説明

乗客誘導案内システム、通信端末装置及び基地局

【課題】 煩雑な識別番号管理や衛星電波による位置判定を必要とせず、乗換え乗客乗降ポイント直前の位置で乗客が確実に乗換え又は降車できるように通知すること。
【解決手段】 乗客乗降ポイント近傍に、駅1〜9から所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局1a,1b,…を設置し、この基地局は、乗客が携帯する携帯電話機200に対して駅1〜9を出発したときに出発信号を、駅1〜9に到着したときに到着信号を電波に含めて送信する。乗客が携帯する携帯電話機200は、ルート情報取得部215により乗客の目的駅までのルート情報300を予め取得し、RAM213に記憶する。そして、基地局から送信された電波に含まれる出発信号及び到着信号を受信し、受信した到着信号の回数とルート情報300に予め設定されている到着信号回数とを比較して目的駅に到着したことを判定し報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の乗客乗降ポイントを有する交通機関を利用する乗客への目的地到着及び乗り間違いを通知する乗客誘導案内システム、通信端末装置及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
電車等の交通機関を利用する乗客は、読書等の作業や居眠り等をして降車するべき駅を乗り過ごしたり、初めて訪れる土地であるために本来乗るべき路線とは違った路線に乗り間違ってしまったりすることがある。この場合、目的地到着までに余分な時間を費やしてしまう。また、時間帯によっては他の交通手段を使用せざるを得なくなり、目的地までの交通費も高価になってしまうことがある。
【0003】
乗客に目的地到着又は乗り間違いを通知する方法には、特許文献1及び特許文献2に開示された技術がある。上記特許文献1、2に記載の技術は、各乗客が携帯し得る無線通信システムの携帯端末に、所望の駅識別番号を記憶させておき、この駅識別番号と同一の駅識別番号を受信した時に目的地到着通知又は乗換地到着通知を行う。また、特許文献2記載の装置は、GPS(Global Positioning System)を用いて携帯端末の位置情報と目的地の位置情報を検出及び比較して通知する。
【特許文献1】特開2002−108994号公報
【特許文献2】特開2002−204467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような従来の乗り越し防止装置にあっては、特許文献1記載のシステムでは、駅識別番号の管理が煩雑になるという欠点があった。また、特許文献2記載の装置では、山岳部や地下、トンネル等といった衛星電波を受信しにくい場所で位置検出の精度が低くなってしまうという不都合があった。また、特許文献1、2の技術を用いて乗り間違い通知を実現しようとした場合、通過すべき経路上の全ての駅識別番号あるいは位置情報と乗り間違う可能性がある全ての駅識別番号あるいは位置情報を携帯端末に記憶しておかなければならない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、煩雑な識別番号管理や衛星電波による位置判定を必要とせず、乗換え乗客乗降ポイント直前の位置で乗客が確実に乗換え又は降車できるように通知を行うことができる乗客誘導案内システム、通信端末装置及び基地局を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、乗客が乗り間違えをした場合に、いち早く乗客が乗り間違ったことに気付いて正しい経路に戻れるように通知することができる乗客誘導案内システム、通信端末装置及び基地局を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の乗客誘導案内システムは、交通機関の各乗客乗降ポイント近傍に、前記乗客乗降ポイントから所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局と、前記基地局から送信される電波を受信する乗客が携帯する通信端末装置とを備え、前記基地局は、前記通信端末装置に対し前記各乗客乗降ポイントを出発したときに出発信号を、該乗客乗降ポイントに到着したときに到着信号を前記電波に含めて送信する送信手段を備え、前記通信端末装置は、前記乗客の目的乗降ポイントまでのルート情報を記憶する記憶手段と、前記電波に含まれる前記出発信号及び到着信号を受信する受信手段と、受信した前記到着信号の回数をカウントするカウント手段と、受信した前記到着信号回数と前記ルート情報に予め設定されている到着信号回数とを比較して前記目的乗降ポイントに到着したことを判定する判定手段と、判定結果を基に前記乗客に目的乗降ポイントに到着したことを報知する報知手段とを備える構成を採る。
【0008】
本発明の通信端末装置は、交通機関の各乗客乗降ポイント近傍に、前記乗客乗降ポイントから所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局から送信される電波を受信する乗客が携帯する通信端末装置であって、前記乗客の目的乗降ポイントまでのルート情報を記憶する記憶手段と、前記各乗客乗降ポイントを出発したときと該乗客乗降ポイントに到着したときに基地局から送信される出発信号及び到着信号を受信する受信手段と、受信した前記到着信号の回数をカウントするカウント手段と、受信した前記到着信号回数と前記ルート情報に予め設定されている到着信号回数とを比較して前記目的乗降ポイントに到着したことを判定する判定手段と、判定結果を基に前記乗客に目的乗降ポイントに到着したことを報知する報知手段とを備える構成を採る。
【0009】
本発明の基地局は、交通機関の各乗客乗降ポイント近傍に、前記乗客乗降ポイントから所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局であって、乗客が携帯する通信端末装置に対し前記各乗客乗降ポイントを出発したときに出発信号を、該乗客乗降ポイントに到着したときに到着信号を前記電波に含めて送信する送信手段を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各乗客乗降ポイントを識別するための識別番号管理といったような煩雑なデータベース管理や山岳部や地下では受信しにくい衛星電波による位置判定を必要とせず、受信機に路線と進行方向を識別するデータを記憶するだけで、乗換え乗客乗降ポイント又は目的乗客乗降ポイント直前の位置で乗客が確実に乗換え又は降車できるように通知を行うことができる。さらに、乗客が乗り間違えをした場合に、いち早く乗客が乗り間違ったことに気付いて正しい経路に戻れるように通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る乗客誘導案内システムの構成を示す図である。本実施の形態は、電車の乗り換え情報等を通信端末装置に提供する乗客誘導案内システムに適用した例である。また、通信端末装置として、乗客が携帯する携帯電話機を例にとる。
【0013】
図1において、乗客誘導案内システム100は、路線A、路線B及び路線Cからなる鉄道網の乗客乗降ポイントである駅1〜9と、各駅1〜9近傍で路線進行に沿った少なくとも2箇所に、各乗客が携帯する通信端末装置200に対して電波を送信して受信させる複数の基地局1a,1b,2a,2b,3a,3b,4a〜4f,5a,6a,7a〜7c,8a,9a,9bと、出発駅から目的駅まで向かうルート情報300(図3により後述する)を取得して記憶する携帯電話機(通信端末装置)200とを備えて構成される。
【0014】
基地局1a,1b,2a,2b,3a,3b,4a〜4f,5a,6a,7a〜7c,8a,9a,9bは、各乗客が携帯する携帯電話機200に各駅1〜9を出発したこと及び到着することを通知する出発信号及び到着信号を電波に含めて送信する。通信手段としては、電波や光ビーコン等のインフラストラクチャの利用、携帯電話やPHS等による移動体通信、情報コンセントを備えた公衆電話、新幹線、航空機等からの有線と無線を組み合わせた通信、及びホットスポットにおいてLANやインターネットなどへ接続する通信等から構成するネットワークが利用可能であり、有線系又は無線系などネットワークの種類とプロトコルの種類は特に問わない。
【0015】
携帯電話機200は、カメラ付き携帯電話機/PHS(Personal Handy-Phone System)・PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯端末、ノート型パソコン(PC)・モバイルPC等の移動端末である。ここでは、携帯端末として、乗客が携帯する携帯電話機を例に採る。
【0016】
図2は、携帯電話機200の構成を示す図であり、図2(a)はその外観図、図2(b)はその機能を示すブロック図である。
【0017】
図2(a)において、携帯電話機200は、LCD表示部201、キー入力部202、受話を行うための端末内蔵スピーカ203、及びLED発光部204を備えて構成される。LCD表示部201には、電話機能のための各種画面、電話機能の動作状態を示すアイコン等が表示される。キー入力部202は、着信,発信,電話機能切り替え,動作決定等を行う機能キー202a、上下左右の方向に選択対象を移動させるカーソルキー202b、電話番号等をダイヤルするテンキー202c等を備える。LED発光部204は、ルート情報に含まれた到着信号回数だけ到着信号を受信した場合などに発光又は点滅して乗客に目的乗客乗降ポイントに到着したことを報知する。
【0018】
図2(b)において、携帯電話機200は、CPU等からなり乗客乗降ポイント報知処理の実行を含む装置全体の制御を行う制御部211、ROM212、RAM213、無線通信部214、ルート情報取得部215、LCD表示部201、キー入力部202、端末内蔵スピーカ203、及びLED発光部204を備えて構成される。
【0019】
上記CPUは、ROM212上のプログラムに従い、演算に使用するデータを記憶したメモリを使用して各種処理を実行する。ROMは、CPUが動作する際に必要なプログラム、制御データ等の固定データを記憶する読出し専用の半導体メモリである。RAM213は、ルート情報取得処理及び目的乗客乗降ポイント報知処理に関するデータや演算に使用するデータ及び制御部211による計算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリとして使用される。
【0020】
また、RAM213の一部は、電気的に書換可能な不揮発性メモリであるEEPROM(electrically erasable programmable ROM)からなり、EEPROMに書き込むプログラムを変えることによって、各種の仕様を変更することができる。また、プログラムをダウンロードしてEEPROMのプログラム内容を書き換えるようにすれば機能のアップグレードや機能の変更を容易に行うことが可能になる。
【0021】
ルート情報のデータは、電源バックアップされた上記RAMの記録領域、又はEEPROMに記憶される。
【0022】
また、図示は省略するが、端末は、日時時刻を計時、あるいは、一定時間の経過を計測するための計時部、外部記録装置や各種機器を接続するためのインタフェースを備える。ルート情報取得部215は、例えばこのインターフェースにより構成される。さらに、音声を入力するためのマイク、マイクからの入力音声信号をデジタル信号処理する音声コーデック、スピーカ及び切り替えスイッチ等からなる音声処理部を備え、マイクより入力された音声信号を、PCMデータに変換したり、CPUから受け取ったPCMデータを音声信号に変換してスピーカから出力する音声応答機能を備えるものであってもよい。この音声応答機能は、報知手段としての機能を有する。
【0023】
ルート情報取得部215は、ルート情報300(図3により後述する)を取得するためのインターネット接続手段や自動券売機等に接続するためのインターフェースである。乗客は、乗車する前に、インターネット接続手段や自動券売機等に設置されたインターフェースを介してデータベースにアクセスし、出発駅から目的駅まで向かうルート情報を取得し、RAM213に記憶する。
【0024】
以下、上述のように構成された乗客誘導案内システムの動作について説明する。
【0025】
図1に示すように、例えば路線A、路線B及び路線Cからなる鉄道網がある。路線Aは駅1〜4からなり、路線Bは駅4と駅7〜9からなり、路線Cは駅4〜6からなる。駅4は路線A、路線B及び路線Cが交差する乗換駅であり、駅7は路線Bが分岐する乗換駅である。各駅1〜9近傍には路線進行方向に沿って少なくとも2つの基地局1a〜9a、1b〜4b、7b、9b、4c、7c、4d、4e及び4fが設置されており、複数路線が交差する場合にはそれぞれの路線毎に基地局を有する。これら基地局1a〜9a、1b〜5b、7b、9b、4c、7c、4d、4e及び4fは、各々の近傍路線沿いに所定距離進んだ範囲を電波受信可能領域としている。本実施の形態では、駅1を出発駅、駅9を目的駅とし、矢印の方向に車両が進行する場合を考える。まず、乗客は乗車する前に出発駅から目的駅まで向かうルート情報を携帯電話機200が備えるルート情報取得部215により外部のデータベースから取得し記憶しておく。
【0026】
ルート情報取得部215は、インターネット接続手段や自動券売機との通信手段によって、乗客が乗車した乗客乗降ポイントから前記乗客が目的地とする乗客乗降ポイント(以下、目的乗降ポイント)までの交通ルートを、複数の交通ルートから予め選択し、選択した交通ルートを携帯電話機200のRAM213にルート情報300として記憶する。
【0027】
図3は、ルート情報の構成を示す図であり、図1に示した路線ルートのルート情報である。
【0028】
ルート情報300は、選択した交通ルート上で複数路線が乗り入れている乗客乗降ポイント(以下、乗換え乗降ポイント)又は目的乗降ポイントを区切りとして、路線識別コードと出発信号と、携帯電話機200が基地局から受信する到着信号回数と、乗換え乗降ポイントに乗り入れている路線のうち前記選択交通ルートに適合しない路線識別コード(以下、乗り間違い路線コード)と出発信号(以下、乗り間違い出発信号)が含まれている。記憶された乗客誘導用情報の路線識別コードで符号化された到着信号を到着信号回数だけ受信した場合に、乗換え通知又は目的地到着通知が行われ、また、乗り間違い路線コードで符号化された乗り間違い出発信号を受信した場合に、乗り間違い通知が行われる。
【0029】
図3では、ルート情報300は、乗換駅、目的駅及び複数路線が乗り入れている駅を区切りとし、路線ごとに異なる路線コード311、進行方向ごとに異なる出発信号312、受信すべき到着信号回数313、乗り間違い路線コード314、及び乗り間違い出発信号315からなる。例えば、図3の1行目のルート情報は、出発駅である駅1から最初の乗換駅である駅4までのルートに対応付けられている。携帯電話機200は、取得したルート情報300に従って、各駅の近傍に設置された基地局が送信する到着信号の受信回数をカウントする。路線コード311で符号化された出発信号312を受信すると、次の到着信号受信をカウントする。乗り間違い路線コード314で符号化された乗り間違い出発信号315を受信すると、音、光、振動などの報知手段で乗り間違いの通知を行う。本実施の形態では、LED発光部204を発光させるとともに、バイブレータを振動させ、端末内蔵スピーカ203により報音する。また、音声信号に変換して端末内蔵スピーカ203から音声応答することも可能である。
【0030】
一方、受信した到着信号回数がルート情報の到着信号回数313に達すると、乗換え通知を行う。以降、目的駅到着まで受信信号と到着信号を交互に受信し、目的駅到着時に到着通知を行う。これらの通知は、乗り間違いではないので、それほど注意を喚起しない報知、例えばLCD表示部201へのメッセージ表示が好ましい。
【0031】
次に、図1に示したルートを例に採り乗客誘導案内プロセスについて説明する。
【0032】
図4及び図5は、乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図である。本フローは、携帯電話機200が乗客誘導案内モードに設定されているとき制御部211により実行される。図中、Sはフローの各ステップを示す。
【0033】
まず、ステップS1で乗客は駅1から駅9までのルート情報300を取得し携帯電話機200のRAM213に記憶する。その後、ステップS2で到着信号をカウントするカウンタCの値をセット(ここでは、図3のルート情報300の到着信号回数313が3回のため、C=3をセット)し、ステップS3でカウンタCの値が0になるまでルート情報300の最初の行に従って乗客誘導案内を開始する。つまり、路線Aの路線コード(図3の路線コード311)で符号化された上り(図3の出発信号312)又は路線Aの路線コード(図3の乗り間違い路線コード314)で符号化された下り(図3の乗り間違い出発信号315)の受信を待つ(ステップS4)。
【0034】
次いで、ステップS5で路線Aの上りか否かを判別し、路線Aの路線コードで符号化された上りの出発信号を受信しなかった場合、すなわち路線Aの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信した場合には、ステップS6で乗客に乗り間違いをしたことを通知して本乗客誘導案内フローを終了する。路線Aの路線コードで符号化された上りの出発信号を受信した場合、到着信号の受信を待って(ステップS7)、ステップS8でカウンタCの値をデクリメントして上記ステップS3に戻る。ステップS3でカウンタCの値が0回になったときに、ステップS9で乗換え通知を行い、そうでない場合にはカウンタCの値が0回になるまで出発信号確認(ステップS4)からカウンタCの値のデクリメント処理(ステップS8)までを繰り返す。
【0035】
ステップS9では、乗換え通知後、ルート情報300(図3参照)の次の行に同様に従って乗客誘導案内を行う。まず、ステップS10でカウンタCの値を1回にセットし、ステップS11でカウンタCの値が0になるまでルート情報300の次の行に従って乗客誘導案内を継続する。ステップS12で路線A、路線B、路線Cのいずれかの路線コードで符号化された出発信号受信を待つ。路線A、路線B、路線Cのいずれかの路線コードで符号化された出発信号を受信したときは、ステップS13で路線Bの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信したか否かを判別する。路線Bの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信しなかったときは、受信した出発信号が路線B以外の路線コードで符号化されていた場合であると判断し、ステップS14で乗り間違い通知を行い、本乗客誘導案内フローを終了する。
【0036】
上記ステップS13で路線Bの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信したときは、ステップS15で路線Bの到着信号を受信したか否かを判別する。路線Bの到着信号を受信した時、ステップS16でカウンタCの値をデクリメントし、上記ステップS11に戻る。ステップS11で、カウンタCの値が0回になった時にステップS17(図5)に進み、ステップS17で乗換え通知を行う。
【0037】
ステップS17では、乗換え通知後、カウンタCの値を次のルート情報300に従って再びセットし、以下前記と同様の乗客誘導案内処理を行う。すなわち、ステップS18でカウンタCの値を1回にセットし、ステップS19でカウンタCの値が0になるまでルート情報300の次の行に従って乗客誘導案内を継続する。カウンタCの値が0になると、ステップS20で到着通知を行って本乗客誘導案内フローを終了する。カウンタCの値が0でなければ、ステップS21で路線Bの下り、又は分岐出発信号を待つ。路線Bの下り、又は分岐出発信号を受信したときは、ステップS22で路線Bの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信したか否かを判別する。路線Bの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信しない場合、ステップS23で乗り間違い通知を行い、本乗客誘導案内フローを終了する。
【0038】
上記ステップS22で路線Bの路線コードで符号化された下りの出発信号を受信したときは、ステップS24で路線Bの到着信号を受信したか否かを判別する。路線Bの到着信号を受信すると、ステップS25でカウンタCの値をデクリメントし、上記ステップS19に戻る。ステップS19で、カウンタCの値が0回になった時にステップS20で到着通知を行って本乗客誘導案内フローを終了する。
【0039】
ここで、乗客の乗り間違いを防止するために、乗客誘導案内中に乗車すべき路線名と進行方向を携帯電話機200のLCD表示部201に表示させても良い。例えば、携帯電話機200が乗客誘導案内モードにあるとき、LCD表示部201に図2(a)に示す乗客誘導案内のメッセージ220「路線Aの上り方面に乗車して下さい」を表示する。表示時間は任意であるが、例えば、図4のステップS3からステップS8のループ処理でカウンタCの値が0となるまでの間LCD表示部201にメッセージ220を表示する。
【0040】
上記のようなメッセージの通知は、乗り間違いの報知の場合にも有効である。乗り間違いが発生するあるいは発生しそうになる場合、緊急で目立つように乗客に知らせる必要がある。このため、本実施の形態では、LED発光部204、バイブレータ、端末内蔵スピーカ203を用いて光、振動、音、音声などで乗客に乗り間違いを報知している。この報知に併用して又は報知形態の一つとしてLCD表示部201に乗り間違いのメッセージ表示を行うことも可能である。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、乗客乗降ポイント近傍に、駅(乗客乗降ポイント)1〜9から所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局1a,1b,2a,2b,3a,3b,4a〜4f,5a,6a,7a〜7c,8a,9a,9bを設置する。この基地局は、乗客が携帯する携帯電話機200に対して駅1〜9を出発したときに出発信号を、駅1〜9に到着したときに到着信号を電波に含めて送信する。詳細には、各基地局のうち駅1〜9の進行方向前方に設置された基地局(例えば、1a〜9a,4c,4d,4e)は進行方向ごとに異なる出発信号を送信し、各基地局のうち駅1〜9の進行方向後方に設置された基地局(例えば、1b〜5b,7b,9b,7c,4f)は進行方向毎に異なる進行方向別乗客乗降ポイント到着信号を送信する。さらに、各基地局が設置された路線と他の路線を識別させるために、路線識別コードで出発信号及び到着信号を符号化して送信する。一方、乗客が携帯する携帯電話機200は、ルート情報取得部215により乗客の目的駅(目的乗降ポイント)までのルート情報300を予め取得し、RAM213に記憶する。そして、基地局1a,1b,2a,2b,3a,3b,4a〜4f,5a,6a,7a〜7c,8a,9a,9bから送信された電波に含まれる出発信号及び到着信号を受信し、受信した到着信号の回数とルート情報300に予め設定されている到着信号回数とを比較して目的駅に到着したことを判定し報知する。
【0042】
以上の構成において、乗客乗降ポイント近傍に設置された基地局から乗客が有する携帯電話機200へ乗客乗降ポイントに到着することを意味する到着信号を送信する。携帯電話機200には予めルート情報300が記憶されており、ルート情報300に従って到着信号の受信回数をカウントすることにより、乗客を目的地まで誘導することができる。これにより、各乗客乗降ポイントを識別するための識別番号管理といったような煩雑なデータベース管理が不要になる効果がある。また、GPS衛星電波による現在位置検出を必要としないため、山岳部や地下などGPS衛星電波が受信しにくい場所であっても乗換え乗客乗降ポイント又は目的乗客乗降ポイント直前の位置において乗客が確実に乗換え又は降車できるように通知を行うことができる。その結果、各乗客に対して、乗換えや降車、乗り間違いを行った場合に軌道修正を促すことができる。
【0043】
また、本実施の形態では、同一の乗客乗降ポイントで到着信号を複数回カウントしてしまうことを防ぐために到着信号を一度受信してカウントすると、出発信号を少なくとも1回受信するまでは次の到着信号のカウントを行わない。このように携帯電話機200が出発信号と到着信号を交互に受信することで、各乗客乗降ポイントに近づいたことを、誤りなく判定して乗客に報知することができる。
【0044】
また、本乗客誘導案内システムは、特別な部材は不要で部品点数の増加もないので、低コストでしかも実施が容易であり乗客が携帯する機会の多い携帯電話機等の携帯端末に幅広く適用することができる。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態2は、乗客が路線もしくは進行方向を乗り間違えた場合の乗客誘導案内の例である。ハード的構成は、図1及び図2と同一であるため説明を省略する。
【0046】
図6乃至図8は、本発明の実施の形態2に係る乗客誘導案内システムの乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図である。図4及び図5のフローと同一処理を行うプロセスには同一ステップ番号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施の形態の前提として、進行方向ごとに異なる出発信号及び到着信号が逆方向の信号とビット反転などの規則性を有する構成とする。
【0048】
実施の形態1と同様のフローを経て、乗り間違いを検出し、乗り間違い通知(ステップS6、ステップS14、ステップS23)を行った後、各ステップS6、ステップS14及びステップS23に、以下のプロセス(ステップS31〜ステップS39)が付加される。同一プロセスであるため、ステップS6の乗り間違い通知に付加されるプロセス(ステップS31〜ステップS39)を代表して説明する。
【0049】
まず、ステップS31で乗り間違い路線コードNGCを記憶し、ステップS32で乗り間違い出発信号NGSを記憶する。次いで、ステップS33で正規ルートの到着信号回数をカウントするカウンタCとは別のカウンタNを用意し、そのカウンタNの値を0にセットする。このカウンタNは、乗り間違いルートで通過した駅の数をカウントする。ステップS34でNGCで符号化された到着信号受信を待ち、ステップS35で受信した到着信号がNGSかNGSの逆方向かを判別する。
【0050】
受信した到着信号がNGSであった場合には、ステップS36でカウンタNの値をインクリメントする。また、受信した到着信号がNGSに規則性を適用して推定されるNGSの逆方向の到着信号であった場合には、ステップS37でカウンタNの値をデクリメントし、ステップS38でカウンタNの値が0になったか否かを確認する。カウンタNの値が0でない又はNGSを受信した場合には、ステップS39でNGCで符号化された出発信号受信を待つ。以降、カウンタNの値が0になるまでNGCで符号化された到着信号受信からNGCで符号化された出発信号受信までの処理を繰り返す。
【0051】
ここで、実施の形態1と同様に乗客の乗り間違いを防止するために、乗客誘導案内中に乗車すべき路線名と進行方向を携帯電話機200のLCD表示部201に表示させることが好ましい。また、乗客が速やかに正規のルートに戻れるように、乗り間違い通知から正規ルート復帰までの間、正規ルートに戻るために乗車すべき路線名と進行方向を携帯電話機200のLCD表示部201に表示させることがより好ましい。例えば、図6のステップS3からステップS38でYesとなるまでの間は、LCD表示部201に「路線Aの上り方面に乗車して正規ルートに復帰してください」などと表示する。
【0052】
このように、本実施の形態によれば、実施の形態1の乗り間違い通知プロセスに、さらに正しい経路に戻るためのプロセスを追加したので、実施の形態1の効果に加えて、乗客が乗り間違えをした場合に、いち早く乗客が乗り間違ったことに気付いて正しい経路に戻れるように通知することができる。
【0053】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、乗客誘導案内システムの通信端末装置として携帯電話機を例に採っているが、携帯電話機に限らず通信機能を持った又はその融合された装置に適用可能である。例えば、PDA(Personal Digital Assistants)や小型ノート型パソコンに代表される情報機器機能に融合された装置であってもよく、全てのシステムに適用可能である。
【0054】
また、交通機関として電車の路線に適用し、その乗換えや降車、乗り間違いを報知する例について説明したが、交通機関はバス路線等どのようなものでもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、ルート情報をインターネット接続手段や自動券売機との通信手段によって取得しているが、取得方法、ルート情報の種類、設定項目、形式、コード化などは前述した実施の形態に限られない。
【0056】
また、本実施の形態では乗客誘導案内システム及び携帯電話機という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、携帯端末、乗客誘導システム及び乗客案内方法等であってもよい。
【0057】
さらに、乗客誘導案内システムに用いられる移動通信方式は、TDMA方式、CDMA方式等どのような方式でもよい。また、本実施の形態は、位置情報取得機能なしに実現できるものであるが、GPSのほか、PHS・携帯電話の基地局等ユーザ端末に対して現在位置情報を与え、相手端末と接近確認から位置を検出する位置検出手段を併用する態様でもよい。
【0058】
以上説明した乗客誘導案内システムは、この乗客誘導案内システムを機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る乗客誘導案内システムは、複数の乗客乗降ポイントを有する交通機関を利用する乗客への目的地到着通知システム、乗り間違い通知システム、乗換え通知システムに有用である。また、特別な部材は不要で部品点数の増加もないので、低コストでしかも実施が容易であり携帯電話機等の携帯端末に幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1に係る乗客誘導案内システムの構成を示す図
【図2】上記実施の形態1に係る乗客誘導案内システムの通信端末装置の構成を示す図
【図3】上記実施の形態1に係る乗客誘導案内システムのルート情報の構成を示す図
【図4】上記実施の形態1に係る乗客誘導案内システムの乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図
【図5】図4に続く乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図
【図6】本発明の実施の形態2に係る乗客誘導案内システムの乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図
【図7】図6に続く乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図
【図8】図7に続く乗客誘導案内プロセスのフローチャートを示す図
【符号の説明】
【0061】
1〜9 駅(乗客乗降ポイント)
1a,1b,2a,2b,3a,3b,4a〜4f,5a,6a,7a〜7c,8a,9a,9b 基地局
200 携帯電話機
201 LCD表示部
202 キー入力部
203 端末内蔵スピーカ
204 LED発光部
211 制御部
212 ROM
213 RAM
214 無線通信部
215 ルート情報取得部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通機関の各乗客乗降ポイント近傍に、前記乗客乗降ポイントから所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局と、前記基地局から送信される電波を受信する乗客が携帯する通信端末装置とを備え、
前記基地局は、前記通信端末装置に対し前記各乗客乗降ポイントを出発したときに出発信号を、該乗客乗降ポイントに到着したときに到着信号を前記電波に含めて送信する送信手段を備え、
前記通信端末装置は、
前記乗客の目的乗降ポイントまでのルート情報を記憶する記憶手段と、
前記電波に含まれる前記出発信号及び到着信号を受信する受信手段と、
受信した前記到着信号の回数をカウントするカウント手段と、
受信した前記到着信号回数と前記ルート情報に予め設定されている到着信号回数とを比較して前記目的乗降ポイントに到着したことを判定する判定手段と、
判定結果を基に前記乗客に目的乗降ポイントに到着したことを報知する報知手段と
を備える乗客誘導案内システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、乗換え乗降ポイントと、該乗換え乗降ポイントごとに設定された到着信号回数を前記ルート情報に記憶し、
前記判定手段は、受信した前記到着信号回数と前記ルート情報に予め設定されている到着信号回数とを比較して前記乗換え乗降ポイントに到着したことを判定し、
前記報知手段は、判定結果を基に前記乗客に乗換え乗降ポイントに到着したことを報知する請求項1記載の乗客誘導案内システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、路線及び進行方向を識別する乗り間違い情報を前記ルート情報に記憶し、
前記判定手段は、前記基地局から送信された乗り間違い出発信号と前記乗り間違い情報とから前記乗客が乗り間違えたことを判定し、
前記報知手段は、判定結果を基に前記乗客に乗り間違えを報知する請求項1又は請求項2に記載の乗客誘導案内システム。
【請求項4】
前記出発信号と前記到着信号は、進行方向毎に異なる信号であり、かつ一対の前記出発信号と前記到着信号とは、進行方向の間で規則性を有しており、前記乗客が乗り間違えた時に、乗り間違えた際に受信した前記到着信号と該到着信号から推定される進行方向が逆の到着信号の回数を計測する計測手段をさらに備え、前記報知手段は、前記計測結果を基に前記乗客に正規のルートに戻ることを報知する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の乗客誘導案内システム。
【請求項5】
前記出発信号と前記到着信号は、交通機関の各路線毎に異なる符号コードで符号化される請求項1乃至請求項4のいずれかに乗客誘導案内システム。
【請求項6】
前記カウント手段は、受信した前記到着信号をカウント後、前記出発信号を受信するまでは次の到着信号をカウントしない請求項1記載の乗客誘導案内システム。
【請求項7】
交通機関の各乗客乗降ポイント近傍に、前記乗客乗降ポイントから所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局から送信される電波を受信する乗客が携帯する通信端末装置であって、
前記乗客の目的乗降ポイントまでのルート情報を記憶する記憶手段と、
前記各乗客乗降ポイントを出発したときと該乗客乗降ポイントに到着したときに基地局から送信される出発信号及び到着信号を受信する受信手段と、
受信した前記到着信号の回数をカウントするカウント手段と、
受信した前記到着信号回数と前記ルート情報に予め設定されている到着信号回数とを比較して前記目的乗降ポイントに到着したことを判定する判定手段と、
判定結果を基に前記乗客に目的乗降ポイントに到着したことを報知する報知手段と
を備える通信端末装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、乗換え乗降ポイントと、該乗換え乗降ポイントごとに設定された到着信号回数を前記ルート情報に記憶し、
前記判定手段は、受信した前記到着信号回数と前記ルート情報に予め設定されている到着信号回数とを比較して前記乗換え乗降ポイントに到着したことを判定し、
前記報知手段は、判定結果を基に前記乗客に乗換え乗降ポイントに到着したことを報知する請求項7記載の通信端末装置。
【請求項9】
前記記憶手段は、路線及び進行方向を識別する乗り間違い情報を前記ルート情報に記憶し、
前記判定手段は、前記基地局から送信された乗り間違い出発信号と前記乗り間違い情報とから前記乗客が乗り間違えたことを判定し、
前記報知手段は、判定結果を基に前記乗客に乗り間違えを報知する請求項7又は請求項8に記載の通信端末装置。
【請求項10】
前記出発信号と前記到着信号は、進行方向ごとに異なる信号であり、かつ一対の前記出発信号と前記到着信号とは、進行方向の間で規則性を有しており、前記乗客が乗り間違えた時に、乗り間違えた際に受信した前記到着信号と該到着信号から推定される進行方向が逆の到着信号の回数を計測する計測手段をさらに備え、前記報知手段は、前記計測結果を基に前記乗客に正規のルートに戻ることを報知する請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の通信端末装置。
【請求項11】
前記カウント手段は、受信した前記到着信号をカウント後、前記出発信号を受信するまでは次の到着信号をカウントしない請求項7記載の通信端末装置。
【請求項12】
交通機関の各乗客乗降ポイント近傍に、前記乗客乗降ポイントから所定の距離進行した路線の進路を送信可能領域として含むように設置された基地局であって、
乗客が携帯する通信端末装置に対し前記各乗客乗降ポイントを出発したときに出発信号を、該乗客乗降ポイントに到着したときに到着信号を前記電波に含めて送信する送信手段を備える基地局。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−22160(P2007−22160A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203545(P2005−203545)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】