説明

中空シャフトの内径スプライン成形方法および成形装置

【課題】中空シャフトの内径スプラインを精度よく効率的に得ることができる成形方法および成形装置を提供する。
【解決手段】一対の絞り成形用の工具間に円管状素材W1を投入し、投入した円管状素材W1に一対の絞り成形用の工具により絞り成形を施して、中間部Qの内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体W2を得る。さらに得られた絞り成形体の絞り部の開口端Rおよびその外周を拘束した後、あらかじめ絞り成形体W2の中間部Q内に位置するように配置しておいた、スプラインマンドレル8の先端部に設けた凹凸加工具9を、絞り部の開口端Rを出た位置にまで引き出して、絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形するプレスの一サイクルを行うことを特徴とする中空シャフトの内径スプライン成形方法およびその成形装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮径部の内径よりも内径の大きい中間部を挟んだ反縮径部側に、内径スプライン部を成形することができる中空シャフトの内径スプライン成形方法および成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵装置には、図4に示すようなステアリングシャフト13が好適に用いられる。図4(a)は自動車用のステアリングシャフト13の構成を示す正面図、図4(b)はそのX-X断面図である。
この自動車用のステアリングシャフト13は、内径スプライン部11aを有するアウターシャフト11と、外径スプライン部12aを有するインナーシャフト12を組み合せて構成される。その際、図示しないステアリングホイール(ハンドル)が、アウターシャフト11の反内径スプライン側に形成した雄セレーション部に連結される。
【0003】
図3には、内径スプライン部11aを、縮径部Pの内径よりも内径の大きい中間部Qを挟んだ反縮径部側に成形し、前記したステアリングホイールを連結するための雄セレーション部を、縮径部Pの端部(図3の右端)に付与したアウターシャフト11を示した。雄セレーション部は、内径スプライン部11aを成形して中空シャフトを得、その後工程で付与するのが普通である。
【0004】
ここで、性能的に優位な自動車用操舵装置を実現するには、ステアリングシャフト13に対し、軸方向にスムーズに摺動できかつ位置決めできることが要求される。そこで、内径スプライン部11aを有する中空シャフトを効率的に得る必要がある。
以下、ロータリースエージング加工機、ブローチ加工機を用い、内径スプライン部を有する中空シャフトを得る場合の問題点、および特許文献1に開示されているアウターシャフトの製造技術について説明する。
【特許文献1】特開平11−247835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)ロータリースエージング加工機を用いた場合の問題点
図5には、ロータリースエージング加工機に取り付けたスエージングダイス20による中空シャフトの内径スプライン成形法を示した。
ロータリースエージング加工機を用いた場合、芯金21の先端部に設けた凹凸加工具22をスエージングダイス20の間に挿入した状態で、スエージングダイス20を回転させ、円管状素材Wを徐々に送り込むことで、絞り成形を行うと同時に内径スプライン部を成形している。
【0006】
しかし、スエージングダイス20を回転させるロータリースエージング加工機は、高価であり、設備の占有面積が広く、そのうえ消費エネルギも大きいという欠点がある。また、ロータリースエージング加工機を用いた中空シャフトの内径スプライン成形法は、段取り性が劣り、高精度化に難がある。
(2)ブローチ加工機を用いた場合の問題点
ブローチ加工機による内径スプライン成形法は、切削加工であるため、高精度でかつ段取り性が良く、設備費用、設備の占有面積、消費エネルギはロータリースエージング加工機に比べて格段に有利である。
【0007】
しかし、ブローチ加工機に取り付けたブローチ工具による内径スプライン成形法は、図3に示したようなアウターシャフト11を製造する場合、素材段階で縮径部Pと、その内径よりも内径の大きい中間部Qとの境で2分し、縮径部Pと反対側の中間部Qにつながる部分に内径スプライン部11aを成形する必要がある。
このため、ブローチ加工機を用い、図3に示したようなアウターシャフト11を製造する場合、縮径部Pと、内径スプライン部11aを成形した部分との2部品の溶接構造としなければならないから、コストと製造効率の点で製品の実現性に難がある。
(3)特許文献1に開示されているアウターシャフトの製造技術
特許文献1には、図6(a)、(b)に示すように、雌セレーション部25に見合う凹凸形状を外周に有する凹凸工具24と、拘束ダイス23とを用い、円管状素材Wの絞り部の開口部より出た側から絞り成形してない中間部内に、凹凸加工具24を押し込むことで雌セレーション部を成形している。
【0008】
しかし、このアウターシャフトの製造技術は、雌セレーション部を成形する際、凹凸加工具24を押し込むにしたがって、雌セレーション部を有する絞り成形体が、押し込み方向へ移動してしまうことにより、精度のよい雌セレーション部を成形することができるか懸念される。
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、縮径部の内径よりも内径の大きい中間部を挟んだ反縮径部側に、内径スプライン部を精度よく効率的に成形することができる中空シャフトの内径スプライン成形方法および成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討し、特許文献1に開示されているように、凹凸加工具を、絞り成形体の絞り部の開口部より出た側から絞り成形してない中間部内に押し込むのとは逆に、スプラインマンドレルの先端部に設けた凹凸加工具を、絞り成形体の中間部内から絞り部の開口端を出た位置にまで引き出すようにするとともに、内径スプライン部を成形する絞り成形体の拘束状態を適切にすることで、上記課題を解決できることを知見して本発明をなした。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.縮径部と、この縮径部の内径よりも内径の大きい中間部と、この中間部の内径よりも内径を小さくした部分に成形された内径スプライン部と、を有する中空シャフトの内径スプライン成形方法において、一対の絞り成形用の工具間に円管状素材を投入する円管状素材投入工程と、投入した円管状素材に一対の絞り成形用の工具により絞り成形を施して、中間部の内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体を得る絞り工程と、得られた絞り成形体の絞り部の開口端およびその外周を拘束した後、あらかじめ絞り成形体の中間部内に位置するように配置しておいた、スプラインマンドレルの先端部に設けた凹凸加工具を、前記絞り部の開口端を出た位置にまで引き出して、前記絞り部の内周面に内径スプライン部を成形する内径スプライン成形工程と、を有するプレスの一サイクルを行うことを特徴とする中空シャフトの内径スプライン成形方法。
2.スプライン成形中、前記絞り部の開口端をノックアウトスリーブにより拘束することを特徴とする上記1.に記載の中空シャフトの内径スプライン成形方法。
3.スプライン成形中、前記絞り部の開口端と反対側の拘束を開放することを特徴とする上記1.または2.に記載の中空シャフトの内径スプライン成形方法。
4.縮径部と、この縮径部の内径よりも内径の大きい中間部と、この中間部の内径よりも内径を小さくした部分に成形された内径スプライン部と、を有する中空シャフトの成形装置であって、円管状素材に絞り成形を施し、中間部の内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体を得る一対の絞り成形用の工具と、前記絞り部の開口端を拘束するノックアウトスリーブと、凹凸加工具を先端部に設けたスプラインマンドレルと、を具備し、一対の絞り成形用の工具は、円管状素材を挟んで竪型プレスのベッドプレートとスライダに固定され、前記スプラインマンドレルはその基部がスプライン成形用のシリンダに連結され、前記絞り成形体の中間部内に位置するように配置しておいたスプラインマンドレルの凹凸加工具を、前記絞り部の開口端を出た位置にまで引き出し可能になっていることを特徴とする中空シャフトの成形装置。
5.前記ノックアウトスリーブはその下部が、上下動可能なノックアウトプレートに固定したノックアウトピンと当接することで、スプライン成形中、前記絞り部の開口端を拘束するように構成されていることを特徴とする上記4.に記載の中空シャフトの成形装置。
6.前記スライダは、それに固定した押さえパンチにより絞り成形を行った後、押さえパンチを原位置の途中にまで戻したとき、内径スプライン部を成形する絞り部の開口端と反対側の拘束を開放するように構成されていることを特徴とする上記4.または5.に記載の中空シャフトの成形装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スプラインマンドレルの先端部に設けた凹凸加工具を、絞り成形体の中間部内から絞り部の開口端を出た位置にまで引き出すようにするとともに、内径スプライン部を成形する絞り成形体の拘束状態を適切にしたことによって、縮径部と、この縮径部の内径よりも内径の大きい中間部と、この中間部の内径よりも内径を小さくした部分に成形した内径スプライン部と、を有する中空シャフトを精度よく効率的に得ることができる。
【0012】
よって、この中空シャフトを用いることで、設備投資費を抑制でき、高精度化した自動車操舵用のアウターシャフトの製品が製造可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる中空シャフトの内径スプライン成形方法、およびその成形装置について説明する。図1は、本発明法を説明する工程図であり、図2は、それを用いて好適な中空シャフトの成形装置10の要部を示す正面図である。
図1中、1は、竪型プレスのベッドプレート、2は、昇降可能なスライダを示す。絞りダイス3と保持ダイス4はベッドプレート1に固定され、ガイドパンチ5と押さえパンチ6はスライダ2に固定されている。
【0014】
ここで、押さえパンチ6は、その内径が円管状素材W1の縮径部P側を収めることができる寸法とされ、これと対向配置した絞りダイス3は、その内径が円管状素材W1の中間部Qの外径よりも小さく形成されている。この円管状素材W1を挟んで対向配置した絞りダイス3と押さえパンチ6とが、一対の絞り成形用の工具3,6である。
また、絞りダイス3の上に配置した保持ダイス4は、図1(a)に示した円管状素材投入工程にて円管状素材W1を垂直に保持する保持工具であり、押さえパンチ6の下に配置したガイドパンチ5は、それに続く絞り工程にて円管状素材W1を垂直に押し込むためのガイド工具である。絞り工程では、図1(b)に示したように、一対の絞り成形用の工具3,6間に投入された円管状素材W1の縮径部P側を押さえパンチ6により押圧し、中間部Qを挟んだ縮径部Pと反対側に絞り部を絞りダイス3により成形している。この絞り工程は、中間部Qの内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体W2を得る工程である。ただし、中間部Qに対しては、絞り成形を施さない。
【0015】
なお、ベッドプレート1に固定されたダイス3,4のうち絞りダイス3の方は、絞り工程にて得た絞り成形体W2の外周を、それに続く内径スプライン成形工程にて拘束する拘束ダイスの機能も有する。
これらのダイス3,4、パンチ5,6のほか、本発明法では、スプライン成形中、絞り成形体W2の絞り部の開口端Rを拘束するノックアウトスリーブ7、凹凸加工具9を先端部に設けたスプラインマンドレル8などの工具が竪型プレスに具備されている。ノックアウトスリーブ7の上部断面形状はリング状で、リング外径が絞りダイス3の内径よりも若干小さくされ、かつリング内径がスプラインマンドレル8の先端部に設けた凹凸加工具9の外径よりも若干大きくされている。
【0016】
このようなノックアウトスリーブ7とすることで、図1(b)に示したように、絞り成形体W2の中間部Q内に位置するように配置しておいたスプラインマンドレル8の凹凸加工具9を、図1(c)に示したように、絞り部の開口端Rを出た位置にまで引き出し、絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形する際、凹凸加工具9の凸部がノックアウトスリーブ7の上部と干渉してしまうのを防止できる。なお、スプラインマンドレル8はその基部が、後述するスプライン成形用のシリンダに連結されている。
【0017】
ここで、絞り部とは、図1(b)に示した絞り工程にて得られる絞り成形体W2の部分であって、図1(b)中の絞りダイス3内に収まっている部分に相当する。この絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形するのが、図1(c)に示した内径スプライン成形工程で、この工程によって中空シャフトW3が得られる。
本発明法は、以上説明した工具を用い、縮径部Pと、この縮径部Pの内径よりも内径の大きい中間部Qと、この中間部Qの内径よりも内径を小さくした絞り部に成形した内径スプライン部11aと、を有する中空シャフトW3を、プレスの一サイクルを行うことで得る内径スプライン成形方法である。
【0018】
すなわち、図1(a)〜(c)に示したように、一対の絞り成形用の工具3,6間に円管状素材W1を投入する円管状素材投入工程と、投入した円管状素材W1に一対の絞り成形用の工具3,6により絞り成形を施して、中間部の内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体W2を得る絞り工程と、得られた絞り成形体W2の絞り部の開口端Rおよびその外周を拘束した後、あらかじめ絞り成形体W2の中間部Q内に位置するように配置しておいたスプラインマンドレル8の凹凸加工具9を、絞り部の開口端Rを出た位置にまで引き出して、絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形する内径スプライン成形工程と、を有する。
【0019】
上記の内径スプライン成形工程に続く、中空シャフト取出工程では、図1(d)に示したように、ノックアウトスリーブ7を上昇させ、中空シャフトW3を取り出す。その後、図1(e)に示したように、移動させた工具を原位置に戻す原位置戻し工程を行い、プレスの一サイクルを終了する。
原位置戻し工程では、上昇させたノックアウトスリーブ7をはじめ、凹凸加工具9を、絞り部の開口端Rを出た位置にまで引き出したスプラインマンドレル8を原位置に戻す。ノックアウトスリーブ7の原位置は、その上端部が絞り工程にて得られる絞り成形体W2の開口端Rと当接しない位置とされ、一方、スプラインマンドレル8の原位置は、図1(d)に示した位置からスプラインマンドレル8を上昇させ、その先端部に設けた凹凸加工具9が、絞り成形体W2の中間部Q内に来る位置である。
【0020】
ところで、スプライン成形中、絞り部の開口端Rおよびその外周を工具で拘束しないと、所望の形状の内径スプライン部11aが成形できない不都合が起こる。そこで、スプライン成形中は、絞り部の開口端Rをノックアウトスリーブ7で拘束するのが、確実にそれを実現できるので好ましい。同様に、スプライン成形中は、絞り成形体W2の外周を絞りダイス3により拘束する。
【0021】
また、スプライン成形中、内径スプライン部11aを成形する絞り部と反対側の、縮径部P側が押さえパンチ6により拘束されたままであると、絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形する際、軸方向伸びが生じ、これによる過大な軸方向圧縮力で座屈が生じる場合がある。そこで、スプライン成形中、絞り部の開口端と反対側の拘束を開放するのが好ましい。
【0022】
以下、本発明法に用いて好適な中空シャフトの成形装置について図2により説明する。図2中、1〜9は図1に示したものと同じであるので説明を省略する。
10aはマンドレル連結ロッド、10bはスプライン成形用シリンダ、10cはノックアウトピン、10dはノックアウトプレート、10eはコネクティングロッドをそれぞれ示す。
この中空シャフトの成形装置10は、スプラインマンドレル8の基部がマンドレル連結ロッド10aを介してスプライン成形用のシリンダ10bに連結され、あらかじめ絞り成形体の中間部内に位置するように配置しておいた、スプラインマンドレル8の凹凸加工具9を、絞り部の開口端Rを出た位置にまで引き出し可能になっている。
【0023】
図2に示した中空シャフトの成形装置10においては、ノックアウトスリーブ7に、内径スプライン部11aを成形する絞り部の開口端Rを拘束する機能と、絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形した中空シャフトW3を取り出す機能を発揮させるため、次のようなスライダ連動方式のノックアウト機構を採用するのが好適である。
ベッドプレート1を支持する架台内の空間に、上下動可能なノックアウトプレート10dが配置され、このノックアウトプレート10dに立設されたノックアウトピン10cと、ノックアウトスリーブ7の下部とが当接することで、上記機能を発揮させる。
このスライダ連動方式のノックアウト機構としては、コネクティングロッド10eの上端部をスライダ2に固定し、ベッドプレート1およびノックアウトプレート10dを貫通して上下動可能に配置されたコネクティングロッド10eの下端部と、ノックアウトプレート10dと連結させ、ノックアウトピン10cが立設されたノックアウトプレート10dを昇降する構成としている。
【0024】
このため、スライダ2に固定した押さえパンチ6を原位置の途中にまで戻したときには、ノックアウトプレート10dとコネクティングロッド10eとが連結され、かつノックアウトプレート10dに立設されたノックアウトピン10cとノックアウトスリーブ7とが当接することで、スプライン成形中、絞り部の開口端Rを拘束できる(図1(c)参照)。なお、押さえパンチ6を固定したスライダ2は、それを昇降させる絞り成形用シリンダ(図示せず)に連結されている。
【0025】
このようにスライダ2は、それに固定した押さえパンチ6により絞り成形を行った後、押さえパンチ6を原位置の途中にまで戻したとき、内径スプライン部11aを成形する絞り部と反対側の拘束を開放するように構成されているのが、絞り部の内周面に内径スプライン部11aを成形する際、軸方向伸びが生じ、これによる過大な軸方向圧縮力で座屈が生じることを、簡単な構造により防止できるので好ましい。
【0026】
表1には、アウターシャフトの製造に関し、従来法と本発明法とを対比して示した。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明法によれば、プレスの一サイクルを行うことによって、従来法であるロータリースエージング加工あるいはブローチ加工に比べて、縮径部Pと、この縮径部Pの内径よりも内径の大きい中間部Qと、この中間部Qの内径よりも内径を小さくした部分に成形した内径スプライン部11aと、を有する中空シャフトW3を精度よく効率的に得ることができる。
【0029】
よって、本発明法によって得た中空シャフトW3を用いることで、設備投資費を抑制でき、高精度化した自動車操舵用のアウターシャフト11製品が実現できる。
【実施例】
【0030】
管状素材W1として、外径=φ28.6mm、肉厚=3mmの構造用炭素鋼管を用い、図1に示した工程を経て中空シャフトW3を成形する成形実験を行った。この成形実験は、アウターシャフト11を製造するため、図2に示した中空シャフトの成形装置10により行った。内径スプライン部11aのスプライン長さL=約100mm。
その結果、得られた中空シャフトW3の寸法精度(内径スプライン部11aの軸方向うねり及びその径方向うねり、オーバーピン径の寸法)は、ブローチ加工と同程度であった。
【0031】
なお、ブローチ加工で中空シャフトを製造する場合、2部品の溶接構造としなければならないから、コストと製造効率の点で製品の実現性に難がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明法を説明する工程図である。
【図2】本発明法を実施するのに好適な中空シャフトの成形装置の要部を示す正面図である。
【図3】本発明により得られるアウターシャフトを示す斜視図である。
【図4】自動車用ステアリングシャフトの構成を示す正面図(a)およびそのX-X断面図(b)である。
【図5】ロータリースエージング加工を説明する要部断面図である。
【図6】特許文献1に記載のアウターシャフトの製造方法を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0033】
W、W1 円管状素材
W2 絞り成形体
W3 中空シャフト
P 縮径部
Q 中間部
R 絞り部の開口端
L スプライン長さ
1 ベッドプレート
2 スライダ
3 絞りダイス(ベッドプレートに固定した絞り用の工具)
4 保持ダイス
5 ガイドパンチ
6 押さえパンチ(スライダに固定した絞り用の工具)
7 ノックアウトスリーブ
8 スプラインマンドレル
9 凹凸加工具
10 中空シャフトの成形装置
10a マンドレル連結ロッド
10b スプライン成形用シリンダ
10c ノックアウトピン
10d ノックアウトプレート
10e コネクティングロッド
11 アウターシャフト(中空シャフト)
11a 内径スプライン部
12 インナーシャフト
12a 外径スプライン部
13 ステアリングシャフト
14 ステアリングホイール(ハンドル)
20 スエージングダイス
21 芯金
22 凹凸加工具
23 拘束ダイス
24 凹凸加工具
25 雌セレーション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮径部と、この縮径部の内径よりも内径の大きい中間部と、この中間部の内径よりも内径を小さくした部分に成形された内径スプライン部と、を有する中空シャフトの内径スプライン成形方法において、
一対の絞り成形用の工具間に円管状素材を投入する円管状素材投入工程と、投入した円管状素材に一対の絞り成形用の工具により絞り成形を施して、中間部の内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体を得る絞り工程と、得られた絞り成形体の絞り部の開口端およびその外周を拘束した後、あらかじめ絞り成形体の中間部内に位置するように配置しておいたスプラインマンドレルの先端部に設けた凹凸加工具を、前記絞り部の開口端を出た位置にまで引き出して、前記絞り部の内周面に内径スプライン部を成形する内径スプライン成形工程と、を有するプレスの一サイクルを行うことを特徴とする中空シャフトの内径スプライン成形方法。
【請求項2】
スプライン成形中、前記絞り部の開口端をノックアウトスリーブにより拘束することを特徴とする請求項1に記載の中空シャフトの内径スプライン成形方法。
【請求項3】
スプライン成形中、前記絞り部と反対側の拘束を開放することを特徴とする請求項1または2に記載の中空シャフトの内径スプライン成形方法。
【請求項4】
縮径部と、この縮径部の内径よりも内径の大きい中間部と、この中間部の内径よりも内径を小さくした部分に成形された内径スプライン部と、を有する中空シャフトの成形装置であって、
円管状素材に絞り成形を施し、中間部の内径よりも内径を小さくした絞り部を有する絞り成形体を得る一対の絞り成形用の工具と、前記絞り部の開口端を拘束するノックアウトスリーブと、凹凸加工具を先端部に設けたスプラインマンドレルと、を具備し、一対の絞り成形用の工具は、円管状素材を挟んで竪型プレスのベッドプレートとスライダに固定され、前記スプラインマンドレルはその基部がスプライン成形用のシリンダに連結され、前記絞り成形体の中間部内に位置するように配置しておいたスプラインマンドレルの凹凸加工具を、前記絞り部の開口端を出た位置にまで引き出し可能になっていることを特徴とする中空シャフトの成形装置。
【請求項5】
前記ノックアウトスリーブはその下部が、上下動可能なノックアウトプレートに固定したノックアウトピンと当接することで、スプライン成形中、前記絞り部の開口端を拘束するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の中空シャフトの成形装置。
【請求項6】
前記スライダは、それに固定した押さえパンチにより絞り成形を行った後、押さえパンチを原位置の途中にまで戻したとき、前記絞り部と反対側の拘束を開放するように構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の中空シャフトの成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−172663(P2009−172663A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16155(P2008−16155)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(506109753)株式会社正田製作所 (8)
【Fターム(参考)】