説明

中間転写ベルト

【課題】本発明は、一次転写及び二次転写効率ともに優れ、画像の中抜けやフィルミングの発生がない画像形成装置用中間転写ベルトを提供する。
【解決手段】樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトであって、該表面層の表面粗さ(Rz)が0.1〜1.5μm、その比誘電率が5〜15、その厚みが1〜10μmである画像形成装置用中間転写ベルト、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置の中間転写ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルトの高品質化を目的として、例えば、特許文献1、2には、基材、弾性材料層及び表面層からなる多層構成の中間転写ベルトが提案されている。特許文献1のベルトは、トナーが直接乗る表面層に導電剤を添加し半導電性に制御することにより一次転写、二次転写を行っているが、薄膜での半導電性の制御は極めて難しく、実際には電子導電剤の偏在による電気抵抗の局所的なばらつきが発生してしまう。また、特許文献2のベルトは、弾性層にイオン導電性ゴムを含む乃至イオン導電剤を添加することを特徴とするが、イオン導電性ゴムやイオン導電剤は温湿度による導電性の変化が問題となっている。
【特許文献1】特許第3248455号明細書
【特許文献2】特許第3734739号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、一次転写及び二次転写効率ともに優れ、画像の中抜けやフィルミングの発生がない画像形成装置用中間転写ベルト(以下単に「中間転写ベルト」とも表記する。)を提供することを目的とする。
【0004】
なお、一次転写効率とは、感光体から中間転写ベルトへのトナーの転写効率を意味し、二次転写効率とは、中間転写ベルトから紙へのトナーの転写効率を意味する。また、画像の中抜けとは、文字や線の中央付近にトナーが乗っていない状態を意味し、フィルミングとは中間転写ベルト上にトナーが固着してしまう状態を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究をおこなった結果、中間転写ベルトの表面層を半導電性の制御が困難な導電剤を含む薄膜にするのではなく、高い比誘電率のフッ素樹脂を用いて静電容量の高い薄い表面層(誘電層)を形成することにより、トナーと接する転写ベルト表面の帯電及び除電が極めてスムーズになることを見いだした。また、表面層の表面粗さを所定の低い範囲に設定することにより、安定した高画質化が発現できることを見いだした。つまり、優れた一次転写及び二次転写効率を有し、画像の中抜けやフィルミングの発生がない中間転写ベルトが得られることを見いだした。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は下記の画像形成装置用中間転写ベルト、及びその製造方法に関する。
【0007】
項1. 樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトであって、該表面層の表面粗さ(Rz)が0.1〜1.5μm、その比誘電率が5〜15、その厚みが1〜10μmである画像形成装置用中間転写ベルト。
【0008】
項2. 前記表面層の体積抵抗率が1012Ω・cm以上であり、その静摩擦係数が0.1〜0.45である項1に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0009】
項3. 前記表面層の単位面積あたりの静電容量が700〜15000pF/cm2である項1又は2に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0010】
項4. 前記表面層の体積抵抗率が1012〜1015Ω・cmである項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0011】
項5. 前記表面層のフッ素樹脂がポリビニリデンフロライド(PVdF)、ビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体樹脂、又はそれらの混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0012】
項6. 前記表面層が導電剤を含まない項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0013】
項7. 前記弾性層のタイプA硬度が80°以下、その厚みが50μm以上である項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0014】
項8. 前記表面層が遠心成型法を用いて製膜されてなる項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【0015】
項9. 樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法であって、
(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜する工程、
(3)上記(2)で得られた表面層の内面に弾性層材料を遠心成型して厚みが50μm以上の弾性層を製膜して2層膜とする工程、及び
(4)上記(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【0016】
項10. 樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法であって、
(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜する工程、
(3’)上記(1)で製膜した基材層と上記(2)で製膜した表面層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層材料を注入して、加熱処理する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【0017】
項11. 樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法であって、
(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜する工程、
(3’)上記(1)で製膜した基材層と上記(2)で製膜した表面層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層材料を注入して、基材層内面の片側端部からもう片側端部へしごきを行い、加熱処理する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の中間転写ベルトは、一次転写及び二次転写効率ともに優れ、画像の中抜けやフィルミングの発生がなく、安定した高画質化が発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
I.中間転写ベルト
本発明の中間転写ベルトは、樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなり(例えば図1を参照)、該表面層の表面粗さ(Rz)が0.1〜1.5μm、その比誘電率が5〜15、その厚みが1〜10μmであることを特徴とする。
【0020】
表面層
本発明の中間転写ベルトにおける表面層は、直接トナーを乗せ、重ね合わせた4色のトナーを紙へ転写、離型するための層であり、表面精度に優れていることが必要である。表面層の表面粗さ(Rz)は0.1〜1.5μm、好ましくは0.25〜1.2μm、より好ましくは0.4〜1.0μmである。表面粗さが0.1μm未満の場合は、ロール等摺動する部材と張り付いてしまいやすくなるため駆動時のトルクオーバーの原因となってしまい、1.5μmを越える場合は、トナーの固着(フィルミング)の原因や中抜け等の画像欠陥となるため好ましくない。
【0021】
表面層の材料は、比誘電率が5〜15のフッ素樹脂であり、好ましくは比誘電率が7〜12、より好ましくは比誘電率が8〜12のフッ素樹脂である。かかるフッ素樹脂としては、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(VDF-HFP共重合体)、又はそれらの混合物が挙げられる。なお、VDFとHFPの共重合体は、HFPの割合が1〜15モル%程度が好ましい。
【0022】
トナーの転写効率に影響を与える要因の一つである表面層の静電容量は、比誘電率、層の厚み及び層の面積と次のような関係がある。
【0023】
静電容量C=ε・(A/I) (I)
(式中、ε=ε・εの関係があり、εは真空の誘電率(ε=8.85×10-12(F/m))を示し、εはその物質の比誘電率を示し、Aは表面層の面積(m)、Iは表面層の厚み(m)を示す。)
表面層の面積が一定の場合、表面層の厚みは、1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。厚みが厚すぎると弾性層のゴム弾性を損なうことになるため好ましくなく、また、厚みが薄すぎると表面層の静電容量は高くなるが穴があきやすい等の耐久性に問題が生じる。
【0024】
表面層の単位面積あたりの静電容量は700〜15000pF/cm2程度、さらに1300〜8000pF/cm2であることが好ましい。
【0025】
表面層の静摩擦係数は、ブレード鳴きを防ぐ観点から0.1〜0.45、さらに0.15〜0.35、特に0.2〜0.3であることが好ましい。
【0026】
表面層の体積抵抗率は、通常1012Ω・cm以上であり、さらに1012〜1015Ω・cmが好ましい。
【0027】
表面層は、上記のようなフッ素樹脂薄膜が好適に採用される。また、背景技術の項でも述べたように導電剤を含むと半導電性の制御が極めて困難となるため、表面層には実質的に導電剤を含まない。かかる表面層は、環境(温度、湿度等)の変化により導電性が左右されないため、安定したトナーの一次及び二次転写が可能となり、高画質化が実現できる。
【0028】
弾性層
本発明の中間転写ベルトにおける弾性層は、二次転写時のバイアスロールによるニップ圧応力集中を回避するために、導電剤が分散した弾性材料で構成される。
【0029】
弾性層の材料としては、ゴム弾性をもつ材料であれば特に限定はないが、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム等が例示される。
【0030】
シリコーンゴムとしては、例えば、付加型液状シリコーンゴムが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製の、KE-106、KE1300等が例示される。
【0031】
フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)等が挙げられ、具体的には、ダイキン工業(株)製のフッ素ゴムコート材GLS−213F、GLS−223F等、太平化成工業(株)製のフッ素ゴムコート材FFX-401161等が例示される。
【0032】
ブチルゴムとしては、イソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
【0033】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、またはそれを主体とする共重合により得ることのできるゴム状弾性体である。
【0034】
ウレタンゴムとしては、例えば、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)などが挙げられる。
【0035】
弾性層に含まれる導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質;アルミニウム、銅合金等の金属または合金;更には酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物などの1種または2種以上の微粉末が用いられる。
【0036】
導電剤の含有量は、通常、弾性層中5〜30重量%程度であればよい。これにより弾性層に、中間転写ベルトに適した導電性が付与される。
【0037】
弾性層の厚さは、ニップ圧の応力集中防止を考慮して、通常、50μm以上であり、好ましくは50〜300μm、より好ましくは100〜250μmである。
【0038】
弾性層のタイプA硬度(JIS K6253)は、80°以下、好ましくは30〜70°である。
【0039】
基材層
本発明の中間転写ベルトにおける基材層は、駆動時にかかる応力でベルトの変形を回避するために、機械物性に優れた材料で構成される。
【0040】
基材層の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、これらの混合物等が例示される。基材層は、これらの材料を用いて遠心成型法や溶融押出成形法などの公知の方法により製造できる。
【0041】
例えば、ポリイミドは、通常、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。
【0042】
ポリイミドのテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、アゾベンゼン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の二無水物が挙げられる。
【0043】
ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4′−ジアミノビフェニル、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノアゾベンゼン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0044】
前記ジイソシアネートとしては、上記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
【0045】
また、ポリアミドイミドは、トリメリット酸とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、ジアミン又はジイソシアネートは、上記のポリイミドの原料と同じものを用いることができる。
【0046】
基材層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して、通常、30〜120μm、好ましくは50〜100μmである。
【0047】
基材層に含まれる導電剤としては、上記弾性層で挙げたものを用いることができる。その含有量は、通常、基材層中5〜25重量%程度であればよい。これにより基材層に、中間転写ベルトに適した導電性が付与される。
II.中間転写ベルトの製造
本発明の中間転写ベルトは、(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜し、(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜し、(3)上記(2)で得られた表面層の内面に弾性層材料を遠心成型して厚みが50μm以上の弾性層を製膜して2層膜とし、(4)上記(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理することにより製造することができる。
【0048】
或いは、上記(1)及び(2)により表面層及び基材層をそれぞれ製膜した後、(3’)表面層の内面に基材層の外面を重ね合わせて、両層の間に弾性層材料を注入し、加熱処理することによっても製造することができる。
【0049】
工程(1)(基材層の形成)
基材層は次のようにして製膜することができる。まず、基材層の典型材料であるポリイミドを用いる場合について説明する。
【0050】
上記したポリイミドの原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とする。このポリアミック酸溶液は、通常固形分濃度が10〜40重量%程度である。
【0051】
溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と呼ぶ。)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン系有機極性溶媒が使用される。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。特に、NMPが好ましい。
【0052】
また、基材層に所望の半導電性を付与するために、基材層中5〜25重量%程度になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤をポリアミック酸溶液に添加しても良い。この場合、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行ってもよい。
【0053】
得られたポリアミック酸を、回転ドラム(円筒状金型)等を用いた遠心成型を行う。加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し100〜190℃程度、好ましくは110℃〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/min程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状ベルトを成形する。
【0054】
次に、第2段階加熱として、温度280〜400℃程度(好ましくは300〜380℃程度)で処理してイミド化を完結させる。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにするのが良い。なお、第2段階加熱は、管状ベルトを回転ドラムの内面に付着したまま行っても良いし、第1加熱段階を終わったら、回転ドラムから管状ベルトを剥離し、取り出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃に加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常約20分〜3時間程度である。
【0055】
基材層の材料としてポリアミドイミドを用いる場合も同様にして、ジアミン或いはジアミンから誘導されたジイソシアネートと、トリメリット酸とを溶媒中で反応させて直接ポリアミドイミドとし、これを遠心成型して、継目のない(シームレス)ポリアミドイミドの基材層を製膜できる。基材層中5〜25重量%程度になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤を添加しても良い。
【0056】
また、基材層の材料としてポリカーボネート、PVDF、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いる場合は、これらの樹脂を溶融して押出成型することによりシームレスの基材層を製膜できる。基材層中5〜25重量%程度になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤を添加しても良い。
【0057】
以上のようにして、継目のない基材層を製膜できる。
【0058】
工程(2)(表面層の形成)
表面層は、例えば、次のようにして製膜することができる。表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmを有する円筒状金型を用いて、比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型する。この場合、その厚みが1〜10μmとなるように調整する。
【0059】
フッ素樹脂からなる表面層材料を溶媒に溶解した液状原料を、回転ドラム(円筒状金型)の内面にキャストし遠心成型して行う。用いる溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;或いはこれらの混合溶媒などが用いられる。該液状原料は、固形分濃度が2〜30重量%程度であればよい。
【0060】
表面層の遠心成型は、例えば、回転ドラム等を用いて次のようにして実施できる。停止している回転ドラムに、最終厚さを得るに相当する量の液状原料を注入した後、遠心力が働く速度にまで徐々に回転速度を上げて遠心力で内面全体に均一に流延する。
【0061】
回転ドラムは、その内面が所定の表面精度に研磨されており、この回転ドラムの表面状態が、本発明の中間転写ベルトの表面層外面にほぼ転写される。従って、回転ドラムの内面の表面粗さを制御することにより、表面層の表面粗さを所望の範囲に調節することができる。回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)を、0.1〜1.5μmの範囲で設定すると、ほぼそれに対応した表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmを有する表面層を形成できる。但し、中間転写ベルトの表面層の表面粗さは、ベルトの微妙なタワミやウネリを測定上拾ってしまうため、回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)に比してやや高めの値になる傾向がある。そのため、ベルト表面層の所望の表面粗さに対して、やや小さめの内面の平均表面粗さ(Rz)を有する回転ドラムを採用することもできる。なお、使用する金型内面の粗度は、内面仕上げ時に使用する研磨紙の番手等により任意に制御できる。
【0062】
回転ドラムは回転ローラー上に載置し、該ローラーの回転により間接的に回転が行われる。また該ドラムの大きさは、所望する表面層の大きさに応じて適宜選択できる。
【0063】
加熱は、該ドラムの周囲に、例えば遠赤外線ヒータ等の熱源が配置され外側からの間接加熱により行われる。加熱温度は樹脂の種類に応じて変化し得るが、通常、室温から樹脂の融点前後の温度、例えば、樹脂の融点Tmとした場合に、(Tm±40)℃程度、好ましくは(Tm−40)℃〜Tm℃程度)まで徐々に昇温し、昇温後の温度で10〜60分程度加熱すればよい。これにより、ドラム内面に継目のない(シームレス)管状の表面層が製膜できる。
【0064】
工程(3)(2層化)
上記工程(2)で得られた表面層の内面に、弾性層材料を遠心成型して厚みが50μm以上の弾性層を製膜して2層膜とする。
【0065】
ゴム弾性をもつ弾性層材料(例えば、ウレタンエラストマー等)を溶媒に溶解させて液状組成物とする。液状組成物には、必要に応じて硬化剤を添加する。この液状組成物は、通常固形分濃度が20〜70重量%程度である。
【0066】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;或いはこれらの混合溶媒などが用いられる。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。特に、トルエン、キシレンが好ましい。
【0067】
弾性層に所望の半導電性を付与するために、弾性層中5〜30重量%程度になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤を該液状組成物に添加する。この場合、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行ってもよい。
【0068】
得られたカーボンブラック分散液状組成物を、表面層が形成された回転ドラム(円筒状金型)の表面層の内面に均一に塗布して遠心成型を行う。遠心成形しなから加熱処理を行う。加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し100〜180℃程度、好ましくは110℃〜160℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜3℃/min程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、ドラム内に表面層、その上に弾性層を有する2層膜を成形する。
【0069】
工程(4)(3層化)
上記工程(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する。
【0070】
具体的には、基材層の外面にドライラミ接着剤等を塗布し、円筒状金型内に製膜した2層膜の弾性層内面にプライマー等を塗布、風乾した後、円筒状金型内の2層膜に基材層を挿入して重ね合わせる。重ね合わせた両層をベルト内面から圧着した後、円筒状金型内面を徐々に昇温し60〜130℃程度、好ましくは80〜120℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜5℃/min程度であればよい。上記の温度で2〜30分維持し、円筒状金型内に表面層、弾性層及び基材層を有する3層ベルトを成形する。
【0071】
張り合わせた3層ベルトを円筒状金型から剥離し、両端部を所望の幅にカットして3層の中間転写ベルトを製造する。
【0072】
工程(3’)(弾性層の製膜と3層化)
上記工程(3)及び(4)に代えて、別々に製膜した表面層と基材層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層材料をインジェクションにて注入する。弾性層の均一化のため、基材層内面の片側端部からもう片側端部へしごきを行い、得られた積層体を加熱処理することにより、中間転写ベルトを得ることもできる。表面層の内面と基材層の外面とが弾性層材料を介して同時に接着された中間転写ベルトを得る。なお、両層の重ね合わせ後は、両層の間が密閉状態となるようにすることが好ましい。
【0073】
弾性層材料としては、上記したシリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0074】
例えば、弾性層材料がシリコーンゴムの場合、主剤であるビニル基含有オルガノポリシロキサンと、架橋剤(硬化剤)のハイドロジェンオルガノポリシロキサンとからなり、これらを白金触媒下でヒドロシリル化反応により架橋(硬化)を起させる。通常2液型で一方に架橋剤、もう一方に触媒を混合しており、製膜直前に両液を混合して使用する。シリコーンゴムの架橋剤の量は、主剤に対して5〜20w%程度であればよい。
【0075】
また、弾性層材料がウレタンゴムの場合、ポリオールとジイソシアネートの重付加反応により作製され、インジェクションで製膜する場合は、製膜直前に両液を混合して使用する。原料であるポリオールとジイソシアネートの混合比は、ポリオールの活性水素1当量に対しジイソシアネートのNCO基が1〜1.2当量程度となるように混合すればよい。或いは、ポリオールとジイソシアネートの重合を進めたプレポリマーを用いることもでき、この場合、さらに硬化剤としてジイソシアネートをプレポリマーに添加しても良い。またポットライフを長くするためジイソシアネートプレポリマーのNCO末端をブロック剤でブロックしたものを用いても良い。
【0076】
また、弾性層に所望の半導電性を付与するために、弾性層中5〜30重量%程度になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤を弾性層材料に添加することができる。
【0077】
シリコーンゴムの場合、インジェクションにて得られた積層体を、110〜220℃程度に熱処理することにより、弾性層材料が加硫(架橋・硬化)するとともに、表面層と基材層が同時に強固に接着される。
【0078】
上記3層化工程の具体例を挙げる。
【0079】
ドラム内面に製膜された表面層内面に、接着用プライマーを均一塗布して風乾する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布して、これを表面層内面に重ね合わせ、減圧状態でこの管状ベルト両端部に内側からOリングを押し当てて、重ね合わせた表面層及び基材層間を密閉状態とする。次に、この両層の隙間に、弾性層材料をインジェクション法にて注入し、基材層内面側から金属ロールを用いて、液状シリコーンゴムを周方向に均一になるように流延する。
【0080】
或いは、ドラム内面に製膜された表面層内面に、接着用プライマーを均一塗布する。また、製膜した基材層外面にもプライマーを塗布した後、これを円柱状の芯体外面に被せる。この芯体を、内面に表面層が製膜されているドラム内面に挿入し、芯体とドラムを同心軸上に固定する。次に、ドラムの片側から、両層の隙間にペースト状弾性層材料をインジェクション法にて注入する。尚、該ドラムは長手方向左右を一対の治具で挟まれて固定したものであり、一方の治具には弾性層材料の入口が設けられ、他方の治具にはその出口が設けられている。
【0081】
3層化した後の加熱処理は、110〜220℃まで徐々に加熱して(例えば、昇温速度1〜3℃/min程度)、その温度で0.5〜4時間処理する。これにより、ベルトの架橋・硬化が完了する。加熱終了後、ドラムを冷却し、3層化された管状ベルトをドラム内面から剥離して、本発明の中間転写ベルトを得る。
【0082】
なお、上記のプライマーの使用は任意であるが、接着強度向上の点から使用するのが好ましい。プライマーとしては、例えば、東レダウコーニング製プライマーDY39−067等が例示される。
【0083】
かくして得られる中間転写ベルトは表面精度が高く、表面層における表面粗さは十点平均粗さ(Rz)にて0.1〜1.5μm、好ましくは0.25〜1.2μmとなる。
【0084】
中間転写ベルトの平均厚みは、通常、150〜450μm程度、好ましくは200〜300μm程度であり、表面層は1〜10μm程度、弾性層は50〜300μm程度、基材層は30〜120μm程度となる。しかも、上記したような3層化工程を採用するために、ベルトの厚みのばらつきは小さくなり、均質なベルトが製造できる。
【0085】
中間転写ベルトの表面の摩擦係数は、0.1〜0.45、特に0.15〜0.35程度となる。
【0086】
中間転写ベルトの表面抵抗率は1×1010〜1×1015Ω/□程度、体積抵抗率は1×108〜1×1014Ω・cm程度となり、弾性層及び/又は基材層に添加する導電剤の添加量に応じてこの範囲で可変である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
本明細書に記載の下記の評価は、次のようにして行った。
<基材層固形分濃度>
試料を金属カップ等の耐熱性容器で精秤し、この時の試料の重量をAgとする。試料を入れた耐熱性容器を電気オーブンに入れて、120℃×12分、180℃×12分、260℃×30分、及び300℃×30分で順次昇温しながら加熱、乾燥し、得られる固形分の重量(固形分重量)をBgとする。同一試料について5個のサンプルのA及びBの値を測定し(n=5)、次式(II)にあてはめて固形分濃度を求めた。その5個のサンプルの平均値を、固形分濃度として採用した。
【0089】
基材層固形分濃度=B/A×100(%) (II)
<弾性層固形分濃度>
試料を金属カップ等の耐熱性容器で精秤し、この時の試料の重量をAgとする。試料を入れた耐熱性容器を電気オーブンに入れて、60℃×12分、90℃×12分、120℃×30分、及び150℃×30分で順次昇温しながら加熱、乾燥し、得られる固形分の重量(固形分重量)をBgとする。同一試料について5個のサンプルのA及びBの値を測定し(n=5)、次式(III)にあてはめて固形分濃度を求めた。その5個のサンプルの平均値を、固形分濃度として採用した。
【0090】
弾性層固形分濃度=B/A×100(%) (III)
<厚み>
各層の厚みおよび総厚みは、株式会社ミツヨト製デジマチックインジケータの平面型測定子を用いて幅方向3点、周方向8点の合計24点測定し、その平均値として示した。
【0091】
また多層ベルトとした後の各層の厚みは、製品部幅にカットした後の両端部切れ端を周方向に等ピッチで8点、計16点採取し、これらをエポキシ樹脂にて包埋した後、ミクロトームを用いて作成した断面を電子顕微鏡にて観察し各層の厚みを測定した。各層界面の判別はフーリエ変換赤外分光分析法のATRイメージによるトータル吸光度イメージにより行った。
<表面粗さ>
表面粗さ(μm)は、JIS B0601-1982に準拠して測定した。測定機は、東京精密(株)製のサーフコム575Aを用いた。測定条件は、CUTOFF 0.25、測定長2.5mm、T-SPEED 0.06mm/sで行った。同一ベルト内で異なる表面部位を5箇所測定し、その十点平均粗さ(Rz)の平均値を表面粗さとした。
<静摩擦係数>
静摩擦係数は、新東科学(株)製のHeidon 94iを用いて、同一ベルト内で異なる表面部位を10箇所測定し、その平均値を静摩擦係数とした。
<表面抵抗率、体積抵抗率>
表面抵抗率(Ω/□)及び体積抵抗率(Ω・cm)は、三菱化学(株)製の抵抗測定器“ハイレスタIP・HRブロ−ブ”を用いて測定した。幅方向の長さ360mmにカットしたベルトをサンプルとし、該サンプルの幅方向に等ピッチで3ヶ所、縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について、印加電圧100V、10秒後に表面抵抗率及び体積抵抗率をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
<一次及び二次転写効率>
一次転写効率は、転写前及び転写後の感光体上のトナー重量を測定し下記式から求めた。また、二次転写効率は、転写前及び転写後の転写ベルト上のトナー重量を測定し下記式から求めた。
【0092】
転写効率(%)=100×[(転写前トナー重量)−(転写後トナー重量)]/(転写前トナー重量)
各転写効率は次の基準で評価した。
【0093】
一次転写効率:98%以上「○」、95〜98%「△」、95%以下「×」
二次転写効率:97%以上「○」、95〜97%「△」、95%以下「×」
<ライン中抜け>
ライン中抜け(一次転写効率)は、ライン画像のみの画像にて転写前及び転写後の感光体上のトナー重量を測定し上記の転写効率の式から求めた。
【0094】
ライン中抜けは次の基準で評価した。
【0095】
ライン中抜け:90%以上「○」、85〜90%「△」、85%以下「×」
<フィルミング>
フィルミングは、100枚プリント後の中間転写ベルトへのトナーの固着の程度を目視にて評価した。
【0096】
固着なし「○」、僅かに固着あり「△」、固着あり「×」
実施例1
(1)基材層の製膜
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを除々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は17000、粘度は35ポイズ、固形分濃度は18.0重量%であった。
【0097】
次に、このポリアミック酸溶液450gに、酸性カーボン(pH3.0)21gとN-メチル-2-ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてカーボンブラック(CB)の均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は、固形分濃度18.5重量%、該固形分中のCB濃度は20.6重量%であった。
【0098】
そして該溶液から276gを採取し、回転ドラム内に注入し、次の条件で成形した。
【0099】
回転ドラム・・・内径301.5mm、幅540mmの内面鏡面仕上げの金属ドラムが2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。例えば、図2を参照。
【0100】
加熱温度・・・該ドラムの外側面に遠赤外線ヒータを配置し、該ドラムの内面温度が120℃に制御されるようにした。
【0101】
まず、回転ドラムを回転した状態で276gの該溶液をドラム内面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は1℃/minで120℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱した。
【0102】
回転、加熱が終了した後、冷却せずそのまま回転ドラムを離脱して熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を開始した。この加熱も徐々に昇温しつつ320℃に達した。そして、この温度で30分間加熱した後常温に冷却して、該ドラム内面に形成された半導電性管状ポリイミドベルトを剥離し取り出した。なお、該ベルトは厚さ80μm外周長944.3mm、表面抵抗率2×1011〜4×1011Ω/□、体積抵抗率1×109〜3×109Ω・cmであった。
(2)表面層の製膜
比誘電率が8であるPVDF樹脂(カイナー301F、体積抵抗率:2×1014Ω・cm、アルケマ製)30gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)180gとメチルエチルケトン(MEK)390gの混合溶媒に溶解させ固形分濃度5w%の溶液を作成し、この原料102gを次の条件で製膜した。
【0103】
回転ドラム・・・内径301.0mm、幅540mm、内面十点平均粗さ(Rz)=0.3μmの金属ドラムが2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。例えば、図2を参照。
【0104】
回転ドラムを回転した状態でドラム内面に均一に塗布し加熱を開始した。加熱は2℃/minで130℃まで昇温して、その温度で20分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面に表面層を形成した後ドラムを常温まで冷却した。ドラム内面に形成された表面層の厚みを渦電流式厚み計(ケット化学研究所社製)にて測定したところ6μmであった。
【0105】
予備試験として同様の方法で作成したPVDF層単膜の電気抵抗値を測定したところ表面抵抗値で1×1015Ω/□OVER、体積抵抗率4×1014Ω・cm、また比誘電率は8.2であった。
(3)弾性層の製膜
トルエン1300gにポリウレタンエラストマー(ウレハイパーRUP1627、大日本インキ(株)製)を1000g溶解させた溶液に酸性カーボン(pH3.5)300gを加え、ボールミルにて均一分散を行い、固形分濃度50重量%、該固形分中のカーボンブラック(CB)濃度は23重量%のマスターバッチ溶液を作成した。このマスターバッチ204gに硬化剤CLH-1を2.41gとCLH-5を3.26g(大日本インキ(株)製)添加し撹拌を行った。
【0106】
この溶液を先に製膜した表面層内面に回転した状態で均一に塗布し加熱を開始した。加熱は2℃/minで150℃まで昇温して、その温度で30分間その回転を維持しつつ加熱し、ドラム内面にゴム弾性層を形成した。
【0107】
予備試験としてこのウレタンゴムマスターバッチ溶液にて作成したウレタンゴム単膜のゴム硬度を測定したところタイプA(JIS K6253)にて63°であった。
(4)ゴム弾性層内面とポリイミド外面の張り合わせ
上記(3)で製膜したゴム弾性層内面にプライマーDY39−067(東レダウコーニング製)を塗布、風乾した後に、ドライラミ接着剤を薄く外面に塗布した(1)のポリイミドベルトを挿入し重ね合わせた。基材層内面から圧着し、加熱(80〜100℃)を行い、張り合わせを完了させた。張り合わせた多層ベルトを金型から剥離し両端部をカットし幅360mmの多層ベルトを採取した。
【0108】
該多層ベルトは厚さ284μm、外周長945.0 mm、表面抵抗率2×1011〜3×1011Ω/□、体積抵抗率1×1010〜3×1010Ω・cm、表面静摩擦係数0.27であった。
【0109】
実施例2
表面層として1μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0110】
実施例3
表面層として3μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0111】
実施例4
表面層として10μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0112】
実施例5
表面層として比誘電率が9のビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVDF-HFP共重合樹脂(カイナー#2821、アルケマ製)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒に溶解させ固形分濃度5w%の溶液を作成し、この原料102gを用いて6μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0113】
予備試験として同様の方法で作成したカイナー#2821層単膜の電気抵抗値を測定したところ表面抵抗値で1×1015Ω/□OVER、体積抵抗率6×1014Ω・cm、比誘電率は8.7であった。
【0114】
実施例6
表面層として比誘電率が11のビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVDF-HFP共重合樹脂(カイナー#2500、アルケマ製)にて実施例5と同様に10μの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0115】
比較例1
表面層として比誘電率が2.1であるパーフルオロフッ素樹脂のコーティング材(サイトップCTX807AP、旭硝子製)を用いて3μmの膜を作成し内面をアルカリ金属で処理した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0116】
予備試験として同様の方法で作成したパーフルオロフッ素樹脂単膜の電気抵抗値を測定したところ表面抵抗値で1×1015Ω/□OVER、体積抵抗率1×1015Ω・cmOVER、比誘電率は2.1であった。
【0117】
比較例2
表面層として比誘電率が2.1である比較例1と同様の材料にて6μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0118】
比較例3
表面層として比誘電率が4であるポリアミドイミド樹脂(バイロマックスHR12N2、東洋紡製)を用いて10μmの膜を作成した以外は、実施例5と同様に多層ベルトを作成した。
【0119】
比較例4
表面層としてPVDF樹脂(カイナー301F、アルケマ製)にて0.5μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0120】
比較例5
表面層としてPVDF樹脂(カイナー301F、アルケマ製)にて15μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0121】
比較例6
表面層として比誘電率が9のビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるVDF-HFP共重合樹脂(カイナー#2821、アルケマ製)にて20μmの膜を作成した以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0122】
比較例7
表面層製膜に使用する回転ドラム内面の十点平均粗さが(Rz)=1.5μmである以外は、実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0123】
比較例8
表面層製膜に使用する回転ドラム内面の十点平均粗さが(Rz)=2.5μmである以外は 実施例1と同様に多層ベルトを作成した。
【0124】
比較例9
回転ドラム内面に表面層の製膜をしないで、回転ドラム内面に直接ウレタンゴム層を作成し、以降は実施例1と同様にしてウレタンゴム製のゴム弾性層とポリイミド製の基材層からなる2層ベルトを得た。
【0125】
次に表面層を形成するために、このベルトを外径300mmのドラムに被せ、スプレーコーティング装置に設置し低速で回転させた。この外面にプライマーを塗布した後、VDF-HFP共重合樹脂(カイナー#2821、アルケマ製)の溶液を塗布厚みが5μmになるようにスプレーガンで均一に塗布した。
【0126】
次にこれを熱風式オーブンに静置して徐々に昇温しカイナー#2821の融点145℃より15℃高い160℃に到達してから30分間アニールを行った。
【0127】
得られたベルトの表面粗さは十点平均粗さ(Rz)にて2.8μmであった。
【0128】
上記実施例及び比較例で得られた中間転写ベルトの評価結果を表1に示す。
【0129】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の中間転写ベルトの断面模式図である。
【図2】実施例1(1)及び(2)における基材層及び表面層の製膜に用いた装置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトであって、該表面層の表面粗さ(Rz)が0.1〜1.5μm、その比誘電率が5〜15、その厚みが1〜10μmである画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項2】
前記表面層の体積抵抗率が1012Ω・cm以上であり、その静摩擦係数が0.1〜0.45である請求項1に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項3】
前記表面層の単位面積あたりの静電容量が700〜15000pF/cm2である請求項1又は2に記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項4】
前記表面層の体積抵抗率が1012〜1015Ω・cmである請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項5】
前記表面層のフッ素樹脂がポリビニリデンフロライド(PVdF)、ビニリデンフロライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体樹脂、又はそれらの混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項6】
前記表面層が導電剤を含まない請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項7】
前記弾性層のタイプA硬度が80°以下、その厚みが50μm以上である請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項8】
前記表面層が遠心成型法を用いて製膜されてなる請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成装置用中間転写ベルト。
【請求項9】
樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法であって、
(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜する工程、
(3)上記(2)で得られた表面層の内面に弾性層材料を遠心成型して厚みが50μm以上の弾性層を製膜して2層膜とする工程、及び
(4)上記(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法であって、
(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜する工程、
(3’)上記(1)で製膜した基材層と上記(2)で製膜した表面層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層材料を注入して、加熱処理する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
樹脂製の基材層、ゴム弾性樹脂を含む弾性層及びフッ素樹脂を含む表面層を有する少なくとも3層からなる画像形成装置用中間転写ベルトの製造方法であって、
(1)樹脂を遠心成型又は溶融押出成形して基材層を製膜する工程、
(2)表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmの円筒状金型を用いて比誘電率が5〜15のフッ素樹脂を遠心成型して厚みが1〜10μmの表面層を製膜する工程、
(3’)上記(1)で製膜した基材層と上記(2)で製膜した表面層とを、該表面層の内面と該基材層の外面とが接触するように重ね合わせて、両層の間に弾性層材料を注入して、基材層内面の片側端部からもう片側端部へしごきを行い、加熱処理する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−15006(P2009−15006A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176606(P2007−176606)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】