説明

中空軸−接続装置

【課題】構成部材を削減し、これら構成部材の取付空間、全体の重量及びコストを削減しつつ剛性を高めることが可能な接続装置を提供すること。
【解決手段】中空軸1における接続部材2のトルク伝達可能な接続のための接続装置であって、前記接続部材2が、前記中空軸1の外形に一致しつつ前記中空軸1の端部を収容する貫通孔8を含んで構成され、前記中空軸1が該中空軸と前記接続部材2の接続部において圧着止め具9を有しており、該圧着止め具9が前記中空軸1の内形と共に少なくとも部分的に嵌着部分を形成している前記接続装置において、前記圧着止め具9を、前記中空軸1に設けられた少なくとも1つの軸受13,14用の軸受収容部10,11として形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、中空軸における接続部材のトルク伝達可能な接続のための接続装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような接続装置は、トルクを伝達するすべての種類の部材を軸あるいは中空軸に接続するのに用いられている。例えば、上記のような接続は、モーメントレバーあるいはコントロールアームをトーションバーあるいはスタビライザに取り付ける場合に応用されている。このような応用分野の一例としては、当該運転室が振動及び車両のシャーシ(以下単に「シャーシ」という。)の動作の影響を受けないよう、ダンパにより懸架された特にトラックなどの大型車の運転室が挙げられる。
【0003】
このような大型車においては、大きな負荷に耐えるために、バネのバネ定数を必然的に大きくする必要があるため、路面の凹凸又はアクスル及びパワートレインから生じる振動及び固体伝送音の多くがバネを介してシャーシへ伝達されてしまう。人間工学及び運転者の保護の観点から、運転室更には運転者への継続的な突上げ及び振動を最小化するために、運転室を固有の懸架システムを用いてシャーシにおいて支持することが開発されてきた。
【0004】
運転室用のこのような懸架システムは、運転室の重量が車体の重量に比してかなり軽量であるため、車体全体の懸架におけるものよりも小さなバネ定数に設定されているとともに、ソフトな緩衝を行うものとなっている。したがって、運転室のこのようなソフトな懸架システムにより、路面の凹凸や、車両のパワートレイン又はアクスルからの振動をより良好に運転者の座席へ伝達しないようにすることが可能である。
【0005】
運転室用のこのような懸架システムは、特に横力に対する支持あるいは運動学上の要求が大きい例えばピッチング時又はローリング時及びコーナリング時に対応するために構造的に複雑となってしまう。そのため、固有のバネ部材あるいはダンパ部材のほかに、車体の懸架と同様に、特にローリングスタビライザを設ける必要がある。このローリングスタビライザにより、運転室のシャーシに対する不都合な横方向へのローリングを制限することが可能である。
【0006】
例えばコーナリング時や車両の片側における路面のみに凹凸がある場合にローリングの抑制を行うために、従来技術における運転室用の懸架装置においては、ローリングスタビライザとして、トーションバーあるいは中空軸の形状に形成されたものが用いられている。そのため、車両の走行方向について左側及び右側における運転室の懸架部材の圧縮幅が一定の割合で互いに影響することになる。
【0007】
運転室における力、モーメント及び動作をローリングスタビライザに作用させるため、並びに運転室を長手方向及び横方向にガイドするために、一般には、ローリングスタビライザの軸方向両端部にはモーメントレバーが設けられている。ここで、このモーメントレバーにおけるローリングスタビライザから遠い側の端部が軸受を介して運転室に結合されている一方、同近い側の端部はローリングスタビライザに結合されている。この場合、このローリングスタビライザ自身がシャーシに固定されたモーメントレバーの支持部となっているか、又はモーメントレバーにおけるローリングスタビライザに近い側の端部に軸受箇所が設けられている。なお、この軸受箇所は、モーメントレバーをシャーシに可動に結合するとともに、ローリング動作時に生じる反作用力をシャーシに作用させるものとなっている。
【0008】
ところで、上述のような、特にローリングスタビライザとモーメントレバーを接続する接続装置には、非常に長い寿命が要求される。これは、例えば軽量化を図ると同時にねじり剛性を高めるために、特にローリングスタビライザ用のトーションバーあるいはスタビライザシャフトを比較的薄肉のトーションチューブあるいは中空軸で形成する場合も同様である。
【0009】
例えばモーメントレバーなどの適当な接続部材を備えたこのようなトーションチューブあるいは中空軸のトルク伝達可能な接続のために、モーメントレバーをトーションチューブに溶接あるいは圧着させることが従来から知られている。しかし、溶接あるいは圧着のいずれの場合でも、モーメントレバーとトーションチューブの間の接続部が潜在的な脆弱箇所となってしまう。
【0010】
モーメントレバーとトーションチューブを溶接する場合には、このような溶接は、該溶接時に加えられる熱及びこれに伴う組織変化並びに溶接ビードにおいて必然的に生じる切欠き応力(応力集中)に関連している。また、トーションチューブとモーメントレバーを単純に圧着する場合には、比較的負荷の少ない冷間加工によって行えるが、大きな力及びモーメントにより、所望の寿命を得ることができない場合が多い。これは、トルクの伝達性を高める目的で中空軸における接続部材との接続領域における断面形状を円形でない形状とする場合も同様である。
【0011】
これは、特に重量の観点から比較的薄肉のトーションチューブあるいは中空軸を用いる場合に、トーションチューブへの力作用領域において、制限された圧力あるいはせん断力のみがチューブの壁面部によって伝達されることに関係している。このことから、例えば中空軸と接続部材の間の圧着は、大きなトルクを伝達するのに必要なプレスばめによって行うことができない。
【0012】
そして、比較的小さな伝達可能な力を超過すると、モーメントレバーにおけるプレスばめの範囲においてチューブ壁面部が剥離することになるか、又はチューブ壁面部を圧入することができる。しかし、これによりチューブ断面の機能が失われることになってしまう。
【0013】
このような問題を解消するため、中空軸とモーメントレバーの間の溶接部分をなくすとともに、中空軸とモーメントレバーの間の圧着部分の形成後に、この圧着部分に止め具を打ち込むことによってプレスばめの欠点を解消することが特許文献1に提案されている。なお、上記止め具は、圧着部分における比較的薄肉のチューブ壁面部を支持するとともに、大きなトルクの伝達を継続的に行えるものとなっている。
【0014】
また、この提案された改善策にもかかわらず、この特許文献1に開示された、中空軸の接続部材への接続手段は、所定の使用目的のみに限定されているか、あるいは、場合によって、運転室用のローリングスタビライザにおいて必要となるような他の機能を実現するためのかなりの数量の追加的な構成部材が必要となる。そして、運転室若しくはシャーシに配置された軸受ブラケット又は例えば運転室の懸架のためのバネ・ダンパ部材用の他の構成部材のための連結箇所あるいは支持箇所を提供することも上記機能に含まれている。
【0015】
さらに、上記のような接続装置は、特に商用車である車両のアクスルにおけるローリングスタビライザ及びアクスルガイドにも応用される。車両のアクスルのローリング抑制のために、従来においては、主に、一部湾曲した中実のアンチロールバーが使用されている。なお、このアンチロールバーは重量の大きな商用車においてはこれに応じた大きな質量を有しており、そのトルクあるいはねじり剛性に関する材料利用効率は良くないものとなっている。
【0016】
また、中実のアンチロールバーを、体積が大きく比較的薄肉の軽量な中空軸によって置き換えることは、このような中空軸と例えばモーメントレバーのようなトルク伝達可能な接続部材の間の欠点を有する接続技術においてあきらめられてきた。さらに、車両のアクスル用のこのようなアンチロールバーにおいて、構造が簡易であるとともに強固である上軽量なアクスル懸架部を得るために、スタビライザにローリング抑制の機能のほかにアクスルガイドの機能も持たせるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許第102005056878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、上記欠点を解消することが可能な、中空軸における接続部材のトルク伝達可能な接続のための接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、請求項1記載の発明の特徴を有する接続装置により達成される。また、好ましい実施形態については、各従属請求項に記載されている。
【0020】
本発明による接続装置は、従来のように、例えばモーメントレバー又はハブなどの中空軸における接続部材のトルク伝達可能な接続を行うものである。この接続部材は、中空軸の端部を収容するために、中空軸の外部断面形状に一致した貫通孔を含んで構成されている。また、中空軸は従来のように中空軸と接続部材の接続領域において圧着止め具を有しており、この圧着止め具は、中空軸の内部断面と共に少なくとも部分的にプレスばめ部を形成している。
【0021】
これにより、中空軸と接続部材の間の継続的かつ大きな負荷に耐え得る接続部が得られる。また、接続装置への大きな負荷を受けても、該接続装置におけるプレスばめ部及び/又は管状壁面部の損傷の危険が生じることなく、薄肉の中空軸を例えばハブ又はモーメントレバーなどの適当な接続部材に結合することが可能である。これは、圧着止め具が接続装置における中空軸の壁面部を支持しているとともに接続部材の貫通孔における内面部に嵌合することで圧着止め具と上記壁面部の間だけではなく中空軸の外面部と接続部材における貫通孔の内面部の間にも嵌合あるいはプレスばめが形成されていることに関連している。
【0022】
本発明による接続装置は、圧着止め具が、中空軸に設けられた少なくとも1つの軸受用の軸受収容部としても形成されていることを特徴としている。この利点は、例えば中空軸の支持などの従来は構造的に別の機能であったものを圧着止め具の接続機能に構造的に統合することで、圧着止め具に2つの機能を持たせることが可能であるという点にある。
【0023】
また、本発明により得られる利点は、軽量化、構造の簡易化、追加的な接続部の省略並びに部品点数の少ないコンパクトな構造及びこれに伴う信頼性の向上とコスト削減が挙げられる。
【0024】
本発明により中空軸に設けられた少なくとも1つの軸受収容部が圧着止め具に一体的に形成されるため、従来技術におけるように、中空軸に結合された例えばローリングスタビライザのモーメントレバーなどの接続部材へ軸受部を収容する必要がなくなる。
【0025】
そして、これにより、上述のような構造的な簡易化の達成及びこれに伴う利点が得られるだけでなく、モーメントレバー自体の修正もコストを抑制しつつ行うことが可能である。また、本発明によれば、例えばスタビライザの懸架あるいは支持のために以前は必要であった軸受ジャーナルあるいは軸受収容部をなくすことができるため、モーメントレバーに作用する負荷及びモーメントレバーにおける強度要求を低減することが可能である。これにより、例えば、モーメントレバーを焼入れされた鍛造部品で形成する必要がなく、これを焼入れされていないか、又は安価な鋳造部品として形成することが可能である。したがって、コスト削減を図ることが可能である。
【0026】
このとき、圧着止め具が、中空軸に設けられた少なくとも1つの軸受における軸受ブッシュの軸受ボルトを形成しているのが好ましい。
【0027】
また、本発明の特に好ましい実施形態は、複数の軸受の軸受ブッシュを圧着止め具に設けたことを特徴としている。この場合、追加的な機能を構造的に圧着止め具に統合することが可能である。そのため、取付空間、重量及びコストを更に削減することができる上、高い剛性を有する懸架あるいは支持を、手間を削減しつつ達成することもできる。
【0028】
本発明による接続装置は基本的にあらゆる種類のハブ状の部材を中空軸の端部へ接続するのに適しているため、中空軸及びこれに設けられる接続部材の種類に関係なく本発明を実施することが可能である。
【0029】
また、本発明の一実施形態は、中空軸をアンチロールバーあるいはねじりバネとして形成するとともに、接続部材により、ねじりバネの脚部と、該ねじりバネの軸受箇所における少なくとも1つの軸受を形成したことを特徴としている。このような場合、圧着止め具がアンチロールバーにおけるねじりバネの脚部の固定手段及びアンチロールバーの懸架おあるいは支持をする支持箇所として機能するため、アンチロールバー及びねじりバネの脚部を接続する圧着止め具の構造的に有利な二重の機能を得ることが可能である。
【0030】
本発明による接続装置は基本的にあらゆる種類のシャフト−ハブ連結機構において適用することが可能であるため、本発明によれば、本発明による接続装置を具体的な使用目的にかかわらず用いることが可能である。
【0031】
また、本発明の一実施形態においては、中空軸を商用車(例えばトラック)の運転室のローリングスタビライザとして形成されている。このとき、接続部材は運転室をガイドするコントロールアームとして形成されており、圧着止め具に設けられた少なくとも1つの軸受が、シャーシ又はアクスルに接続可能な軸受ブラケットに配置されている。これにより、特に従来においては互いに分離され、かつ、それぞれコントロールアームに配置された、ローリングスタビライザをシャーシあるいは運転室に連結するための支持部のうちいずれかをなくし、その代わりに、この支持部を本発明による接続装置における圧着止め具の延長部に配置することで、従来技術に比して非常に簡易な運転室用のスタビライザの接続構造及び懸架構造を得ることができる。
【0032】
すなわち、圧着止め具をスタビライザ本体部におけるコントロールアームの固定手段、スタビライザの懸架支持部及びスタビライザのシャーシあるいは運転室との接続部とすることで、圧着止め具の三重の機能が得られることになる。この場合、ローリングスタビライザの構造をその強度を維持しつつ簡易化し、運転室用のトレーリングアーム及びコントロールアームの機能並びにスタビライザ機能を統合することで、ローリングスタビライザの所望の統合された機能が得られる。
【0033】
また、本発明の他の実施形態は、中空軸をトラック用運転室のローリングスタビライザとするとともに、接続部材をアクスルを支持又はガイドするコントロールアームとし、圧着止め具に設けられた少なくとも1つの軸受を、シャーシ又はアクスルに接続可能な軸受ブラケットとしたことを特徴としている。
【0034】
このような実施形態においては、圧着止め具をモーメントレバー、あるいはローリングスタビライザにおけるコントロールアームの固定手段、スタビライザ自体の懸架用支持部及びスタビライザとアクスルあるいはシャーシとの間の連結手段として機能させれば、圧着止め具の三重の機能が達成される。さらに、このような実施形態によれば、車両−アクスル連結部におけるローリングスタビライザを(特に重量の大きな商用車の場合)更なる要求を満たす操舵機能あるいは車輪ガイド機能を担うようにすることが可能であるという利点が得られる。これにより、従来において必要な構成部材、該構成部材のための取付空間、質量及びこれに伴うコストを削減することが可能である。
【0035】
また、本発明の他の実施形態は、バネ・ダンパユニットの軸受における軸受ブッシュを圧着止め具に設けたことを特徴としている。このとき、この軸受ブッシュを、圧着止め具に設けられた中空軸の支持部に代えてあるいは該支持部に加えて設けてもよい。
【0036】
このような実施形態においては、圧着止め具が、コントロールアーム又はねじりバネの脚部を中空軸との連結手段としての機能、中空軸の軸受箇所としての機能、中空軸を連結部材(例えばシャーシ、アクスル又は運転室)に連結する機能及び(例えばアクスル又は運転室のための)弾性懸架のための連結点としての機能を形成することにより、圧着止め具は四重の機能を備えることになる。
【0037】
すなわち、本発明によれば、非常にコンパクトなスタビライザ又はスタビライザと例えばアクスル若しくは運転室用のコントロールアームとを組み合わせたものを得ることができる。そして、これにより取付空間、重量及びコストを大幅に削減することが可能であると同時に、従来技術に比して、剛性、耐久性、構造の簡易性等の構造的な特性を改善することも可能である。
【0038】
なお、本発明の実現に際して、中空軸の外周の断面形状及び連結部材との連結箇所の貫通孔の形状がどのようなものであるかは重要ではない。むしろ、本発明における圧着止め具は、連結領域において円状の外周断面を有する中空軸において適当にあらかじめ設けられるようになっている。
【0039】
本発明の好ましい実施形態においては、中空軸、接続部材及び圧着止め具が、少なくとも接続部材との接続領域において円状以外の形状に形成されている。この場合、プレスばめによる嵌着に加えて、円状以外の形状に形成された結合断面及び圧着止め具による係合により、中空軸と接続部材の間で伝達されるトルクが大幅に増大する。
【0040】
このような伝達されるトルクの増大は、中空軸及び圧着止め具の円状以外の具体的な形状並びに接続部材の貫通孔の具体的な形状とは無関係となっている。すなわち、(接続部材における)中空軸、圧着止め具及び接続貫通孔を長円状あるいはだ円状の断面形状とすることが考えられる。これにより、特に最小のノッチ効果のみが生じることになる。また、本出願人が見出したように、使用形態及び実施形態に応じて、接続範囲が円状の断面形状を有する場合には、特に有利な作動電圧変化が生じることになる。
【0041】
本発明の他の実施形態は、中空軸と、接続部材における貫通孔を、接続領域において略多角形状の断面を有するよう形成したことを特徴としている。これにより、中空軸と接続部材の間のの緊密な結合がなされ、特に大きなトルクを伝達することが可能となる。
【0042】
ここで、中空軸あるいはこれに対応する接続部材における貫通孔の内部断面形状及び圧着止め具の貫通孔は、常に有限の曲率を有している。すなわち、中空軸、接続部材及び圧着止め具の断面形状は、それぞれ鋭いエッジを有さず、多角形状の断面形状は丸みを帯びた形状となっている。この場合、材料における多角形状のエッジ部に生じるノッチ効果を大幅に減少させることができるとともに、長期にわたって支障なく伝達されるトルクが増大されることになる。
【0043】
本発明の一実施形態は、中空軸及び接続部材の接続領域における断面形状を一定壁厚状部として形成したことを特徴としている。いわゆる「一定壁厚状部」とは、断面形状としての閉じた線を示しており、この断面形状は、正方形に内接する円のように、対応する正方形内のいずれの角度位置においても常にこの正方形の四面に接触するものとなっている。したがって、中空軸及び接続領域における接続部材の断面形状としての一定壁厚状部は、ノッチ効果は大きいが最適な係合が得られる多角形と係合及びノッチ効果のない円状の断面の間の特に効果的な中間形状となっている。
【0044】
また、本発明の他の実施形態によれば、圧着止め具及び接続部材における貫通孔が、中空軸及び接続部材の接続領域においてやや円すい状に形成されている。このようにすることで、圧着止め具を圧入する際に、この圧着止め具、中空軸及び接続部材の貫通孔の間で均等かつ良好な面圧が生じることになる。これにより、圧着止め具が、圧入時に中空軸における多角形状の端部を支持するとともに先細の円すい状に形成された接続部材の内面を押圧するため、大きなトルクを確実に伝達することができるとともに、軸方向への接続部材のせん断強さを高めることもできる。また、このような実施形態によれば、接続部材の貫通孔と圧着止め具の外部断面の間の嵌合を、場合によっては多少の遊びをもって設定する必要がある。
【0045】
本発明の他の実施形態は、圧着止め具を中空とするか、又はこれに軸方向に延在する凹部を設けたことを特徴としている。これにより、圧着止め具の重量を低減することができるとともに、中空軸の圧着接続部の入口箇所における壁厚変化が小さいことにより圧着接続部における力線変化を改善することも可能である。
【0046】
ところで、本発明は、圧着止め具についての具体的な材料選択にかかわらず実現することが可能である。圧着止め具を鉄材料(例えば鋼)あるいは非鉄材料(例えばアルミニウム)で加工される。鋼製の圧着止め具によれば、コスト削減を図ることができるとともに、高い剛性を得ることができる上、高い面圧を生じさせることが可能である。一方、アルミニウム製の圧着止め具によれば、軽量化を図ることが可能であるとともに、アルミニウムの延性を利用することができる。すなわち、アルミニウムの延性によって、損傷しやすいエッジ部の押圧及びこれに伴う不意のノッチ効果の削減を図ることが可能である。なお、延性を利用しない場合には、中空軸の圧着接続部への特に入口付近にノッチ効果が生じることがある。
【0047】
本発明の一実施形態は、圧着止め具における中空軸と対向する端部に面取り部を周設したことを特徴としている。このように形成された圧着止め具によれば、容易に挿入して取り付けることができるとともに、エッジ形成及び場合によって生じる切粉又は圧着止め具を中空軸の開口部へ挿入する際に中空軸の内面部に生じる材料の剥離を防止することも可能である。
【0048】
また、本発明の他の実施形態は、中空軸における円状以外の形状に形成された範囲を接続部材との接続領域のみに設定したことを特徴としている。すなわち、中空軸は、接続部材との接続領域以外の部分においては、特に円状の断面を有していてもよい。これにより、中空軸がその両端部においてのみ円形以外の形状となっているため、該中空軸の製造コストを削減することが可能である。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、構成部材を削減し、これら構成部材の取付空間、全体の重量及びコストを削減しつつ剛性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来技術による圧着止め具−接続装置を備えたローリングスタビライザの等尺図である。
【図2】図1における接続装置の圧着止め具を示す等尺図である。
【図3】本発明の一実施形態による接続装置を備えた、運転室用のローリングスタビライザを示す図1に対応する図である。
【図4】本発明による接続装置の圧着止め具を示す図2に対応する図である。
【図5】図1に示す従来技術による接続装置の長手方向断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による図5に対応する接続装置の長手方向断面図である。
【図7】図5及び図6に対応する、図2に示す接続装置の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0052】
図1には運転室用のローリングスタビライザが示されており、この図示のローリングスタビライザは、その両端部においてそれぞれ従来技術による圧着止め具を備えている。両端部それぞれにモーメントレバー2を備えた、ねじり要素として機能する中空軸1が設けられており、各モーメントレバー2は、エラストマ軸受を有する軸受箇所3,4を支持するものとなっている。ここで、中空軸1に近い側の軸受箇所3はローリングスタビライザを不図示の運転室に接続するために用いられ、一方、中空軸1から遠い側の軸受箇所4は不図示のシャーシに接続するために用いられるものとなっている。なお、モーメントレバー2の両端における各軸受箇所3,4の機能は、ローリングスタビライザの機能を保持しつつも、中空軸1に近い側の軸受箇所3をシャーシに接続し、中空軸1から遠い側の軸受箇所4を運転室に接続するようにしてもよい。
【0053】
また、両モーメントレバー2における他の軸受箇所5には更にバネ・ダンパユニット6が配置されており、このバネ・ダンパユニット6は、図示の実施形態においては、運転室をシャーシに対して弾性的かつ緩衝的に懸架するものとなっている。
【0054】
さらに、図1には、特に拡大図「B」に示すように、中央部で円状断面を有する中空軸1がその端部7において一定壁厚状に拡張されていることが示されている。ここで、この一定壁厚状の断面形状は、図示の実施形態においては二等辺三角形に形成されている。また、各モーメントレバー2はそれぞれ端部7における中空軸1の断面形状に一致する貫通孔(凹部)8を有しており、該貫通孔8は、上記中空軸1の端部7における断面形状に一致している。
【0055】
しかして、上記のようなローリングスタビライザを取り付けるには、まず、あらかじめ一定壁厚状に拡張された中空軸1の端部7に両モーメントレバー2が嵌入あるいは圧入される。次に、中空軸1の両端部における各開口部が、外形形状が中空軸1における端部7の断面形状及びモーメントレバー2における貫通孔8に一致する圧着止め具9によって閉鎖される。ここで、圧着止め具9の外形のサイズは、モーメントレバー2における貫通孔8、該貫通孔8内に設けられる中空軸1の端部7及び中空軸1内に設けられる圧着止め具9の間に設定されている。
【0056】
なお、圧着止め具9は、拡大図「A」において拡大して図示されている(ここでは中空軸1の端部7及びモーメントレバー2の一部と共に示されている。)とともに、図2にも示されている。
【0057】
図1に示すものにおいては、モーメントレバー2の形状や、特に中空軸1に近い側の軸受箇所3によるモーメントレバー2のシャーシあるいは運転室への接続が複雑となるとともに、多数の部材が必要となってしまう。したがって、従来技術による構造の図1に示すものによれば、多数の異なる接続箇所や、大きな取付空間を要する接続部材が必要となるため、取付、質量及びコストにおいて不利となる傾向がある。
【0058】
さらに、モーメントレバー2と運転室の間の軸受箇所3による接続や、更なる軸受箇所5によるシャーシのバネ・ダンパユニット6に対する懸架は、単に複雑なだけではなく、各構成部材において不都合な弾性をもたらすことがある。また、モーメントレバー2における軸受箇所3,5の配置及びこれにより生じる負荷により、直接的な力の作用が生じ、モーメントレバー2を、手間(及びコスト)のかかる、焼入れされた鍛造部品とする必要がある。
【0059】
図3には、図1とは異なり、本発明によるモーメントレバー2と中空軸1の間の接続装置を備えた運転室用のローリングスタビライザが図1と同様な視点で示されている。ここでは、圧着止め具9は、モーメントレバー2と中空軸1の間を接続する機能のほかに、図示のローリングスタビライザを不図示の運転室及びバネ・ダンパユニット6に対して支持するとともにこれらに接続する機能も有している。したがって、この圧着止め具9は、シャーシに一体化されている。
【0060】
すなわち、本発明においては、従来技術においては複雑であった、それぞれローリングスタビライザをシャーシ及びバネ・ダンパユニット6に接続するための分離された軸受箇所3,5(図1参照)を、ローリングスタビライザにおける中空軸1と同軸に配置するとともに、軸受シートを備えた圧着止め具9上に統合して配置している。
【0061】
これにより、特に図における左方の分解図として示していない部分から分かるとおり、コンパクトかつ構造的に非常に単純化された、ローリングスタビライザの運転室及びシャーシへの接続部が得られることになる。これにより、複雑な構成部材、取付空間、質量及び取付コストを顕著に削減することが可能である。また、同時に、各構成部材の信頼性及び曲げ剛性の高い接続部分並びにローリングスタビライザの中空軸1の端部7における信頼性及び曲げ剛性の高い軸受部分が得られる。
【0062】
さらに、本発明によれば、モーメントレバー2において必要な軸受箇所3,5(図1参照)のための接続部分を、完全になくすことができるか、あるいは圧着止め具9上に配置された軸受シート10,11で置き換えることができるため、モーメントレバー2の構造を非常に単純化することが可能である。したがって、図3に示す本発明による接続部材においては、モーメントレバー2には図1に示す従来の接続装置の場合に比してより少ない負荷が生じる傾向にある。そのため、このモーメントレバー2を、例えば、鍛造部品の代わりに鋳造部品を用いたり、又は場合によって必要な焼入れが不要となるなど、より手間の少ない加工方法によって製造することが可能である。
【0063】
図3に示す本発明の実施形態における圧着止め具9の形状は、図3における「C」及び「D」並びに圧着止め具9を拡大して示す図4に示されている。図4から分かるとおり、圧着取付部9の中空軸1の端部への嵌入が容易となるよう、該圧着取付部9には、中空軸1に対向する端部において面取り部12が周設されている。さらに、同様な理由から、中空軸1の端部における内周部にさらに面取り部を設けてもよい。
【0064】
図3に示す本発明の実施形態においては、圧着取付部9が、一体に形成された段状の2つの軸受シート10,11を備えている。特に図3における「C」に示されているとおり、ローリングスタビライザを車両に取り付けるために、各軸受シート10,11上に1つずつ軸受ブッシュ13,14が設けられている。このとき、両軸受シート10,11のうちより大きな第1の軸受シート10における軸受ブッシュ13は、軸受ブラケット15に配置されつつ該軸受ブラケット15によって運転室に結合されたすべり軸受に設けられている。この第1の軸受シート10及びその軸受ブッシュ13は、ローリングスタビライザの回転可能な支持と、運転室におけるローリングスタビライザの力伝達可能な接続という2つの機能を果たすことになる。
【0065】
また、圧着止め具9における両軸受シート10,11のうち、より小さな第2の軸受シート11における軸受ブッシュ14はエラストマ軸受に設けられており、このエラストマ軸受及びこれに係合するバネ・ダンパユニット6により、第1の軸受ブッシュ13及び軸受ブラケット15を介して間接的に、シャーシにおける運転室の弾性的又は緩衝的な懸架がなされる。なお、この実施形態においては、モーメントレバー2の他の端部7における軸受箇所4も、エラストマ軸受を介してシャーシに結合されている。
【0066】
さらに、圧着止め具9を用いることにより(圧着止め具9を中空軸1へ圧入して局所的に該中空軸1を強化することにより)、中空軸1に作用する曲げモーメントにより生じる最大曲げ応力を比較的小さな負荷のかかる中空軸1における中央部まで移動させることが可能である。これにより、本発明による接続装置及びローリングスタビライザ全体の耐疲労性を向上させることができる。
【0067】
また、図3における「C」に示すように、圧着止め具9は、ここでは更に中心部における貫通孔を備えている。このように、部分的に中空に形成された圧着止め具9によれば、該圧着止め具9、中空軸1及びモーメントレバーの間の接続部における力の伝達を改善することができるとともに、剛性の急激な変化が回避される上、軽量化を図ることも可能である。
【0068】
さらに、この図3における「C」に示すように、損傷しやすい比較的薄い中空軸1の壁面部がモーメントレバー2の軸受箇所(凹部)3と圧着取付部9の間に完全に挿入嵌合されて収容されているため、本実施形態では、一定壁厚状に形成された軸受箇所3、中空軸1の端部7及び圧着止め具9の断面の曲率半径が比較的大きいにもかかわらず、確実なモーメントの伝達がなされる。このため、このような断面形状は、特に一様な力の伝達に寄与するものとなっている。
【0069】
図5〜図7には中空軸1の端部7とモーメントレバー2の間の接続部が示されており、図5にあっては従来技術による上記接続部であり、図6及び図7にあっては本発明におけるそれぞれ異なる実施形態を示すものである。ここで、図5は従来技術を示す図1における「A」に相当し、図7は図3に示すローリングスタビライザにおける「C」に相当する。一方、図6は、本発明による接続部材を備えたローリングスタビライザの他の実施形態を示すものである。
【0070】
図6に示す本発明の他の実施形態は、上述の図3、図4及び図7に示すものと、主に、圧着止め具9が2つの軸受シートを有さず唯一の軸受シート10を有している点において相違している。なお、この唯一の軸受シート10は、シャーシ又は運転室と結合可能な軸受ブラケット15の軸受を支持するものとなっている。
【0071】
特に図5と図7を比較すれば、本発明により、圧着止め具9上における広範な軸受機能をコンパクトかつ強固に統合することが可能であることが明らかである。したがって、結果的に、本発明により、中空軸1と接続部における構成部材との間のトルク伝達可能な接続のための、大きなトルクの継続的な伝達のほか、他の構成部材の接続(特に中空軸と接続部における構成部材との間の接続部における軸受箇所の接続)を可能とする接続装置が得られる。
【0072】
また、本発明により達成される機能の一元化によって、従来技術に比して場合によっては複雑な構成部材の数量、取付空間及び質量を大幅に形成することが可能である。これと同時に、中空軸1の端部7における異なる構成部材間あるいは軸受間の信頼性及び曲げ剛性の高い接続が達成される。そして、本発明による接続装置によれば、製造及び取付におけるコストの削減及びメンテナンスの必要性を低減することが可能である。
【0073】
したがって、本発明は、特に、例えば商用車の運転室の支持用又は特にトラックにおける軸間接続用のローリングスタビライザである中空軸接続部についての技術分野の発展に大いに寄与することになる。
【符号の説明】
【0074】
1 中空軸
2 モーメントレバー
3,4,5 軸受箇所
6 バネ・ダンパユニット
7 中空軸の端部
8 貫通孔
9 圧着止め具
10,11 軸受シート
12 面取り部
13,14 軸受ブッシュ
15 軸受ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空軸(1)における接続部材(2)のトルク伝達可能な接続のための接続装置であって、前記接続部材(2)が、前記中空軸(1)の外形に一致しつつ前記中空軸(1)の端部を収容する貫通孔(8)を含んで構成され、前記中空軸(1)が該中空軸と前記接続部材の接続部において圧着止め具(9)を有しており、該圧着止め具(9)が前記中空軸(1)の内形と共に少なくとも部分的に嵌着部分を形成している前記接続装置において、
前記圧着止め具(9)を、前記中空軸(1)に設けられた少なくとも1つの軸受(13,14)用の軸受収容部(10,11)として形成したことを特徴とする接続装置。
【請求項2】
前記圧着止め具(9)によって、少なくとも1つの前記軸受の軸受ブッシュ(13,14)用の前記軸受収容部(10,11)を形成したことを特徴とする請求項1記載の接続装置。
【請求項3】
複数の前記軸受の前記軸受ブッシュ(13,14)を前記圧着止め具(9)に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の接続装置。
【請求項4】
前記中空軸(1)をねじりバネとして形成するとともに、前記接続部材(2)により、前記ねじりバネの脚部と、該ねじりバネの軸受箇所における少なくとも1つの前記軸受(13,14)を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項5】
前記中空軸(1)をトラック用運転室のローリングスタビライザとするとともに、前記接続部材(2)を上記運転室をガイドするコントロールアームとし、少なくとも1つの前記軸受(13)を、シャーシ又はアクスルに接続可能な軸受ブラケットに配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項6】
前記中空軸(1)をトラック用運転室のローリングスタビライザとするとともに、前記接続部材(2)をアクスルをガイドするコントロールアームとし、少なくとも1つの前記軸受(13)を、シャーシ又はアクスルに接続可能な軸受ブラケットに配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項7】
バネ・ダンパユニット(6)の軸受における軸受ブッシュ(14)を前記圧着止め具(9)に設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項8】
前記中空軸(1)と、前記接続部材(2)における前記貫通孔(8)を円状以外の形状に形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項9】
前記中空軸(1)と、前記接続部材(2)における前記貫通孔(8)を、接続領域において略多角形状の断面を有するよう形成したことを特徴とする請求項8記載の接続装置。
【請求項10】
前記多角形状の断面形状の周囲部が常に有限の曲率を有するよう構成したことを特徴とする請求項8又は9記載の接続装置。
【請求項11】
前記中空軸(1)及び前記接続部材(2)の接続領域における断面形状を一定壁厚状部(7)として形成したことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項12】
前記圧着止め具(9)及び前記接続部材(2)における貫通孔(8)を、前記中空軸(1)及び前記接続部材(2)の接続領域においてやや円すい状に形成したことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項13】
前記圧着止め具(9)を中空とするか、又はこれに軸方向に延在する凹部を設けたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項14】
前記圧着止め具(9)を切削せずに加工したことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項15】
前記圧着止め具(9)における前記中空軸(1)と対向する端部に面取り部(12)を周設したことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項16】
前記中空軸(1)における円状以外の形状に形成された範囲を前記接続部材(2)との接続領域(7)のみに設定したことを特徴とする請求項8〜15のいずれか1項に記載の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−504517(P2012−504517A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529446(P2011−529446)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/DE2009/050053
【国際公開番号】WO2010/037381
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】