二次チャネル統計に基づく、チャネルフィードバックの適応圧縮
チャネル状態フィードバックの量を削減する可変レートベクトル量子化方法である。通信チャネルの複数のチャネル係数が決定され、複数のチャネルタップの二次統計値(例えば分散)が算出される。複数のチャネルタップに対するビット割り当てが、係数統計値に基づいて決定される。ビット割り当てに基づいて決定されたレートで、複数のチャネルタップが個別に量子化される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は概して移動体通信網におけるチャネル状態フィードバックの伝送に関し、特にはチャネル状態フィードバックを適応的な方法で圧縮するための方法及び装置に関する。
【0002】
無線通信システムにおける送信機及び/又は受信機での複数アンテナの利用は、潜在的にカバー範囲及びデータレートの両方を改善するため、過去10年の間大きな注目を集めてきた。シングルアンテナシステムではチャネル状態情報があまり容量を改善しないが、マルチアンテナシステムでは送信機が正確なチャネル状態情報を利用可能な場合に容量の大幅な増加が実現できる。周波数分割多重(FDD)システムにおいて、受信機はチャネル状態情報を送信機にフィードバックするのが通常である。フィードバックチャネルの容量制限と往復遅延により、送信機での完璧なチャネル状態情報を仮定するのは非現実的ではあるが、チャネルの知見が部分的でも送信機にあれば、チャネル状態情報を考慮しないシステムに対して大幅な容量の増加を実現できることがわかっている。しかし、詳細なチャネル状態情報のフィードバックはリバースリンクの貴重な帯域を消費する。従って、リバースリンクの容量に深刻な不利益をもたらさずにチャネル状態情報の量を削減する効率的な方法を考案することには大きな関心が寄せられている。
【0003】
チャネル状態フィードバックについての1つのアプローチは、チャネル状態情報のフィードバック削減に非構造化ブロック又はベクトル量子化器(VQ)を用いることである。理論上、非構造化VQは達成可能な最適な圧縮を実現可能であるが、非構造化VQの複雑さは、次元ー速度(dimension-rate)積とともに指数関数的に増加する。例えば、4つの送信アンテナと2つの受信アンテナを用いるMIMOシステムにおいて、文献で提案されている非構造化VQの次元は4*2*2(各チャネルタップ係数の実部及び虚部)=16となりうる。合理的な精度を達成する量子化解像度(又はソース符号化レート)に対し、多次元の非構造化VQが必要とする記憶容量及び計算能力は、実際には法外に高くなりうる。
【0004】
非構造化VQを用いることによる、計算の複雑さとは別な問題は、様々なチャネル統計への適合性のなさである。チャネル状態フィードバックを圧縮するために提案されている量子化技術のほとんどは、MIMOチャネルタップが空間的次元(spatial dimensions)に亘って独立同分布(IID)であると仮定している。しかし、実際には、MIMOチャネルの統計分布は空間的にも周波数的にも高い相関を有することが多い。IID仮定に基づいて設計されたVQは、無線環境において典型的に見られる広範なチャネル状態に亘って所望の性能を提供することができないかもしれない。一方、合理的な量子化精度を維持しながら、チャネルタップが取りうる全ての分布を考慮して非構造化VQを設計することは非現実的である。
【0005】
従って、合理的な精度と複雑さを維持しつつ、チャネルタップの様々な分布に対して適応可能な、チャネル状態フィードバックの圧縮方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、適応ベクトル量子化器を用いて詳細なチャネル情報をフィードバックするための方法及び装置に関する。方法及び装置は、空間的に相関性のあるMIMOチャネルの瞬時応答のフィードバックの圧縮に、二次チャネル統計(例えば分散)を用いる。異なる解像度(又はレート)を有する複数の低次元ベクトル量子化器(VQ)が、様々な複素数チャネルタップ係数を量子化する。個々のVQの解像度は、対応するチャネルタップの分散に基づいて適応的に選択される。様々な有意性(significance)でチャネルタップに対して様々な量子化解像度を用いることより、量子化点の分布を、特定のチャネル統計値について設計された最適な非構造化VQの量子化点の分布に似せることができ、計算及び記憶の複雑さを大幅に低減しながら最適に近い性能を得ることができる。
【0007】
ある例示的な実施形態において、瞬時チャネル応答の圧縮されたフィードバックとチャネル統計値の両方が送信機にフィードバックされる。瞬時チャネル応答の圧縮されたフィードバックは、高速フィードバックチャネル上でフィードバックされる。チャネル統計値は、高速フィードバックチャネルよりもずっと低い頻度で受信機から情報を返送する低速フィードバックチャネル上で送信機にフィードバックされる。ノイズスペクトルが周波数スペクトルに亘って比較的平坦な場合に有用な別の実施形態において、必要なチャネル統計値の全て又は一部が、フォワード及びリバースチャネルのチャネル統計値が同様(reciprocal)であるとの仮定に基づき、送信機で直接算出されてよい。
一部の実施形態において、チャネルタップはチャネル推定値を量子化する前に異なる領域(domain)に変換されてよい。例えば、MIMO-OFDMシステムに好適な実施形態において、周波数領域で推定されたチャネル応答を、時間領域チャネルタップに変換してもよい。所定の遅延拡散内に存在する時間領域チャネルタップが選択され、さらに空間領域を通じて”固有(eigen)”領域に変換される。得られた変換後の係数は、変換後の係数の分散に従って適応的に算出された様々なレート(又は解像度)の量子化器を用いて個別に量子化される。
【0008】
チャネル状態フィードバックは、対応するレート(又は解像度)の量子化コードブックを用いて送信機で復号され、変換後の係数、すなわち量子化された変換後の係数の推定値が得られる。各量子化器のレート又は解像度は、対応する変換後の係数の相対分散に基づいて、受信機で行われるのと同様な方法で算出される。続いて、量子化された変換後の係数に対して逆変換を適用し、周波数領域チャネル応答の量子化版を取得する。このチャネル情報に基づいて、各周波数における最適なプレ符号化器、プレストリーム符号化レート、及び/又はチャネル品質表示(CQI)を、送信機で算出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的な通信システムを示す図。
【図2】適応フィードバック手法を用いる例示的な通信システムを示す図。
【図3】適応フィードバック手法を用いる例示的な通信システムを示す図。
【図4】一実施形態に従ってチャネル品質フィードバックを符号化する例示的な方法を示す図。
【図5】一実施形態に従ってチャネル品質フィードバックを復号する例示的な方法を示す図。
【図6】OFDMシステム用の例示的なフィードバック符号化器を示す図。
【図7】OFDMシステム用の例示的なフィードバック復号器を示す図。
【図8】図6に示すOFDMフィードバック符号化器のための例示的な変換プロセッサを示す図。
【図9】図7に示すOFDMフィードバック復号器のための例示的な変換プロセッサを示す図。
【図10】本発明に係るMIMOシステムの性能を示す図。
【図11】図6及び図7に示す適応フィードバック手法の性能を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、図1に示すマルチアンテナ通信システム10に関して本発明の例示的な実施形態を説明する。マルチアンテナ通信システム10は、例えば多入力単出力(MISO)システム又は多入力多出力(MIMO)システムを含んでよい。しかし、本技術分野に属する当業者は、開示される実施形態によって示される原理を、他のタイプの通信システムにも適用可能であることを理解するであろう。
【0011】
マルチアンテナ通信システム10は、通信チャネル14上で信号を第2ステーション16に送信する第1ステーション12を有する。本明細書において第1ステーション12を送信局、第2のステーション16を受信局と呼ぶ。第1ステーション12及び第2ステーション16がそれぞれ双方向通信のために送信機と受信機の両方を含みうることは、本技術分野に属する当業者が理解するところであろう。送信局12から受信局16へのリンクをダウンリンクと呼ぶ。受信局16から送信局12へのリンクをアップリンクと呼ぶ。ある例示的な実施形態において、送信局12は無線通信網における基地局であり、受信局16は移動機である。本発明は例えば、基地局12から移動機16へ、WCDMAシステムにおける高速ダウンリンクパケットアクセス(HSPDA)チャネル上でデータを送信するために用いることができる。
【0012】
送信局12は複数のアンテナから受信局16へ信号を送信する。受信局16は1つ以上の受信アンテナを含んでよい。送信局12及び送信局16の両方で1つのアンテナを用いるシングルアンテナ通信システムとは対照的に、送信局から受信局16へのチャネル14についてのチャネル応答の詳細な知見を送信局12が有するならば、システム容量を増加させることが可能である。受信局16は、送信局12から受信局16へのチャネル14の推定値を算出し、フィードバックチャネル18上でチャネル状態フィードバックを送信局12へ送信する。しかし、受信局16から送信局12への詳細なチャネル情報のフィードバックは、ユーザデータを搬送するために利用可能なリバースリンク上の貴重な帯域を消費する。マルチアンテナシステムにおいて、チャネル情報フィードバックの量は、送信及び受信アンテナ対の数に伴って急激に増加する。
【0013】
図2は、送信局12における例示的な送信機100と受信局16における例示的な受信機200を示す。受信機200は、チャネル情報フィードバックを削減するためにベクトル量子化技術を用いる。明確化のため、通信システム10が送信局12において複数のアンテナを用い、受信局16において1つのアンテナを用いるものとする。本明細書で説明する原理は、受信局16で複数のアンテナを用いる構成に容易に拡張可能である。
【0014】
送信局12(例えば基地局)は、送信信号プロセッサ102で生成された送信信号{xm(t)}Mm=1を、受信局16(例えば移動機)に送信する。Mのダウンリンクチャネルが存在する(各送信アンテナから1つずつ)。送信局12から受信局16へのダウンリンクチャネルは、時間領域においてgm(t)、周波数領域においてGm(f)のチャネル応答を有する、線形時間不変チャネル(linear time invariant channel)であると仮定されている。受信局16で受信されるベースバンド信号r(t)は、以下の式1で与えられる。
【数1】
ここで、*は畳み込みを表し、v(t)はベースバンドノイズを表す。m番目のダウンリンクチャネルは以下の式2によりモデル化されてよい。
【数2】
ここで、am,kはm番目のアンテナからのチャネルのチャネル係数、τkは遅延である。受信局16におけるチャネル推定器204は、m番目のダウンリンクチャネルの推定値を以下の式3に従って生成する。
【数3】
ここで、m=1, ..., M、Tsは遅延τkの量子化に用いられるサンプリング間隔である。ここで、式3におけるQは式2におけるKと同じでなくてもよいことに留意されたい。チャネル推定値{^gm(t)}Mm=1は、受信したベースバンド信号r(t)を復調するために受信信号プロセッサ202へ供給される。さらに、チャネル推定値{^gm(t)}Mm=1は、フィードバック符号化器206に入力される。フィードバック符号化器206はチャネル推定器204からチャネル推定値{^gm(t)}Mm=1を受信し、{^gm(t)}Mm=1におけるチャネル係数を量子化し、量子化されたチャネル係数を送信局12へフィードバックする。
【0015】
1つの送信アンテナからのダウンリンクチャネルに対する推定チャネル応答^gm(t)は、例えば以下の式4に示すように、Qの非ゼロタップ係数を有する離散時間型有限インパルス応答フィルタと概念的に関連付けることができる。
【数4】
ここで、m=1, ..., Mである。従って、{^gm(t)}Mm=1を送信局12に通信する問題は、{^gm[n]}Mm=1を通信する問題と等価である。
【0016】
図2に示す実施形態は、重要性の高いチャネルタップには多くのビット数を割り当て、重要性の低いチャネルタップには少ないビット数を割り当てる適応的量子化技術を用いる。ビット割り当ては、得られる量子化チャネル応答の予め定められた歪み指標が、利用可能な総ビット数に対して最小化されるように、チャネルタップの相対電力又は分散のようなチャネルタップの長期統計値(long term stastics)に基づいて適応的に算出される。2つの論理フィードバックチャネルが用いられる:ビット割り当てのフィードバックに用いられる低レートフィードバックチャネル18a(低速フィードバックチャネル)と、量子化されたチャネルタップ係数のフィードバックに用いられる高レートフィードバックチャネル18b(高速フィードバックチャネル)である。本実施形態において、チャネル統計値(例えばチャネルタップの分散)は、量子化の前に収集される。各チャネルタップの量子化に割り当てられるビット数に関する情報は、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12に周期的に返送される。特定のチャネル具現化(realization)の推定値の(現在のビット割り当てに従った)量子化版に関する情報は、高速フィードバックチャネル18bを通じて周期的に返送される。
【0017】
フィードバック符号化器206は複数のマルチレート又は可変レートベクトル量子化器212と、メトリック計算器214と、レートコントローラ216とを含んでいる。可変レートベクトル量子化器212の各々は、各チャネル14についてのチャネル係数を量子化する。各量子化器212のレート又は解像度は、対応するチャネルタップの統計値に基づいて個々に選択される。メトリック計算器214は、各チャネル14の各チャネルタップについて、分散などの統計値を算出し、チャネルタップ統計値をレートコントローラ216へ供給する。本実施形態では、量子化に先立ってチャネル統計値が算出される。レートコントローラ216は各量子化器212に割り当てるビット数を決定する。ある量子化器212に割り当てられるビット数は、その量子化器のレート又は解像度に等しい。量子化されたチャネル係数は高速フィードバックチャネル18b上で送信局12へ送信される。レートコントローラ216によって決定されたビット割り当ては、低速フィードバックチャネル18a上で送信局12へフィードバックされる。あるいは、レートコントローラ216はメトリック計算器214からのチャネル統計値をフィードバックし、このチャネル統計値から送信局12でビット割り当てを計算してもよい。
【0018】
送信局12のフィードバック復号器104は、複数の量子化復号器110と、レートコントローラ112を有している。量子化復号器110は、高速フィードバックチャネル18b上で受信された受信ビットに基づいて、量子化されたチャネル係数の推定値を生成する。復号レート又は解像度は、受信局16のレートコントローラ216からのビット割り当てのフィードバックに基づいてレートコントローラ112が決定する。あるいは、受信局16のレートコントローラ216がメトリック計算器214からの統計値をフィードバックし、対応するビット割り当てを送信局12のレートコントローラ112が計算してもよい。
【0019】
図3は、低速フィードバックチャネル18aを省いた実施形態を示している。図2及び図3において、同一の構成要素には同一の参照数字を付してある。図3に示す実施形態において、送信局12は、ダウリンクチャネルについての統計値と同一であると仮定されているアップリンクチャネルのチャネル統計値を算出し、チャネル統計値からビット割り当てを決定する。この場合、送信局12と受信局16とで同一の統計値を生成できるよう、チャネル統計値は量子化後に収集される。本技術分野に属する当業者は、現在のレート制御期間におけるビット割り当ての算出に用いられたメトリックが、次のレート制御期間におけるビット割り当ての決定に利用されることを理解するであろう。メトリック計算器214は、量子化されたチャネル係数に基づいて各チャネルタップについての統計値(例えば分散)を算出する。分散又は他の統計値はレートコントローラ216に供給され、レートコントローラ216は可変レートベクトル量子化器212に対するビット割り当てを決定する。送信局12のフィードバック復号器104は量子化されたチャネル係数を受信する。メトリック計算器214は、現在のレート制御期間に受信された量子化されたチャネル係数を用いて、次のレート制御期間におけるビット割り当てを算出する。量子化復号器は、過去のレート制御期間で算出されたビット割り当てを用いて、量子化されたチャネル係数の推定値を求める。
【0020】
図2及び図3に示す実施形態において、Qのチャネルタップに対するビット割り当ては、推定されたチャネル応答とその量子化版の平均二乗誤差が最小となるよう、以下のように算出してよい。推定されたチャネルタップ^am,kの実部と虚部をそれぞれ^aRm,k及び^aIm,kと表し、k番目のベクトルチャネルタップを
【数5】
と表す。また、^akの量子化に用いられるNkの量子化点を有する次元2Mのベクトル量子化器212をQk(・)と表す。Qk(・)のソース符号化レートは、Rk=(2M)-1log2Nkで定義され、これは^akの各(実数)要素を量子化するために割り当てられるビット数を表す。目的は、以下の式5で与えられる、全チャネルタップの平均二乗歪みの合計を最小化する最適なビット割り当てベクトルR=(R1, R2,..., RQ)を見つけることである。
【数6】
あるチャネルタップに対する歪みD(Rk)は以下の式6で与えられる。
【数7】
【0021】
歪みD(Rk)がRkの高度に非線形な関数であるため、上述の最適化問題を正確に解くのは困難である。しかし、式7で与えられる、D(Rk)についてのBennett-Zador-Gersho漸近式を用いて、良好な近似解を得ることができる。
【数8】
ここで、k=1, 2,..., Qであり、σ2kはベクトルチャネルタップ^akの分散、γkは^akの同時確率密度pk(・)と量子化器Qk(・)の設計特性の一部に依存する量である。式7を式5に代入することにより、D(R)を最小化する最適ベクトルRの成分が以下のように明らかになる。
【数9】
ここで、k=1, 2,..., Qである。また、項
【数10】
は、ベクトルチャネルタップに割り当てられたビットの平均数を表す。
【0022】
{^ak}の要素がそれらの分散(例えば、一部の正規化密度関数(normalized density function)p(x)について、全てのkについてのpk(x)=σ-2Mkp(x/σk))を除き、全てのkについて一様に分布しており、全てのkについて量子化器{Qk(・)}が同一の設計特性を有するものとすると、{γk}は全てのkについて同一である。この場合、式8は式9のように単純化できる。
【数11】
ここで、k=1, 2,..., Qである。
【0023】
分散に応じた異なるレートでチャネルタップ係数を量子化するため、受信局16及び送信局12は、様々なソース符号化レートの複数の量子化器の複数の符号化器206及び複数の復号器104をそれぞれ格納する必要がある。式9を用いて算出されるレートが利用可能なレートと完全には一致しないかもしれないので、レート{Rk}を算出する際には所定の丸め演算を実行することができる。丸め後の全体的なレートがフィードバックチャネル18の容量を超えないことを確実にするため、複数のチャネルタップに対する複数のレートを順次以下のように算出することができる。
【数12】
ここで、k=1, 2,...,Qであり、^RjはRjを丸めた近似値を表す。j=1, 2,..., k-1の全てにおいて^Rj=Rjであれば、式9と式10で算出されるRkは等しくなるであろう。良好な性能を保証するため、主要なチャネルタップには十分なビット数が保証されるよう、対応するチャネルタップ分散の降順でレートを算出することが好ましい。
【0024】
式8及び式9に従ったビット割り当ての算出は、各チャネルタップの標準偏差σkと全チャネルタップの標準偏差の幾何平均の比に基づく本発明の例示的な一実施形態を表す。本発明の他のバリエーションは、以下の式11に従って、チャネルタップの分散の関数の算術平均に基づいてビット割り当てを算出することを含む。
【数13】
ここで、k=1, 2,..., Qであり、{fj(・)}Qj=1は単調増加関数の組を表す。例えば、fk(x)=log(γkx)/2のとき、式11は式8と等しい。あるいは、全てのkについてfk(x)=√xのとき、平均標準偏差に関する各チャネルタップの標準偏差σkの相対的な大きさに基づいてビット割り当てが算出される。
【0025】
より一般的には、sがチャネル応答に関するある長期統計値を表すとすると(例えば好ましい実施形態ではs=(σ21, σ22,..., σ2Q))、異なるチャネルタップに対するビット割り当ての算出は以下のように表すことができる。
【数14】
ここで、k=1, 2,..., Qであり、Δk(・)はk番目のチャネルタップに対して設計されたあるビット割り当て関数を表す。式12は式13に従って順次算出可能である。
【数15】
ここで、k=1, 2,...,Qであり、^RjはRjを丸めた近似値を表す。
【0026】
上述の通り、本発明を実施するには、測定された統計値に従って様々なレベルの量子化を提供できるように、送信局12と受信局16が様々なレート及び歪みレベルを有する複数の符号化器及び復号器を実装しなければならない。あるいは、様々なレベルの量子化を提供する1つのツリー構造のベクトル量子化器(TSVQ)を用いてもよい。TSVQ用の符号化器は、深さd-1の超平面(hyperplane)の平衡符号化ツリーを格納する。すなわち、ビットシーケンスb∈{0, 1}d-1でインデックスされるツリーの各ノードが、多次元超平面及び閾値ηbの法線(列)ベクトルPbに対応する。例えば、ツリーの深さはd=2MQRと選択することができる。(推定された)ベクトルチャネルタップ^akとすると、符号化処理は、対応する超平面(p,η)を有するツリーのルートノードから始まり、
【数16】
を算出する。ここで、q1(x)はx>0のとき1、x≦0のとき1を出力する1ビットスカラ量子化器を表す。次のレベルで、符号化器206は
【数17】
を、b[1]の値に対応する超平面pb[1], ηb[1]を用いて算出する。符号化器206はこの処理を引き続くレベルにおいて繰り返し、以下の算出を行う。
【数18】
ここで、b=(b[1], b[2],..., b[n-1])であり、算出はnが^akの量子化に割り当てられたビット数Rkになるまで繰り返される。この時点で、符号化器206はベクトルチャネルタップ^akに対するRkビットシーケンス(b[1], b[2],..., b[Rk])を出力する。
【0027】
符号化されたビットシーケンス(b[1], b[2],..., b[Rk])を受信すると、TSVQの復号器104は、各レベルのノードが対応するレベルの量子化を用いて量子化されたチャネルタップを格納した深さdの符号化ツリーに基づいて、量子化されたチャネルタップ^akを生成する。各レベルで用いられる超平面は前のレベルで算出された出力ビットに依存する。加えて、(対応する、量子化されたベクトルの復号ツリーとともに)TSVQで用いられる超平面は、^akの統計的分布と合致するように設計されている。
【0028】
現実的な通信システムにおいて、チャネルタップのフィードバック時刻による変化は緩やかでありうる。そのため、チャネルタップの差分量子化(differential quantization)を用いることができる。この場合、本明細書で説明した原理は、時刻によるチャネルタップの変化を量子化するための任意の差分量子化手法とともに動作可能である。
【0029】
本発明の原理は、直交周波数分割多重(OFDM)システムに適用可能である。OFDMシステムにおいて、周波数領域ベースバンド受信信号は、以下のようにモデル化されてよい。
【数19】
ここで、k=1, 2,...,Nであり、Hf[k]はMIMOチャネル応答を表すnR×nTの行列、r[k]は受信信号、s[k]は送信チャネル、w[k]は、nTの送信アンテナとnRの受信アンテナを有するOFDM無線通信システムにおけるk番目のサブキャリア周波数でのノイズ及び干渉(noise-plus-interference)成分である。ノイズ成分w[k]は統計的には周波数と独立しているものと仮定しているが、Rw[k]≡E{w[k]w[k]H}で表される共分散行列は周波数に応じて変化しうる。ここで、E{・}は括弧内の量の予期される値を示している。
【0030】
受信局16はチャネル{Hf[k]}及びノイズ分散Rw[k]を推定する。白色化されたチャネル応答は以下のように規定できる。
【数20】
ここで、k=1, 2,..., Nである。我々は、所定の2次統計値 ̄Hf[k]が送信部12で利用可能であるものと仮定した。例えば、受信局16は、所定時間に亘って測定された多数の具現化(realization)を平均化することにより、2次チャネル統計値を収集することができ、上述したように低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12へ送信することができる。あるいは、ノイズスペクトルが比較的フラットである場合に、フォワードチャネルとリバースチャネル14上のチャネル統計値の相互特性を用いて、チャネル統計値の少なくとも一部を送信局12で直接算出することもできる。
【0031】
図4は、一実施形態に従ってチャネル推定値を符号化するためにフィードバック符号化器206が実行する例示的な方法50を示す。フィードバック符号化器206はチャネル推定器204からチャネル推定値を受信し、チャネル係数の各々について統計値(例えば分散)を算出する(ブロック52)。レートコントローラ216は、チャネル統計値に基づいて、マルチレート量子化器212の対応するセットに対するレートを決定する(ブロック54)。そしてマルチレート量子化器212は、チャネル係数の統計値に基づいてレートコントローラが決定したレートで、それぞれのチャネル係数を個別に量子化する(ブロック56)。一部の実施形態にでは、量子化前に現在のレート制御期間で算出された統計値をソース符号化レートの決定に用いる。他の実施形態において、現在のレート制御期間において量子化後に算出された統計値を用いて、次のレート制御期間のためのソース符号化レートを決定する。
【0032】
図5は、一実施形態に従ってチャネル推定値を復号するためにフィードバック復号器104が実行する例示的な方法60を示す。フィードバック復号器104のためのレートコントローラ112は、複数の量子化復号器110に対するソース符号化レートを決定する。そして量子化復号器110は、レートコントローラからフィードバックされたビット割り当てに基づいて決定したレートを用いてチャネル推定値を復号する(ブロック64)。一部の実施形態では、フィードバック符号化器206からのビット割り当てやチャネル統計値のフィードバックに基づいてレートを決定してもよい。別の実施形態では、量子化されたチャネル推定値のフィードバックに基づいて現在のレート制御期間において算出された統計値を、続くレート制御期間において量子化復号器110のためのレート決定に用いてもよい。
【0033】
図6は、OFDMシステムにおける受信局16用の例示的なフィードバック符号化器300を示す図である。フィードバック符号化器300は白色化フィルタ302、変換プロセッサ304、スケーリング部306、メトリック計算器308、レートコントローラ310、及び可変レートベクトル量子化器312を含んでいる。チャネル推定器204からの周波数領域チャネル応答{Hf[k]Nk=1}と、ノイズ共分散行列{Rw[k]}が白色化フィルタ302に入力される。白色化フィルタ302は、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}を生成するため、まず、式18に従ったノイズ共分散の対応する平方根で各周波数でのチャネル応答を無相関化することにより、白色化演算を実行する。そして、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}は変換プロセッサ304により、以下により詳細に説明するようにして複素数値係数のベクトルX=(X1,X2,...,Xnc)に変換される。ここで、ncは変換されたチャネル係数の数を表す。スケーリング部306は、X内の変換されたチャネル係数を、それらの対応する標準偏差によってスケーリングする。変換ならびにスケーリングされたチャネル係数は、対応する可変レート(又は可変解像度)ベクトル量子化器312によって個別に量子化される。ベクトル量子化器312は、例えば、分散1で平均値が0のIIDガウス分布サンプルに基づいて、異なるレート(又は解像度)用にオフラインで設計される。ベクトル量子化器312は例えば、二次元ベクトル量子化器を有してよい。あるいは、2以上の変換された係数を一緒に量子化するために高次ベクトル量子化器312を用いることもできる。
【0034】
変換された係数の各々を量子化するために用いられるレート(又は解像度)は、周波数領域チャネル係数の分散セットに基づいて適応的に選択される。メトリック計算器308は、変換されたチャネル係数の分散を算出する。レートコントローラ310は、チャネル係数の分散に基づいて各ベクトル量子化器312に対するビット割り当てを決定する。例えば、総ビット数をBtotalとすると、係数Xkの量子化に用いるビット数Bkは以下の式19に従って選択することができる。
【数21】
式19に示すように、特定の係数に割り当てられるビット数は、全ての分散の幾何平均に対してその係数の分散がどの程度大きいかに依存する。量子化後、符号化されたビットは高速フィードバックリンク18aを介して送信局12へ送信される。
【0035】
図7は、OFDMシステム用の送信局12のフィードバック復号器400を示す図である。フィードバック復号器400は、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}の量子化された推定値{ ̄H'f[k]}を生成するため、受信局16のフィードバック符号化器300で適用された演算の逆の演算を行う。フィードバック復号器400は、複数のマルチレート復号器402、スケーリング部404、逆変換プロセッサ406、及びレートコントローラ408を含んでいる。受信ビットに基づいて、量子化復号器402は変換されたチャネル係数の推定値を生成する。レートコントローラ408は各復号器402に対してビット割り当てを知らせ、それが復号器402のレート又は解像度を決定する。量子化復号器402が用いるビット割り当ては受信局16で行われるのと同様に、変換された係数の相対分散に基づいてレートコントローラ408が算出する。変換された係数の相対分散は、低速フィードバックチャネル18a上で受信局16から供給される統計情報から得ることができる。スケーリング部404は変換されたチャネル係数の推定値を、各々の標準偏差によってスケーリングする。最後に、逆変換プロセッサ406は、変換された係数のスケーリングされた復元物に逆変換を適用し、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}の量子化版{ ̄H'f[k]}を生成する。
【0036】
量子化された白色化チャネル応答{ ̄H'f[k]}から、リンク及びシステム容量を最大化するための多くの重要な情報を得ることができる。例えば、P[k]で表され、k番目の周波数でリンク容量を最大化する最適プリ符号化器は、以下の式20に従って算出することができる。
【数22】
ここで、UH[k]は、行列 ̄H'f[k]H ̄H'f[k]の固有ベクトルを列に有する行列を示し、D(p1[k], p2[k],..., pnT[k])は、以下の式21で与えられる対角線要素{pj[k]}nTj=1を有する対角行列を表す。
【数23】
ここで、j=1, 2,..., nTであり、{λH,i[k]}nTi=1は、 ̄H'f[k]H ̄H'f[k]の対応する固有ベクトルのセットであり、ΣnTj=1pj[k]=1となるようにμ>0が選択される。さらに、リソーススケジュール及びリンクアダプテーションのためにしばしば必要となる、異なる周波数及び異なる固有モードに亘るチャネル品質表示(CQI)として、{pj[k]}を用いてもよい。
【0037】
図8は、白色化された周波数領域チャネル応答{ ̄Hf[k]}Nk=1を変換するための変換プロセッサ304の動作を説明する図である。変換プロセッサ304は、チャネル係数の大幅な圧縮を実現するため、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}Nk=1から変換係数のベクトルXへの2次元線形変換を行う。図8に示すように、周波数領域白色化チャネル応答{ ̄Hf[k]}Nk=1は、高速フーリエ逆変換(IFFT)演算によりまず時間領域白色化チャネル応答{ ̄Ht[k]}Nn-1に変換される。システムの最大遅延拡散に応じて、時間領域応答はW⊂{1, 2,..., N}で表される時間インデックスのウィンドウ内で、より少ないチャネルタップに切り詰められてよい。得られるチャネル応答{ ̄Ht[n]}n∈Wの各チャネルタップは、以下で説明するように空間的にさらに変換され、変換されたベクトルチャネルタップセット{X[n]}n∈Wが得られる。そして、変換されたベクトルチャネルタップセット{X[n]}n∈Wは係数ベクトルX=vec(X[1], X[2],..., X[|W|])を形成するためにスタックされる。ここで、|W|はインデックスWの数を表す。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、空間変換はn∈Wの全てについてX[n]=UHTR vec( ̄Ht[n])に従ってなされる。UTRは、以下の式22で与えられる、白色化チャネル応答の完全nRnT×nRnTの相関行列の固有ベクトルからなる行列を表す。
【数24】
ここで、vec(A)はAの全列を1つのベクトルにスタックして形成されるベクトルを表す。
【0039】
行列UTRは、低速フィードバックチャネル18aを用いて送信局12へフィードバックされても良いし、アップリンク上の測定結果を用いて推定されてもよい。この変換は空間チャネルタップ上の完全Karhunen-Loeve変換(KLT)に相当する。所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はUTRに加えてX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0040】
他の例示的な実施形態によれば、空間変換はn∈Wの全てに対してX[n]=vec( ̄Ht[n]UT)によって行われる。ここで、UTは、Φfullの固有ベクトルの代わりにnT×nTの送信チャネル係数行列の固有ベクトルを有する行列が用いられることを表している。送信チャネル係数行列ΦTXは以下の式23によって与えられる。
【数25】
送信チャネル係数行列ΦTXは、完全チャネル相関行列Φfullから得られることに留意されたい。具体的には、ΦTXのi行j列の要素は、例えば以下のようなΦfullのnR×nR部分行列のトレースによって与えられる。
【数26】
ここで、[A]m:n,p:qは、行列Aのm行からn行とp列からq列を取り出した(n−m+1)×(q−p+1)部分行列を表す。
【0041】
行列UTは、低速フィードバックチャネル18aを用いて送信局12へフィードバックされても良いし、リバースリンク上の測定結果を用いて推定されてもよい。所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はUTに加えてX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0042】
別の実施形態によれば、空間変換はn∈Wの全てに対してX[n]=vec(UHR ̄Ht[n]UT)によって行われる。URは、以下の式24で与えられるnR×nRの受信チャネル係数行列の固有ベクトルを有する行列を表す。
【数27】
行列ΦRXは、例えば以下のように、Φfullの大きさnR×nRの対角部分行列を合計することにより得られる。
【数28】
【0043】
UTと同様、行列URも、低速フィードバックチャネル18aを用いて送信局12へフィードバックされても良いし、リバースリンク上の測定結果を用いて推定されてもよい。所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はUT及びURに加えてX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0044】
さらに別の実施形態によれば、空間変換はX[n]=vec( ̄Ht[n]WN)によって行われる。ここで、WNは、i行j列の要素がexp{-j2πij/N}によって与えられるIFFT変換行列を表す。この場合、所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はさらにX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0045】
送信局12において、図9に示すように、復元された変換済係数に対して逆変換を適用し、周波数領域白色化チャネル応答{ ̄H'f[k]}の復元(reproduction)を得る。量子化された変換済ベクトルX'はまず、量子化された変換済ベクトルチャネルタップ{X'[n]}n∈Wのセットに分割される。そして、各タップX'[n]に対して逆空間変換を適用し、対応する時間領域の量子化済白色化チャネル応答 ̄H't[n]を生成する。白色化チャネル応答{ ̄H't[n]}n∈Wは、{ ̄H't[n]}Nn-1を形成するためにゼロパディングされたのち、FFT演算を通じて再び周波数領域に戻されて、周波数領域の量子化済白色化チャネル応答{ ̄H'f[k]}Nn-1を生成する。
【0046】
なお、分散の少ないチャネルタップについては、通常ソースビットは割り当てされないので、図6及び図7に示された切り詰めとゼロパディング操作を省略してもよいことに留意されたい。
【0047】
このサブセクションにおいて、我々は本発明の性能上の利点をMIMO-OFDMシステムを通じて実証する。総システム帯域は5MHzで、FFTサイズは512とする。占有サブキャリア数は300で、25のチャンクに等分割されている(1チャンクあたり25サブキャリア)。サブキャリアの間隔は15kHzである。性能は、マクロセル環境においてペデストリアンBチャネルプロファイルを有する3GPP空間チャネルモデルを用いてシミュレートしたものである。
【0048】
図10は、4つの送信アンテナと2つの受信アンテナを用いた本発明の性能を示す図である。具体的には、図10は、ビット予算の関数として、所定のエルゴード容量レベル(例えばチャンネル利用あたり5ビット)を実現するために必要な様々なSNRレベルにおける、送信局12が瞬時チャネル状態の完全な知見を有している理想的なケースと、瞬時チャネル状態が送信局12にフィードバックされる前に本発明を用いて圧縮されている場合との差をプロットしている。ビット予算はシステムで利用可能なチャンク数に従って正規化される。図10に示すように、様々な空間変換を通じてチャネル行列の様々な要素間の空間的相関を利用することは、高速フィードバックの量を削減する上で非常に有益である。空間変換を用いずに、不均一なビット割り当てが異なる時間領域チャネルタップにのみ適用された場合、例えば、理想的な閉ループ容量から1dB以内を実現するには、チャンクあたり約3.5ビット(全帯域では3.5×25=約63ビット)が必要となる。しかし、上で述べたようにチャネル係数の各々に対して固定のFFT変換が適用されたとすると、理想的な閉ループ性能から1dB以内を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり2ビット未満(全帯域で50ビット)である。さらに、上で述べたようなKLT空間変換の1つを適用したとすると、理想的な閉ループ性能から1dB以内を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり1ビット未満(全帯域で25ビット)である。リバースリンクにおいて、チャンクあたり2ビット(合計50ビット)が利用可能であれば、理想的な閉ループ性能から0.5dB以内を実現することができる。
【0049】
図11は、4つの送信アンテナと1つの受信アンテナを仮定した場合の、図4及び図5で説明した適応フィードバック手法の性能を示す図である。この場合、空間変換を用いずに、不均一なビット割り当てが異なる時間領域チャネルタップにのみ適用された場合、理想的な閉ループ容量から1dB以内を実現するには、チャンクあたり約2ビット(全帯域では2×25=約50ビット)が必要となる。しかし、上で述べたようにチャネル係数の各々に対して固定のFFT変換が適用されたとすると、1dB以内の理想的な閉ループ性能を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり1ビット未満(全帯域で25ビット)である。さらに、上で述べたようなKLT空間変換の1つを適用したとすると、理想的な閉ループ性能から1dB以内を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり約0.4ビット(全帯域で10ビット)である。リバースリンクにおいて、チャンクあたり1ビット(合計25ビット)が利用可能であれば、理想的な閉ループ性能から0.5dB以内を実現することができる。
【0050】
本発明は、その本質的な特徴の範囲内で、ここで説明した以外の方法によって実施可能なことは言うまでもない。ここで説明した実施形態は、いかなる見地においても例示的なものと解釈されるべきであり、限定的なものと解釈されるべきではない。そして、請求項の意味及びそれと同等の範囲に含まれる全ての変更は、本発明の範囲内であることが意図されている。
【背景技術】
【0001】
本発明は概して移動体通信網におけるチャネル状態フィードバックの伝送に関し、特にはチャネル状態フィードバックを適応的な方法で圧縮するための方法及び装置に関する。
【0002】
無線通信システムにおける送信機及び/又は受信機での複数アンテナの利用は、潜在的にカバー範囲及びデータレートの両方を改善するため、過去10年の間大きな注目を集めてきた。シングルアンテナシステムではチャネル状態情報があまり容量を改善しないが、マルチアンテナシステムでは送信機が正確なチャネル状態情報を利用可能な場合に容量の大幅な増加が実現できる。周波数分割多重(FDD)システムにおいて、受信機はチャネル状態情報を送信機にフィードバックするのが通常である。フィードバックチャネルの容量制限と往復遅延により、送信機での完璧なチャネル状態情報を仮定するのは非現実的ではあるが、チャネルの知見が部分的でも送信機にあれば、チャネル状態情報を考慮しないシステムに対して大幅な容量の増加を実現できることがわかっている。しかし、詳細なチャネル状態情報のフィードバックはリバースリンクの貴重な帯域を消費する。従って、リバースリンクの容量に深刻な不利益をもたらさずにチャネル状態情報の量を削減する効率的な方法を考案することには大きな関心が寄せられている。
【0003】
チャネル状態フィードバックについての1つのアプローチは、チャネル状態情報のフィードバック削減に非構造化ブロック又はベクトル量子化器(VQ)を用いることである。理論上、非構造化VQは達成可能な最適な圧縮を実現可能であるが、非構造化VQの複雑さは、次元ー速度(dimension-rate)積とともに指数関数的に増加する。例えば、4つの送信アンテナと2つの受信アンテナを用いるMIMOシステムにおいて、文献で提案されている非構造化VQの次元は4*2*2(各チャネルタップ係数の実部及び虚部)=16となりうる。合理的な精度を達成する量子化解像度(又はソース符号化レート)に対し、多次元の非構造化VQが必要とする記憶容量及び計算能力は、実際には法外に高くなりうる。
【0004】
非構造化VQを用いることによる、計算の複雑さとは別な問題は、様々なチャネル統計への適合性のなさである。チャネル状態フィードバックを圧縮するために提案されている量子化技術のほとんどは、MIMOチャネルタップが空間的次元(spatial dimensions)に亘って独立同分布(IID)であると仮定している。しかし、実際には、MIMOチャネルの統計分布は空間的にも周波数的にも高い相関を有することが多い。IID仮定に基づいて設計されたVQは、無線環境において典型的に見られる広範なチャネル状態に亘って所望の性能を提供することができないかもしれない。一方、合理的な量子化精度を維持しながら、チャネルタップが取りうる全ての分布を考慮して非構造化VQを設計することは非現実的である。
【0005】
従って、合理的な精度と複雑さを維持しつつ、チャネルタップの様々な分布に対して適応可能な、チャネル状態フィードバックの圧縮方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、適応ベクトル量子化器を用いて詳細なチャネル情報をフィードバックするための方法及び装置に関する。方法及び装置は、空間的に相関性のあるMIMOチャネルの瞬時応答のフィードバックの圧縮に、二次チャネル統計(例えば分散)を用いる。異なる解像度(又はレート)を有する複数の低次元ベクトル量子化器(VQ)が、様々な複素数チャネルタップ係数を量子化する。個々のVQの解像度は、対応するチャネルタップの分散に基づいて適応的に選択される。様々な有意性(significance)でチャネルタップに対して様々な量子化解像度を用いることより、量子化点の分布を、特定のチャネル統計値について設計された最適な非構造化VQの量子化点の分布に似せることができ、計算及び記憶の複雑さを大幅に低減しながら最適に近い性能を得ることができる。
【0007】
ある例示的な実施形態において、瞬時チャネル応答の圧縮されたフィードバックとチャネル統計値の両方が送信機にフィードバックされる。瞬時チャネル応答の圧縮されたフィードバックは、高速フィードバックチャネル上でフィードバックされる。チャネル統計値は、高速フィードバックチャネルよりもずっと低い頻度で受信機から情報を返送する低速フィードバックチャネル上で送信機にフィードバックされる。ノイズスペクトルが周波数スペクトルに亘って比較的平坦な場合に有用な別の実施形態において、必要なチャネル統計値の全て又は一部が、フォワード及びリバースチャネルのチャネル統計値が同様(reciprocal)であるとの仮定に基づき、送信機で直接算出されてよい。
一部の実施形態において、チャネルタップはチャネル推定値を量子化する前に異なる領域(domain)に変換されてよい。例えば、MIMO-OFDMシステムに好適な実施形態において、周波数領域で推定されたチャネル応答を、時間領域チャネルタップに変換してもよい。所定の遅延拡散内に存在する時間領域チャネルタップが選択され、さらに空間領域を通じて”固有(eigen)”領域に変換される。得られた変換後の係数は、変換後の係数の分散に従って適応的に算出された様々なレート(又は解像度)の量子化器を用いて個別に量子化される。
【0008】
チャネル状態フィードバックは、対応するレート(又は解像度)の量子化コードブックを用いて送信機で復号され、変換後の係数、すなわち量子化された変換後の係数の推定値が得られる。各量子化器のレート又は解像度は、対応する変換後の係数の相対分散に基づいて、受信機で行われるのと同様な方法で算出される。続いて、量子化された変換後の係数に対して逆変換を適用し、周波数領域チャネル応答の量子化版を取得する。このチャネル情報に基づいて、各周波数における最適なプレ符号化器、プレストリーム符号化レート、及び/又はチャネル品質表示(CQI)を、送信機で算出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的な通信システムを示す図。
【図2】適応フィードバック手法を用いる例示的な通信システムを示す図。
【図3】適応フィードバック手法を用いる例示的な通信システムを示す図。
【図4】一実施形態に従ってチャネル品質フィードバックを符号化する例示的な方法を示す図。
【図5】一実施形態に従ってチャネル品質フィードバックを復号する例示的な方法を示す図。
【図6】OFDMシステム用の例示的なフィードバック符号化器を示す図。
【図7】OFDMシステム用の例示的なフィードバック復号器を示す図。
【図8】図6に示すOFDMフィードバック符号化器のための例示的な変換プロセッサを示す図。
【図9】図7に示すOFDMフィードバック復号器のための例示的な変換プロセッサを示す図。
【図10】本発明に係るMIMOシステムの性能を示す図。
【図11】図6及び図7に示す適応フィードバック手法の性能を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、図1に示すマルチアンテナ通信システム10に関して本発明の例示的な実施形態を説明する。マルチアンテナ通信システム10は、例えば多入力単出力(MISO)システム又は多入力多出力(MIMO)システムを含んでよい。しかし、本技術分野に属する当業者は、開示される実施形態によって示される原理を、他のタイプの通信システムにも適用可能であることを理解するであろう。
【0011】
マルチアンテナ通信システム10は、通信チャネル14上で信号を第2ステーション16に送信する第1ステーション12を有する。本明細書において第1ステーション12を送信局、第2のステーション16を受信局と呼ぶ。第1ステーション12及び第2ステーション16がそれぞれ双方向通信のために送信機と受信機の両方を含みうることは、本技術分野に属する当業者が理解するところであろう。送信局12から受信局16へのリンクをダウンリンクと呼ぶ。受信局16から送信局12へのリンクをアップリンクと呼ぶ。ある例示的な実施形態において、送信局12は無線通信網における基地局であり、受信局16は移動機である。本発明は例えば、基地局12から移動機16へ、WCDMAシステムにおける高速ダウンリンクパケットアクセス(HSPDA)チャネル上でデータを送信するために用いることができる。
【0012】
送信局12は複数のアンテナから受信局16へ信号を送信する。受信局16は1つ以上の受信アンテナを含んでよい。送信局12及び送信局16の両方で1つのアンテナを用いるシングルアンテナ通信システムとは対照的に、送信局から受信局16へのチャネル14についてのチャネル応答の詳細な知見を送信局12が有するならば、システム容量を増加させることが可能である。受信局16は、送信局12から受信局16へのチャネル14の推定値を算出し、フィードバックチャネル18上でチャネル状態フィードバックを送信局12へ送信する。しかし、受信局16から送信局12への詳細なチャネル情報のフィードバックは、ユーザデータを搬送するために利用可能なリバースリンク上の貴重な帯域を消費する。マルチアンテナシステムにおいて、チャネル情報フィードバックの量は、送信及び受信アンテナ対の数に伴って急激に増加する。
【0013】
図2は、送信局12における例示的な送信機100と受信局16における例示的な受信機200を示す。受信機200は、チャネル情報フィードバックを削減するためにベクトル量子化技術を用いる。明確化のため、通信システム10が送信局12において複数のアンテナを用い、受信局16において1つのアンテナを用いるものとする。本明細書で説明する原理は、受信局16で複数のアンテナを用いる構成に容易に拡張可能である。
【0014】
送信局12(例えば基地局)は、送信信号プロセッサ102で生成された送信信号{xm(t)}Mm=1を、受信局16(例えば移動機)に送信する。Mのダウンリンクチャネルが存在する(各送信アンテナから1つずつ)。送信局12から受信局16へのダウンリンクチャネルは、時間領域においてgm(t)、周波数領域においてGm(f)のチャネル応答を有する、線形時間不変チャネル(linear time invariant channel)であると仮定されている。受信局16で受信されるベースバンド信号r(t)は、以下の式1で与えられる。
【数1】
ここで、*は畳み込みを表し、v(t)はベースバンドノイズを表す。m番目のダウンリンクチャネルは以下の式2によりモデル化されてよい。
【数2】
ここで、am,kはm番目のアンテナからのチャネルのチャネル係数、τkは遅延である。受信局16におけるチャネル推定器204は、m番目のダウンリンクチャネルの推定値を以下の式3に従って生成する。
【数3】
ここで、m=1, ..., M、Tsは遅延τkの量子化に用いられるサンプリング間隔である。ここで、式3におけるQは式2におけるKと同じでなくてもよいことに留意されたい。チャネル推定値{^gm(t)}Mm=1は、受信したベースバンド信号r(t)を復調するために受信信号プロセッサ202へ供給される。さらに、チャネル推定値{^gm(t)}Mm=1は、フィードバック符号化器206に入力される。フィードバック符号化器206はチャネル推定器204からチャネル推定値{^gm(t)}Mm=1を受信し、{^gm(t)}Mm=1におけるチャネル係数を量子化し、量子化されたチャネル係数を送信局12へフィードバックする。
【0015】
1つの送信アンテナからのダウンリンクチャネルに対する推定チャネル応答^gm(t)は、例えば以下の式4に示すように、Qの非ゼロタップ係数を有する離散時間型有限インパルス応答フィルタと概念的に関連付けることができる。
【数4】
ここで、m=1, ..., Mである。従って、{^gm(t)}Mm=1を送信局12に通信する問題は、{^gm[n]}Mm=1を通信する問題と等価である。
【0016】
図2に示す実施形態は、重要性の高いチャネルタップには多くのビット数を割り当て、重要性の低いチャネルタップには少ないビット数を割り当てる適応的量子化技術を用いる。ビット割り当ては、得られる量子化チャネル応答の予め定められた歪み指標が、利用可能な総ビット数に対して最小化されるように、チャネルタップの相対電力又は分散のようなチャネルタップの長期統計値(long term stastics)に基づいて適応的に算出される。2つの論理フィードバックチャネルが用いられる:ビット割り当てのフィードバックに用いられる低レートフィードバックチャネル18a(低速フィードバックチャネル)と、量子化されたチャネルタップ係数のフィードバックに用いられる高レートフィードバックチャネル18b(高速フィードバックチャネル)である。本実施形態において、チャネル統計値(例えばチャネルタップの分散)は、量子化の前に収集される。各チャネルタップの量子化に割り当てられるビット数に関する情報は、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12に周期的に返送される。特定のチャネル具現化(realization)の推定値の(現在のビット割り当てに従った)量子化版に関する情報は、高速フィードバックチャネル18bを通じて周期的に返送される。
【0017】
フィードバック符号化器206は複数のマルチレート又は可変レートベクトル量子化器212と、メトリック計算器214と、レートコントローラ216とを含んでいる。可変レートベクトル量子化器212の各々は、各チャネル14についてのチャネル係数を量子化する。各量子化器212のレート又は解像度は、対応するチャネルタップの統計値に基づいて個々に選択される。メトリック計算器214は、各チャネル14の各チャネルタップについて、分散などの統計値を算出し、チャネルタップ統計値をレートコントローラ216へ供給する。本実施形態では、量子化に先立ってチャネル統計値が算出される。レートコントローラ216は各量子化器212に割り当てるビット数を決定する。ある量子化器212に割り当てられるビット数は、その量子化器のレート又は解像度に等しい。量子化されたチャネル係数は高速フィードバックチャネル18b上で送信局12へ送信される。レートコントローラ216によって決定されたビット割り当ては、低速フィードバックチャネル18a上で送信局12へフィードバックされる。あるいは、レートコントローラ216はメトリック計算器214からのチャネル統計値をフィードバックし、このチャネル統計値から送信局12でビット割り当てを計算してもよい。
【0018】
送信局12のフィードバック復号器104は、複数の量子化復号器110と、レートコントローラ112を有している。量子化復号器110は、高速フィードバックチャネル18b上で受信された受信ビットに基づいて、量子化されたチャネル係数の推定値を生成する。復号レート又は解像度は、受信局16のレートコントローラ216からのビット割り当てのフィードバックに基づいてレートコントローラ112が決定する。あるいは、受信局16のレートコントローラ216がメトリック計算器214からの統計値をフィードバックし、対応するビット割り当てを送信局12のレートコントローラ112が計算してもよい。
【0019】
図3は、低速フィードバックチャネル18aを省いた実施形態を示している。図2及び図3において、同一の構成要素には同一の参照数字を付してある。図3に示す実施形態において、送信局12は、ダウリンクチャネルについての統計値と同一であると仮定されているアップリンクチャネルのチャネル統計値を算出し、チャネル統計値からビット割り当てを決定する。この場合、送信局12と受信局16とで同一の統計値を生成できるよう、チャネル統計値は量子化後に収集される。本技術分野に属する当業者は、現在のレート制御期間におけるビット割り当ての算出に用いられたメトリックが、次のレート制御期間におけるビット割り当ての決定に利用されることを理解するであろう。メトリック計算器214は、量子化されたチャネル係数に基づいて各チャネルタップについての統計値(例えば分散)を算出する。分散又は他の統計値はレートコントローラ216に供給され、レートコントローラ216は可変レートベクトル量子化器212に対するビット割り当てを決定する。送信局12のフィードバック復号器104は量子化されたチャネル係数を受信する。メトリック計算器214は、現在のレート制御期間に受信された量子化されたチャネル係数を用いて、次のレート制御期間におけるビット割り当てを算出する。量子化復号器は、過去のレート制御期間で算出されたビット割り当てを用いて、量子化されたチャネル係数の推定値を求める。
【0020】
図2及び図3に示す実施形態において、Qのチャネルタップに対するビット割り当ては、推定されたチャネル応答とその量子化版の平均二乗誤差が最小となるよう、以下のように算出してよい。推定されたチャネルタップ^am,kの実部と虚部をそれぞれ^aRm,k及び^aIm,kと表し、k番目のベクトルチャネルタップを
【数5】
と表す。また、^akの量子化に用いられるNkの量子化点を有する次元2Mのベクトル量子化器212をQk(・)と表す。Qk(・)のソース符号化レートは、Rk=(2M)-1log2Nkで定義され、これは^akの各(実数)要素を量子化するために割り当てられるビット数を表す。目的は、以下の式5で与えられる、全チャネルタップの平均二乗歪みの合計を最小化する最適なビット割り当てベクトルR=(R1, R2,..., RQ)を見つけることである。
【数6】
あるチャネルタップに対する歪みD(Rk)は以下の式6で与えられる。
【数7】
【0021】
歪みD(Rk)がRkの高度に非線形な関数であるため、上述の最適化問題を正確に解くのは困難である。しかし、式7で与えられる、D(Rk)についてのBennett-Zador-Gersho漸近式を用いて、良好な近似解を得ることができる。
【数8】
ここで、k=1, 2,..., Qであり、σ2kはベクトルチャネルタップ^akの分散、γkは^akの同時確率密度pk(・)と量子化器Qk(・)の設計特性の一部に依存する量である。式7を式5に代入することにより、D(R)を最小化する最適ベクトルRの成分が以下のように明らかになる。
【数9】
ここで、k=1, 2,..., Qである。また、項
【数10】
は、ベクトルチャネルタップに割り当てられたビットの平均数を表す。
【0022】
{^ak}の要素がそれらの分散(例えば、一部の正規化密度関数(normalized density function)p(x)について、全てのkについてのpk(x)=σ-2Mkp(x/σk))を除き、全てのkについて一様に分布しており、全てのkについて量子化器{Qk(・)}が同一の設計特性を有するものとすると、{γk}は全てのkについて同一である。この場合、式8は式9のように単純化できる。
【数11】
ここで、k=1, 2,..., Qである。
【0023】
分散に応じた異なるレートでチャネルタップ係数を量子化するため、受信局16及び送信局12は、様々なソース符号化レートの複数の量子化器の複数の符号化器206及び複数の復号器104をそれぞれ格納する必要がある。式9を用いて算出されるレートが利用可能なレートと完全には一致しないかもしれないので、レート{Rk}を算出する際には所定の丸め演算を実行することができる。丸め後の全体的なレートがフィードバックチャネル18の容量を超えないことを確実にするため、複数のチャネルタップに対する複数のレートを順次以下のように算出することができる。
【数12】
ここで、k=1, 2,...,Qであり、^RjはRjを丸めた近似値を表す。j=1, 2,..., k-1の全てにおいて^Rj=Rjであれば、式9と式10で算出されるRkは等しくなるであろう。良好な性能を保証するため、主要なチャネルタップには十分なビット数が保証されるよう、対応するチャネルタップ分散の降順でレートを算出することが好ましい。
【0024】
式8及び式9に従ったビット割り当ての算出は、各チャネルタップの標準偏差σkと全チャネルタップの標準偏差の幾何平均の比に基づく本発明の例示的な一実施形態を表す。本発明の他のバリエーションは、以下の式11に従って、チャネルタップの分散の関数の算術平均に基づいてビット割り当てを算出することを含む。
【数13】
ここで、k=1, 2,..., Qであり、{fj(・)}Qj=1は単調増加関数の組を表す。例えば、fk(x)=log(γkx)/2のとき、式11は式8と等しい。あるいは、全てのkについてfk(x)=√xのとき、平均標準偏差に関する各チャネルタップの標準偏差σkの相対的な大きさに基づいてビット割り当てが算出される。
【0025】
より一般的には、sがチャネル応答に関するある長期統計値を表すとすると(例えば好ましい実施形態ではs=(σ21, σ22,..., σ2Q))、異なるチャネルタップに対するビット割り当ての算出は以下のように表すことができる。
【数14】
ここで、k=1, 2,..., Qであり、Δk(・)はk番目のチャネルタップに対して設計されたあるビット割り当て関数を表す。式12は式13に従って順次算出可能である。
【数15】
ここで、k=1, 2,...,Qであり、^RjはRjを丸めた近似値を表す。
【0026】
上述の通り、本発明を実施するには、測定された統計値に従って様々なレベルの量子化を提供できるように、送信局12と受信局16が様々なレート及び歪みレベルを有する複数の符号化器及び復号器を実装しなければならない。あるいは、様々なレベルの量子化を提供する1つのツリー構造のベクトル量子化器(TSVQ)を用いてもよい。TSVQ用の符号化器は、深さd-1の超平面(hyperplane)の平衡符号化ツリーを格納する。すなわち、ビットシーケンスb∈{0, 1}d-1でインデックスされるツリーの各ノードが、多次元超平面及び閾値ηbの法線(列)ベクトルPbに対応する。例えば、ツリーの深さはd=2MQRと選択することができる。(推定された)ベクトルチャネルタップ^akとすると、符号化処理は、対応する超平面(p,η)を有するツリーのルートノードから始まり、
【数16】
を算出する。ここで、q1(x)はx>0のとき1、x≦0のとき1を出力する1ビットスカラ量子化器を表す。次のレベルで、符号化器206は
【数17】
を、b[1]の値に対応する超平面pb[1], ηb[1]を用いて算出する。符号化器206はこの処理を引き続くレベルにおいて繰り返し、以下の算出を行う。
【数18】
ここで、b=(b[1], b[2],..., b[n-1])であり、算出はnが^akの量子化に割り当てられたビット数Rkになるまで繰り返される。この時点で、符号化器206はベクトルチャネルタップ^akに対するRkビットシーケンス(b[1], b[2],..., b[Rk])を出力する。
【0027】
符号化されたビットシーケンス(b[1], b[2],..., b[Rk])を受信すると、TSVQの復号器104は、各レベルのノードが対応するレベルの量子化を用いて量子化されたチャネルタップを格納した深さdの符号化ツリーに基づいて、量子化されたチャネルタップ^akを生成する。各レベルで用いられる超平面は前のレベルで算出された出力ビットに依存する。加えて、(対応する、量子化されたベクトルの復号ツリーとともに)TSVQで用いられる超平面は、^akの統計的分布と合致するように設計されている。
【0028】
現実的な通信システムにおいて、チャネルタップのフィードバック時刻による変化は緩やかでありうる。そのため、チャネルタップの差分量子化(differential quantization)を用いることができる。この場合、本明細書で説明した原理は、時刻によるチャネルタップの変化を量子化するための任意の差分量子化手法とともに動作可能である。
【0029】
本発明の原理は、直交周波数分割多重(OFDM)システムに適用可能である。OFDMシステムにおいて、周波数領域ベースバンド受信信号は、以下のようにモデル化されてよい。
【数19】
ここで、k=1, 2,...,Nであり、Hf[k]はMIMOチャネル応答を表すnR×nTの行列、r[k]は受信信号、s[k]は送信チャネル、w[k]は、nTの送信アンテナとnRの受信アンテナを有するOFDM無線通信システムにおけるk番目のサブキャリア周波数でのノイズ及び干渉(noise-plus-interference)成分である。ノイズ成分w[k]は統計的には周波数と独立しているものと仮定しているが、Rw[k]≡E{w[k]w[k]H}で表される共分散行列は周波数に応じて変化しうる。ここで、E{・}は括弧内の量の予期される値を示している。
【0030】
受信局16はチャネル{Hf[k]}及びノイズ分散Rw[k]を推定する。白色化されたチャネル応答は以下のように規定できる。
【数20】
ここで、k=1, 2,..., Nである。我々は、所定の2次統計値 ̄Hf[k]が送信部12で利用可能であるものと仮定した。例えば、受信局16は、所定時間に亘って測定された多数の具現化(realization)を平均化することにより、2次チャネル統計値を収集することができ、上述したように低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12へ送信することができる。あるいは、ノイズスペクトルが比較的フラットである場合に、フォワードチャネルとリバースチャネル14上のチャネル統計値の相互特性を用いて、チャネル統計値の少なくとも一部を送信局12で直接算出することもできる。
【0031】
図4は、一実施形態に従ってチャネル推定値を符号化するためにフィードバック符号化器206が実行する例示的な方法50を示す。フィードバック符号化器206はチャネル推定器204からチャネル推定値を受信し、チャネル係数の各々について統計値(例えば分散)を算出する(ブロック52)。レートコントローラ216は、チャネル統計値に基づいて、マルチレート量子化器212の対応するセットに対するレートを決定する(ブロック54)。そしてマルチレート量子化器212は、チャネル係数の統計値に基づいてレートコントローラが決定したレートで、それぞれのチャネル係数を個別に量子化する(ブロック56)。一部の実施形態にでは、量子化前に現在のレート制御期間で算出された統計値をソース符号化レートの決定に用いる。他の実施形態において、現在のレート制御期間において量子化後に算出された統計値を用いて、次のレート制御期間のためのソース符号化レートを決定する。
【0032】
図5は、一実施形態に従ってチャネル推定値を復号するためにフィードバック復号器104が実行する例示的な方法60を示す。フィードバック復号器104のためのレートコントローラ112は、複数の量子化復号器110に対するソース符号化レートを決定する。そして量子化復号器110は、レートコントローラからフィードバックされたビット割り当てに基づいて決定したレートを用いてチャネル推定値を復号する(ブロック64)。一部の実施形態では、フィードバック符号化器206からのビット割り当てやチャネル統計値のフィードバックに基づいてレートを決定してもよい。別の実施形態では、量子化されたチャネル推定値のフィードバックに基づいて現在のレート制御期間において算出された統計値を、続くレート制御期間において量子化復号器110のためのレート決定に用いてもよい。
【0033】
図6は、OFDMシステムにおける受信局16用の例示的なフィードバック符号化器300を示す図である。フィードバック符号化器300は白色化フィルタ302、変換プロセッサ304、スケーリング部306、メトリック計算器308、レートコントローラ310、及び可変レートベクトル量子化器312を含んでいる。チャネル推定器204からの周波数領域チャネル応答{Hf[k]Nk=1}と、ノイズ共分散行列{Rw[k]}が白色化フィルタ302に入力される。白色化フィルタ302は、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}を生成するため、まず、式18に従ったノイズ共分散の対応する平方根で各周波数でのチャネル応答を無相関化することにより、白色化演算を実行する。そして、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}は変換プロセッサ304により、以下により詳細に説明するようにして複素数値係数のベクトルX=(X1,X2,...,Xnc)に変換される。ここで、ncは変換されたチャネル係数の数を表す。スケーリング部306は、X内の変換されたチャネル係数を、それらの対応する標準偏差によってスケーリングする。変換ならびにスケーリングされたチャネル係数は、対応する可変レート(又は可変解像度)ベクトル量子化器312によって個別に量子化される。ベクトル量子化器312は、例えば、分散1で平均値が0のIIDガウス分布サンプルに基づいて、異なるレート(又は解像度)用にオフラインで設計される。ベクトル量子化器312は例えば、二次元ベクトル量子化器を有してよい。あるいは、2以上の変換された係数を一緒に量子化するために高次ベクトル量子化器312を用いることもできる。
【0034】
変換された係数の各々を量子化するために用いられるレート(又は解像度)は、周波数領域チャネル係数の分散セットに基づいて適応的に選択される。メトリック計算器308は、変換されたチャネル係数の分散を算出する。レートコントローラ310は、チャネル係数の分散に基づいて各ベクトル量子化器312に対するビット割り当てを決定する。例えば、総ビット数をBtotalとすると、係数Xkの量子化に用いるビット数Bkは以下の式19に従って選択することができる。
【数21】
式19に示すように、特定の係数に割り当てられるビット数は、全ての分散の幾何平均に対してその係数の分散がどの程度大きいかに依存する。量子化後、符号化されたビットは高速フィードバックリンク18aを介して送信局12へ送信される。
【0035】
図7は、OFDMシステム用の送信局12のフィードバック復号器400を示す図である。フィードバック復号器400は、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}の量子化された推定値{ ̄H'f[k]}を生成するため、受信局16のフィードバック符号化器300で適用された演算の逆の演算を行う。フィードバック復号器400は、複数のマルチレート復号器402、スケーリング部404、逆変換プロセッサ406、及びレートコントローラ408を含んでいる。受信ビットに基づいて、量子化復号器402は変換されたチャネル係数の推定値を生成する。レートコントローラ408は各復号器402に対してビット割り当てを知らせ、それが復号器402のレート又は解像度を決定する。量子化復号器402が用いるビット割り当ては受信局16で行われるのと同様に、変換された係数の相対分散に基づいてレートコントローラ408が算出する。変換された係数の相対分散は、低速フィードバックチャネル18a上で受信局16から供給される統計情報から得ることができる。スケーリング部404は変換されたチャネル係数の推定値を、各々の標準偏差によってスケーリングする。最後に、逆変換プロセッサ406は、変換された係数のスケーリングされた復元物に逆変換を適用し、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}の量子化版{ ̄H'f[k]}を生成する。
【0036】
量子化された白色化チャネル応答{ ̄H'f[k]}から、リンク及びシステム容量を最大化するための多くの重要な情報を得ることができる。例えば、P[k]で表され、k番目の周波数でリンク容量を最大化する最適プリ符号化器は、以下の式20に従って算出することができる。
【数22】
ここで、UH[k]は、行列 ̄H'f[k]H ̄H'f[k]の固有ベクトルを列に有する行列を示し、D(p1[k], p2[k],..., pnT[k])は、以下の式21で与えられる対角線要素{pj[k]}nTj=1を有する対角行列を表す。
【数23】
ここで、j=1, 2,..., nTであり、{λH,i[k]}nTi=1は、 ̄H'f[k]H ̄H'f[k]の対応する固有ベクトルのセットであり、ΣnTj=1pj[k]=1となるようにμ>0が選択される。さらに、リソーススケジュール及びリンクアダプテーションのためにしばしば必要となる、異なる周波数及び異なる固有モードに亘るチャネル品質表示(CQI)として、{pj[k]}を用いてもよい。
【0037】
図8は、白色化された周波数領域チャネル応答{ ̄Hf[k]}Nk=1を変換するための変換プロセッサ304の動作を説明する図である。変換プロセッサ304は、チャネル係数の大幅な圧縮を実現するため、白色化されたチャネル応答{ ̄Hf[k]}Nk=1から変換係数のベクトルXへの2次元線形変換を行う。図8に示すように、周波数領域白色化チャネル応答{ ̄Hf[k]}Nk=1は、高速フーリエ逆変換(IFFT)演算によりまず時間領域白色化チャネル応答{ ̄Ht[k]}Nn-1に変換される。システムの最大遅延拡散に応じて、時間領域応答はW⊂{1, 2,..., N}で表される時間インデックスのウィンドウ内で、より少ないチャネルタップに切り詰められてよい。得られるチャネル応答{ ̄Ht[n]}n∈Wの各チャネルタップは、以下で説明するように空間的にさらに変換され、変換されたベクトルチャネルタップセット{X[n]}n∈Wが得られる。そして、変換されたベクトルチャネルタップセット{X[n]}n∈Wは係数ベクトルX=vec(X[1], X[2],..., X[|W|])を形成するためにスタックされる。ここで、|W|はインデックスWの数を表す。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、空間変換はn∈Wの全てについてX[n]=UHTR vec( ̄Ht[n])に従ってなされる。UTRは、以下の式22で与えられる、白色化チャネル応答の完全nRnT×nRnTの相関行列の固有ベクトルからなる行列を表す。
【数24】
ここで、vec(A)はAの全列を1つのベクトルにスタックして形成されるベクトルを表す。
【0039】
行列UTRは、低速フィードバックチャネル18aを用いて送信局12へフィードバックされても良いし、アップリンク上の測定結果を用いて推定されてもよい。この変換は空間チャネルタップ上の完全Karhunen-Loeve変換(KLT)に相当する。所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はUTRに加えてX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0040】
他の例示的な実施形態によれば、空間変換はn∈Wの全てに対してX[n]=vec( ̄Ht[n]UT)によって行われる。ここで、UTは、Φfullの固有ベクトルの代わりにnT×nTの送信チャネル係数行列の固有ベクトルを有する行列が用いられることを表している。送信チャネル係数行列ΦTXは以下の式23によって与えられる。
【数25】
送信チャネル係数行列ΦTXは、完全チャネル相関行列Φfullから得られることに留意されたい。具体的には、ΦTXのi行j列の要素は、例えば以下のようなΦfullのnR×nR部分行列のトレースによって与えられる。
【数26】
ここで、[A]m:n,p:qは、行列Aのm行からn行とp列からq列を取り出した(n−m+1)×(q−p+1)部分行列を表す。
【0041】
行列UTは、低速フィードバックチャネル18aを用いて送信局12へフィードバックされても良いし、リバースリンク上の測定結果を用いて推定されてもよい。所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はUTに加えてX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0042】
別の実施形態によれば、空間変換はn∈Wの全てに対してX[n]=vec(UHR ̄Ht[n]UT)によって行われる。URは、以下の式24で与えられるnR×nRの受信チャネル係数行列の固有ベクトルを有する行列を表す。
【数27】
行列ΦRXは、例えば以下のように、Φfullの大きさnR×nRの対角部分行列を合計することにより得られる。
【数28】
【0043】
UTと同様、行列URも、低速フィードバックチャネル18aを用いて送信局12へフィードバックされても良いし、リバースリンク上の測定結果を用いて推定されてもよい。所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はUT及びURに加えてX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0044】
さらに別の実施形態によれば、空間変換はX[n]=vec( ̄Ht[n]WN)によって行われる。ここで、WNは、i行j列の要素がexp{-j2πij/N}によって与えられるIFFT変換行列を表す。この場合、所与のビット予算に対して適切なソースビットの割り当てを算出するために、送信局12はさらにX[n]の各要素の分散を必要とする。この分散もまた、低速フィードバックチャネル18aを通じて送信局12が取得可能である。
【0045】
送信局12において、図9に示すように、復元された変換済係数に対して逆変換を適用し、周波数領域白色化チャネル応答{ ̄H'f[k]}の復元(reproduction)を得る。量子化された変換済ベクトルX'はまず、量子化された変換済ベクトルチャネルタップ{X'[n]}n∈Wのセットに分割される。そして、各タップX'[n]に対して逆空間変換を適用し、対応する時間領域の量子化済白色化チャネル応答 ̄H't[n]を生成する。白色化チャネル応答{ ̄H't[n]}n∈Wは、{ ̄H't[n]}Nn-1を形成するためにゼロパディングされたのち、FFT演算を通じて再び周波数領域に戻されて、周波数領域の量子化済白色化チャネル応答{ ̄H'f[k]}Nn-1を生成する。
【0046】
なお、分散の少ないチャネルタップについては、通常ソースビットは割り当てされないので、図6及び図7に示された切り詰めとゼロパディング操作を省略してもよいことに留意されたい。
【0047】
このサブセクションにおいて、我々は本発明の性能上の利点をMIMO-OFDMシステムを通じて実証する。総システム帯域は5MHzで、FFTサイズは512とする。占有サブキャリア数は300で、25のチャンクに等分割されている(1チャンクあたり25サブキャリア)。サブキャリアの間隔は15kHzである。性能は、マクロセル環境においてペデストリアンBチャネルプロファイルを有する3GPP空間チャネルモデルを用いてシミュレートしたものである。
【0048】
図10は、4つの送信アンテナと2つの受信アンテナを用いた本発明の性能を示す図である。具体的には、図10は、ビット予算の関数として、所定のエルゴード容量レベル(例えばチャンネル利用あたり5ビット)を実現するために必要な様々なSNRレベルにおける、送信局12が瞬時チャネル状態の完全な知見を有している理想的なケースと、瞬時チャネル状態が送信局12にフィードバックされる前に本発明を用いて圧縮されている場合との差をプロットしている。ビット予算はシステムで利用可能なチャンク数に従って正規化される。図10に示すように、様々な空間変換を通じてチャネル行列の様々な要素間の空間的相関を利用することは、高速フィードバックの量を削減する上で非常に有益である。空間変換を用いずに、不均一なビット割り当てが異なる時間領域チャネルタップにのみ適用された場合、例えば、理想的な閉ループ容量から1dB以内を実現するには、チャンクあたり約3.5ビット(全帯域では3.5×25=約63ビット)が必要となる。しかし、上で述べたようにチャネル係数の各々に対して固定のFFT変換が適用されたとすると、理想的な閉ループ性能から1dB以内を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり2ビット未満(全帯域で50ビット)である。さらに、上で述べたようなKLT空間変換の1つを適用したとすると、理想的な閉ループ性能から1dB以内を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり1ビット未満(全帯域で25ビット)である。リバースリンクにおいて、チャンクあたり2ビット(合計50ビット)が利用可能であれば、理想的な閉ループ性能から0.5dB以内を実現することができる。
【0049】
図11は、4つの送信アンテナと1つの受信アンテナを仮定した場合の、図4及び図5で説明した適応フィードバック手法の性能を示す図である。この場合、空間変換を用いずに、不均一なビット割り当てが異なる時間領域チャネルタップにのみ適用された場合、理想的な閉ループ容量から1dB以内を実現するには、チャンクあたり約2ビット(全帯域では2×25=約50ビット)が必要となる。しかし、上で述べたようにチャネル係数の各々に対して固定のFFT変換が適用されたとすると、1dB以内の理想的な閉ループ性能を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり1ビット未満(全帯域で25ビット)である。さらに、上で述べたようなKLT空間変換の1つを適用したとすると、理想的な閉ループ性能から1dB以内を実現するのに必要なビット数はチャンクあたり約0.4ビット(全帯域で10ビット)である。リバースリンクにおいて、チャンクあたり1ビット(合計25ビット)が利用可能であれば、理想的な閉ループ性能から0.5dB以内を実現することができる。
【0050】
本発明は、その本質的な特徴の範囲内で、ここで説明した以外の方法によって実施可能なことは言うまでもない。ここで説明した実施形態は、いかなる見地においても例示的なものと解釈されるべきであり、限定的なものと解釈されるべきではない。そして、請求項の意味及びそれと同等の範囲に含まれる全ての変更は、本発明の範囲内であることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル状態フィードバックを量子化する方法であって、
複数のチャネル係数についての統計値を求めるステップ(52)と、
前記統計値に基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化するステップ(54, 56)とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換するステップをさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法(50)。
【請求項3】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換する前記ステップが、
複数の周波数領域チャネル係数を複数の時間領域チャネル係数に変換するステップと、
予め定められた遅延拡散範囲内の複数の時間領域チャネル係数を選択するステップと、
前記選択された複数の時間領域チャネル係数を複数の固有領域チャネル係数に変換するステップとを有することを特徴とする請求項2記載の方法(50)。
【請求項4】
複数のチャネル係数についての統計値を求める前記ステップが、各チャネル係数について別個の統計値を求めるステップを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項5】
前記別個の統計値が、前記チャネル係数の相対電力を含むことを特徴とする請求項4記載の方法(50)。
【請求項6】
前記複数のレートが、前記相対電力の降順で決定されることを特徴とする請求項5記載の方法(50)。
【請求項7】
前記別個の統計値が、前記チャネル係数に関する分散を含むことを特徴とする請求項4記載の方法(50)。
【請求項8】
前記複数のレートが、前記分散の降順で決定されることを特徴とする請求項7記載の方法(50)。
【請求項9】
前記複数のレートが、現在のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて決定され、前記統計値が前記現在のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化される前に算出されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項10】
前記複数のレートが低速フィードバックチャネル上で送信され、前記量子化された複数のチャネル係数が高速フィードバックチャネル上で送信されることを特徴とする請求項9記載の方法(50)。
【請求項11】
前記複数のレートが、過去のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて決定され、前記統計値が前記前記過去のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化された後に算出されることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項12】
前記量子化された複数のチャネル係数が高速フィードバックチャネル上で送信されることを特徴とする請求項11記載の方法(50)。
【請求項13】
前記複数のチャネル係数を求めるステップが、前記複数のチャネル係数の白色化するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項14】
前記統計値に基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化する前記ステップが、前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングするステップと、前記スケーリングされた複数のチャネル係数を量子化するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項15】
前記統計値に基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化する前記ステップが、
前記統計値に基づいて前記複数のチャネル係数に対する複数のビット割り当てを決定するステップと、
前記複数のビット割り当てに基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
チャネル状態フィードバックを量子化するためのフィードバック符号化器(206)であって、
複数のチャネル係数についての統計値を算出するメトリック計算器(214, 308)と、
前記複数のチャネル係数を、前記統計値に基づいて決定された複数のレートで個別に量子化するための複数のマルチレート量子化器(212, 312)と、
前記複数の量子化器についての前記複数のレートを決定するレートコントローラ(216, 310)と、を有することを特徴とするフィードバック符号化器(206)。
【請求項17】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換する変換プロセッサ(304)をさらに有することを特徴とする請求項16記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項18】
前記変換プロセッサ(304)が、複数の周波数領域チャネル係数を複数の時間領域チャネル係数に変換し、予め定められた遅延拡散範囲内の前記複数の時間領域チャネル係数を選択し、前記選択された複数の時間領域チャネル係数を複数の固有領域チャネル係数に変換することを特徴とする請求項17記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項19】
前記メトリック計算器が各チャネル係数について別個の統計値を求めることを特徴とする請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項20】
前記別個の統計値が、前記チャネル係数の相対電力を含むことを特徴とする請求項19記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項21】
前記レートコントローラは、前記相対電力の降順に前記複数のチャネル係数についての前記複数のレートを決定することを特徴とする請求項20のフィードバック符号化器(206)。
【請求項22】
前記別個の統計値が、前記複数のチャネル係数に関する分散を含むことを特徴とする請求項19記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項23】
前記レートコントローラ(216, 310)は、前記分散の降順に前記複数のチャネル係数についての前記複数のレートを決定することを特徴とする請求項22のフィードバック符号化器(206)。
【請求項24】
前記レートコントローラ(216, 310)が、現在のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて前記複数のレートを決定し、前記統計値が前記現在のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化される前に算出されることを特徴とする請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項25】
前記レートを低速フィードバックチャネルで送信し、量子化された複数のチャネル係数を高速フィードバックチャネル上で送信することを特徴とする請求項24記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項26】
前記レートコントローラ(216, 310)が、前記複数のレートを過去のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて決定し、前記統計値が前記前記過去のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化された後に算出されることを特徴とする請求項16乃至請求項25記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項27】
前記量子化された複数のチャネル係数を高速フィードバックチャネル上で送信することを特徴とする請求項26記載のフィードバック符号化器(206)
【請求項28】
さらに、前記複数のチャネル係数を白色化するための白色化フィルタ(302)をさらに有することを特徴とする請求項16乃至請求項27のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項29】
前記量子化前に前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングするスケーリング手段(306)をさらに有することを特徴とする請求項17記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項30】
前記レートコントローラ(216, 310)が、前記統計値に基づいて前記複数の量子化器についての複数のビット割り当てを決定することを特徴とする請求項16乃至請求項29のいずれか1項に記載のフィードバックコントローラ(206)。
【請求項31】
前記複数のマルチレート量子化器(212, 312)が、前記統計値に基づいて設計された、複数の木構造ベクトル量子化器の符号化器を有することを特徴とする請求項16乃至請求項30のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項32】
チャネル状態フィードバックを復号する方法(60)であって、
複数のチャネル係数についてのレートであって、前記複数のチャネル係数の統計値の関数である複数のレートを個別に決定するステップ(62)と、
前記複数のチャネル係数を前記個別に決定された複数のレートで復号するステップ(64)とを有することを特徴とする方法(60)。
【請求項33】
前記複数のチャネル係数についての複数のレートを決定する前記ステップが、低速フィードバックチャネル上で受信局から前記複数のレートを受信するステップを有することを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記複数のチャネル係数についての複数のレートを決定する前記ステップが、前記複数のチャネル係数の統計値を低速フィードバックチャネル上で受信局から受信するステップと、前記受信した統計値に基づいて前記複数のレートを算出するステップとを有することを特徴とする請求項32又は請求項33記載の方法(60)。
【請求項35】
前記受信した統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項34記載の方法(60)。
【請求項36】
前記複数のチャネル係数についての複数のレートを決定する前記ステップが、前記複数のチャネル係数の統計値を測定するステップと、前記測定された統計値に基づいて前記複数のチャネル係数についての前記複数のレートを算出するステップとを有することを特徴とする請求項32乃至請求項35のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項37】
第1のレート制御期間に測定された前記統計値が第2のレート制御期間のレート算出に用いられることを特徴とする請求項34記載の方法(60)。
【請求項38】
前記統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項37記載の方法(60)。
【請求項39】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換するステップをさらに有することを特徴とする請求項32乃至請求項38のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項40】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換する前記ステップが、前記複数のチャネル係数を複数の周波数領域係数に変換するステップを有することを特徴とする請求項37記載の方法(60)。
【請求項41】
前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングするステップと、前記スケーリングされた複数のチャネル係数を復号するステップとをさらに有することを特徴とする請求項32乃至請求項40のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項42】
可変レート量子化器によって複数のチャネル係数を復号するためのフィードバック復号器(104)であって、
複数のチャネル係数について、対応する複数のレートを決定するレートコントローラ(408)と、
前記レートコントローラ(408)によって決定された複数のレートで、前記複数のチャネル係数を個別に復号する量子化復号器(402)とを有することを特徴とするフィードバック復号器(104)。
【請求項43】
前記レートコントローラ(408)が、前記複数のレートを低速フィードバックチャネル上で受信局から受信することにより、複数のチャネル係数について前記対応する複数のレートを決定することを特徴とする請求項42記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項44】
前記レートコントローラ(408)が、前記複数のチャネル係数の統計値を低速フィードバックチャネル上で受信局から受信し、前記複数のレートを前記受信した統計値に基づいて算出することにより、前記複数のチャネル係数についての前記対応する複数のレートを決定することを特徴とする請求項42又は請求項43記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項45】
前記受信した統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項44記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項46】
前記レートコントローラ(408)が、前記複数のチャネル係数の統計値を測定し、前記複数のレートを前記測定した統計値に基づいて算出することにより、前記複数のチャネル係数についての前記対応する複数のレートを決定することを特徴とする請求項42乃至請求項45のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項47】
前記レートコントローラ(408)が、前記統計値を第1のレート制御期間に測定し、前記測定した統計値に基づいて前記複数のレートを第2のレート制御期間に算出することを特徴とする請求項46記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項48】
前記統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項47記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項49】
複数の変換されたチャネル係数を生成するため、復号に先立って前記複数のチャネル係数を変換するための変換プロセッサ(406)をさらに有することを特徴とする請求項42乃至請求項48のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項50】
前記変換プロセッサ(406)が前記複数のチャネル係数を複数の周波数領域係数に変換することを特徴とする請求項49記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項51】
前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングし、前記スケーリングされた複数のチャネル係数を復号するためのスケーリング手段(404)をさらに有することを特徴とする請求項42乃至請求項50のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項52】
前記量子化復号器(110)が、木構造ベクトル量子化器の復号器を用いて実現されることを特徴とする請求項42乃至請求項51のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項1】
チャネル状態フィードバックを量子化する方法であって、
複数のチャネル係数についての統計値を求めるステップ(52)と、
前記統計値に基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化するステップ(54, 56)とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換するステップをさらに有することを特徴とする請求項1記載の方法(50)。
【請求項3】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換する前記ステップが、
複数の周波数領域チャネル係数を複数の時間領域チャネル係数に変換するステップと、
予め定められた遅延拡散範囲内の複数の時間領域チャネル係数を選択するステップと、
前記選択された複数の時間領域チャネル係数を複数の固有領域チャネル係数に変換するステップとを有することを特徴とする請求項2記載の方法(50)。
【請求項4】
複数のチャネル係数についての統計値を求める前記ステップが、各チャネル係数について別個の統計値を求めるステップを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項5】
前記別個の統計値が、前記チャネル係数の相対電力を含むことを特徴とする請求項4記載の方法(50)。
【請求項6】
前記複数のレートが、前記相対電力の降順で決定されることを特徴とする請求項5記載の方法(50)。
【請求項7】
前記別個の統計値が、前記チャネル係数に関する分散を含むことを特徴とする請求項4記載の方法(50)。
【請求項8】
前記複数のレートが、前記分散の降順で決定されることを特徴とする請求項7記載の方法(50)。
【請求項9】
前記複数のレートが、現在のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて決定され、前記統計値が前記現在のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化される前に算出されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項10】
前記複数のレートが低速フィードバックチャネル上で送信され、前記量子化された複数のチャネル係数が高速フィードバックチャネル上で送信されることを特徴とする請求項9記載の方法(50)。
【請求項11】
前記複数のレートが、過去のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて決定され、前記統計値が前記前記過去のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化された後に算出されることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項12】
前記量子化された複数のチャネル係数が高速フィードバックチャネル上で送信されることを特徴とする請求項11記載の方法(50)。
【請求項13】
前記複数のチャネル係数を求めるステップが、前記複数のチャネル係数の白色化するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項14】
前記統計値に基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化する前記ステップが、前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングするステップと、前記スケーリングされた複数のチャネル係数を量子化するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法(50)。
【請求項15】
前記統計値に基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化する前記ステップが、
前記統計値に基づいて前記複数のチャネル係数に対する複数のビット割り当てを決定するステップと、
前記複数のビット割り当てに基づいて決定された複数のレートで前記複数のチャネル係数を個別に量子化するステップとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
チャネル状態フィードバックを量子化するためのフィードバック符号化器(206)であって、
複数のチャネル係数についての統計値を算出するメトリック計算器(214, 308)と、
前記複数のチャネル係数を、前記統計値に基づいて決定された複数のレートで個別に量子化するための複数のマルチレート量子化器(212, 312)と、
前記複数の量子化器についての前記複数のレートを決定するレートコントローラ(216, 310)と、を有することを特徴とするフィードバック符号化器(206)。
【請求項17】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換する変換プロセッサ(304)をさらに有することを特徴とする請求項16記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項18】
前記変換プロセッサ(304)が、複数の周波数領域チャネル係数を複数の時間領域チャネル係数に変換し、予め定められた遅延拡散範囲内の前記複数の時間領域チャネル係数を選択し、前記選択された複数の時間領域チャネル係数を複数の固有領域チャネル係数に変換することを特徴とする請求項17記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項19】
前記メトリック計算器が各チャネル係数について別個の統計値を求めることを特徴とする請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項20】
前記別個の統計値が、前記チャネル係数の相対電力を含むことを特徴とする請求項19記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項21】
前記レートコントローラは、前記相対電力の降順に前記複数のチャネル係数についての前記複数のレートを決定することを特徴とする請求項20のフィードバック符号化器(206)。
【請求項22】
前記別個の統計値が、前記複数のチャネル係数に関する分散を含むことを特徴とする請求項19記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項23】
前記レートコントローラ(216, 310)は、前記分散の降順に前記複数のチャネル係数についての前記複数のレートを決定することを特徴とする請求項22のフィードバック符号化器(206)。
【請求項24】
前記レートコントローラ(216, 310)が、現在のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて前記複数のレートを決定し、前記統計値が前記現在のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化される前に算出されることを特徴とする請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項25】
前記レートを低速フィードバックチャネルで送信し、量子化された複数のチャネル係数を高速フィードバックチャネル上で送信することを特徴とする請求項24記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項26】
前記レートコントローラ(216, 310)が、前記複数のレートを過去のレート制御期間内に収集された統計値に基づいて決定し、前記統計値が前記前記過去のレート制御期間内で前記複数のチャネル係数が量子化された後に算出されることを特徴とする請求項16乃至請求項25記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項27】
前記量子化された複数のチャネル係数を高速フィードバックチャネル上で送信することを特徴とする請求項26記載のフィードバック符号化器(206)
【請求項28】
さらに、前記複数のチャネル係数を白色化するための白色化フィルタ(302)をさらに有することを特徴とする請求項16乃至請求項27のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項29】
前記量子化前に前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングするスケーリング手段(306)をさらに有することを特徴とする請求項17記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項30】
前記レートコントローラ(216, 310)が、前記統計値に基づいて前記複数の量子化器についての複数のビット割り当てを決定することを特徴とする請求項16乃至請求項29のいずれか1項に記載のフィードバックコントローラ(206)。
【請求項31】
前記複数のマルチレート量子化器(212, 312)が、前記統計値に基づいて設計された、複数の木構造ベクトル量子化器の符号化器を有することを特徴とする請求項16乃至請求項30のいずれか1項に記載のフィードバック符号化器(206)。
【請求項32】
チャネル状態フィードバックを復号する方法(60)であって、
複数のチャネル係数についてのレートであって、前記複数のチャネル係数の統計値の関数である複数のレートを個別に決定するステップ(62)と、
前記複数のチャネル係数を前記個別に決定された複数のレートで復号するステップ(64)とを有することを特徴とする方法(60)。
【請求項33】
前記複数のチャネル係数についての複数のレートを決定する前記ステップが、低速フィードバックチャネル上で受信局から前記複数のレートを受信するステップを有することを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記複数のチャネル係数についての複数のレートを決定する前記ステップが、前記複数のチャネル係数の統計値を低速フィードバックチャネル上で受信局から受信するステップと、前記受信した統計値に基づいて前記複数のレートを算出するステップとを有することを特徴とする請求項32又は請求項33記載の方法(60)。
【請求項35】
前記受信した統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項34記載の方法(60)。
【請求項36】
前記複数のチャネル係数についての複数のレートを決定する前記ステップが、前記複数のチャネル係数の統計値を測定するステップと、前記測定された統計値に基づいて前記複数のチャネル係数についての前記複数のレートを算出するステップとを有することを特徴とする請求項32乃至請求項35のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項37】
第1のレート制御期間に測定された前記統計値が第2のレート制御期間のレート算出に用いられることを特徴とする請求項34記載の方法(60)。
【請求項38】
前記統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項37記載の方法(60)。
【請求項39】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換するステップをさらに有することを特徴とする請求項32乃至請求項38のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項40】
変換された複数のチャネル係数を生成するために前記複数のチャネル係数を変換する前記ステップが、前記複数のチャネル係数を複数の周波数領域係数に変換するステップを有することを特徴とする請求項37記載の方法(60)。
【請求項41】
前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングするステップと、前記スケーリングされた複数のチャネル係数を復号するステップとをさらに有することを特徴とする請求項32乃至請求項40のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項42】
可変レート量子化器によって複数のチャネル係数を復号するためのフィードバック復号器(104)であって、
複数のチャネル係数について、対応する複数のレートを決定するレートコントローラ(408)と、
前記レートコントローラ(408)によって決定された複数のレートで、前記複数のチャネル係数を個別に復号する量子化復号器(402)とを有することを特徴とするフィードバック復号器(104)。
【請求項43】
前記レートコントローラ(408)が、前記複数のレートを低速フィードバックチャネル上で受信局から受信することにより、複数のチャネル係数について前記対応する複数のレートを決定することを特徴とする請求項42記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項44】
前記レートコントローラ(408)が、前記複数のチャネル係数の統計値を低速フィードバックチャネル上で受信局から受信し、前記複数のレートを前記受信した統計値に基づいて算出することにより、前記複数のチャネル係数についての前記対応する複数のレートを決定することを特徴とする請求項42又は請求項43記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項45】
前記受信した統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項44記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項46】
前記レートコントローラ(408)が、前記複数のチャネル係数の統計値を測定し、前記複数のレートを前記測定した統計値に基づいて算出することにより、前記複数のチャネル係数についての前記対応する複数のレートを決定することを特徴とする請求項42乃至請求項45のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項47】
前記レートコントローラ(408)が、前記統計値を第1のレート制御期間に測定し、前記測定した統計値に基づいて前記複数のレートを第2のレート制御期間に算出することを特徴とする請求項46記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項48】
前記統計値が前記複数のチャネル係数の分散を含むことを特徴とする請求項47記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項49】
複数の変換されたチャネル係数を生成するため、復号に先立って前記複数のチャネル係数を変換するための変換プロセッサ(406)をさらに有することを特徴とする請求項42乃至請求項48のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項50】
前記変換プロセッサ(406)が前記複数のチャネル係数を複数の周波数領域係数に変換することを特徴とする請求項49記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項51】
前記複数のチャネル係数の統計値に基づいて前記複数のチャネル係数をスケーリングし、前記スケーリングされた複数のチャネル係数を復号するためのスケーリング手段(404)をさらに有することを特徴とする請求項42乃至請求項50のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【請求項52】
前記量子化復号器(110)が、木構造ベクトル量子化器の復号器を用いて実現されることを特徴とする請求項42乃至請求項51のいずれか1項に記載のフィードバック復号器(104)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−533420(P2010−533420A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516009(P2010−516009)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050865
【国際公開番号】WO2009/011652
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050865
【国際公開番号】WO2009/011652
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
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