説明

不燃性樹脂組成物及び不燃性樹脂フィルム積層体

【課題】 高い不燃性及び優れたカレンダ成形加工性を有し、かつ、耐候性及び透光性にも優れる不燃性樹脂フィルムを得ることができる不燃性樹脂組成物及び不燃性樹脂フィルム積層体を提供する。
【解決手段】 酸素含有熱可塑性樹脂100重量部、メラミンシアヌレート5〜50重量部、層状珪酸塩0.1〜50重量部、難燃剤5〜100重量部、並びに、成形加工助剤として酸化防止剤及び/又は滑剤1〜10重量部を含有する不燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い不燃性及び優れたカレンダ成形加工性を有し、かつ、耐候性及び透光性にも優れる不燃性樹脂フィルムを得ることができる不燃性樹脂組成物及び不燃性樹脂フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
膜構造建築用膜材、テント倉庫用膜材、ファザード、フレコン等に用いられるシート材には、耐候性、耐水性、耐磨耗性、柔軟性及び抗張力等の力学的性質と同時に、使用部位によっては、建築基準法に規定されているように火災時における延焼を防ぐため、難燃性が必要とされている。このため、通常、シート材としては、ポリエステル繊維やガラス繊維等のシート状繊維を基材として、これに難燃性の樹脂を被覆したものが用いられている。従来から、被覆用の難燃性樹脂としては、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂やポリテトラフルオロエチレン系樹脂等が用いられていた。
【0003】
しかしながら、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂を用いた場合は、含有される可塑剤や難燃剤等が、経時的に表層へ滲み出すことにより、表面の粘着性が増し大気中の汚れが付着したり、柔軟性、耐候性又は不燃性等が低下したりする問題があった。また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を用いた場合は、柔軟性、機械的強度等が低下するとともに、成形性が悪いという問題があった。
【0004】
一方、工業用途に用いられる高分子材料には、近年、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題から、環境に負荷をかけない材料、即ち、環境適応型材料への転換が望まれている。具体的には、燃焼時のダイオキシン発生や可塑剤の毒性等の問題から、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂からポリオレフィン系樹脂への転換が検討されている。
【0005】
このように、近年では、環境対応型材料へ転換するためにポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた、いわゆるエコ材料に対する要求が高まっているが、熱可塑性樹脂は、最も燃焼性の高い樹脂の1つであるので、難燃性を発現させることは最も困難な課題となっている。
【0006】
このような問題点を解決するために、現状では、大量の難燃剤を熱可塑性樹脂に練り込んで使用することが多い。なかでも、含ハロゲン難燃剤は、難燃化の効果が高く、成形性の低下や成形体の力学的強度の低下等も比較的少ないことから多用されている。しかし、含ハロゲン難燃剤を用いた場合、成形加工時や燃焼時に多量のハロゲン系ガスが発生して、機器が腐食したり、人体に悪影響を及ぼしたりする等の恐れがあるために、安全性の面からハロゲン含有化合物を使用しない、いわゆる非ハロゲン難燃化処理方法が強く望まれている。
【0007】
これに対して、例えば、特許文献1及び特許文献2には、ハロゲンを含有せず燃焼時に有毒なガスを発生しない難燃剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属化合物を添加して難燃化する方法が開示されており、難燃剤の種類、組み合わせ及び配合量により難燃性を制御する試みがなされている。
【0008】
しかしながら、易燃性の熱可塑性樹脂に充分な難燃性を付与するためには、大量の難燃剤を添加する必要があり、大量の難燃剤が配合された樹脂組成物をフィルム等に成形加工する際には、各種難燃剤と樹脂の組み合わせによっては、フィルム表面に難燃剤が析出したり、樹脂の分解、劣化反応によりフィルムが黄味がかったり、粘着性を帯びたりすることによって、成形加工性が低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開昭57−165437号公報
【特許文献2】特開昭61−36343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、高い不燃性及び優れたカレンダ成形加工性を有し、かつ、耐候性及び透光性にも優れる不燃性樹脂フィルムを得ることができる不燃性樹脂組成物及び不燃性樹脂フィルム積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部、メラミンシアヌレート5〜50重量部、層状珪酸塩0.1〜50重量部、難燃剤5〜100重量部、並びに、成形加工助剤として酸化防止剤及び/又は滑剤1〜10重量部を含有する不燃性樹脂組成物である。
なお、本明細書において、不燃性樹脂フィルム積層体とは、建築基準法施行令108条の2に準拠した発熱性試験を行った場合に、50kW/mの輻射加熱条件下で20分間加熱し燃焼した時の総発熱量が8MJ/m未満、200kW/mを超える発熱時間が10秒未満であり、かつ、発熱性試験後のサンプル(供試体)に亀裂や穴開き等が観察されないフィルム積層体を意味する。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、酸素含有熱可塑性樹脂、メラミンシアヌレート、層状珪酸塩、難燃剤、並びに、成形加工助剤として酸化防止剤及び/又は滑剤を含有する不燃性樹脂組成物が、極めて高い不燃性及び優れたカレンダ成形加工性を有し、かつ、得られる不燃性樹脂フィルムが耐候性及び透光性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の不燃性樹脂組成物は、酸素含有熱可塑性樹脂を含有する。
上記酸素含有熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0013】
上記酸素含有熱可塑性樹脂として、エチレン成分を有する共重合体を用いる場合、エチレンと共重合する物質に由来する成分、即ち、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル又はビニルアルコール等に由来する成分の含有量の好ましい下限は10重量%であり、好ましい上限は50重量%である。10重量%未満であると、不燃性樹脂組成物の不燃性が不充分となることがあり、50重量%を超えると、不燃性樹脂組成物の成形(製膜)が困難となったり、成形後のフィルムがブロッキングを起こしたりすることがある。より好ましい下限は10重量%であり、より好ましい上限は30重量%である。
【0014】
上記酸素含有熱可塑性樹脂は、酸素含有量の好ましい下限が3重量%であり、好ましい上限が20重量%である。3重量%未満であると、不燃性が不充分となることがあり、20重量%を超えると、不燃性樹脂組成物の成形が困難となったり、表面がべたついたりして、塵挨が付着する等の不具合を生じることがある。より好ましい下限は5重量%であり、より好ましい上限は15重量%である。
【0015】
上記酸素含有熱可塑性樹脂は、重量平均分子量の好ましい下限が5千、好ましい上限が500万である。より好ましい下限は2万、より好ましい上限は30万である。
また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)の好ましい下限は1.1であり、好ましい上限は80である。より好ましい下限は1.5であり、より好ましい上限は40である。
【0016】
本発明の不燃性樹脂組成物は、メラミンシアヌレートを含有する。
上記メラミンシアヌレートを含有することにより、燃焼時の高熱下で重合反応を生じ、焼結体が燃焼時の早い段階で形成され、外界からの酸素の供給のみならず、燃焼により発生する可燃性ガスを遮断することができるため、得られる不燃性樹脂フィルムの発熱速度を抑制し、優れた燃焼防止性能を発現することが可能となる。
【0017】
上記メラミンシアヌレートは、シリカ粒子によって表面処理されたものであることが好ましい。上記シリカ粒子による表面処理方法としては特に限定されず、例えば、シリカゾルによる処理、シリカスラリーによる処理等が挙げられるが、シリカゾルによる処理がより好ましい。シリカ粒子以外による表面処理では、樹脂、充填剤及び成形加工助剤等との相互作用により、樹脂が着色したり成形加工性が低下したりしてしまうことがある。
【0018】
上記メラミンシアヌレートの含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、下限が5重量部、上限は50重量部である。5重量部未満であると、不燃性の規格を満たせなくなる。50重量部を超えると、不燃性が充分に得られるものの、得られる不燃性樹脂フィルムの密度(比重)が高くなって、重量増加及び柔軟性低下により加工性や施工性が低下する。また、フィルムの透光性についても著しく低下してしまう。好ましい下限は10重量部、好ましい上限は40重量部である。
【0019】
本発明の不燃性樹脂組成物は、層状珪酸塩を含有する。
上記層状珪酸塩を含有することにより、焼結体が燃焼時の早い段階で形成され、外界からの酸素の供給のみならず、燃焼により発生する可燃性ガスを遮断することができるため、得られる不燃性樹脂フィルムの発熱速度を抑制し、優れた燃焼防止性能を発現することが可能となる。
【0020】
上記層状珪酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ(膨潤性雲母)等が挙げられる。なかでも、モンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカが好適に用いられる。これらの層状珪酸塩は、天然物であってもよいし、合成物であってもよい。また、これらの層状珪酸塩は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
上記層状珪酸塩として、モンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカを用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は3μmである。0.01μm未満であると、樹脂中に分散された粒子が再凝集を起こしやすくなり、得られる不燃性樹脂フィルムの透光性を低下させてしまうことがある。3μmを超えると、分散性が低下し、得られる不燃性樹脂フィルムの透光性が著しく低下してしまうことがある。
【0022】
上記層状珪酸塩としては、下記式(1)で定義される形状異方性の大きいスメクタイト系粘土鉱物、膨潤性マイカを用いることが好ましい。形状異方性の大きい層状珪酸塩を用いることにより、得られる不燃性樹脂フィルムはより優れた力学的物性を有するものとなる。
形状異方性=結晶表面(A)の面積/結晶側面(B)の面積 (1)
式中、結晶表面(A)は層表面を意味し、結晶側面(B)は層側面を意味する。
【0023】
上記層状珪酸塩の形状としては特に限定されず、平均長さが0.01〜3μm、厚みが0.001〜1μm、アスペクト比が20〜500であることが好ましい。より好ましくは、平均長さが0.05〜2μm、厚みが0.01〜0.5μm、アスペクト比が50〜200である。
【0024】
上記層状珪酸塩の含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、下限が0.1重量部、上限が50重量部である。0.1重量部未満であると、燃焼時に焼結体を形成しにくくなるので、不燃性が不充分となる。50重量部を超えると、不燃性樹脂組成物の密度(比重)が高くなって、重量増加及び柔軟性低下により加工性や施工性が低下する。好ましい下限は1重量部、好ましい上限は20重量部である。
【0025】
本発明の不燃性樹脂組成物は、難燃剤を含有する。
上記難燃剤としては、得られる不燃性樹脂フィルムに難燃性を付与しうるものであれば特に限定されず、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等の非ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。なかでも、金属水酸化物が好ましい。
【0026】
上記金属水酸化物としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びステアリン酸からなる群より選択される少なくとも1種によって表面処理された水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムが好適に用いられる。なかでも、シランカップリング剤処理が好適に用いられる。上記以外の表面処理剤を用いて表面処理を施した場合、樹脂、充填剤及び成形加工助剤等との相互作用により、樹脂が着色したり成形加工性が低下したりすることがある。
【0027】
上記金属水酸化物(表面処理金属水酸化物も含む)は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こすことにより、吸熱し、かつ、水分子を放出することで燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。また、2種類以上の金属水酸化物を併用することにより、各々が異なる温度で吸熱脱水反応を開始するので、より高い難燃効果を得ることができる。
本発明の不燃性樹脂組成物は、上記層状珪酸塩を含有しているので、上記金属水酸化物による難燃化効果が増大される。これは、層状珪酸塩の燃焼時の被膜形成による難燃化効果と金属水酸化物の吸熱脱水反応による難燃化効果とが協奏的に起こり、それぞれの難燃化効果が助長されることによる。
【0028】
上記金属水酸化物の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は10μmである。0.5μm未満であると、樹脂中に分散された粒子が再凝集を起こしやすくなり、得られる不燃性樹脂フィルムの透光性を低下させてしまうことがある。10μmを超えると、分散性が低下し、得られる不燃性樹脂フィルムの成形加工性及び透光性が著しく低下してしまうことがある。
【0029】
上記難燃剤の含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、下限が5重量部、上限が100重量部である。5重量部未満であると、不燃性が低下する。100重量部を超えると、不燃性は充分に得られるものの、得られる不燃性樹脂フィルムの密度(比重)が高くなって、重量増加及び柔軟性低下により加工性や施工性が低下する。好ましい下限は20重量部、好ましい上限は60重量部である。
【0030】
本発明の不燃性樹脂組成物は、成形加工助剤として酸化防止剤及び/又は滑剤を含有する。上記酸化防止剤及び/又は滑剤を含有することにより、成形加工性を向上させることができる。
【0031】
上記酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との混合物であって、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との配合重量比が1:6〜1:1であるものが好適に用いられる。配合重量比が上記範囲外であると、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との相乗効果が得られず、樹脂の熱劣化に伴う変色が発生する。
【0032】
上記リン系酸化防止剤としては、下記式(1)に示す環状有機リン化合物が好ましい、上記環状有機リン化合物としては、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10ホスファフェナンスレン−10−オキサイド;1−クロル(又はブロム、フルオル)、1,3−ジクロル(又はジブロム、ジフルオル)、1,3,7−トリクロル(又はトリブロム、トリフルオル)、1−メチル、1,3−ジメチル、1,3,7−トリメチル、1−tert−ブチル、3−tert−ブチル、1−シクロヘキシル、3−(α―メチルベンジル、1−フェニル、3−フェニル、1−(4−メチルフェニル)、3−シアノ、1−メチル−3−クロル(又はブロム)、1−メチル−3,7ージクロル(又はジブロム)、1,3,7−トリメチル−2,6−ジクロル(又はジブロム)、1−フェニル−3−クロル(又はブロム)、1−クロル(又はブロム)−3−ベンジル、1−クロル−3−ブロム、1,3−ジブロム−7−クロル等の置換基をビフェニル骨格上に有する下記式(1)の環状有機リン化合物が挙げられる。
【0033】
【化1】

式(1)中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール機、アラルキル基又はアルケニル基を表わし、m及びnは0又は1〜4の整数を表わす。
【0034】
上記フェノール系の酸化防止剤としては、下記式(2)に示される化合物が好ましい。(2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5―ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート)が用いられる。
これら以外の酸化防止剤を使用した場合、上記酸素含有熱可塑性樹脂中への酸化防止剤の分散性が低下し、部分的な熱劣化が生じることがある。
【0035】
【化2】

【0036】
上記滑剤としては、ステアリルアシッドホスフェートを用いることが好ましい。上記ステアリルアシッドホスフェートとしては、例えば、下記式(3)や下記式(4)に示す化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
上記酸化防止剤及び/又は滑剤の含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、下限が1重量部、上限が10重量部である。1重量部未満であると、樹脂の熱劣化により変色したり、樹脂が粘着性を帯び圧延ロールや押出スクリュー等の成形加工装置の金属表面に付着したりする。10重量部を超えると、成形加工性は向上するものの、有機成分量が増加するため不燃性能の規格を満たすことができなくなる。より好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0040】
本発明の不燃性樹脂組成物は、更に、難燃助剤を含有することが好ましい。
上記難燃助剤を含有することにより、得られる不燃性樹脂フィルムの酸素指数が向上し、最大発熱速度を大幅に低下させることができる。
【0041】
上記難燃助剤としては、例えば、シリコーン・アクリル複合ゴムが好適に用いられる。
上記シリコーン・アクリル複合ゴムは、活性基を有する酸素含有熱可塑性樹脂と燃焼時に反応してチャー形成(チャー化)を促進し、又は、ガラス状の無機化合物の被膜が形成されるときには、保護材として強固なものとなり、酸素含有熱可塑性樹脂の熱分解を抑制する。
【0042】
上記シリコーン・アクリル複合ゴムの含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。0.1重量部未満であると、得られる不燃性樹脂フィルムの酸素指数が充分に向上しなかったり、最大発熱速度が充分に低下しなかったりすることがある。20重量部を超えると、不燃性樹脂フィルムの密度(比重)が高くなったり、力学的強度等が低下したり、柔軟性が乏しくなったりすることがある。より好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0043】
本発明の不燃性樹脂組成物は、更に、耐候処方剤として紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有することが好ましい。上記紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有することにより、耐候性を向上させることができる。
【0044】
上記耐候処方剤の含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が2重量部である。0.1重量部未満であると、光劣化によりフィルムの変色や脆化が生じることがある。1重量部を超えると、耐候性は向上するものの、有機成分量が増加するため不燃性能の規格を満たすことができなくなることがある。より好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0045】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物を好適に用いることができる。
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては特に限定されず、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェノール)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2(2’ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−アクリロイルエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0046】
上記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物を好適に用いることができる。
上記ヒンダードアミン系化合物としては特に限定されず、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジルベンゾエート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)等が挙げられる。
【0047】
本発明の不燃性樹脂組成物は、更に、色相調整剤として蛍光増白剤及び/又は無機顔料を含有することが好ましい。上記蛍光増白剤及び/又は無機顔料を含有させることにより、色相を容易に調整することができる。
【0048】
上記無機顔料としては特に限定されず、例えば、酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、コバルトグリーン、群青、コバルトブルー等が挙げられる。なかでも、白色性を重視する場合においては、酸化チタンが好適に用いられる。
【0049】
上記蛍光増白剤又は無機顔料の含有量は、酸素含有熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。0.1重量部未満であると、充分な色相調整効果が得られないことがある。10重量部を超えると、色相調整効果は充分に得られるものの、不燃性樹脂組成物の成形性が低下したり、柔軟性が乏しくなったりすることがある。より好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0050】
また、本発明の不燃性樹脂組成物は、210℃、荷重2.16kgで測定したMFR(メルトマスフローレイト)の好ましい下限は0.5g/10min、好ましい上限は5g/10minである。0.5g/10min未満であると、流動性が悪化することから、例えば、得られるフィルムの中央と端部との間で厚みムラが生じることがある。5g/10minを超えると、流動性が良過ぎることで、一定厚みのフィルムを得ることが困難となることがある。
【0051】
上記不燃性樹脂フィルムは、カレンダ成形法によって成形されたものであることが好ましい。具体的には例えば、酸素含有熱可塑性樹脂、メラミンシアヌレート、層状珪酸塩、難燃剤、成形加工助剤及び必要に応じて難燃助剤、耐候処方剤、色相調整剤等の添加剤を含有する樹脂組成物を調製後、カレンダ成形法を用いて圧延加工することにより、不燃性樹脂フィルムを製造することが好ましい。上記カレンダ成形法を用いることで、フィルムの厚み精度及び生産性が向上させることができる。
【0052】
上記不燃性樹脂フィルムの製造に用いられる樹脂組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、原料を直接混練する直接混練法;酸素含有熱可塑性樹脂に所定配合量以上の層状珪酸塩、難燃剤、成形加工助剤、難燃助剤、色相調整剤等を混練してマスターバッチを調製した後、調製されたマスターバッチに各成分が所定配合量となるように酸素含有熱可塑性樹脂を配合して希釈するマスターバッチ法等が挙げられる。
【0053】
更に、上記カレンダ成形法によって不燃性樹脂組成物から成形されてなる不燃性樹脂フィルムにおいて、厚みの好ましい下限は50μm、好ましい上限は400μmである。50μm未満であると、フィルムの抗張力、引裂強度等の力学的強度が低下することがあり、400μmを超えると、有機成分重量が多くなり総発熱量が増加するため、不燃性能の規格を満たすことができないことがある。より好ましい下限は100μm、より好ましい上限は300μmである。
【0054】
上記カレンダ成形法によって不燃性樹脂フィルムを成形する際において、上記酸素含有熱可塑性樹脂の融点+50〜100℃に加熱した金属ロールを用いて、圧延工程を30分間行った場合、上記圧延工程の前後のフィルムの色差(ΔE)の好ましい上限は10である。上記色差が10を超えると、得られる不燃性樹脂フィルムに黄ばみを有するものとなり、外観が著しく損なわれることがある。
また、金属ロールの加熱温度が上記酸素含有熱可塑性樹脂の融点+50℃未満であると、樹脂の流動性が低いため一定厚みのフィルムを得ることが困難となり、+100℃を超えると樹脂の分解劣化が起こることがある。
【0055】
また、上記カレンダ成形法によって不燃性樹脂フィルムを成形する際において、上記酸素含有熱可塑性樹脂の融点+50〜100℃に加熱した金属ロールを用いて、圧延工程を30分間行った場合、金属ロール表面の反射率(R)の差の好ましい上限は10%である。上記金属ロール表面の反射率の差が10%を超えると、樹脂中に配合された充填剤、安定剤、添加剤等や、これらが酸化、分解、化合、劣化した生成物等が、金属ロール表面に付着又は滞積した状態(プレートアウト)であると考えられることから、樹脂のロール離型性が著しく低下し、所定厚みのフィルムをロールから取り出すことができないことがある。
【0056】
本発明の不燃性樹脂組成物を用いることによって得られる不燃性樹脂フィルムを、経糸密度及び緯糸密度が15〜45本/25mmであるガラスクロスの片面又は両面に積層することによって、不燃性樹脂フィルム積層体を得ることができる。このようにして得られる不燃性樹脂フィルム積層体もまた、本発明の1つである。
【0057】
上記ガラスクロスは、経糸密度及び緯糸密度の下限が15本/25mm、上限が45本/25mmである。15本/25mm未満であると、本発明の不燃性樹脂フィルム積層体の抗張力、引裂強度等の力学的強度が低下する。45本/25mmを超えると、透光性が低下する。
【0058】
上記ガラスクロスは、単繊維の直径の好ましい下限が3μm、好ましい上限が10μmである。3μm未満であると、耐候性、耐磨耗性及び抗張力等の力学的強度が低下することがある。10μmを超えると、透光性が低下し、内照式看板用のシート材等として用いた場合に意匠性、鮮明性が低下することがある。
【0059】
上記ガラスクロスの厚さの好ましい下限は100μm、好ましい上限は400μmである。100μm未満であると、機械強度が不足し、かつ、不燃性樹脂フィルム積層体の不燃性能が不充分となることがある。400μmを超えると柔軟性が低下することがある。
【0060】
上記ガラスクロスの重量の好ましい下限は150g/m、好ましい上限は350g/mである。150g/m未満であると、充分な柔軟性、抗張性等の力学的強度を得られないことがある。350g/mを超えると、重量が大きすぎて、施工性等が低下することがある。
【0061】
上記ガラスクロスとしては、難燃性能を向上させるために、表面をポリリン酸カルバメート等の難燃剤により処理したものを用いてもよい。上記ポリリン酸カルバメート等の難燃剤の塗工量としては特に限定されないが、好ましい下限は固形分として20g/m、上限は70g/mである。20g/m未満であると、難燃性が不充分となることがあり、70g/mを超えると、繊維自身が硬くなり、不燃性樹脂フィルム積層体として要求される柔軟性が低下することがある。
【0062】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体は、JIS K 7105に準ずる方法によって測定される全光線透過率の好ましい下限が15%である。15%未満であると、テント用の膜材や内照式電飾看板等の意匠性、鮮明性等が不充分となることがある。より好ましい下限は18%である。
【0063】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体は、ASTM E 1354に準拠した燃焼試験「建築材料の燃焼性試験方法」において、50kW/mの輻射加熱条件下で20分間加熱し燃焼したときの最大発熱速度が350kW/m以下であり、総発熱量が8MJ/m未満であり、200kW/mを超える発熱速度が10秒未満であることが好ましい。上記範囲外であると、充分な不燃性能を発現できないことがある。より好ましくは、上記最大発熱速度が300kW/m以下であり、上記総発熱量が7MJ/m以下であり、上記200kW/mを超える発熱速度が8秒以下である。
【0064】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体は、自己消火性を有していることが好ましい。自己消火性を有していないと、実用性が不充分となることがある。
【0065】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体を製造する方法としては、例えば、カレンダロール成形等により酸素含有熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び難燃剤を含有する不燃性樹脂フィルムを作製した後、加熱圧着ロールにより、不燃性樹脂フィルムとガラスクロスとを積層する方法(ラミネート法)等が挙げられる。
【0066】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体には、ガラスクロスと不燃性樹脂フィルムとの接着性を向上させるために必要に応じて、ガラスクロスに粘(接)着加工や表面加工処理を施していてもよい。なお、これらの処理は単独で行ってもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスクロスの片面に行ってもよく、両面に行ってもよい。
【0067】
上記粘(接)着加工を施すために用いられる粘(接)着剤としては、ガラスクロスと不燃性樹脂フィルムとの接着力に優れるものであれば、特に限定されず、例えば、エラストマー(ゴム)系粘(接)着剤、アクリル樹脂系粘(接)着剤、ポリビニルエーテル系粘(接)着剤、シリコーン系粘(接)着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘(接)着剤、エチレン−エチルアクリレート系粘(接)着剤、ウレタン系粘(接)着剤や、これらの粘(接)着剤からなる両面粘(接)着シート(両面粘(接)着テープ)等が挙げられる。これらの粘(接)着剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
上記表面処理加工を施すために用いられる表面処理剤としては、使用環境や用途に応じて適宜選択され、特に限定されず、例えば、撥水剤やシランカップリング剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0069】
上記撥水剤としては特に限定されず、例えば、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤が挙げられる。
上記フッ素系撥水剤としては、パーフロロアルキル基を有するものであればよく、例えば、AG-955(旭硝子株式会社製)、AG-970(旭硝子株式会社製)、ディックガードF-90(大日本インキ(株)製)等が挙げられる。また、シリコーン系撥水剤としては特に限定されず、例えば、ドライポン600(日華化学(株)製)、PolonT(信越化学工業社製)等が挙げられる。これらの撥水剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
上記撥水剤の含有量の好ましい下限は、ガラスクロスの基材重量に対し、固形分で0.01重量%、好ましい上限は10重量%である。上記範囲内とすることで、不燃性樹脂フィルムとガラスクロスとの充分な接着力のほかに、充分な耐水性を得ることができる。より好ましい下限は0.03重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0071】
上記シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトシキシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチレントリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体は、片面又は両面に保護層形成用樹脂からなる保護層が形成されていてもよい。
上記保護層形成用樹脂としては、特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル−ビニルアルコール三元共重合体等が挙げられる。これらの保護層形成用樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体の片面又は両面に保護層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、上記保護層形成用樹脂からなる保護シートを積層する方法や、上記保護層形成用樹脂(水)溶液をコーティングする方法等が挙げられる。
【0074】
本発明の不燃性樹脂フィルム積層体の用途としては特に限定されず、例えば、膜構造建築用膜材、テント倉庫用膜材、ファザード、フレコン、内照式電飾看板等が挙げられる。なかでも、高い透光性と不燃性が望まれている内照式電飾看板用として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
本発明を更に詳しく説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
小型押出機(「TEX30」、日本製鋼所社製)中に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(「A4250」、酸素含有量:8重量%、日本ポリオレフィン社製)100重量部、シリカ粒子により表面処理がされたメラミンシアヌレート(「MC−640」、日産化学工業社製)20重量部、膨潤性フッ素マイカ(「ソマシフME−100」、コープケミカル社製)10重量部、シランカップリング剤により処理された平均粒径0.5〜10μmの水酸化アルミニウム(「ハイジライトー42HSTV」、昭和電工社製)25重量部、酸化防止剤として上記式(1)の構造を有するリン系酸化防止剤(「HCA」、三光化学社製)0.2重量部及び上記式(2)の構造を有するフェノール系酸化防止剤(「スミライザーGS(F)」、住友化学社製)0.5重量部、滑剤としてステアリルアシッドホスフェート(「LBT−100」、堺化学社製)0.5重量部充填し、設定温度180℃にて溶融混練して押し出し、押し出されたストランドをペレタイザーにてペレット化した。次いで、得られたペレットを二本ミキシングロール成形機(「B010」、東洋精機製作所製)を用い、180℃に加熱した金属ロールによる圧延工程を30分間行うことによりシート状に成形し、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0077】
(実施例2)
水酸化アルミニウム(「ハイジライトー42HSTV」)の添加量を60重部とした以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0078】
(実施例3)
メラミンシアヌレート(「MC−640」)の添加量を5重部とした以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0079】
(実施例4)
メラミンシアヌレート(「MC−640」)の添加量を40重部とした以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0080】
(実施例5)
膨潤性フッ素マイカ「ソマシフME−100」10重量部の代わりに、モンモリロナイト(「ニューエスベンD」、豊順鉱業社製)10重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0081】
(実施例6)
水酸化アルミニウム(「ハイジライトー42HSTV」)25重量部の代わりに、平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム(「キスマ5J」、協和化学社製)25重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0082】
(実施例7)
膨潤性フッ素マイカ「ソマシフME−100」の添加量を1重量部とした以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0083】
(実施例8)
膨潤性フッ素マイカ「ソマシフME−100」の添加量を20重量部とした以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0084】
(比較例1)
メラミンシアヌレート「MC−640」を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0085】
(比較例2)
メラミンシアヌレート「MC−640」、膨潤性フッ素マイカ「ソマシフME−100」を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0086】
(比較例3)
水酸化アルミニウム(「ハイジライトー42HSTV」)25重量部の代わりにシランカップリング剤により表面処理された平均粒径65μmの水酸化アルミニウム(「B−30」、巴工業社製)25重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、不燃性樹脂フィルムを作製した。なお、得られた不燃性樹脂フィルムの厚みは400μmであった。
【0087】
(比較例4)
水酸化アルミニウム(「ハイジライトー42HSTV」)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0088】
(比較例5)
水酸化アルミニウム(「ハイジライトー42HSTV」)、膨潤性フッ素マイカ「ソマシフME−100」を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0089】
(比較例6)
メラミンシアヌレート「MC−640」25重量部に代えて、シリカ粒子による表面処理を施していないメラミンシアヌレート(「MC−610」、日産化学工業社製)25重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、不燃性樹脂フィルムを作製した。なお、得られた不燃性樹脂フィルムの厚みは450μmであった。
【0090】
(実施例9)
エチレン−アクリル酸エチル共重合体「A4250」100重量部の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(「ウルトラセン#634」、酸素含有量:6重量%、東ソー社製)100重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0091】
(実施例10)
酸化防止剤としてリン系酸化防止剤「HCA」の添加量を0.5重量部とした以外は実施例9と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0092】
(実施例11)
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤「スミライザーGS(F)」の添加量を1.2重量部とした以外は実施例9と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0093】
(比較例7)
エチレン−酢酸ビニル共重合体「ウルトラセン#634」100重量部の代わりにポリエチレン樹脂(「HB530」、日本ポリケム社製)100重量部を用いたこと以外は実施例9と同様にして、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製した。
【0094】
(比較例8)
酸化防止剤としてリン系酸化防止剤「HCA」0.2重量部に代えて、請求項10記載の構造(有機環状リン化合物)でないリン系酸化防止剤(「Irganx1222」、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.2重量部とした以外は実施例9と同様にして、不燃性樹脂フィルムを作製した。なお、得られた不燃性樹脂フィルムの厚みは400μmであった。
【0095】
(比較例9)
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤「スミライザーGS(F)」0.5重量部に代えて、請求項11記載の構造でないフェノール系酸化防止剤(「ADK STAB AO−80」、旭電化工業社製)0.5重量部とした以外は実施例9と同様にして、不燃性樹脂フィルムを作製した。なお、得られた不燃性樹脂フィルムの厚みは450μmであった。
【0096】
(比較例10)
酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤「スミライザーGS(F)」,リン系酸化防止剤「HCA」をそれぞれフェノール系酸化防止剤「ADK STAB AO−80」,リン系酸化防止「Irganx1222」とした以外は実施例9と同様にして、不燃性樹脂フィルムを作製した。なお、得られた不燃性樹脂フィルムの厚みは500μmであった。
【0097】
(比較例11)
滑剤としてステアリルアシッドホスフェート「LBT−100」を用いなかったこと以外は実施例9と同様にして、不燃性樹脂フィルムを作製した。なお、得られた不燃性樹脂フィルムの厚みは400μmであった。
【0098】
(評価)
実施例1〜11及び比較例1〜11で得られた不燃性樹脂フィルムについて、下記評価を行った。なお、厚み150μmの不燃性樹脂フィルムを作製できなかった比較例3、6、8〜11で得られた不燃性樹脂フィルムについては、透光性評価及び不燃性能評価を行わなかった。結果を表1、2に示す。
【0099】
(1)ロール成形加工性評価
実施例及び比較例において、不燃性樹脂フィルムを成形加工する際に以下の項目について評価をおこなった。
【0100】
(1−1)プレートアウト
圧延工程の前後における金属ロール表面の反射率(R)を金属反射率計(ウシオ電機社製、URE−30)を用いて測定し、プレートアウトの有無を以下の基準で評価した。
Rの差が10%を超える:プレートアウト有
Rの差が10%以下 :プレートアウト無
【0101】
(1−2)ロール離型性
圧延工程において、ロールから所定厚みのフィルムの取り出しが可能かどうかを以下の基準で評価した。
1点:400μm以上の厚みでもフィルムの取り出し不可
2点:400μm以上の厚みであれば何とかフィルムの取り出し可能
3点:400μm程度の厚みであればフィルムの取り出し可能
4点:200μm程度の厚みでもフィルムの取り出し可能
5点:200μm程度の厚みでも容易にフィルムの取り出し可能
【0102】
(1−3)変色
圧延工程の前後におけるフィルムの色差(ΔE)を色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)により測定した。なお、ΔEが5以下である場合、外観上特に問題ないものと考えられる。
【0103】
(1−4)MFR(メルトマスフローレイト)
用いられる樹脂組成物のMFR(メルトマスフローレイト)を、210℃、荷重2.16kgの条件で測定した。なお、MFRが0.5g/10min〜5g/10minの範囲外である場合、一定厚みのフィルムを得ることが困難となると考えられる。
【0104】
(2)全光線透過率
加熱圧着ロールを用いて経糸密度44本/25mm、緯糸密度33本/25mm、単繊維の直径9μm、撚り数0回/25mm、厚み180μmのガラスクロス(「KS2500」、カネボウ社製)の両面に、得られた不燃性樹脂フィルムを積層し、厚み400μmの不燃性樹脂フィルム積層体を作製した。
得られた不燃性樹脂フィルム積層体について、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性評価試験方法」に準拠して、不燃性樹脂フィルム積層体の全光線透過率(%)を測定した。
【0105】
(3)総発熱量、200kW/mを超える発熱時間
燃焼試験ASTM E 1354に準拠して、(2)で得られた不燃性樹脂フィルム積層体の試験片(99mm×99mm)にコーンカロリーメーターによって50kW/mの熱線を照射し燃焼させた。20分間加熱し燃焼させた後の総発熱量(MJ/m)及び200kW/mを超える発熱時間を測定した。
【0106】
(4)穴開き、亀裂の有無
(2)で得られた不燃性樹脂フィルム積層体を20分間加熱した後、裏面に貫通する穴、亀裂の有無を確認した。
○:裏面に貫通する穴、亀裂が無い。
×:裏面に貫通する穴、亀裂が有る。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
表1、2に示すように、実施例1〜11で得られた不燃性樹脂フィルムは金属ロールによる成形加工性(カレンダ成形加工性)に優れるものであることがわかる。また、ガラスクロスと積層することにより得られた不燃性樹脂フィルム積層体は不燃性能に優れ、全光線透過率が高いものであることがわかる。
一方、比較例1〜11で得られた不燃性樹脂フィルムは、金属ロールによる成形加工性(カレンダ成形加工性)が悪く、所定の厚み(150μm)に成形することが困難な場合があった。また、所定の厚みで成形できたものについても、ガラスクロスと積層することにより得られる不燃性樹脂フィルム積層体の不燃性能及び全光線透過率は低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、高い透光性及び不燃性を有し、かつ、耐候性、耐水性、耐摩耗性、柔軟性及び抗張力等の力学的強度にも優れる不燃性樹脂フィルムを得ることができる不燃性樹脂組成物及び不燃性樹脂フィルム積層体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有熱可塑性樹脂100重量部、メラミンシアヌレート5〜50重量部、層状珪酸塩0.1〜50重量部、難燃剤5〜100重量部、並びに、成形加工助剤として酸化防止剤及び/又は滑剤1〜10重量部を含有することを特徴とする不燃性樹脂組成物。
【請求項2】
210℃、荷重2.16kgで測定したMFR(メルトマスフローレイト)が0.5〜5g/10minであり、かつ、カレンダ成形法により厚みが50〜400μmの不燃性樹脂フィルムを成形することができ、前記カレンダ成形法において酸素含有熱可塑性樹脂の融点+50〜100℃に加熱した金属ロールを用いて圧延工程を30分間行った場合、前記圧延工程の前後の色差(ΔE)が10以下、前記金属ロール表面の反射率(R)の差が10%以下であることを特徴とする請求項1記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項3】
酸素含有熱可塑性樹脂は、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項4】
酸素含有熱可塑性樹脂は、酸素含有量が3〜20重量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項5】
メラミンシアヌレートは、シリカ粒子によって表面処理されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項6】
層状珪酸塩は、平均粒子径が0.01〜3μmのモンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項7】
難燃剤は、金属水酸化物であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項8】
金属水酸化物は、平均粒子径が0.5〜10μmであり、かつ、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びステアリン酸からなる群より選択される少なくとも1種によって表面処理された水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項7記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項9】
酸化防止剤は、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤の混合物であり、かつ、前記リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との配合重量比が1:6〜1:1であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項10】
リン系酸化防止剤は、下記式(1)に示す環状有機リン化合物であることを特徴とする請求項9記載の不燃性樹脂組成物。
【化1】

式(1)中、R及びRは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表わし、m及びnは0又は1〜4の整数を表わす。
【請求項11】
フェノール系酸化防止剤は、下記式(2)に示す化合物であることを特徴とする請求項9又は10記載の不燃性樹脂組成物。
【化2】

【請求項12】
滑剤は、ステアリルアシッドホスフェートであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項13】
更に、シリコーン・アクリル複合ゴムからなる難燃助剤0.1〜20重量部を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項14】
更に、耐候処方剤として紫外線吸収剤及び/又は光安定剤0.1〜2重量部を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項15】
紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物であることを特徴とする請求項14記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項16】
更に、色相調整剤として蛍光増白剤及び/又は無機顔料0.1〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15記載の不燃性樹脂組成物。
【請求項17】
経糸密度及び緯糸密度が15〜45本/25mmであるガラスクロスと、前記ガラスクロスの片面又は両面に積層された請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の不燃性樹脂組成物とからなることを特徴とする不燃性樹脂フィルム積層体。
【請求項18】
JIS K 7105に準ずる方法により測定される全光線透過率が15%以上であることを特徴とする請求項17記載の不燃性樹脂フィルム積層体。
【請求項19】
ASTM E 1354に準拠した燃焼試験において、50kW/mの輻射加熱条件下で20分間加熱し燃焼した時の最大発熱速度が350kW/m以下であり、総発熱量が8MJ/m未満、200kW/mを超える発熱速度が10秒未満であることを特徴とする請求項17又は18記載の不燃性樹脂フィルム積層体。

【公開番号】特開2007−16192(P2007−16192A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202095(P2005−202095)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】