説明

予備系装置診断方法および予備系装置診断制御システム

【課題】冗長構成の特徴に即した予備系装置診断方法および予備系装置診断制御システムを提供する。
【解決手段】運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断方法において、書き込みを受付可能な状態に記憶領域を維持した状態で他の機能にかかわる診断手順を実行し、切り替えにかかわる情報が記憶領域に書き込まれた場合に、該予備系装置が、該記憶領域に書き込まれた該切り替えにかかわる情報を検出して、診断手順を中断し、該予備系装置を待機状態に復帰させる処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長構成システムにおいて予備系の装置に対して行う装置診断に関する予備系装置診断方法および予備系装置診断制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冗長構成を持つシステムでは、障害が発生した運用系の装置が非運用状態となり、この状態変化を予備系の対応する装置に伝えることにより、予備系装置が運用状態に移行する。具体的には、例えば、予備系装置のメモリ内に設けられた通信領域に、対応する運用系装置が非運用状態に移行した旨の通知が書き込まれたことを予備系の装置が検出し、これに応じて、予備系装置は待機状態から運用状態に移行する。
【0003】
運用系から予備系への切り替えにかかわる技術としては、運用系装置において危険予測を行い、予測危険度が閾値を超えたときに運用系から予備系への切り替えを行う技術などが提案されている(特許文献1参照)。
また、発生した障害に応じて、予め定義された規則に従って復旧処理を行う技術も提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
冗長構成を持つシステムでは、運用系からの切り替えに備えて、予備系装置の機能の正常性を確認しておく必要があるため、保守管理者からの指示などに応じてあるいは定期的に予備系装置についての診断処理が行われる。
このような予備系装置の診断処理では、装置に備えられたプロセッサや様々なインタフェース部の機能のチェックに加えて、メモリの書き込み・読み出し試験が行われる。
【0005】
また、装置の診断にかかわる技術として、運用中の装置に障害が検出された場合に、この装置について障害にかかわる統計情報などを含む動作状態に関する情報を求めて、この情報に基づいて正常性を判定し、判定結果に基づいて運用状態とするか障害状態とするかを決定する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−168410号公報
【特許文献2】特開平4−77139号公報
【特許文献3】特開2003−114811
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した予備系装置の診断処理では、メモリのテストの際に、運用系と予備系との間の通信に用いられるメモリの領域も他の領域と同様にテスト用のデータに書き換えられている。このため、従来の予備系装置の診断処理では、診断処理中は、予備系装置は冗長構成から切り離された状態となっており、このときに運用系の装置に障害が発生した場合には、予備系の装置を直ちに運用系に切り替えることはできなかった。
【0007】
このような場合には、例えば、保守管理者からの指示によって診断処理を停止させ、リセット操作を行うなどの介入が必要となるために、冗長構成をとっているにもかかわらず、診断対象となっていた装置に関する障害状態が長引き、システム全体の運用が制限されてしまっていた。
上述した課題に加えて、冗長構成のシステムにおける予備系装置の診断に特有な課題としては、次に述べるような課題もある。
【0008】
冗長構成のシステムでは、図7に示す無線ネットワーク制御装置のように、二重化された各ユニット(呼処理プロセッサ401、401、信号処理ユニット402、402、スイッチ制御ユニット403、403、無線ネットワーク制御装置共通(RCOM)ユニット404、404およびクロック制御ユニット405、405)について、それぞれと機能的に連携する全てのユニットとの間に通信経路が設定されており、予備系装置の診断処理では、その時点で予備系となっている各ユニットとこれらのユニットについて設定されている通信経路に関する診断処理が行われる。
【0009】
一般的な装置診断技術では、例えば、装置内部に閉じた機能診断と他の装置との間のインタフェース機能の診断によって障害個所の特定が図られている。
しかしながら、冗長構成のシステムにおける予備系装置の診断処理では、その時点で運用系であるユニットに関する診断は行われないので、例えば、図7に示した予備系のスイッチ制御ユニット403と運用系の信号処理ユニット402との間の通信経路に関して障害が検出された場合には、その通信経路そのものに障害があるのか、運用系の信号処理ユニット402側に障害があるのかを特定することはできなかった。
【0010】
上述した予備系のスイッチ制御ユニット403と運用系の信号処理ユニット402との間の通信経路に関して検出された障害は、スイッチ制御ユニット403が運用系に切り替わり、運用系の信号処理ユニット402との間の通信経路に関する障害が発生して初めて特定されることになる。
このように、従来の予備系装置診断技術では、診断処理の過程で被疑が検出されているにもかかわらず、障害個所を特定できない未特定の被疑個所を残しているため、この被疑にかかわる障害が顕在化するまで放置してしまうケースがあった。
【0011】
上述したように、冗長構成のシステムにおける従来の予備系の診断処理手法では、冗長構成の特徴や待機状態の維持が必要とされていることが、診断処理手順の制御に反映されていないために、結果として、冗長構成の本来の目的であるシステム全体の運用継続を十分に図ることができなかった。
本発明は、冗長構成の特徴に即した予備系装置診断方法および予備系装置診断制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかわる第1の予備系装置診断方法の原理は、以下の通りである。
運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断方法において、書き込みを受付可能な状態に記憶領域を維持した状態で他の機能にかかわる診断手順を実行し、切り替えにかかわる情報が記憶領域に書き込まれた場合に、該予備系装置が、該記憶領域に書き込まれた該切り替えにかかわる情報を検出して、診断手順を中断し、該予備系装置を待機状態に復帰させる処理を行うことを特徴とする。
【0013】
このように構成された第1の予備系装置診断方法の動作は、下記の通りである。
診断処理の過程においては、切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域が維持されているので、診断処理の途中で運用系装置に障害が発生して運用系装置が非運用状態に切り替わったことを示す情報が上述した記憶領域に書き込まれたときに、予備系装置はこれを検出して、実行中の診断処理を中断させ、診断対象の予備系装置を診断状態から待機状態に復帰させることができる。このようにして待機状態に復帰した後に、この予備系装置を直ちに運用状態に移行させることにより、予備系装置の診断を行いながら、運用系装置の障害発生に対する二重化構成の維持を図ることができる。
【0014】
また、運用系装置からの運用状態の切り替えにかかわる情報として、運用系装置が非運用状態に移行する危険性が高い旨を示す情報を受け取り、これに応じて、診断処理を中断して待機状態に復帰させることにより、その後、運用系装置において障害が発生して非運用状態となったときに、直ちに予備系装置を運用状態に移行させることができる。
一方、例えば、運用状態の切替に関わる情報の受付可能な状態に記憶領域を維持した状態で実行可能な診断処理が完了した後に、上述した運用状態の切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域の診断を行うことにより、診断対象の予備系装置に関する全ての診断処理は完了し、この予備系装置は正常性が確認された上で待機状態に移行する。
【0015】
本発明にかかわる第1の予備系装置診断制御システムは、機能診断手段と、中断制御手段とから構成される。
本発明にかかわる第1の予備系装置診断制御システムの原理は、以下の通りである。
運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断制御システムにおいて、機能診断手段は、切替に関わる情報の書き込みを受付可能な状態に記憶領域を維持した状態で診断対象の予備系装置に備えられた各機能部分に関する診断処理を実行する。中断制御手段は、機能診断手段による診断処理過程に渡って記憶領域を監視し、切替にかかわる情報が記憶領域に書き込まれたときに、機能診断手段による診断処理を中断して、予備系装置を待機状態に復帰させる。
【0016】
このように構成された第1の予備系装置診断制御システムの動作は、下記の通りである。
機能診断手段による診断処理の過程においては、中断制御手段によって記憶領域への運用状態の切替に関わる情報の書き込みが監視されており、例えば、プロセッサに関する機能診断処理の途中で運用系装置に障害が発生して運用系装置が非運用状態に切り替わった旨の情報が上述した記憶領域に書き込まれると、中断制御手段により、機能診断手段による診断手順が中断され、診断対象の予備系装置を待機状態に復帰させる処理が行われる。このようにして待機状態に復帰した後に、この予備系装置を直ちに運用状態に移行させることにより、予備系装置の診断を行いながら、運用系装置の障害発生に対する二重化構成の維持を図ることができる。
【0017】
また、運用系装置からの運用状態の切り替えにかかわる情報として、運用系装置が非運用状態に移行する危険性が高い旨を示す情報を受け取り、これに応じて、診断処理を中断して待機状態に復帰させることにより、その後、運用系装置において障害が発生して非運用状態となったときに、直ちに予備系装置を運用状態に移行させることができる。
また、例えば、機能診断手段による診断処理が完了した後に、運用状態の切替にかかわる情報が書き込まれる記憶領域の診断処理を行うことにより、診断対象の予備系装置に関する全ての診断処理させ完了し、この予備系装置の正常性を確認した上で待機状態に移行させることができる。
【0018】
本発明にかかわる第2の予備系装置診断制御システムは、単体診断手段と、インタフェース診断手段と、解析手段とを備え、解析手段に運用制御手段と診断制御手段と障害特定手段とを備えて構成される。
本発明にかかわる第2の予備系装置診断制御システムの原理は、以下の通りである。
予備系装置が運用状態に切り替わったときに連携動作する関連装置と予備系装置との間の通信経路の診断を含めて該予備系装置を診断する予備系装置診断制御システムにおいて、単体診断手段は、予備系装置について装置単体の機能にかかわる診断処理を行う。インタフェース診断手段は、診断対象の予備系装置と関連する装置との間に設定された通信経路にかかわる診断処理を行う。解析手段は、単体診断手段およびインタフェース診断手段によって得られた診断結果に基づいて、異常個所を特定する。解析手段において、運用制御手段は、インタフェース診断手段によって、予備系装置と運用状態の関連装置のいずれかとの間のインタフェースに異常が検出されたときに、インタフェースの異常にかかわる運用状態の関連装置を待機状態に切り替える。診断制御手段は、待機状態とされた関連装置について、単体診断手段に対して装置単体の機能にかかわる診断処理の実行を指示する。障害特定手段は、指示に応じて、単体診断手段が得る診断結果に基づいて障害個所を特定する。
【0019】
このように構成された第2の予備系装置診断制御システムの動作は、下記の通りである。
単体診断手段による待機状態の装置単体に関する診断結果およびインタフェース診断手段による診断結果を解析手段によって解析する際に、インタフェース診断手段によって検出された通信経路にかかわる異常に応じて、関連装置に関する単体診断手段による診断が起動される。インタフェース診断手段によって検出された異常が、診断対象の予備系装置と運用状態の関連装置との間に設定された通信経路に関する異常であった場合は、解析手段に備えられた運用制御手段により、この運用状態の装置が待機状態に切り替えられ、新たに待機状態となった関連装置について単体診断手段による診断処理が指示される。
【0020】
このようにして、待機状態に切り替えられた装置について行われた単体診断によって障害が検出されるか否かによって、上述した通信経路の異常が通信経路を形成するケーブルなどの障害によるものか、待機状態に切り替えられた装置の障害によるものかを峻別し、障害個所を確実に特定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかわる第1の予備系装置診断方法および第1の予備系装置診断システムによれば、診断対象の予備系装置に対応する運用系装置の運用状態の切り替えに関する情報の通知に応じて、診断対象の予備系装置に関する診断処理を中断して、この予備系装置を待機状態に復帰させることができる。これにより、運用系装置の障害に備えて予備系装置を配置するという冗長構成の特徴に即した予備系装置の診断を実施する手法を提供することができるので、運用系装置の障害に備えた冗長構成の維持を図りつつ、予備系装置の診断を実施して予備系装置の確実な動作を保証して、冗長構成システム全体としての運用時間を確保することができる。
【0022】
また、本発明にかかわる第2の予備系装置診断制御システムによれば、診断対象の予備系装置とこれに関連する装置との間に設定された通信経路に異常が検出された場合に、関連装置が運用状態であるか待機状態であるかにかかわらず、この関連装置に関する診断処理を行うことにより、上述した通信経路に関する異常の原因となる障害個所を確実に特定することができる。これにより、冗長構成のシステムを形成する各装置について、関連する運用系装置と予備系装置との双方との間に通信経路が設定されるという冗長構成の特徴に即した予備系装置の診断を実施して障害個所を特定する手法を提供することができるので、迅速な保守作業を支援して、冗長構成システムの運用状態の維持を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明にかかわる予備系装置診断制御システムの第1の実施形態を示す。
図1に示した装置210s、210aは、同一の機能を果たす装置であり、それぞれプロセッサ201s、201aとメモリ202s、202aおよびインタフェース(I/F)部203s、203aを備えて構成されている。なお、図1においては、装置210sが待機状態の予備系装置となっており、装置210aが運用状態の運用系装置となっている。
【0024】
また、図1に示したメモリ202s、202aには、装置210s、210aとの間で運用状態の切り替えに関する情報を授受するための通信領域が設けられており、例えば、装置210sが待機状態のときに、装置210aが非運用状態に移行した旨の情報が、装置210sのメモリ202sの通信領域に書き込まれたときに、装置210sは、待機状態から運用状態に移行し、以降は、運用系装置として動作する。
【0025】
図1に示した待機状態の装置210sにおいて、診断制御部211は、例えば、保守センタ(図示せず)からの診断指示に応じて、プロセッサ201s、メモリ202s、インタフェース部203sに関する診断処理を行う。
このとき、診断制御部211は、図2(a)のステップ301〜ステップ304に示すように、メモリ202sに設けられた通信領域に関する診断処理をメモリ202sの他の部分に関する診断処理から分離して最後に実行する。
【0026】
これにより、プロセッサ201s、インタフェース部203sおよび通信領域以外のメモリ202sに関する診断処理の過程において、上述した通信領域を維持することができる。
また、図1に示した通信監視部212は、このようにして通信領域が維持されている期間に渡ってこの通信領域を監視し、運用状態となっている装置210aの運用状態の変化にかかわる情報(後述する)がこの通信領域に書き込まれたことを検出したときに、診断制御部211にその旨を割り込み通知する。
【0027】
一方、図1に運用状態の装置として示した装置210aにおいて、稼働情報収集部213は、例えば、プロセッサ201aの使用率などのように、装置の稼働状態の良否を反映する指標となる情報を収集する。稼働情報の収集対象の装置が、呼処理プロセッサなどのように、通信制御にかかわる処理を行う装置である場合は、上述した稼働情報として、その装置で扱われる呼量を収集することも有効である。
【0028】
このようにして収集された稼働情報に基づいて、図1に示した危険予測部214は、稼働状態が悪い方に変化する可能性を示す危険度を予測し、この危険度が所定の閾値を超えたときに、メモリ202aに設けられた通信領域を介して、運用状態の装置210aが非運用状態に移行する危険性が高くなっていることを、冗長構成の他方の装置210sに通知する。即ち、運用状態の変化にかかわる情報を装置210sの通信領域に書き込む。
【0029】
このようにして運用状態の装置210aが非運用状態に移行する危険性が高くなっていることを示す障害予測通知が診断中の装置210sに通知されたときに、図1に示した通信監視部212からの割込み通知に応じて、図2(b)に示した割込み処理が開始される。
このとき、診断制御部211は、図2(a)に示した診断手順の進捗にかかわらず、即座に診断処理を中止し、装置210sに関するリセット処理など、この装置210sを待機状態に移行させるために必要な処理を行って、装置210sを待機状態に移行させ、処理を終了する。
【0030】
このように構成された予備系装置診断制御システムでは、例えば、図3に示すように、保守センタからの指示に応じて、予備系装置において診断が開始され、通信領域以外のメモリの部分的な診断まで進んだ段階、つまり、診断の中途段階で、運用系装置から通知された障害予測通知に応じて、診断を中止し、予備系装置を待機状態に復帰させることができる。
【0031】
このようにして、運用系装置における障害の発生が予測されるときに、予備系装置を診断中から待機状態に復帰させることにより、運用系装置において、予測された障害が発生し、運用系装置が非運用状態となったときに、即座に、予備系装置を運用状態に切り替えることができる。これにより、冗長構成を維持しつつ、予備系装置の診断処理を行うことができるので、システム全体の運用の継続をより確かに保証することが可能となる。
【0032】
また、診断開始に応じて、上述した通信領域を利用して、予備系装置から運用系装置に診断開始を通知し(図3参照)、これに応じて、運用系装置に備えられた稼働情報収集部213および危険予測部214がそれぞれ稼働情報の収集処理および危険度の予測処理を行うことも可能である。
このように、稼働情報収集部213および危険予測部214による処理が行われる期間を、冗長構成の他方が診断中である期間に限定することにより、冗長構成の他方が待機状態であるときには、運用系装置(例えば、装置210aのプロセッサ201aをシステムの運用にかかわる処理に専念させることができる。
【0033】
また、図2(a)に示したステップ304までの全ての診断処理が終了した後は、従来の装置診断と同様に、異常が検出されたか否かが判定され(ステップ305)、異常が検出されなければ、装置210sを待機状態に移行させる処理が行われる(ステップ306)。一方、ステップ301〜ステップ304の診断処理において何らかの異常が検出された場合は(ステップ305の肯定判定)、異常を検出した旨の診断結果が保守センタに通知されるとともに、装置210sを障害状態に移行させる処理が行われる(ステップ307)。
(第2の実施形態)
図4に、本発明にかかわる予備系装置診断制御システムの第2の実施形態を示す。
【0034】
図4に示した装置A0、A1、装置B0、B1からなる冗長構成システムでは、運用系の装置A0と装置B0および予備系の装置A1と装置B1を互いに接続する通信経路に加えて、予備系の装置A1と運用系の装置B0とを接続する通信経路と、予備系の装置B1と運用系の装置A0とを接続する通信経路とが設定されている。
このような冗長構成システムにおいて、予備系の装置A1に関する診断処理では、図5に示すように、この予備系の装置A1単体に関する単体診断に加えて(ステップ321)、予備系の装置A1について設定された全ての通信経路、即ち、2つの装置B0、B1に対応して設定された通信経路を介する信号送受信に関するインタフェース診断が行われ(ステップ322)、これらの診断結果が、例えば、保守センタなどに配置された保守管理制御部220に備えられた診断結果管理部221によって収集される。
【0035】
図4に示した保守管理制御部220において、診断結果解析部222は、上述したようにして収集された診断結果に基づいて、障害あるいは障害を疑わせる異常が検出されたか否かを判定し(図5のステップ323)、何らかの異常が検出された場合には、検出された異常の原因を特定する処理を行う。
例えば、図6に示すように、予備系の装置A1において診断処理が行われ、単体診断および予備系の装置B1との間のインタフェース診断に次いで行われた運用系の装置B0との間のインタフェース診断において異常が検出された段階では、このインタフェース診断において検出された異常の原因を特定することはできない(図5のステップ324の否定判定)。
【0036】
なぜなら、この段階では、運用系の装置B0についての診断処理が行われていないため、検出された異常が、この運用系の装置B0と予備系の装置A1との間の通信にかかわる機能の異常によって発生しているのか、運用系の装置B0と予備系の装置A1とを接続する通信経路そのものの異常であるのかを峻別することができないからである。
上述した場合のように、単一の装置に関する診断のみでは障害の原因が特定できないとされた場合に、図4に示した保守管理制御部220に備えられたシステム診断制御部223は、診断結果解析部222からの通知に応じて、異常にかかわっている被疑装置(図6に示した例では、運用系の装置B0)に関する診断処理を開始する。
【0037】
システム診断制御部223は、まず、被疑装置(運用系の装置B0)とこの被疑装置に対応して冗長構成をなす他方の装置(予備系の装置B1)との運用/待機状態を切り替えて、被疑装置を待機状態にする。図6においては、保守センタからの切り替え指示に応じて、予備系の装置B1が運用状態に切り替えられ、これに応じて、運用系の装置B0が待機状態に切り替えられる例を示している。
【0038】
このようにして被疑装置を待機状態に切り替えた後に、保守センタからこの被疑装置に診断指示を送ることにより、この被疑装置単体に関する診断が行われる(図5のステップ325)。
図6に示すように、被疑装置に関する単体診断によって異常が検出された場合に(図5のステップ326の肯定判定)、この診断結果は、診断結果管理部221を介して診断結果解析部222に渡されてそれまでに収集された診断結果とあわせて解析され、これにより、被疑装置に障害の原因がある旨の解析結果が得られる(図5のステップ327)。
【0039】
一方、被疑装置に関する単体診断によっては異常が検出されなかった場合に(図5のステップ326の否定判定)、続いて、この被疑装置について設定された通信経路、つまり、診断中の装置B0と2つの装置A0、A1との間にそれぞれ設定された通信経路に関する通信診断処理が行われる(図5のステップ328)。この診断処理の結果、障害の原因として疑われている被疑通信経路(つまり、装置B0と装置A1との間の通信経路)を経由した信号送受信が正常に完了しないことが確認され、これに基づいて、この被疑通信経路の障害が確定される(ステップ329)。なお、このとき、被疑通信経路についてのみ通信診断処理を行うこともできる。
【0040】
その後、特定された障害個所(例えば、装置B0あるいは装置B0と装置A1との間の通信経路)がシステムから切り離されるとともに、アラーム処理が行われた後(ステップ330)、診断処理が終了する。
このように、個々の装置に関する診断によっては障害個所が特定できなかった場合に、診断において検出された疑わしい装置あるいは通信経路に関する診断を行うことにより、例えば、運用系の装置B0と予備系の装置A1とを結ぶ通信経路の異常のように、運用系の装置A0に障害が発生して予備系の装置A1に切り替わったときに初めて顕在化するような潜在的な障害を漏れなく検出することができる。
【0041】
このような潜在的な障害は、システムを構成する装置単位で冗長化された構成に特有な障害であり、上述したように、システムの冗長構成を利用して、運用状態の被疑装置を待機状態に切り替えた上で診断処理を行うことによって初めて障害個所を特定することができる。
また、このような潜在的な障害の検出に応じて、例えば、障害個所として特定された通信経路を形成するケーブルの取替え作業などの保守点検作業を行うことにより、障害の顕在化を未然に防ぎ、システム全体の運用継続を更に確実に保証することができる。
【0042】
以上の説明に関して、更に、以下の各項を開示する。
(付記1)運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断方法において、
前記書き込みを受付可能な状態に前記記憶領域を維持した状態で前記他の機能にかかわる診断手順を実行し、
前記切り替えにかかわる情報が前記記憶領域に書き込まれた場合に、該予備系装置が、該記憶領域に書き込まれた該切り替えにかかわる情報を検出して、前記診断手順を中断し、該予備系装置を待機状態に復帰させる処理を行う、
ことを特徴とする予備系装置診断方法。
【0043】
(付記2)付記1に記載の予備系装置診断方法において、
運用系装置において障害が発生することが予測される旨の情報が前記記憶領域に書き込まれたときに、前記切替にかかわる情報の書き込みとして検出する
ことを特徴とする予備系装置診断方法。
(付記3)運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断制御システムにおいて、
前記切替に関わる情報の書き込みを受付可能な状態に前記記憶領域を維持した状態で前記診断対象の予備系装置に備えられた各機能部分に関する診断処理を実行する機能診断手段と、
前記機能診断手段による診断処理過程に渡って前記記憶領域を監視し、前記切替にかかわる情報が前記記憶領域に書き込まれたときに、前記機能診断手段による診断処理を中断して、前記予備系装置を待機状態に復帰させる中断制御手段と
を備えたことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
【0044】
(付記4)付記3に記載の予備系装置診断制御システムにおいて、
運用系装置において障害が発生する危険度を推定する危険度推定手段と、
前記危険度が所定の閾値を超えたときに、その旨を示す予測情報を予備系装置の記憶領域に書き込む予測結果通知手段とを備え、
中断制御手段は、前記予測情報を前記運用系装置の運用状態の切り替えにかかわる情報として検出する検出手段を備えた
ことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
【0045】
(付記5)付記4に記載の予備系装置診断制御システムにおいて、
危険度推定手段は、運用系装置に備えられたプロセッサの使用率に基づいて、運用系装置に障害が発生する危険度を推定する第1の推定手段を備えた
ことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
(付記6)付記4に記載の予備系装置診断制御システムにおいて、
危険度推定手段は、運用系装置が呼処理にかかわる装置である場合に、運用系装置で扱われる呼量に基づいて、運用系装置に障害が発生する危険度を推定する第2の推定手段を備えた
ことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
【0046】
(付記7)付記4に記載の予備系装置診断制御システムにおいて、
危険度推定手段は、運用系装置において検出される異常に関する統計情報に基づいて、運用系装置に障害が発生する危険度を推定する第3の推定手段を備えた
ことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
(付記8)予備系装置が運用状態に切り替わったときに連携動作する関連装置と前記予備系装置との間の通信経路の診断を含めて該予備系装置を診断する予備系装置診断方法において、
前記予備系装置について装置単体の機能にかかわる単体診断処理を行い、
前記予備系装置と関連する装置との間に設定された通信経路にかかわるインタフェース診断処理を行い、
単体診断処理およびインタフェース診断処理によって得られた診断結果に基づいて、異常個所を特定する解析処理を行う際に、
インタフェース診断処理によって、予備系装置と運用状態の関連装置のいずれかとの間のインタフェースに異常が検出されたときに、インタフェースの異常にかかわる運用状態の関連装置を待機状態に切り替え、
前記待機状態とされた関連装置について、単体診断処理の実行を指示し、
前記指示に応じて実行された単体診断処理で得られる診断結果に基づいて障害個所を特定する
ことを特徴とする予備系装置診断方法。
【0047】
(付記9)予備系装置が運用状態に切り替わったときに連携動作する関連装置と前記予備系装置との間の通信経路の診断を含めて該予備系装置を診断する予備系装置診断制御システムにおいて、
該予備系装置について装置単体の機能にかかわる診断処理を行う単体診断手段と、
前記予備系装置と関連する装置との間に設定された通信経路にかかわる診断処理を行うインタフェース診断手段と、
前記単体診断手段および前記インタフェース診断手段によって得られた診断結果に基づいて、異常個所を特定する解析手段とを備え、
前記解析手段は、
前記インタフェース診断手段によって、前記予備系装置と運用状態の関連装置のいずれかとの間のインタフェースに異常が検出されたときに、前記インタフェースの異常にかかわる運用状態の関連装置を待機状態に切り替える運用制御手段と、
前記待機状態とされた関連装置について、前記単体診断手段に対して装置単体の機能にかかわる診断処理の実行を指示する診断制御手段と、
前記指示に応じて、前記単体診断手段が得る診断結果に基づいて障害個所を特定する障害特定手段とを備えた
ことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上に説明したように、本発明にかかわる予備系装置診断方法および予備系装置診断制御システムは、冗長構成システムにおいて待機状態となっている予備系装置の位置付けに即した診断を行うことができ、冗長構成システムにおける特有の要求である診断中の運用状態の切り替えや、潜在的な障害個所の特定を可能とすることができる。
これにより、冗長構成システムの診断にかかわる課題を解決し、冗長構成システム全体の運用状態の維持を図り、個々の装置およびシステム全体の稼働時間を確保することができるので、装置単位の冗長構成が採用されるさまざまな情報処理装置においてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかわる第1の予備系装置診断制御システムの実施形態を示す図である。
【図2】予備系診断動作を表す流れ図である。
【図3】予備系装置診断動作を説明するシーケンス図である。
【図4】本発明にかかわる第2の予備系装置診断制御システムの実施形態を示す図である。
【図5】診断制御動作を表す流れ図である。
【図6】診断制御動作を説明するシーケンス図である。
【図7】無線ネットワーク制御装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
210a、210s 装置
201a,201s プロセッサ
202a,202s メモリ
203a,203s インタフェース(I/F)部
211 診断制御部
212 通信監視部
213 稼働情報収集部
214 危険予測部
220 保守管理制御部
221 診断結果管理部
222 診断結果解析部
223 システム診断制御部
401,401 呼処理プロセッサ
402,402 信号処理ユニット
403,403 スイッチ制御ユニット
404,404 無線ネットワーク制御装置共通(RCOM)ユニット
405,405 クロック制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断方法において、
前記書き込みを受付可能な状態に前記記憶領域を維持した状態で前記他の機能にかかわる診断手順を実行し、
前記切り替えにかかわる情報が前記記憶領域に書き込まれた場合に、該予備系装置が、該記憶領域に書き込まれた該切り替えにかかわる情報を検出して、前記診断手順を中断し、該予備系装置を待機状態に復帰させる処理を行う、
ことを特徴とする予備系装置診断方法。
【請求項2】
運用系装置により予備から運用への切替に関わる情報が書き込まれる記憶領域を備えた予備系装置について、該予備系装置が待機状態にある際に該予備系装置の診断を行う予備系装置診断制御システムにおいて、
前記切替に関わる情報の書き込みを受付可能な状態に前記記憶領域を維持した状態で前記診断対象の予備系装置に備えられた各機能部分に関する診断処理を実行する機能診断手段と、
前記機能診断手段による診断処理過程に渡って前記記憶領域を監視し、前記切替にかかわる情報が前記記憶領域に書き込まれたときに、前記機能診断手段による診断処理を中断して、前記予備系装置を待機状態に復帰させる中断制御手段と
を備えたことを特徴とする予備系装置診断制御システム。
【請求項3】
予備系装置が運用状態に切り替わったときに連携動作する関連装置と前記予備系装置との間の通信経路の診断を含めて該予備系装置を診断する予備系装置診断制御システムにおいて、
該予備系装置について装置単体の機能にかかわる診断処理を行う単体診断手段と、
前記予備系装置と関連する装置との間に設定された通信経路にかかわる診断処理を行うインタフェース診断手段と、
前記単体診断手段および前記インタフェース診断手段によって得られた診断結果に基づいて、異常個所を特定する解析手段とを備え、
前記解析手段は、
前記インタフェース診断手段によって、前記予備系装置と運用状態の関連装置のいずれかとの間のインタフェースに異常が検出されたときに、前記インタフェースの異常にかかわる運用状態の関連装置を待機状態に切り替える運用制御手段と、
前記待機状態とされた関連装置について、前記単体診断手段に対して装置単体の機能にかかわる診断処理の実行を指示する診断制御手段と、
前記指示に応じて、前記単体診断手段が得る診断結果に基づいて障害個所を特定する障害特定手段とを備えた
ことを特徴とする予備系装置診断制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−217108(P2008−217108A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49991(P2007−49991)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】