説明

両面同時塗工・乾燥装置

【課題】基材両面を一対の塗工用ダイで塗工して乾燥させるときに、塗工状態を同一又は希望する状態にできるようにする。
【解決手段】基材走行路Rの上流側に配置した基材案内ロール2と、基材走行路Rの下流側に配置した浮揚式乾燥装置3と、基材案内ロール2と浮揚式乾燥装置3の間に基材走行路Rを挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ7及び他方面側塗工用ダイ8からなり、これら塗工用ダイ7,8の間に塗工間隙Sを形成した一対の塗工用ダイ4とを備え、基材走行路Rが塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Saを通過するように、塗工隙間Sの厚み寸法Tを維持させつつ一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう方向に沿って移動・停止させるダイ移動調節装置5を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工剤をシート状基材の両面に同時塗工して乾燥させるための技術に関し、より詳しくは、同時塗工・乾燥する場合の塗工層の品質を向上させるための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の両面同時塗工・乾燥装置は、基材走行路の上流側に配置した基材案内ロールと、基材走行路の下流側に配置した浮揚式乾燥装置と、基材案内ロールと浮揚式乾燥装置の間に基材走行路を挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイからなりこれら塗工用ダイの間に塗工間隙を形成した一対の塗工用ダイと、一対の塗工用ダイと浮揚式乾燥装置の間に配置して、塗工後のシート状基材に弛みが生じないように張力を付与する張力付与手段とを備えたものがある(特許文献1)。この張力付与手段は、基材の走行方向に対して左右に形成される未塗工縁部を挟持する一対のテンションローラの複数組みから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、張力付与手段は、シート状基材に弛みを生じさせること無く良好な基材の走行を確保するために、挟持状態の一対のテンションローラと基材の間で滑りを生じさせない状態を維持する必要がある。そのため、張力付与手段は、複数組ある一対のテンションローラの調整や保守点検に熟練と多くの手間を必要とし、両面同時塗工・乾燥装置の稼働率を低下させる問題がある。また、調整や保守点検が不十分な場合には、却ってシート状基材に弛を生じさせ、塗工不良を招くことになる。
【0005】
本願の発明者らは、この問題を解決するために、張力付与手段を用いない両面同時塗工・乾燥装置について試験を行ない、一対の塗工用ダイから出たシート状基材に弛みを生じさせること無く良好な基材の走行を行なわせることができたが、ダイ形状や塗工剤の供給量等の塗工条件が同一の一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイからなる一対の塗工用ダイを用いても、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできない新たな問題を発見した。
【0006】
そこで、本願の発明者らは、問題解決のために更に試験を行い、両面同時塗工・乾燥における主要条件であるシート状基材の張力、塗工量及び/又は浮揚式乾燥装置のノズルから吹出す乾燥用ガスの風速の変更や変動により、シート状基材の走行軌跡(所謂カテナリー曲線)が変更又は変動することで、一対の塗工用ダイの塗工間隙を通過するシート状基材の塗工間隙厚み方向の位置に変更又は変動を生じさせ、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできないことを知見し、この知見に基づいて基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる本発明を想到した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、図1に示す如く、基材走行路Rの上流側に配置した基材案内ロール2と、基材走行路Rの下流側に配置した浮揚式乾燥装置3と、基材案内ロール2と浮揚式乾燥装置3の間に基材走行路Rを挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ7及び他方面側塗工用ダイ8の間に塗工間隙S(図3参照)を形成した一対の塗工用ダイ4を備えた両面同時塗工・乾燥装置において、基材走行路Rが塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Sa(図7及び図10参照)を通過するように、塗工隙間Sの厚み寸法T(図3(B)参照)を維持させつつ一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう方向(矢符F方向)に沿って移動・停止させるダイ移動調節装置5を備えたことを特徴する両面同時塗工・乾燥装置である。
【0008】
請求項1記載の本発明にあっては、基材走行路を走行するシート状基材の走行軌跡に変更又は変動が生じても、ダイ移動調節装置で一対の塗工用ダイを基材走行路の一方面側から他方面側へ向かう方向に沿って移動させて位置を調節することで、一対の塗工用ダイの塗工隙間における厚み方向の基準位置にシート状基材を通過させることができる。もし、一対の塗工用ダイの位置の調節を行なわないか又は不十分な場合には、シート状基材が一対の塗工用ダイの塗工隙間を通過するときに一方面側塗工用ダイ又は他方面側塗工用ダイへ偏り、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にすることができない。
【0009】
基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にするために一対の塗工用ダイの傾斜角度も調節できるようにするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、図9に示す如く、ダイ移動調節装置5は、基材走行路を横断する方向に沿って延びて一対の塗工用ダイの基準位置Saを通過する中心線を中心として、一対の塗工用ダイ4を回転(矢符Kの方向)・停止させるようになっている請求項1記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0010】
請求項2記載の本発明にあっては、基材走行路を走行するシート状基材の走行軌跡の傾斜角度に変更又は変動が生じても、ダイ移動調節装置で一対の塗工用ダイを回転させて傾斜角度を調節することことができる。
【0011】
任意の塗工・乾燥仕様へ変更するときに一対の塗工用ダイを最適位置へ移動させるようにするために請求項3記載の本発明が採用した手段は、図11に示す如く、ダイ移動調節装置5を制御する制御装置37は、シート状基材Wの張力条件、浮揚式乾燥装置3の乾燥条件及び一対の塗工用ダイ4の塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイ4が無いとき(図11(A)参照)の基材案内ロール2から浮揚式乾燥装置3へ向かうシート状基材Wの走行軌跡の位置情報を規定したテーブル38と、任意の塗工・乾燥仕様におけるシート状基材Wの走行軌跡の位置情報についてテーブル38から求めた位置に塗工隙間Sにおける厚み方向の基準位置Saを一致させるように一対の塗工用ダイ4を移動・停止させる操作指令aをダイ移動調節装置5へ発する操作指令部40とを備えた請求項1又は2記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0012】
請求項3記載の本発明にあっては、変更する任意の塗工・乾燥仕様に対応する一対の塗工用ダイの最適位置をテーブルから求めて、その最適位置へ一対の塗工用ダイを移動させることができる。
【0013】
任意の塗工・乾燥仕様へ変更するときに一対の塗工用ダイを最適位置へ移動させると共に最適の傾斜角度へ回転させるようにするために請求項4記載の本発明が採用した手段は、図11に示す如く、ダイ移動調節装置5を制御する制御装置37は、シート状基材Wの張力条件、浮揚式乾燥装置3の乾燥条件及び一対の塗工用ダイ4の塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイ4が無いときの基材案内ロール2から浮揚式乾燥装置3へ向かうシート状基材Wの走行軌跡の位置情報及び傾斜角度情報を規定したテーブル38と、任意の塗工・乾燥仕様におけるシート状基材Wの走行軌跡の位置情報についてテーブル38から求めた位置に塗工隙間Sにおける厚み方向の基準位置Saを一致させるように一対の塗工用ダイ4を移動・停止させると共に、テーブル38から求めた傾斜角度θに一対の塗工用ダイ4の基準位置Saにおける傾斜角度を一致させるように一対の塗工用ダイ4を回転・停止させる操作指令aをダイ移動調節装置5へ発する操作指令部40とを備えた請求項2記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0014】
請求項4記載の本発明にあっては、与えられた任意の塗工・乾燥仕様に対応する一対の塗工用ダイの最適位置及び最適傾斜角度をテーブルから求めて、その最適位に一対の塗工用ダイを移動させることができると共に、その最適傾斜角度となるように一対の塗工用ダイを回転させることができる。
【0015】
基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできるようにするために請求項5記載の本発明が採用した手段は、図14に示す如く、基材走行路Rの上流側に配置した基材案内ロール2と、基材走行路Rの下流側に配置した浮揚式乾燥装置3と、基材案内ロール2と浮揚式乾燥装置3の間に基材走行路Rを挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ7及び他方面側塗工用ダイ8からなり、これら塗工用ダイ7,8の間に塗工間隙Sを形成した一対の塗工用ダイ4とを備えた両面同時塗工・乾燥装置において、基材走行路Rが塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Saを通過するように、一対の塗工用ダイ4の位置を維持させつつ基材案内ロール2を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう方向に沿って移動・停止させるロール移動調節装置42を備えたことを特徴する両面同時塗工・乾燥装置である。
【0016】
請求項5記載の本発明にあっては、基材走行路を走行するシート状基材の走行軌跡に変更又は変動が生じても、ロール移動調節装置で基材案内ロールを基材走行路の一方面側から他方面側へ向かう方向に沿って移動させて位置を調節することで、一対の塗工用ダイの塗工隙間の基準位置にシート状基材を通過させることができる。もし、基材案内ロールの位置の調節を行なわないか又は不十分な場合には、シート状基材が一対の塗工用ダイの塗工隙間を通過するときに一方面側塗工用ダイ又は他方面側塗工用ダイへ偏り、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にすることができない。
【0017】
シート状基材の走行軌跡の傾斜角度の変更に応じて一対の塗工用ダイを最適塗工状態へ調節できるようにするために請求項6記載の本発明が採用した手段は、図15に示す如く、基材走行路Rを横断する方向に沿って延びて一対の塗工用ダイの基準位置Saを通過する中心線を中心として、一対の塗工用ダイ4を回転(図9に示す矢符K方向)・停止させるダイ移動調節装置65を備えた請求項5記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0018】
請求項6記載の本発明にあっては、基材走行路を走行するシート状基材の走行軌跡の傾斜角度に変更が生じても、一対の塗工用ダイの各先端面の傾斜角度を同時に調節して最適塗工状態とすることが可能となる。
【0019】
任意の塗工・乾燥仕様へ変更するときに基材案内ロールの位置を最適位置にするために請求項7記載の本発明が採用した手段は、図14に示す如く、ロール移動調節装置42を制御する制御装置47は、塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Saにシート状基材Wの張力条件、浮揚式乾燥装置3の乾燥条件及び一対の塗工用ダイ4の塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における基材走行路Rを通過させる基材案内ロール2の位置情報を規定したテーブル58と、任意の塗工・乾燥仕様における基材案内ロール2の位置情報についてテーブル58から求めた位置に基材案内ロール2の位置を一致させるように基材案内ロール2を移動・停止させる操作指令bをロール移動調節装置55へ発する操作指令部60とを備えた請求項5又は6記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0020】
請求項7記載の本発明にあっては、与えられた任意の塗工・乾燥仕様に対応する基材案内ロールの最適位置をテーブルから求めて、その最適位置へ基材案内ロールを移動させることで、塗工間隙における厚み方向の基準位置へシート状基材を通過させることができる。
【0021】
任意の塗工・乾燥仕様へ変更するときに基材案内ロールの位置を最適位置にすると共に一対の塗工用ダイを最適の傾斜角度にするために請求項8記載の本発明が採用した手段は、図14及び図15に示す如く、ロール移動調節装置42及びダイ移動調節装置65を制御する制御装置47は、塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Saにシート状基材Wの張力条件、浮揚式乾燥装置3の乾燥条件及び一対の塗工用ダイ4の塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における基材走行路Rを通過させる基材案内ロール2の位置情報及び各種の塗工・乾燥仕様における前記基準位置Saでのシート状基材Wの走行軌跡の傾斜角度情報を規定したテーブル58と、任意の塗工・乾燥仕様における基材案内ロール2の位置情報についてテーブル58から求めた位置に基材案内ロール2の位置を一致させるように基材案内ロール2を移動・停止させる操作指令をロール移動調節装置55へ発すると共に、当該任意の塗工・乾燥仕様におけるテーブル58から求めた傾斜角度に一対の塗工用ダイ4の基準位置Saにおける傾斜角度を一致させるように一対の塗工用ダイ4を回転・停止させる操作指令をダイ移動調節装置65へ発する操作指令部とを備えた請求項6記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0022】
請求項8記載の本発明にあっては、与えられた任意の塗工・乾燥仕様に対応する基材案内ロールの最適位置及び一対の塗工用ダイの最適傾斜角度をテーブルから求めて、その最適位に基材案内ロールを移動させて一対の塗工用ダイの塗工間隙における厚み方向の基準位置へシート状基材を通過させることができると共に、一対の塗工用ダイを最適傾斜角度となるように回転させることができる。
【0023】
シート状基材の走行軌跡の傾斜角度の変更に応じて一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイを最適塗工状態へ調節できるようにするために請求項9記載の本発明が採用した手段は、図3に示す如く、一方面側塗工用ダイ7及び他方面側塗工用ダイ8の各々は、基材走行路Rへ向かって開口する塗工剤吐出用スリット17の開口終端縁から基材走行方向(矢符E方向)へ向かって先端面18aを延設し、一対の塗工用ダイ4の基準位置Saを中心として揺動(図1及び図6に示す矢符J方向への揺動)できるようにしてある請求項1乃至8のいずれかに記載の両面同時塗工・乾燥装置である。
【0024】
請求項9記載の本発明にあっては、基材走行路を走行するシート状基材の走行軌跡の傾斜角度に変更が生じても、一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイの各先端面の姿勢を個別に調節でして最適塗工状態とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、一対の塗工用ダイの位置を調節することで、一対の塗工用ダイの塗工隙間の基準位置にシート状基材を通過させて、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0026】
請求項2記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、一対の塗工用ダイの傾斜角度を調節することで、一対の塗工用ダイの塗工隙間の基準位置における傾斜角度をシート状基材の傾斜角度に合致させて、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0027】
請求項3記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、任意の塗工・乾燥仕様に対応する最適位置へ一対の塗工用ダイを配置して、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0028】
請求項4記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、任意の塗工・乾燥仕様に対応する最適位置及び傾斜角度に一対の塗工用ダイを配置して、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0029】
請求項5記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、基材案内ロールの位置を調節することで、一対の塗工用ダイの塗工隙間の基準位置にシート状基材を通過させて、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0030】
請求項6記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、基材案内ロールの位置を調節することで、一対の塗工用ダイの塗工隙間の基準位置にシート状基材を通過させることができると共に、一対の塗工用ダイの回転を調節することで、塗工隙間の基準位置における傾斜角度をシート状基材の傾斜角度に合致させることができ、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0031】
請求項7記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、一対の塗工用ダイの位置を任意の塗工・乾燥仕様に対応する最適位置にして、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0032】
請求項8記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、一対の塗工用ダイの位置を任意の塗工・乾燥仕様に対応する最適位置とすると共に、一対の塗工用ダイの傾斜角度を同任意の塗工・乾燥仕様に対応する最適角度にして、基材両面の塗工状態を同一又は希望する状態にできる。
【0033】
請求項9記載の本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置は、一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイの各先端面の姿勢角度を調節して最適塗工状態とすることで、シート状基材の走行軌跡の傾斜角度の変更に応じて一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイの各々を最適塗工状態へ調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る両面同時塗工・乾燥装置(以下、「本発明塗工・乾燥装置」と言う。)の第1の実施の形態における塗工状態を示す断面した左側面図である。
【図2】同実施の形態を示す平面図である。
【図3】同実施の形態における塗工状態の一対の塗工用ダイを断面した側面図であり、図(A)は全体を示し、図(B)は吐出口近辺を示す拡大図である。
【図4】シート状基材の傾斜に合わせるように一対の塗工用ダイを回転させた状態の拡大図である。
【図5】同実施の形態の非塗工状態を示す断面図であって、図(A)は左側面図、図(B)は一対の塗工用ダイの拡大図、図(C)はシート状基材の傾斜に合わせるように一対の塗工用ダイを回転させた状態の拡大図である。
【図6】同実施の形態におけるダイ移動調節装置を示すものであって、図(A)は中間省略した正面図である。
【図7】図(A)は図6のC7A−C7A線で断面した左側面図、図(B)は図(A)に示す一対の塗工用ダイを回転させた状態の要部の拡大図、図(C)は基準位置Saが異なるものを示す断面した左側面図、図(D)は図(C)に示す一対の塗工用ダイを回転させた状態の要部り拡大図である。
【図8】図(A)は図6のC8A−C8A線で断面した左側面図、図(B)は図6のC8B−C8B線から見た右側面図である。
【図9】ダイ移動調節装置の別態様を示す中間省略した正面図である。
【図10】一対の塗工用ダイの別態様を示す断面であって,図(A)は左側面図、図(B)はリップ先端を拡大した左側面図である。
【図11】第1の実施の形態におけるダイ移動調節装置を説明する左側面図であつて、図(A)はテーブルが規定するシート状基材の走行軌跡の位置情報及び傾斜角度情報を説明するものであり、図(B)はダイ移動調節装置の制御を説明するものである。
【図12】第2の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置の塗工状態を示す左側面図である。
【図13】図12のC13−C13線から見た中間省略した背面図である。
【図14】第3の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置の塗工状態を示す左側面図である。
【図15】同実施の形態におけるダイ移動調節装置を示す中間省略した正面図である。
【図16】第4の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置の要部を示す断面図あって、シート状基材の走行軌跡を上り傾斜させて塗工している状態を示すものである。
【図17】第5の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置の要部を示す断面図あって、シート状基材の走行軌跡を鉛直方向に沿わせて塗工している状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施の形態)
図1及び図2に示すように本発明塗工・乾燥装置1は、シート状基材Wが走行する基材走行路Rの上流側に配置した基材案内ロール2と、基材走行路Rの下流側に配置した浮揚式乾燥装置3と、基材案内ロール2と浮揚式乾燥装置3の間に配置した一対の塗工用ダイ4と、一対の塗工用ダイ4を移動・停止させるダイ移動調節装置5を備え、基材案内ロール2から浮揚式乾燥装置3へ向かう進行方向(矢符E)の基材走行路Rを走行するシート状基材Wについて、基材案内ロール2から離れて一対の塗工用ダイ4を通過するときに両面塗工を行なって塗工層M,Nを形成し、その後に浮揚式乾燥装置3の内部を通過するときに塗工層M,Nの乾燥を行なうようにしてある。本例の本発明塗工・乾燥装置1は、基材案内ロール2の外周面から延びる仮想水平線が、浮揚式乾燥装置3の基材走行路Rを介して上下両側に配置したノズル6,6の上下中間位置を貫通するように基材案内ロール2及び浮揚式乾燥装置3を配置してある。
【0036】
前記基材案内ロール2は、シート状基材Wの幅方向に沿う基材案内面2aの左右方向が水平状態となるように配置され、シート状基材Wの走行速度と同期する回転速度で強制駆動されるか、又は自由回転するようにしてある。
【0037】
前記浮揚式乾燥装置3は、図1に示す如く、基材走行路Rを挟んだ両側に間隔Pで配置した複数個のノズル6の各々から基材走行路Rへ向かって乾燥用ガスを吹出し、走行中のシート状基材Wを略サイン曲線状の波打つ状態で浮揚(フローティング)させるようにしてある。浮揚式乾燥装置3は、本例では入口側に配置した下方のノズル6を走行中のシート状基材Wと最初に対向するようにしてあるが、これ以外に図示は省略したが、入口側に配置した上方のノズル6を走行中のシート状基材Wと最初に対向するように配置することもあり、また基材走行路Rを挟んで配置した上方のノズル6と下方のノズル6を対面させ、走行中のシート状基材Wを略水平状態で浮揚(フローティング)させるようにすることもある。
【0038】
前記一対の塗工用ダイ4は、図3に示す如く、基材走行路Rを挟んで対向配置した一方面側(本例では上方側)塗工用ダイ7及び他方面側(本例では下方側)塗工用ダイ8からなり、両塗工用ダイ7,8の間に塗工間隙Sを形成して、塗工間隙Sを基材走行路Rが通過するようにしてある。塗工用ダイ7,8の各々は、左右の厚み調整板9を挟んで一方の分割部10及び他方の分割部11を分離可能に接合し、左右の厚み調整板9及び分割部10,11で囲んだ塗工剤流路14を形成すると共に、一方の分割部10に塗工剤供給管15を接続してある。各々の塗工剤流路14は、塗工剤供給管15に通じる上流側のマニホールド16及び基材走行路Rへ向かって開口する下流側の塗工剤吐出用スリット17からなる。塗工用ダイ7,8の各々は、本例では分割部10,11の左右両端に接合した端片12,13(図6参照)を備え、端片12,13(図6参照)を用いてダイ移動調節装置5に連結するようにしてある。両方の分割部10,11の各々は、塗工剤吐出用スリット17の吐出口17aを形成するリップ部18,19を設け、一方のリップ部18に平坦な先端面(ワイピングリップフェイス)18aを形成すると共に、他方のリップ部19に湾曲した先端面19aを形成してある。塗工剤吐出用スリット17の吐出口17aは、基材走行路Rを直交する横断方向(以下、本例では「左右方向」という。)へ延びており、所定塗工幅の塗工膜M,Nを形成するようになっている。塗工剤吐出用スリット17は、左右寄りに塗工幅調整用のシム(図示略)を挟み込み、左右のシムの間から塗工剤を吐出するようにしてある。一対の塗工用ダイ4は、両方の塗工用ダイ7,8の一方の先端面18a,18aどうしを対向させると共に吐出口17a,17aどうしを対向させて、先端面18a,18a及び吐出口17a,17aの間に塗工間隙Sを形成してある。塗工剤吐出用スリット17は、左右のシムの間に更に適宜左右幅寸法からなる別のシムを挟み込んで、基材走行路Rの進行方向に延びる非塗工部分を別のシムで形成する所謂ストライプ塗工を行なうように構成することもできる。
【0039】
前記一対の塗工用ダイ4は、図3に示す塗工用ダイ7,8の各リップ部18に平坦な先端面(ワイピングリップフェイス)18aを形成して連続塗工に適した形状とする以外に、図10に示す如く、塗工用ダイ7,8の各リップ部18の先端部18bを基材走行路Rの進行方向に沿ってできるだけ短く形成して、塗工用ダイ7,8の吐出口17a,17aから塗工剤を間欠的に吐出させる間欠塗工に最適な形状に変更することもある。
【0040】
前記ダイ移動調節装置5は、図1に示す如く、任意の塗工・乾燥仕様への変更に伴って生じる基材走行路Rを走行するシート状基材Wの走行軌跡の変更又は変動に対処できるようにするために、一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sの厚み寸法T(図3(B)参照)を変更することなく維持させつつ一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう方向(矢符Fの方向)(以下、本例では「上下方向」という。)に沿って移動・停止させて、シート状基材Wが塗工間隙Sにおける厚み方向の中間に位置する基準位置Sa(図3(B)参照)を通過するようにしてある。この基準位置Saとしては、図7に示す如く、一対の塗工用ダイ4の対向する先端面18a,18aにおける基材走行方向の出口側のエッジ部18a’,18a’の間の中間位置(図7(A)(B)及び図3(B)参照)、又は一対の塗工用ダイ4の対向する吐出口17a,17aの間の中間位置(図7(C)(D)参照)が選択される。基準位置Sa上下方向の位置は、図3に示す如く、一対の塗工用ダイ4が塗工層M,Nを同一条件で形成するときには、塗工隙間Sの厚み寸法Tを二等分する位置又はその近辺となり、一対の塗工用ダイ4が塗工層M,Nを異なる条件で形成するとき(図示略)には、塗工隙間Sの厚み寸法Tを二等分する位置から何れか一方の先端面18aへ偏する位置となる。
【0041】
また、前記ダイ移動調節装置5は、図6及び図5に示す如く、一対の塗工用ダイ4を構成する一方面側(上方)塗工用ダイ7及び他方面側(下方)塗工用ダイ8の各々について、基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう方向(本例では上下方向である矢符Gの方向)に沿って移動・停止ができるようにして塗工層M,N(図1参照)の厚み調節を可能にすると共に、塗工間隙Sの基準位置Sa(図7参照)を中心として揺動方向(本例では矢符Jの方向)へ移動・停止ができるようして各リップ部18の先端面(ワイピングリップフェイス)18aの角度を基材走行路Rを走行するシート状基材Wの傾斜角度に近づけることを可能にしてある。更にダイ移動調節装置5は、図9に示す如く、塗工用ダイ7,8からなる一対の塗工用ダイ4について塗工間隙Sの基準位置Saを中心として回転方向(本例では矢符Kの方向)へ回転移動・停止ができるようにして、一対の塗工用ダイ4の両方のリップ部18,18の先端面(ワイピングリップフェイス)18a,18a(図5(C)参照)の角度を同時に調節できるようにすることもある。
【0042】
前記ダイ移動調節装置5の構造は、図6に示す如く、左右方向へ延びるベース部22aの左右両側に支持部22b,22bを立設した固定スタンド22と、固定スタンド22の支持部22b,22bに上下方向へ移動自在に支持させた左右一対の腕部23a,23aを接合部23bで連結した昇降部23と、固定スタンド22の支持部22b,22bと昇降部23の腕部23a,23aとの間に配置して昇降部23の左右の腕部23a,23aを同期状態で上下移動させる左右一対の第1の昇降装置24,24と、軸中心線が前記基準位置Sa(図7及び図10参照)を通過する左右の支持軸25,25を介して昇降部23の両側の腕部23a,23aに揺動自在に支持した左右一対の上方揺動部26,26及び左右一対の下方揺動部27,27と、昇降部23の腕部23a,23aと上方揺動部26,26との間に配置して上方揺動部26,26を同期状態又は個別に揺動させる左右一対の上方揺動装置28,28と、昇降部23の腕部23a,23aと下方揺動部27,27との間に配置して下方揺動部27,27を同期状態で揺動させる左右一対の下方揺動装置29,29と、上方揺動部26,26に支持軸25の半径方向へ移動自在に支持させた上方の一方面側塗工用ダイ7と上方揺動部26,26との間に配置して一方面側塗工用ダイ7の左右を矢符Gの方向へ同期状態又は個別に移動させる左右一対の第2の昇降装置31,31と、下方揺動部27,27に支持軸25の半径方向へ移動自在に支持させた下方の他方面側塗工用ダイ8と下方揺動部27,27との間に配置して他方面側塗工用ダイ8の左右を矢符Gの方向へ同期状態で移動させる左右一対の第3の昇降装置32,32とを備えている。
【0043】
前記第1の昇降装置24は、例えば昇降部23の腕部23aに取着した雌螺子と固定スタンド22の支持部22bに取着した雄螺子を螺合させた螺子送り手段と、雄螺子を回転駆動させるサーボモータ又は雄螺子を手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータ又は手動の回転操作で昇降部23を矢符Fの方向へ昇降させるようにしたものを選択することができる。
【0044】
前記上方揺動装置28は、例えば上方揺動部26に取着したセクタギヤと昇降部23の腕部23aに取着したウォームギヤを螺合させた螺子送り手段と、ウォームギヤを回転駆動させるサーボモータ又はウォームギヤを手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータ又は手動の回転操作で上方揺動部26を矢符Jの方向へ揺動させるようにしたものを選択することができる。
【0045】
前記下方揺動装置29は、上方揺動装置28と同様に、例えば、下方揺動部27に取着したセクタギヤと昇降部23の腕部23aに取着したウォームギヤを螺合させた螺子送り手段と、ウォームギヤを回転駆動させるサーボモータ又はウォームギヤを手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータの又は手動の回転操作で下方揺動部27を矢符Jの方向へ揺動させるようにしたものを選択することができる。
【0046】
前記第2の昇降装置31は、例えば、上方の塗工用ダイ7の端板12又は13に取着した雌螺子と上方揺動部26に取着した雄螺子を螺合させた螺子送り手段と、雄螺子を回転駆動させるサーボモータ又は雄螺子を手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータ又は手動の回転操作で上方の塗工用ダイ7を矢符Gの方向へ移動させるようにしたものを選択することができる。
【0047】
前記第3の昇降装置32は、第2の昇降装置31と同様に、例えば、下方の塗工用ダイ8の端板12又は13に取着した雌螺子と下方揺動部27に取着した雄螺子を螺合させた螺子送り手段と、雄螺子を回転駆動させるサーボモータ又は雄螺子を手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータ又は手動の回転操作で上方の塗工用ダイ8を矢符Gの方向へ移動させるようにしたものを選択することができる。
【0048】
前記ダイ移動調節装置5は、第1の昇降装置24,24の操作により、一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sの厚み寸法Tを同一に維持させつつ一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう矢符Fの方向(本例では上下方向)に沿って移動・停止ができる。また、ダイ移動調節装置5は、上方揺動装置28,28の操作により、塗工用ダイ7を基準位置Saを中心にして矢符Jの方向へ揺動させることができると共に、下方揺動装置29,29の操作で塗工用ダイ8を基準位置Saを中心にして矢符Jの方向へ揺動させることができる。更に、ダイ移動調節装置5は、第2の昇降装置31,31の操作により、塗工用ダイ7を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう矢符Gの方向(本例では上下方向)に沿って移動・停止ができると共に、第3の昇降装置32,32の操作により、塗工用ダイ8を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう矢符Gの方向(本例では上下方向)に沿って移動・停止ができる。
【0049】
また、前記ダイ移動調節装置5は、図9に示す如く、上下の塗工用ダイ7,8からなる一対の塗工用ダイ4の全体を回転・停止させることができるように、図6に示す前記構造に変更を加えることもある。変更したダイ移動調節装置5は、固定スタンド22に上下移動自在に支持した昇降部23の左右の腕部23aに、前記基準位置Sa(図7及び図10参照)を中心線が通過する支持軸25を介して回転自在に支持した左右の回転腕部34aを接合部34bで接合した回転支持部34を追加すると共に、昇降部23の左右の腕部23aと左右の回転腕部34aとの間に左右の回転駆動装置35,35を配置してある。変更したダイ移動調節装置5は、任意の塗工・乾燥仕様への変更に応じて一対の塗工用ダイ4の塗工隙間S(図3(B)参照)の厚み寸法Tを同一に維持したまま、シート状基材Wの走行軌跡の傾斜角度の変更に応じて回転駆動装置35,35を操作して一対の塗工用ダイ4を最適塗工の姿勢状態へ回転調節することができる。
【0050】
前記ダイ移動調節装置5は、図6に示す左右の第1の昇降装置24,24を制御装置37(図11参照)で自動的に操作して、任意の塗工・乾燥仕様への変更に応じて一対の塗工用ダイ4を最適位置へ自動的に移動させるように構成することもある。この制御装置37は、図11に示す如く、シート状基材Wの張力条件、浮揚式乾燥装置3の乾燥条件及び一対の塗工用ダイ4の塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイ4を無くした状態(図(A)参照)の基材案内ロール2から浮揚式乾燥装置3へ向かうシート状基材W(シート状基材W)の走行軌跡の位置(座標x,y)情報を規定したテーブル38と、塗工・乾燥仕様の変更後についてテーブル38の位置情報をから求めたシート状基材Wの走行軌跡の位置に前記基準位置Sa(図7及び図10参照)を一致させるように一対の塗工用ダイ4を移動・停止させる操作指令aをダイ移動調節装置5へ発する操作指令部40とを備えている。制御装置37は、本例では塗工・乾燥仕様変更入力部39から変更指令をテーブル38へ発すると、テーブル38から塗工・乾燥仕様の変更後のシート状基材Wの走行軌跡の位置を操作指令部40へ発するように構成され、操作指令部40からダイ移動調節装置5の第1の昇降装置24,24(図6及び図9参照)に操作指令aを発して一対の塗工用ダイ4を矢符Fの方向(上下方向)へ移動・停止させ、変更後のシート状基材Wの走行軌跡の位置に一対の塗工用ダイ4の基準位置Saを一致させる。
【0051】
更に、制御装置37は、各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイ4を無くした状態(図11(A)参照)の基材案内ロール2から浮揚式乾燥装置3へ向かうシート状基材Wの走行軌跡の位置(座標x,y)情報と共に走行軌跡の傾斜角度(走行軌跡の接線が水平線と交差する角度θ)情報をテーブル38に規定させ、塗工・乾燥仕様変更入力部39から変更指令をテーブル38へ発すると、テーブル38から塗工・乾燥仕様の変更後のシート状基材Wの走行軌跡の傾斜角度についても操作指令部40へ発し、操作指令部40からダイ移動調節装置5の第1の昇降装置35,35(図9参照)にも操作指令aを発して一対の塗工用ダイ4を基準位置Saを中心として矢符K(図9参照)の方向へ回転・停止させて、図4に示す如く、変更後のシート状基材Wの走行軌跡の傾斜角度θに一対の塗工用ダイ4の先端面(ワイピングリップフェイス)18a,18aの傾斜角度を一致させるように構成することもある。
【0052】
前記テーブル38に規定する各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイ4を無くした状態(図(A)参照)の基材案内ロール2から浮揚式乾燥装置3へ向かうシート状基材Wの走行軌跡の位置(座標x,y)情報及び傾斜角度θの情報は、プラスチックフィルム又は金属箔等からなるシート状基材Wのカテナリー曲線の方程式から求める場合と、本発明塗工・乾燥装置1にシート状基材Wを走行させたカテナリー曲線をセンサーで求める場合とがある。
【0053】
本発明塗工・乾燥装置1は、図1に示す如く、基材走行路Rを走行するシート状基材Wの走行軌跡に変更又は変動が生じても、ダイ移動調節装置5で一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう矢符Fの方向(本例では上下方向)に沿って移動させて位置を調節することで、一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sにおける厚み方向の基準位置Sa(図7及び図10参照)にシート状基材Wを通過させることができる。もし、一対の塗工用ダイ4の位置の調節を行なわないか又は不十分な場合には、シート状基材Wが一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sを通過するときに一方面側塗工用ダイ7又は他方面側塗工用ダイ8へ偏り、塗工用ダイ7又は8の先端面(ワイピングリップフェイス)18aに塗工層M,Nを圧接させ、塗工層M,Nの厚み寸法や左右幅寸法を同一又は希望する状態にすることができずに塗工不良を招くことになる。
【0054】
(第2の実施の形態)
図12及び図13に示す第2の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置41は、ダイ移動調節装置45が前記第1の実施の形態と大きく異なり、浮揚式乾燥装置3及び一対の塗工用ダイ4の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図12及び図13において図1乃至図11と同一符号は相当部分を示す。
【0055】
前記ダイ移動調節装置45は、任意の塗工・乾燥仕様への変更に伴う基材走行路Rを走行するシート状基材Wの走行軌跡の変更又は変動に対処できるようにするために、一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sの厚み寸法T(図3(B)参照)を同一に維持させつつ一対の塗工用ダイ4を揺動させて基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう上下方向(矢符Uの方向)に沿って移動・停止させて、シート状基材Wが塗工間隙Sにおける厚み方向の中間に位置する基準位置Sa(図7及び図10参照)を通過するようにしてある。
【0056】
前記ダイ移動調節装置45の構造は、図13に示す如く、左左右両側に立設した固定スタンド42,42と、固定スタンド42,42に上下方向へ揺動自在に支持した揺動腕部43,43と、固定スタンド22と揺動腕部43の間に配置して左右の揺動腕部43,43を同期状態で揺動させる左右一対の第1の昇降装置44,44と、揺動腕部43,43の先端寄りに取着した左右一対の腕部23a,23aを接合部23bで連結した昇降部23と、軸中心線が前記基準位置Sa(図7及び図10参照)を通過する支持軸25を介して昇降部23の両側の腕部23a,23aに揺動自在に支持した左右一対の上方揺動部26,26及び左右一対の下方揺動部27,27と、昇降部23の腕部23a,23aと上方揺動部26,26との間に配置して上方揺動部26,26を同期状態で揺動させる左右一対の上方揺動装置28,28と、昇降部23の腕部23a,23aと下方揺動部27,27との間に配置して下方揺動部27,27を同期状態で揺動させる左右一対の下方揺動装置29,29と、上方揺動部26,26に支持軸25の半径方向へ移動自在に支持させた上方の一方面側塗工用ダイ7と上方揺動部26,26との間に配置して一方面側塗工用ダイ7の左右を同期状態で移動させる左右一対の第2の昇降装置31,31と、下方揺動部27,27に支持軸25の半径方向へ移動自在に支持させた下方の他方面側塗工用ダイ8と下方揺動部27,27との間に配置して他方面側塗工用ダイ8の左右を同期状態で移動させる左右一対の第3の昇降装置32,32とを備えている。
【0057】
前記ダイ移動調節装置45の構造は、固定スタンド42,42、揺動腕部43,43及び第1の昇降装置44,44が図9に示す前記ダイ移動調節装置5と異なり、それ以外の部分については前記ダイ移動調節装置5と実質的に同一である。第1の昇降装置44は、固定スタンド22と揺動腕部43に両端を連結して、サーボモータの駆動で両端の間を伸縮させるジャッキや、図示は省略したが、揺動腕部43の揺動中心部に取着したセクタギヤと固定スタンド42ウォームギヤを螺合させた螺子送り手段と、ウォームギヤを回転駆動させるサーボモータ又はウォームギヤを手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータ又は手動の回転操作で揺動腕部43を矢符Uの方向へ揺動させるようにしたものを選択することができる。
【0058】
前記揺動腕部43,43の揺動中心は、本例のように基材案内ロール2の回転中心と一致させるか、または基材案内ロール2の外周面から延びるて浮揚式乾燥装置3のノズル6,6の上下中間位置を貫通する仮想水平線の線上又はその近辺に一致させるとよい。
【0059】
(第3の実施の形態)
図14に示す第3の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置51は、任意の塗工・乾燥仕様への変更に伴い基材走行路Rを走行するシート状基材Wの走行軌跡の変更又は変動があるときに、基材案内ロール2をロール移動調節装置55で基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう矢符Qの方向(本例では上下方向)に沿って移動・停止させ、上下方向へ移動させない一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sにおける厚み方向の基準位置Sa(図7及び図10参照)へシート状基材Wを通過させることができるようにしてある。前記第1の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置1及び前記第2の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置41は、一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう上下方向に沿って移動・停止させて塗工・乾燥仕様の変更に対処させるのに対して、第3の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置51は、一対の塗工用ダイ4を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう上下方向に沿って移動・停止させずに所定位置に固定状態で配置させつつ基材案内ロール2を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう上下方向に沿って移動・停止させて塗工・乾燥仕様の変更に対処させる点で相違する。
【0060】
本発明塗工・乾燥装置51において、ロール移動調節装置55を除く構成要素である基材案内ロール2、基材走行路の下流側に配置した浮揚式乾燥装置3及び基材案内ロールと浮揚式乾燥装置の間に基材走行路を挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ7及び他方面側塗工用ダイ8の間に塗工間隙Sを形成した一対の塗工用ダイ4については、第1の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置1(図1乃至図11)と実質的に同一である。
【0061】
前記ロール移動調節装置55は、左右の固定スタンド53と、左右の固定スタンド53に基材案内ロール2の左右両側の軸受け部を上下移動自在に案内する左右の案内装置54と、固定スタンド53と案内装置54の間に配置して基材案内ロール2を移動・停止させる昇降装置56とからなる。昇降装置56は、例えば案内装置54に取着した雌螺子と固定スタンド53に取着した雄螺子を螺合させた螺子送り手段と、雄螺子を回転駆動させるサーボモータ又は雄螺子を手動で回転させるハンドルとからなり、サーボモータ又は手動の回転操作で案内装置54を矢符Qの方向へ昇降させるようにしたものを選択することができる。
【0062】
一対の塗工用ダイ4を支持する支持装置52は、図15に示すダイ移動調節装置65とすることもある。このダイ移動調節装置65は、図9に示すダイ移動調節装置5から固定スタンド22及び第1の昇降装置24,24を除いた構造で構成すると共に、ダイ移動調節装置5の昇降部23の接続部23bを固定して用い、一対の塗工用ダイ4を構成する一方面側塗工用ダイ7及び他方面側塗工用ダイ8の各々について、図15に示す矢符Gの方向及び矢符Jの方向へ移動調節できるようにすると共に、一対の塗工用ダイ4について矢符Kの方向へ回転調節できるようにしたものである。
【0063】
本発明塗工・乾燥装置51は、基材走行路Rを走行するシート状基材Wの走行軌跡に変更又は変動が生じても、ロール移動調節装置55で基材案内ロール2を基材走行路Rの一方面側から他方面側へ向かう方向(本例では上下方向)に沿って移動させて位置を調節することで、一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sの基準位置Sa(図7及び図10参照)にシート状基材Wを通過させることができる。もし、基材案内ロール2の位置の調節を行なわないか又は不十分な場合には、シート状基材Wが一対の塗工用ダイ4の塗工隙間Sを通過するときに一方面側塗工用ダイ7又は他方面側塗工用ダイ8へ偏り、塗工層M,Nの厚み寸法や左右幅寸法を同一又は希望する状態にすることができずに塗工不良を招くことになる。
【0064】
前記ロール移動調節装置55は、昇降装置56を制御装置57で自動的に操作して、任意の塗工・乾燥仕様への変更に応じて基材案内ロール2を最適位置へ自動的に移動させるように構成することもある。この制御装置57は、上下移動させない一対の塗工用ダイ4の塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Saに、シート状基材Wの張力条件、浮揚式乾燥装置3による乾燥条件及び一対の塗工用ダイ4による塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における基材走行路Rを通過させる基材案内ロール2の位置情報を規定したテーブル58と、塗工・乾燥仕様の変更後についてテーブル58の位置情報をから求めた基材案内ロール2の位置へ基材案内ロール2を移動・停止させる操作指令bを昇降装置56へ発する操作指令部60とを備えている。制御装置57は、本例では塗工・乾燥仕様変更入力部59から変更指令をテーブル58へ発すると、テーブル58から塗工・乾燥仕様の変更後の基材案内ロール2の位置を操作指令部60へ発するように構成され、操作指令部60からロール移動調節装置55の昇降装置56に操作指令bを発して基材案内ロール2を矢符Qの方向(上下方向)へ移動・停止させ、上下移動させない一対の塗工用ダイ4の基準位置Saに変更後のシート状基材Wの走行軌跡の位置を一致させ、基準位置Saにシート状基材Wを通過させる。
【0065】
本発明塗工・乾燥装置51は、与えられた変更後の塗工・乾燥仕様に対応する基材案内ロール2の最適位置をテーブル58から求めて、その最適位置へ基材案内ロール2を移動させることで、一対の塗工用ダイ4の塗工間隙Sにおける厚み方向の基準位置Saにシート状基材Wを通過させ、上下方向へ移動させない一対の塗工用ダイ4の位置を変更後の塗工・乾燥仕様に対応する最適位置とすることができる。
【0066】
一対の塗工用ダイ4を支持する支持装置52を図15に示すダイ移動調節装置65にして一対の塗工用ダイ4について矢符Kの方向へ回転調節できるようにした場合には、制御装置57に次の構成を追加して一対の塗工用ダイ4の傾斜角度を自動調節できるように構成することもある。制御装置57は、テーブル58に、各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイ4の基準位置Saを通過する基材走行路R(シート状基材W)の傾斜角度θ(図11参照)の情報を規定すると共に、塗工・乾燥仕様変更入力部59から変更指令をテーブル58へ発すると、テーブル58から任意の塗工・乾燥仕様のにおける傾斜角度θを操作指令部60へ発するように構成して、操作指令部60からダイ移動調節装置65の回転駆動装置35,35に操作指令を発して一対の塗工用ダイ4を矢符Kの方向へ回転・停止させ、変更後のシート状基材Wの走行軌跡の傾斜角度に一対の塗工用ダイ4の基準位置Saにおける傾斜角度を一致させる。
【0067】
(第4の実施の形態)
図16に示す第4の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置71は、基材案内ロール2の外周面から延びて浮揚式乾燥装置3の基材走行路Rを介して両側に配置したノズル6,6の中間位置を貫通する直線Lを水平線に対し傾斜させるように、基材案内ロール2、一対の塗工用ダイ4及び浮揚式乾燥装置3を配置してある。本発明塗工・乾燥装置71において基材案内ロール2、一対の塗工用ダイ4及び浮揚式乾燥装置3の各構成は、前記第1の実施の形態の場合と実質的に同一である。
【0068】
本発明塗工・乾燥装置71は、一対の塗工用ダイ4を移動・停止させために前記ダイ移動調節装置5(図6及び図9参照)や前記ダイ移動調節装置45(図12及び図13参照)を採用する場合と、一対の塗工用ダイ4を移動させずに基材案内ロール2を移動・停止させるためにロール移動調節装置55(図14参照)を採用する場合とがある。
【0069】
(第5の実施の形態)
図17に示す第5の実施の形態に係る本発明塗工・乾燥装置81は、基材案内ロール2の外周面から延びて浮揚式乾燥装置3の基材走行路Rを介して両側に配置したノズル6,6の中間位置を貫通する直線Vが鉛直方向となるように、基材案内ロール2、一対の塗工用ダイ4及び浮揚式乾燥装置3を配置してある。本発明塗工・乾燥装置81において基材案内ロール2、一対の塗工用ダイ4及び浮揚式乾燥装置3の各構成は、前記第1の実施の形態の場合と実質的に同一である。
【0070】
本発明塗工・乾燥装置81は、一対の塗工用ダイ4を移動・停止させために前記ダイ移動調節装置5(図6及び図9参照)や前記ダイ移動調節装置45(図12及び図13参照)を採用する場合と、一対の塗工用ダイ4を移動させずに基材案内ロール2を移動・停止させるためにロール移動調節装置55(図14参照)を採用する場合とがある。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明塗工・乾燥装置は、電池用電極の製造や、光学フィルム等の機能性材料の製造等に用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1(41,51,71,81)…本発明塗工・乾燥装置、2…基材案内ロール、2a…基材案内面、3…浮揚式乾燥装置、4…一対の塗工用ダイ、5(65)…ダイ移動調節装置、6…ノズル、7…一方面側塗工用ダイ、8…他方面側塗工用ダイ、9…厚み調整板、10…一方の分割部、11…他方の分割部、12,13…端片、14…塗工剤流路、15…塗工剤供給管、16…マニホールド、17…塗工剤吐出用スリット、17a…吐出口、18…一方のリップ部、18a…先端面(ワイピングリップフェイス)、18a’…エッジ部、18b…先端部、19…他方のリップ部、19a…先端面、22…固定スタンド、22a…ベース部、22b…支持部、23…昇降部、23a…腕部、23b…接合部、24…第1の昇降装置、25…支持軸、26…上方揺動部、27…下方揺動部、28…上方揺動装置、29…下方揺動装置、31…第2の昇降装置、32…第3の昇降装置、34…回転支持部、34a…回転腕部、35b…接合部、35…回転駆動装置、37…制御装置、38…テーブル、39…塗工・乾燥仕様変更入力部、40…操作指令部、42…固定スタンド、43…揺動腕部、44…第1の昇降装置、45…ダイ移動調節装置、52…支持装置、53…固定スタンド、54…案内装置、55…ロール移動調節装置、56…昇降装置、57…制御装置、58…テーブル、59…塗工・乾燥仕様の変更部、60…操作指令部、a…操作指令、b…操作指令、E…進行方向、M,N…塗工層、P…ノズルの間隔、R…基材走行路、S…塗工間隙、Sa…基準位置、T…塗工間隙Sの厚み寸法、W…シート状基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材走行路の上流側に配置した基材案内ロールと、基材走行路の下流側に配置した浮揚式乾燥装置と、基材案内ロールと浮揚式乾燥装置の間に基材走行路を挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイの間に塗工間隙を形成した一対の塗工用ダイを備えた両面同時塗工・乾燥装置において、基材走行路が塗工間隙における厚み方向の基準位置を通過するように、塗工隙間の厚み寸法を維持させつつ一対の塗工用ダイを基材走行路の一方面側から他方面側へ向かう方向に沿って移動・停止させるダイ移動調節装置を備えたことを特徴する両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項2】
ダイ移動調節装置は、基材走行路を横断する方向に沿って延びて一対の塗工用ダイの基準位置を通過する中心線を中心として、一対の塗工用ダイを回転・停止させるようになっている請求項1記載の両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項3】
ダイ移動調節装置を制御する制御装置は、シート状基材の張力条件、浮揚式乾燥装置の乾燥条件及び一対の塗工用ダイの塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイが無いときの基材案内ロールから浮揚式乾燥装置へ向かうシート状基材の走行軌跡の位置情報を規定したテーブルと、任意の塗工・乾燥仕様におけるシート状基材の走行軌跡の位置情報についてテーブルから求めた位置に塗工隙間における厚み方向の基準位置を一致させるように一対の塗工用ダイを移動・停止させる操作指令をダイ移動調節装置へ発する操作指令部とを備えた請求項1又は2記載の両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項4】
ダイ移動調節装置を制御する制御装置は、シート状基材の張力条件、浮揚式乾燥装置の乾燥条件及び一対の塗工用ダイの塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における一対の塗工用ダイが無いときの基材案内ロールから浮揚式乾燥装置へ向かうシート状基材の走行軌跡の位置情報及び傾斜角度情報を規定したテーブルと、任意の塗工・乾燥仕様におけるシート状基材の走行軌跡の位置情報についてテーブルから求めた位置に塗工隙間における厚み方向の基準位置を一致させるように一対の塗工用ダイを移動・停止させると共に、テーブルから求めた傾斜角度に一対の塗工用ダイの基準位置における傾斜角度を一致させるように一対の塗工用ダイを回転・停止させる操作指令をダイ移動調節装置へ発する操作指令部とを備えた請求項2記載の両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項5】
基材走行路の上流側に配置した基材案内ロールと、基材走行路の下流側に配置した浮揚式乾燥装置と、基材案内ロールと浮揚式乾燥装置の間に基材走行路を挟んで対向配置した一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイからなり、これら塗工用ダイの間に塗工間隙を形成した一対の塗工用ダイとを備えた両面同時塗工・乾燥装置において、基材走行路が塗工間隙における厚み方向の基準位置を通過するように、一対の塗工用ダイの位置を維持させつつ基材案内ロールを基材走行路の一方面側から他方面側へ向かう方向に沿って移動・停止させるロール移動調節装置を備えたことを特徴する両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項6】
基材走行路を横断する方向に沿って延びて一対の塗工用ダイの基準位置を通過する中心線を中心として、一対の塗工用ダイを回転・停止させるダイ移動調節装置を備えた請求項5記載の両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項7】
ロール移動調節装置を制御する制御装置は、塗工間隙における厚み方向の基準位置にシート状基材の張力条件、浮揚式乾燥装置の乾燥条件及び一対の塗工用ダイの塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における基材走行路を通過させる基材案内ロールの位置情報を規定したテーブルと、任意の塗工・乾燥仕様における基材案内ロールの位置情報についてテーブルから求めた位置に基材案内ロールの位置を一致させるように基材案内ロールを移動・停止させる操作指令をロール移動調節装置へ発する操作指令部とを備えた請求項5又は6記載の両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項8】
ロール移動調節装置及びダイ移動調節装置を制御する制御装置は、塗工間隙における厚み方向の基準位置にシート状基材の張力条件、浮揚式乾燥装置の乾燥条件及び一対の塗工用ダイの塗工条件の何れか一つ又は複数が異なる各種の塗工・乾燥仕様における基材走行路を通過させる基材案内ロールの位置情報及び各種の塗工・乾燥仕様における前記基準位置でのシート状基材の走行軌跡の傾斜角度情報を規定したテーブルと、任意の塗工・乾燥仕様における基材案内ロールの位置情報についてテーブルから求めた位置に基材案内ロールの位置を一致させるように基材案内ロールを移動・停止させる操作指令をロール移動調節装置へ発すると共に、当該任意の塗工・乾燥仕様におけるテーブルから求めた傾斜角度に一対の塗工用ダイの基準位置における傾斜角度を一致させるように一対の塗工用ダイを回転・停止させる操作指令をダイ移動調節装置へ発する操作指令部とを備えた請求項6記載の両面同時塗工・乾燥装置。
【請求項9】
一方面側塗工用ダイ及び他方面側塗工用ダイの各々は、基材走行路へ向かって開口する塗工剤吐出用スリットの開口終端縁から基材走行方向へ向かって先端面を延設し、一対の塗工用ダイの基準位置を中心として揺動できるようにしてある請求項1乃至8のいずれかに記載の両面同時塗工・乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−50954(P2012−50954A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197462(P2010−197462)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000119254)井上金属工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】