説明

二液接触型非混合塗布ノズル及びそれを用いた二液型接着剤の塗布方法並びにアンカーボルトの固定方法

【課題】 簡単な構造でコストがかからず、二液型接着剤を容易に塗布することができ、二液型接着剤を互いに接触状態かつ混合していない状態のまま吐出することが可能な新規な二液接触型非混合塗布ノズルを提供する。
【解決手段】 二液型接着剤を塗布するための二液型接着剤塗布装置の先端部に取り付けられる二液接触型非混合塗布ノズルであって、第一吐出開口部からのA剤及び第二吐出開口部からのB剤が通るための長手方向に貫通して設けられた吐出通路と、前記A剤及びB剤とを吐出するため前記吐出通路から連通して設けられた吐出孔と、を有するノズル本体を含み、前記A剤及び/又はB剤の構造粘性指数が1.5以上でありかつ粘度が10〜500Pa・sであり、前記A剤と前記B剤とが前記ノズル本体内で互いに接触状態かつ非混合状態とされ、その互いに接触状態かつ非混合状態のまま吐出されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液型接着剤を互いに接触状態かつ混合していない状態のまま吐出することを可能とした新規な二液接触型非混合塗布ノズル及びそれを用いた二液型接着剤の塗布方法並びにアンカーボルトの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二液型(二成分型)接着剤の混合塗布には、二連式カートリッジあるいはチューブに接着剤の各成分を振り分け格納し、使用時に二連式カートリッジガン及びチューブ押し出し装置を利用して二成分を押し出し吐出する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。また、カートリッジを二重管にしたり、カートリッジの前後で部屋をセパレートして、あたかも1本のカートリッジの様にして通常のカートリッジガンで押し出せる様に工夫した物も知られている。さらには、カッパーIV(ナカリキッドコントロール(株)製の二液混合塗布機の商品名)の様に、二成分型接着剤、充填剤の混合塗布に特化した機械も市販されている。
【0003】
これらの方法では、二成分型の接着剤の混合にあたっては、カートリッジの先端又は、二液吐出ポートの先に二液型接着剤を混合するための部品(スタティックミキサーエレメント、スタティックミキサー、或いはミキシングエレメントなどと称される)の入った円筒型ノズルを装着し、このノズルに2液型接着剤を通過させる事により二液を混合するような方法が取られている(特許文献3参照)。図15に示されるように、従来のスタティックミキサーエレメント内蔵型ノズル200は、長手方向に貫通する吐出通路220を有し、先端がテーパー部214とされ、吐出口216を有するノズル本体212と、該ノズル本体212の後端部に設けられた鍔部218と、ノズル本体212の周縁部に設けられた羽根板状補強部材224と、該ノズル本体212の内部に設けられたスタティックミキサーエレメント223と、を含むように構成されている。
【0004】
この方法では、二液型接着剤はノズル内で混合されて互いに混ぜ合わさった状態(混合状態)で吐出されるため、硬化が早い接着剤を使用すると、たちどころに硬化してしまい、ノズルから接着剤が出なくなってしまう。つまり接着剤の塗布に関して接着剤の可使時間の制約を受けることとなる。
【0005】
さらには、ノズル内にスタティックミキサーエレメントを装着していることにより、ここを通過する接着剤の通過抵抗(配管抵抗、圧力損失)が発生し、手動で吐出させるにはカートリッジガンの引きが重いという問題が有った。このため、二液混合塗布機を使用する場合には、高粘度の接着剤は使用できないと言う欠点があった。特に長いアンカーボルトを挿入する際に必要となる長いノズルを使用した場合や、冬場の低温期に使用すると、接着剤の粘度の温度依存性の為に、低温下で接着剤が高粘度になり吐出が非常に困難になっていた。無理に吐出しようとすると、ノズル取り付け部からの横漏れやカートリッジのピストン部からの漏れが発生し、カートリッジガンを汚したりしていた。無理に押しだそうとすると、カートリッジの破損などの事故が発生していた。
【0006】
また、従来、アンカーボルトやアンカーピンといったアンカー部材の固定方法としては、アンカー部材の頭部を打撃することにより穿孔内で先端部が広がり物理的に固定される物が一般的に使用されているが、この方法では、繰り返し応力によって緩みが生じたり、昼夜の温度変化による伸縮によって締め付け力の低下、さらには脱落等の危険がある。
【0007】
そこで、物理的な固定だけでなく、接着剤を併用して化学的にアンカーボルトを固定する方法も提案されている(特許文献4)。この化学的にアンカーボルトを固定する方法では、物理的固定だけの場合に比べて、より信頼性の高い固定を可能とする事が報告されている。また、接着剤併用の場合の接着剤の塗布方法として、ガラス管又はプラスチック管、プラスチックフィルムで出来た容器に、ビニルエステル樹脂などの硬化性樹脂とベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物を混ざらないように分離して格納した接着剤封入カプセルが提案されている(特許文献5)。これら接着剤封入カプセルはいわゆるケミカルアンカーと称される。
【0008】
このアンカーボルトの固定方法では、上記接着剤封入カプセルをコンクリートなど母材の穿孔内に挿入し次いでアンカーボルトを挿入し穿孔内で接着剤封入カプセルの隔壁をアンカーボルトにより破壊して前記硬化性樹脂と有機過酸化物とを混ぜ合わせ硬化させアンカーボルトを固定させる方法が取られている。これらの混合を容易にするために、アンカーボルトを充電式ドライバードリルなどの先に取り付け、回転や振動を与えて混合する方法も取られている。しかし、ケミカルアンカーの場合、内径、深さの違う穿孔の各種サイズに合わせて、太さと長さの違う各種サイズの接着剤封入カプセルを用意する手間が有った。ケミカルアンカーの場合、カプセルに封入されている接着剤が低粘度かつ低SVIの粘性特性を持っているので、天井面などの下向きの穿穴に施工する場合には、ボルト周囲からの流れだしを防止するために、別にシール剤を用意する必要があった。
【0009】
また、上述した二液混合用のスタティックミキサーエレメントを内蔵したノズルを装着して二液をノズル内で混合して二液型接着剤を塗布する方法を用いてアンカーボルトを固定する場合には、二液混合用のスタティックミキサーエレメントを内蔵したノズルを装着して二液をノズル内で混合して2液型接着剤穿孔内に吐出し、次いでアンカーボルトを挿入して固定する方法が取られていた。
【0010】
この方法では、穿孔内には二液の混合物が塗布されることになり、ボルトを挿入したときに、回転等の混合の操作は必要ない。しかし、穿孔内に塗布された接着剤は時間の経過と共に硬化が進行する事となるため、速硬化の接着剤を使用する場合には接着剤の塗布後直ちにボルトを挿入する必要が有る。特に夏季の高温時には接着剤の硬化が早くなる為に、一連の作業を迅速にする必要が有った。さらには、二液混合用のスタティックミキサーエレメントでの接着剤の硬化によるノズル詰まりなどの問題から、頻繁にノズルを取り替える必要が有るなどの問題が有った。夏季対策の為に硬化の遅い接着剤を用意するなどの方法も取られるが、季節により接着剤を代えるなど管理面で煩わしい事が有った。
【0011】
次に、非混合状態で二液型接着剤を塗布するためのノズルとして、ノズルの流路を隔壁でセパレートして、二成分の接着剤がノズル内で混じり合わないようにしたノズルが本出願人により提案されている(特許文献6)。
【0012】
図16に示されるように、従来の隔壁内蔵型ノズル100は、長手方向に貫通する吐出通路120を有し、先端が段部114とされ、吐出口116を有するノズル本体112と、該ノズル本体112の後端部に設けられた鍔部118と、該吐出通路120を長手方向に分割する隔壁123と、を含むように構成されている。
【0013】
この方法では、二液型接着剤はノズル内に設けられた隔壁によりノズル内で二成分が完全に分離されているので、接着剤の可使時間を考慮することなく接着剤の塗布作業が出来るという利点が有るが、多種多様な深さ、直径の穿孔内に塗布するにはノズルの太さ、長さを多種類用意しなくてはいけない事となり、ノズル製造の金型の費用が膨大になると言う欠点が有り、アンカーボルトの固定などの穿孔内に塗布するために、多品種を用意することはコスト面で不利であった。
【特許文献1】実開平2−138183号公報
【特許文献2】実開平5−80563号公報
【特許文献3】特開昭62−298473号公報
【特許文献4】特開昭61−2779号公報
【特許文献5】特開昭61−254681公報
【特許文献6】特開平09−077099号公報
【特許文献7】特開2002−241706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、(1)簡単な構造でコストがかからず、(2)二液型接着剤を容易に塗布することができ、(3)二液型接着剤を互いに接触状態かつ混合していない状態のまま吐出することが可能な新規な二液接触型非混合塗布ノズル及びそれを用いた接着剤の塗布方法並びにそれを用いたアンカーボルトの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルは、A剤を充填しかつ第一吐出開口部を有する第一接着剤容器及びB剤を充填しかつ第二吐出開口部を有する第二接着剤容器を含む二液型接着剤を塗布するための二液型接着剤塗布装置の先端部に取り付けられる二液接触型非混合塗布ノズルであって、前記第一吐出開口部からのA剤及び前記第二吐出開口部からのB剤が通るための長手方向に貫通して設けられた吐出通路と、前記A剤及びB剤とを吐出するため前記吐出通路から連通して設けられた吐出孔と、を有するノズル本体を含み、前記A剤及び/又はB剤の構造粘性指数が1.5以上でありかつ粘度が10〜500Pa・sであり、前記A剤と前記B剤とが前記ノズル本体内で互いに接触状態かつ非混合状態とされ、その互いに接触状態かつ非混合状態のまま吐出されるようにしたことを特徴とする。なお、本発明において、粘度及び構造粘性指数の値はJISK6833に基づき23℃の測定条件で測定を行ったものである。
【0016】
上記のように前記A剤と前記B剤とが前記ノズル本体内で互いに接触状態かつ非混合状態とされると、ノズル本体の吐出通路のほぼ中央で二液の境界(すなわち、薄い硬化被膜)が出来る。したがって、前記A剤と前記B剤は接触したまま非混合状態でしばらくの間存在できる。なお、本明細書に記載の接触状態かつ非混合状態という状態には、ノズル本体の吐出通路のほぼ中央で薄い硬化被膜が形成された状態も含まれる。
【0017】
前記ノズル本体としては、長手方向に貫通する吐出通路を有すればよいものであるが、長尺筒状体が好適に用いられる。ノズル本体の外径及び長さは、塗布しようとする対象、例えば穿孔等の直径及び深さに適合させて選定すればよいものであるが、穿孔に塗布しようとする場合には、穿孔の直径に対してノズル本体が80%程度の太さを有し、該穿孔の深さに対してノズル本体の長さが1.2〜1.5倍程度で有ることが好ましい。穿孔の内径に対して、ノズル本体が細すぎると吐出時の抵抗が大きく塗布しにくいし、太すぎると、ノズル本体の挿入そのものが行い難くなる。
【0018】
前記ノズル本体の外径と長さの比が(長さ/外径)5〜50で有ることが好ましく、さらに10〜40程度であるのがより好ましい。ノズル本体の外径と長さの比が5より小さいと、例えば、アンカーボルトの固定方法に本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルを使用しようとした場合、適用できる穿孔の深さが浅くなり、アンカーボルトの引抜強度が低くなる。逆に50以上であると不必要に穿孔が深くなり、接着剤の塗布量が多くなり不経済になるので好ましくない。さらには、ノズル本体の外径と長さの比が50以上になると、二液型接着剤の吐出時の流動抵抗が大きくなり、吐出に多大な力が必要になり、多数箇所の塗布では手が疲弊してしまい不利となる。また、吐出時の流動抵抗が大きくなると、吐出に掛かる時間も長くなり非効率的である。吐出時の流動抵抗の問題を解消するために、空気式ガン(エアーガン)の使用も考えられるが、コンプレッサーなどのエアー源を確保する必要があり、行動の自由も妨げられるというデメリットがある。なお、本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルは、二液型接着剤塗布装置の先端部に取付けられるノズルであるから、コンプレッサーなどのエアー源を使用しないカートリッジ式の二液型接着剤塗布装置やコンプレッサーなどのエアー源を用いた空気式ガン(エアーガン)のいずれにも適用できることはいうまでもない。
【0019】
前記ノズル本体の外径については、上述したように接着剤の対象物、例えばアンカーボルトを打ち込む穿孔の内径等によって選定されるが、外径が3mm以上で有ることが吐出時の流動抵抗が小さく、容易に塗布出来る事から好適である。なお、ノズル本体の肉厚については、0.5mm〜1.5mmが好ましい。
【0020】
前記ノズル本体の形状としては、長尺筒状体が好ましく、特にノズル本体の先端が先細となるようにテーパー部とされた先細長尺筒状のノズル本体として構成するのが好ましい。また、ノズル本体の先端が先細となるように複数の段を設けた先細長尺筒状のノズル本体として構成してもよい。
【0021】
前記ノズル本体の横断面としては、二液型接着剤の二成分を1:1の割合でノズル本体から吐出するときにノズル本体の吐出通路のほぼ中央で二液の境界が出来る横断面形状のものが好ましく、例えば、円形、楕円形、多角形が好ましい。ノズル本体の横断面が楕円形(広くは扁平)などの場合は、楕円の短手方向(短径方向)の中央で二液が接触し、楕円の短手方向に硬化薄膜が形成されるのが好ましい。すなわち、ノズル本体の横断面が楕円形などの長径及び短径を有する形状の場合には、二液成分の接触により形成される硬化薄膜が短径方向に形成されるように、二液成分が接触状態かつ非混合状態とされるのが好適である。
【0022】
このように、ノズル本体の吐出通路のほぼ中央で二液の境界(すなわち、薄い硬化被膜)が出来るように構成すれば、二液の流路は確保されているので、硬化によってノズル本体が詰まることは無く、接着剤の可使時間の制約を受ける事は無くなる。したがって、長時間作業を中断しても、ノズル本体が詰まることはなく、直ちに作業を再開できる。
【0023】
作業の再開に当たって、特別な操作は必要としない。本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルでは、ノズル本体の吐出口及び内部が接着剤の硬化物で詰まることはなく、ノズル本体は二液型接着剤塗布装置の各接着剤が入った接着剤容器(例えば、カートリッジ)中の接着剤が無くなるまで使用出来る。二液の硬化反応による硬化被膜が隔壁として作用するため、分単位で硬化する速硬化の二成分型接着剤を使用した場合であっても、作業中断から2〜3日後でも吐出可能である。
【0024】
また、本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルを使用して二液型接着剤を塗布する際には、ノズル本体内での二成分の流路が目視出来ることが好ましく、二液が混じり合わずに流れていく様を確認しやすいようにノズル本体は透明或いは薄い乳白色で作製されることが望ましい。特に、コンクリート等の母材の穿孔内に塗布する際には二液の流動状態が穿孔に入る前に確認出来るという点で、透明な材質による物が優れている。金属製あるいは不透明プラスチックで出来たノズルも使用可能であるが、二液型接着剤を吐出させてからでないと非混合状態の確認を出来ない点で不利がある。
【0025】
前記ノズル本体の材質については、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの熱可塑性プラスチックや、アルミニウム、ステンレススチールなどで出来た金属製ノズルが使用可能である。成形性の容易さから、熱可塑性プラスチックによる、ブロー成形、射出成形品が好適である。
【0026】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルを二液型接着剤塗布装置の先端部に取付けるにあたっては、ねじ込み式、袋ナット式、嵌め合い式、ホースバンド式等いずれの方法でも取付け可能であるが、取り付けの容易さの点から、嵌め合い式が優れている。
【0027】
二液型接着剤塗布装置としては、上述した従来の二連式カートリッジ及びガン、二重缶式カートリッジ及びガン、前後二分割式カートリッジ及び通常のカートリッジガン、二液定量吐出装置などが挙げられ、既に市販されているものを使用可能である。これら二液型接着剤塗布装置の各接着剤が入った接着剤容器、例えばカートリッジからの二液の吐出割合としては、A剤:B剤又はB剤:A剤の吐出割合比が10:1〜1:1のものが本発明で好適に使用可能である。本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルで吐出するにあたり、硬化薄膜が生成され、しかも非混合部分の流路を確保しやすい点で、A剤:B剤又はB剤:A剤の吐出割合比は3:1〜1:1がより好ましく、さらに好ましくは1:1である。A剤:B剤又はB剤:A剤の吐出割合比が3:1よりも二液の混合割合が大きいと、量の少ない成分の方の流路が確保しづらくなり、吐出口が封鎖されてしまうという懸念がある。
【0028】
ノズル本体の内部には従来のような二液を隔離する隔壁は設けられておらず、二液型接着剤塗布装置の各接着剤が入った接着剤容器、例えばカートリッジから吐出された二液の接着剤は、前記ノズル本体内で互いに接触しかつ非混合状態となる。そしてノズル本体の吐出口から、この接触非混合状態のまま二液接着剤は押し出され、このように吐出された接着剤は、二液成分の互いの接触面で硬化反応が始まり、薄い硬化被膜が生成される。こうして、従来のような隔壁を設けていなくても、生成された硬化被膜により二成分が隔離されることとなり、硬化被膜が隔壁の役割を果たすのである。硬化した薄膜は、ノズルの側壁に接着し固定されるため、接着剤と共にノズル本体から押し出されることはない。
【0029】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルに使用される二成分型接着剤としては、例えばアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、ビニルエステル系接着剤などの二液反応硬化型接着剤が使用可能である。これらの中では、二成分の主要な組成が近い、アクリル系、不飽和ポリエステル系、ビニルエステル系が好ましい。これらの接着剤は、二液の主成分が近いため、二成分が互いに溶解し合う又は混合し合うという作用が少なく、互いの接触面(合わさり面)での組成差による相互浸食が起き難く接触面の硬化被膜が薄くなり、非混合部分が多くなるという利点がある。またこれらの接着剤は速硬化性で、二液の互いの接触面で素早く反応硬化が起こり、薄い硬化被膜、即ち硬化薄膜の生成が早いという利点もある。
【0030】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルでは、特許文献6に記載されたような、二液を隔離するための隔壁はノズル本体内部に設けてられていない。したがって、例えば二液型接着剤塗布装置の各接着剤が入った接着剤容器、例えばカートリッジから押し出された二液型接着剤は、ノズル本体内で互いに接触しながらかつ非混合状態で吐出口に向けて押し出されていく。このようにして吐出口から吐出された二液接着剤は、互いの接触面で硬化反応が始まり、硬化被膜が生成される。この生成された硬化被膜により二成分が隔離されて非混合状態となり、従来のように隔壁を設けていなくても、硬化薄膜が隔壁の役割を果たす。硬化した被膜は、ノズル本体の内側側壁に接着し固定されるため、二液型接着剤と共に押し出されることはない。
【0031】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルは、従来のスタティックミキサーエレメントを内蔵したノズルと比較して、吐出時の流動抵抗が少ないため、塗布時にあまり力が必要ない。そのため、比較的長い形状のノズルも使用でき、従来は塗布困難であった、深い穿孔内に容易く接着剤を塗布することが可能となるという利点がある。
【0032】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルでは、接着剤の流動特性も大きなファクターとなっている。二液型接着剤で、二液が重なった時に直ぐに混合してしまうような、低粘性の場合や、二液の粘度差が大きい場合及び、接着剤の構造粘性値(Structural Viscosity Index:SVI)が低い場合には、押し出すときに二液の混合が起こり易く、ノズル本体内に二液の反応による硬化被膜が厚く生成されてしまい、ノズル本体の詰まりを発生させたり、硬化被膜が蛇行又はねじれて生成されたりして未反応部分の流路が十分な広さで確保されないという現象が起こり、良好な接触非混合状態での吐出がなされづらく、吐出時の抵抗も大きく、作業が困難になる。
【0033】
A剤及びB剤からなる二液型接着剤の粘度の比が(A液の粘度/B液の粘度)0.5〜3が二成分の混合が起こりづらいため好ましく、0.8〜1.2の場合がより好ましい。本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルでは、二成分の粘度に違いが有る場合互いに混じり合おうという作用が働き、非混合状態が維持できないという懸念がある。二成分の粘度が10Pa・s以上で、構造粘性指数(以降SVIと称する)が1.5より大きい場合には、二成分の接着剤は二液の合わさり面で馴染みあうことなく、接触した状態のまま、ノズルの流路方向に向かって押し出され流れて行く。A剤及び/又はB剤のSVI値は1.5以上で有ることが必要で、好ましくは1.5〜10、より好ましくは2〜7が良好な結果をもたらす。A剤及び/又はB剤のSVI値が、1.5より小さいと、塗布後に二液が容易に流動し混ざり合い易くなり、非混合状態が維持できなくなるので好ましくない。なお、A剤及び/又はB剤のSVI値が1.5以上で有ることとは、A剤又はB剤のいずれか一方のSVI値が1.5以上でもよく、A剤及びB剤の両方のSVI値が1.5以上でもよいという意味である。このような流動特性を持つ接着剤では、トンネルの天井面の壁に穿孔し、該穿孔内に接着剤を塗布する際に問題となる流れだしの問題が発生しないという利点がある。
【0034】
A剤及びB剤からなる二成分型接着剤のA剤及び/又はB剤の粘度は、10〜500Pa・sで有ることが必要で、より好ましくは50〜200Pa・sが良好な効果をもたらす。粘度が10Pa・s以下では接着剤が流動しやすく、非混合状態での塗布及び塗布後の形状保持が難しく、500Pa・s以上では、吐出時の流動抵抗が大きくて、冬期での低温時の吐出が困難になる。この場合、接着剤を湯煎などで加温して使用すれば吐出は容易になるが、煩わしい事に変わりは無い。さらに本発明の非混合ノズルを使用した場合には、二成分型の接着剤の粘度が、従来使用されていたようなスタティックミキサー内蔵のノズルでは流動抵抗が大きく吐出不可能な300Pa・sを越える様な粘度でも容易く吐出可能であった。これは冬季に接着剤の粘度が高くなり、細く長い穿孔内に塗布する様な場合に作業が行い易いという利点がある。
【0035】
また、特許文献7にはベントナイト系鉱物やマイカ粉末を含有した、粘土状の二液ラジカル反応性組成物が記載されており、この組成物では、二液の接触面に薄い硬化膜が出来るだけで、部分的な硬化物は出来ないので、二液を接触させて保管できる事が記されている。さらには粘土系鉱物を含有しない場合は二液が接触すると直ちに硬化反応が起こり、部分的な硬化物となることが記載されている。本発明では、ベントナイト、マイカなどの粘土系鉱物を含有させなくとも、粘度及び構造粘性指数が上記した本発明の範囲内で有れば、二液の接触面で薄い硬化物が生成するだけで、部分的な硬化物を生じない。粘土状ではノズルを使用しての塗布は非常に困難であるが、仮に穿孔内に塗布できたとしてもアンカーボルトの回転で二液を混ぜ合わせる事は困難である。本発明に係わる二液接触型非混合塗布ノズルに使用される接着剤は、適度な流動性があるので穿孔内に塗布は容易に行え、アンカーボルトを挿入し易く、回転等による混合作業も円滑に行える。
【0036】
本発明に係る二液型接着剤の塗布方法は、A剤とB剤とからなる二液型接着剤を塗布する二液型接着剤の塗布方法であって、前記二液接触型非混合塗布ノズルを用いて、前記A剤と前記B剤とが互いに接触状態かつ非混合状態で塗布することを特徴とする。
【0037】
このようにして塗布された接着剤においても、二液の互いの接触面に薄い硬化被膜が生成するだけで、塗布された二液型接着剤全体が硬化するような現象は起きないことが確認されている。
【0038】
本発明に係るアンカー部材の固定方法の第1の態様は、アンカー部材を挿入するための孔が開穿された母材に前記アンカー部材を挿入して固定するためのアンカー部材の固定方法であり、前記二液接触型非混合塗布ノズルを用いて穿孔内に二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入させる二液型接着剤非混合注入工程と、アンカー部材を前記穿孔内に挿入させて前記穿孔内に注入された前記二液型接着剤を混合させる二液型接着剤混合工程と、前記混合された二液型接着剤が硬化することにより前記穿孔内に挿入された前記アンカー部材が穿孔内に固定されるアンカー部材固定工程と、を含むことを特徴とするものである。なお、必要に応じてアンカー部材は回転又は振動をさせながら挿入する。
【0039】
穿孔内に塗布された場合、二液接着剤の互いの接触面に薄い硬化被膜が生成されていても、次の工程でアンカーボルトを挿入する際に、硬化薄膜は分散してしまいアンカーボルトの接着固定の妨害要因にはならない。なお、アンカーボルトを穿孔に挿入する際には回転あるいは振動させながら挿入するのが好ましい。このように硬化薄膜が生成されたとしても、例えば上述したケミカルアンカーでは該硬化薄膜よりもさらに厚い、ガラス容器、プラスチック容器、フィルム状容器が使用されており、アンカーボルトの挿入によって穿孔内でそれら容器が砕かれて二液型接着剤と混合されていても問題とならないのであるから、該硬化薄膜が全く問題にならないことは明白である。
【0040】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルによって塗布された二液接着剤の互いの接触面に生成される硬化薄膜は、接着剤の硬化物で有るから互いに接触かつ非混合状態で吐出された二液型接着剤を混合して硬化させたものと同一であり、ボイドとなって硬化物の強度を低下させる恐れはない。また、穿孔内では分散して、アンカーボルトの遍芯を防止するスペーサーの役割もする。このため、従来は、穿孔内にボルトを遍芯することなく挿入するためにスペーサーとしてガラスビーズなどを使用していたために硬化後の接着剤層のボイドの原因となっていたが、このようなボイドの原因となるようなものを混入させる必要もなくなる。
【0041】
本発明に係るアンカー部材の固定方法の第2の態様は、アンカー部材を挿入するための孔が開穿された母材に前記アンカー部材を挿入して固定するためのアンカー部材の固定方法であり、接着剤注入口付アンカー部材を前記穿孔内に挿入する接着剤注入口付アンカー部材挿入工程と、前記二液接触型非混合塗布ノズルを用いて前記接着剤注入口付アンカー部材の硬化性樹脂注入口から穿孔内に二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入させる二液型接着剤非混合注入工程と、前記接着剤注入口付アンカー部材の接着剤出口から前記二液型接着剤が混合されながら吐出する混合吐出工程と、前記混合吐出された二液型接着剤が硬化することにより前記穿孔内に挿入された前記アンカー部材が穿孔内に固定されるアンカー部材固定工程と、を含むことを特徴とする。なお、必要に応じてアンカー部材は回転又は振動をさせながら挿入する。
【0042】
前記接着剤注入口付アンカー部材としては、長手方向に貫通する接着剤流路を有し後端部に接着剤注入口が設けられたアンカー部材が好適に設けられる。例えば、スーパーアンカーピンPNA−70(セメダイン(株)製)が用いられる。この接着剤注入口付アンカー部材は、特にコンクリート等の母材のジャンカ部(空隙部)に対する接着剤の注入補強用として開発されたものである。
【0043】
この接着剤注入口付アンカー部材を使用し、前記接着剤注入口付アンカー部材の接着剤注入口から穿孔内に二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入させると、接着剤注入口付アンカー部材の接着剤出口から前記二液型接着剤が混合されながら漏出する。すなわち、前記接着剤注入口付アンカー部材の接着剤注入口から二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入させると、接触かつ非混合状態で注入された二液型接着剤が前記接着剤注入口付アンカー部材の前記接着剤流路を通って接着剤出口から吐出される。
【0044】
また、上記した本発明に係るアンカー部材の固定方法の第2の態様を用いれば、従来は困難であったコンクリート等の母材のジャンカ部の接着剤による補強が可能になると言う利点がある。
【0045】
本発明に係るアンカー部材の固定方法に用いられるアンカー部材としては、アンカーボルト、アンカーピン、ロックボルト又は異形棒鋼のいずれも使用可能である。
【0046】
本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズル及び二液型接着剤の塗布方法は、上記したアンカー部材の固定方法に限らず、土木、建築分野での新設及び補修用途に有効に利用可能である。また、本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズル及び二液型接着剤の塗布方法は、従来二液接着剤を非混合状態で吐出、塗布して、接着しようとする被対象物の上でそれら二液接着剤を混合して使用している、スピーカーの界磁部の接着(フェライトマグネットと金属板の接着)やエレベーターパネルの補強板の取り付け及び物置のパネルの補強板の取り付けなど、電機、電気分野でも有効に使用可能であり、その他ゴルフクラブのシャフトとヘッドのネック(首)部を接着する場合にも有効に使用可能である。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、(1)簡単な構造でコストがかからず、(2)二液型接着剤を容易に塗布することができ、(3)二液型接着剤を互いに接触状態かつ混合していない状態のまま吐出することが可能な新規な二液接触型非混合塗布ノズル及びそれを用いた接着剤の塗布方法並びにそれを用いたアンカーボルトの固定方法を提供することができるという著大な効果を有する。
【0048】
また、本発明によれば、速硬化タイプの二液型接着剤を塗布するにあたっても、可使時間にとらわれずに作業が可能になる。二液型接着剤の塗布後も、可使時間の制約を受けずに作業が出来る。秒単位の速硬化タイプの二液型接着剤の使用も可能になる。さらに、深い穿孔内に塗布するとき、長いノズルを使用しても、配管抵抗、即ちノズル内での流動抵抗が小さく塗布が容易に行える。このように、配管抵抗が小さいため、粘度の高い接着剤の使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されたもので、本発明の技術的思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことは言うまでもない。なお、添付図面において、同一又は類似部材は同一符号で示してある。
【0050】
図1は本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの一つの実施の形態を示す上面斜視図、図2は図1の二液接触型非混合塗布ノズルの背面斜視図、図3は図2のIII-III線断面、図4は図1の二液接触型非混合塗布ノズルを二液型接着剤塗布装置の先端部に取付けた状態を示す斜視図、図5は図4の要部拡大図、図6は二液型接着剤塗布装置の各接着剤が入った接着剤容器を示す要部拡大斜視図、図7は本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの別の実施の形態を示す正面図、図8は本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの他の実施の形態を示す正面図、図9は本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルのその他の実施の形態を上面斜視図である。
【0051】
図10は本発明に係るアンカー部材の固定方法を示す概略説明図であって、(a)はアンカー部材を挿入するための孔を母材に開穿している状態、(b)は穿孔内を空気清掃している状態、(c)は穿孔内をブラシ清掃している状態、(d)は本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルを用いて穿孔内に二液接着剤を注入している状態をそれぞれ示す。図11は本発明に係るアンカー部材の固定方法の第1の態様を示す概略説明図であって、(e)アンカー部材を穿孔内に挿入している状態、(f)はアンカー部材を回転させて二液型接着剤を混合している状態、(g)は混合された二液型接着剤が硬化することにより穿孔内に挿入されたアンカー部材が穿孔内に固定された状態をそれぞれ示す。図12は本発明に係るアンカーボルトの固定方法の第1の態様を示すフローチャート、図13は本発明に係るアンカーボルトの固定方法の第2の態様を示す概略説明図であって混合された二液型接着剤が硬化することにより穿孔内に挿入されたアンカー部材が穿孔内に固定された状態を示す。図14は本発明に係るアンカーボルトの固定方法の第2の態様を示すフローチャートである。
【0052】
図15は従来のスタティックミキサーエレメント内蔵型吐出ノズルを示す長手方向断面図であり、図16は従来の隔壁内蔵型吐出ノズルを示す長手方向断面図である。
【0053】
図1〜3において、符号10Aは本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの一つの実施の形態を示す。二液接触型非混合塗布ノズル10Aは、長手方向に貫通する吐出通路12を有し、先端がテーパー部14とされ、吐出口16を有するノズル本体18と、ノズル本体18の後端部に設けられた鍔部20と、ノズル本体18の周縁部に設けられた羽根板状補強部材21と、を含むように構成されている。二液接触型非混合塗布ノズル10Aでは吐出通路12及び吐出口16は円形とされている。
【0054】
図4において、二液接触型非混合塗布ノズル10Aは二液型接着剤塗布装置22の先端部に着脱自在に取りつけられている。二液型接着剤塗布装置22は、例えば特許文献6に記載されたような従来公知の構造であり、図4〜図6によく示されるように、各接着剤が入った第一接着剤容器及び第二接着剤容器として互いに並設されかつ内部に2液型接着剤のA剤(符号C1)及びB剤(符号C2)を別々に充填してなる一対の第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26と、該第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26の先端部にそれぞれ形成された第一吐出開口部28a,第二吐出開口部28bと、該第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26の基端部に移動可能に取りつけられた押圧蓋体(図示せず)と、基台30と、押出し部材32と、該基台30に取りつけられた固定ハンドル34及び可動ハンドル36とを有し、該可動ハンドル36を手前側に引くことによって、該押出し部材32が前方に進出するように構成されている。前記第一吐出開口部28a,第二吐出開口部28bは隔壁29により、それぞれ混合しないで前記吐出通路12に吐出されるように前記吐出通路12に連通して構成されている。なお、38は基台30の上部に回動自在に取付けられた固定具であり、該固定具38を下方に回転することによって第一接着剤容器及び第二接着剤容器、即ち第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26を基台30に装着する。
【0055】
第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26には、被取付部40が設けられており、上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aの鍔部20を被取付部40に回転嵌着することによって、該二液接触型非混合塗布ノズル10Aの基端部が二液型接着剤塗布装置22の先端部に取りつけられる。
【0056】
この状態で、該可動ハンドル36を手前側に引くことにより該押出し部材32を前方に進出させれば、該押出し部材32の先端部が第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26内の押圧蓋体を押圧して前方に移動せしめ、該第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26内に充填されている2液型接着剤のA剤C1及びB剤C2が該第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26の第一吐出開口部28a,第二吐出開口部28bから吐出されることとなる(図4及び図5参照)。
【0057】
第一吐出開口部28a,第二吐出開口部28bから吐出された2液型接着剤のA剤C1及びB剤C2とは、互いに接触状態でありかつ非混合状態のまま二液接触型非混合塗布ノズル10Aの長手方向に貫通して設けられた吐出通路12を通って吐出通路12と連通して設けられた吐出口16から吐出される。このように構成された二液接触型非混合塗布ノズル10Aを用いた本発明に係る二液型接着剤の塗布方法によれば、2液型接着剤のA剤C1及びB剤C2とは、互いに接触状態でありかつ非混合状態のまま二液接触型非混合塗布ノズル10Aの吐出口16から吐出されることとなる。
【0058】
2液型接着剤のA剤C1及びB剤C2とは、二液成分の互いの接触面で硬化反応が始まり、ノズル本体18の吐出通路12のほぼ中央で二液の境界(すなわち、薄い硬化被膜L)が生成される。こうして、従来のような隔壁を設けていなくても、生成された硬化被膜LによりA剤C1及びB剤C2が互いに隔離されることとなり、硬化被膜Lが隔壁の役割を果たすのである。硬化した薄膜Lは、ノズル本体18の側壁に接着し固定されるため、A剤C1及びB剤C2と共にノズル本体18から押し出されることはない。なお、本明細書に記載の接触状態かつ非混合状態という状態には、ノズル本体の吐出通路のほぼ中央で薄い硬化被膜が形成された状態も含まれる。
【0059】
このようにして吐出されたA剤C1及びB剤C2は被着材上に塗布されるが、このままでは互いに接触状態でありかつ非混合状態のままであるので、そのまま放置しておくと硬化するまでに時間がかかる。そこで、該二液型接着剤を塗布後、硬化を促進させるには、2液を被着材上で互いにまぜ合わせるようにすればよい。この混ぜ合わせ手段としては特別の限定はないが、該二液接触型非混合塗布ノズル10Aの先端部を用いてA剤C1及びB剤C2を混ぜ合わせるようにするのが最も簡単である。
【0060】
上記した二液接触型非混合塗布ノズル10Aでは、ノズル本体18を円筒形として、その横断面を円形とした例を示したが、図示例以外にも、例えば、ノズル本体18の横断面形状を楕円形や多角形とすることができる。
【0061】
図7において、符号10Bは本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの別の実施の形態を示す。二液接触型非混合塗布ノズル10Bは、長手方向に貫通する吐出通路12を有し、先端がテーパー部14とされ、吐出口16を有するノズル本体18と、ノズル本体18の後端部に設けられた鍔部20と、ノズル本体18の周縁部に設けられた羽根板状補強部材21と、を含むように構成されている。二液接触型非混合塗布ノズル10Bでは吐出通路12及び吐出口16は楕円形とされている。このようなノズル本体18の横断面が楕円形(広くは扁平)などの場合は、楕円の短手方向(短径方向)の中央で二液が接触し、楕円の短手方向に硬化薄膜が形成されように構成するのが好ましい。すなわち、ノズル本体18の横断面が、図7に示されるような楕円形などの長径及び短径を有する形状の場合には、吐出開口部28a,28bから吐出された2液型接着剤のA剤C1及びB剤C2の接触により形成される硬化薄膜が短径方向に形成されるように、図6に示した吐出開口部28a,28bの向きに対して図7に示した向きの二液接触型非混合塗布ノズル10Bを第一カートリッジ24及び第二カートリッジ26の被取付部40に取付けるのが好ましい。
【0062】
図8において、符号10Cは本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの他の実施の形態を示す。二液接触型非混合塗布ノズル10Cは、長手方向に貫通する吐出通路12を有し、先端がテーパー部14とされ、吐出口16を有するノズル本体18と、ノズル本体18の後端部に設けられた鍔部20と、ノズル本体18の周縁部に設けられた羽根板状補強部材21と、を含むように構成されている。二液接触型非混合塗布ノズル10Cでは吐出通路12及び吐出口16は多角形(図示例では六角形)とされている。二液型接着剤のA剤C1及びB剤C2の二成分を1:1の割合でノズル本体18から吐出するときにノズル本体18の吐出通路12のほぼ中央で二液の境界が出来る横断面形状であれば、図示例以外のものも勿論適用可能である。
【0063】
図9において、符号10Dは本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルのその他の実施の形態を示す。二液接触型非混合塗布ノズル10Dは、長手方向に貫通する吐出通路12を有し、先細となるように先端が多段部60とされ、吐出口16を有するノズル本体18と、ノズル本体18の後端部に設けられたスカート状取付部66と、を含むように構成されている。二液接触型非混合塗布ノズル10Dは、二液接触型非混合塗布ノズル10Aと比較すると、より細長い形状とされており、深い穿孔内に二液型接着剤を塗布するのに適している。二液接触型非混合塗布ノズル10Dはスカート状取付部66を介して二液型接着剤塗布装置に取付けられるが、その基本的構成は上記した二液接触型非混合塗布ノズル10Aと同様である。
【0064】
次に、本発明に係るアンカー部材の固定方法の第1の態様を図10〜図12に基づいて説明する。
【0065】
まず、アンカー部材の固定に先立ち、母材42にアンカー部材54(図示例ではアンカーボルト)を挿入するための孔46を穿孔ドリル44で開穿する(図10(a))。次に、穿孔46内を空気吹出具48により空気清掃(ブロー清掃)(図10(b))し、穿孔46内をブラシ清掃具52でブラシ清掃(図10(c))する。符号50は穿孔を形成する際の削り屑であり、必要に応じて上記ブロー清掃及びブラシ清掃を繰り返す。
【0066】
このようにして形成された穿孔46内に、図10(d)に示されるように、本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズル(図示例では二液接触型非混合塗布ノズル10A)を用いてA剤C1及びB剤C2からなる二液接着剤を互いに接触かつ非混合状態で注入する(二液型接着剤非混合注入工程;S300)。
【0067】
次に、図11(e)に示されるように、A剤C1及びB剤C2からなる二液接着剤が注入された穿孔46内にアンカー部材54を挿入し、穿孔46内に注入されたA剤C1及びB剤C2からなる二液型接着剤を図11(f)に示されるように混合させる(二液型接着剤混合工程;S302)。このとき、アンカー部材54は回転又は振動させながら、挿入した方がA剤C1及びB剤C2がよく混ざるため好適である。前記混合されたA剤C1及びB剤C2からなる二液型接着剤Sが硬化することにより、図11(g)に示されるように、穿孔46内に挿入されたアンカー部材54が穿孔46内に固定される(アンカー部材固定工程;S304)。
【0068】
さらに、本発明に係るアンカー部材の固定方法の第2の態様を図13〜図14に基づいて説明する。
【0069】
まず、アンカー部材の固定に先立ち、上述した図10(a)〜(図10(c)と同様にして、コンクリートなどの母材42に穿孔46を形成する。そして、接着剤注入口付アンカー部材58(図示例ではアンカーピン)を前記穿孔46内に挿入する(接着剤注入口付アンカー部材挿入工程;S400)。そして、本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルを用いて接着剤注入口付アンカー部材58の接着剤注入口59から穿孔46内にA剤C1及びB剤C2からなる二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入する(二液型接着剤非混合注入工程;S402)。接着剤注入口付アンカー部材58には、注入された接着剤が出てくる接着剤出口62が設けられており、この注入されたA剤C1及びB剤C2からなる二液型接着剤は、接着剤注入口付アンカー部材58の接着剤出口62から出てくる際に混ぜ合されることとなり、混合されて吐出される(混合吐出工程;S404)。前記混合されたA剤C1及びB剤C2からなる二液型接着剤Sが硬化することにより、図13に示されるように、穿孔46内に挿入された接着剤注入口付アンカー部材58が穿孔46内に固定される(アンカー部材固定工程;S406)。この本発明に係るアンカー部材の固定方法の第2の態様は、特にジャンカ部と呼ばれる空隙部が母材42にできている場合であっても、図13によく示されるように、接着剤注入口付アンカー部材58をジャンカ部56を有する穿孔46内に固定することが可能となる。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
二連式カートリッジ(混合比1:1のカートリッジを使用)にセメダインY−600H(セメダイン(株)製二成分型アクリル系接着剤の商品名。高SVI型)のA液及びB液を別々に充填した。この接着剤はA剤の粘度30Pa・s、SVI3.9、B剤の粘度32Pa・s、SVI3.8の粘性特性を持つ接着剤である。
【0071】
次に二連式カートリッジの先端に、外径4.7mm長さ150ミリ(長さ/径=32)のポリプロピレン製の上記した二液接触型非混合塗布ノズル10Aを嵌め合い式に装着した。
【0072】
コンクリートブロックに太さ6.5mmのコンクリートドリルで深さ80mmの穴を明け、上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを差し込んで接着剤を塗布した。A剤及びB剤の二成分の接着剤は上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを目視で確認し、かつ穿孔内に塗布する前に、コンクリートに吐出し、二液が接触状態かつ非混合状態で吐出されていることを確認した。吐出も抵抗が小さく行え、作業が容易であった。太さ6mm長さ78mmのアンカーピンを回転しながら穿孔内に挿入した。通常は次にアンカーピンの頭部を打撃し、ピンの先端を拡幅して物理的に固定するのであるが、ここではそのままに放置し、接着剤のケミカルとしての効果を見ることとした。
【0073】
アンカーピンの固定速度を手で回すことにより確認すると、10分後には手で回せなくなり、十分な速硬化性が確認出来た。更に23℃で7日間養生後にアンカーピンの頭部を引張り試験機で引っ張り抜け強度を測定すると12KNを示し十分な引抜強度を示した。
【0074】
上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aで塗布し、穿孔内で接着剤をアンカーピンの回転を利用して混合することで、十分な混合状態になり硬化速度も速く、硬化後の引抜強度も十分確保されている事が分かる。
【0075】
次に上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aの方の状態を調べるために、作業を中断して、1時間後、3時間後、24時間後、3日後に再び接着剤の吐出を試みたところ、いずれの時間放置後にも接着剤の再吐出が可能であった。
【0076】
穿孔内に吐出された接着剤の可使時間を見るために、接着剤を吐出された状態で、1時間後、3時間後、24時間後にアンカーピンを回しながら挿入して挿入可能かどうかを確認したところ、いずれの時間放置後も、挿入可能で穿孔内で二成分型接着剤が非混合状態で保たれていることが確認できた。
【0077】
(実施例2)
二連式カートリッジ(混合比1:2のカートリッジを使用)にセメダインEP48W(セメダイン(株)製二成分型エポキシ系接着剤の商品名。高SVI型)のA剤(主剤)及びB剤(硬化剤)を別々に充填した。この接着剤は主剤の粘度72Pa・s、SVI5.5、硬化剤の粘度58Pa・s、SVI4.9の粘度特性を持つ接着剤である。
【0078】
次に実施例1と同様に二連式カートリッジの先端に、外径4.7mm長さ150ミリのポリプロピレン製の上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを嵌め合い式に装着した。コンクリートブロックに太さ6.5mmのコンクリートドリルで深さ80mmの穴を開け、上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを差し込んで二液型接着剤を塗布した。二成分の接着剤は上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを目視で確認し、かつ穿孔内に塗布する前に、コンクリートに吐出し、二液が接触状態かつ非混合状態で吐出されていることを確認した。吐出も抵抗が小さく行え、塗布は容易であった。太さ6mm長さ78mmのアンカーピンを充電式ドライバードリルの先に取り付け、回転しながら穿孔内に挿入した。アクリル系接着剤の場合と同様に、ここではそのままに放置し、接着剤のケミカルとしての効果を見ることとした。
【0079】
アンカーピンの固定速度を手で回すことにより確認すると、12時間後には手で回せなくなり、硬化が確認できた。更に23℃で7日間養生後にアンカーピンの頭部を引張り試験機で引っ張り抜け強度を測定すると14KNを示し十分な引抜強度を示した。
【0080】
エポキシ系接着剤に於いても、非混合状態での塗布が可能で、穿孔内で接着剤をアンカーピンの回転を利用して混合する事で、十分な混合状態になり硬化後の引抜強度も十分確保されている事が分かる。
【0081】
次に上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aの方の状態を調べるために、作業を中断して、1時間後、3時間後、24時間後、3日後に再び接着剤の吐出を試みたところ、いずれの時間放置後にも接着剤の再吐出が可能であった。
【0082】
穿孔内に吐出された接着剤の可使時間を見るために、接着剤を吐出された状態で、1時間後、3時間後、24時間後にアンカーピンを回しながら挿入して挿入可能かどうかを確認したところ、いずれの時間放置後も、挿入可能で穿孔内で二成分型接着剤が接触状態かつ非混合状態で保たれていることが確認できた。
【0083】
(実施例3)
二連式カートリッジ(混合比1:2のカートリッジを使用)にセメダインDX500H(セメダイン(株)製二成分型アクリルと変成シリコンのハイブリット型接着剤の商品名。高SVI型)のA剤及びB剤を別々に充填した。この接着剤はA剤の粘度230Pa・s、SVI6.5、B剤の粘度210Pa・s、SVI6.7の粘度特性を持つ接着剤である。
【0084】
次に二連式カートリッジの先端に、外径4.7mm長さ150ミリ(長さ/外径=32)のポリプロピレン製の上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを嵌め合い式に装着した。コンクリートブロックに太さ6.5mmのコンクリートドリルで深さ80mmの穴を開け、上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを差し込んで二液型接着剤を塗布した。二成分の接着剤は上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aを目視で確認し、かつ穿孔内に塗布する前に、コンクリートに吐出し、二液が接触状態かつ非混合状態で吐出されていることを確認した。高粘度接着剤にもかかわらず、吐出も抵抗が小さく行え、塗布は容易であった。太さ6mm長さ78mmのアンカーピンを充電式ドライバードリルの先に取り付け、回転しながら穿孔内に挿入した。アクリル系接着剤の場合と同様に、ここではそのままに放置し、接着剤のケミカルとしての効果を見ることとした。
【0085】
アンカーピンの固定速度を手で回すことにより確認すると、15分後には手で回せなくなり、十分な速硬化性が確認できた。更に23℃で7日間養生後にアンカーピンの頭部を引張り試験機で引っ張り抜け強度を測定すると10KNを示し十分な引抜強度を示した。
【0086】
上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aで塗布し、穿孔内で接着剤をアンカーピンの回転を利用して混合する事で、十分な混合状態になり、硬化速度も速く、硬化後の引抜強度も十分確保されている事が分かる。
【0087】
次に上記二液接触型非混合塗布ノズル10Aの方の状態を調べるために、作業を中断して、1時間後、3時間後、24時間後、3日後に再び接着剤の吐出を試みたところ、いずれの時間放置後にも接着剤の再吐出が可能であった。
【0088】
穿孔内に吐出された接着剤の可使時間を見るために、接着剤を吐出された状態で、1時間後、3時間後、24時間後にアンカーピンを回しながら挿入して挿入可能かどうかを確認したところ、いずれの時間放置後も、挿入可能で穿孔内で二成分型接着剤が接触状態かつ非混合状態で保たれていることが確認できた。
【0089】
(実施例4)
次にA剤の粘度30Pa・s、SVI3.9で、B剤の粘度が3.2Pa・s、SVIが3.8の粘性特性を持つ接着剤を使用し、ノズルの外径を4.7mm長さ350mm(長さ/径=74)に変えて試験した以外は、実施例1と同様にして試験した。吐出時の抵抗を見たところ、流動抵抗が大きく、初めの吐出では吐出可能であったが、塗布10箇所を越える当たりから、手が疲弊してしまい、塗布が困難になった。また塗布のスピードも1分/1箇所以上掛かり遅くなった。しかしながら、二成分の接着剤が接触状態かつ非混合状態で塗布される点と、ノズル内での二成分の混合が起きていない点と、再吐出の可能な点と、穿孔内にボルトを挿入出来る点においては、実施例1と同様に良好であった。
【0090】
(比較例1)
実施例1の二液接触型非混合塗布ノズル10Aに変えてスタティックミキサーエレメント内蔵ノズルを使用した以外は実施例と同じようにして接着剤を穿孔内に塗布した。20分経過後に穿孔内にアンカーピンを挿入しようとしたところ、接着剤が硬化していて、挿入不可能であった。接着剤の再吐出も不可能であった。
【0091】
(比較例2)
二連式カートリッジにセメダインY−615(セメダイン(株)製二成分型アクリル接着剤の商品名。低SVI型)のA剤及びB剤を別々に充填した。この接着剤はA剤の粘度3Pa・s、SVI1.3で、B剤の粘度が3.2Pa・s、SVIが1.4の粘性特性を持つ接着剤である。実施例と同様にして、塗布の状態を確認したところ、吐出後15分経過した時点で、二液が流動により混合してしまい、非混合状態ではなくなった。ノズル内でも二液が不規則に流動し混ざり合い、大きな硬化物を発生して、詰まりを生じていた。吐出された穿孔内においても、流動による硬化物が発生し、15分後には、アンカーピンの挿入が不可能になっていた。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの一つの実施の形態を示す上面斜視図である。
【図2】図1の二液接触型非混合塗布ノズルの背面斜視図である。
【図3】図2のIII-III線断面である。
【図4】図1の二液接触型非混合塗布ノズルを二液型接着剤塗布装置の先端部に取付けた状態を示す斜視図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】二液型接着剤塗布装置の各接着剤が入った接着剤容器を示す要部拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの別の実施の形態を示す正面図である。
【図8】本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルの他の実施の形態を示す正面図である。
【図9】本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルのその他の実施の形態を上面斜視図である。
【図10】本発明に係るアンカー部材の固定方法を示す概略説明図であって、(a)はアンカー部材を挿入するための孔を母材に開穿している状態、(b)は穿孔内を空気清掃している状態、(c)は穿孔内をブラシ清掃している状態、(d)は本発明に係る二液接触型非混合塗布ノズルを用いて穿孔内に二液接着剤を注入している状態をそれぞれ示す。
【図11】本発明に係るアンカー部材の固定方法の第1の態様を示す概略説明図であって、(e)アンカー部材を穿孔内に挿入している状態、(f)はアンカー部材を回転させて二液型接着剤を混合している状態、(g)は混合された二液型接着剤が硬化することにより穿孔内に挿入されたアンカー部材が穿孔内に固定された状態をそれぞれ示す。
【図12】本発明に係るアンカーボルトの固定方法の第1の態様を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係るアンカーボルトの固定方法の第2の態様を示す概略説明図であって混合された二液型接着剤が硬化することにより穿孔内に挿入されたアンカー部材が穿孔内に固定された状態を示す。
【図14】本発明に係るアンカーボルトの固定方法の第2の態様を示すフローチャートである。
【図15】従来のスタティックミキサーエレメント内蔵型吐出ノズルを示す長手方向断面図であある。
【図16】従来の隔壁内蔵型吐出ノズルを示す長手方向断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10A,10B,10C,10D:二液接触型非混合塗布ノズル、12:吐出通路、14:テーパー部、16:吐出口、18:ノズル本体、20:鍔部、21:羽根板状補強部材、22:二液型接着剤塗布装置、24:第一接着剤容器(第一カートリッジ)、26:第二接着剤容器(第二カートリッジ)、28a,28b:吐出開口部、30:基台、32:押出し部材、34:固定ハンドル、36:可動ハンドル、38:固定具、40:被取付部、42:母材、44:穿孔ドリル、46:穿孔、48:空気吹出具、50:削り屑、52:ブラシ清掃具、54:アンカー部材、56:ジャンカ部、58:接着剤注入口付アンカー部材、59:接着剤注入口、60:多段部、62:接着剤出口、66:スカート状取付部、100:隔壁内蔵型ノズル、112:ノズル本体、114:段部、116:吐出口、118:鍔部、120:吐出通路、123:隔壁、200:スタティックミキサーエレメント内蔵型ノズル、212:ノズル本体、214:テーパー部、216:吐出口、218:鍔部、220:吐出通路、223:スタティックミキサーエレメント、224:羽根板状補強部材、A剤:C1、B剤:C2、L:硬化被膜(硬化薄膜)、S:混合された二液型接着剤。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A剤を充填しかつ第一吐出開口部を有する第一接着剤容器及びB剤を充填しかつ第二吐出開口部を有する第二接着剤容器を含む二液型接着剤を塗布するための二液型接着剤塗布装置の先端部に取り付けられる二液接触型非混合塗布ノズルであって、
前記第一吐出開口部からのA剤及び前記第二吐出開口部からのB剤が通るための長手方向に貫通して設けられた吐出通路と、
前記A剤及びB剤とを吐出するため前記吐出通路から連通して設けられた吐出孔と、
を有するノズル本体を含み、
前記A剤及び/又はB剤の構造粘性指数が1.5以上でありかつ粘度が10〜500Pa・sであり、
前記A剤と前記B剤とが前記ノズル本体内で互いに接触状態かつ非混合状態とされ、その互いに接触状態かつ非混合状態のまま吐出されるようにしたことを特徴とする二液接触型非混合塗布ノズル。
【請求項2】
A剤とB剤とからなる二液型接着剤を塗布する二液型接着剤の塗布方法であって、
請求項1記載の二液接触型非混合塗布ノズルを用いて、前記A剤と前記B剤とが互いに接触状態かつ非混合状態で塗布することを特徴とする二液型接着剤の塗布方法。
【請求項3】
アンカー部材を挿入するための孔が開穿された母材に前記アンカー部材を挿入して固定するためのアンカー部材の固定方法であり、
請求項1記載の二液接触型非混合塗布ノズルを用いて穿孔内に二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入させる二液型接着剤非混合注入工程と、
アンカー部材を前記穿孔内に挿入させて前記穿孔内に注入された前記二液型接着剤を混合させる二液型接着剤混合工程と、
前記混合された二液型接着剤が硬化することにより前記穿孔内に挿入された前記アンカー部材が穿孔内に固定されるアンカー部材固定工程と、
を含むことを特徴とするアンカー部材の固定方法。
【請求項4】
アンカー部材を挿入するための孔が開穿された母材に前記アンカー部材を挿入して固定するためのアンカー部材の固定方法であり、
接着剤注入口付アンカー部材を前記穿孔内に挿入する接着剤注入口付アンカー部材挿入工程と、
請求項1記載の二液接触型非混合塗布ノズルを用いて前記接着剤注入口付アンカー部材の接着剤注入口から穿孔内に二液型接着剤を互いに接触状態かつ非混合状態で吐出注入させる二液型接着剤非混合注入工程と、
前記接着剤注入口付アンカー部材の接着剤出口から前記二液型接着剤が混合されながら吐出される混合吐出工程と、
前記混合吐出された二液型接着剤が硬化することにより前記穿孔内に挿入された前記アンカー部材が穿孔内に固定されるアンカー部材固定工程と、
を含むことを特徴とするアンカー部材の固定方法。
【請求項5】
前記アンカー部材がアンカーボルト、アンカーピン又はロックボルトのいずれかであることを特徴とする請求項3又は4記載のアンカー部材の固定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−18265(P2009−18265A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183607(P2007−183607)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(503119111)株式会社ジェイアール総研エンジニアリング (12)
【出願人】(591185548)昭栄薬品株式会社 (2)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】