説明

二次電池付太陽光システムの充電制御方法

【課題】 系統電源に対する補助電源として利用する二次電池付太陽光発電システムにおいて、系統電源から供給させる電力のピークを効果的に抑制し、経済的に有利な発電出力配分をする充電制御装置を提供する。
【解決手段】 太陽光発電パネル11と二次電池13とパワーコンディショナー12を備え出力端子を電力系統に接続して使用する太陽光発電システムにおいて、パワーコンディショナー12が、太陽光発電パネル11の出力を電力負荷が大きい時間帯では電力系統線28に供給し、この時間帯以外には二次電池13に供給し、かつ、電力需要量に対応して電力系統から供給される電力量が所定の上限値を超えないように二次電池13の出力を補給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統電力に対して補助的に使用する太陽光発電システムの充電制御方法に関し、特に二次電池を用いた太陽光発電システムにより昼間のピーク負荷を効果的に緩和する充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電はクリーンな自然エネルギを使用するという利点があるが、日射に左右され安定な発電量を確保することができない。また、太陽光発電量は必ずしも電力需要と対応しない。
このため、一般に、太陽光発電は電力会社から供給される系統電力に対する補助として利用される。また、二次電池を用い、太陽光によって発電された電力を二次電池に充電しておいて電力需要のピーク時に放電することにより不安定な発電をカバーする方法も多用されている。
【0003】
なお、電力会社は、電力供給と需要の間を調整するため、政策的に、各需要家ごとに契約によって使用可能な電力の上限値を決め、契約電力に対して逓増的に電力使用料金を設定している。電力上限値は予め所定の値が決められている。
この契約では、消費電力のピーク値が契約電力を超えると、次からは新しい契約電力に従った高い電力料金を課せられることになる。したがって、需要家は、電力消費のピーク値が契約電力を超えないようにすることが好ましい。また、ピークカットを効果的に行って、より低い契約電力を適用させることが経済的に有利である。
【0004】
特許文献1には、二次電池がたとえば20%程度の充放電ロスを有することを考慮して、太陽光発電した電力をできるだけ直接使用するようにするため、電力料金が割引になる夜間に二次電池を最適な充電率まで充電しておいて、電力需要が大きく電力料金の高い昼間に太陽光発電を直接に利用して受電電力を低減させ、さらに需要のピークが受電電力上限値を超えそうなときは二次電池に蓄電した電力で補填してピークカットする二次電池制御方法が開示されている。ここで、実施例として、受電電力が予め決めた下限値を下回るときに余った電力を二次電池に蓄積することが記載されている。
【0005】
このように、太陽光発電装置に二次電池等の電力貯蔵装置を組み合わせて発電出力を平準化し、効率的に系統電力の節約を図るシステムが多数提案されている。しかし、これらは、太陽光発電装置としての出力安定化、あるいは電力需要の均等化を図って系統電力と混用できるようにするものであるが、基本的に太陽電池の発電出力のみの運転では目的の機能を発揮できず、系統電力による補助が必須なシステムである。
【0006】
特許文献2には、太陽電池の発電電力を負荷に供給すると共に余剰電力を電源系統に売電でき、かつ蓄電池に夜間電力を蓄電し電力ピークシフト手段として用いる太陽光発電システムが開示されている。開示発明は、電源系統電圧が上昇して売電が認められない場合に、負荷電力を超えて発電された太陽電池の電力を蓄電池に充電することにより、発電電力をできるだけ活用しようとしたものである。開示発明は、大規模な太陽光発電システムを対象とし、太陽電池の出力が需要を上回る場合に余剰の電力を無駄にしない方策を提示したものである。
【0007】
しかし、現状では太陽光発電システムは未だ高価なため、補助電源として利用することが多く、系統電源の価格政策に適応することが、電力会社と需要者の双方の利益になる。
すなわち、系統電源では供給電力の上限値が低下するにしたがって電気料金を逓減する価格政策を採用して、需要者の電力消費量のピークを抑制し、発電所の負荷を緩和し負荷配分を合理化している。
【特許文献1】特開2004−274981号公報
【特許文献2】特開2004−180467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、系統電源に対する補助電源として利用する二次電池付太陽光発電システムにおいて、太陽光発電電力のみを用いて系統電源から供給させる電力のピークを効果的に抑制し、経済的に有利な発電出力配分をする充電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の二次電池付太陽光発電システムの充電制御装置は、太陽光発電パネルと二次電池とパワーコンディショナーを備え出力端子を電力系統に接続して使用する太陽光発電システムにおいて、パワーコンディショナーが電力受給機能と論理演算機能とカレンダー・タイマー機能を有して、太陽光発電パネルの出力を電力負荷が大きい時間帯では電力系統線に供給し、この時間帯以外には二次電池の入力端子に供給し、かつ、電力需要量に対応して電力系統から供給される電力量が所定の上限値を超えないように二次電池の出力を補給することを特徴とする。なお、二次電池に電力収納余力がないときにも太陽光発電パネルの出力を電力系統線に供給することが好ましい。
【0010】
さらに、電力系統の供給電力を測定する電力計と二次電池の貯留電力量を測定する電流計と電力需要量のピーク時に予め優先度を設定した負荷を選択して接続を切断するピークカットコントローラを備えて、電力計で電力系統から供給される電力量を測定して、測定した系統電力供給量がピークを示して上限値を超えそうな場合は二次電池から電力を補填し、補填によっても不足するときは優先度にしたがって負荷を選択して切断することが好ましい。なお、本発明の充電制御装置は、系統電力供給量が上限値を超えそうな状態を検出するため、上限値を超えない値を切替基準値として予め設定しておいて、これを利用するようにしてもよい。
また、さらに、系統電力供給量が切替基準値を超えた場合に負荷に供給する電力を、一定出力の二次電池電力に加えて、日射計により計測した日射量を最大日射量で割った日射係数に基づいて太陽光発電パネルの出力を増加することにより、太陽光発電電力も使用して二次電池の設備容量を低減することができる。
【0011】
日々の天候の変化を吸収してピークカット機能を有効に働かせるために、使用する二次電池は太陽電池出力電力を急速に貯留し、また放出できる必要がある。
これに対応する二次電池は、特に、負極側に活物質として水素吸蔵合金粒子、正極側に活物質としてオキシ水酸化ニッケル粒子を、電解液である水酸化カリウム水溶液に浸して使用し、短冊状の電極板をセパレータに挟み込んで積層しセルに挿入して形成された新型ニッケル水素電池(川崎重工業株式会社製「ギガセル(商標)」)を利用することが好ましい。
ギガセル(商標)は、各セルごとに起電力1.2Vを発生し、積層により高電圧化することができる。内部抵抗が小さいため、従来のレドックスフロー電池と比較して約20倍早く充放電することができ、平板電極を積層すれば容易に大容量化が可能である。また、電池の容量をほぼ完全に充放電することが可能である。したがって、この新型ニッケル水素電池を用いれば、太陽光発電出力を二次電池に蓄電するときにも、また二次電池から電力を補填するときにも、十分迅速に実行することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽光発電システムの充電制御方法によれば、電力需要状況、蓄電池の蓄電状態、系統電源の電圧と供給電力、の3条件を考慮して、太陽光発電システムの運転モードを選択し自動運転を行い、的確に効率的なシステム運用を図ることができる。
二次電池に蓄積する電力は、太陽光発電パネルから供給される原料費不要の電力だけで、真の意味における省エネルギーを図ることができる。
また、太陽光発電システムを導入することにより、電力需要のピーク値を逓減して契約電力に対応する上限値を低下させることができ、上限値のより低い電力供給契約に変更して売電コストを低減させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る太陽光発電システムの例を示すブロック図、図2は回路図、図3は充電制御方法を説明する波形図、図4は設定時における制御手順を説明するフロー図、図5は正常運転時における制御手順を説明するフロー図、図6は自立運転時における制御手順を説明するフロー図、図7は日照強度によるピークカット電力源構成比の変化例を説明する概念図、図8は本発明に利用できる二次電池の原理を説明する概念図、図9は二次電池の斜視図である。
【0014】
本実施例の太陽光発電システムは、需要者が太陽電池パネル11を家屋1の屋根10や建築物の屋上などに設置して、太陽光発電した電力を、電力会社から購入する系統電力の補助として利用することにより、電力コストを低減するものである。
【0015】
系統電力は需要者の施設に対して設けられる変電所の受電盤2を経由して取り込まれる。
受電盤2には、系統電力を取り込む主スイッチ21、負荷あるいは負荷群27に電力供給する母線28、母線28から各負荷あるいは負荷群27に電力を分配するための開閉スイッチ25、さらに、本実施例の太陽光発電システムの出力端子と接続するスイッチ24、母線28の上流側に設けられ電力系統からの供給電圧を測定する系統電圧計22、また電力系統からの供給電力を測定する系統電力計23が設けられている。
太陽光発電システムとして、屋内に二次電池13、パワーコンディショナー12、ピークカットコントローラ14、さらに屋根10の上に太陽電池パネル11に加えて日射計や気温計15が設置されている。
【0016】
これらの構成要素は、図2に概念的に表わしたように接続され、本発明を構成する。
図2を参照すると、太陽光電池パネル11の出力端子はダイオード17を介してパワーコンディショナー12の電力入力端子に接続されている。パワーコンディショナー12の電力入力端子には、さらに回路開閉器16を介して二次電池13の入出力端子が接続されている。二次電池13の直列セル数は、電池の出力電圧が太陽電池パネル11の出力電圧と同等になるように決定される。
【0017】
パワーコンディショナー12は、電力受給機能と論理演算機能とカレンダー・タイマー機能を備え、日射計・気温計15と系統電圧計22の測定出力、およびピークカットコントローラ14の指令出力を入力して、太陽光電池パネル11の発電出力と二次電池13の放電出力を受け入れて、二次電池13の充電と母線28への電力供給をコントロールする。
【0018】
ピークカットコントローラ14は、系統電力計23の計測出力に基づいて電力値を監視し、パワーコンディショナー12と協働して、ピーク値が契約上の上限値を超えないように太陽光発電出力の供給を調整する。また、太陽光発電電力不足時や二次電池貯留電力不足時など、パワーコンディショナー12による給電が十分でない時には予め決めた優先順序に従ってスイッチ調整器26内の開閉スイッチ25を制御して負荷を切り離し、系統から供給する電力が上限値以下に収まるように調整する。
【0019】
図3は本実施例の充電制御方法を説明する概念的な波形図で、(a)図に電力需要波形と電力供給の関係を示し、(b)図に太陽光発電パネル11の出力波形を示し、(c)図に二次電池の充放電波形を示す。
この例では、消費電力は朝と夜に低く、昼間に増大する。時に(a)図に点線で表わすような突発的な需要増大を示すので、この突発的な最大ピーク値が到達しないレベルに上限値を持つ電力契約を締結していた。
【0020】
そこで、本実施例の太陽光発電システムを導入することにより、系統電力を逓減し買電レベルをより低い契約上限値以下に低下させることにより、電力コストを低下させるようにした。
従来の太陽光発電システム導入政策は、電力需要をできるだけ太陽電池で補い不足するところを買電で賄うというものであったが、本実施例では、太陽光発電で可能な限度で買電を節約し買電の契約上限値を低下させて巧みにコスト低減を図っている。
【0021】
図3に示すように、系統電力が新しい契約上限値より所定量だけ低い切替基準値に達しないうちは太陽光発電出力を全て二次電池13に供給して充電し、切替基準値に達する予定の時刻辺りで、太陽光発電出力をそのまま全て系統線28に供給するように切り換えて系統電力量を低下させる。
太陽光発電出力だけを加えることでは系統電力が契約上限値を超えそうになる場合には、不足する電力を二次電池13から補填して上限値以下になるようにコントロールする。また、突発的な負荷ピークが生じたときにも二次電池から電力を供給して補充する。
午後になって消費電力が減少し契約上限値より十分に低下する予定の時刻になると、太陽電池パネル11から直接的に供給していたのを止めて、太陽光発電出力は全量二次電池13の充電に切り換え、ピークカット時に放電して減少した貯留電力量の回復を図る。
【0022】
二次電池13の充放電は(c)図に示すように、午前の日照時間中は日の出から供給先の切替をする時点までは発生する太陽光電池出力の全てを充電し、その後の太陽光発電出力を全て負荷に供給する間は、系統からの電力供給量が上限値より低い切替基準値を超えたときに系統線に放電して系統からの供給量を低下させる。また、充電開始時刻から日没までは再び太陽光発電出力を充電する。
電力需要に突発的ピークがあった時にはこれを補填するため、点線で示したように必要量を放電して系統線に給電する。
なお、充電時間帯においても、電池の容量が満たされたときは、過充電を避けるため電池の充電を中止して太陽光発電出力を直接に母線に供給する。
【0023】
図4から6は、本実施例に係る充電制御方法を実施するパワーコンディショナ12の論理演算機能等が実行する自動動作における手順を説明するフロー図である。これら手順は内蔵するコンピュータにプログラムとして格納されていて、事に当って実行するものであってもよい。
【0024】
初めに、パワーコンディショナー12の設定を行う必要がある。図4はその手順を説明する図面である。
パワーコンディショナー12のカレンダー機能に、暦日ごとの日の出時刻、日没時刻を記憶させる(S11)。これにより、暦日ごとの太陽光発電が可能な時間帯が分かる。
次に、各暦日ごとの日照強度データを入力する(S12)。日毎、場所ごとの日照強度データは天文データとして与えられている。
【0025】
各暦日の日照強度データから二次電池の充電に必要な標準の時間帯を算定する。充電時間帯は電力需要がピークとなる、たとえば12時から14時の時間帯を避けて、日の出から午前の適当な時刻まで、また午後の電力需要が低下した適当な時刻から日没までとする(S13)。
暦日ごとに算定された午前の充電終了時刻と午後の充電開始時刻を記憶する(S14)。充電終了時刻と充電開始時刻は、電力需要が契約上限値より低い値になる時点でなければならない。たとえば充電終了時刻は10時、充電開始時刻は15時などになる。
【0026】
なお、実際の日射強度や気温によって太陽光発電出力や電力需要量が異なるので、日射計や気温計の測定出力を入力し、主として過去の実績値に基づいて、適正な充電終了時刻や充電開始時刻に補正する。また、需要パターンなどは季節で変化することは勿論、曜日の違いなどにも左右されるので、カレンダー機能を活用して調整する必要がある。
【0027】
図5は、正常運転時におけるパワーコンディショナーの運転手順を説明するフロー図である。
パワーコンディショナー12は、日の出から日没までの間稼働する(S21)。午前の二次電池充電時間帯に当たるときは(S22)、太陽光発電出力電圧が規定のインバータ入力電圧より高くなると、太陽光発電パネルから実効的な出力が発生するので、二次電池13の容量に余裕があれば(S23)、発電出力の全量を二次電池13に充電する(S24)。充電中は、負荷27への電力供給は行わない。二次電池13に余裕がなければ(S23)、太陽光発電出力は全て系統線28を介して負荷27に供給される(S25)。
【0028】
また、二次電池13に充電することによって二次電池13が満杯になったときにも(S23)、充電運転を終了して、太陽光発電出力の全量を負荷27に供給する(S25)。なお、午前の充電によっては二次電池13が満杯にならない場合にも、充電終了時刻になると(S22)充電運転を一旦終了して、太陽光発電出力の全量を負荷27に供給するようにする(S25)。
充電開始時刻以降、午後の二次電池充電時間帯に当たるときも(S22)、二次電池13の容量に余裕があれば(S23)、太陽光発電出力の全量を二次電池13に充電し(S24)、二次電池13に余裕がなければ(S23)、太陽光発電出力は全て負荷27に供給される(S25)。
【0029】
太陽光発電出力を系統に補填している間は、系統電力計23が測定する系統からの供給電力が契約上限値、正確には上限値より所定量だけ低い切替基準値に達して、ピークカットコントローラ14からピークカット要求信号が発せられたときは(S26)、二次電池出力を系統に補填する(S27)。補填により切替基準値を維持するように制御するが、制御動作にはヒステリシスを持たせて制御の安定を図る。
ピークカットコントローラ14からピークカット要求信号が発せられないときは(S26)、太陽光発電出力を100%系統に補填し続ける。
【0030】
なお、二次電池出力を系統に補填しても切替基準値を超える場合は(S28)、ピークカットコントローラ14によりスイッチ調整器26の開閉スイッチ25を適宜選択して遮断することにより負荷あるいは負荷群27を切離し需要電力を逓減して(S29)、ピークカット要求信号が出ないようにする。
負荷27は、重要度にしたがって予め優先順位が決められており、系統電力が上限値を超えなくなるまで順次切離しが行われる。
二次電池出力を系統線28に補填することにより系統電力が切替基準値より低下した場合は(S28)、負荷の切離しを行う必要がない。
【0031】
ピークカット要求信号が出なくなったときは(S30)、一定時間経過するのを待って、二次電池13の出力を系統に補填するのを止めてピークカット運転を終了する(S31)。その後は、太陽光発電出力のみを電力系統に補填する。
なお、上述のように、午後の充電開始時刻になると、太陽光発電パネル11から負荷27に給電するのを中止して、全量を二次電池13に振り向けて充電を開始する。
午後の充電運転は、太陽の傾きが大きくなって太陽光発電出力が規定値以下になると、終了する。また、二次電池13の容量に空きがなくなったときには、回路を切り換えて太陽光発電出力の全量を負荷27に給電する。
【0032】
図6は、停電時にパワーコンディショナー12が安全を維持するため行う自立運転の手順を説明するフロー図である。
系統電圧計22が系統電圧の異常な低下を検出して停電事故の発生を検知すると(S41)、施設の保安やプラントの異常防止に必要な負荷27を残し、シャットダウンしてもよい不急の装置の電源を切断し(S42)、系統電力に代えて太陽光発電出力を全量系統線28に供給する(S43)。
これによって、系統電力に異常がある場合にも、必要な機器に対して太陽光発電出力を臨時に供給して保安を確保することができる。
【0033】
太陽光発電出力では、最小運転機器の負荷容量に不足するときは(S44)、不足分を二次電池13から補填する(S45)。夜間や曇天などで太陽光発電出力がないときにも、二次電池13から電力を供給して自立運転を確保しなければならない。
太陽光発電出力が負荷の需要量より大きいときは(S44)、余剰の分を二次電池13の充電に回してせっかく発電した電力を無駄にしないようにする(S46)。
系統電圧が元に戻り電源が復旧したときは(S47)、自立運転を終了して、正常運転に戻る(S48)。
【0034】
さらに、ピークカット運転時のパワーコンディショナ12の出力Pcを最大値をPcmと決めて、たとえば、図7に示すような関数に従って、日射強度指数a(日射強度Ps/最大日射強度Psm)と、最大二次電池出力Pbmをパワーコンディショナの最大出力値Pcmで規格化した二次電池係数b(Pbm/Pcm)を基にして、下式により決定するようにすることができる。
Pc=Pcm(k*a+b)
また、
Pc=a*Pcm+(1−a)*Pbm
ここで、kは太陽光係数((Pcm−Pbm)/Pcm)である。
【0035】
ピークカット運転時のパワーコンディショナ12の調整を上記の方式で行うときは、たとえば、最大二次電池出力bを50kW、最大パワーコンディショナ出力を100kW、太陽電池の最大出力を70kWとした場合、
(1)日射が全く期待できないときは、二次電池の最大出力50kWによる運転を行い、
(2)日射強度が最大強度に対して50%のときは、太陽電池出力35kWに二次電池から40kWを補って75kWで運転し、
(3)日射が最大強度を示すときには、二次電池から30kWを補って最大出力運転を行うようにすることができる。
【0036】
このように、二次電池出力の最大値Pbmを太陽電池の最大出力Psmより小さいシステムとすると、ピークカット時のパワーコンディショナ出力PcはPbmを最低値とし、日射強度指数の増加に応じて単純増加し、最大日射強度時に最大となる。パワーコンディショナ出力Pc最大のときには、二次電池出力PbはPcm−Psmに減少する。
したがって、日射強度の高いときはピークカット運転時における二次電池の出力を抑制して持続時間を長くすることが可能となる。
【0037】
なお、図8,9は本実施例に使用することが推奨される二次電池の作動原理図と外観を示す一部切り欠き斜視図である。
本実施例に用いる二次電池は、できるだけ充放電時間が短く、容量が大きいものであることが求められる。
これらの条件を満たす二次電池として、新型のニッケル水素電池(川崎重工業株式会社製、ギガセル(商品名))がある。
【0038】
この新型ニッケル水素電池(ギガセル(商品名))は、負極活物質として水素吸蔵合金の粒子、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルの粒子を使用し、電解液として水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ水溶液を使用するものである。
図8に示すように、イオンを透過するセパレータを挟んで集電体を配置した間に電解液を充填し、正極側に正極活物質を投入し、負極側に負極活物質を投入して、集電体同士を導線で接続すると、正極側で正極活物質が電子を受け取って水酸基を発生し、発生した水酸基がセパレータを透過して負極側に移動して、負極活物質に含まれる水素と反応して水と電子を発生して負極側の集電体に集められて、電気回路が完成する。
【0039】
電池作用を化学反応式で表わすと下記のようになる。
正極: NiOOH+H2O+e- ←→ Ni(OH)2+OH-
負極: NH+OH- ←→ M+H2O+e-
全体: NH+NiOOH ←→ M+Ni(OH)2
起電力: 1.2V
【0040】
正極側集電板から供給される電子は電解液中に広がり、電解液中に分散するオキシ水酸化ニッケル粒子と反応して水酸基を発生し、負極側では同様に電解液中に分散した水素吸蔵物質粒子中の水素と反応して電子を発生する。電解液中の帯電粒子の移動度は大きく、また反応面積も大きいので、充放電速度は極めて速い。
さらに、従来のニッケル水と二次電池では薄膜の電極を使用しているのに対して、ギガセル(商品名)は、図8に示したように、短冊状に成形した電極をプリーツ加工したセパレータに挟み込んで積層したものを電池容器に挿入して単電池を構成し、さらに隔壁を介して電池同士を直列接続してギガセル(商品名)としている。
【0041】
このため、ギガセル(商品名)は内部抵抗が小さく、NaS電池やレドックスフロー電池と比較して、約20倍早く充放電することができる。また、積層構造のため、大容量化が容易である。
さらに、容量の殆ど100%まで充放電することができ、許容される充放電繰返し回数も極めて大きく、充放電による寿命も長い。なお、充放電における効率が高いため、太陽光発電出力の利用効率も高くなる。
【0042】
本実施例の太陽光発電システムの二次電池として上記ギガセル(商品名)を使用すると、二次電池の充放電を切り換えるときに直ちに応じて、効率よく充放電することができる。また、大容量の電池を使用して、ピークカット性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の二次電池付太陽光発電システムの充電制御方法は、原料コストの極めて小さい太陽光電力のみで二次電池を充電して、従来のように低額といえ有用の夜間電力を用いないので、経済性が優れている。また、系統電力の消費を契約上の上限値を切り下げるように運転する場合は、契約電力をより低廉な段階に切り下げることができ、電力料金の節約ができる。
たとえば学校など比較的大規模な施設では、校舎の屋根に大面積の太陽電池パネルを設置して、太陽光発電を有効に活用することができる。また、学校などでは電力需要パターンが単純なため、本発明の方法を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る太陽光発電システムの実施例を示すブロック図である。
【図2】本実施例の太陽光発電システムの回路図である。
【図3】本実施例の太陽光発電システムの充電制御方法を説明する波形図である。
【図4】本実施例の設定時における制御手順を説明するフロー図である。
【図5】本実施例の正常運転時における制御手順を説明するフロー図である。
【図6】本実施例の自立運転時における制御手順を説明するフロー図である。
【図7】日射強度によるピークカット電力源構成比の変化例を説明する概念図である。
【図8】本発明に利用できる二次電池の原理を説明する概念図である。
【図9】本発明に利用できる二次電池の斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 家屋
10 屋根
11 太陽電池パネル
12 パワーコンディショナー
13 二次電池
14 ピークカットコントローラ
15 日射計・気温計
16 回路開閉器
17 ダイオード
2 変電所受電盤
21 主スイッチ
22 系統電圧計
23 系統電力計
24 太陽光発電システム用スイッチ
25 開閉スイッチ
26 スイッチ調整器
27 負荷群
28 母線・系統線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルと二次電池とパワーコンディショナーを備え出力端子を負荷に給電する電力系統に接続して使用する太陽光発電システムにおいて、前記パワーコンディショナーが、電力受給機能と論理演算機能とカレンダー・タイマー機能を有して、予め設定した電力需要量が大きい時間帯および前記二次電池に電力収納余裕がないときは前記太陽光発電パネルの出力を前記電力系統線に供給し、該時間帯以外で前記二次電池に電力収納余裕があるときは前記太陽光発電パネルの出力を前記二次電池の入力端子に供給し、かつ、前記電力系統に設けた電力計により測定される前記電力系統から供給される電力量が所定の上限値を超えないように前記二次電池の出力を補給することを特徴とする二次電池付太陽光発電システムの充電制御装置。
【請求項2】
さらに、前記電力系統の供給電力を測定する電力計と、前記二次電池の収納電力量を測定する電圧計および電流計と、前記電力系統に対する電力需要量のピーク時に予め優先度を設定した負荷を優先順に選択して接続を切断するピークカットコントローラを備えて、前記電力計で電力系統から供給される電力量を測定して、測定した系統電力供給量がピークを示して予め前記上限値を超えない値に設定された切替基準値を超えた場合は、前記二次電池から電力を補填し、補填によっても該切替基準値を超えたときは、優先度にしたがって前記負荷を選択して切断することを特徴とする請求項1記載の二次電池付太陽光発電システムの充電制御装置。
【請求項3】
さらに、前記切替基準値を超えた場合に負荷に供給する電力を、一定出力の前記二次電池電力に加えて日射計により計測した日射量を最大日射量で割った日射強度指数に基づいて前記太陽光発電パネルの出力を増加することにより、太陽光発電電力も使用して二次電池の設備容量を低減することを特徴とする請求項1または2記載の二次電池付太陽光発電システムの充電制御装置。
【請求項4】
前記二次電池は、負極活物質として水素吸蔵合金粒子、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケル粒子を、電解液である水酸化カリウム水溶液に懸濁して使用し、短冊状の電極板をセパレータに挟み込んで積層しセルに挿入して形成して、大容量高速充放電化したニッケル水素電池を利用することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の二次電池付太陽光発電システムの充電制御装置。
【請求項5】
太陽光発電パネルと二次電池を備えた太陽光発電システムの出力端子を負荷に給電する電力系統に接続し、予め設定した電力負荷の大きい時間帯および前記二次電池に電力収納余裕がないときは前記太陽光発電パネルの出力を前記電力系統線に供給し、該時間帯以外で前記二次電池に電力収納余裕があるときは前記太陽光発電パネルの出力を前記二次電池の入力端子に供給し、かつ、前記電力系統から供給される電力量が所定の上限値を超えないように前記二次電池の出力を補給することを特徴とする二次電池付太陽光発電システムの充電制御方法。
【請求項6】
前記電力系統から供給される電力量を測定して、測定した系統電力供給量が予め前記上限値を超えない値に設定された切替基準値を超えた場合は、前記二次電池から電力を補填し、補填によっても不足するときは、優先度にしたがって前記負荷を選択して切断することを特徴とする請求項5記載の二次電池付太陽光発電システムの充電制御方法。
【請求項7】
さらに、前記切替基準値を超えた場合に負荷に供給する電力を、一定出力の前記二次電池電力に加えて日射計により計測した日射量を最大日射量で割った日射強度指数に基づいて増加することにより太陽光発電電力も使用して二次電池の設備容量を低減することを特徴とする請求項5または6記載の二次電池付太陽光発電システムの充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−330057(P2007−330057A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160336(P2006−160336)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(500213410)カワサキプラントシステムズ株式会社 (25)
【Fターム(参考)】