説明

二次側圧力監視装置及び二次側圧力判別方法

【課題】整圧器の故障ではなく、他の要因によって二次側圧力が上昇している状態を認識して、無駄な処理や作業が行われるのを防止する。
【解決手段】流体供給路1の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器2が流体供給路1の途中に設けられている整圧設備における二次側圧力を監視する二次側圧力監視装置17において、二次側圧力が上昇したときに、流体供給路1の雰囲気の変化及び流体供給路1の流体の温度変化の一方又は双方に起因して二次側圧力が上昇する正常昇圧状態であるか否かを判別する昇圧状態判別手段19を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給路の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器が前記流体供給路の途中に設けられている整圧設備において、二次側圧力を監視する二次側圧力監視装置及び二次側圧力判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような整圧設備では、例えば、流体供給路の整圧器よりも下流側を複数の分岐路に分岐してそれら複数の分岐路の夫々を各需要家に接続することにより、複数の需要家に天然ガス等の流体を供給するように構成されている。そして、整圧器によりそれよりも下流側の二次側圧力を上流側の一次側圧力よりも低圧の設定圧力に調整することにより、各需要家に供給する流体圧力が一定範囲内となるようにしている。
このような整圧設備では、整圧器が停止し下流側の流体が一定容積で保持されているとき、本来、二次側圧力は一定となるが、整圧器の故障によってリークが発生すると二次側圧力が上昇することになる。そこで、従来の二次側圧力監視装置では、二次側圧力を監視して、二次側圧力が異常設定値以上となっているか否かを判別している。そして、二次側圧力が異常設定値以上となっていると判別すると、例えば、流体供給路の一次側に配設された遮断弁を作動させる等の異常処理を行う安全機構を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、異常処理を行った後は、整圧器の設置箇所等に作業者を派遣して、整圧器の交換や修正等のメンテナンス作業を行ったのち、遮断弁を復帰させる等の復帰作業を作業者が行うようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−283883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二次側圧力監視装置では、二次側圧力が異常設定値以上となると一律に異常処理が行われる。その結果、整圧器の故障ではなく、流体供給路の雰囲気の変化等の他の要因によって二次側圧力が上昇して、二次側圧力が異常設定値以上となった場合でも、異常処理が行われることになる。流体供給路の雰囲気の変化等の他の要因によって二次側圧力が上昇している場合には、整圧器の故障の場合とは異なった異常処理を行う必要がある。したがって、従来の装置では、整圧器の故障でないにもかかわらず、整圧器故障に対応した異常処理を行うことになり、整圧器の設置箇所等に作業者を派遣することになり、煩わしいものとなっていた。
【0005】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、整圧器の故障ではなく、他の要因によって二次側圧力が上昇している状態を認識して、無駄な処理や作業が行われるのを防止できる二次側圧力監視装置及び二次側圧力判別方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る二次側圧力監視装置の特徴構成は、流体供給路の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器が前記流体供給路の途中に設けられている整圧設備において、二次側圧力を監視する二次側圧力監視装置であって、
二次側圧力が上昇したときに、前記流体供給路の雰囲気の変化及び前記流体供給路の流体の温度変化の一方又は双方に起因して二次側圧力が上昇する正常昇圧状態であるか否かを判別する昇圧状態判別手段を備えている点にある。
【0007】
例えば、流体供給路の雰囲気の気温が上昇すると、流体供給路を流動する流体自身の温度も上昇し、その温度膨張により二次側圧力が上昇することになる。また、流体供給路の雰囲気の気圧が低下すると流体の二次側ゲージ圧力が上昇する。流体温度の上昇については、雰囲気の温度上昇の他に、例えば、直射日光による流体の加熱が考えられ、直射日光による加熱の傾向を日照率で置き換えることが可能である。よって、日照率の変化と二次側圧力の昇圧に相関があることも考えられる。また、整圧器による減圧によって流体温度が低下すると、その直後に負荷がなくなり整圧器が停止すれば、二次側の流体温度が上昇して二次側圧力が上昇することも考えられる。
そこで、本発明の二次側圧力監視装置では、昇圧状態判別手段を備え、流体供給路の雰囲気の変化や流体供給路の流体の温度変化を捉えて正常昇圧状態であるか否かを判別する。これにより、二次側圧力が異常設定値以上となっても、その要因が正常昇圧状態であることを認識できる。よって、作業者等が正常昇圧状態であることを認識することができるので、正常昇圧状態の場合には、二次側圧力が異常設定値以上となっても、整圧器故障に対応した異常処理の実行を阻止することができ、整圧器の設置箇所等に作業者を派遣することも阻止できる。その結果、整圧器の故障ではなく、他の要因によって二次側圧力が上昇している状態を認識して、無駄な処理や作業が行われるのを防止できる。
【0008】
本発明に係る二次側圧力監視装置の更なる特徴構成は、前記昇圧状態判別手段にて前記正常昇圧状態であると判別すると、前記流体供給路の一次側に配設された遮断手段の作動を禁止する又はその遮断手段の作動を禁止するための作動禁止情報を出力する遮断禁止手段を備えている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、正常昇圧状態である場合に、二次側圧力が異常設定値以上となっても、遮断禁止手段が遮断手段の作動を禁止することにより、安全機構により異常処理が行われることを自動的に阻止することができる。また、正常昇圧状態であると遮断禁止手段が作動禁止情報を出力する場合にも、安全機構や作業者に対して作動禁止情報を出力することにより、異常処理が行われることを阻止できる。よって、正常昇圧状態である場合に、異常処理の実行を確実に阻止することができる。
【0010】
本発明に係る二次側圧力監視装置の更なる特徴構成は、前記昇圧状態判別手段は、前記流体供給路の雰囲気の温度変化を監視して、前記正常昇圧状態であるか否かを判別するように構成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、昇圧状態判別手段は、流体供給路の雰囲気の温度変化を監視することにより、例えば気温の上昇等により流体供給路の雰囲気の温度が上昇していることを捉えることができる。よって、昇圧状態判別手段は、流体供給路の雰囲気の温度が上昇していることを的確に検出して、その雰囲気の温度上昇により正常昇圧状態であることを正確に判別することができる。
【0012】
本発明に係る二次側圧力監視装置の更なる特徴構成は、前記昇圧状態判別手段は、前記流体供給路の雰囲気の圧力変化を監視して、前記正常昇圧状態であるか否かを判別するように構成されている点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、昇圧状態判別手段は、流体供給路の雰囲気の圧力変化を監視することにより、例えば、気圧の低下等により流体供給路内部の流体のゲージ圧力が昇圧していることを捉えることができる。よって、昇圧状態判別手段は、その雰囲気の気圧の低下により正常昇圧状態であることを正確に判別することができる。
【0014】
本発明に係る二次側圧力判別方法の特徴構成は、流体供給路の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器が流体供給路の途中に設けられている整圧設備において、二次側圧力を監視する二次側圧力判別方法であって、
二次側圧力が上昇したときに、前記流体供給路の雰囲気の変化及び前記流体供給路の流体の温度変化の一方又は双方に起因して二次側圧力が上昇する正常昇圧状態であるか否かを判別する点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、本発明に係る二次側圧力監視装置の特徴構成で述べた如く、流体供給路の雰囲気の変化や流体供給路の流体の温度変化を捉えて正常昇圧状態であるか否かを判別することができ、二次側圧力が異常設定値以上となっても、その要因が正常昇圧状態であることを認識できる。よって、整圧器の故障ではなく、他の要因によって二次側圧力が上昇している状態を認識して、無駄な処理や作業が行われるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る二次側圧力監視装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
この二次側圧力監視装置は、図1に示すように、流体供給路1の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器2が流体供給路1の途中に設けられている整圧設備において、整圧器2の二次側圧力を監視するものである。
【0017】
この整圧設備は、図示は省略するが、例えば、流体供給路1の整圧器2よりも下流側を複数の分岐路に分岐してそれら複数の分岐路の夫々を各需要家に接続することにより、複数の需要家に天然ガス等の流体を供給するように構成されている。そして、整圧器2によりそれよりも下流側の二次側圧力を上流側の一次側圧力よりも低圧の設定圧力に調整するように構成されている。流体供給路1において整圧器2よりも上流側の一次側には、整圧器2への流体の供給を遮断する遮断手段としての遮断弁3が設けられている。
【0018】
整圧器2としての主ガバナ4は、流体供給路1に設けられており、パイロットガバナ5は、主ガバナ4よりも流体供給路1の上流側から分岐されて主ガバナ4よりも流体供給路1の下流側に合流する分岐合流路6に設けられている。
主ガバナ4は、ダイヤフラム7にて弁体8を移動させて弁体8を開閉させるように構成されている。ダイヤフラム7は、弁体8を開き側に移動させるようにバネ9により付勢されている。ダイヤフラム7にて区画された圧力検出室10には、分岐合流路6が接続されている。そして、分岐合流路6には、流体供給路1の分岐箇所6aから圧力検出室10に分岐接続される分岐接続箇所6bとの間に絞り11が設けられている。
パイロットガバナ5は、主ガバナ4と同様に、パイロット用ダイヤフラム12にてパイロット用弁体13を移動させてパイロット用弁体13を開閉させるように構成されている。パイロット用ダイヤフラム12は、パイロット用弁体13を開き側に移動させるようにパイロット用バネ14により付勢されている。
【0019】
主ガバナ4の下流側圧力となる整圧器2の二次側圧力が設定圧力よりも高い場合には、パイロットガバナ5におけるパイロット用圧力検出室15の圧力が高く、その圧力によりパイロット用バネ14の付勢力に抗してパイロット用弁体13が閉じ側に移動する。これにより、主ガバナ4の圧力検出室10の圧力は、流体供給路1の主ガバナ4よりも上流側の高圧の一次側圧力となり、バネ9の付勢力に抗して弁体8が閉じ側に移動する。その結果、整圧器2は停止して流体が二次側に供給されない。
逆に、整圧器2の二次側圧力が設定圧力よりも低い場合には、パイロット用バネ14の付勢力によりパイロット用弁体13が開き側に移動する。これにより、分岐合流路6では、絞り11により流体の流量が絞られているので、圧力検出室10の流体がパイロットガバナ5の側に流動する。よって、圧力検出室10の圧力が低下してバネ9の付勢力により弁体8が開き側に移動する。その結果、流体が二次側に供給されて、整圧器2の二次側圧力が上昇して設定圧力に調整される。
【0020】
流体供給路1の整圧器2よりも下流側の二次側には、二次側圧力を検出する二次側圧力検出センサ16が設けられている。そして、二次側圧力検出センサ16の検出情報を入力することにより、二次側圧力を監視する二次側圧力監視装置17が設けられており、この二次側圧力監視装置17が、本発明に係る二次側圧力監視装置である。二次側圧力監視装置17は、二次側圧力検出センサ16の検出情報をリアルタイムで入力して、二次側圧力をリアルタイムで監視するように構成されている。
【0021】
整圧器2が停止し下流側の流体が一定容積で保持されているときには、本来、二次側圧力は一定となるが、整圧器2の故障によってリークが発生すると二次側圧力が上昇することになる。そこで、二次側圧力監視装置17は、二次側圧力が異常設定値(例えば、2.75や3.5KPa)以上となっていると判別すると、遮断弁3を作動させて整圧器2への流体の供給を遮断する遮断処理を行う遮断手段18を備えている。
【0022】
二次側圧力が上昇する要因としては、整圧器2の故障だけでなく、それ以外の場合もあるので、図2〜図4の計測結果に基づいて、整圧器2の故障以外の要因について説明する。図2〜図4の夫々は、ある整圧設備において実際に二次側圧力を計測した結果を示したものである。
【0023】
図2は、実際に計測した二次側圧力P1、流体供給路1における整圧器2の配設箇所における気温T、その気温を流体温度と同一と仮定してボイル・シャルルの法則から演算した流体供給路1の二次側における計算圧力P2の夫々について、時間経過に伴う変化を示したグラフである。
この図2により、実際に計測した二次側圧力P1と気温を用いて演算した計算圧力P2とがほぼ一致して変化していることが分かる。よって、二次側圧力は、気温の変化に伴って変化すると言えるので、二次側圧力が上昇する要因として、気温の上昇等による流体供給路1の雰囲気の温度変化が考えられる。逆に、このようにして演算した圧力の変化であれば、整圧器2に異常はないと判断できる。
【0024】
図3は、実際に計測した二次側圧力P3、流体供給路1における整圧器2の配設箇所における気圧P4(例えば、気象庁の気圧データ)、その気圧データを用いて演算した流体供給路1の二次側における計算圧力P5の夫々について、時間経過に伴う変化を示したグラフである。
この図3により、実際に計測した二次側圧力P3と気圧を用いて演算した計算圧力P5とがほぼ一致して変化していることが分かる。一般に二次側圧力はゲージ圧で表示されるが、当然のことながら気圧の変化分だけ二次側圧力は変化するので、二次側圧力が上昇する要因として、気圧の低下等による流体供給路1の雰囲気の圧力変化が考えられる。逆に、このようにして演算した圧力の変化であれば、整圧器2に異常はないと判断できる。
【0025】
図4は、実際に計測した二次側圧力P6、流体供給路1における整圧器2の配設箇所における日照率Qの夫々について、ある1日の時間経過に伴う変化を示したグラフである。ここで、日照率については、例えば、太陽の中心が東の水平線に現れてから西の水平線に沈むまでの時間を可照時間とし、その可照時間と日照時間とを用いて下記の〔数1〕から日照率を求めることができる。
〔数1〕
日照率(%)=日照時間÷可照時間×100
【0026】
この図4により、実際に計測した二次側圧力P6は、日照率Qの上昇に伴って上昇し、日照率Qの低下に伴って低下していることが分かる。よって、二次側圧力は日照率の変化に伴って変化していると言える。二次側圧力が上昇する要因として、気温上昇の他に直射日光による流体の加熱が考えられ、直射日光による加熱の傾向を日照率で置き換えることができる。このように日照率の変化と二次側圧力の昇圧に相関があれば、整圧器2に異常はないと判断できる。
【0027】
また、整圧器2にて高圧の一次側圧力を低圧の二次側圧力に減圧する際に、ジュール・トムソン効果により流体供給路1を流動する流体の温度が変化する。例えば、整圧器2が長時間、大流量で流体を流動させたときに、整圧器2による減圧によって流体の温度が低下すると、その直後に負荷がなくなり整圧器2が停止すれば、流体供給路1の二次側における流体の温度が上昇することになり、その温度膨張により二次側圧力が上昇することになる。よって、二次側圧力が上昇する要因として、流体供給路1の流体の減圧に起因する温度変化が考えられる。
【0028】
以上のことから、二次側圧力が上昇する要因としては、整圧器2の故障だけでなく、流体供給路1の雰囲気の温度変化や圧力変化である場合、或いは、流体供給路1の流体の温度変化である場合が考えられる。よって、整圧器2の故障以外の要因によっても、二次側圧力が上昇して二次側圧力が異常設定値以上となる場合がある。例えば、図2に示した計測を行った整圧設備では、異常設定値を例えば3.5KPaとしているが、気温Tの上昇により二次側圧力P1が3.5KPa以上となっている。また、図3及び図4に示した計測を行った整圧設備では、異常設定値を例えば2.75KPaとしているが、気圧P4や日照率Qの変化により二次側圧力P3,P6が2.75KPa以上となっている。
一方、二次側圧力が上昇した要因が、流体供給路1の雰囲気の温度変化や圧力変化である場合、或いは、流体供給路1の流体の温度変化である場合には、整圧器2の故障の場合とは異なり、二次側圧力の昇圧量はあるレベルで収まるので、遮断手段18による遮断処理を行って整圧器2への流体の供給を遮断しなければならないほどの危険性はなく、点検等の他の方法で対応可能である。
【0029】
そこで、本発明に係る二次側圧力監視装置17では、二次側圧力が上昇したときに、流体供給路1の雰囲気の圧力変化や温度変化、及び、流体供給路1の流体の温度変化を監視することにより、流体供給路1の雰囲気の変化及び流体供給路1の流体の温度変化の一方又は双方に起因して二次側圧力が上昇する正常昇圧状態であるか否かを判別する昇圧状態判別手段19と、昇圧状態判別手段19にて正常昇圧状態であると判別すると、遮断手段18による遮断処理の実行を禁止する遮断禁止手段20とを備えている。これにより、正常昇圧状態である場合には、二次側圧力が異常設定値以上となっても、遮断手段18による遮断処理の実行を禁止して、遮断処理が無駄に行われることを防止している。
【0030】
昇圧状態判別手段19は、流体供給路1における整圧器2の配設箇所における気圧、気温、地中温度、流体供給路1の管表面温度、日照時間及び日光の熱放射量、流体温度、並びに、整圧器2における流体の流量又は整圧器2の開度、整圧器2による減圧幅の夫々をリアルタイムで取得しており、その取得した各種情報を用いて正常昇圧状態であるか否かを判別するように構成されている。
【0031】
昇圧状態判別手段19は、例えば、整圧器2が停止している時、二次側圧力検出センサ16にて検出する二次側圧力が判別用設定値(異常設定値よりも小さい値とする)以上となる、又は、二次側圧力検出センサ16にて検出する二次側圧力の昇圧速度が判別用設定速度以上となると、判別開始タイミングであると判別する。そして、昇圧状態判別手段19は、図3に示すように、リアルタイムで取得する気圧を用いて計算圧力(P5参照)の演算を開始して、二次側圧力検出センサ16にて検出した二次側圧力(P3参照)の変化履歴と演算した計算圧力(P5参照)の変化履歴とを比較する。昇圧状態判別手段19は、例えば、判別開始タイミングから設定時間が経過するまでの二次側圧力の変化履歴と計算圧力の変化履歴とが合致する、或いは、二次側圧力と計算圧力とが連続して設定回数以上一致する等により、両者の変化履歴が合致していると、二次側圧力が上昇している要因は流体供給路1の雰囲気の圧力変化であるとして、正常昇圧状態であると判別する。
【0032】
また、昇圧状態判別手段19は、判別開始タイミングになると、図2に示すように、リアルタイムで取得する気温を用いて計算圧力(P2参照)の演算を開始し、二次側圧力検出センサ16にて検出した二次側圧力(P1参照)の変化履歴と演算した計算圧力(P2参照)の変化履歴とを比較する。そして、昇圧状態判別手段19は、両者の変化履歴が合致していると、二次側圧力が上昇している要因は流体供給路1の雰囲気の温度変化であるとして、正常昇圧状態であると判別する。ここで、気温を用いることに加えて、流体温度は言うまでもなく、地中温度や流体供給路1の管表面温度を用いることができる。なお、流体供給路1が地中に埋設されている場合には、気温や直射日光の影響をあまり受けないことから、気温や直射日光以外の要因(気圧変化や減圧による流体温度変化等)のみで演算してもある程度の精度を確保できる。
【0033】
また、昇圧状態判別手段19は、日照時間から日照率をリアルタイムで求め、その日照率の変化履歴と二次側圧力検出センサ16にて検出した二次側圧力の変化履歴とを比較して、日照率が上昇したときに二次側圧力も上昇し且つ日照率が低下したときに二次側圧力も低下しているというように日照率と二次側圧力とが上下する傾向が合致していると、二次側圧力が上昇している要因は流体供給路1の雰囲気の温度変化であるとして、正常昇圧状態であると判別する。ここで、日照率に加えて、日光の熱放射量を用いることもできる。つまり、日光の熱放射量が多くなるほど日照率が高いと言えるので、日光の熱放射量が上昇したときに二次側圧力も上昇し且つ日光の熱放射量が低下したときに二次側圧力も低下しているというように日光の熱放射量と二次側圧力とが上下する傾向が合致していると、二次側圧力が上昇している要因は流体供給路1の雰囲気の温度変化であるとして、正常昇圧状態であると判別することができる。
【0034】
更に、昇圧状態判別手段19は、リアルタイムで取得する流体供給路1の流体温度の変化履歴と二次側圧力検出センサ16にて検出した二次側圧力の変化履歴とを比較して、流体温度が上昇しているときに二次側圧力も上昇しているというように流体温度と二次側圧力の上昇傾向が合致していると、二次側圧力が上昇している要因は流体供給路1の流体の温度変化であるとして、正常昇圧状態であると判別する。
流体温度を用いることに加えて、整圧器2における流体の流量又は整圧器2の開度、及び、整圧器2による減圧幅を用いることができる。上述の如く、例えば、整圧器2が長時間、大流量で流体を流動させたときに、整圧器2による減圧によって流体の温度が低下するが、その直後に負荷がなくなり整圧器2が停止すれば、流体供給路1の二次側における流体の温度が上昇する。よって、整圧器2における流体の流量又は整圧器2の開度、及び、整圧器2による減圧幅により、整圧器2が長時間、大流量で流体を減圧させているか否かを判別することができる。そして、整圧器2が長時間、大流量で流体を減圧させていると判別した直後に、流量負荷がなくなり整圧器2が停止し、二次側圧力が上昇すると、二次側圧力が上昇している要因は流体供給路1の流体の減圧に起因する温度変化であるとして、正常昇圧状態であると判別することができる。
【0035】
ここで、昇圧状態判別手段19は、流体供給路1の雰囲気の温度変化、流体供給路1の雰囲気の圧力変化、流体供給路1の流体の温度変化の何れかにより二次側圧力が上昇していると、正常昇圧状態であると判別しているが、例えば、流体供給路1の雰囲気の温度変化、流体供給路1の雰囲気の圧力変化、流体供給路1の流体の温度変化の全てによって二次側圧力が上昇している現象が生じている場合に、正常昇圧状態であると判別してもよい。また、例えば、流体供給路1の流体の温度変化を最優先条件として、流体供給路1の流体の温度変化により二次側圧力が上昇しているという単独条件が満たされると正常昇圧状態であると判別するとともに、流体供給路1の雰囲気の気温変化及び流体供給路1の雰囲気の気圧変化の双方により二次側圧力が上昇していると複数条件が満たされると正常昇圧状態であると判別することもできる。このように、設置状況等に応じて複数の要因のうち優先順位を設定して、その優先順位に従って正常昇圧状態であるか否かを判別することもできる。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、二次側圧力が異常設定値以上となっていると判別すると、遮断弁3を作動させて整圧器2への流体の供給を遮断するための遮断情報を遮断弁3の作動を遠隔制御可能な遠隔制御装置等に出力するように遮断手段18を構成することもできる。この場合には、遮断禁止手段20が、昇圧状態判別手段19にて正常昇圧状態であると判別すると、遮断弁3の作動を禁止する遮断禁止情報を遠隔制御装置等に出力するように構成される。
【0037】
(2)上記実施形態において、昇圧状態判別手段19は、流体供給路1における整圧器2の配設箇所における気圧、気温、地中温度、流体供給路1の管表面温度、日照時間及び日光の熱放射量、流体温度、並びに、整圧器2における流体の流量又は整圧器2の開度、整圧器2による減圧幅の夫々をリアルタイムで取得しているが、これら全ての情報を取得する必要はなく、例えば、整圧設備の設置条件等に基づいて選択した情報のみを取得して、正常昇圧状態であるか否かを判別することもできる。例えば、整圧整備が、気圧の影響をほとんど受けず、気温の影響を受けやすい箇所に設置されている場合には、気温、地中温度、流体供給路1の管表面温度等の流体供給路1の雰囲気の温度変化に関する情報のみ取得して、正常昇圧状態であるかを判別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、流体供給路の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器が前記流体供給路の途中に設けられている整圧設備において、整圧器の故障ではなく、他の要因によって二次側圧力が上昇している状態を認識して、無駄な処理や作業が行われるのを防止できる各種の二次側圧力監視装置及び二次側圧力判別方法に適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】整圧設備の概略構成を示す図
【図2】気温、二次側圧力及び計算圧力の夫々についての時間経過に伴う変化を示すグラフ
【図3】気圧、二次側圧力及び計算圧力の夫々についての時間経過に伴う変化を示すグラフ
【図4】日照率及び二次側圧力の時間経過に伴う変化を示すグラフ
【符号の説明】
【0040】
1 流体供給路
2 整圧器
17 二次側圧力監視装置
19 昇圧状態判別手段
20 遮断禁止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給路の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器が前記流体供給路の途中に設けられている整圧設備において、二次側圧力を監視する二次側圧力監視装置であって、
二次側圧力が上昇したときに、前記流体供給路の雰囲気の変化及び前記流体供給路の流体の温度変化の一方又は双方に起因して二次側圧力が上昇する正常昇圧状態であるか否かを判別する昇圧状態判別手段を備えている二次側圧力監視装置。
【請求項2】
前記昇圧状態判別手段にて前記正常昇圧状態であると判別すると、前記流体供給路の一次側に配設された遮断手段の作動を禁止する又はその遮断手段の作動を禁止するための作動禁止情報を出力する遮断禁止手段を備えている請求項1に記載の二次側圧力監視装置。
【請求項3】
前記昇圧状態判別手段は、前記流体供給路の雰囲気の温度変化を監視して、前記正常昇圧状態であるか否かを判別するように構成されている請求項1又は2に記載の二次側圧力監視装置。
【請求項4】
前記昇圧状態判別手段は、前記流体供給路の雰囲気の圧力変化を監視して、前記正常昇圧状態であるか否かを判別するように構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の二次側圧力監視装置。
【請求項5】
流体供給路の二次側圧力を設定圧力に調整自在な整圧器が流体供給路の途中に設けられている整圧設備において、二次側圧力を監視する二次側圧力判別方法であって、
二次側圧力が上昇したときに、前記流体供給路の雰囲気の変化及び前記流体供給路の流体の温度変化の一方又は双方に起因して二次側圧力が上昇する正常昇圧状態であるか否かを判別する二次側圧力判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−140189(P2010−140189A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314864(P2008−314864)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】