説明

不純物分析方法及び装置

【課題】超純水や工程水等に含まれる不純物の濃度を高精度でかつ連続的に分析することを可能にする。
【解決手段】測定対象たる液体の一部が所定のラインから吸光分析部2cに導入される。この液体に対して励起光照射系10から励起光Leが照射されるとともに、その照射によって液体中の不純物の光熱効果が生ずる測定対象領域ASに対し、測定光照射系20から測定光Lmが照射される。この測定光Lmの位相変化が所定の光学系及び光検出器36によって検出され、この位相変化に基づいて前記液体中の不純物濃度が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれる不純物の濃度を分析するための方法および装置に関するものであり、特に、電子工業用途や医薬品用途などに用いられる極めて純度の高い超純水や工程水中の不純物の濃度の分析に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体工場や発電所等の産業設備において超純水や工程水といったきわめて純度の高い液体が用いられる場合、その液体の純度管理、換言すれば、不純物濃度の監視が肝要となる。
【0003】
従来、このような不純物濃度の分析を行うための方法として、特許文献1に開示されるような吸光分析を用いた方法が知られている。この方法は、超純水または工程水のラインを流れる液体の一部を当該ラインから分岐させて多孔質膜に通し、この多孔質膜によって濃縮状態で捕捉された不純物の量を表面分析装置によって測定するものである。
【特許文献1】特開2001−153855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載される方法は、表面分析装置を用いるものであるため、前記多孔質膜には高い濃縮度が求められる。従って、この多孔質膜を含めた高価な設備を要する。さらに、前記濃縮に要する時間や多孔質膜の交換作業等は分析効率を低下させる。また、この方法で分析精度を飛躍的に高めることは難しい。
【0005】
その一方、前記不純物の分析については、これをオンラインで(すなわち前記超純水等のラインを止めることなく)実行することが求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、超純水や工程水等に含まれる不純物の濃度を効率よく高精度で分析することができる方法及び装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、所定のラインを流れる液体の中に含まれる不純物を測定するための方法であって、前記ラインを流れる液体の一部をこのラインから分岐させて予め設けられたサンプリング部に導入する操作と、前記サンプリング部に導入された液体に対し、測定対象である前記不純物の光吸収特性に合致した波長の励起光を照射する操作と、前記液体において前記励起光の照射により前記不純物の光熱効果が生ずる測定対象領域に対し、この励起光とは別の測定光を照射する操作と、前記測定対象領域を透過する前記測定光の位相変化を検出する操作と、前記検出の結果に基づいて前記液体中の不純物濃度を算出する操作とを含むものである。
【0008】
また本発明は、所定のラインを流れる液体の中に含まれる不純物を測定するための装置であって、前記ラインから分岐し、このラインを流れる前記液体の一部が導入されるサンプリング部と、前記サンプリング部に導入される液体に対して励起光を照射する励起光照射系と、前記液体において前記励起光の照射により前記不純物の光熱効果が生ずる測定対象領域に対し、この励起光とは別の測定光を照射する測定光照射系と、前記測定対象領域を透過する前記測定光の位相変化を検出する位相変化検出装置と、前記位相変化検出装置の検出信号に基づいて前記液体中の不純物濃度についての測定信号を出力する信号処理装置とを備えたものである。
【0009】
これらの方法及び装置では、所定のラインを流れる液体の一部がサンプリング部に導入され、この液体に対して励起光が照射される。この励起光は、前記液体中の不純物に光熱効果を生じさせる。そして、この光熱効果を奏する測定対象領域に前記励起光とは別の測定光が照射されるとともに、この測定光の屈折率が前記光熱効果によって変化する。この屈折率の変化は前記測定光の位相の変化を生じさせるので、この測定光の位相変化の検出結果に基づき、前記光熱効果の度合い、すなわち前記励起光の吸光度を把握することが可能であり、結果として、前記液体中に含まれる不純物の重量さらにはその液体中の濃度を測定することができる。
【0010】
従って、前記方法及び装置では、既述の従来技術と違って程度の高い濃縮処理は不要であり、前記液体中の不純物濃度を効率よく高精度で分析することが可能である。しかも、前記ラインでの液体の流通を止めることなく、その不純物の分析をオンラインで行うことができる。
【0011】
なお、本発明は前記励起光及び測定光の照射の前に前記液体を濃縮する処理を行うものを除外する趣旨ではない。しかし、当該濃縮処理を行う場合でも、その処理は従来の表面分析装置を用いる方法と異なって簡易なもので十分である。また、その濃縮処理によって分析精度はさらに向上する。
【0012】
前記方法において、測定対象となる前記不純物が金属または金属イオンを含む場合、前記励起光を照射する前に、前記ラインから分岐した液体中に前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬を混合する操作を含み、前記励起光としては前記錯体が吸収可能な波長の光を照射するのが、より好ましい。これにより、前記不純物が金属または金属イオンを含む場合にも本発明に係る分析を行うことが可能である。
【0013】
前記金属または金属イオンからなる不純物は、それ自体に紫外領域、可視領域、及び赤外領域のいずれの領域の波長についても光吸収特性を有しない場合があり、その場合、当該不純物のままでは光熱効果の発生が期待できない。しかし、この不純物に前記試薬が添加されて両者が化学反応することにより、前記励起光を吸収する特性を持つ錯体が生成されるため、この錯体による光吸収及び光熱効果を得ることが可能である。そして、この光熱効果を利用して前記不純物の濃度を測定することができる。
【0014】
また、本発明に係る方法において、前記ラインから分岐した液体を前記サンプリング部の特定部分に所定の流量で流し、この特定部分を流れる液体に対して前記励起光を照射することにより、前記不純物の濃度をリアルタイムで連続的に監視することが可能である。この方法では、前記不純物濃度は、前記検出の結果から求められる前記液体中の不純物の重量と前記液体の流量とに基づいて算出される。
【0015】
その場合であっても、上述の試薬の利用によって金属または金属イオンを含む不純物の分析を行うことが可能である。具体的には、前記励起光を照射する操作の前に、前記特定部分を流れる液体中に前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬を当該液体の流量に対応する流量で添加し混合し、前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射し、前記検出の結果から求められる前記液体中の不純物の重量と前記液体の流量及び前記試薬の添加流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出するようにすればよい。
【0016】
一方、前記装置において、金属または金属イオンを含む不純物を分析する場合には、前記サンプリング部が、前記励起光及び前記測定光の照射が行われる吸光分析部と、この吸光分析部の上流側に設けられ、前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬が前記液体中に添加されて混合される着色部とを含み、前記励起光照射系は、前記着色部から前記吸光分析部に導入される液体に対し前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射するものであればよい。
【0017】
また、前記装置において、前記サンプリング部が、前記ラインにつながる分岐配管と、この分岐配管を流れる前記液体の流量を特定の流量に調節する流量調節部とを含み、前記励起光照射系が、前記分岐配管の特定部分を流れる液体に対して前記励起光を照射するものであり、前記信号処理装置が、前記検出の結果から求められる前記液体中の不純物の重量と前記流量調節部により調節される前記液体の流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出するものであれば、前記不純物の濃度をリアルタイムで連続的に監視することが可能である。
【0018】
そして、この装置において金属または金属イオンを含む不純物を分析する場合には、前記分岐配管は、この分岐配管内を流れる液体に対して前記励起光及び前記測定光の照射が行われる吸光分析部と、この吸光分析部よりも上流側に位置する着色部とを含み、前記着色部には、前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬を当該液体の流量に対応する流量で添加し混合する試薬添加部が接続され、前記励起光照射系は、前記吸光分析部を流れる液体に対し前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射するものであり、前記信号処理装置は、前記検出の結果から求められる前記液体中の不純物の重量と前記液体の流量及び前記試薬の添加流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出する構成であればよい。
【0019】
本発明に係る装置では、前記励起光照射系が前記励起光として周期的に強度変調された光を照射し、前記信号処理装置が、前記強度変調の周期と同期するタイミングで前記位相変化検出装置の検出信号を取り込むものが、好適である。
【0020】
この装置では、前記励起光の強度変調と同じ周期で前記検出信号が変化するので、その周期と同期するタイミングで前記検出信号を取り込むことが、前記励起光の周波数成分を有しないノイズの影響を除去しつつ前記の位相変化(すなわち屈折率変化)のみを測定することを可能にする。このことは、前記位相変化の測定のS/N比を向上させる。
【0021】
前記位相変化検出装置としては、前記測定光から参照光を分光してこの参照光と前記測定対象領域を透過する測定光とを干渉させる分光用光学系と、その干渉した光の強度を検出する光検出器とを含むものが好適である。また、前記測定対象領域を挟んでその両側の位置に相対向する姿勢でそれぞれ配置された光反射部と、光検出器とを含み、前記各光反射部は、前記測定対象領域を透過する測定光の一部を相手方の光反射部に反射させることにより当該測定光を往復させ、前記光検出器は前記光反射部のうちの少なくとも一方の光反射部を前記測定対象領域と反対の側に透過した測定光を受光してその強度を検出するものも好適である。この装置は、前記光反射部間の測定光の多重反射を利用した精度の高い不純物分析を実現し得る。
【0022】
さらに、この後者の分析装置における位相変化検出装置は、前記両光反射部間で往復する光の共振状態を保つ方向に当該光反射部間の距離を調節する距離調節機構を含むことが、より好ましい。この距離調節機構による前記光反射部間の距離の調節は、当該光反射部間で往復する光の共振状態を保ち、これによって位相変化の測定精度を効果的に高める。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明は、超純水や工程水等に含まれる不純物の濃度を効率よく高精度で分析することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第1の実施の形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この実施の形態に係る不純物分析装置の全体構成を示す。この装置は、所定のライン1を流通する液体(例えば超純水や工程水)に含まれる不純物を分析するためのものであり、前記ライン1から分岐する分岐配管2と、この分岐配管2の末端につながるタンク3とを備える。そして、前記分岐配管2は、その上流側から順に、導入部2a、着色部2b、及び吸光分析部2cを有する。
【0026】
前記導入部2aには、メインバルブ4及び流量調節部5が設けられている。前記メインバルブ4は、前記分岐配管2内への前記液体の導入のオンオフを切換えるために開閉操作される。前記流量調節部5は、前記分岐配管2に流れる前記液体の流量を調節する。
【0027】
具体的に、前記流量調節部5は、電気制御部を含むバルブ装置5aと、流量計5bと、タイマ5cとを備える。前記流量計5bは、前記バルブ装置5aの下流側の液体流量を計測する。前記タイマ5cは、予め設定された時間間隔をおいて周期的に一定時間だけ(例えば1時間のうち1分間だけ)指令信号を前記バルブ装置5aに入力する。このバルブ装置5aは、前記タイマ5cから指令信号を受けた時にのみ開弁すると同時に、その目標開度を前記流量計5bからの計測信号に基づいて演算し、その目標開度だけ開弁する。この目標開度は、前記流量計5bにより計測される液体流量を予め設定された目標流量に近づけるように演算される。
【0028】
前記着色部2bには、試薬添加部6が接続される。この試薬添加部6は、前記不純物が光吸収特性を有しない金属または金属イオンを含む場合に、その分析を可能にするための試薬を前記着色部2b内の液体に添加するためのものである。この試薬には、前記金属または金属イオンからなる不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成するものが使用される。
【0029】
前記試薬添加部6は、前記試薬を貯留する試薬タンク6aと、電気制御部を含むバルブ装置6bと、流量計6cとを有する。バルブ装置6bは、前記試薬タンク6aと前記着色部2bとの間に介在し、当該試薬タンク6aから当該着色部2bに供給される試薬の流量を調節する。前記流量計6cは、前記バルブ装置6bの下流側の試薬流量を計測する。バルブ装置6bは、前記流量計5cが計測する液体流量に基づいて目標試薬添加流量を演算し、さらに、この目標試薬添加流量に前記流量計6cが計測する試薬添加流量を近づけるための目標開度を演算して、その目標開度だけ開弁する。
【0030】
前記着色部2b及び試薬添加部6は、不純物の種類によっては適宜省略可能である。例えば、分析対象となる不純物が紫外域に吸収のある有機分子類などのみからなる場合、特に着色操作は要しない。また、用いられる試薬の種類も前記不純物の種類によって適宜選定される。例えば、前記不純物がFe(II)である場合、前記試薬としてはニトロソフェノール類試薬が好適である。このニトロソフェノール類試薬は、前記Fe(II)と反応することにより、700〜800nmの吸収波長領域をもつ錯体イオンを生成する。
【0031】
前記着色部2bの上流側及び下流側にはそれぞれ逆止弁7が設けられる。換言すれば、両逆止弁7に挟まれた部分が前記着色部2bに該当する。前記両逆止弁7のうち上流側の逆止弁7は、着色部2b内の液体や試薬が前記導入部2a側に逆流するのを防ぎ、下流側の逆止弁7は、後述の吸光分析部2c内の液体が着色部2b側に逆流するのを防ぐ。
【0032】
前記吸光分析部2cは、前記着色部2bの下流側に設けられ、図例では直線状の配管部分により構成されている。この吸光分析部2cの管壁の特定部位は、図2に示すように、後に詳述する励起光Le及び測定光Lmを透過する特性をもつ材料により光学的な入射窓8A及び出射窓8Bとして構成される。そして、この吸光分析部2cの近傍に吸光分析用の設備が配置される。この設備は、励起光照射系10と、測定光照射系20と、光検出器36及び信号処理装置50とを含んでいる。
【0033】
前記励起光照射系10は、前記吸光分析部2cを流れる液体に対して前記入射窓8Aから励起光Leを特定方向(図2に示す例では斜め方向)から照射するためのものであり、励起光源12と、変調機構14とを備える。
【0034】
前記励起光源12には、例えば白色光を出力するキセノンランプや紫外光を出力する水銀ランプが好適に使用される。その波長には、前記不純物または前記着色部2bにおいて生成された錯体が吸収することができる波長が選定される。この励起光源12が発する光は図略の分光機構で分光され、前記変調機構14に入射される。この変調機構14は、例えばチョッパからなり、前記光の強度を周期的に変調させることによって後述の吸光分析に好適な励起光Leを生成する。
【0035】
前記測定光照射系20は、前記不純物または錯体が前記励起光Leを吸収することによる光電効果が生ずる測定対象領域ASに対し、その光電効果による屈折率の変化を測定するための測定光Lmを照射するものである。
【0036】
この測定光照射系20は測定光源22を有する。この測定光源22には、例えば出力1mWのHe−Neレーザ発生器が使用される。この測定光源22が発する光は、まずλ/2波長板23を通り、このλ/2波長板23は前記光の偏光面を調節する。その調節後の光は偏光ビームスプリッタ24に入射される。この偏光ビームスプリッタ24は、前記光を互いに直交する2つの偏光、具体的には参照光Lrと測定光Lmとに分光する。
【0037】
前記参照光Lrは、音響光学変調器25Aによって光周波数のシフト(周波数変換)を受けた後、ミラー26Aで反射して偏光ビームスプリッタ28に入力される。また、前記測定光Lmは、音響光学変調器25Bによって光周波数のシフト(周波数変換)を受けた後、ミラー26Bで反射して前記偏光ビームスプリッタ28に入力される。このスプリッタ28で前記参照光Lrと前記測定光Lmとが合成され、その合成光が偏向ビームスプリッタ30に導かれる。
【0038】
この偏向ビームスプリッタ30は、前記測定光Lmを前記吸光分析部2c側に90°反射させる一方、前記参照光Lrはそのまま透過させる。この参照光Lrは、1/4波長板37を通ってからミラー38で180°反射し、再び前記1/4波長板37を通って前記偏光ビームスプリッタ30に戻る。その際、前記1/4波長板37は前記参照光Lrの偏光面を合計にして90°回転させる。従って、この参照光Lrは前記偏光ビームスプリッタ30で今度は前記吸光分析部2cと反対の側に90°反射する。そして、偏光板35を通じて前記光検出器36に入力される。
【0039】
前記偏光ビームスプリッタ30で90°反射した測定光Lmは、1/4波長板32、集光レンズ33、さらには前記吸光分析部2cの入射窓8Aを通じて前記測定対象領域ASに入射される。この測定光Lmは前記測定対象領域ASさらにはその裏側の出射窓8Bを透過してミラー34で180°反射し、もう一度前記測定対象領域ASを透過し、前記1/4波長板32を通じて前記偏光ビームスプリッタ30に戻る。このとき、前記測定光Lmは前記1/4波長板32を往復通過するので、その偏光面は90°回転する。この偏向面の回転操作を受けた測定光Lmは前記偏光ビームスプリッタ30をそのまま透過して前記参照光Lrと合流し、前記偏光板35および前記光検出器36へと向かう。
【0040】
ここで、前記入射窓8A及び出射窓8Bは、それぞれ前記各光の透過を許容し得る材質及び大きさをもつ。前記材質としては、例えば石英やPDMS(ポリジメチルシロキサン)が好適である。
【0041】
前記偏光板35では、前記参照光Lrと前記測定光Lmとが互いに干渉し、その干渉光の光強度を前記光検出器36が電気信号(検出信号)に変換する。すなわち、前記測定光照射系20は、前記測定光源22から発せられる光を前記測定光Lmと前記参照光Lrとに分光してこの参照光Lrと前記測定対象領域ASを透過する測定光Lmとを干渉させる分光用光学系を含んでおり、この分光用光学系と前記光検出器36とが位相変化検出装置を構成する。
【0042】
前記光検出器36の検出信号は前記信号処理装置40に入力される。この信号処理装置40は、前記検出信号を前記変調機構14の変調操作の周期と同期するタイミングで取り込む。すなわち、周期的にサンプリングする。
【0043】
前記信号処理装置40は、サンプリングした前記検出信号に基づいき、前記測定光Lmの位相変化、すなわち、当該測定光Lmが前記液体を通過したことによる位相の変化を演算する。さらに、この信号処理装置40は、前記位相変化の時間的変化に関するデータを作成し、かつ、後述のように、当該データに基づいて屈折率の変化さらには前記液体内における不純物の濃度を自動的に演算する。その原理は次のとおりである。
【0044】
前記干渉光の強度S1は、次の(1)式で表される。
【0045】
S1=C1+C2・cos(2π・fb・t+φ) …(1)
この式において、C1、C2は前記偏光ビームスプリッタ等の光学系や液体の透過率により定まる定数、φは前記参照光Lrの光路長と前記測定光Lmの光路長との差による位相差、fbは前記参照光Lrと前記測定光Lmの周波数差である。この(1)式は、前記干渉光強度S1の変化(すなわち前記励起光Leが照射されないとき若しくはその光強度が小さいときとその光強度が大きいときとの差)から前記位相差φの変化が求まることを示している。
【0046】
前記励起光Leの強度が変調機構14の変調操作(例えばチョッパの回転)により周波数fで周期的に変調されていると、液体の屈折率及び測定光Lmの光路長がそれぞれ前記周波数fで変化する。その一方、前記参照光Lrの光路長は一定なので、前記位相差φも周波数fで変化する。従って、この位相差φの変化を前記周波数fの成分(前記励起信号の強度変調周期と同周期成分)について測定(算出)すべく前記検出信号のサンプリングのタイミングを前記変調操作に同期させることが、周波数fの成分を有しないノイズの影響を除去しつつ液体の屈折率変化のみを測定することを可能にする。この測定は、前記位相差φの測定のS/N比を向上させる。
【0047】
なお、前記励起光源12がレーザダイオードやLEDである場合、その励起光源12の電源を電気回路でコントロールすることにより前記変調を行うことも可能である。
【0048】
また、前記励起光Leの光軸の方向は適宜設定可能である。例えば、図3に示すようなダイクロイックミラー44の利用により、励起光Leと測定光Lmを同軸にしてこれらを前記吸光分析部2cにおける液体の流れ方向に沿って照射することも可能である。前記ダイクロイックミラー44は、前記励起光Leはそのまま透過させ、前記測定光Lmは90°反射させる特性を有する。この特性は、前記各照射系10,20からの励起光Leの発射方向と前記測定光Lmの発射方向が90°異なる場合にも両光Le,Lmの光軸を同一にすることを可能にし、この同軸照射は、前記液体の流れ方向に沿う照射を可能にする。この照射は、前記吸光分析部2c内での測定光路長(測定対象領域ASの長さ)を延ばし、分析精度をより向上させる。この照射のためには、前記吸光分析部2cの上流端及び下流端のうちの一方に前記入射側光学窓8Aが、他方に出射側光学窓8Bが設けられる。
【0049】
次に、前記図1及び図2に示される不純物分析装置において実行される不純物分析方法を説明する。
【0050】
図1において、メインバルブ4が開弁されることにより、ライン1を流れる液体の一部が分岐配管2内に流れ込む。この開弁は、手動で行われてもよいし、スイッチのオンオフに連動した自動開閉装置により行われてもよい。
【0051】
前記分岐配管2内に流れ込む液体の流量は、流量調節部5により調節される。具体的に当該流量調節部5のバルブ装置5bは、タイマ5cの指令信号に基づき、周期的に一定時間だけ前記液体の流通を許容し、かつ、その流量を目標流量に調節する。この調節は、下流側の着色部2b及び吸光分析部2cでの前記液体の流量を安定化させる。
【0052】
前記着色部2bでは、この着色部2bを流れる液体に対して試薬添加部6から試薬が添加される。この試薬の添加流量は、バルブ装置6bの作用により、前記液体の流量に見合った流量に調節される。前記試薬は、前記着色部2b内で前記液体と混合されることにより、当該液体中の不純物である金属または金属イオンと化学反応して吸光分析に適した錯体、すなわち、特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する。この錯体の生成は、前記不純物に金属または金属イオンが含まれる場合にもその吸光分析を可能にする。
【0053】
なお、この実施の形態は、前記着色部2b内を流れる液体に対して試薬が添加されるものであるが、本発明に係る着色部は前記液体を一旦静止状態で貯留するものであってもよい。このような静止状態での着色操作は、例えば前記各逆止弁7の代わりに開閉弁を用いてこれらの開閉弁を閉じることにより、実現可能である。その場合、前記各開閉弁の閉弁は、前記試薬の添加が開始されてから予め決められた反応時間だけ維持される。この反応時間の経過後に下流側の開閉弁が開弁され、前記試薬の添加により生成された錯体を含む液体が次の吸光分析部2cに導入される。前記反応を促進させる手段として、その反応領域の温度をヒータ等によって調節することや、攪拌翼の回転駆動によって液体と試薬の混合を促すことが有効である。
【0054】
前記吸光分析部2cでは、この吸光分析部2cを流れる液体に対して図2に示す励起光照射系10から励起光Leが照射される。この励起光Leの波長は、前記錯体が吸収可能な波長である。従って、この励起光Leは前記液体中の前記錯体の量に応じた度合いで吸収される。すなわち、前記錯体は前記励起光Leを吸収し、この吸収によって光熱効果を発揮する。
【0055】
その一方、前記光熱効果が生ずる測定対象領域ASに対して前記測定光照射系20から測定光Lmが照射される。この測定光Lmは、前記測定対象領域ASを透過し、ミラー34で上向きに反射されて前記測定対象領域ASをさらに透過する。この測定対象領域ASでは、前記光熱効果による発熱の量に応じて屈折率が変わり、該屈折率に応じて前記位相差φが変わるので、前記測定光照射系20に戻る測定光Lmとこの測定光照射系20における前記参照光Lrとの干渉光強度が前記光熱効果による発熱の量に応じて変わる。この干渉光強度に対応する検出信号が前記測定光照射系20の光検出器36により生成され、信号処理装置40に入力される。
【0056】
この信号処理装置40は、前記検出信号を前記変調機構14の変調操作と同期するサンプリング周期で取り込む。そして、この検出信号に基づき、前記光熱効果に起因する液体の屈折率の変化を算出する。この屈折率の変化は、前記液体中に含まれる錯体の吸光度、ひいては元の不純物の量に対応する。従って、この屈折率の変化と、前記液体の流量、および前記試薬の添加流量とに基づいて、単位体積あたりの液体(溶媒)中に含まれる不純物の重量、すなわち不純物濃度を算出することが可能である。信号処理装置40は、このような不純物濃度についての測定信号を作成し、図略の表示装置や記憶装置、あるいは必要に応じて操業オペレータのための警告装置に出力する。
【0057】
なお、前記検出信号から不純物の重量への換算は、例えば予め用意された検量線の利用により行われ得る。この検量線は、吸光度及び濃度が既知であるサンプルについて前記の吸光分析を行い、その測定信号と前記吸光度との関係を調べることにより、得ることが可能である。
【0058】
この装置では、前記励起光Leの強度変調と同じ周期で前記液体の屈折率及びその検出信号が変化するので、その周期と同期するタイミングで前記信号処理装置40が前記検出信号を取り込むことにより、前記励起光の周波数成分を有しないノイズの影響を除去しつつ液体の屈折率変化のみを測定することが可能になる。このことは、前記位相変化の測定のS/N比を向上させる。
【0059】
以上示した不純物分析方法では、ライン1を流れる液体の一部が、サンプリング部を構成する分岐配管2内に導入され、この導入された液体に対する励起光Le及び照射光Lmの照射によって行われるので、前記ライン1を止めることなくオンラインでしかも高精度で分析を行うことが可能である。しかも、従来のように表面分析装置を利用する方法と異なり、前処理として特に程度の高い濃縮処理を行う必要がないため、前記分析は効率よくしかも簡素な構成で行われる。
【0060】
特に、前記分岐配管2を流れる液体に対して前記各光Le,Lmの照射や前記試薬の添加をする方法は、リアルタイムでの連続的な分析を可能にする。このような連続的な分析は、既述の従来方法、すなわち、多孔質膜により一旦濃縮処理(すなわちバッチ処理)をしなければならない方法では実現され得ない。
【0061】
ただし、このことは、本発明が、前記ライン1から分岐した液体を一旦貯留して静止状態で前記吸光分析や着色処理を行う実施形態を除外することを意味するものではない。
【0062】
また、本発明では、前記励起光及び測定光の照射の前に前記液体を濃縮する処理を行う態様も除外されない。この濃縮処理を行う場合でも、その処理は従来の表面分析装置を用いる方法と異なって簡易なもので十分である。また、その濃縮処理によって分析精度はさらに向上する。
【0063】
次に、第2の実施の形態に係る不純物分析装置の吸光分析設備を図4に基づいて説明する。なお、同図において前記図2に示した構成要素と同等の要素には共通の参照符を付してその説明を省略する。
【0064】
この第2の実施の形態において、励起光照射系10の構成は前記第1の実施の形態と全く同様である。これに対し、前記測定光照射系20は、前記測定光源22の他、ビームスプリッタ50、一対の光反射部である高反射ミラー52A,52B、及び距離調節機構54を備える。
【0065】
前記高反射ミラー52A,52Bは、前記励起光Leが入射される測定対象領域ASを挟んで相対向する位置に配される。これらの高反射ミラー52A,52Bは、それぞれ、入射された光(測定光Lm)の大部分を反射してごく一部の光のみを透過させる特性を有する。
【0066】
前記距離調節機構54は、前記両高反射ミラー52A,52Bの間隔を自動調節するものであり、光検出器55と、変位制御装置56と、ミラー変位機構57とを備える。
【0067】
前記ミラー変位機構57は、前記変位制御装置56から入力される制御信号に応じて前記高反射ミラー52A,52Bのうちの高反射ミラー52Bを両ミラー52A,52Bが接離する方向に変位させる。前記光検出器55は、前記高反射ミラー52Bを前記測定対象領域ASと反対の側に透過する測定光Lmの強度を検出する。前記変位制御装置56は,前記光検出器55の検出信号に基づき、当該検出信号の変動を抑える方向(つまりは前記両高反射ミラー52A,52間を往復する光の共振状態を保つ方向)に前記高反射ミラー52Bを変位させるための制御信号を作成し、前記ミラー変位機構57に入力する。
【0068】
この距離調節機構54による両高反射ミラー52A,52Bの間隔の調整は、前記共振状態の維持によって前記位相変化の測定精度を向上させる。
【0069】
以上説明した吸光分析部による測定の原理は次のとおりである。
【0070】
前記測定光源22から出力される光(測定光Lm)は、ビームスプリッタ50で90°反射し、前記高反射ミラー52Aに至る。この高反射ミラー52Aは、前記測定光Lmの大部分を反射させるがごく一部の透過を許容する。この透過した一部の測定光Lmはさらに測定対象領域ASを透過して反対側の高反射ミラー52Bに入射される。この高反射ミラー52Bも、前記高反射ミラー52Aと同様に、入射される測定光Lmの大部分を反射させるがごく一部の測定光Lmのみを透過させる。
【0071】
従って、前記測定光Lmの一部は前記測定対象領域ASを繰返し透過しながら両高反射ミラー52A,52B間で多重反射し、その反射ごとにごく一部の測定光Lmが両高反射ミラー52A,52Bの外側に漏れ出る。このうち、前記高反射ミラー52Aから前記測定対象領域ASと反対の側に透過した光は、前記ミラー52A,52B相互間での往復回数が各々異なる光が重畳されたものとなる。この光は,さらに、前記高反射ミラー52Aでビームスプリッタ50側に反射した光と重畳された反射側測定光L1となり,そのまま当該ビームスプリッタ50を透過して光検出器58に入力される。
【0072】
この光検出器58は、入力された前記反射側測定光L1の強度に対応する検出信号を信号処理装置60に入力する。この信号処理装置60は、前記第1の実施の形態に係る信号処理装置40と同様、変調機構14の変調操作と同期するタイミングで前記検出信号を取り込み、この検出信号に基づいて前記測定光Lmの位相変化、さらには屈折率変化から不純物純度の演算を行う。
【0073】
具体的に、その演算原理は次のとおりである。前記反射側測定光L1は,既述のように、前記高反射ミラー52A,52B相互間での往復回数が各々異なる測定光が重畳されたものであるから、そのミラー間光路長Lがn・λ/2(nは正の整数,λは2つのミラー間における測定光の波長)に合致するときは前記多重反射測定光各々の位相が同期して強調し合い(すなわち共振し)、その光強度P2が最大強度P2maxとなる。これに対し、前記ミラー間光路長Lがn・λ/2から外れると、ミラー間の往復回数が多い前記多重反射測定光ほど位相が大きくずれることになる結果,わずかな光路長Lの変化でも前記透過側測定光L2の強度が大きく低下する。
【0074】
ここで、前記高反射ミラー52A,52Bの各々の反射率をR(R=0〜1),L=n・λ/2の関係を満たす前記ミラー間光路長をLn(=n・λ/2)とすると,前記ミラー間の光路長をLnとしたときに,その光路長Lnを中心として前記透過側測定光L2の強度P2に変化を生じさせる光路長の範囲ΔL(以下,光路長レンジという)は,次の(1)式で表される。
【0075】
ΔL=Ln/F
ただし、F=π・√R/(1−R) …(2)
この(2)式は、前記高反射ミラー52A,52Bの反射率Rが大きいほど、また、前記ミラー間光路長Lnが短いほど,前記光路長レンジΔLを小さくしてわずかな光路長変化を高感度で測定することができることを示している。
【0076】
一方、前記反射側測定光L1の強度P1は、エネルギー保存則に従って、前記測定光の元々の強度にほぼ等しい強度P1maxから前記透過側測定光L2の強度P2を差し引いた強度或いはそれに近い強度(≒P1max−P2)となる。
【0077】
この実施の形態に係る分析は、以上の原理を利用しつつ、例えば次の手順によって実行される。
【0078】
ステップ1:前記高反射ミラー52A,52Bの初期間隔が調整される。具体的には、まず、前記励起光Leが照射されない状態で、前記高反射ミラー52A,52B間の多重反射が行われ、そのときの反射側測定光L1の強度P1が光検出器58により検出される。そして、この検出強度P1がその検出信号の最低強度P1min(≒P1max−P2max)或いはその最低強度と最高強度P1maxとの間の中間強度に合致するように、前記高反射ミラー52A,52Bの初期間隔が調整される。
【0079】
この間隔調整は、透過側の光検出器55の検出強度P2をその検出信号の最大強度P2max或いはその最大強度と最高強度P2maxとの間の中間強度に合致させるような調整であってもよい。その場合、前記光検出器55の検出する強度P2(信号)が変動しているとき(このときは前記光検出器58の検出する強度P1も変動している)、その変動に応じた量だけ変位制御装置56及びミラー変位機構57が自動的に高反射ミラー57を変位させる。つまり、両高反射ミラー52A,52B同士の間隔は、前記光検出器55による検出信号の変動を抑える方向に調節される。その後、測定中は、前記変位制御装置56及び前記ミラー変位機構57が前記第2高反射ミラー57の位置調節を続行する。
【0080】
ステップ2:前記高反射ミラー52A,52Bの位置調節を伴いながら、変調機構14により強度変調された励起光Leが液体に対して断続的に照射される。このとき、前記励起光Leは前記液体中に含まれる不純物に光熱効果を生じさせ、この光熱効果が液体の屈折率を変化させる。この屈折率の変化は前記ミラー間光路長Lの変化を引き起こす。この変化は、前記光検出器58が前記信号処理装置60に入力する検出信号(反射側測定光L1の強度の検出信号)を大きく変化させる。この検出信号は、信号処理装置60に含まれる記憶部によって記憶される。
【0081】
ステップ3:前記信号処理装置60は、前記検出信号に基づいて屈折率変化を測定する。この測定は、例えば、予め用意されたデータテーブルや変換式(前記検出信号と屈折率変化との対応関係を表すデータテーブルや変換式)等を利用して行われる。この屈折率の変化から、前記液体に含まれる不純物の濃度が高精度で分析される。
【0082】
この測定は、前記光検出器55が検出する透過側測定光L2の強度P2に基づいても実行可能である。この強度P2と前記反射側測定光L1の強度P1との和は一定(≒P1max)であるからである。
【0083】
その他、本発明では種々の光学系の配置態様をとり得ることができる。その配置は、前記測定対象領域ASへの測定光の照射及びこの測定光の位相変化の検出を可能にするものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る不純物分析装置の全体構成を示す図である。
【図2】前記不純物分析装置の吸光分析部を示す図である。
【図3】前記不純物分析装置において励起光と照射光とが同軸で照射される例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る不純物分析装置の吸光分析部を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
Lr 参照光
Lm 測定光
Le 励起光
1 ライン
2 分岐配管
2a 導入部
2b 着色部
2c 吸光分析部
5 流量調節部
6 試薬添加部
10 励起光照射系
12 励起光源
20 測定光照射系
22 測定光源
24,30 偏向ビームスプリッタ(分光用光学系)
36 光検出器
40 信号処理装置
52A,52B 高反射ミラー(光反射部)
54 距離調節機構
58 光検出器
60 信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のラインを流れる液体の中に含まれる不純物を測定するための方法であって、
前記ラインを流れる液体の一部をこのラインから分岐させて予め設けられたサンプリング部に導入する操作と、
前記サンプリング部に導入された液体に対し、測定対象である前記不純物の光吸収特性に合致した波長の励起光を照射する操作と、
前記液体において前記励起光の照射により前記不純物の光熱効果が生ずる測定対象領域に対し、この励起光とは別の測定光を照射する操作と、
前記測定対象領域を透過する前記測定光の位相変化を検出する操作と、
前記検出の結果に基づいて前記液体中の不純物濃度を算出する操作とを含むことを特徴とする不純物分析方法。
【請求項2】
請求項1記載の不純物分析方法であって金属または金属イオンを含む不純物を分析するための方法であり、
前記励起光を照射する操作の前に、前記ラインから分岐した液体中に前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬を混合する操作を含み、
前記励起光を照射する操作は、前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射するものであることを特徴とする不純物分析方法。
【請求項3】
請求項1記載の不純物分析方法において、
前記ラインから分岐した液体を前記サンプリング部の特定部分に所定の流量で流す操作を含み、
前記励起光を照射する操作は、前記特定部分を流れる液体に対して前記励起光を照射するものであり、
前記液体中の不純物濃度を算出する操作は、前記位相変化についての検出結果から求められる前記液体中の不純物の重量と前記液体の流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出するものであることを特徴とする不純物分析方法。
【請求項4】
請求項3記載の不純物分析方法であって金属または金属イオンを含む不純物を分析するための方法であり、
前記励起光を照射する操作の前に、前記特定部分を流れる液体中に前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬を当該液体の流量に対応する流量で添加し混合する操作を含み、
前記励起光を照射する操作は、前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射するものであり、
前記液体中の不純物濃度を算出する操作は、前記検出の結果から求められる前記液体中の不純物の重量と前記液体の流量及び前記試薬の添加流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出するものであることを特徴とする不純物分析方法。
【請求項5】
所定のラインを流れる液体の中に含まれる不純物を測定するための装置であって、
前記ラインから分岐し、このラインを流れる前記液体の一部が導入されるサンプリング部と、
前記サンプリング部に導入される液体に対して励起光を照射する励起光照射系と、
前記液体において前記励起光の照射により前記不純物の光熱効果が生ずる測定対象領域に対し、この励起光とは別の測定光を照射する測定光照射系と、
前記測定対象領域を透過する前記測定光の位相変化を検出する位相変化検出装置と、
前記位相変化検出装置の検出信号に基づいて前記液体中の不純物濃度についての測定信号を出力する信号処理装置とを備えたことを特徴とする不純物分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の不純物分析装置であって金属または金属イオンを含む不純物を分析するための装置であり、
前記サンプリング部は、前記励起光及び前記測定光の照射が行われる吸光分析部と、この吸光分析部の上流側に設けられ、前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬が前記液体中に添加されて混合される着色部とを含み、
前記励起光照射系は、前記着色部から前記吸光分析部に導入される液体に対し前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射するものであることを特徴とする不純物分析装置。
【請求項7】
請求項5記載の不純物分析装置において、
前記サンプリング部は、前記ラインにつながる分岐配管と、この分岐配管を流れる前記液体の流量を特定の流量に調節する流量調節部とを含み、
前記励起光照射系は、前記分岐配管の特定部分を流れる液体に対して前記励起光を照射するものであり、
前記信号処理装置は、前記位相変化検出装置の検出信号から求められる前記液体中の不純物の重量と前記流量調節部により調節される前記液体の流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出するものであることを特徴とする不純物分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の不純物分析装置であって金属または金属イオンを含む不純物を分析するための装置であり、
前記不純物は金属または金属イオンであり、
前記分岐配管は、この分岐配管内を流れる液体に対して前記励起光及び前記測定光の照射が行われる吸光分析部と、この吸光分析部よりも上流側に位置する着色部とを含み、
前記着色部には、この着色部を流れる液体に対し、前記不純物と化学反応することにより特定の波長をもつ光を吸収する錯体を生成する試薬を前記液体の流量に対応する流量で添加する試薬添加部が接続され、
前記励起光照射系は、前記吸光分析部を流れる液体に対し前記錯体が吸収可能な波長の光を前記励起光として照射するものであり、
前記信号処理装置は、前記位相変化検出装置の検出信号から求められる前記液体中の不純物の重量と前記液体の流量及び前記試薬の添加流量とに基づいて前記液体中の不純物濃度を算出するものであることを特徴とする不純物分析装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の不純物分析装置において、
前記励起光照射系は前記励起光として周期的に強度変調された光を照射し、
前記信号処理装置は、前記強度変調の周期と同期するタイミングで前記位相変化検出装置の検出信号を取り込むことを特徴とする不純物分析装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の不純物分析装置において、
前記位相変化検出装置は、前記測定光から参照光を分光してこの参照光と前記測定対象領域を透過する測定光とを干渉させる分光用光学系と、その干渉後の光の強度を検出する光検出器とを含むことを特徴とする不純物分析装置。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれかに記載の不純物分析装置において、
前記位相変化検出装置は、前記測定対象領域を挟んでその両側の位置に相対向する姿勢でそれぞれ配置された光反射部と、光検出器とを含み、前記各光反射部は、前記測定対象領域を透過する測定光の一部を相手方の光反射部に反射させることにより当該測定光を往復させ、前記光検出器は前記光反射部のうちの少なくとも一方の光反射部を前記測定対象領域と反対の側に透過した測定光を受光してその強度を検出することを特徴とする不純物分析装置。
【請求項12】
請求項11記載の不純物分析装置において、
前記位相変化検出装置は、さらに、前記両光反射部間で往復する光の共振状態を保つ方向に当該光反射部間の距離を調節する距離調節機構を含むことを特徴とする不純物分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−139200(P2008−139200A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327093(P2006−327093)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】