解液中で合計0.286mM
になるように加えた。この条件で、電位保持開始後5808秒で0.01%CO入りの水素ガスに切り替えても電流の減少は観測されず、6526秒で0.1%CO入りの水素ガスに切り替えても水素酸化電流の減少速度は大幅に抑制された。
【0099】
以上の結果からも、水溶液中にロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸を存在させることにより、CO被毒された白金触媒の活性を回復でき、更に、白金触媒のCO被毒を抑制できることが確認できた。
【0100】
実施例7〜12
製造例1と同様の方法によって、下記表2及び表3に示すロジウムポルフィリン錯体を作製し、実施例1と同様の方法によって一酸化炭素の電気化学的酸化反応に対する触媒活性を評価した。
【0101】
表2及び表3に、上記した方法で測定したサイクリックボルタモグラム(CV)から求めた
5μAになるときの電圧(mV)、0Vの時の電流値(μA)、及び最大電流値(μA)を示
す。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】一酸化炭素酸化除去装置の概略図。
【図2】製造例1で得たロジウムヘマトポルフィリンIXについての紫外・可視分光スペクトルの吸光度曲線。
【図3】実施例1におけるロジウムヘマトポルフィリンIX担持カーボン触媒についてのサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図面。
【図4】実施例2におけるロジウムプロトポルフィリンIX担持カーボン触媒についてのサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図面。
【図5】実施例7におけるロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸担持カーボンについてのサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図面。
【図6】実施例7におけるロジウムジューテロポルフィリン(2,4)ジスルホン酸水溶液についてのサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図面。
【図7】実施例7における白金触媒被毒抑制効果の確認試験(CO/H2 1000ppm)の結果を示す図面。
【図8】実施例7における白金触媒被毒抑制効果の確認試験(CO/H2 100ppm)の結果を示す図面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1):
【化1】

(式中、R〜Rは、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、基:-SO3M1(式中、M1は、水素原子、アルカリ金属又は−NHである)、又は基:−R−COOM2(式中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン
基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である)を示す。但し、R
の少なくとも一つは基:−R−COOM2である)で表されるロジウムポルフィリンを有効成分とする一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
【請求項2】
化学式(1)において、R〜Rの少なくとも2個が基: −R−COOM2(式中、R
直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル
基である)である請求項1に記載の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
【請求項3】
化学式(1)において、R及びRが基: −R−COOM2(式中、Rは直鎖状又は分岐
鎖状のアルキレン基であり、Mは水素原子、アルカリ金属又はアルキル基である)であ
る請求項2に記載の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
【請求項4】
ロジウムポルフィリンが導電性担体に担持されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の一酸化炭素の電気化学的酸化用触媒。
【請求項5】
導電性担体がカーボンブラックである請求項3に記載の触媒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の触媒、及びアノード触媒物質を含む固体高分子形燃料電池用アノード極。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の触媒を、一酸化炭素検出部における一酸化炭素の酸化用触媒成分として含む一酸化炭素センサ。
【請求項8】
電解液、作用極、対極及び電源装置を含む、固体高分子形燃料電池用アノードガス中の一酸化炭素酸化除去装置において、作用極における一酸化炭素の酸化用触媒として、請求項1〜5のいずれかに記載の触媒を含むことを特徴とするアノードガス中の一酸化炭素酸化除去装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の触媒をアノード触媒物質として含む、一酸化炭素を燃料とする固体高分子形燃料電池用アノード極。
【請求項10】
請求項9のアノード極を構成要素として含む、一酸化炭素を燃料とする固体高分子形燃料電池。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかに記載の触媒を含む水溶液中において一酸化炭素を電気化学的に酸化させることを特徴とする一酸化炭素の酸化方法。
【請求項12】
一酸化炭素によって被毒された白金触媒を、請求項1〜3のいずれかに記載の触媒を含む水溶液に接触させることを特徴とする白金触媒の触媒活性回復方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−214092(P2009−214092A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132820(P2008−132820)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/次世代技術開発/錯体系CO酸化電極触媒を組み込んだ新規耐COアノード触媒の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】