乗員保護装置の制御装置
【課題】 乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させた乗員保護装置の制御装置を提供する。
【解決手段】 車室内の状態を検出するセンサの検出情報に基づいて、車室内に、乗員を保護する乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定するエアバッグECU20を設けている。エアバッグECU20は、乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生していると判定すると、モニタ31やスピーカ32から判定結果を乗員に通知する。
従って、乗員保護装置で保護できる可能性が低い座席に乗員が着座してしまう危険性を低減することができる。
【解決手段】 車室内の状態を検出するセンサの検出情報に基づいて、車室内に、乗員を保護する乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定するエアバッグECU20を設けている。エアバッグECU20は、乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生していると判定すると、モニタ31やスピーカ32から判定結果を乗員に通知する。
従って、乗員保護装置で保護できる可能性が低い座席に乗員が着座してしまう危険性を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員を保護する乗員保護装置の制御装置に関する。特に、乗員保護装置を有効に活用して乗員を保護するための技術に関する。
【0002】
車室内の乗員を保護するために種々の乗員保護装置が提案されている。例えば、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等のエアバッグ類や、衝突が予測されるときに、シートベルトを巻き取り、乗員を強力に拘束するシートベルトプリテンショナ等がある。
【0003】
また、近年の車両、とくに3列シートを備えたワンボックスタイプの車両では、多彩なシートアレンジが可能となってきた。例えば、3列目のシートを跳ね上げて(以下、チップアップと呼ぶ)大きな荷物を積載したり、3列目のシートを床下に収納することができる。
しかしながら、この多彩なシートアレンジが可能となったことで、乗員保護装置が正常に働かない場合がある。例えば、2列目シートと3列目シートとに共通のカーテンエアバッグを設けた場合に、3列目シートをチップアップすると、カーテンエアバッグがチップアップされた3列目シートに阻害されて、正常な形で展開できなくなる。
【0004】
特許文献1では、チャイルドシートの装着状態を判断して、助手席エアバッグの展開の要否を制御する技術を開示している。また、特許文献2では、助手席エアバッグの制御状態を表すランプを設けて、チャイルシートの助手席への取付け具合に応じて、ランプを点灯、非点灯を制御している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−194076号公報
【特許文献2】特開平10−211860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように多彩な座席のアレンジが可能となったことで、座席が乗員保護装置の動作の邪魔をして、乗員保護装置が正常に動作できないケースがある。このようなときに、座席状態により危険度を判断し、危険度の高い座席や、危険度を低減させる座席レイアウトについてユーザにアドバイスできれば、ユーザにとって有効な情報となる。
特許文献1及び2にも安全性を高めるための座席レイアウトや、危険度の高い座席のアドバイスについては言及していない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させた乗員保護装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために本発明の乗員保護装置の制御装置は、車室内の状態を検出する検出手段の検出情報に基づいて、前記車室内に、乗員を保護する乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を通知する通知手段とを有する構成を採用している。
本発明によれば、乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを、車室内の状態に応じて判定することができる。従って、乗員保護装置で保護できる可能性が低い座席に乗員が着座してしまう危険性を低減することができる。
【0009】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定する構成を採用できる。
本発明によれば、乗員保護装置の動作が阻害されるか否かの判定精度を高めることができる。
【0010】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記座席の状態と前記座席のレイアウトとの少なくとも一方の状態と、当該状態のときに座席によって動作を阻害される乗員保護装置の情報とを記憶した第1記憶手段を有し、前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて前記第1記憶手段を参照し、動作が阻害される乗員保護装置があるか否かを判定する構成を採用できる。
本発明によれば、乗員保護装置の動作が阻害されるか否かの判定精度を高めることができる。
【0011】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、動作が阻害される乗員保護装置の種別と、動作が阻害される乗員保護装置の数との少なくとも一方を判定し、該判定結果に基づいて事故発生時の各座席の危険度を判定する構成を採用できる。
従って、事故発生時の座席の危険度を精度よく判定することができる。
【0012】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに、前記各座席の危険度を判定する構成を採用できる。
従って、事故形態に応じた危険度を判定することができる。
【0013】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに前記各座席の危険度を判定し、判定した各事故形態での危険度に基づいて各座席の総合的な危険度を判定する構成を採用できる。
従って、すべての事故形態の危険度を加味した総合的な危険度を判定することができる。
【0014】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、前記判定手段は、前記検出情報で乗員が着座していると判定された座席の危険度を判定する構成を採用できる。
従って、乗員が着座している座席の危険度を判定することができる。
【0015】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記検出手段の検出情報として、シートベルトの装着状態を判定した情報を含み、前記判定手段は、前記危険度に、前記シートベルトが装着状態にあるか否かを含める構成を採用できる。
従って、シートベルトの装着状態を加味したより精度の高い危険度を求めることができる。
【0016】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段で、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生していると判定すると、車両の始動を禁止する禁止手段を有する構成を採用できる。
従って、乗員の安全性が確保されるまでは、車両が始動しないようにすることができる。
【0017】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックするロック手段を有する構成を採用できる。
従って、乗員保護装置の動作が阻害される座席の状態及び座席のレイアウトとならないようにすることができる。
【0018】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、前記ロック手段は、前記座席に乗員が着座しているときに、前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックする構成を採用できる。
従って、乗員の保護が十分にできない座席の状態及び座席のレイアウトに変更しないように乗員に注意を促すことができる。
【0019】
上記乗員保護装置の制御装置において、乗員からの操作を受け付ける操作受付手段を有し、前記禁止手段は、前記通知手段で前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が前記車室内に発生していることを通知した後に、前記操作受付手段で乗員からの操作入力を受け付けると、車両の始動を許可する構成を採用できる。
従って、乗員が危険状態を認識した後で、車両を始動させることができる。
【0020】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席があると判定された場合に、前記座席のレイアウトと前記安全に着座することができない座席の情報とを表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、安全に着座できない座席を表示手段に表示させることができる。
【0021】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、車両に搭載された各乗員保護装置が動作可能な状態にあるか否かを表す情報を表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、乗員保護装置が動作可能である否かを表示手段に表示させることができる。
【0022】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記安全に着座できないと判定された座席が安全に着座できない理由を前記表示手段に表示する構成を採用できる。
安全に着座できない理由を表示手段に表示することで、座席の安全性を改善する方法を乗員に通知することができる。
【0023】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席の安全性を高めるために、座席の状態又は座席のレイアウトの変更のアドバイスを前記表示手段に表示させる構成を採用できる。
従って、乗員保護装置を正常に動作させ、車両の安全性を高めることができる。
【0024】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、座席の状態又は座席のレイアウトが変更されることによって前記乗員保護装置の動作を阻害する座席と、該座席が前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態とを判定し、前記通知手段は、前記判定手段で判定した前記座席と、前記座席の状態とを表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、乗員保護装置の動作が阻害される座席の状態又は座席のレイアウトに変更しないように乗員に通知することができる。
【0025】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記車室内に設けられた座席のレイアウトと、前記判定手段で判定された前記各座席の危険度とを表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、座席の状態がいかに危険な状態にあるかを具体的に乗員に通知することができる。
【0026】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記乗員保護装置の動作が阻害されることによって、発生し得る危険状態を事故形態ごとに記憶した第2記憶手段を有し、前記通知手段は、安全に着座できない座席において発生しうる危険状態を表示手段に表示する構成を採用できる。
従って、座席の乗員に、発生し得る危険状態を事前に通知することができる。
【0027】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席がある旨を音声で通知する音声出力手段を含む構成を採用できる。
従って、乗員保護装置による保護が不十分な座席があることを音声で通知することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成について説明する。図1には、本発明の乗員保護装置の制御装置をエアバッグECUに適用した第1実施例の構成を示す。
エアバッグECU20は、複数のセンサで測定されたセンサ信号や、スイッチの状態を示す状態切替信号を入力ポートから入力してして、これらの信号をもとに制御対象の機器を制御する制御信号を生成する。生成した制御信号はエアバッグECU20の出力ポートから制御対象の機器に出力される。
【0031】
エアバッグECU20は、乗員検知センサ11、ベルト張力センサ12、シート状態検出センサ14、加速度センサ15によって測定されたセンサ信号を入力する。また、エアバッグECU20は、バックルスイッチ13からの状態切替信号を入力する。さらに、エアバッグECU20の出力側には、制御対象の機器としてモニタ31、スピーカ32、モータ駆動回路33、点火装置34、エンジンECU35、トランスミッションECU36、ナビECU37等が接続されている。
なお、エアバッグECU20に接続するセンサや、制御対象の機器は、図1に示すものに限定されず、他のセンサや機器を接続可能である。
【0032】
乗員検知センサ11は、乗員の座席への着座を検出するセンサである。乗員検知センサ11は、座席の座面に作用する荷重を検出する。乗員検知センサ11は、歪ゲージで歪量から荷重を算出し乗員の有無を判断する。歪ゲージタイプ以外にカメラによる画像認識によるもの、電波音波により判断するものがあるが、本件はどの方法かに限定されるものではなく、乗員の有無を検出できる手段であればよい。
ベルト張力センサ12は、シートベルトの張力を、ベルトを座席側に固定する金具の弾性変形に伴うひずみとして検出するひずみゲージ(不図示)と、このひずみゲージによって計測されるひずみ量を検出する電子回路とを有している。
乗員検知センサ11の測定する座面の荷重と、ベルト張力センサ12の測定するベルト張力とから座席へのチャイルドシートの装着の有無を判定することができる。ベルト張力が所定張力値以上であり、かつ、荷重が所定重量以下であれば、チャイルドシートが装着されていると判定することができる。
バックルスイッチ13は、乗員がシートベルトを装着することによりオン状態となる常開型のスイッチである。
【0033】
シート状態検出センサ14は、座席の車室内での位置を検出するシートポジションセンサ141と、座席の背もたれ(シートバック)の傾斜角度と、座席の座面の傾斜角度とを検出する傾斜センサ142と、座席のチップアップ状態を検出するチップアップ検出センサ143とを有している。
【0034】
シートポジションセンサ141は、座席をスライドさせるスライド機構のレール側に、磁石片と、磁石片の磁場に反応するリミットスイッチやホール素子等の磁気検出センサを設けている。また、座席側には、磁石片の磁場を遮断する磁気遮断板を設けている。磁石片から発する磁場の磁気センサによる検出を、座席の移動によって磁気遮断板で遮断することで、座席位置の検出が可能となっている。
【0035】
傾斜センサ142は、座席の背もたれの傾斜角度と、座席の座面側の傾斜角度とを検出するセンサである。傾斜センサ142には、例えば、ポテンショメータやホールIC等の素子を用いることができる。
図2に座席状態を示す。図2(A)には、乗員が着座できる通常の座席状態を示す。図2(B)には、背もたれ7を前側に倒した前倒し状態を示す。図2(C)には、座席の背もたれ7と座面8とが接するように座席を折りたたんだV字折り畳み状態を示す。図2(D)には、座席を跳ね上げたチップアップ状態を示す。図2(E)は、座席の半分をチップアップした状態を示す。
傾斜センサ142は、座席のこのような状態(以下、座席状態という)を検出するために設けられている。
【0036】
なお、座席位置や、座席の背もたれ7や座面8の傾斜をモータの駆動によって調整している場合には、モータの回転数を計数することで座席の位置や、背もたれ7、座面8の傾斜を認識することができる。
【0037】
チップアップ検出センサ143は、車室内の座席のチップアップ状態を検出するセンサであって、例えば、図3に示すように車両の床面Fに配置される。チップアップ検出センサ143は、例えばホール素子で構成される。
車両の床面Fに設けた凹部111に、座席側の金属部材110が挿抜されることによって、チップアップ検出センサ143は抵抗値や磁場等の変化を検出する。
【0038】
加速度センサ15は、車両の前後軸方向に生じる加速度や、車両の左右方向に生じる加速度を検出するセンサである。加速度センサ15の設置位置を図4に示す。加速度センサ15は、車両フロント部2、Aピラー部3、Bピラー部4、Cピラー部5等に設置される。また、加速度センサは、車両フロア部に設けられたエアバッグECU20内にも設置されている(図1に示す加速度センサ23)。加速度センサ15、23には、静電容量型、ピエゾ抵抗型等の加速度に対応する物理的効果量をアナログ電圧に変換して出力するセンサが用いられる。
【0039】
また、車両フロア部に設けられエアバッグECU20内には、ロールレートセンサ24が設置される。車両の前後軸の周りに生ずる回転角速度をロールレートとして検出する。ロールレイトセンサ24には、静電容量の変化で角速度を検出するタイプ、水晶音叉を使用して角速度を検出するタイプなどを用いることができる。
【0040】
次に、エアバッグECU20の構成について説明する。エアバッグECU20は、図1に示すように入力ポート21、マイコン22、加速度センサ23、ロールレイトセンサ24、出力ポート25を備えている。
エアバッグECU20の入力ポート21には、前述した各種センサによって測定されたセンサ信号や、バックルスイッチ13の状態切替信号が入力される。
【0041】
マイコン22は、前述各種センサによって測定したセンサ信号と、バックルスイッチ13の状態切替信号とを入力ポート21より入力して、座席状態や座席レイアウトを判定する。座席レイアウトとは、2列目、3列目の座席の配置情報であり、シートポジションセンサ141で検出される。例えば、2列目の座席が1列目の座席側に移動しているとか、3列目の座席がチップアップされているといった情報を示す。
また、マイコン22は、判定した座席状態や座席レイアウトから乗員保護装置の動作を阻害する座席があるか否かを判定する。乗員保護装置の動作を阻害する座席があると判定すると、判定した乗員保護装置の動作を阻害する座席と、この座席によって正常に動作しない乗員保護装置とをモニタ31に表示したり、スピーカ32から音声で通知する。なお、乗員保護装置の動作を阻害する座席や正常に動作しない乗員保護装置の情報は、エアバッグECU20からナビECU37に情報を出力し、ナビECU37でモニタ31に表示してもよい。
【0042】
また、マイコン22は、モータ駆動回路33を制御してプリンテンショナ駆動モータ41を駆動することにより、シートベルトを弱い力で巻き取る。これによってドライバに乗員保護装置が正常に動作しない座席状態や座席レイアウトが発生していることを通知する。
また、マイコン22は、加速度センサ15、23で測定した加速度や、ロールレイトセンサ24で測定したロールレートから車両に衝突やロールオーバが発生する危険性があるか否かを判定する。衝突やロールオーバが発生する危険性があると判定すると、点火装置34によりスクイブを点火する。スクイブには、シートベルトを巻き取るシートベルトプリテンショナ用スクイブ42と、エアバッグを展開させるエアバッグ用スクイブ43とが設けられている。スクイブ42、43を点火することでシートベルトを巻き取り、エアバッグを展開して乗員の安全を確保する。
また、マイコン22は、他のECUと通信を行う。例えば、エンジンECU35やトランスミッションECU36と通信を行って、乗員保護装置が正常に動作しないと判定されるときには、車両の発進規制を実施する。他のECUとの通信には、例えば、ECU間を通信バスで接続し、CAN(Controller Area Network)等の通信プロトコルを使用して通信を行う。また、各ECU間を直接接続して通信できるようにしてもよい。
【0043】
図5にマイコン22のハードウェア構成を示す。マイコン22は、CPU221、ROM222、RAM(本発明の第1記憶手段、第2記憶手段に該当する)223、NVRAM(Non Volatile RAM)224、入出力部225等を有している。CPU221は、ROM222に格納したプログラムを読み込んで、このプログラムに従った演算を行う。CPU221は、プログラムに従って、図1に示す複数のセンサからのセンサ信号を入力し、これらのセンサ信号に基づいて座席状態や座席レイアウトを判定する。また、判定した座席状態や座席レイアウトから乗員保護装置の動作を阻害する座席があるか否かを判定する。さらに、乗員保護装置が正常に動作しないと判定すると、モニタ31やスピーカ32から乗員保護装置が正常に動作しない旨を通知する。また、RAM223には、演算結果のデータが書き込まれ、NVRAM224は、RAM223に書き込まれていたデータで、電源オフ時に保存の必要なデータが書き込まれる。
【0044】
図6に、乗員保護装置の車両への搭載例を示す。なお、図6には、3列シートを有する車両に乗員保護装置を搭載する場合を示す。車両には、乗員保護装置として、前方衝突用エアバッグ51と、シートクッションエアバッグ52と、シートベルトプリテンショナ53と、側方衝突用サイドエアバッグ54と、カーテンエアバッグ55とが設けられている。
【0045】
前方衝突用エアバッグ51は、例えば、運転席のステアリングホイールパッド内や助手席のインストルメントパネル内に折り込まれて、前突時にはドライバーや助手席の乗員を保護する。
シートクッションエアバッグ52は、シートクッションの前方部分に、インフレータからの高圧ガスで展開膨張されるインフレータバッグが内蔵されている。衝突時には、インフレータバッグが展開されることでシートクッションの前方部分が隆起する。これにより乗員の腰部位置が前方へ移動することを阻止する。
シートベルトプリテンショナ53は、各座席に設けられたシートベルトの巻き取り部に設けられている。衝突発生時に、スクイブに点火することでシートベルトを巻き取り、乗員を拘束する。
側方衝突用サイドエアバッグ54は、座席の背もたれ7の側部のうち、車両ボディの側部に近い側に内蔵されており、側面衝突時に展開して乗員の車両ボディの側部への衝突を防止する。
カーテンエアバッグ55は、車両側面のルーフライニングのサイド部分に折り込まれて配置され、側突やロールオーバ発生時に乗員の車外への放出を防止する。
図7には、側方衝突用サイドエアバッグ54と、カーテンエアバッグ55との展開時の形状を示す。
【0046】
以上の構成を備えた本実施例のエアバッグECU20は、シート状態検出センサ14を用いて座席状態と、座席レイアウトとを検出する。座席状態と座席レイアウトとを検出すると、エアバッグECU20は、RAM223等のメモリに記録した情報を参照し、事故等の発生時に、乗員保護装置が正常に動作できる状態にあるか否かを判定する。メモリには、例えば、図8に示すように座席状態及び座席レイアウトと、各座席状態及び座席レイアウトのときに座席に動作を阻害される乗員保護装置と、乗員保護装置が正常に動作しないことによって乗員に生じる危険度とが記録されている。マイコン22は、メモリの記録情報を参照して、現在の座席状態や座席レイアウトでは動作を阻害される乗員保護装置を検出し、座席ごとの危険度を算出する。
【0047】
危険度の算出は、前方衝突、側面衝突やロールオーバといった車両事故の形態ごとに危険度を数値化して求める。
例えば、前方衝突においては、前方衝突用エアバッグ51の動作に影響がある場合には、危険度を[3]加算し、シートベルトプリテンショナ53の動作に影響がある場合には、危険度を[2]加算する。同様にシートクッションエアバッグ52の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。
また、側面衝突においては、側方衝突用サイドエアバッグ54やカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合には、危険度を[3]加算する。同様にシートベルトプリテンショナ53の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。
また、ロールオーバの発生時においては、対象座席側のカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合には、危険度を[3]加算し、対象座席とは反対側のカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。また、対象座席の前後列のカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合にも、危険度を[1]加算する。さらに、シートベルトプリテンショナ53の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。
【0048】
発生し得る事故形態ごとに危険度を算出すると、エアバッグECU20は、算出した危険度をモニタ31に表示したり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力する。
危険度の表示は、発生し得る事故形態ごとに各座席の危険度を表示してもよいし、事故形態ごとの危険度の平均値や、加算値を求めて、これを各座席の危険度として表示してもよい。また、各座席の危険度を算出するときに、シートベルトの装着状態を加味して危険度を算出してもよい。シートベルトの装着の有無は、バックルスイッチ13によって検出することができる。
【0049】
図9に、モニタ31に表示する危険度の表示例を示す。図9に示す表示例では、前面衝突、側面衝突、ロールオーバなど、事故形態ごとに場合分けして危険度を表示している。図9(A)には前面衝突時の危険度を図形化して表示し、図9(B)には側面衝突時の危険度を図形化して表示し、図9(C)にはロールオーバ時の危険度を図形化して表示している。着座可能な座席であるか否かを、座席を表す表示の表示色によって表示し、各座席の危険度は、「〇,△,×」で表示している。「〇」は乗員保護装置が正常に動作することを示し、「△」は危険性があることを示し、「×」は非常に危険であることを示している。
また、図10には、危険度を数値で表示した例を示す。数値が高いほど危険度が高い座席であることを示している。
また、図11には、事故形態ごとにではなく、各事故形態ごとの危険度を加味した総合的な危険度を表示した例を示す。図11(A)には、危険度を図形化して表示した例を示し、図11(B)には、危険度を数値で表示した例を示す。
また、図12には、着座可能な座席の危険度を、現在の座席状態及び座席レイアウトと共に表示した例を示す。さらに、図13には、現在の座席状態及び座席レイアウトを車両の側面図と共に表示した例を示す。
【0050】
なお、図9〜図13に示す表示例では、乗員保護装置が正常に動作せず、安全に着座できない座席を乗員に表示する表示例であるが、安全に着座できない座席を表示するときに、この座席が安全に着座できない理由を表示してもよい。例えば、「この座席は、3列目の座席のチップアップによってカーテンエアバッグの展開が阻害されるため、危険です」といった情報をモニタ31に表示する。
さらに、座席状態や座席レイアウトをどのように変更すれば乗員保護装置が正常に動作するのかをアドバイスするようにしてもよい。例えば、エアバッグECU20は、乗員保護装置の動作が阻害される座席と、その座席状態をどのように変更すれば、乗員保護装置が正常に動作するのかをモニタ31に表示する。
【0051】
また、危険度が高いと判定された座席に乗員が着座している場合に、どのような危険が生じるのかをモニタ31に表示してもよい。RAM223には、動作が阻害される乗員保護装置の種別と、このとき生じる危険を記録しておく。エアバッグECU20は、RAM223を参照して、乗員保護装置が正常に動作しないことで生じる危険をモニタ31に表示したり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力する。
例えば、「3列目の座席がチップアップされており、カーテンエアバッグ55が正常に動作しない可能性があります。この場合、ロールオーバの発生時又は側面衝突の発生時に乗員が窓から車外に放出される危険性があります。」といった案内情報を乗員に通知する。
【0052】
さらに、エアバッグECU20は、座席状態や座席レイアウトを変更することで、乗員保護装置の動作を阻害する座席を検出して、これをモニタ31に表示させたり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力してもよい。乗員検知センサ11で乗員が着座している座席を検出し、この座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席状態や座席レイアウトを検出する。そして、検出した座席状態や座席レイアウトに変更しないように注意する表示をモニタ31に表示させたり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力する。
【0053】
また、上述した座席ごとの危険度の表示は、座席レイアウトが変更されたときや、乗員が車室内に搭乗したことを検出したときに表示するとよい。乗員の車室内への搭乗は、乗員検知センサ11で検出することができる。また、危険度の高い座席が存在しない場合には、危険度の表示を表示しなくてもよい。
【0054】
なお、バックルスイッチ13によりシートベルトの装着状態を検出可能であるので、図14に示すように座席ごとの着座状態と共にシートベルトの装着状態をモニタ31に表示し、乗員にシートベルトの装着を促すようにしてもよい。
また、乗員検知センサ11とベルト張力センサ12のセンサ信号によってチャイルドシートの装着の有無を判定可能であるので、図15に示すように乗員検知センサ11で検出した乗員の着座状態と、チャイルドシートの装着状態とをモニタ31に表示するようにしてもよい。
【0055】
図16に示すフローチャートを参照しながらエアバッグECU20の処理手順を説明する。図16には、乗員検知センサ11を搭載した車両におけるエアバッグECU20の処理手順を示す。
イグニッションキーがオンされると、エアバッグECU20は起動して、図1に示す各種センサからセンサ信号を入力する。入力したセンサ信号から座席状態と座席レイアウトとを検し(ステップS1)、座席状態から着座可能な座席を判定する(ステップS2)。
【0056】
次に、エアバッグECU20は、判定した座席状態と座席レイアウトとから座席毎の危険度を判定する(ステップS3)。図8に示すようにRAM233やROM223等のメモリには、座席状態及び座席レイアウトと、各座席状態及び座席レイアウトのときに動作を阻害される乗員保護装置と、乗員保護装置が正常に動作しないことによって乗員に生じる危険度とが記録されている。マイコン22は、メモリの記録を参照して、現在の座席状態や座席レイアウトで動作が阻害される乗員保護装置を検出し、座席ごとの危険度を算出する。
エアバッグECU20は、危険度を算出すると、危険度が規定値以上の着座可能座席が存在するか否かを判定する(ステップS4)。危険度が規定値以上の着座可能座席が存在しない場合には(ステップS4/NO)、乗員保護装置が正常に動作し、各座席が安全な状態であることをモニタ31に表示し、また、スピーカ32から音声で通知する(ステップS5)。
【0057】
また、危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS4/YES)、エアバッグECU20は乗員検知センサ11で乗員の着座状況を検出する(ステップS6)。乗員検知センサ11で乗員の着座状況を検出すると、ステップS4で危険度が高いと判定した着座可能座席に、乗員が着座しているか否かを判定する(ステップS7)。危険度が規定値以上の着座可能座席に乗員が着座していない場合には(ステップS7/NO)、エアバッグECU20は、着座している座席が安全であることをモニタ31に表示し、スピーカ32から音声で通知する。このとき、エアバッグECU20は、危険度の高い座席もモニタ31に表示し、この座席に着座をしないように表示してもよい。又、危険度の高い座席が安全になるための座席状態又は座席レイアウトをモニタ31に表示したり、スピーカ32から音声で通知してもよい。
【0058】
また、危険度が規定値以上の着座可能座席に乗員が着座している場合には(ステップS7/YES)、エアバッグECU20は危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。また、算出した危険度と、事故が起こった場合に発生し得る危険をモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS8)。
【0059】
このようにして本実施例は、乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させることができる。また、乗員保護装置による保護が不充分な座席が存在する場合に、どのように座席状態や座席レイアウトを変更すれば、乗員が安全に着座できる状態になるのかをアドバイスすることができる。
【0060】
次に、乗員検知センサ11を搭載していない車両の場合のエアバッグECU20の制御手順を図17に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ステップS14の危険度が規定値以上の着座可能座席があるか否かを判定するステップまでは、図16に示すフローと同一の手順で処理が行われるため、説明を省略する。
【0061】
エアバッグECU20は、各座席の危険度を算出して(ステップS13/YES)、危険度が規定値以上の着座可能座席があるか否かを判定する(ステップS14)。判定の結果、危険度が規定値以上の着座可能座席がなかった場合には(ステップS14/NO)、エアバッグECU20は、安全であることを乗員に通知し(ステップS15)、この処理を終了する。
【0062】
また、危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定すると(ステップS14/YES)、エアバッグECU20は、危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。また、エアバッグECU20は算出した危険度と、事故が起こった場合に発生し得る危険をモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS16)。
【0063】
次に、エアバッグECU20は、各種センサからのセンサ信号を入力して座席状態又は座席レイアウトを検出し(ステップS17)、座席状態又は座席レイアウトに変更があるか否かを判定する(ステップS18)。座席状態や座席レイアウトに変更があると判定すると(ステップS18/YES)、エアバッグECU20は、変更された座席状態や座席レイアウトでの各座席の危険度を算出する(ステップS19)。そして、エアバッグECU20は、危険度が規定値以上の座席が存在するか否かを判定する(ステップS20)。座席状態又は座席レイアウトの変更により危険度が規定値以上の座席が存在しなくなったと判定すると(ステップS20/NO)、エアバッグECU20は、安全であることを乗員に通知し(ステップS15)、この処理を終了する。
また、ステップS18で座席状態又は座席レイアウトの変更を検出できなかった場合や(ステップS18/NO)、ステップS20で座席状態又は座席レイアウトを変更しても危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS20/YES)、ステップS16に戻り、安全に着座できない座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。
[変形例]
【0064】
上述した実施例では、座席状態及び座席レイアウトから動作が阻害される乗員保護装置を検出し、動作が阻害される乗員保護装置の情報に基づいて座席毎の危険度を算出してこれをモニタ31に表示させていた。
これ以外に、座席状態及び座席レイアウトから動作が阻害される乗員保護装置を検出し、これをモニタ31に表示させたり、スピーカ32から音声で通知してもよい。すなわち、座席ごとの危険度を算出せずに、動作が阻害される乗員保護装置の情報をそのままモニタ31に表示する。図18には、モニタ31に表示する表示例を示す。図18に示す表示例では、正常に動作しない乗員保護装置を表す表示にバツ印を表示している。
【実施例2】
【0065】
添付図面を参照しながら本発明の第2実施例の構成について説明する。なお、本実施例の構成は、上述した実施例1の構成と同一であるため、その説明を省略する。
上述した実施例1では、座席により乗員保護装置の動作が制限され、危険度の高い座席が存在する場合に、危険度が高い座席が存在することを乗員に通知していた。
本実施例のエアバッグECU20は、危険度の高い座席が存在する場合に、車両が始動しないように制御する。エアバッグECU20はエンジンECU35に指示信号を送信して、車両が始動しないように指示する。又は、エアバッグECU20は、トランスミッションを制御するトランスミッションECU36に対して、車両が始動しないようなシフト位置(パーキング、ニュートラル)に制御するように指示信号を送信する。
また、エアバッグECU20は発進制限を行うと共に、危険度の高い座席があるため車両の発進制限を行っていることを乗員に通知する。例えば、「危険度の高い座席があるため、発進できません。シートレイアウトの変更をお願いします」といった表示をモニタ31に表示させたり、スピーカ32から音声で通知する。
座席状態や座席レイアウトが変更され、乗員保護装置が正常に動作する状態に改善されたと判定すると、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除するように指示信号を出力する。
【0066】
また、最初から乗員保護装置が正常に動作する座席状態や座席レイアウトであった場合や、乗員保護装置が正常に動作する座席レイアウトに変更された場合には、乗員に座席レイアウトを変更しないように通知するようにしてもよい。このときエアバッグECU20は、座席状態及び座席レイアウトを変更すべきでない座席と、この座席が乗員保護装置の動作を阻害する座席状態(例えば、前傾、チップアップ、前方スライド等)とを乗員に通知する。
【0067】
本実施例のエアバッグECU20の処理手順を図19に示すフローチャートを参照しながら説明する。
エアバッグECU20は、まず、エンジンECU35に指示信号を出力して、車両が始動しないように指示する(ステップS21)。また、トランスミッションを制御するトランスミッションECU36に対して、車両が始動しないようなシフト位置(パーキング、ニュートラル)に制御する指示信号を送信してもよい。
次に、エアバッグECU20は、上述した実施例で説明したように、座席状態や座席レイアウトを検出して(ステップS22)、着座可能座席を検出する(ステップS23)。さらにエアバッグECU20は各座席の危険度を算出して(ステップS24)、危険度が規定値以上の座席があるか否かを判定する(ステップS25)。危険度が規定値以上の座席がないと判定した場合には(ステップS25/NO)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS26)。また、危険度が規定値以上の座席が存在する場合には(ステップS25/YES)、エアバッグECU20は危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。また、算出した危険度と、事故が起こった場合に発生し得る危険をモニタ表示、音声で乗員に通知する。さらに、危険度の高い座席が存在するため現在発進規制を行っている旨をモニタ表示、音声通知で乗員に通知する(ステップS27)。
【0068】
次に、エアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトに変更があるか否かを各種センサからのセンサ信号により判定する(ステップS28)。座席状態や座席レイアウトの変更を検出すると(ステップS29/YES)、エアバッグECU20は、変更された座席状態や座席レイアウトでの各座席の危険度を算出する(ステップS30)。そして、エアバッグECU20は、危険度が規定値以上の座席が存在するか否かを判定する(ステップS31)。座席状態又は座席レイアウトの変更により危険度が規定値以上の座席が存在しなくなったと判定すると(ステップS31/NO)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS26)。
また、ステップS29で座席状態又は座席レイアウトの変更を検出できなかった場合や(ステップS29/NO)、ステップS31で座席レイアウトの変更後も危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS31/YES)、ステップS27に戻り、安全に着座できない座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知すると共に、車両の発進規制を行っていることをモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS27)。
【0069】
このように本実施例では、乗員保護装置の動作が阻害され、乗員の安全が確保できない状態があると判定すると、車両を発進させないように制御することで、車両の安全性をさらに高めることができる。
【実施例3】
【0070】
添付図面を参照しながら本発明の第3実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、上述した実施例1の構成と同一であるため、その説明を省略する。
本実施例は、乗員に、危険度の高い座席を通知した場合や、危険度の高い座席が存在するために車両の発進規制を行っていることを通知した場合に、乗員からの確認操作の入力を受け付ける。エアバッグECU20は、確認操作の入力により通知した情報を乗員が認識したかどうかを判定する。
例えば、乗員からの確認操作を入力するまでは、エアバッグECU20は、モニタ31に危険度の高い座席の情報を表示し続ける。エアバッグECU20は、乗員からの確認操作を入力すると、モニタ31に、ナビゲーションやテレビなどの通常の表示を表示させたり、モニタ31の電源をオフする。
なお、確認操作の入力手段は、別途、確認用ボタンを設けてもよいし、モニタ31のディスプレイがタッチセンサを備えている場合には、ディスプレイにタッチすることで乗員の確認操作を入力できるようにしてもよい。また、ボタン操作ではなく、マイクによって乗員の音声を入力し、音声認識によって乗員の確認を取るようにしてもよい。
【0071】
エアバッグECU20は、乗員の確認操作を入力すると、エンジンECU35に対してエンジンの停止制御を解除するように指示したり、トランスミッションECU36に対してシフト位置をドライブ位置に変更可能となるように指示する。
また、エアバッグECU20は、乗員の確認操作を入力すると、シートアレンジの変更を許可するようにしてもよい。
【0072】
図20に示すフローチャートを参照しながら本実施例のエアバッグECU20の処理手順を説明する。なお、ステップS42の着座可能座席の検出までは図16に示すフローチャートと同一であるので説明を省略する。
着座可能座席を検出すると(ステップS42)、エアバッグECU20は、着座可能座席を保護する乗員保護装置の動作を阻害する座席状態及び座席レイアウトをメモリを参照して検出する(ステップS43)。
【0073】
次に、エアバッグECU20は、着座可能座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席状態及び座席レイアウトに変更できないように制御する(ステップS44)。例えば、モータ駆動によって座席状態や座席レイアウトを変更可能な座席であれば、モータの駆動を制限する。
【0074】
次に、エアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトを変更することで着座可能座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席と、その座席状態とを乗員に通知する(ステップS45)。通知方法は、モニタ31に表示する方法、スピーカ32から音声ガイダンスで通知する方法などがある。
次に、エアバッグECU20は、乗員からの確認操作を受け付ける(ステップS46)。例えば、モニタ31のディスプレイに設けたタッチセンサによって、乗員の確認操作を入力する。乗員の確認操作を入力すると(ステップS46/YES)、乗員が座席状態に危険な状態があることを認識したと判定し、エアバッグECU20は座席状態及び座席レイアウトの変更禁止の制限を解除する(ステップS48)。また、乗員からの確認操作がなかった場合であって(ステップS46/NO)、座席状態又は座席レイアウトが変更された場合には(ステップS47/YES)、エアバッグECU20はステップS42に戻って着座可能座席の検出から再度処理を行う。また、乗員からの確認操作がなかった場合であって(ステップS46/NO)、座席状態又は座席レイアウトの変更もない場合には(ステップS47/NO)、ステップS45に戻ってエアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトを変更することで着座可能座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席と、その座席状態とを乗員に通知する(ステップS45)。
【0075】
このように本実施例は、乗員に、危険度の高い座席があることを通知した場合や、座席レイアウトを変更することで危険な状態となる座席があることを通知した場合に、乗員からの確認操作を入力して、乗員が情報を認識したかどうかを判定している。従って、乗員に、有効な情報を確実に認識させ、乗員の安全を確保することができる。
【0076】
次に、図21に示すフローチャートを参照しながら、車両の発進制限を行った後に、乗員からの確認操作を入力して発進制限を解除するエアバッグECU20の処理手順を説明する。
なお、図21に示すステップS56までの操作は、図19に示すフローと同一であるので説明を省略する。
エアバッグECU20は、危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知し、危険度の高い座席が存在するため現在発進規制を行っている旨をモニタ表示、音声通知で乗員に通知すると(ステップS56)、乗員からの確認操作の入力を受け付ける(ステップS57)。乗員からの確認操作を受け付けた場合には(ステップS57/YES)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS58)。
また、乗員からの確認操作がなかった場合には(ステップS57/NO)、エアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトに変更があるか否かを各種センサからのセンサ信号により判定する(ステップS59)。座席状態や座席レイアウトの変更を検出すると(ステップS60/YES)、エアバッグECU20は、変更された座席状態や座席レイアウトでの各座席の危険度を算出する(ステップS61)。そして、エアバッグECU20は、危険度が規定値以上の座席が存在するか否かを判定する(ステップS62)。座席状態又は座席レイアウトの変更により危険度が規定値以上の座席が存在しなくなったと判定すると(ステップS62/NO)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS58)。
また、ステップS59で座席状態又は座席レイアウトの変更を検出できなかった場合や(ステップS59/NO)、ステップS62で座席レイアウトの変更後も危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS62/YES)、ステップS56に戻り、安全に着座できない座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知すると共に、車両の発進規制を行っていることをモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS56)。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施例は、エアバッグECU20が直接モニタ31に情報を表示する例を示しているが、ナビゲーション装置やテレビが車両に搭載されている場合には、エアバッグECUからナビECU37やテレビ装置に画像情報を送信して表示するようにしてもよい。また、エアバッグECU20では画像信号の生成は行わず、指示信号をナビECU37に送信し、ナビECU37でこの指示信号に基づいてに画像信号を生成し、モニタ31に表示するようにしてもよい。
【0078】
同様に、エアバッグECU20が直接スピーカ32から音声を出力する例を説明したが、ナビECU37やテレビが車両に搭載されている場合には、エアバッグECU20からナビECU37やテレビ装置に音声信号を送信して音声を出力するようにしてもよい。また、エアバッグECU20では音声信号の生成は行わず、指示信号をナビECU37に送信し、ナビECU37でこの指示信号をもとに音声信号を生成してスピーカ32から出力するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】エアバッグECU及びその接続構成を示す図である。
【図2】座席状態を示す図である。
【図3】チップアップ検出センサの構成を示す図である。
【図4】加速度センサ及びエアバッグECUの車両での搭載位置を示す図である。
【図5】マイコンのハードウェア構成を示す図である。
【図6】乗員保護装置の車両への搭載例を示す図である。
【図7】側方衝突用サイドエアバッグとカーテンエアバッグの展開時の形状を示す図である。
【図8】危険度を判定するためのメモリの記録情報を示す図である。
【図9】座席ごとの危険度を図形化して表示した表示例であり、(A)は前面衝突時の危険度を図形表示した表示例を示し、(B)は側面衝突時の危険度を図形表示した表示例を示し、(C)はロールオーバ時の危険度を図形表示した表示例を示す。
【図10】座席ごとの危険度を表示した表示例であり、(A)は前面衝突時の危険度を数値で表示した表示例を示し、(B)は側面衝突時の危険度を数値で表示した表示例を示し、(C)はロールオーバ時の危険度を数値で表示した表示例を示す。
【図11】(A)は、前面衝突、側面衝突、ロールオーバの発生時の危険度を加味した総合的な危険度を図形化して表示した表示例を示し、(B)は、前面衝突、側面衝突、ロールオーバの発生時の危険度を加味した総合的な危険度を数値化して表示した表示例を示す。
【図12】座席状態及び座席レイアウトと、各座席の危険度とを表示した表示例を示す図である。
【図13】座席状態及び座席レイアウトと、各座席の危険度とを表示した表示例であって、座席状態及び座席レイアウトを車両の側面図で示す図である。
【図14】シートベルトの装着、未装着状態を座席ごとに表示した表示例を示す図である。
【図15】乗員の着座状態と、チャイルドシートの装着状態とを座席ごとに表示した表示例を示す図である。
【図16】乗員検知センサを有している場合のエアバッグECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図17】乗員検知センサを有していない場合のエアバッグECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図18】乗員保護装置の動作可能状態を表示した表示例を示す図である。
【図19】乗員保護装置による保護が不充分な座席がある場合に、車両の発進を制限する手順を示すフローチャートである。
【図20】乗員からの確認操作を受け付けた場合に、座席レイアウトの変更規制を解除する処理手順を示すフローチャートである。
【図21】乗員からの確認操作を受け付けた場合に、車両の発進制限を解除するエアバッグECUの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
11 乗員検知センサ(検出手段)
12 ベルト張力センサ(検出手段)
13 バックルスッチ(検出手段)
14 シート状態検知センサ(検出手段)
15 加速度センサ(検出手段)
20 エアバッグECU(判定手段、禁止手段、ロック手段、操作受付手段)
22 マイコン
23 加速度センサ
24 ロールレイトセンサ
31 モニタ(通知手段、表示手段)
32 スピーカ(通知手段、音声出力手段)
33 モータ駆動回路
34 点火装置
35 エンジンECU
36 トランスミッションECU
37 ナビECU
41 プリテンショナ駆動モータ
42 プリテンショナ用スクイブ
43 エアバッグ用スクイブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員を保護する乗員保護装置の制御装置に関する。特に、乗員保護装置を有効に活用して乗員を保護するための技術に関する。
【0002】
車室内の乗員を保護するために種々の乗員保護装置が提案されている。例えば、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等のエアバッグ類や、衝突が予測されるときに、シートベルトを巻き取り、乗員を強力に拘束するシートベルトプリテンショナ等がある。
【0003】
また、近年の車両、とくに3列シートを備えたワンボックスタイプの車両では、多彩なシートアレンジが可能となってきた。例えば、3列目のシートを跳ね上げて(以下、チップアップと呼ぶ)大きな荷物を積載したり、3列目のシートを床下に収納することができる。
しかしながら、この多彩なシートアレンジが可能となったことで、乗員保護装置が正常に働かない場合がある。例えば、2列目シートと3列目シートとに共通のカーテンエアバッグを設けた場合に、3列目シートをチップアップすると、カーテンエアバッグがチップアップされた3列目シートに阻害されて、正常な形で展開できなくなる。
【0004】
特許文献1では、チャイルドシートの装着状態を判断して、助手席エアバッグの展開の要否を制御する技術を開示している。また、特許文献2では、助手席エアバッグの制御状態を表すランプを設けて、チャイルシートの助手席への取付け具合に応じて、ランプを点灯、非点灯を制御している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−194076号公報
【特許文献2】特開平10−211860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように多彩な座席のアレンジが可能となったことで、座席が乗員保護装置の動作の邪魔をして、乗員保護装置が正常に動作できないケースがある。このようなときに、座席状態により危険度を判断し、危険度の高い座席や、危険度を低減させる座席レイアウトについてユーザにアドバイスできれば、ユーザにとって有効な情報となる。
特許文献1及び2にも安全性を高めるための座席レイアウトや、危険度の高い座席のアドバイスについては言及していない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させた乗員保護装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために本発明の乗員保護装置の制御装置は、車室内の状態を検出する検出手段の検出情報に基づいて、前記車室内に、乗員を保護する乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を通知する通知手段とを有する構成を採用している。
本発明によれば、乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを、車室内の状態に応じて判定することができる。従って、乗員保護装置で保護できる可能性が低い座席に乗員が着座してしまう危険性を低減することができる。
【0009】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定する構成を採用できる。
本発明によれば、乗員保護装置の動作が阻害されるか否かの判定精度を高めることができる。
【0010】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記座席の状態と前記座席のレイアウトとの少なくとも一方の状態と、当該状態のときに座席によって動作を阻害される乗員保護装置の情報とを記憶した第1記憶手段を有し、前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて前記第1記憶手段を参照し、動作が阻害される乗員保護装置があるか否かを判定する構成を採用できる。
本発明によれば、乗員保護装置の動作が阻害されるか否かの判定精度を高めることができる。
【0011】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、動作が阻害される乗員保護装置の種別と、動作が阻害される乗員保護装置の数との少なくとも一方を判定し、該判定結果に基づいて事故発生時の各座席の危険度を判定する構成を採用できる。
従って、事故発生時の座席の危険度を精度よく判定することができる。
【0012】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに、前記各座席の危険度を判定する構成を採用できる。
従って、事故形態に応じた危険度を判定することができる。
【0013】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに前記各座席の危険度を判定し、判定した各事故形態での危険度に基づいて各座席の総合的な危険度を判定する構成を採用できる。
従って、すべての事故形態の危険度を加味した総合的な危険度を判定することができる。
【0014】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、前記判定手段は、前記検出情報で乗員が着座していると判定された座席の危険度を判定する構成を採用できる。
従って、乗員が着座している座席の危険度を判定することができる。
【0015】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記検出手段の検出情報として、シートベルトの装着状態を判定した情報を含み、前記判定手段は、前記危険度に、前記シートベルトが装着状態にあるか否かを含める構成を採用できる。
従って、シートベルトの装着状態を加味したより精度の高い危険度を求めることができる。
【0016】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段で、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生していると判定すると、車両の始動を禁止する禁止手段を有する構成を採用できる。
従って、乗員の安全性が確保されるまでは、車両が始動しないようにすることができる。
【0017】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックするロック手段を有する構成を採用できる。
従って、乗員保護装置の動作が阻害される座席の状態及び座席のレイアウトとならないようにすることができる。
【0018】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、前記ロック手段は、前記座席に乗員が着座しているときに、前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックする構成を採用できる。
従って、乗員の保護が十分にできない座席の状態及び座席のレイアウトに変更しないように乗員に注意を促すことができる。
【0019】
上記乗員保護装置の制御装置において、乗員からの操作を受け付ける操作受付手段を有し、前記禁止手段は、前記通知手段で前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が前記車室内に発生していることを通知した後に、前記操作受付手段で乗員からの操作入力を受け付けると、車両の始動を許可する構成を採用できる。
従って、乗員が危険状態を認識した後で、車両を始動させることができる。
【0020】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席があると判定された場合に、前記座席のレイアウトと前記安全に着座することができない座席の情報とを表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、安全に着座できない座席を表示手段に表示させることができる。
【0021】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、車両に搭載された各乗員保護装置が動作可能な状態にあるか否かを表す情報を表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、乗員保護装置が動作可能である否かを表示手段に表示させることができる。
【0022】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記安全に着座できないと判定された座席が安全に着座できない理由を前記表示手段に表示する構成を採用できる。
安全に着座できない理由を表示手段に表示することで、座席の安全性を改善する方法を乗員に通知することができる。
【0023】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席の安全性を高めるために、座席の状態又は座席のレイアウトの変更のアドバイスを前記表示手段に表示させる構成を採用できる。
従って、乗員保護装置を正常に動作させ、車両の安全性を高めることができる。
【0024】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記判定手段は、座席の状態又は座席のレイアウトが変更されることによって前記乗員保護装置の動作を阻害する座席と、該座席が前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態とを判定し、前記通知手段は、前記判定手段で判定した前記座席と、前記座席の状態とを表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、乗員保護装置の動作が阻害される座席の状態又は座席のレイアウトに変更しないように乗員に通知することができる。
【0025】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記車室内に設けられた座席のレイアウトと、前記判定手段で判定された前記各座席の危険度とを表示手段に表示させる手段を含む構成を採用できる。
従って、座席の状態がいかに危険な状態にあるかを具体的に乗員に通知することができる。
【0026】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記乗員保護装置の動作が阻害されることによって、発生し得る危険状態を事故形態ごとに記憶した第2記憶手段を有し、前記通知手段は、安全に着座できない座席において発生しうる危険状態を表示手段に表示する構成を採用できる。
従って、座席の乗員に、発生し得る危険状態を事前に通知することができる。
【0027】
上記乗員保護装置の制御装置において、前記通知手段は、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席がある旨を音声で通知する音声出力手段を含む構成を採用できる。
従って、乗員保護装置による保護が不十分な座席があることを音声で通知することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0030】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成について説明する。図1には、本発明の乗員保護装置の制御装置をエアバッグECUに適用した第1実施例の構成を示す。
エアバッグECU20は、複数のセンサで測定されたセンサ信号や、スイッチの状態を示す状態切替信号を入力ポートから入力してして、これらの信号をもとに制御対象の機器を制御する制御信号を生成する。生成した制御信号はエアバッグECU20の出力ポートから制御対象の機器に出力される。
【0031】
エアバッグECU20は、乗員検知センサ11、ベルト張力センサ12、シート状態検出センサ14、加速度センサ15によって測定されたセンサ信号を入力する。また、エアバッグECU20は、バックルスイッチ13からの状態切替信号を入力する。さらに、エアバッグECU20の出力側には、制御対象の機器としてモニタ31、スピーカ32、モータ駆動回路33、点火装置34、エンジンECU35、トランスミッションECU36、ナビECU37等が接続されている。
なお、エアバッグECU20に接続するセンサや、制御対象の機器は、図1に示すものに限定されず、他のセンサや機器を接続可能である。
【0032】
乗員検知センサ11は、乗員の座席への着座を検出するセンサである。乗員検知センサ11は、座席の座面に作用する荷重を検出する。乗員検知センサ11は、歪ゲージで歪量から荷重を算出し乗員の有無を判断する。歪ゲージタイプ以外にカメラによる画像認識によるもの、電波音波により判断するものがあるが、本件はどの方法かに限定されるものではなく、乗員の有無を検出できる手段であればよい。
ベルト張力センサ12は、シートベルトの張力を、ベルトを座席側に固定する金具の弾性変形に伴うひずみとして検出するひずみゲージ(不図示)と、このひずみゲージによって計測されるひずみ量を検出する電子回路とを有している。
乗員検知センサ11の測定する座面の荷重と、ベルト張力センサ12の測定するベルト張力とから座席へのチャイルドシートの装着の有無を判定することができる。ベルト張力が所定張力値以上であり、かつ、荷重が所定重量以下であれば、チャイルドシートが装着されていると判定することができる。
バックルスイッチ13は、乗員がシートベルトを装着することによりオン状態となる常開型のスイッチである。
【0033】
シート状態検出センサ14は、座席の車室内での位置を検出するシートポジションセンサ141と、座席の背もたれ(シートバック)の傾斜角度と、座席の座面の傾斜角度とを検出する傾斜センサ142と、座席のチップアップ状態を検出するチップアップ検出センサ143とを有している。
【0034】
シートポジションセンサ141は、座席をスライドさせるスライド機構のレール側に、磁石片と、磁石片の磁場に反応するリミットスイッチやホール素子等の磁気検出センサを設けている。また、座席側には、磁石片の磁場を遮断する磁気遮断板を設けている。磁石片から発する磁場の磁気センサによる検出を、座席の移動によって磁気遮断板で遮断することで、座席位置の検出が可能となっている。
【0035】
傾斜センサ142は、座席の背もたれの傾斜角度と、座席の座面側の傾斜角度とを検出するセンサである。傾斜センサ142には、例えば、ポテンショメータやホールIC等の素子を用いることができる。
図2に座席状態を示す。図2(A)には、乗員が着座できる通常の座席状態を示す。図2(B)には、背もたれ7を前側に倒した前倒し状態を示す。図2(C)には、座席の背もたれ7と座面8とが接するように座席を折りたたんだV字折り畳み状態を示す。図2(D)には、座席を跳ね上げたチップアップ状態を示す。図2(E)は、座席の半分をチップアップした状態を示す。
傾斜センサ142は、座席のこのような状態(以下、座席状態という)を検出するために設けられている。
【0036】
なお、座席位置や、座席の背もたれ7や座面8の傾斜をモータの駆動によって調整している場合には、モータの回転数を計数することで座席の位置や、背もたれ7、座面8の傾斜を認識することができる。
【0037】
チップアップ検出センサ143は、車室内の座席のチップアップ状態を検出するセンサであって、例えば、図3に示すように車両の床面Fに配置される。チップアップ検出センサ143は、例えばホール素子で構成される。
車両の床面Fに設けた凹部111に、座席側の金属部材110が挿抜されることによって、チップアップ検出センサ143は抵抗値や磁場等の変化を検出する。
【0038】
加速度センサ15は、車両の前後軸方向に生じる加速度や、車両の左右方向に生じる加速度を検出するセンサである。加速度センサ15の設置位置を図4に示す。加速度センサ15は、車両フロント部2、Aピラー部3、Bピラー部4、Cピラー部5等に設置される。また、加速度センサは、車両フロア部に設けられたエアバッグECU20内にも設置されている(図1に示す加速度センサ23)。加速度センサ15、23には、静電容量型、ピエゾ抵抗型等の加速度に対応する物理的効果量をアナログ電圧に変換して出力するセンサが用いられる。
【0039】
また、車両フロア部に設けられエアバッグECU20内には、ロールレートセンサ24が設置される。車両の前後軸の周りに生ずる回転角速度をロールレートとして検出する。ロールレイトセンサ24には、静電容量の変化で角速度を検出するタイプ、水晶音叉を使用して角速度を検出するタイプなどを用いることができる。
【0040】
次に、エアバッグECU20の構成について説明する。エアバッグECU20は、図1に示すように入力ポート21、マイコン22、加速度センサ23、ロールレイトセンサ24、出力ポート25を備えている。
エアバッグECU20の入力ポート21には、前述した各種センサによって測定されたセンサ信号や、バックルスイッチ13の状態切替信号が入力される。
【0041】
マイコン22は、前述各種センサによって測定したセンサ信号と、バックルスイッチ13の状態切替信号とを入力ポート21より入力して、座席状態や座席レイアウトを判定する。座席レイアウトとは、2列目、3列目の座席の配置情報であり、シートポジションセンサ141で検出される。例えば、2列目の座席が1列目の座席側に移動しているとか、3列目の座席がチップアップされているといった情報を示す。
また、マイコン22は、判定した座席状態や座席レイアウトから乗員保護装置の動作を阻害する座席があるか否かを判定する。乗員保護装置の動作を阻害する座席があると判定すると、判定した乗員保護装置の動作を阻害する座席と、この座席によって正常に動作しない乗員保護装置とをモニタ31に表示したり、スピーカ32から音声で通知する。なお、乗員保護装置の動作を阻害する座席や正常に動作しない乗員保護装置の情報は、エアバッグECU20からナビECU37に情報を出力し、ナビECU37でモニタ31に表示してもよい。
【0042】
また、マイコン22は、モータ駆動回路33を制御してプリンテンショナ駆動モータ41を駆動することにより、シートベルトを弱い力で巻き取る。これによってドライバに乗員保護装置が正常に動作しない座席状態や座席レイアウトが発生していることを通知する。
また、マイコン22は、加速度センサ15、23で測定した加速度や、ロールレイトセンサ24で測定したロールレートから車両に衝突やロールオーバが発生する危険性があるか否かを判定する。衝突やロールオーバが発生する危険性があると判定すると、点火装置34によりスクイブを点火する。スクイブには、シートベルトを巻き取るシートベルトプリテンショナ用スクイブ42と、エアバッグを展開させるエアバッグ用スクイブ43とが設けられている。スクイブ42、43を点火することでシートベルトを巻き取り、エアバッグを展開して乗員の安全を確保する。
また、マイコン22は、他のECUと通信を行う。例えば、エンジンECU35やトランスミッションECU36と通信を行って、乗員保護装置が正常に動作しないと判定されるときには、車両の発進規制を実施する。他のECUとの通信には、例えば、ECU間を通信バスで接続し、CAN(Controller Area Network)等の通信プロトコルを使用して通信を行う。また、各ECU間を直接接続して通信できるようにしてもよい。
【0043】
図5にマイコン22のハードウェア構成を示す。マイコン22は、CPU221、ROM222、RAM(本発明の第1記憶手段、第2記憶手段に該当する)223、NVRAM(Non Volatile RAM)224、入出力部225等を有している。CPU221は、ROM222に格納したプログラムを読み込んで、このプログラムに従った演算を行う。CPU221は、プログラムに従って、図1に示す複数のセンサからのセンサ信号を入力し、これらのセンサ信号に基づいて座席状態や座席レイアウトを判定する。また、判定した座席状態や座席レイアウトから乗員保護装置の動作を阻害する座席があるか否かを判定する。さらに、乗員保護装置が正常に動作しないと判定すると、モニタ31やスピーカ32から乗員保護装置が正常に動作しない旨を通知する。また、RAM223には、演算結果のデータが書き込まれ、NVRAM224は、RAM223に書き込まれていたデータで、電源オフ時に保存の必要なデータが書き込まれる。
【0044】
図6に、乗員保護装置の車両への搭載例を示す。なお、図6には、3列シートを有する車両に乗員保護装置を搭載する場合を示す。車両には、乗員保護装置として、前方衝突用エアバッグ51と、シートクッションエアバッグ52と、シートベルトプリテンショナ53と、側方衝突用サイドエアバッグ54と、カーテンエアバッグ55とが設けられている。
【0045】
前方衝突用エアバッグ51は、例えば、運転席のステアリングホイールパッド内や助手席のインストルメントパネル内に折り込まれて、前突時にはドライバーや助手席の乗員を保護する。
シートクッションエアバッグ52は、シートクッションの前方部分に、インフレータからの高圧ガスで展開膨張されるインフレータバッグが内蔵されている。衝突時には、インフレータバッグが展開されることでシートクッションの前方部分が隆起する。これにより乗員の腰部位置が前方へ移動することを阻止する。
シートベルトプリテンショナ53は、各座席に設けられたシートベルトの巻き取り部に設けられている。衝突発生時に、スクイブに点火することでシートベルトを巻き取り、乗員を拘束する。
側方衝突用サイドエアバッグ54は、座席の背もたれ7の側部のうち、車両ボディの側部に近い側に内蔵されており、側面衝突時に展開して乗員の車両ボディの側部への衝突を防止する。
カーテンエアバッグ55は、車両側面のルーフライニングのサイド部分に折り込まれて配置され、側突やロールオーバ発生時に乗員の車外への放出を防止する。
図7には、側方衝突用サイドエアバッグ54と、カーテンエアバッグ55との展開時の形状を示す。
【0046】
以上の構成を備えた本実施例のエアバッグECU20は、シート状態検出センサ14を用いて座席状態と、座席レイアウトとを検出する。座席状態と座席レイアウトとを検出すると、エアバッグECU20は、RAM223等のメモリに記録した情報を参照し、事故等の発生時に、乗員保護装置が正常に動作できる状態にあるか否かを判定する。メモリには、例えば、図8に示すように座席状態及び座席レイアウトと、各座席状態及び座席レイアウトのときに座席に動作を阻害される乗員保護装置と、乗員保護装置が正常に動作しないことによって乗員に生じる危険度とが記録されている。マイコン22は、メモリの記録情報を参照して、現在の座席状態や座席レイアウトでは動作を阻害される乗員保護装置を検出し、座席ごとの危険度を算出する。
【0047】
危険度の算出は、前方衝突、側面衝突やロールオーバといった車両事故の形態ごとに危険度を数値化して求める。
例えば、前方衝突においては、前方衝突用エアバッグ51の動作に影響がある場合には、危険度を[3]加算し、シートベルトプリテンショナ53の動作に影響がある場合には、危険度を[2]加算する。同様にシートクッションエアバッグ52の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。
また、側面衝突においては、側方衝突用サイドエアバッグ54やカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合には、危険度を[3]加算する。同様にシートベルトプリテンショナ53の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。
また、ロールオーバの発生時においては、対象座席側のカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合には、危険度を[3]加算し、対象座席とは反対側のカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。また、対象座席の前後列のカーテンエアバッグ55の動作に影響がある場合にも、危険度を[1]加算する。さらに、シートベルトプリテンショナ53の動作に影響がある場合には、危険度を[1]加算する。
【0048】
発生し得る事故形態ごとに危険度を算出すると、エアバッグECU20は、算出した危険度をモニタ31に表示したり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力する。
危険度の表示は、発生し得る事故形態ごとに各座席の危険度を表示してもよいし、事故形態ごとの危険度の平均値や、加算値を求めて、これを各座席の危険度として表示してもよい。また、各座席の危険度を算出するときに、シートベルトの装着状態を加味して危険度を算出してもよい。シートベルトの装着の有無は、バックルスイッチ13によって検出することができる。
【0049】
図9に、モニタ31に表示する危険度の表示例を示す。図9に示す表示例では、前面衝突、側面衝突、ロールオーバなど、事故形態ごとに場合分けして危険度を表示している。図9(A)には前面衝突時の危険度を図形化して表示し、図9(B)には側面衝突時の危険度を図形化して表示し、図9(C)にはロールオーバ時の危険度を図形化して表示している。着座可能な座席であるか否かを、座席を表す表示の表示色によって表示し、各座席の危険度は、「〇,△,×」で表示している。「〇」は乗員保護装置が正常に動作することを示し、「△」は危険性があることを示し、「×」は非常に危険であることを示している。
また、図10には、危険度を数値で表示した例を示す。数値が高いほど危険度が高い座席であることを示している。
また、図11には、事故形態ごとにではなく、各事故形態ごとの危険度を加味した総合的な危険度を表示した例を示す。図11(A)には、危険度を図形化して表示した例を示し、図11(B)には、危険度を数値で表示した例を示す。
また、図12には、着座可能な座席の危険度を、現在の座席状態及び座席レイアウトと共に表示した例を示す。さらに、図13には、現在の座席状態及び座席レイアウトを車両の側面図と共に表示した例を示す。
【0050】
なお、図9〜図13に示す表示例では、乗員保護装置が正常に動作せず、安全に着座できない座席を乗員に表示する表示例であるが、安全に着座できない座席を表示するときに、この座席が安全に着座できない理由を表示してもよい。例えば、「この座席は、3列目の座席のチップアップによってカーテンエアバッグの展開が阻害されるため、危険です」といった情報をモニタ31に表示する。
さらに、座席状態や座席レイアウトをどのように変更すれば乗員保護装置が正常に動作するのかをアドバイスするようにしてもよい。例えば、エアバッグECU20は、乗員保護装置の動作が阻害される座席と、その座席状態をどのように変更すれば、乗員保護装置が正常に動作するのかをモニタ31に表示する。
【0051】
また、危険度が高いと判定された座席に乗員が着座している場合に、どのような危険が生じるのかをモニタ31に表示してもよい。RAM223には、動作が阻害される乗員保護装置の種別と、このとき生じる危険を記録しておく。エアバッグECU20は、RAM223を参照して、乗員保護装置が正常に動作しないことで生じる危険をモニタ31に表示したり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力する。
例えば、「3列目の座席がチップアップされており、カーテンエアバッグ55が正常に動作しない可能性があります。この場合、ロールオーバの発生時又は側面衝突の発生時に乗員が窓から車外に放出される危険性があります。」といった案内情報を乗員に通知する。
【0052】
さらに、エアバッグECU20は、座席状態や座席レイアウトを変更することで、乗員保護装置の動作を阻害する座席を検出して、これをモニタ31に表示させたり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力してもよい。乗員検知センサ11で乗員が着座している座席を検出し、この座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席状態や座席レイアウトを検出する。そして、検出した座席状態や座席レイアウトに変更しないように注意する表示をモニタ31に表示させたり、音声ガイダンスでスピーカ32から出力する。
【0053】
また、上述した座席ごとの危険度の表示は、座席レイアウトが変更されたときや、乗員が車室内に搭乗したことを検出したときに表示するとよい。乗員の車室内への搭乗は、乗員検知センサ11で検出することができる。また、危険度の高い座席が存在しない場合には、危険度の表示を表示しなくてもよい。
【0054】
なお、バックルスイッチ13によりシートベルトの装着状態を検出可能であるので、図14に示すように座席ごとの着座状態と共にシートベルトの装着状態をモニタ31に表示し、乗員にシートベルトの装着を促すようにしてもよい。
また、乗員検知センサ11とベルト張力センサ12のセンサ信号によってチャイルドシートの装着の有無を判定可能であるので、図15に示すように乗員検知センサ11で検出した乗員の着座状態と、チャイルドシートの装着状態とをモニタ31に表示するようにしてもよい。
【0055】
図16に示すフローチャートを参照しながらエアバッグECU20の処理手順を説明する。図16には、乗員検知センサ11を搭載した車両におけるエアバッグECU20の処理手順を示す。
イグニッションキーがオンされると、エアバッグECU20は起動して、図1に示す各種センサからセンサ信号を入力する。入力したセンサ信号から座席状態と座席レイアウトとを検し(ステップS1)、座席状態から着座可能な座席を判定する(ステップS2)。
【0056】
次に、エアバッグECU20は、判定した座席状態と座席レイアウトとから座席毎の危険度を判定する(ステップS3)。図8に示すようにRAM233やROM223等のメモリには、座席状態及び座席レイアウトと、各座席状態及び座席レイアウトのときに動作を阻害される乗員保護装置と、乗員保護装置が正常に動作しないことによって乗員に生じる危険度とが記録されている。マイコン22は、メモリの記録を参照して、現在の座席状態や座席レイアウトで動作が阻害される乗員保護装置を検出し、座席ごとの危険度を算出する。
エアバッグECU20は、危険度を算出すると、危険度が規定値以上の着座可能座席が存在するか否かを判定する(ステップS4)。危険度が規定値以上の着座可能座席が存在しない場合には(ステップS4/NO)、乗員保護装置が正常に動作し、各座席が安全な状態であることをモニタ31に表示し、また、スピーカ32から音声で通知する(ステップS5)。
【0057】
また、危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS4/YES)、エアバッグECU20は乗員検知センサ11で乗員の着座状況を検出する(ステップS6)。乗員検知センサ11で乗員の着座状況を検出すると、ステップS4で危険度が高いと判定した着座可能座席に、乗員が着座しているか否かを判定する(ステップS7)。危険度が規定値以上の着座可能座席に乗員が着座していない場合には(ステップS7/NO)、エアバッグECU20は、着座している座席が安全であることをモニタ31に表示し、スピーカ32から音声で通知する。このとき、エアバッグECU20は、危険度の高い座席もモニタ31に表示し、この座席に着座をしないように表示してもよい。又、危険度の高い座席が安全になるための座席状態又は座席レイアウトをモニタ31に表示したり、スピーカ32から音声で通知してもよい。
【0058】
また、危険度が規定値以上の着座可能座席に乗員が着座している場合には(ステップS7/YES)、エアバッグECU20は危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。また、算出した危険度と、事故が起こった場合に発生し得る危険をモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS8)。
【0059】
このようにして本実施例は、乗員保護装置による保護が不充分な座席に乗員が着座してしまう危険性を低減させることができる。また、乗員保護装置による保護が不充分な座席が存在する場合に、どのように座席状態や座席レイアウトを変更すれば、乗員が安全に着座できる状態になるのかをアドバイスすることができる。
【0060】
次に、乗員検知センサ11を搭載していない車両の場合のエアバッグECU20の制御手順を図17に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ステップS14の危険度が規定値以上の着座可能座席があるか否かを判定するステップまでは、図16に示すフローと同一の手順で処理が行われるため、説明を省略する。
【0061】
エアバッグECU20は、各座席の危険度を算出して(ステップS13/YES)、危険度が規定値以上の着座可能座席があるか否かを判定する(ステップS14)。判定の結果、危険度が規定値以上の着座可能座席がなかった場合には(ステップS14/NO)、エアバッグECU20は、安全であることを乗員に通知し(ステップS15)、この処理を終了する。
【0062】
また、危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定すると(ステップS14/YES)、エアバッグECU20は、危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。また、エアバッグECU20は算出した危険度と、事故が起こった場合に発生し得る危険をモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS16)。
【0063】
次に、エアバッグECU20は、各種センサからのセンサ信号を入力して座席状態又は座席レイアウトを検出し(ステップS17)、座席状態又は座席レイアウトに変更があるか否かを判定する(ステップS18)。座席状態や座席レイアウトに変更があると判定すると(ステップS18/YES)、エアバッグECU20は、変更された座席状態や座席レイアウトでの各座席の危険度を算出する(ステップS19)。そして、エアバッグECU20は、危険度が規定値以上の座席が存在するか否かを判定する(ステップS20)。座席状態又は座席レイアウトの変更により危険度が規定値以上の座席が存在しなくなったと判定すると(ステップS20/NO)、エアバッグECU20は、安全であることを乗員に通知し(ステップS15)、この処理を終了する。
また、ステップS18で座席状態又は座席レイアウトの変更を検出できなかった場合や(ステップS18/NO)、ステップS20で座席状態又は座席レイアウトを変更しても危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS20/YES)、ステップS16に戻り、安全に着座できない座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。
[変形例]
【0064】
上述した実施例では、座席状態及び座席レイアウトから動作が阻害される乗員保護装置を検出し、動作が阻害される乗員保護装置の情報に基づいて座席毎の危険度を算出してこれをモニタ31に表示させていた。
これ以外に、座席状態及び座席レイアウトから動作が阻害される乗員保護装置を検出し、これをモニタ31に表示させたり、スピーカ32から音声で通知してもよい。すなわち、座席ごとの危険度を算出せずに、動作が阻害される乗員保護装置の情報をそのままモニタ31に表示する。図18には、モニタ31に表示する表示例を示す。図18に示す表示例では、正常に動作しない乗員保護装置を表す表示にバツ印を表示している。
【実施例2】
【0065】
添付図面を参照しながら本発明の第2実施例の構成について説明する。なお、本実施例の構成は、上述した実施例1の構成と同一であるため、その説明を省略する。
上述した実施例1では、座席により乗員保護装置の動作が制限され、危険度の高い座席が存在する場合に、危険度が高い座席が存在することを乗員に通知していた。
本実施例のエアバッグECU20は、危険度の高い座席が存在する場合に、車両が始動しないように制御する。エアバッグECU20はエンジンECU35に指示信号を送信して、車両が始動しないように指示する。又は、エアバッグECU20は、トランスミッションを制御するトランスミッションECU36に対して、車両が始動しないようなシフト位置(パーキング、ニュートラル)に制御するように指示信号を送信する。
また、エアバッグECU20は発進制限を行うと共に、危険度の高い座席があるため車両の発進制限を行っていることを乗員に通知する。例えば、「危険度の高い座席があるため、発進できません。シートレイアウトの変更をお願いします」といった表示をモニタ31に表示させたり、スピーカ32から音声で通知する。
座席状態や座席レイアウトが変更され、乗員保護装置が正常に動作する状態に改善されたと判定すると、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除するように指示信号を出力する。
【0066】
また、最初から乗員保護装置が正常に動作する座席状態や座席レイアウトであった場合や、乗員保護装置が正常に動作する座席レイアウトに変更された場合には、乗員に座席レイアウトを変更しないように通知するようにしてもよい。このときエアバッグECU20は、座席状態及び座席レイアウトを変更すべきでない座席と、この座席が乗員保護装置の動作を阻害する座席状態(例えば、前傾、チップアップ、前方スライド等)とを乗員に通知する。
【0067】
本実施例のエアバッグECU20の処理手順を図19に示すフローチャートを参照しながら説明する。
エアバッグECU20は、まず、エンジンECU35に指示信号を出力して、車両が始動しないように指示する(ステップS21)。また、トランスミッションを制御するトランスミッションECU36に対して、車両が始動しないようなシフト位置(パーキング、ニュートラル)に制御する指示信号を送信してもよい。
次に、エアバッグECU20は、上述した実施例で説明したように、座席状態や座席レイアウトを検出して(ステップS22)、着座可能座席を検出する(ステップS23)。さらにエアバッグECU20は各座席の危険度を算出して(ステップS24)、危険度が規定値以上の座席があるか否かを判定する(ステップS25)。危険度が規定値以上の座席がないと判定した場合には(ステップS25/NO)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS26)。また、危険度が規定値以上の座席が存在する場合には(ステップS25/YES)、エアバッグECU20は危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知する。また、算出した危険度と、事故が起こった場合に発生し得る危険をモニタ表示、音声で乗員に通知する。さらに、危険度の高い座席が存在するため現在発進規制を行っている旨をモニタ表示、音声通知で乗員に通知する(ステップS27)。
【0068】
次に、エアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトに変更があるか否かを各種センサからのセンサ信号により判定する(ステップS28)。座席状態や座席レイアウトの変更を検出すると(ステップS29/YES)、エアバッグECU20は、変更された座席状態や座席レイアウトでの各座席の危険度を算出する(ステップS30)。そして、エアバッグECU20は、危険度が規定値以上の座席が存在するか否かを判定する(ステップS31)。座席状態又は座席レイアウトの変更により危険度が規定値以上の座席が存在しなくなったと判定すると(ステップS31/NO)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS26)。
また、ステップS29で座席状態又は座席レイアウトの変更を検出できなかった場合や(ステップS29/NO)、ステップS31で座席レイアウトの変更後も危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS31/YES)、ステップS27に戻り、安全に着座できない座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知すると共に、車両の発進規制を行っていることをモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS27)。
【0069】
このように本実施例では、乗員保護装置の動作が阻害され、乗員の安全が確保できない状態があると判定すると、車両を発進させないように制御することで、車両の安全性をさらに高めることができる。
【実施例3】
【0070】
添付図面を参照しながら本発明の第3実施例について説明する。なお、本実施例の構成は、上述した実施例1の構成と同一であるため、その説明を省略する。
本実施例は、乗員に、危険度の高い座席を通知した場合や、危険度の高い座席が存在するために車両の発進規制を行っていることを通知した場合に、乗員からの確認操作の入力を受け付ける。エアバッグECU20は、確認操作の入力により通知した情報を乗員が認識したかどうかを判定する。
例えば、乗員からの確認操作を入力するまでは、エアバッグECU20は、モニタ31に危険度の高い座席の情報を表示し続ける。エアバッグECU20は、乗員からの確認操作を入力すると、モニタ31に、ナビゲーションやテレビなどの通常の表示を表示させたり、モニタ31の電源をオフする。
なお、確認操作の入力手段は、別途、確認用ボタンを設けてもよいし、モニタ31のディスプレイがタッチセンサを備えている場合には、ディスプレイにタッチすることで乗員の確認操作を入力できるようにしてもよい。また、ボタン操作ではなく、マイクによって乗員の音声を入力し、音声認識によって乗員の確認を取るようにしてもよい。
【0071】
エアバッグECU20は、乗員の確認操作を入力すると、エンジンECU35に対してエンジンの停止制御を解除するように指示したり、トランスミッションECU36に対してシフト位置をドライブ位置に変更可能となるように指示する。
また、エアバッグECU20は、乗員の確認操作を入力すると、シートアレンジの変更を許可するようにしてもよい。
【0072】
図20に示すフローチャートを参照しながら本実施例のエアバッグECU20の処理手順を説明する。なお、ステップS42の着座可能座席の検出までは図16に示すフローチャートと同一であるので説明を省略する。
着座可能座席を検出すると(ステップS42)、エアバッグECU20は、着座可能座席を保護する乗員保護装置の動作を阻害する座席状態及び座席レイアウトをメモリを参照して検出する(ステップS43)。
【0073】
次に、エアバッグECU20は、着座可能座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席状態及び座席レイアウトに変更できないように制御する(ステップS44)。例えば、モータ駆動によって座席状態や座席レイアウトを変更可能な座席であれば、モータの駆動を制限する。
【0074】
次に、エアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトを変更することで着座可能座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席と、その座席状態とを乗員に通知する(ステップS45)。通知方法は、モニタ31に表示する方法、スピーカ32から音声ガイダンスで通知する方法などがある。
次に、エアバッグECU20は、乗員からの確認操作を受け付ける(ステップS46)。例えば、モニタ31のディスプレイに設けたタッチセンサによって、乗員の確認操作を入力する。乗員の確認操作を入力すると(ステップS46/YES)、乗員が座席状態に危険な状態があることを認識したと判定し、エアバッグECU20は座席状態及び座席レイアウトの変更禁止の制限を解除する(ステップS48)。また、乗員からの確認操作がなかった場合であって(ステップS46/NO)、座席状態又は座席レイアウトが変更された場合には(ステップS47/YES)、エアバッグECU20はステップS42に戻って着座可能座席の検出から再度処理を行う。また、乗員からの確認操作がなかった場合であって(ステップS46/NO)、座席状態又は座席レイアウトの変更もない場合には(ステップS47/NO)、ステップS45に戻ってエアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトを変更することで着座可能座席の乗員保護装置の動作を阻害する座席と、その座席状態とを乗員に通知する(ステップS45)。
【0075】
このように本実施例は、乗員に、危険度の高い座席があることを通知した場合や、座席レイアウトを変更することで危険な状態となる座席があることを通知した場合に、乗員からの確認操作を入力して、乗員が情報を認識したかどうかを判定している。従って、乗員に、有効な情報を確実に認識させ、乗員の安全を確保することができる。
【0076】
次に、図21に示すフローチャートを参照しながら、車両の発進制限を行った後に、乗員からの確認操作を入力して発進制限を解除するエアバッグECU20の処理手順を説明する。
なお、図21に示すステップS56までの操作は、図19に示すフローと同一であるので説明を省略する。
エアバッグECU20は、危険度の高い座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知し、危険度の高い座席が存在するため現在発進規制を行っている旨をモニタ表示、音声通知で乗員に通知すると(ステップS56)、乗員からの確認操作の入力を受け付ける(ステップS57)。乗員からの確認操作を受け付けた場合には(ステップS57/YES)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS58)。
また、乗員からの確認操作がなかった場合には(ステップS57/NO)、エアバッグECU20は、座席状態又は座席レイアウトに変更があるか否かを各種センサからのセンサ信号により判定する(ステップS59)。座席状態や座席レイアウトの変更を検出すると(ステップS60/YES)、エアバッグECU20は、変更された座席状態や座席レイアウトでの各座席の危険度を算出する(ステップS61)。そして、エアバッグECU20は、危険度が規定値以上の座席が存在するか否かを判定する(ステップS62)。座席状態又は座席レイアウトの変更により危険度が規定値以上の座席が存在しなくなったと判定すると(ステップS62/NO)、エアバッグECU20は、エンジンECU35やトランスミッションECU36に発進制限を解除させる解除指示信号を出力する(ステップS58)。
また、ステップS59で座席状態又は座席レイアウトの変更を検出できなかった場合や(ステップS59/NO)、ステップS62で座席レイアウトの変更後も危険度が規定値以上の着座可能座席があると判定した場合には(ステップS62/YES)、ステップS56に戻り、安全に着座できない座席があることをモニタ表示、音声、シートベルトの振動等で乗員に通知すると共に、車両の発進規制を行っていることをモニタ表示、音声で乗員に通知する(ステップS56)。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施例は、エアバッグECU20が直接モニタ31に情報を表示する例を示しているが、ナビゲーション装置やテレビが車両に搭載されている場合には、エアバッグECUからナビECU37やテレビ装置に画像情報を送信して表示するようにしてもよい。また、エアバッグECU20では画像信号の生成は行わず、指示信号をナビECU37に送信し、ナビECU37でこの指示信号に基づいてに画像信号を生成し、モニタ31に表示するようにしてもよい。
【0078】
同様に、エアバッグECU20が直接スピーカ32から音声を出力する例を説明したが、ナビECU37やテレビが車両に搭載されている場合には、エアバッグECU20からナビECU37やテレビ装置に音声信号を送信して音声を出力するようにしてもよい。また、エアバッグECU20では音声信号の生成は行わず、指示信号をナビECU37に送信し、ナビECU37でこの指示信号をもとに音声信号を生成してスピーカ32から出力するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】エアバッグECU及びその接続構成を示す図である。
【図2】座席状態を示す図である。
【図3】チップアップ検出センサの構成を示す図である。
【図4】加速度センサ及びエアバッグECUの車両での搭載位置を示す図である。
【図5】マイコンのハードウェア構成を示す図である。
【図6】乗員保護装置の車両への搭載例を示す図である。
【図7】側方衝突用サイドエアバッグとカーテンエアバッグの展開時の形状を示す図である。
【図8】危険度を判定するためのメモリの記録情報を示す図である。
【図9】座席ごとの危険度を図形化して表示した表示例であり、(A)は前面衝突時の危険度を図形表示した表示例を示し、(B)は側面衝突時の危険度を図形表示した表示例を示し、(C)はロールオーバ時の危険度を図形表示した表示例を示す。
【図10】座席ごとの危険度を表示した表示例であり、(A)は前面衝突時の危険度を数値で表示した表示例を示し、(B)は側面衝突時の危険度を数値で表示した表示例を示し、(C)はロールオーバ時の危険度を数値で表示した表示例を示す。
【図11】(A)は、前面衝突、側面衝突、ロールオーバの発生時の危険度を加味した総合的な危険度を図形化して表示した表示例を示し、(B)は、前面衝突、側面衝突、ロールオーバの発生時の危険度を加味した総合的な危険度を数値化して表示した表示例を示す。
【図12】座席状態及び座席レイアウトと、各座席の危険度とを表示した表示例を示す図である。
【図13】座席状態及び座席レイアウトと、各座席の危険度とを表示した表示例であって、座席状態及び座席レイアウトを車両の側面図で示す図である。
【図14】シートベルトの装着、未装着状態を座席ごとに表示した表示例を示す図である。
【図15】乗員の着座状態と、チャイルドシートの装着状態とを座席ごとに表示した表示例を示す図である。
【図16】乗員検知センサを有している場合のエアバッグECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図17】乗員検知センサを有していない場合のエアバッグECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図18】乗員保護装置の動作可能状態を表示した表示例を示す図である。
【図19】乗員保護装置による保護が不充分な座席がある場合に、車両の発進を制限する手順を示すフローチャートである。
【図20】乗員からの確認操作を受け付けた場合に、座席レイアウトの変更規制を解除する処理手順を示すフローチャートである。
【図21】乗員からの確認操作を受け付けた場合に、車両の発進制限を解除するエアバッグECUの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
11 乗員検知センサ(検出手段)
12 ベルト張力センサ(検出手段)
13 バックルスッチ(検出手段)
14 シート状態検知センサ(検出手段)
15 加速度センサ(検出手段)
20 エアバッグECU(判定手段、禁止手段、ロック手段、操作受付手段)
22 マイコン
23 加速度センサ
24 ロールレイトセンサ
31 モニタ(通知手段、表示手段)
32 スピーカ(通知手段、音声出力手段)
33 モータ駆動回路
34 点火装置
35 エンジンECU
36 トランスミッションECU
37 ナビECU
41 プリテンショナ駆動モータ
42 プリテンショナ用スクイブ
43 エアバッグ用スクイブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の状態を検出する検出手段の検出情報に基づいて、前記車室内に、乗員を保護する乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする乗員保護装置の制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項3】
前記座席の状態と前記座席のレイアウトとの少なくとも一方の状態と、当該状態のときに座席によって動作を阻害される乗員保護装置の情報とを記憶した第1記憶手段を有し、
前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて前記第1記憶手段を参照し、動作が阻害される乗員保護装置があるか否かを判定することを特徴とする請求項2記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、動作が阻害される乗員保護装置の種別と、動作が阻害される乗員保護装置の数との少なくとも一方を判定し、該判定結果に基づいて事故発生時の各座席の危険度を判定することを特徴とする請求項3記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項5】
前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに、前記各座席の危険度を判定することを特徴とする請求項4記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項6】
前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに前記各座席の危険度を判定し、判定した各事故形態での危険度に基づいて各座席の総合的な危険度を判定することを特徴とする請求項4記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項7】
前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、
前記判定手段は、前記検出情報で乗員が着座していると判定された座席の危険度を判定することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項8】
前記検出手段の検出情報として、シートベルトの装着状態を判定した情報を含み、
前記判定手段は、前記危険度に、前記シートベルトが装着状態にあるか否かを含めることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項9】
前記判定手段で、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生していると判定すると、車両の始動を禁止する禁止手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項10】
前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックするロック手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項11】
前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、
前記ロック手段は、前記座席に乗員が着座しているときに、前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックすることを特徴とする請求項10記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項12】
乗員からの操作を受け付ける操作受付手段を有し、
前記禁止手段は、前記通知手段で前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が前記車室内に発生していることを通知した後に、前記操作受付手段で乗員からの操作入力を受け付けると、車両の始動を許可することを特徴とする請求項9記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項13】
前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席があると判定された場合に、前記座席のレイアウトと前記安全に着座することができない座席の情報とを表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項14】
前記通知手段は、車両に搭載された各乗員保護装置が動作可能な状態にあるか否かを表す情報を表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項15】
前記通知手段は、前記安全に着座できないと判定された座席が安全に着座できない理由を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項13記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項16】
前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席の安全性を高めるために、座席の状態又は座席のレイアウトの変更のアドバイスを前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項13記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項17】
前記判定手段は、座席の状態又は座席のレイアウトが変更されることによって前記乗員保護装置の動作を阻害する座席と、該座席が前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態とを判定し、
前記通知手段は、前記判定手段で判定した前記座席と、前記座席の状態とを表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項18】
前記通知手段は、前記車室内に設けられた座席のレイアウトと、前記判定手段で判定された前記各座席の危険度とを表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項19】
前記乗員保護装置の動作が阻害されることによって、発生し得る危険状態を事故形態ごとに記憶した第2記憶手段を有し、
前記通知手段は、安全に着座できない座席において発生しうる危険状態を表示手段に表示することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項20】
前記通知手段は、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席がある旨を音声で通知する音声出力手段を含むことを特徴とする請求項1から19のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項1】
車室内の状態を検出する検出手段の検出情報に基づいて、前記車室内に、乗員を保護する乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする乗員保護装置の制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生しているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項3】
前記座席の状態と前記座席のレイアウトとの少なくとも一方の状態と、当該状態のときに座席によって動作を阻害される乗員保護装置の情報とを記憶した第1記憶手段を有し、
前記判定手段は、前記検出手段で検出される座席の状態と、座席のレイアウトとの少なくとも一方に基づいて前記第1記憶手段を参照し、動作が阻害される乗員保護装置があるか否かを判定することを特徴とする請求項2記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、動作が阻害される乗員保護装置の種別と、動作が阻害される乗員保護装置の数との少なくとも一方を判定し、該判定結果に基づいて事故発生時の各座席の危険度を判定することを特徴とする請求項3記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項5】
前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに、前記各座席の危険度を判定することを特徴とする請求項4記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項6】
前記判定手段は、車両に発生し得る事故形態ごとに前記各座席の危険度を判定し、判定した各事故形態での危険度に基づいて各座席の総合的な危険度を判定することを特徴とする請求項4記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項7】
前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、
前記判定手段は、前記検出情報で乗員が着座していると判定された座席の危険度を判定することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項8】
前記検出手段の検出情報として、シートベルトの装着状態を判定した情報を含み、
前記判定手段は、前記危険度に、前記シートベルトが装着状態にあるか否かを含めることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項9】
前記判定手段で、前記車室内に、前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が発生していると判定すると、車両の始動を禁止する禁止手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項10】
前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックするロック手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項11】
前記検出手段の検出情報として、乗員が座席に着座しているか否かを表す情報を含み、
前記ロック手段は、前記座席に乗員が着座しているときに、前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態及び座席のレイアウトとならないように座席をロックすることを特徴とする請求項10記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項12】
乗員からの操作を受け付ける操作受付手段を有し、
前記禁止手段は、前記通知手段で前記乗員保護装置の動作が阻害される状態が前記車室内に発生していることを通知した後に、前記操作受付手段で乗員からの操作入力を受け付けると、車両の始動を許可することを特徴とする請求項9記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項13】
前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席があると判定された場合に、前記座席のレイアウトと前記安全に着座することができない座席の情報とを表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項14】
前記通知手段は、車両に搭載された各乗員保護装置が動作可能な状態にあるか否かを表す情報を表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項15】
前記通知手段は、前記安全に着座できないと判定された座席が安全に着座できない理由を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項13記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項16】
前記通知手段は、前記判定手段で、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席の安全性を高めるために、座席の状態又は座席のレイアウトの変更のアドバイスを前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項13記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項17】
前記判定手段は、座席の状態又は座席のレイアウトが変更されることによって前記乗員保護装置の動作を阻害する座席と、該座席が前記乗員保護装置の動作を阻害する座席の状態とを判定し、
前記通知手段は、前記判定手段で判定した前記座席と、前記座席の状態とを表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項18】
前記通知手段は、前記車室内に設けられた座席のレイアウトと、前記判定手段で判定された前記各座席の危険度とを表示手段に表示させる手段を含むことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項19】
前記乗員保護装置の動作が阻害されることによって、発生し得る危険状態を事故形態ごとに記憶した第2記憶手段を有し、
前記通知手段は、安全に着座できない座席において発生しうる危険状態を表示手段に表示することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【請求項20】
前記通知手段は、前記乗員保護装置の動作が阻害され、安全に着座できない座席がある旨を音声で通知する音声出力手段を含むことを特徴とする請求項1から19のいずれか一項記載の乗員保護装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−255849(P2009−255849A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109651(P2008−109651)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]