説明

二次衝突低減システム

【課題】衝突検出の確実性を向上させて、誤作動が発生する虞を減少させることが出来る二次衝突低減システムを提供する。
【解決手段】車両1の加速度を検出する第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24と、車両1の進行方向が変更されたことを検出するヨーレートセンサ25と、車両1に制動力を与えるブレーキ装置5…とを有している二次衝突低減システムである。
この二次衝突低減システムには、第1加速度センサ21等及びヨーレートセンサ25からの検出信号に応じて、ブレーキ装置5…を作動させる制御装置10が設けられている。
制御装置10では、第1加速度センサ21等によって検出された加速度が、予め設定された加速度の閾値を越え、且つ、ヨーレートセンサ25によって、車両1の進行方向の変更が検出されたときに、ブレーキ装置5…を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突後の車両を制御する二次衝突低減システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二次衝突低減システムとして、車両の衝突が発生したと判定された場合、車両を減速させる減速力を自動的に発生する自動減速力発生手段を設けたものが、知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなものでは、車両の衝突発生後、車両に搭載された加速度センサによって、検出された加速度が、予め設定されている加速度の閾値よりも大きくなった場合、電気制御装置は、衝突後制御を開始する。
【0004】
この衝突後制御では、スロットルバルブ開度を所定値に固定して、変速段を現在の変速段よりも、一段だけ低速段にシフトする。
【0005】
また、前記加速度センサから得られる車両前後方向の車両減速度が、目標減速度Gtargetとなるようにブレーキの油圧が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−104320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の二次衝突低減システムでは、車両に加わった加速度が、予め設定された加速度の閾値を越えた場合に、車両に制動力を与えて、二次衝突を軽減させるように構成されている。
【0008】
このため、軽度な衝突を検知する為に、前記予め設定する加速度の閾値を、低い値に設定してしまうと、悪路走行時等、衝突ではない場合に、車両に加わる加速であっても、前記閾値を越えて、前記電気制御装置により、衝突後制御が開始されて、車両に制動力が与えられてしまう虞があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、衝突検出の確実性を向上させて、誤作動が発生する虞を減少させることが出来る二次衝突低減システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、加速度検出手段と、方向変更検出手段と、制動手段と、制動手段を作動させる制御手段とを有し、検出された加速度が、閾値を越え、且つ、車両の進行方向の変更が検出されたときに、制動手段を作動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記制御手段による制御によって、前記加速度検出手段で検出された加速度が、予め設定された加速度の閾値を越え、且つ、前記方向変更検出手段によって、車両の進行方向の変更が検出された時に、前記制動手段が作動させられて、車両を減速させることができる。
【0012】
このため、軽度な衝突を検知する為に、予め設定される加速度の閾値を低く設定しても、例えば、悪路等を走行中に、衝突ではない加速度が、車両に加わった場合には、車両の進行方向の変更が検出されないため、誤作動が発生する虞を減少させることが出来、衝突検出の確実性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の二次衝突低減システムで、全体の構成を説明する模式的な車両の上面図である。
【図2】実施の形態の二次衝突低減システムで、ヨーレート積分方法を説明するグラフ図である。
【図3】実施の形態の実施例1の二次衝突低減システムで、制御順序を説明するフローチャート図である。
【図4】実施の形態の実施例2の二次衝突低減システムで、制御順序を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の二次衝突低減システムを図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至図4は、この発明の実施の形態の二次衝突低減システムを示すものである。
【0016】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の二次衝突低減システムでは、図1に示すように、車両1の動力源としてのエンジン又は駆動モータ2が設けられていて、図示省略の減速制御装置等を介して、各車輪3…が、回転駆動される様に構成されている。
【0017】
これらの各車輪3…には、各々ブレーキ装置5…が、各々設けられている。
【0018】
これらのブレーキ装置5…は、車両1に制動力を与える制動手段としてのブレーキシステム4を構成し、各油圧配管7…を介して、ブレーキパッド8…に、ブレーキ圧油を供給するブレーキ油圧制御装置6が、接続されている。
【0019】
また、このブレーキ装置5には、前記各車輪3…に固着されて供回りするディスク部材9…が、設けられている。
【0020】
これらのブレーキ装置5のディスク部材9…は、前記ブレーキパッド8…によって、各々挟持可能な位置に、設けられている。
【0021】
そして、各ブレーキ装置5では、前記ブレーキ油圧制御装置6からのブレーキ圧油の供給によって、前記ディスク部材9を挟持する方向へ、これらのブレーキパッド8…が押圧作動されて、この押圧力の強弱により、車輪3の回転を制動する制動力が、調整可能となるように構成されている。
【0022】
前記ブレーキ油圧制御装置6には、これらのブレーキ装置5…を、個別に作動させる制御手段としての制御装置10が、接続されていて、この制御装置10から、制動力可変信号が与えられることにより、前記車両1の各車輪3…に設けられた各ブレーキ装置5…が、独立した制動力を得られるように作動する。
【0023】
この制御装置10には、車両1のエンジンルーム20内の前方位置20aに設けられて、加速度検出手段の一つとしての第1加速度センサ21が、インターフェース11を介して、接続されている。
【0024】
また、この制御装置10には、キャビン22内のセンタコンソール近傍位置22aに設けられた加速度検出手段の一つとしての第2加速度センサ23が、インターフェース11を介して、接続されている。
【0025】
更に、この制御装置10のインターフェース11には、キャビン22の左,右車幅方向両側部22b,22b近傍に設けられて、車幅方向に沿った方向への加速度を検出する加速度検出手段の一つとしての側突検出加速度センサ24,24が、各々接続されている。
【0026】
この実施の形態では、これらの前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24は、図示省略のエアバッグを展開する際に、エアバッグ点火(エアバッグ作動)を行うか否かの判断に用いられるものが、共用されている。
【0027】
また、この制御装置10のインターフェース11には、キャビン22のセンタコンソール近傍位置22aで、略中央に、車両の進行方向が変更されたことを検出する方向変更検出手段の一つとしてのヨーレートセンサ25が、接続されている。
【0028】
このヨーレートセンサ25は、車両1の平面視中心部分から、車両上下方向(図1中紙面前後方向)へ延びる回転軸線Pの廻りの車両1の角度変更量が、電気的信号に変換されたヨーレート検出信号を、前記制御装置10に送出するように構成されている。
【0029】
更に、この制御装置10のインターフェース11には、キャビン22の運転席近傍に、車両の進行方向が変更されたことを検出する方向変更検出手段としての舵角センサ26が接続されている。
【0030】
また、この制御装置10のインターフェース11には、車両1の速度を検出して、前記制御装置10に、車速信号として出力する車速センサ27が接続されている。
【0031】
そして、この実施の形態の前記制御装置10には、前記加速度検出手段としての前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24と、方向変更検出手段としてのヨーレートセンサ25,舵角センサ26及び車速センサ27と、からの検出信号に応じて、前記ブレーキ装置5…を各々作動させる制御手段としてのCPU12が、設けられている。
【0032】
この制御装置10には、更に、前記インターフェース11を介して接続されるROM(Read Only Memory)13及びRAM(Random Access Memory)14が設けられていて、前記CPU12と連携して演算処理を行うことにより、前記ブレーキ装置5…に各々供給される圧油を制御する前記ブレーキ油圧制御装置6への動作指示信号を処理して、指令として送出するように構成されている。
【0033】
このうち、前記ROM13には、予め、高い加速度閾値Gth_high及び低い加速度閾値Gth_lowとが、記憶されていて、高い加速度閾値Gth_highは、エアバッグ点火を判定するエアバッグ展開閾値としても用いられる。
【0034】
また、低い値に設定される低い加速度閾値Gth_lowは、制動閾値としても、用いられるように構成されている。
【0035】
そして、この実施の形態では、これらのエアバッグ展開閾値としての高い加速度閾値Gth_highよりも、低い値となるように、制動閾値として用いられる前記低い加速度閾値Gth_lowが設定されている。
【0036】
更に、この実施の形態の前記ROM13には、予め、ヨーレート増分積分の閾値ψthが、記憶されている。
【0037】
この閾値ψthは、一定時間ΔT を用いて、TGth_Low から TGth_Low +ΔT までの(dψ/dt− ( TGth_Lowより前のΔT 時間帯のdψ/dtの平均値))の積分が行われて求められるヨーレート増分積分値と比較されて、ブレーキ装置5…を作動させるか否かの判断を行う数値である。
【0038】
すなわち、悪路走行等の通常走行であり、衝突ではない場合に、車両に加わる加速度Gが、前記低い加速度閾値Gth_lowを越えた時点では、この閾値ψthを越えていない値であると共に、車両1が、衝突した場合等、ブレーキ装置5…による制動コントロールが必要な場合に、ヨーレート増分積分値が、この閾値ψthを、越える値に設定されている。
【0039】
次に、この実施の形態の二次衝突低減システムの作用効果について、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0040】
この実施の形態では、図3に示したフローチャートに基づいて、前記制御装置10に設けられたCPU12が、車両衝突後の車両制御を行うためにルーチン(プログラム)処理を、実行する。
【0041】
前記CPU12によるこれらのルーチンの実行は、所定時間の経過毎に繰り返し実行されるように構成されている。
【0042】
まず、所定のタイミングにて、Step1で、処理を開始すると、Step2では、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24によって検出された車両加速度Gが、出力値として、前記制御装置10に送出されて、インターフェース11を介して、この出力値が、前記CPU12によって読み込まれる。
【0043】
Step3では、前記CPU12によって、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24で、検出された車両加速度Gと、前記予め設定された高い加速度閾値Gth_highとが、比較される。
【0044】
そして、前記車両加速度Gが、前記高い加速度閾値Gth_highを越えている場合には、「YES」であると判断して、Step8ヘ進み、エアバッグを作動させると共に、Step9で、ブレーキを作動させる。
【0045】
また、前記車両加速度Gが、前記高い加速度閾値Gth_highを越えていない場合には、「NO」であると判断されて、Step4ヘ進む。
【0046】
Step4では、前記車両加速度Gが、前記低い加速度閾値Gth_lowと比較される。
【0047】
そして、前記車両加速度Gが、前記低い加速度閾値Gth_lowを越えていない場合には、「NO」であると判断されて、Step2へ戻り、新たな車両加速度Gの読み込みを行う。
【0048】
また、前記低い加速度閾値Gth_lowを越えている場合には、「YES」であると判断して、Step5ヘ進み、前記ヨーレートセンサ25で検出された車両1の平面視中心部分から、車両上下方向(図1中紙面前後方向)へ延びる回転軸線Pの廻りの車両進行方向角度である車両回転角度ψの変化量dψが、電気的信号に変換されて、ヨーレート検出信号として送出されると共に、前記制御装置10の前記インターフェース11を介して、読み込まれる。
【0049】
Step6では、前記ヨーレート検出信号の演算処理が、前記CPU12によって行われる。
【0050】
この実施の形態では、図2に示すように、ヨーレート検出信号の演算処理として、一定時間ΔT長のヨーレート増分の積分が行われる。
【0051】
ここで、
TGth_Low:車両加速度Gが低い閾値,Gth_Lowに達した時刻、即ち、ヨーレート増分積分開始時刻、
ΔT:ヨーレート積分サンプルの時間長、通常、衝突してから終わるまでの時間長さ、一定値として、150msec等として、予め設定してもよい。
【0052】
ここで、衝突により、ΔT時間内の前記回転軸線P廻りの車両回転角を抽出するため、ヨーレート増分積分を採用している。
ヨーレート増分積分:TGth_Low から TGth_Low +ΔT までの
(dψ/dt− ( TGth_Lowより前のΔT 時間帯のdψ/dtの平均値))の積分である。
ここで、ψは、車両回転角度、dψ/dtは、車両回転角速度である。
また、ここで得られた積分値は、前記制御装置10のROM13に記録される。 そして、Step7にて、この演算されたヨーレート増分積分値と、予め設定されるヨーレート増分積分の閾値ψthとの大小関係が判定される。 ヨーレート増分積分の閾値ψthよりも、前記ヨーレート増分積分値が、大きくなって越えると、前記CPU12によって、「YES」と判定されて、Step9に進む。 Step9では、前記制御装置10が、前記インターフェース11から、前記ブレーキ油圧制御装置6に、指令信号を送り、ブレーキを作動させて、Step10で、ルーチン処理を終了する。
【0053】
Step7にて、前記ヨーレート増分積分値が、ヨーレート増分積分の閾値ψthを、越えていない場合、前記CPU12によって、「NO」と判定されて、Step5に戻り、ヨーレートの読込みが続けられる。
【0054】
このため、車両1が衝突していない場合は、ヨーレート増分積分値は、ヨーレート増分積分の閾値ψthを越えることが無いので、誤って、車両1が衝突したと判定される虞が無い。
上述してきたように、この実施の形態では、前記制御装置10による制御によって、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24で、検出された車両加速度Gが、予め設定された加速度のうち、高い加速度閾値Gth_highを越えていなくても、低い加速度閾値Gth_lowを越え、且つ、前記ヨーレートセンサ25によって、車両1の進行方向の変更が検出された時に、前記制御装置10から、前記ブレーキ油圧制御装置6に、ブレーキに制動力を与える動作指示信号が送られる。
【0055】
そして、前記ブレーキ装置5…に、前記ブレーキ油圧制御装置6から、圧油が供給されて、前記各ブレーキパッド8…が、前記ディスク部材9を挟持方向へ押圧するように、作動し、各車輪3…の回転を制動して、車両1を減速させることができる。
【0056】
減速された車両1は、乗員によって容易に挙動をコントロールすることが出来るので、二次衝突の発生を回避可能である。
【0057】
このため、軽度な衝突を検知する為に、予め設定される制動閾値としての低い加速度閾値Gth_lowを、低く設定しても、例えば、悪路等を走行中に、衝突ではない加速度が、車両1に加わった場合には、車両1の進行方向の変更が、前記ヨーレートセンサ25では、検出されないため、誤作動が発生する虞を減少させることが出来、衝突検出の確実性を向上させることが可能となる。
【0058】
このように、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24で、検出された車両加速度Gが、予め設定された前記エアバッグ展開閾値である高い閾値Gth_highを越えると、直ちに前記ブレーキ装置5…が、作動して、制動距離を短縮出来る。
【0059】
また、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24で、検出された車両加速度Gが、予め設定された前記エアバッグ展開閾値である高い閾値Gth_highを越えていなくても、前記制動閾値としての低い閾値Gth_lowを越えている場合には、前記ヨーレートセンサ25によって、前記ブレーキ装置5…による制動動作を作動させるべきか否かが判定される。
【0060】
このため、車両1のより軽度な衝突も、検出出来て、広範囲の衝突態様をカバーできる。
【0061】
しかも、この実施の形態では、前記ヨーレートセンサ25によって、検出された車両1の進行方向の変更が、図2に示されるように、ヨーレート検出信号の演算処理として、一定時間ΔT長のヨーレート増分の積分が行われて、比較判断の演算に用いられるので、誤判断の虞を更に減少させることができる。
【0062】
また、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24等のエアバッグの展開の判断に用いられる各センサを用いることにより、部品点数の増大を抑制出来ると共に、予め設定された前記エアバッグ展開閾値を、高い閾値Gth_highとして用いて、同時検出するので、信頼性も良好で、二次衝突低減システムとして、独自の構成や、作動判定を簡略化しても、衝突検出性能を良好なものとすることができる。
【実施例1】
【0063】
図4は、この発明の実施の形態の実施例1の二次衝突低減システムについて説明するものである。
【0064】
なお、前記実施の形態の二次衝突低減システムと同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0065】
この実施例1の二次衝突低減システムでは、更に、前記制御装置10のROM13には、目標速度Vtargetが、予め設定登録されている。
【0066】
この実施例1では、前記車速センサ27で検出された車速が、車速信号Vとして、常時出力されて、インターフェース11を介して、前記制御装置10に読み込まれることにより、この制御装置10のROM13に予め設定登録された目標速度Vtargetと、前記CPU12によって、比較演算されて、判断されるように構成されている。
【0067】
また、この実施例1では、前記舵角センサ26で検出されたハンドルの転舵角度が、常時出力されて、インターフェース11を介して、この制御装置10に読み込まれるように構成されている。
【0068】
そして、この制御装置10のCPU12により、前記ブレーキ油圧制御装置6に、送られる各ブレーキ装置5…への個別の動作指示信号の演算が行われる際に、車両1の挙動を安定させる方向へ、各車輪3の回転の制動力を個別に制御する動作指示信号値が、算出されるように構成されている。
【0069】
まず、Step11で、処理を開始すると、Step12では、前記車速センサ27で検出された車速信号が、前記制御装置10のインターフェース11を介して、読み込まれる。
【0070】
Step13では、前記舵角センサ26で検出された舵角信号が、前記制御装置10のインターフェース11を介して、読み込まれる。
【0071】
そして、Step14では、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24によって検出された車両加速度Gが、出力値として、前記制御装置10に送出されて、インターフェース11を介して、この出力値が読み込まれる。
【0072】
Step15では、前記CPU12によって、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24で、検出された車両加速度Gと、前記予め設定された高い加速度閾値Gth_highとが、比較される。
【0073】
そして、前記車両加速度Gが、前記高い加速度閾値Gth_highを越えている場合には、「YES」であると判断して、Step20ヘ進み、エアバッグを作動させると共に、Step21で、ブレーキを作動させる準備として目標車両加速度Gtargetが、算出される。
【0074】
この目標車両加速度Gtargetは、車両1の挙動をコントロール可能な状態に保ち、急旋回、横転等のリスクを最小なものとすることが可能な減速度が、与えられる値である。
【0075】
また、前記車両加速度Gが、前記高い加速度閾値Gth_highを越えていない場合には、「NO」であると判断されて、Step16ヘ進む。
【0076】
Step16では、前記車両加速度Gが、前記低い加速度閾値Gth_lowと比較される。 そして、前記車両加速度Gが、前記低い加速度閾値Gth_lowを越えていない場合には、「NO」であると判断されて、Step14へ戻り、新たな車両加速度Gの読み込みが行われる。
【0077】
このStep16で、前記車両加速度Gが、前記低い加速度閾値Gth_lowを越えている場合には、「YES」であると判断されて、Step17へ進み、前記ヨーレートセンサ25で検出された車両1の平面視中心部分から、車両上下方向(図1中紙面前後方向)へ延びる回転軸線Pの廻りの角度変更量を、電気的信号に変換したヨーレート検出信号が、前記制御装置10の前記インターフェース11を介して、読み込まれる。
【0078】
Step18では、前記ヨーレート検出信号の演算処理が、前記実施の形態と略同様に、前記CPU12によって行われる。
【0079】
そして、Step19にて、この演算されたヨーレート増分積分値と、予め設定されるヨーレート増分積分の閾値との大小関係が判定される。
【0080】
ヨーレート増分積分の閾値よりも、前記ヨーレート増分積分値が、大きくなって越えると、前記CPU12によって、「YES」と判定されて、Step21に進む。
【0081】
Step19にて、ヨーレート増分積分の閾値ψthを、前記ヨーレート増分積分値が、越えていない場合、前記CPU12によって、「NO」と判定されて、Step17に戻り、ヨーレートの読込みが行われる。
【0082】
前記Step21では、目標車両加速度Gtargetが、前記CPU12によって、算出される。
【0083】
ここで、目標車両加速度Gtargetとは、二次衝突を回避する為に、充分に減速されている速度に到達した時点での車両前後方向の車両減速度と同じである。
【0084】
この目標車両加速度Gtargetと、前記車両加速度Gの現在の値とを用いて、各ブレーキ装置5…による制動力を制御する前記ブレーキ油圧制御装置6への動作指示信号が算出される。
【0085】
そして、この実施例1の目標車両加速度Gtargetは、車両1の挙動をコントロール可能な状態に保ち、急旋回、横転等のリスクを最小なものとすることが可能な減速度であるので、この目標車両加速度Gtarget以内に収まる最大の制動力を、各車輪3…のブレーキ装置5…に与える動作指示信号が、演算される。
【0086】
Step22では、前記制御装置10のインターフェース11から、前記ブレーキ油圧制御装置6に、これらの動作指示信号が送られて、各ブレーキ装置5…に、必要とされる圧油が各々供給されることにより、前記ブレーキ装置5…に対して、個別に制動力が与えられる。
【0087】
この際、必要とされる圧油は、前記CPU12によって、算出された目標車両加速度Gtargetに近接するように、前記目標減速度となるように各ブレーキ装置5…に制動力が与えられて、前記車両1の挙動がコントロールされる。
【0088】
従って、乗員は、車両の進行方向等を容易にコントロール可能で、二次衝突の虞のある障害物を回避できる。
【0089】
Step23では、車両1の車両速度Vが、前記車速センサ27で検出されて、車速検出信号vに変換されて、目標速度Vtargetまで、減速したか否かが、判断される。
【0090】
すなわち、前記制御装置10のCPU12では、インターフェース11を介して、読み込まれた車速検出信号vと、この制御装置10のROM13に予め設定登録された目標速度Vtargetとが、比較されて判断される。
【0091】
ここで、目標速度Vtargetとは、最徐行の速度と略同様で、例えば、約5km/h前後等である。
【0092】
この目標速度Vtargetでは、車両1の乗員が、ハンドル操作、ブレーキ操作若しくは、アクセル操作により、直ちに車両1のコントロールを回復させることができる。
【0093】
また、この目標速度Vtargetでは、万が一、二次衝突で、他の障害物と、この車両1とが、衝突若しくは接触しても、問題の無い速度となるように、充分低速に予め設定されている。
【0094】
そして、検出されている前記車速検出信号vが、前記目標速度Vtargetを下回る場合には、「YES」であると判断して、Step24ヘ進み、各ブレーキ装置5…への圧油の供給を制御して、ブレーキ作動を停止させる。
【0095】
このため、衝突後に、交通量の多い路上から、前記車両1を、低速で待避させることが出来、後続車両による追突又は接触による二次衝突を防止できる。
【0096】
また、前記車両速度Vが、前記目標速度Vtargetよりも、未だ高い場合には、「NO」であると判断されて、Step22ヘ戻り、ブレーキ作動を続ける。
【0097】
このため、最短時間で、前記車両速度Vを、前記目標速度Vtargetに近接させることができる。
【0098】
そして、Step24で、前記制御装置10が、前記インターフェース11から、前記ブレーキ油圧制御装置6に、動作指示信号が送られて、ブレーキ作動を停止させると、Step25で、ルーチン処理を終了する。
【0099】
この実施例1では、前記実施の形態の二次衝突低減システムの作用効果に加えて、更に、前記制御装置10には、車両1の速度を検出する車速センサ27からの車速検出信号vが、前記インターフェース11を介して入力されると共に、前記第1加速度センサ21,第2加速度センサ23,側突検出加速度センサ24,24によって検出された加速度が、予め設定された前記エアバッグ展開閾値Gth_highを越えていなくても、前記制動閾値Gth_lowを越えている場合には、制動動作が行われた後の制動動作過程中の車両速度Vを監視し、車両1が、一定速度以下まで速度を低減された時点で、前記ブレーキ装置5…による制動動作が、解除される。
【0100】
このため、予め低く設定された前記制動閾値Gth_lowのみを越えた場合でも、車両1の損傷は、前記エアバッグ展開閾値Gth_highを越えて、前記エアバック装置が展開動作を行う場合と異なり、まだ、乗員が、車両を運転できる可能性がある。
【0101】
このような場合、この実施例1の二次衝突低減システムでは、車両1の車両速度Vが、一定速度以下まで、低下した時点で、車両1の運動エネルギーが相当低下していると判断し、前記ブレーキ装置5…による制動動作が、解除される。
【0102】
このブレーキ装置5…による制動動作が解除されることにより、前記車両1が完全に停止して、例えば、交差点真中や、往来の激しい道路の途中に停止したままとなるリスクが回避されて、乗員が、車両1を最徐行で運転して、支障の無い場所に待避させることができる。
【0103】
また、この実施例1では、前記ブレーキシステム4の各ブレーキ装置5…は、前記制御装置10から、制動力可変信号が与えられることにより、前記車両1の各車輪3…に設けられたブレーキ装置5…を個別に作動させて、独立した制動力が、これらの各車輪3…で得られるように構成されている。
【0104】
すなわち、前記制御装置10では、車両1の速度を検出する車速センサ27からの車速検出信号が、入力される。
【0105】
そして、検出された車両1の進行方向の速度が、衝突直前で、高速走行である場合、前記ヨーレートセンサ25によって、検出された車両進行方向の変更量である車両回転角度ψから、衝突前後の車両速度Vと、車両進行方向の変更量である車両回転角速度dψ/dtとを鑑みて、前記制御装置10のCPU12では、前記各ブレーキ装置5…による各車輪への制動力可変信号の出力を制御する。
【0106】
このため、衝突前の車両1の走行状態が、高速走行である場合に、衝突後の車両進行方向と、車両回転角度dψとの乖離が大きい場合には、急にフルブレーキ動作を行うと、車両1の挙動をコントロールしきれず、姿勢制御が不能となって、横転、急旋回してしまう虞がある。
【0107】
この為、前記制御装置10のCPU12では、前記各ブレーキ装置5…による各車輪3…への制動力可変信号の出力を制御する際、前記ヨーレートセンサ25によって、検出された車両回転角度ψから、得られる車両進行方向の変更量である車両回転角速度dψ/dtが、演算されて、衝突前後の車両速度Vの変更量と、この車両回転角速度dψ/dtとが鑑みられて、前記各車輪3…に与えられる制動力が、適切なものとなるようにコントロールされる。
【0108】
従って、車両1の挙動をコントロール可能な範囲で減速が行われて、姿勢制御を可能として、横転、急旋回してしまう虞を減少させることができる。
【0109】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0110】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0111】
即ち、前記実施の形態では、二次衝突低減システムの方向変更検出手段として、ヨーレートセンサ25が、用いられて、前記制動手段による制動動作を作動させるべきか否かが判定されているが、特にこれに限らず、例えば、ハンドルの点舵角度を検出する前記舵角センサ26からの舵角検出信号と、前記第1加速度センサ21等の検出信号との相違を判定する前記タイヤスリップ検出手段等、或いは車載カメラや、その他の補助手段を用いても、車両の進行方向の変更を検出出来るものであればよい。
【0112】
また、前記実施の形態では、二次衝突低減システムの前記ROM13には、予め、高い加速度閾値Gth_high及び低い加速度閾値Gth_lowとが、記憶されていて、高い加速度閾値Gth_highは、エアバッグ点火を判定するエアバッグ展開閾値としても用いられるように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、高い加速度閾値Gth_highと、エアバッグ点火を判定するエアバッグ展開閾値とを別の値に設定して、前記ROM13に記憶させても、制動閾値である低い加速度閾値Gth_lowを越えている場合に、前記ヨーレートセンサ25等を用いて、ブレーキ装置5…を、作動させるべきか否かを判定するものであるならばよい。
【0113】
更に、前記実施例1では、目標速度Vtargetが、最徐行の速度と略同様で、例えば、約5km/h前後となるように予め設定されているが、特にこれに限らず、例えば、適応される車両1の操向安定性を、充分に、満たす速度であれば、約1〜10km/h等、どのような速度に、この目標速度Vtargetが設定されていても良く、これらの目標速度Vtargetでは、車両1の乗員が、ハンドル操作、ブレーキ操作若しくは、アクセル操作により、直ちに車両1のコントロールを回復させることができる。
【0114】
また、前記実施例1では、前記制御装置10のCPU12では、前記各ブレーキ装置5…による各車輪3…への制動力可変信号の出力が、個別に制御されているが、特にこれに限らず、例えば、前記ヨーレートセンサ25によって、検出された車両回転角度ψから、得られる車両進行方向の変更量である車両回転角速度dψ/dtが、演算されて、衝突前後の車両速度Vの変更量と、この車両回転角速度dψ/dtとが鑑みられて、前記車輪3…に与えられる制動力が、適切なものとなるようにコントロールされるものであれば、前後二組の車輪3,3又は、左,右二対の車輪3,3毎に、若しくは、全車輪3…に適切な制動力を与える等、各ブレーキ装置5…の組み合わせや、タイミングの相違及び制動力の強弱が、特に限定されるものではない。
【0115】
更に、前記実施の形態では、制動手段として、各車輪3…に設けられたブレーキ装置5…を用いたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、スロットルバルブ開度を閉塞方向へ変更して、所謂エンジンブレーキを用いたり、或いは、スロットルバルブ開度を所定値に固定して、変速段を現在の変速段よりも、一段だけ低速段にシフトする等、又は、これらと、前記ブレーキ装置5…との組み合わせ等、車両1に制動力を与えるものであれば、どのようなものであっても良く、動力源として、エンジンに代えて、若しくは、併用して駆動モータ2が用いられる場合には、駆動モータ2の回生ブレーキ等を用いてもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0116】
1 車両
5… ブレーキ装置(制動手段)
10 制御装置(制御手段)
21 第1加速度センサ(加速度検出手段の一つ)
23 第2加速度センサ(加速度検出手段の一つ)
24,24 側突検出加速度センサ(加速度検出手段の一つ)
25 ヨーレートセンサ(方向変更検出手段の一つ)
26 舵角センサ(方向変更検出手段の一つ)
27 車速センサ(車速検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の加速度を検出する加速度検出手段と、車両の進行方向が変更されたことを検出する方向変更検出手段と、車両に制動力を与える制動手段と、前記加速度検出手段,方向変更検出手段からの検出信号に応じて、前記制動手段を作動させる制御手段とを有する二次衝突低減システムであって、
該制御手段では、前記加速度検出手段によって検出された加速度が、予め設定された加速度の閾値を越え、且つ、前記方向変更検出手段によって、車両の進行方向の変更が検出されたときに、前記制動手段を作動させることを特徴とする二次衝突低減システム。
【請求項2】
前記制御手段には、前記加速度検出手段によって検出される加速度が、予め設定された加速度のうち、高い
加速度閾値を越えた場合、エアバッグ点火を判定するエアバッグ展開閾値と、該エアバッグ展開閾値よりも、低い値に設定される制動閾値とを設け、前記加速度検出手段によって検出された加速度が、予め設定された前記エアバッグ展開閾値を越えた場合に、直ちに、前記制動手段を作動させると共に、該加速度検出手段によって検出された加速度が、予め設定された前記エアバッグ展開閾値を越えていなくても、前記制動閾値を越えている場合には、前記方向変更検出手段若しくは、その他の補助手段を用いて、前記制動手段による制動動作を作動させるべきか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の二次衝突低減システム。
【請求項3】
前記制御手段には、車両の速度を検出する車速検出手段からの車速検出信号が、入力されると共に、該加速度検出手段によって検出された加速度が、予め設定された前記エアバッグ展開閾値を越えていなくても、前記制動閾値を越えている場合には、制動動作が行われた後の制動動作過程中の車両の速度を監視し、車両が、一定速度以下まで速度を低減させた時点で、前記制動動作を解除することを特徴とする請求項1又は2記載の二次衝突低減システム。
【請求項4】
前記制動手段は、前記制御手段から、制動力可変信号を与えられることにより、前記車両の各車輪が、独立した制動力を得られるように作動すると共に、前記制御手段では、車両の速度を検出する車速検出手段からの車速検出信号が、入力されて、検出された車両の進行方向の速度が、衝突直前で、高速走行である場合、前記方向変更検出手段によって、検出された車両進行方向の変更量から、衝突前後の車両速度と、該車両進行方向の変更量とを鑑みて、前記制御手段では、前記制動手段による各車輪への制動力可変信号の出力を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の二次衝突低減システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−285015(P2010−285015A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139008(P2009−139008)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】