説明

上下水道用合成樹脂コーティング鋳鉄管及びその製造方法

【課題】上水道管及び下水道管として使用される鋳鉄管の内周面に合成樹脂膜をコーティングして腐蝕を防止する合成樹脂コーティング膜を内周面に持つ鋳鉄管の製造方法等を提供する。
【解決手段】上水道管又は下水道管としては、鉄板シートを曲げて接触する部分を溶接して一体で形成した鋼板と溶融状態の鋳物を遠心鋳造金型に流し込んで鋳造した鋳鉄管とがある。本発明は、このような鉄鋼材パイプが使用するにつれて内部が酸化して腐蝕し、異物がくっついてパイプ内部を汚染させて水道水の水質を低下させることを勘案して案出されたものであり、鋳鉄管を合成樹脂材の溶融温度に加熱した後に管内径に合成樹脂粉末を噴射して鋳鉄管内周面に合成樹脂コーティング膜を形成した後、鋳鉄管を回転させて回転により発生する遠心力にて合成樹脂コーティング膜を均一な厚さで滑らかに鋳鉄管内周面に被着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道管及び下水道管として使用される鋳鉄管の内周面に合成樹脂膜をコーティングして腐蝕を防止する合成樹脂コーティング膜を内周面に持つ鋳鉄管の製造方法及びこの方法により製造される上下水道用合成樹脂コーティング鋳鉄管に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道管又は下水道管として使用される鋳鉄管は、溶融状態の鋳物を遠心鋳造機の金型に流し込んで遠心回転力により製造されるが、前記鋳鉄管は冷めながら収縮されて表面にクラックやピンホールなどの微細な傷が発生するため表面が荒くなってしまう。
【0003】
このように鋳鉄管の内表面に形成される微細な傷やピンホールなどに微生物が取り付いて繁殖するようになり、スケールが発生して管内周面が覆われるようになる。
【0004】
従来の鋳鉄管においては、酸化による腐蝕を防止するために、内外周面をコールタール(coaltar)コーティングしたり、内周面にセメントモルタルライニングを行ったりした。
【0005】
このように原油の副産物であるコールタールやセメントモルタルを鋳鉄管内周面に被着すると、鋳鉄管の酸化を防止し、表面に形成された微細な穴(pin hole)を埋めて鋳鉄管の内周面を保護する効果はあるが、コールタールコーティングしたりセメントモルタルライニングした鋳鉄管を上水道管として使用する場合、水道水にコールタールが溶解されたりセメントが徐々に分解されて人体に有害な毒性物質が排出されることが最近明らかになった。
【0006】
本発明は、通常的に遠心鋳造により成型される鋳鉄管内周面に合成樹脂粉末を噴射し、これを溶融被着させた後に鋳鉄管を回転させて厚さが均一で滑らかなコーティング膜を鋳鉄管内周面に形成することにより、鋳鉄管の酸化による腐蝕を防止することができ、よって衛生的に水道水を輸送できる上水道管用又は下水道管用鋳鉄管の製造方法及びこれにより製造される合成樹脂コーティング鋳鉄管に関する。
【特許文献1】米国特許第5960835号
【特許文献2】米国特許第5295669号
【特許文献3】米国特許第5190093号
【特許文献4】米国特許第4091134号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、前述した従来の問題点を解決するために案出されたものであり、鋳鉄管の内周面に合成樹脂被膜を形成して酸化による腐蝕を防止して、よりきれいで衛生的に水道水を供給できる鋳鉄管の製造方法及びこれにより製造されるコーティング鋳鉄管を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明による合成樹脂コーティング鋳鉄管は、鋳鉄管21の内径にショットブラストマシンを用いて研磨砂と圧縮空気を吹き付けて鋳鉄管の内周面の異物を取り除く管内径異物除去工程と、鋳鉄管21を加熱炉12に入れて300〜350℃に加熱する加熱工程と、前記加熱された鋳鉄管21の内側に合成樹脂粉末噴射管13−1を投与して合成粉末を圧縮空気に噴射するコーティング材噴射工程と、鋳鉄管21の内周面に溶解されて被着された合成樹脂コーティング膜22が均一な厚さ及び平滑な内周面を持つように鋳鉄管を回転させる合成樹脂コーティング膜の形成工程と、常温に冷却された鋳鉄管21の外周面に防錆膜23をコーティングするコーティング工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
通常、鋳鉄管は錆防止のために原油の副産物であるコールタールを管内径及び管外径に被着させたり、管内径に一定厚さのセメント膜(セメントライニング)を形成する。
【0010】
このように原油の副産物であるコールタールやセメント膜は水に徐々に溶解されたり分解されて人体に有害な物質を発生させることになる。
【0011】
かつ、従来の鋳鉄管の内周面は酸化されて厚い被膜が形成されて異物が積層されてしまい、管直径を狭めて流速を減速させる上に、鋳鉄管内周面に取り付けられる異物及び酸化膜などは微生物の繁殖空間を提供して、結果的に汚染された水を引き続き供給することになる。
【0012】
特に、最近の研究論文によると、水道水の内水面に形成されるスケールは微生物が繁殖できる生物膜を形成してウィルス、バクテリア、大腸菌など人体に有害な菌が繁殖できる環境を提供することと発表されている。
【0013】
しかしながら、本発明により製造される鋳鉄管は内周面に一定厚さの合成樹脂コーティング膜を形成して、鋳鉄管が酸化して錆が発生することを防止し、前記形成されたコーティング膜は一定厚さと共に非常に滑らかな平滑面を保持して流速を増進させることができる。
【0014】
かつ、鋳鉄管内周面に合成樹脂材を溶融するために鋳鉄管を加熱炉に入れて一定時間加熱して鋳鉄管の組織を緻密化し、靭性と軟性を与えるアニーリング過程を行うことにより衝撃に非常に強い鋳鉄管を提供することができる。
【0015】
特に、鋳鉄管内部に一定厚さでコーティングされる合成樹脂コーティング膜は一つの内管を形成するので、鋳鉄管に大きな力が作用して鋳鉄管が損なわれても内部のコーティング層はたやすく損なわれず、漏れの恐れを解消する効果がある。
【0016】
さらに、本発明による鋳鉄管は、その内表面にコーティングされる合成樹脂コーティング膜が均一な厚さをもち、滑らかで平滑な内周面を形成して鋳鉄管が酸化することを防止する外に管内周面に異物が被着されなくて常にきれいな水道水を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための上下水道用合成樹脂コーティング鋳鉄管及びその製造方法を例示するものであって、本発明は上下水道用合成樹脂コーティング鋳鉄管及びその製造方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。図面符号のうち未説明の符号17は処理前の集積場であり、16は処理後の集積場である。
【0018】
地下に埋設される上水道管や下水道管は、土圧や他の荷重を受けてもたやすく壊れたり損なわれたりしない堅固性と共にあまり酸化されない耐腐蝕性を備えるべきである。
【0019】
上水道管の堅固性はその厚さに比例して堅固性が保持されるが、酸化による腐蝕を防止するためには酸化されない物質を管内径に挿入したり管内径をコーティングしなければならない。
【0020】
従来には鋳鉄管の酸化防止のために、管の内外周面に原油の副産物であるコールタールをコーティングしたり、セメントを主材料としたセメントライニングを挿置したり、セメントモルタルを塗って鋳鉄管の内周面又は外周面に被膜を形成する腐蝕防止処理方法を使用したが、セメントやコールタールは人体に有害な物質を発散するため飲用水を供給する水道管用の腐蝕防止用コーティング材としては好適でない。
【0021】
本発明はこのような点を勘案して、人体に無害な合成樹脂材、すなわちポリエチレン樹脂粉末又はフッ素含有合成樹脂粉末を鋳鉄管内周面に溶解被着させたもので、鋳鉄管を合成樹脂材の溶融温度に加熱した後に管内径に前記合成樹脂粉末を噴射して鋳鉄管内周面に合成樹脂コーティング膜を形成した後、鋳鉄管を回転させて前記回転により発生する遠心力にて合成樹脂コーティング膜を均一な厚さで滑らかに鋳鉄管内周面に被着させたものである。
【0022】
前記のような鋳鉄管21の内周面に合成樹脂コーティング膜22を形成する工程をさらに詳細に説明すると次の通りである。
【0023】
予め製造された鋳鉄管21は空気と接触すると酸化されて錆を発生させるため、あらゆる工程に先立って管内周面における異物の除去作用を行うべきである。
【0024】
普通、鋳鉄管21は5000〜7000mmの長さをもち、内径は50〜2500mmなので、内周面に取り付けられた異物を取り除くことは相当難しい作業である。
【0025】
従って、発明においては、圧縮空気を用いて研磨砂を高圧で鋳鉄管内周面に噴射するショットブラストマシン11を用いて管内周面の塵や錆又は他の異物を取り除いた後に圧縮空気を吹き付けて管内周面をきれいに掃除する。
【0026】
圧縮空気と研磨砂を用いたショットブラストマシン11により鋳鉄管の内周面を掃除した鋳鉄管は加熱炉12に装入して300〜350℃に加熱される。
【0027】
前記加熱温度300〜350℃はコーティングされる合成樹脂が瞬間溶解される温度であって、コーティング膜の厚さに応じて加熱温度を任意に増減させることも可能である。
【0028】
前記加熱された鋳鉄管21の内径に合成樹脂粉末噴射器13の合成樹脂噴射管13−1を投与し、合成樹脂噴射管13−1を管内径に沿って前後に移動させながら被着しようとする厚さだけの合成樹脂粉末を空気圧を用いて噴射し、前記噴射される合成粉末は加熱された鋳鉄管21の内周面にくっついて溶けてコーティング膜22を形成する。
【0029】
噴射管13−1を通じて噴射する合成樹脂粉末の種類において、熱により溶けて膜を形成する合成樹脂材のうち一番好適なものとしては酸やアルカリに腐蝕されにくい耐酸性、耐アルカリ性を持つものと、鋳鉄管との接着性に優れて被着された後にも剥げない高接着性のものと、易しく腐蝕したり摩耗したりしない材質のものと、衝撃により易しく壊れたり変形しない材質の合成樹脂材が望ましく、前記被着される合成樹脂コーティング膜22は鋳鉄管21の大きさによって異なるが大体0.2〜100mmの厚さを持つように合成樹脂コーティング膜22を形成するようになる。
【0030】
かつ、微生物が表面に寄生しないようにする殺菌性機能を持つ合成樹脂を使用することが望ましい。
【0031】
従って、本発明において、かかる条件を充足する合成樹脂材としてポリエチレン樹脂粉末をコーティング材として使用したり、フッ素を含むフッ素含有合成樹脂粉末をコーティング材として使用することになる。
【0032】
このようにポリエチレン樹脂粉末やフッ素含有合成樹脂粉末をコーティング厚さ0.2〜100mmで被着して鋳鉄管内周面にコーティング膜を形成させた後、鋳鉄管21を回転させて鋳鉄管内周面に被着された合成樹脂コーティング膜22を均一な厚さ及び平滑な内表面を持つコーティング面を形成するようになる。
【0033】
すなわち、加熱された鋳鉄管により溶解された合成樹脂材粉末は溶けて鋳鉄管内周面にくっついて溶けてコーティング膜22を形成し、回転移送器14を通じて鋳鉄管21を回転移送させるときにコーティング膜22が均一な厚さで被着されて均一な厚さと平坦な内周面を形成するようになる。
【0034】
このように内周面に合成樹脂コーティング膜22が形成された鋳鉄管21は常温に冷却されるまで回転させて冷却するようになり、冷却の完了後には外周面に防錆膜23をコーティング処理するようになる。
【0035】
前記鋳鉄管外周面の防錆膜23コーティング処理は一般的な有色塗料をスプレーや筆を用いて鋳鉄管外周面に施し、管内径に異物が投入しないように管の入口に栓をして保管し、設置直前に栓を取り除くようになる。
【0036】
通常の鋳鉄管の製造方法を見てみると、1000〜1400℃に溶融された鋳物を遠心鋳造機に噛み合っている鋳鉄管製造金型に流し込みながら鋳鉄管製造金型を回転させて鋳鉄管を鋳造し、まだ固まっていない高温の鋳鉄管に水を噴射して急冷させることにより鋳鉄管を形成するようになる。
【0037】
よって、急冷された鋳鉄管は靭性と軟性を有しないため、衝撃に弱く軽い衝撃にもすぐ損傷してしまう。
【0038】
一方、本発明に係る鋳鉄管では、内周面に合成樹脂を溶解する温度である300〜350℃に一定時間を加熱する間に、鋳鉄管の組織を緻密に再結晶して靭性と軟性を与えるアニーリング(annealing)工程が行われて、衝撃に強く緻密な内部組織を持つ鋳鉄管に変化される。
【0039】
このように加熱された鋳鉄管内周面に合成樹脂粉末を噴射コーティングした後、これを回転させて徐々に冷却する間に、平滑で均一な厚さのコーティング膜を形成すると同時に鋳鉄管の組織を緻密化して靭性と軟性を与えるアニーリング工程が自動的に行われることにより衝撃に強い鋳鉄管が形成されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の制作工程図。
【図2】鋳鉄管を加熱する加熱炉と概略断面図。
【図3】管内径に合成樹脂粉末噴射器によりコーティング膜を形成する過程を示した概略図。
【図4】鋳鉄管の断面図。
【図5】鋳鉄管の内周面にコーティング膜を形成した後の断面図。
【図6】鋳鉄管の内周面にコーティング膜を、外周面に防錆膜をそれぞれ形成した後の断面図。
【符号の説明】
【0041】
11…ショットブラストマシン
12…加熱炉
13…合成樹脂粉末噴射器
13−1…合成樹脂粉末噴射管
14…回転移送器
16…処理後の集積場
17…処理前の集積場
21…鋳鉄管
22…合成樹脂コーティング膜
23…防錆膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鉄管(21)の内径にショットブラストマシンを用いて研磨砂と圧縮空気を吹き付けて鋳鉄管の内周面の異物を取り除く管内径異物除去工程と、前記鋳鉄管(21)を加熱炉(12)に入れて300〜350℃に加熱する加熱工程と、前記加熱された鋳鉄管(21)の内側に合成樹脂粉末噴射管(13-1)を投与して合成粉末を圧縮空気に噴射するコーティング材噴射工程と、鋳鉄管(21)の内周面に溶解されて被着された合成樹脂コーティング膜(22)が均一な厚さ及び平滑な内周面を持つように鋳鉄管を回転させる合成樹脂コーティング膜の形成工程と、常温に冷却された鋳鉄管(21)の外周面に防錆膜(23)をコーティングするコーティング工程とを含むことを特徴とする上水道用及び下水道用の合成樹脂コーティング鋳鉄管の製造方法。
【請求項2】
鋳鉄管の腐蝕防止用コーティング材としてコーティング材用合成樹脂粉末又はポリエチレン粉末樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の上水道用及び下水道用の合成樹脂コーティング鋳鉄管の製造方法。
【請求項3】
コーティング材用合成樹脂粉末としてフッ素を含むフッ素含有合成樹脂粉末を用いることを特徴とする請求項1に記載の上水道用及び下水道用の合成樹脂コーティング鋳鉄管の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載された方法により製造されることを特徴とする合成樹脂コーティング鋳鉄管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−43489(P2006−43489A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223787(P2004−223787)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(504292336)エニイパイプ カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Any pipe Co., Ltd.
【Fターム(参考)】