説明

中空合成樹脂板を用いた函体およびその製造方法

【課題】 この発明は、通称、プラスチックダンボールといわれる中空合成樹脂板を用いた函体およびその製造方法に関する。
【解決手段】第1ブランクまたは第2ブランクのいずれか一方に、所定の幅に設定されて函体成形時に縦方向と横方向に伸びる第1熱溶着代と第2熱溶着代とを形成すると共に両者の交叉する個所に切欠を設けてなり、上記第1熱溶着代とこれと直交する壁面および第2溶着代とこれと直交する壁面を表面側から溶融して一対の第1および第2溶融片となし、該一対の第1および第2溶融片の一方を他方に折り重ねて一体に溶着してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通称、プラスチックダンボールといわれる中空合成樹脂板を用いた函体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
素材がポリピロピレン等の合成樹脂からなり、紙ダンボールと同じ断面がハーモニカ状の中空構造からなるプラスチックダンボールは、耐久性・耐熱性・耐薬性・遮音性などに優れており、特に、ポリピロピレンは、リサイクル性に優れていることが知られており、通い箱などの函体の素材として用いられている。
例えば、特開2006−273352号に示す組立乃至展開可能な通い箱の構造では、1枚の底板と、その短辺から上下に延びる2枚の端壁およびその長辺から左右に延びる2枚の側壁とからなり、2枚の端壁のそれぞれの両側は左右に延びて、側壁の端と重なるフラップを有し、2枚の側壁はその両側で端壁のフラップと重なる部分以外の部分は二重の厚さがあり、使用時には、2枚の端壁と2枚の側壁とを底板から垂直に立て、側壁の両側に端壁のフラップ部分を重ねて固定手段をもって固定することにより、上部の開いた箱を形成することができ、一方、不使用時には、固定を解除して両端壁および両側壁をともに平坦にすることにより、全体としてほぼ奴凧型の輪郭をもった構成からなっている。
上記固定手段では着脱可能な結合構造が用いられるが、箱の形態のまま使用する場合には、前記フラップと側壁とを重ねてからワイヤーステッチ、金属リベット、樹脂リベット、金属ピン等を貫通して機械的に結合したり、前記4つのフラップを側壁に熱や超音波で溶着結合したりしている。
しかし、上記構成の場合、以下のような問題があった。
(1)ブランクが1枚の展開形状からなっているので、シートからブランクにするには木型が必要となる。
(2)ジョイント部の結合代となるフラップの長さは、最低でも40mm以上が必要となる。
即ち、通常、上記ジョイント部は内折であって、内容物の損傷やガタツキを防止し、また耐圧を増すためにジョイント部を延長して内側の段差を無くしている。このため、ブランクの展開寸法が大きくなり、使用シートの面積(重量)が大きくなる。
(3)ジョイント部の結合としては、前述のように機械的結合の場合は金属部品を使用しており、プラスチックダンボールにポリピロピレンを用いる場合には同材質のものは使用されず、完全リサイクル品とはいえず、また、分解分別が必要となり、環境負荷が高い。更に、隅部は折り曲げているだけであり隙間が生じるため水漏れを防ぐことができなかった。
一方、溶着結合の場合には、超音波溶着では、振動方式のために中空構造にピンホールが生じ、外部から汚れや水が浸入し、衛生上問題がある。
(4)そのため従来品では水漏れがしないものはできず、花卉や医薬品の輸送分野での採用は難しかった。
一方、中空合成樹脂板の端面処理方法として、例えば、特開2000−190384号が知られている。
上記構成では、中空体合成樹脂板の開口溝が面している端面処理部を成形熱板により所定厚さの溶融面と該溶融面に第1溶融溝と第2溶融溝を形成し、溶融面を第2溶融溝から開口溝を塞ぐように直角に折曲して第1折曲部5を形成し、且つ該第1折曲部5の先端に位置する第2折曲部を中空体合成樹脂板の板厚の位置で直角に折曲して、該第2折曲部の裏壁面が中空体合成樹脂板の表壁面と略面一となるように溶着成形した構成からなっている。
しかし、上記構成では端面の処理はできるが、2部材を溶着するための構成としては適用できない。
【特許文献1】特開2006−273352号公報 図1から図3参照
【特許文献2】特開2000−190384号公報 図1から図2参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、分割された矩形の3ピースをブランクとして使用することで木型を使用せずに裁断でき、また各ピースを異なる素材で成形することができ、各ピースは縁部を熱溶着を用いて結合することで水が洩れないように密封した函体を提供することにある。
この発明の別の課題は、プラスチックダンボールを用い、強度や耐久性にも優れた函体を提供することにある。
この発明の更に別の課題は、上記函体を容易に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の函体の発明では、
中空合成樹脂板からなる分離したブランク相互を熱溶着して結合する函体構造において、
ブランクが、底壁面とその両側に連接された一対の第1周壁面とからなって断面コ字状に折り曲げられる第1ブランクと、前記底壁面と一対の第1周壁面との周辺部に沿って配置される第2周壁面となる一対の第2ブランクとからなっており、
上記第1ブランクまたは第2ブランクのいずれか一方に、所定の幅に設定されて函体成形時に縦方向と横方向に伸びる第1熱溶着代と第2熱溶着代とを形成すると共に両者の交叉する個所に切欠を設けてなり、
上記第1熱溶着代とこれと直交する壁面および第2溶着代とこれと直交する壁面を表面側から溶融して一対の第1および第2溶融片となし、
該一対の第1および第2溶融片の一方を他方に折り重ねて一体に溶着してなることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記函体組立時に、第1周壁面と第2周壁面との目方向がいずれも縦向きに配置されてなることを特徴とする。
また、請求項3の発明では、
前記第1周壁面と第2周壁面とが、色彩または厚みの異なるプラスチックダンボールからなっていることを特徴とする。
請求項4の発明では、
前記第2ブランクの三辺に沿って第2熱溶着代とその両側に切欠を介して第1熱溶着代とが配置されており、第1熱溶着代と第1周壁面の縁部、第2熱溶着代と底壁面の縁部の表面を溶融して2組の第1および第2の溶融片とし、該第1溶融片を折り曲げて第2溶融片の外側に重ね合わせて柱状縁部を形成してなることを特徴とする。
次ぎに、請求項5の函体の製造方法の発明では、
中空合成樹脂板からなる分離したブランク相互を熱溶着して結合する函体の製造方法において、
ブランクが、底壁面とその両側に連接された一対の第1周壁面とからなる第1ブランクと、前記底壁面と一対の第1周壁面との周辺部に沿って配置される第2周壁面となる一対の第2ブランクとからなっており、
上記第1ブランクまたは第2ブランクのいずれか一方に、所定の幅に設定されて函体成形時に縦方向と横方向に伸びる第1熱溶着代と第2熱溶着代とを形成すると共に両者の交叉する個所に切欠を設けてなり、
前記第1ブランクを各壁面に沿って断面略コ字状に折り曲げ、
該第1ブランクのコ字状の縁部を第2周壁面上に載置し、
前記第1熱溶着代および第2溶着代と、これらと直交する壁面との外側角部に熱板を約45度の角度で押し付けて表面側から所定の厚みまで溶融して第1、第2熱溶着代をそれぞれ第1溶融片とし、直交する壁面側を第2溶融片とし、
押し板を上昇させて第1溶融片を折曲げて第2溶融片と重ねて溶着し、函体を形成してなることを特徴とする。
また、請求項6の発明では、
前記第2ブランクで第1ブランクの一対の第1周壁面と接する辺に第1熱溶着代が形成され、底壁面に接する辺に第2熱溶着代が形成され、両者の交叉する個所に切欠が形成されており、
該切欠を第1ブランクの断面略コ字状に折り曲げられたコーナー部分に整合してなることを特徴とする。
更に、請求項7の発明では、
前記熱板が、中央の直角部の両側に被溶着個所となるコーナーの角度に対応した角度で交叉する一対の加熱面を有しており、
第1ブランクと第2ブランクの直交する外側角部に押し当てて、そのまま熱板を均等に推し進めて前記一対の加熱面が接した個所を等しい厚みで溶融し、押し板で上記溶融した片を重ねて溶着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は以下のような優れた効果を奏することができ、極めて有益である。
(1)分割された矩形の3ピースからなるので、裁断だけでよく木型が不要となり、また板取り効率に優れる。
各ピースは同一のシートから製作する必要がないので、別製品の裁断片などの本来不要な部分からも製作することができる。
(2)各ピースは、函体の用途に応じて厚みや強度、色彩の異なるシートから成形することができる。これにより印刷を要さずに、壁面が色違いの函体を製作することができ、函体に識別性を持たせることができる。
(3)各ピースの縁部を熱溶着を用いて結合して函体の角部を形成するので、溶けた樹脂が中空構造内に埋まって密度の高い角部を形成することができ、函体の強度を高めることができる。
(4)結合構造は熱溶着だけであるので、プラスチックダンボールにポリプロピレンを用いれば、完全なリサイクル対応製品となる。
(5)函体の角部を熱溶着により結合するので、隙間が生じることがなく密封することができるので、異物の侵入防止や液体の洩れ防止が可能となり、函体の用途を拡大することができる。
また、上記函体の製造方法では、更に次の効果を奏する。
(6)第1ブランクと第2ブランクの結合部分に熱板を約45度の角度で押し付けて一対の第1、第2溶融片を形成し、次いで押し板を上昇させて第1溶融片を折り曲げて第2溶融片と重ねて溶着するので、簡単な工程で第2ブランクを第1ブランクに結合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明は、プラスチックダンボールからなる函体のブランクを分離した複数のブランクとし、各ブランクの縁部同士を溶融し、いずれか一方を折り返して一体に熱接合することで、強度を有すると共に密封された函体を実現した。
【実施例1】
【0007】
以下に、この発明の函体の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
函体1は、図1(a)に示すように、底壁面22を挟んで対向する一対の第1周壁面21が図中左右に連続する矩形の第1ブランク2と、図1(b)に示すように、函体組立時に上記第1周壁面21と直交して配置される第2周壁面31になる一対の矩形の第2ブランク3とから構成される。
上記第1ブランク2と第2ブランク3は、図示例では平面から見て長方形としたが、その一方または双方が平面から見て正方形であってもよい。
【0008】
一方、従来製品では、図13に例示するように、函体の展開形状として、第1周壁面21’と、底壁面22’と、第2周壁面31’と、フラップ32’とを有する1枚のブランクからなっているので、該ブランクの成形にはプレス用の木型が必要となるが、本実施例では、第1、第2のいずれのブランク2、3も長方形または正方形からなるのでカッターなどの裁断によって容易に成形することができる。
【0009】
上記のように1つの第1ブランク2と、2つの第2ブランク3とは、それぞれ独立しているので、プラスチックダンボールのシートに対して板取りの自由度が高く、また従来製品のように第2周壁面31’から折り曲げられて第1周壁面21’と重ね合わせるフラップ片32’を設ける必要がない。
そこで、一般的な1100mm×1100mmのパレット用の函(内寸615mm×415mm×270mm)の場合、ネット寸法(使用面積)で比較すると従来製品の1.169mに対して0.86mで足り、グロス寸法(シート幅で換算した場合)で比較しても従来品の1.315mに対して0.95mで足りるので、前記シートの使用量を約30%削減でき、軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0010】
また、第1、第2ブランク2、3は、それぞれ板厚や強度、色彩などの異なる別々のプラスチックダンボールのシートから裁断して成形することができる。
また、第2ブランク3は寸法が小さいので、別製品の裁断片などの本来不要な部分を用いて成形することもできる。
【0011】
[第1ブランク]
第1ブランク2は、プラスチックダンボールのシートに「ダンプラエース」(登録商標 東罐興業株式会社製)を使用し、図1(a)に示すように目方向aが各壁面の連続方向(図中、横方向)となっており、一対の第1周壁面21、21(図示例では横275mm×縦415mm)の間に底壁面22(横625mm×縦415mm)が連設されて1つの長方形状(横1175mm×縦415mm)となっている。
この第1ブランク2の上記第1周壁面21と底壁面22との間に折り目となる罫線23がそれぞれ形成される。
【0012】
[第2ブランク]
第2ブランク3は、前記「ダンプラエース」を使用し、2つで1組として用いられる。
上記第2ブランク3の目方向bは、第1ブランク2の目方向と直交し使用時には上下方向(図中、縦方向)となっており、前記底壁面22の横の長さL1より後述の一対の第1溶着代41分を含んだやや長い横の長さ(625mm+12mm×2=649mm)L2と第1周壁面21の横の長さL3より一方の第2溶着代42分を含んだやや長い縦の長さ(275mm+11mm=286mm)L4からなる長方形状からなっており、第2周壁面31を形成するために用いられる。
【0013】
[切欠]
本実施例では、図2に示すように、第2ブランク3の前記底壁面22の横の長さL1に対応する一方の辺の両側の角部に切欠4が形成されている。
溶着時には上記切欠4の縦横の辺に沿って延び第2ブランク3の各端縁と平行な延長線(点線で図示)を境にして内側を第2周壁面31とし、外側を第1、第2溶着代41、42としている。
図示例では、折曲部分を含む第1溶着代41の幅を約12mm、第2溶着代の幅を約11mmとしているが、この発明では上記数値に特に限定されるものではなく、また同じ寸法であってもよい。
【0014】
[函体の組立方法]
函体1の組立について図3以降の図を参照して説明する。
まず、第1ブランク2を罫線23に沿って、コ字状に折り曲げる。
そして、第2ブランク3を下に水平に配置した上に、各壁面21、22を垂直に立てた状態で折り曲げた第1ブランク2を載置する。
この際に、前記切欠4の角部C1に第1周壁面21と底壁面22との角部C2が整合するように位置決めする。
【0015】
これにより、第2ブランク3は、第1周壁面21と底壁面22で形成された内側のコ字状の空間を塞ぐ第2周壁面31と、第1周壁面21と底壁面22との外側に約11mm幅で伸びる第1、第2熱溶着代41、42となる。
そして、第1周壁面21と第1熱溶着代41とが直角に配置されて第1外側角部5Aが形成され、底壁面22と第2熱溶着代42とが直角に配置されて第2外側角部5Bが形成される(図4、6参照)。
【0016】
そこで、第1、第2外側角部5A、5Bに対して、熱板6と押し板7を順次、均一に押し当て、熱溶着を行う。
即ち、熱板6は、図示例の場合、断面正方形の1つの直角部を除いた3つの直角部R1〜R3を有し、中央の直角部R1の両側に加熱面6a、6bを有する押圧部62と、該押圧部62に結合されたアーム部61とを備えた構成からなっている(図6参照)。
この発明で熱板6の形状は上記実施例に限定されるものではなく、要するに函体の被溶接個所となるコーナーの角度に対応した角度で交叉する一対の加熱面6a、6bを有するものであればよい。
【0017】
[第1外側角部]
そして、第1外側角部5Aの場合は、上記中央の直角部R1を第1周壁面21と第1熱溶着代41との角部に整合して、第1加熱面6aを第1熱溶着代41に押し当てると共に、第2加熱面6bを第1周壁面21に押し当て、そのまま熱板6を約45度の角度で下向きに角部に向けて均等に推し進めることで、第1、第2加熱面6a、6bが接した個所をその板厚の約半分程度溶融する(図6参照)。
【0018】
これにより、第1熱溶着代41は、その端部から第1周壁面21の略半分の幅に至るまでの長さに亘り、第1熱溶着代41の厚みt2の略半分t4を溶融して第1熱溶着代41の中空構造内に溶け込ませて第1溶融片51を形成する。
また、第1周壁面21は、前記第1熱溶着代41の厚みの略半分の位置から前記第1溶融片51と略同じ長さにわたって第1周壁面21の厚みt1の略半分t3を溶融して第1周壁面21内の中空構造内に溶け込ませて第2溶融片52を形成する(図7参照)。
ここで、中空構造内に溶け込ませる溶融部分は、板厚の半分を超えない範囲であることが溶着上好ましい。
なお、第2溶融片52の上部に連なる個所52aは、熱板6の進入により斜めに切り欠かれるが、上記個所52aは、後述の押し板7による加圧時に溶融した樹脂によって埋められる。
【0019】
押し板7は、前記熱板6によって加熱された溶融片を所望の形状に整形して溶着部分を固化するために使用される。
図示例の場合、押し板7は、矩形ブロックからなって、表面が水冷などにより冷却されており、前記熱板6によって加熱された溶融片を冷却しながら整形し固化させているが、この発明では、加熱するものでもよい。
この押し板7は、第1周壁面21の表面の垂下位置に端面がセットされており、熱板6による溶融が終了して熱板6が後方に退動すると、上昇し始める。
そして、押し板7は、上昇しながら上記第1溶融片51を第1周壁面21の外側に折り曲げ、次いで第1溶融片51を第2溶融片52と隙間無く重ね合わせて両者を一体に熱溶着して結合させる。
そして、上記結合個所の表面は第1周壁面21の他の表面と略同一面となる(図8参照)。
これにより第1外側角部5Aに沿って、嵩密度の高い第1柱状縁部50Aが形成されることになる(図5参照)。
【0020】
[第2外側角部]
同様に、図9(a)に示すように、中央の直角部R1を底壁面22と第2熱溶着代42との第2外側角部5Bに沿わせて、熱板6の第1加熱面6aを第2熱溶着代42に、第2加熱面6bを底壁面22に押し当てて、そのまま熱板6を約45度の角度で下向きに角部に向けて均等に推し進めることで、第1、第2加熱面6a、6bが接した個所をその板厚を約半分程度溶融する(図9(b)参照)。
【0021】
これにより、第2熱溶着代42は、その端部から底壁面22の厚みの略半分の幅に至るまでの長さに亘り、第2熱溶着代42の厚みの略半分を溶融して第2熱溶着代42の中空構造内に溶け込ませて第1溶融片53を形成する。
また、底壁面22は、前記第1溶融片53の厚みの略半分の位置から前記第1溶融片53と略同じ長さにわたって底壁面22の厚みの略半分を溶融して底壁面22内の中空構造内に溶け込ませて第2溶融片54を形成する(図8(b)参照)。
押し板7は、底壁面22の表面の垂下位置に端面がセットされており、熱板6による溶融が終了して熱板6が後方に退動すると、上昇し始める。
【0022】
そして、押し板7は、上昇しながら上記第1溶融片53を底壁面22の外側に折り曲げ、次いで第1溶融片53を第2溶融片54と隙間無く重ね合わせて両者を一体に熱溶着して結合し、該結合個所の表面は他の底壁面22の表壁面と略同一面となる(図9(c)参照)。
これにより第2外側角部5Bに沿って、嵩密度の高い第2柱状縁部50Bが形成されることになる(図5参照)。
【0023】
このように第1熱溶着代41を第1周壁面21の外側に折り曲げて一体化し、第2熱溶着代42を底壁面22の外側(完成時の下側)に折り曲げて一体化することで、一対の第1周壁面21、21および底壁面22の延出方向の縁部に沿ってその開口する両側に、第2周壁面31をそれぞれ一体に結合して函体1を形成することができる。
上記構成を採ることにより、従来構造で必要とされる4枚のフラップ分の重量の軽量化(約25%の軽量化)が図れると共に、圧縮強度が平均値で約20%向上するという特段の効果を確認することができた。
これは、ブランクの縁部を熱溶着を用いて結合して函体の角部を形成するので、溶けた樹脂が中空構造内に埋まって嵩密度の高いコーナー縁部が形成されるこ、および目方向を縦に揃えたことによる。
図14に本願発明に係る製品と従来品の圧縮強度を比較するグラフを示す。
この圧縮強度比較試験の条件は以下の通りである。
(a)試験機 圧縮試験機 Shimazu(株)製 DSS−2000
(b)前処理 温度26度 50%RHの温湿度環境で24時間以上放置
(c)圧縮量 圧縮速度12.5mm/min 静平面圧縮加重
(d)箱の状態 内容物無し、天板を付けて荷重試験を行う。
【実施例2】
【0024】
上記実施例では、第2ブランク3に切欠4と、該切欠4に沿って第1熱溶着代41と第2熱溶着代42とを形成したが、図10に示すように、逆に第1ブランク2に設けてもよい。
実施例2の第1ブランク2は、第1周壁面21の両側縁が外側に僅かに延びて第1熱溶着代41’が形成されており、底壁面22の両側縁が外側に僅かに延びて第2熱溶着代42’が形成された略長方形の板状からなっており、上記第1熱溶着代41’と第2熱溶着代42’との間には正方形の切欠4’が形成された図示例構成からなっている(図10(a)参照)。
また、第2ブランク3は長方形状または正方形状の第2周壁面31からなっている。
【0025】
この場合も、前記実施例と同様に、第1、第2熱溶着代41’、42’および第2周壁面31の一部を一対の熱板(図示省略)で、その厚みの約半分未満を溶融して第1溶融片51’、53’と第2溶融片52’、54’を形成し、第1熱溶着代41’および第2熱溶着代42’をそれぞれ第2周壁面31の外側に沿って折り曲げて一体に且つ他の第2周壁面31と同一平面となるように溶着している(図10(c)参照)。
溶着の詳細を図11に示すが、その構成は図6から図9に準じるので、その説明を省略する。
この場合も、前記実施例と同様に、隙間を生じさせることがなく、埃や液体の侵入や液体の漏れを防止することができる。
【0026】
[函体の他の適用例]
前記実施例1、2では、第2周壁面31を形成する第2ブランク3が、第1周壁面21を形成する第1ブランク2とは別体であるので、組立時に立設する第1周壁面21と第2周壁面31の目方向a、bを縦向きに揃えることができ、函体1の強度を高めうるが、この発明では、従来と同様に一方の目方向が横向きとなるものであっても、あるいは双方の目方向が横向きとなるものであってもよい。
【0027】
同様に、従来は、函体が同一のシートから形成されているため、その厚みや強度、色彩なども同じであり変更できなかった。
そのため函体自体や、特定の壁面に識別子を付する場合は、塗料の塗布や、印刷、ラベルの貼付等が必要であった。
これに対して、本願発明では、第2周壁面31となる第2ブランク3は別体となっているので、第1ブランクとは別の厚みや強度、または色彩などが異なるプラスチックダンボールのシートから成形することができるので、函体1を組み立てるだけで、一方、または双方の第2周壁面31の厚みや強度、または色彩などを変更することが可能となる。
【0028】
また、第1ブランク2と第2ブランク3とがそれぞれ厚みが異なる場合に、熱板6で溶融する厚みは、いずれか薄い方の厚みの半分に達しない程度であることが好ましい。
これにより、第1溶融片と第2溶融片とを重ね合わせた場合に、その重ねた面と他の面とを同一面上に成形することができる。
【実施例3】
【0029】
次ぎに、上記のように構成された函体1を通い箱として使用する一例を図12に示す。
この場合には、ポリプロピレン製の嵌合フレーム71とコーナー継手72とを用いる。
即ち、第1周壁面21、第2周壁面22のそれぞれの上端縁部に沿って直線状に延びる断面チャンネル状の嵌合フレーム71を上から差し込む。
そして、函体1の角部で直角方向に隣接する一対の嵌合フレーム71、71にアングル状に延びる断面チャンネル状のコーナー継手72を上から外嵌する。
そして、コーナー継手72の上からスポット溶接により嵌合フレーム71を結合して使用に供することができる。
【0030】
このように全ての素材をポリプロピレン製とすることで、そのままリサイクルが可能となる。
通い箱やコンテナの構造としては上記実施例に限らず、その他の公知の構造を用いることができる。
また、函体は、上記のように通い箱とする場合に限らず、函体1をC式の身およびまたは別体の被せ蓋とすることもできる。
また、ブランクの端面をシールすれば、中空構造の目が端部で塞がれるので異物の侵入防止が図れる函体を製作することができ、HACCP(食品の安全衛生管理手法)対応の函体としても使用することができる。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】函体を構成するブランクであって、(a)は第1ブランクの平面図、(b)は第2ブランクの平面図である。
【図2】第2ブランクの拡大平面図である。
【図3】第1ブランクと第2ブランクとを組み立てる場合の第1工程である。
【図4】同第2工程である。
【図5】(a)は同第3工程であり、(b)は開口を上にした函体の斜視図である。
【図6】第2周壁面と第1周壁面との熱溶着の開始前の状態の拡大断面図である。
【図7】熱溶着代を溶融した状態の拡大断面図である。
【図8】第1溶融片と第2溶融片とを溶着した状態の拡大断面図である。
【図9】第2周壁面と底壁面との熱溶着を示す拡大断面図であって、(a)は溶着前、(b)は溶着による溶融状態、(c)は溶融片の溶着状態である。
【図10】実施例2の熱溶着代を第1ブランクに設けた場合の組立手順を示す図であって、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程を示す斜視図である。
【図11】図10の第1周壁面(底壁面)と第2周壁面との熱溶着を示す拡大断面図であって、(a)は溶着前、(b)は溶着による溶融状態、(c)は溶融片の溶着状態である。
【図12】実施例3の通い箱の場合の説明図であって(a)は分解斜視図、(b)は組立図である。
【図13】従来の函体のブランクの一例を示す平面図である。
【図14】本願発明に係る製品と従来品の圧縮強度を比較するグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 函体
2 第1ブランク
3 第2ブランク
4、4’切欠
5A 第1外側角部
5B 第2外側角部
6 熱板
6a 第1加熱面
6b 第2加熱面
7 押し板
10 第1直交部
20 第2直交部
21 第1周壁面
22 底壁面
23 罫線
31 第2周壁面
41 第1熱溶着代
42 第2熱溶着代
51 第1溶融片
52 第2溶融片
53 第1溶融片
54 第2溶融片
61 アーム部
62 押圧部
71 嵌合フレーム
72 コーナー継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空合成樹脂板からなる分離したブランク相互を熱溶着して結合する函体構造において、
ブランクが、底壁面とその両側に連接された一対の第1周壁面とからなって断面コ字状に折り曲げられる第1ブランクと、前記底壁面と一対の第1周壁面との周辺部に沿って配置される第2周壁面となる一対の第2ブランクとからなっており、
上記第1ブランクまたは第2ブランクのいずれか一方に、所定の幅に設定されて函体成形時に縦方向と横方向に伸びる第1熱溶着代と第2熱溶着代とを形成すると共に両者の交叉する個所に切欠を設けてなり、
上記第1熱溶着代とこれと直交する壁面および第2溶着代とこれと直交する壁面を表面側から溶融して一対の第1および第2溶融片となし、
該一対の第1および第2溶融片の一方を他方に折り重ねて一体に溶着してなることを特徴とする函体構造。
【請求項2】
函体組立時に、第1周壁面と第2周壁面との目方向がいずれも縦向きに配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の函体構造。
【請求項3】
第1周壁面と第2周壁面とが、色彩または厚みの異なるプラスチックダンボールからなっていることを特徴とする請求項1に記載の函体構造。
【請求項4】
第2ブランクの三辺に沿って第2熱溶着代とその両側に切欠を介して第1熱溶着代とが配置されており、第1熱溶着代と第1周壁面の縁部、第2熱溶着代と底壁面の縁部の表面を溶融して2組の第1および第2の溶融片とし、該第1溶融片を折り曲げて第2溶融片の外側に重ね合わせて柱状縁部を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の函体構造。
【請求項5】
中空合成樹脂板からなる分離したブランク相互を熱溶着して結合する函体の製造方法において、
ブランクが、底壁面とその両側に連接された一対の第1周壁面とからなる第1ブランクと、前記底壁面と一対の第1周壁面との周辺部に沿って配置される第2周壁面となる一対の第2ブランクとからなっており、
上記第1ブランクまたは第2ブランクのいずれか一方に、所定の幅に設定されて函体成形時に縦方向と横方向に伸びる第1熱溶着代と第2熱溶着代とを形成すると共に両者の交叉する個所に切欠を設けてなり、
前記第1ブランクを各壁面に沿って断面略コ字状に折り曲げ、
該第1ブランクのコ字状の縁部を第2周壁面上に載置し、
前記第1熱溶着代および第2溶着代と、これらと直交する壁面との外側角部に熱板を約45度の角度で押し付けて表面側から所定の厚みまで溶融して第1、第2熱溶着代をそれぞれ第1溶融片とし、直交する壁面側を第2溶融片とし、
押し板を上昇させて第1溶融片を折曲げて第2溶融片と重ねて溶着し、
函体を形成してなることを特徴とする函体の製造方法。
【請求項6】
第2ブランクで第1ブランクの一対の第1周壁面と接する辺に第1熱溶着代が形成され、底壁面に接する辺に第2熱溶着代が形成され、両者の交叉する個所に切欠が形成されており、
該切欠を第1ブランクの断面略コ字状に折り曲げられたコーナー部分に整合してなることを特徴とする請求項5に記載の函体の製造方法。
【請求項7】
熱板が、中央の直角部の両側に被溶着個所となるコーナーの角度に対応した角度で交叉する一対の加熱面を有しており、
第1ブランクと第2ブランクの直交する外側角部に押し当てて、そのまま熱板を均等に推し進めて前記一対の加熱面が接した個所を等しい厚みで溶融し、押し板で上記溶融した片を重ねて溶着してなることを特徴とする請求項5に記載の函体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−222255(P2008−222255A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61108(P2007−61108)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】