説明

中継端末およびアドホックネットワーク

【課題】自律的にタイムアウト値および再送回数の設定が可能な中継端末を得ること。
【解決手段】データを送信する送信端末、データの宛先となる受信端末、および、送信端末と受信端末の間でデータの中継を行う複数の中継端末から構成されるアドホックネットワークにおける前記中継端末であって、前記送信端末から前記受信端末までの各端末のトポロジィ情報を管理するルーティング管理部20と、受信したデータに対して所定の符号化関数に基づく符号化処理を実行し、当該符号化したデータを後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送するNC情報伝送部30と、前記トポロジィ情報に基づいて、自端末から後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する際のタイムアウト値および再送回数を決定する再送方法決定部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークコーディング伝送を行う中継端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ネットワークコーディング(Network Coding:以下、NCとする。)理論を応用したアドホックネットワークが存在している。ネットワークコーディングは、End−to−End(送信端末から受信端末の間)の各端末が、独立リンクを用いて情報を符号化しながら通信するための情報伝送理論である。この理論に基づくアドホックネットワークでは、各端末が、受信したパケットをまとめて符号化して複数の端末へ送信する。符号化されたパケットが当該パケットを受信した端末において復元できるように、各端末は、規定の符号化関数を実行する。これにより、従来のツリー型のルーティング経路であっても各リンク上を伝送する情報(パケット)量を増大させることなくマルチルーティングを実現することが可能となり、たとえば、狭帯域環境下であっても、ネットワーク全体として限られた通信資源を計画的に最大限活用した情報伝送が可能となる。このような情報伝送をNC情報伝送という。
【0003】
ネットワークコーディングに関するアイディアの基本が下記非特許文献1に開示されており、下記非特許文献1で開示されている数学的なモデルを無線ネットワークに実装した技術が下記特許文献1において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−031693号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rudolf Ahlswede, Ning Cai, Shuo-Yen Robert Li, Raymond W. Yeung, “Network Information Flow”,pp.1204-1216, IEEE Trans. on Information Theory, Vol.46, No.4, July 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によれば、冗長性の高い独立リンク集合を用いた複雑なルーティング経路を利用するため、前段の中継端末において、規定のタイムアウト値および再送回数内でパケットを送信できない場合には、後段の中継端末で受信エラーが発生する。そのため、後段の中継端末では、受信エラーによってデータの欠落が発生し、その影響はネットワーク全体に波及し、NC情報伝送の成功率を低下させる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複雑なルーティング経路を利用する場合であっても受信エラーを発生させることなく、ネットワーク全体として安定したNC情報伝送を実現可能な中継端末を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、データを送信する送信端末、データの宛先となる受信端末、および、送信端末と受信端末の間でデータの中継を行う複数の中継端末から構成されるアドホックネットワークにおける前記中継端末であって、前記送信端末から前記受信端末までの各端末のトポロジィ情報を管理するルーティング管理手段と、受信したデータに対して所定の符号化関数に基づく符号化処理を実行し、当該符号化したデータを後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する符号化手段と、前記トポロジィ情報に基づいて、自端末から後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する際のタイムアウト値および再送回数を決定する再送方法決定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安定したネットワークコーディング情報伝送を実行できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1−1】図1−1は、通常のパケット情報伝送システムの例を示す図である。
【図1−2】図1−2は、NC情報伝送システムの例を示す図である。
【図2】図2は、符号化ルーティング処理を説明する図である。
【図3】図3は、符号化データメッセージの構成例を示す図である。
【図4】図4は、端末の構成例を示す図である。
【図5】図5は、符号化ルーティング処理を説明する図である。
【図6】図6は、符号化データメッセージの再送処理を示す図である。
【図7】図7は、再送管理テーブルの構成例を示す図である。
【図8−1】図8−1は、受信リンクが相互に独立なトポロジィ構成のネットワークを示す図である。
【図8−2】図8−2は、受信リンクに共通リンクがあるトポロジィ構成のネットワークを示す図である。
【図9】図9は、端末の構成例を示す図である。
【図10】図10は、符号化データメッセージの構成例を示す図である。
【図11】図11は、所要時間統計テーブルの構成例を示す図である。
【図12】図12は、端末の構成例を示す図である。
【図13】図13は、受信リンクが相互に独立なトポロジィ構成のネットワークを示す図である。
【図14】図14は、情報伝送IDDBの構成例を示す図である。
【図15】図15は、NC_Send_Cancelメッセージフォーマットの構成例を示す図である。
【図16】図16は、符号化データメッセージの構成例を示す図である。
【図17】図17は、NC情報伝送停止の処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる中継端末の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
最初に、従来からのネットワークコーディング(NC)理論について、図1−1、1−2を用いて簡単に説明する。ここでは送信端末T101sが、データをa、bの2つに分割して送信する。データa、bは同じデータサイズとする。
【0013】
図1−1は、通常のパケット情報伝送システムの例を示す図である。はじめに、データの送信を開始する端末(送信端末)T101sが、データaを端末T102とT103に送信する。つぎに、端末T102、T103は、それぞれデータaをデータの送り先である端末(受信端末)T106d、T107dへ送信する。つぎに、同様の手順を用いて送信端末T101sは、データbを受信端末T106dとT107dまで送信する。以上の手順により、受信端末T106d、T107dはデータa、bを受信することができる。
【0014】
図1−2は、NC情報伝送システムの例を示す図である。NC情報伝送システムとは、NC理論に基づき、送信端末と受信端末間で利用可能な独立リンクを活用して情報を伝送するシステムである。はじめに、送信端末T101sは、自端末が備える符号化関数を用いて、データaおよびbを、それぞれ同時に端末T102、T103へ送信する。データaまたはbを受信した端末T102、T103は、その情報を転送する。データa、bの両方を受信した端末T104では、符号化関数として排他的論理和を実行し、端末T105へ符号化データaXORbを送信する。端末T105は、受信したデータaXORbを受信端末T106d、T107dへ転送する。受信端末T106d、T107dは、それぞれの符号化関数を用いて、以下の計算によりデータaおよびbの両方の情報を復元する(受信データを得る)。
受信端末T106d:受信データ=(a,b)=(a,aXOR(aXORb))
受信端末T107d:受信データ=(a,b)=(bXOR(aXORb),b)
【0015】
以上の動作を比較すると、通常のパケット情報伝送システム(図1−1)では、データa、bを2タイミングで送信するのに対して、NC情報伝送システム(図1−2)では、同じデータ量を1タイミングで送信することができる。
【0016】
つぎに、データを中継する端末が行う符号化ルーティング処理について説明する。符号化ルーティングとは、端末が実行する、符号化しながらルーティングを行うNC特有の機能である。図2は、アドホックネットワークにおいて、端末T24が行う符号化ルーティング処理を説明する図である。具体的に、送信端末T10sが、受信端末T09d、T19d、T29dへ独立リンク集合を用いてデータを送信する場合に、中継する端末T24が行う符号化ルーティング処理について説明する。なお、独立リンクは、端末間で利用する個々の端末間のリンク通信路とする。
【0017】
端末T24では、送信端末T10s、端末T01〜T08、T11〜T18、T21〜T28、受信端末T09d、T19d、T29dを、独立リンク集合とするNC情報伝送を決定する。この結果から、端末T24では、自端末の入力が端末T03、T13、T23の3端末(入力リンク数L=3)、出力が端末T15、T25の2端末(出力リンク数M=2)であると判断する。この結果、端末T24は、端末T03、T13、T23からの3つのパケットを入力として、自端末が備える符号化関数E24を用いて符号化処理を行い、出力となるパケットをそれぞれ端末T15、T25へ送信する。
【0018】
図3は、符号化データメッセージの構成例を示す図である。各端末間では、符号化データメッセージによって符号化データの送受信を行う。符号化データメッセージは、符号化ヘッダと符号化データから構成される。符号化ヘッダは、独立リンクを用いて情報を伝送する手順に関する情報を保持する。符号化データは、符号化されて伝送されるデータである。符号化ヘッダは、シーケンス番号と、リンク送信端末IDと、リンク受信端末IDと、から構成される。シーケンス番号は、送信端末T10sが付与する番号であり、データを分割して符号化データメッセージを送信する順番である。リンク送信端末IDは、入力となる端末の識別子である。当該符号化データメッセージを受信する端末の前段の端末を示す。リンク受信端末IDは、この符号化データメッセージを受信する端末の識別子である。符号化データは、符号化前のデータまたは符号化後のデータを表す。ここでは、一例として、符号化データを同一の符号化単位を基準として6個のデータから構成しているが、これに限定するものではない。
【0019】
例えば、図2に示すアドホックネットワークにおいて、端末T24は、入力として符号化データメッセージM001、M002、M003を受信する。そして、自端末の符号化関数E24を用いて、それぞれの符号化データであるD03、D13、D23を符号化する。この結果得られた符号化データD15、D25を、符号化データメッセージM004、M005を用いて、それぞれ端末T15、T25へ送信する。
【0020】
ここで、上記従来のアドホックネットワークにおけるNC情報伝送では、冗長性の高い独立リンク集合を用いた複雑なルートを利用し、さらに、送信端末から中継端末に至る各パケットのルートが異なるため、中継端末に到着するパケット受信時間に大きな差が生じる。このとき、中継端末では、前段の端末で設定されたタイムアウト値および再送回数以降のパケットを受信できないため、受信エラーが発生する。受信エラーが発生した場合、データの欠落が生じるため、NC伝送システムでは、その影響がネットワーク全体に波及しやすく、NC情報伝送の成功率を低下させることになる。
【0021】
本実施の形態では、プロアクティブ型のアドホックネットワーク方式を用いた場合に、各端末が、トポロジィ情報を共有し、自律的に送信端末から自端末までのホップ数に応じて、受信リンク毎のタイムアウト値および再送回数を設定する。
【0022】
図4は、NC伝送を行うアドホックネットワークにおいてパケット(データ)を転送する端末の構成例を示す図である。端末は、アプリケーション部10と、ルーティング管理部20と、NetworkCoding(NC)情報伝送部30と、CommunicationLine40と、再送方法決定部50と、を備える。また、NC情報伝送部30は、符号化ルーティング部31と、送受信部32と、独立リンク管理部33と、符号化関数データベース部34と、を備える。
【0023】
アプリケーション部10は、各端末間で行う符号化データの送受信の対象となるデータに関するアプリケーションを提供する。
【0024】
ルーティング管理部20は、アドホックネットワーク上で、無線により通信可能な端末のトポロジィ情報を保持する。この情報に基づいて、送信端末から受信端末間で利用する独立リンク集合を計算する。
【0025】
NC情報伝送部30は、入力元の端末から受信した符号化データに対して符号化処理を実行し、出力先の端末へ符号化後のデータを送信する。符号化ルーティング部31は、符号化関数データベース部34が保持する符号化関数、および独立リンク管理部33が保持する独立リンクの関係に基づいて、入力した符号化データに対して符号化ルーティングを行う。送受信部32は、CommunicationLine40を介して、符号化データを送受信する。独立リンク管理部33は、自端末において、入力となる独立リンクと、出力となる独立リンクの関係を保持する。この計算はルーティング管理部20が行う。符号化関数データベース部34は、符号化ルーティングを行う際に実行する符号化関数を保持する。
【0026】
CommunicationLine40は、他の端末と符号化データの送受信を行う際の伝送路である。
【0027】
再送方法決定部50は、独立リンク管理部33が保持する独立リンクの関係に基づいて、自端末から後段の端末へ符号化データを送信する際のタイムアウト値および再送回数を決定する。
【0028】
図5は、本実施の形態における符号化ルーティングの処理を示す図である。一例として、図2に示すアドホックネットワークの端末T24の動作について説明する。端末T24は、受信側となる端末T03、T13、T23から送受信部32を介してメッセージD03、D13、D23を入力し、独立リンク管理部33が保持する独立リンク集合に基づいて、符号化ルーティング部31が、符号化関数データベース部34に保持している符号化関数E24を用いて符号化処理よる計算を実行する。その結果、端末T24は、出力となるメッセージD15、D25を算出し、符号化データメッセージD15、D25によって、それぞれ送受信部32を介して送信側となる端末T15、T25へ送信する。
【0029】
このとき、端末T24は、受信する符号化データメッセージD03、D13、D23について、それぞれ「NC_Send_request M0324」、「NC_Send_request M1324」、「NC_Send_request M2324」を用いて受信し、これに対して、「NC_Send_reply M0324」、「NC_Send_reply M1324」、「NC_Send_reply M2324」を用いて各送信端末へ受信成功を返送する。端末T24は、センサ端末T03、T13、T23からの3つの符号化データD03、D13、D23が揃った後に、符号化処理を実行する。なお、縦に示す矢印は、前段の各端末で設定したタイムアウト値を示す。
【0030】
符号化処理後、端末T24は、送信する符号化データメッセージD15、D25を、それぞれ「NC_Send_request M2415」、「NC_Send_request M2425」を用いて送信し、受信端末から「NC_Send_reply M2415」、「NC_Send_reply M2425」を受信して成功を確認する。なお、端末T24では、「NC_Send_request M2415」、「NC_Send_request M2425」を送信と同時にそれぞれにタイムアウト値を設定し、後段の端末(ここでは、端末T15およびT25)が正常に受信した場合には、それぞれのタイムアウト値の時間内に「NC_Send_reply M2415」、「NC_Send_reply M2425」を受信することができる。
【0031】
ここで、符号化データメッセージを再送する場合について説明する。図6は、符号化データメッセージの再送処理を示す図である。例えば、端末T24が符号化データメッセージD15を送信する場合、端末T24は、「NC_Send_request M2415」の送信と同時にタイムアウト値を設定する。端末T24は、設定したタイムアウト値の時間内に端末T15から「NC_Send_reply M2415」を受信できなかった場合、改めて「NC_Send_request M2415」を再送する。なお、端末T24は、再送時にも同様に、「NC_Send_request M2415」の送信と同時にタイムアウト値を設定する。以降、設定した再送回数だけ同様の処理を繰り返す。このときに実行する再送回数は、タイムアウト値とともに、再送方法決定部50が備える再送管理テーブルに保持することとする。
【0032】
図7は、再送管理テーブルの構成例を示す図である。再送管理テーブルは、タイムアウト値と、再送回数と、から構成される。タイムアウト値は、自端末から後段の端末に符号化データメッセージを送信する際に、「NC_Send_reply」の応答を待つ時間を示す。再送回数は、タイムアウト値の時間内に送信先の端末から「NC_Send_reply」を受信できなかった場合の「NC_Send_request」の再送回数を示す。本実施の形態では、各端末が、それぞれ異なるタイムアウト値および再送回数を設定し、これらを記録した再送管理テーブルを備える。これにより、端末によってタイムアウト値を長くし、また、再送回数を増やすことによって、後段の端末における受信エラーの発生を低減させることができる。
【0033】
具体的に、各端末において、タイムアウト値および再送回数を算出する方法について説明する。ここでは、一例として、送信端末から自端末までのホップ数に基づいてタイムアウト値および再送回数を算出する。図8−1は、受信リンクが相互に独立なトポロジィ構成のネットワークを示す図である。また、図8−2は、受信リンクに共通リンクがあるトポロジィ構成のネットワークを示す図である。それぞれ端末1が送信端末となり、端末T6、T7が受信端末となるアドホックネットワークを示す。
【0034】
プロアクティブ型のアドホックネットワークを構成する端末では、全ての端末において独立リンク管理部33が同一の独立リンク集合のトポロイ構成を保持している。また、各端末では、再送方法決定部50が、この独立リンク集合の構成に対応して、タイムアウト値および再送回数を決定する。送信端末から受信端末までのリンクを一般的なTree型で構成する場合、中継する端末は、1つの端末からのみメッセージを受信する。一方、符号化ルーティングの場合、中継する端末は、複数の端末からメッセージを受信し、さらに、送信端末からメッセージが到着するまでの時間に差がある。そのため、各端末は、独立リンク集合のトポロジィ構成に対応して、タイムアウト値および送信回数を決定する。
【0035】
まず、図8−1に示すアドホックネットワーク(受信リンクが相互に独立な場合)について説明する。ここでは、端末T1〜T7までの7端末で構成される独立リンク集合において、端末T1から端末T6と端末T7に対して、1対2通信が行われている。ここで端末T5について見ると、端末T1、端末T4、端末T3の3つの端末からメッセージを受信する。一般的に、端末T5では、端末T1から送信される1ホップ通信のメッセージが最初に到着し、つぎに端末T1、端末T4、端末T5のルートで送信される2ホップ通信のメッセージが2番目に到着し、最後に端末T1、端末T2、端末T3、端末T5のルートで送信される3ホップ通信のメッセージが到着する。
【0036】
ここで、1ホップ通信における標準的なタイムアウト値を単位タイムアウト値、また標準的な再送回数を標準再送回数とすると(単位タイムアウト値、単位再送回数は、従来のTree型ルーティングで設定する値と同等である)、最大ホップ数3ホップ通信の値を用いて、タイムアウト値および再送回数を以下の式によって算出する。
【0037】
タイムアウト値=単位タイムアウト値×3
再送回数=単位再送回数×3
【0038】
単位タイムアウト値および単位再送回数を予め全ての端末で決定しておくことにより、それぞれの端末では、相互に情報交換する制御トラフィックを生じさせること無く、独立に計算する独立リンク集合の構成からタイムアウト値および送信回数を自律的に決定することができる。
【0039】
また、一般的に、ホップ数が多いルートほど再送時のコスト等がかかることから、ホップ数が多いほど、タイムアウト値を大きくし、さらに再送回数を増やすこととした。これにより、ホップ数の多いルートの端末から送信されるメッセージの受信エラーを減らすことができ、ネットワーク全体として、NC情報伝送の成功率の低下を回避することができる。
【0040】
つぎに、図8−2に示すアドホックネットワーク(受信リンクに共通リンクがある場合)について説明する。図8−2は、図8−1に示す構成に端末T2から端末T4へのリンクが追加されたものである。この追加されたリンクの結果、端末T4から端末T5へのリンクは、端末T1から端末T4へのリンクと、端末T2から端末T4へのリンクの2つのリンクを用いて受信するメッセージを、端末T4が符号化ルーティングした結果となる。この場合、端末T5が受信するメッセージは、相互に独立な構成でなく、端末T4にて複数メッセージ受信の待ち時間が発生する。このとき、端末T5は、端末T4からルートについてはホップ数の多い方を採用する。すなわち、図8−1では、「単位タイムアウト値×2」、「再送回数=単位再送回数×2」としていたが、図8−2では、「単位タイムアウト値×3」、「再送回数=単位再送回数×3」とする。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態では、プロアクティブ型のアドホックネットワークにおいてNC情報伝送を行う場合に、送信端末から受信端末の間でデータの中継を行う端末は、それぞれの独立リンク集合のトポロジィ構成の中での位置に応じて、データを送信する際のタイムアウト値および再送回数を個別に決定することとした。これにより、ホップ数が多いリンクにある端末において受信エラーを低減でき、NC情報伝送の成功率を向上した安定した伝送を実現することができる。
【0042】
実施の形態2.
実際のNC情報伝送では、端末の移動や大気状況の変化などの電波伝搬状況の変化により、中継する端末にメッセージが到着する受信時間に大きな変動が発生する。この場合、一定のタイムアウト値および再送回数で運用していると、メッセージの欠落が考えられ、メッセージ欠落が多発するとNC情報伝送の成功率が低下する。本実施の形態では、受信状況に応じて変化する伝送時間に追従して、タイムアウト値および再送回数を更新する方法について説明する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0043】
図9は、本実施の形態の端末の構成例を示す図である。端末は、アプリケーション部10と、ルーティング管理部20と、NC情報伝送部30と、CommunicationLine40と、再送方法決定部50と、再送方式統計部60と、を備える。再送方式統計部60は、CommunicationLine40により送受信されるデータメッセージをモニタして、送信端末から自端末で受信するまでに要した時間を収集し、再送方法決定部50へ通知する。この情報を受け取った再送方法決定部50は、この統計情報に基づいて、該当するNC情報伝送において自身が実行する再送方式を決定する。
【0044】
図10は、符号化データメッセージの構成例を示す図である。符号化ヘッダ部分に送信開始時間を追加した点が、実施の形態1(図3参照)と異なる。送信開始時間は、送信端末が、送信する各メッセージに送信時の時間をセットするエリアである。すなわち、送信端末は、符号化データメッセージに送信開始時間をセットする構成を備え、符号化データメッセージを送信する際、各メッセージに送信時間をセットしてから受信端末に向けての送信を開始する。
【0045】
図11は、再送方法決定部50が備える所要時間統計テーブルの構成例を示す図である。ここでは、一例として、図8−1に示すアドホックネットワークを用いて説明する。所要時間構成テーブルは、送信端末IDと、所要時間リストと、平均所要時間と、から構成される。
【0046】
送信端末IDは、該当するNC情報伝送の送信端末の識別子であり、ここでは端末T1が該当する。なお、再送方法決定部50は、送信端末IDの情報も再送方式統計部60からの通知により取得する。
【0047】
所要時間リストは、再送方式統計部60からの通知された統計情報を適宜、格納してリストとして管理する。この値は、受信した符号化データメッセージフォーマットにおいて、送信端末T1が設定する送信開始時間を参照し、再送方式統計部60が、「所要時間=現在時間−送信開始時間」の式から計算する。
【0048】
平均所要時間は、所要時間リストの平均値である。再送方法決定部50は、常にこの値を計算し、平均値を格納することとする。
【0049】
なお、ここでは、所要時間および平均所要時間を求める場合に、端末T1、T3、T4のいずれの端末から符号化データメッセージを受信するかを考慮していないが、これに限定するものではない。前段の端末ごとに所要時間統計テーブルを設けて平均所要時間を求めるようにしてもよい。
【0050】
パケットを中継する各端末では、再送方法決定部50が、この平均所要時間を常に最新のメッセージ伝送時間として、タイムアウト値および再送回数を計算する。この時、送信端末から受信するメッセージの到着までに要したホップ数の計算方法は、図8−1を用いて説明した方法と同じである。この場合、平均所要時間およびホップ数を用いて、タイムアウト値および再送回数を以下の式から算出する。
【0051】
タイムアウト値=平均所要時間×(3*D)
再送回数=単位再送回数×(3*E)
【0052】
ここで、DおよびEは重み関数である。Dは定数であってもよいし、平均所要時間に応じて変更してもよい。Eは、平均所要時間に応じて値を変更することで、平均所要時間の要素を再送回数に取り込むことができる。なお、上記計算式は一例であり、ホップ数を掛けることにより、各メッセージを受信する経路(ホップ数)に応じた値を計算することができる。各端末では、再送方法決定部50が、このタイムアウト値と再送回数を一定周期で更新することにより、最新の通信状況に追従することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態では、各端末が、送信端末がメッセージを送信してから自端末が当該メッセージを受信するまでの所要時間に応じて、タイムアウト値および再送回数を適宜更新することとした。これにより、端末の移動や大気状況の変化などの電波伝搬状況の変化に対して、状況に適したタイムアウト値および再送回数を設定することができる。
【0054】
実施の形態3.
NC情報伝送は、独立リンク集合のトポロジィ構成を用いたメッセージ伝達において、特定の中継端末において受信待ち時間が長くなると、この端末でメッセージが破棄されても、その前段階となる端末に時間とともにメッセージが蓄積される。そのため、前段階の端末の性能劣化を招くともに、この影響がさらに前段階の端末にも伝播し、他のNC情報伝送に悪影響を与えて性能劣化を招く。本実施の形態では、各端末において破棄する対象となるNC情報伝送を強制的に前段となる端末にキャンセルを通知するとともに、データメッセージの受信に一定時間以上の間隔が空く場合には、自身の判断で該当するNC情報伝送を破棄する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0055】
図12は、端末の構成例を示す図である。端末は、アプリケーション部10と、ルーティング管理部20と、NC情報伝送部30と、CommunicationLine40と、再送方法決定部50と、また、NetworkCoding(NC)情報伝送情報破棄部70と、を備える。NC情報伝送情報破棄部70を備える点が実施の形態1(図4参照)と異なる。NC情報伝送情報破棄部70は、NC情報伝送IDデータベース(DB)部71とNC情報伝送破棄判断部72と、を備える。
【0056】
NC情報伝送IDDB部71は、ネットワーク全体で特定のNC情報伝送を識別するための識別子を管理しており、NC情報転送の中止が決定された場合、各端末が該当するNC情報伝送を特定するために用いる。この識別子はネットワーク全体で一意の間であり、NC情報伝送開始時に送信元となる送信端末が生成して、各端末に送信元と送信先の端末IDを通知してNC情報伝送の準備を整える段階でテーブルを生成する。
【0057】
NC情報伝送破棄判断部72は、再送方法決定部50で算出された、リンク送信端末から受信するメッセージに対応するタイムアウト値および再送回数に基づいて、NC情報伝送の中止を判断する。
【0058】
図13は、端末T1から端末T6と端末T7に対して1対2通信を行う場合に、受信リンクが相互に独立なトポロジィ構成のネットワークを示す図である。独立リンクは、これらの送受信端末に加えて、端末T2、T3、T4、T5を中継端末として構成される。全ての端末は、NC情報伝送IDDB部71を保持し、それぞれが実行するNC情報伝送の中から、特定のNC情報伝送を識別する。
【0059】
図14は、情報伝送IDDB部71の構成例を示す図である。ここでは図13の独立リンク集合の構成を例に中継端末となる端末T5が保持する情報伝送IDDB部71を説明する。情報伝送IDDB部71は、NC情報伝送IDと、リンク送信端末IDと、から構成される。NC情報伝送IDは、ネットワーク全体でNC情報伝送を識別する一意のIDである。リンク送信端末IDは、当該NC情報伝送IDのパケットが送信されてくる前段の端末を示す。例えば、NC情報伝送IDが「NC_ID_1」の場合、このNC情報伝送において自端末にメッセージを送信してくる前段の端末が、端末T3、T4、T1であることを示す。
【0060】
NC情報伝送IDは、送信端末が、NC情報伝送を確立する時に生成し、送信端末と受信端末の関係を各端末に通知するときに合わせて通知する。すなわち、送信端末は、符号化データメッセージにNC情報伝送IDをセットする構成を備える。受信した端末は、全ての端末が共有しているトポロジィ情報から、送信端末と受信端末間の独立リンク集合を計算し、自身が独立リンク集合に関わる場合は、自身に対する複数のリンク送信端末IDと複数のリンク送信端末IDの組み合わせを、このNC情報伝送IDにて管理する。情報伝送IDDB部71は、このように、NC情報伝送IDとリンク送信端末IDの組み合わせを管理する。ここでリンク送信端末IDを保持するのは、NC情報伝送の中止を、前段となる端末に送信するためである。
【0061】
図15は、NC_Send_Cancelメッセージフォーマットの構成例を示す図である。「NC_Send_Cancel」は、ある特定の端末のNC情報伝送破棄判断部72においてNC情報伝送の破棄を決定した場合、NC情報伝送IDを前段とする端末に向けてNC情報伝送の中止を通知するためのメッセージである。「NC_Send_Cancel」は、リンク送信先端末IDと、NC情報伝送IDと、から構成される。リンク送信先端末IDは、このメッセージの送信先となる前段の中継端末、NC情報伝送IDは、該当するNC情報伝送を特定する。
【0062】
「NC_Send_Cancel」を受信した端末は、自身が保持するNC情報伝送IDDB部71を参照し、自身のNC情報伝送IDDB部71内のNC情報伝送IDと受信した「NC_Send_Cancel」のNC情報伝送IDとが一致するリンク送信端末IDの各端末に対して、改めて「NC_Send_Cancel」を送信する。同時に、「NC_Send_Cancel」を送信した端末は、自端末のNC情報伝送IDDB部71の該当するテーブルを削除する。
【0063】
図16は、符号化関数と符号化データメッセージの構成例を示す図である。実施の形態1における符号化データメッセージ(図3参照)に、NC情報伝送IDを追加した構成である。この識別子(ID)は、図14および図15を用いて説明したように、ネットワーク全体でNC情報伝送を一意に識別するIDであり、送信端末がNC情報伝送を準備する段階で生成し、実際に情報を送信する符号化データメッセージに付加して送信する。この結果、特定のNC情報伝送における情報伝送は、同一のNC情報伝送であることをNC情報伝送IDにて識別し、このIDが同一のメッセージをシーケンス番号の順番で受信することとなる。ある中継端末において、同一のNC情報伝送IDを持つ符号化データメッセージを受信する際、シーケンス番号から次の符号化データメッセージを一定時間受信できないと判断した場合は、NC情報伝送の中止を決定する。
【0064】
図17は、NC情報伝送停止の処理を示すシーケンス図である。ここでは、図13で説明した独立リンク集合における端末T5の動作に注目して説明する。このNC情報伝送停止は、(1)端末T5が中止を判断して前段となる端末T1、T3、T4に通知する処理と、(2)これにより符号化データメッセージの送信が停止した端末T7が自律的に中心を検出する処理、から構成される。
【0065】
まず、(1)の処理について説明する。端末T5は、「NC_Send_request M0305」および「NC_Send reply M0305」の交換により、端末T3からの符号化データメッセージを受信する。同様に、端末T5は、「NC_Send_request M0405」および「NC_Send reply M0405」の交換により、端末T4からの符号化データメッセージを受信する。
【0066】
また、「NC_Send_request M0105」および「NC_Send reply M0105」から、端末T1からの符号化データメッセージを受信する。この時、各端末から受信するメッセージの再送処理は、実施の形態1と同様に、受信タイムアウト値および再送回数が決定されている。このとき、例えば、図17に示すように、端末T1からの「NC_Send_request M0105」が、最初の「NC_Send_request M0305」の受信から最大受信タイムアウト値経過後に受信されるか、あるいは全く受信されない場合、つまり最大受信タイムアウト値の時間内に、該当する複数のNC情報伝送のリンク送信端末からの全ての符号化データメッセージが受信できない場合、端末T5は、前段となる端末に、その後送信される符号化データメッセージが蓄積されることを防ぐために、NC情報伝送中止を決定し、端末T4に対して「NC_Send_Cancel M0504」、端末T3に対して「NC_Send_Cancel M0503」、端末T1に対して、「NC_Send_Cancel M0501」をそれぞれ送信する。
【0067】
ここで最大受信タイムアウト値は、図7に示す再送管理テーブルから、「最大受信タイムアウト値=(受信タイムアウト値×再送回数)」により計算する。最大受信タイムアウト値は、例えば、NC情報伝送の周期時間に対して、入力となる符号化データが揃わないために発生する送信遅延が許容される最大時間とすることができる。全ての端末でNC情報伝送周期時間を合わせることにより、各端末では、NC情報伝送が可能となるため、最大受信タイムアウト値までにデータが揃わなかった場合、その端末では符号化処理をせず、つぎの端末へデータの送信を行わない。なお、上記最大受信タイムアウト値の求め方は一例であり、これに限定するものではない。
【0068】
つぎに、(2)の処理について説明する。例えば、端末T7では、「NC_Send_request M0507」と「NC_Send reply M0507」により符号化データメッセージを正常に受信した後、データメッセージ受信間隔タイムアウト値の時間内につぎの符号化データメッセージを受信しない場合、端末T7のNC情報伝送破判断部72が、NC情報伝送の中止を決定する。データメッセージ受信間隔タイムアウト値は、任意の値であるが最大受信タイムアウト値よりも長い時間を設定する。
【0069】
NC情報伝送の中止の決定は、図16を用いて説明したように、同一のNC情報伝送IDの中で、つぎの番号のシーケンス番号を持つ符号化データメッセージが受信できない場合に行う。端末T7がNC情報伝送の中止を決定した場合、自身のNC情報伝送IDDB部71において保持するNC情報伝送IDの該当するテーブルを削除して、このNC情報伝送に関する処理を中止する。
【0070】
なお、実施の形態1に基づいて説明したが、実施の形態2にも適用可能である。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態では、最大受信タイムアウト値を用いて符号化データメッセージの受信タイムアウトを検出した端末が、前段となる端末に向けて該当するNC情報伝送の停止を通知し、また、後段の端末に対する符号化データメッセージの通知も停止する。NC情報伝送停止の通知を受けた前段の端末は、さらに前段の端末に向けて該当するNC情報伝送の停止を通知する。一方、後段の端末は、データメッセージ受信間隔タイムアウトにより符号化データメッセージの受信が停止したことを判断し、該当するNC情報伝送を停止する。この停止の結果は同様に、さらに後段の端末に伝わる。これにより、最終的に独立リンクを構成する全ての端末は、迅速、かつ制御トラフィックを最低減に抑えてNC情報伝送を停止できるため、各端末に蓄積される符号化データメッセージ量を最低限に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる中継端末は、ネットワークコーディング情報伝送を行うアドホックネットワークに有用であり、特に、プロアクティブ型のアドホックネットワークに適している。
【符号の説明】
【0073】
10 アプリケーション部
20 ルーティング管理部
30 NetworkCoding(NC)情報伝送部
31 符号化ルーティング部
32 送受信部
33 独立リンク管理部
34 符号化関数データベース部
40 CommunicationLine
50 再送方法決定部
60 再送方式統計部
70 NetworkCoding(NC)情報伝送情報破棄部
71 NC情報伝送IDデータベース(DB)部
72 NC情報伝送破棄判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信する送信端末、データの宛先となる受信端末、および、送信端末と受信端末の間でデータの中継を行う複数の中継端末から構成されるアドホックネットワークにおける前記中継端末であって、
前記送信端末から前記受信端末までの各端末のトポロジィ情報を管理するルーティング管理手段と、
受信したデータに対して所定の符号化関数に基づく符号化処理を実行し、当該符号化したデータを後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する符号化手段と、
前記トポロジィ情報に基づいて、自端末から後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する際の、タイムアウト値および再送回数を決定する再送方法決定手段と、
を備えることを特徴とする中継端末。
【請求項2】
前記再送方法決定手段は、前記送信端末から自端末までのホップ数が多いほど、タイムアウト値および再送回数を大きくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継端末。
【請求項3】
さらに、
前記送信端末によるデータの送信開始から自端末で受信するまでの時間である所要時間を算出する統計手段、
を備え、
前記再送方法決定手段は、さらに前記所要時間を用いてタイムアウト値および再送回数を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の中継端末。
【請求項4】
さらに、
前記送信端末が送信するデータに記録されたネットワークコーディング伝送のデータ種別と、当該データ種別ごとに自端末にデータを送信してくる端末とを関連付けて記憶するテーブルを備えた情報伝送破棄手段、
を備え、
前記情報伝送破棄手段は、
第一の所定時間内に符号化に必要なデータ数を受信しなかった場合、または、ネットワークコーディング伝送の後段の端末からネットワークコーディング伝送の中止の旨の通知を受けた場合に、当該データに係るネットワークコーディング伝送の中止を決定し、前記テーブルに基づいて、当該ネットワークコーディング伝送に係るデータを送信してくる前段の端末に対してネットワークコーディング伝送の中止の旨を通知し、前記テーブルから当該ネットワークコーディング伝送に関する情報を破棄する、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の中継端末。
【請求項5】
前記情報伝送破棄手段は、
前段の端末から連続して符号化データを継続受信中に、前回の符号化データを受信してから前記第一の所定時間よりも長い第二の所定時間内につぎの符号化データを受信できなかった場合は、ネットワークコーディング伝送の中止を決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の中継端末。
【請求項6】
データを送信する送信端末、データの宛先となる受信端末、および、送信端末と受信端末の間でデータの中継を行う複数の中継端末から構成されるアドホックネットワークであって、
前記送信端末は、
送信するデータに送信開始時間を記録する送信時間記録手段、
を備え、
前記中継端末は、
前記送信端末から前記受信端末までの各端末のトポロジィ情報を管理するルーティング管理手段と、
受信したデータに対して所定の符号化関数に基づく符号化処理を実行し、当該符号化したデータを後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する符号化手段と、
前記トポロジィ情報に基づいて、自端末から後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する際の、タイムアウト値および再送回数を決定する再送方法決定手段と、
前記送信端末によるデータの送信開始から自端末で受信するまでの時間である所要時間を算出する統計手段と、
を備え、
前記中継端末の再送方法決定手段は、さらに前記所要時間を用いてタイムアウト値および再送回数を決定する、
ことを特徴とするアドホックネットワーク。
【請求項7】
データを送信する送信端末、データの宛先となる受信端末、および、送信端末と受信端末の間でデータの中継を行う複数の中継端末から構成されるアドホックネットワークであって、
前記送信端末は、
送信するデータにネットワークコーディング伝送のデータ種別を記録するデータ種別記録手段、
を備え、
前記中継端末は、
前記送信端末から前記受信端末までの各端末のトポロジィ情報を管理するルーティング管理手段と、
受信したデータに対して所定の符号化関数に基づく符号化処理を実行し、当該符号化したデータを後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する符号化手段と、
前記トポロジィ情報に基づいて、自端末から後段の中継端末または受信端末へネットワークコーディング伝送する際の、タイムアウト値および再送回数を決定する再送方法決定手段と、
前記送信端末が送信するデータに記録されたネットワークコーディング伝送のデータ種別と、当該データ種別ごとに自端末にデータを送信してくる端末とを関連付けて記憶するテーブルを備えた情報伝送破棄手段と、
を備え、
前記中継端末の情報伝送破棄手段は、
第一の所定時間内に符号化に必要なデータ数を受信しなかった場合、または、ネットワークコーディング伝送の後段の端末からネットワークコーディング伝送の中止の旨の通知を受けた場合に、当該データに係るネットワークコーディング伝送の中止を決定し、前記テーブルに基づいて、当該ネットワークコーディング伝送に係るデータを送信してくる前段の端末に対してネットワークコーディング伝送の中止の旨を通知し、前記テーブルから当該ネットワークコーディング伝送に関する情報を破棄する、
ことを特徴とするアドホックネットワーク。
【請求項8】
前記情報伝送破棄手段は、
前段の端末から連続して符号化データを継続受信中に、前回の符号化データを受信してから前記第一の所定時間よりも長い第二の所定時間内につぎの符号化データを受信できなかった場合は、ネットワークコーディング伝送の中止を決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載のアドホックネットワーク。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−4831(P2012−4831A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137660(P2010−137660)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】