説明

二色成形品の製造方法

【課題】所望の意匠性が確保された二色成形品を優れた製作性をもって経済的に有利に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】一次成形キャビティ42と、一次成形体の二次成形体との接合面を形成するキャビティ面部分において開口するピンゲートからなる第一のゲート38とを形成した後、一次成形キャビティ42内に、光不透過の有色の第一の樹脂材料44を射出充填して、一次成形体を形成し、次いで、一次成形体が収容された二次成形キャビティと、二次成形体の意匠面とは異なる面を形成するキャビティ面部分において開口する第二のゲートとを形成した後、二次成形キャビティ内に、第一の樹脂材料よりも流動性の高い無色透明の第二の樹脂材料を射出充填して、二次成形体を形成すると共に、それを一次成形体に一体接合するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二色成形品の製造方法に係り、特に、有色の一次成形体と無色透明の二次成形体とが互いに一体的に接合されてなる二色成形品を有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特性や色等の種類が互いに異なる樹脂材料を用いて得られた二つの部材が一体化せしめられてなる、所謂複合樹脂製品が、例えば、自動車部品や電気製品の部品、或いは各種意匠製品等に、多く使用されてきている。そして、このような複合樹脂製品の製造方法の一種として、射出成形を利用した二色成形(二色射出成形)により、目的とする複合樹脂製品を二色成形品として製造する方法が、知られている。
【0003】
すなわち、この二色成形品の製造方法は、よく知られているように、先ず、互いに型合せされた第一の型と第二の型との間に一次成形キャビティを形成すると共に、この一次成形キャビティに連通する第一のゲートを形成した後、かかる第一のゲートを通じて、一次成形キャビティ内に第一の樹脂材料を射出充填することにより、一次成形体を形成する。次いで、この一次成形体を、例えば第一の型内に収容、保持させた状態で、第一の型と第二の型とを型開きした後、第二の型とは別の第三の型を第一の型に型合わせすることにより、それら第一の型と第三の型との間に、一次成形体が内部に収容された二次成形キャビティを形成すると共に、この二次成形キャビティに連通する第二のゲートを形成する。そして、その後、二次成形キャビティ内に、第一の樹脂材料とは特性や色等の種類の異なる第二の樹脂材料を射出充填して、二次成形体を形成すると共に、それを二次成形キャビティ内に収容された一次成形体に対して一体的に接合し、以て、目的とする二色成形品を得るものである(例えば、下記特許文献1参照)。このような手法によれば、一次成形体と二次成形体とが一体的に接合されてなる二色成形品が、極めて容易に且つ効率的に製造され得るのである。
【0004】
ところで、各種の計器や画面のカバー等のような二色成形品、つまり、有色の枠体(一次成形体)に対して、無色透明な被覆体(二次成形体)が、枠体の開口部の全体を覆いつつ、意匠面となる表面とは反対の裏面において、枠体の開口部の周縁部に一体的に接合されてなる二色成形品を、上記の如き従来手法にて製造する際には、通常、第一のゲートが、一次成形キャビティの内面からなるキャビティ面(第一及び第二の型のそれぞれのキャビティ形成面)のうちで、枠体における透明な被覆体の裏面との接合面とは異なる側面を形成するキャビティ面部分に、サイドゲートの形態を有して形成される。また、第二のゲートも、被覆体の意匠面たる表面とは異なる側面を形成するキャビティ面部分に、サイドゲートの形態において形成される。これによって、最終的に得られる二色成形品の被覆体の意匠面に、ゲート跡(被覆体の成形後に、ゲートランドやランナ、スプルー等の内部で樹脂材料が固化せしめられて、被覆体に一体化された状態で形成される非製品部分を切除したときに、ゲートの位置に残存せしめられる切除跡)が形成されることや、透明な被覆体の意匠面を通じて、枠体のゲート跡(枠体の成形後に、ゲートランドやランナ、スプルー等の内部で樹脂材料が固化せしめられて、枠体に一体化された状態で形成される非製品部分を切除したときに、ゲートの位置に残存せしめられる切除跡)が外部から視認されるようなことが未然に回避され、以て、二色成形品のゲート跡による意匠性(見栄え)の低下の防止が、図られている。
【0005】
ところが、そのように、第一のゲートと第二のゲートとがサイドゲートの形態をもって形成される場合には、成形された二色成形品(カバー)に対して、第一及び第二の各ゲートやゲートランド、ランナ、スプルー等の内部で固化せしめられた大きなバリ状の非製品部分が、一次成形体(枠体)と二次成形体(被覆体)とに一体化されたままの状態で残されることになる。
【0006】
そのため、無色透明の二次成形体が、その意匠面とは反対側の面において、有色の一次成形体に対して一体的に接合されてなる二色成形品を従来手法にて製造する場合には、二色成形品の成形後に、一次成形体に一体化されたバリ状の非製品部分と、二次成形体に一体化されたバリ状の非製品部分の両方を、それらの成形体からそれぞれ除去するための面倒な作業を行わなければならず、それが、目的とする二色成形品の製作性の向上と製作コストの低下の妨げとなっていたのである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−150491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、有色の一次成形体に対して、無色透明な二次成形体が意匠面とは反対側の面において一体的に接合されてなる二色成形品を、ゲート跡による意匠性の低下を防止しつつ、優れた製作性をもって、経済的に有利に製造し得る二色成形品の製造手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、第一の樹脂材料を用いた一次成形により形成される有色の一次成形体と、第二の樹脂材料を用いた二次成形により形成されて、該一次成形体に対して、意匠面とは反対側の面において一体的に接合される無色透明な二次成形体とからなる二色成形品の製造方法であって、(a)前記一次成形体を与える一次成形キャビティを形成すると共に、該一次成形キャビティの内面からなるキャビティ面のうちで、該一次成形体の前記二次成形体との接合面を形成するキャビティ面部分において開口して、該一次成形キャビティに連通する第一のゲートを、ピンゲートの形態において形成する工程と、(b)前記第一の樹脂材料として、光不透過の有色の樹脂材料を用い、かかる第一の樹脂材料を、溶融状態で、前記第一のゲートを通じて、前記一次成形キャビティ内に射出充填して、該一次成形キャビティ内で前記一次成形体を形成する工程と、(c)前記二次成形体を与える二次成形キャビティを、前記一次成形体が内部に収容された状態で形成すると共に、該二次成形キャビティの内面からなるキャビティ面のうちで、該二次成形体の前記意匠面とは異なる面を形成するキャビティ面部分において開口して、該二次成形キャビティに連通する第二のゲートを形成する工程と、(d)前記第二の樹脂材料として、前記第一の樹脂材料よりも溶融状態での流動性の高い樹脂材料を用い、かかる第二の樹脂材料を、溶融状態で、前記第二のゲートを通じて、前記二次成形キャビティ内に射出充填して、該二次成形キャビティ内で前記二次成形体を形成すると共に、該二次成形キャビティ内に収容された前記一次成形体に対して、該二次成形体を一体的に接合する工程とを含むことを特徴とする二色成形品の製造方法にある。
【0010】
なお、この本発明に従う二色成形品の製造手法の好ましい態様の一つによれば、前記一次成形体が、光不透過の有色の枠体にて構成され、且つ前記二次成形体が、該枠体の開口部の全体を覆いつつ、該枠体の開口部の周縁部に一体的に接合される無色透明な被覆体にて構成される。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、このような本発明に従う二色成形品の製造手法においては、第二のゲートが、二次成形キャビティのキャビティ面のうちで、二次成形体の意匠面とは異なる面を形成するキャビティ面部分において開口するように設けられるため、ゲート跡が、二次成形体に対して、その意匠面とは異なる面に形成されるようになる。これによって、二次成形体に形成されるゲート跡が二色成形品の意匠面に露呈せしめられることが、有利に皆無ならしめられ、以て、二色成形品の意匠性が、二次成形体に形成されるゲート跡にて損なわれることが、効果的に防止され得る。
【0012】
また、本発明に係る二色成形品の製造手法にあっては、特に、第一のゲートが、一次成形キャビティのキャビティ面のうちで、無色透明な二次成形体に対する一次成形体の接合面を形成するキャビティ面部分において開口するように設けられ、そして、そのような第一のゲートを通じて、光不透過の有色の第一の樹脂材料が一次成形キャビティ内に射出充填されることで、光不透過の有色の一次成形体が形成されるようになっている。そのため、かかる本発明手法によって得られた二色成形品では、一次成形体の二次成形体との接合面にゲート跡が形成されるものの、二色成形品を二次成形体の意匠面側から見た際に、入射角が二次成形体の臨界角を超える大きさである場合には、光が全反射されるところから、一次成形体の接合面に形成されたゲート跡が、透明な二次成形体を通じて視認されることがない。また、入射角が二次成形体の臨界角以下の大きさである場合には、意匠面側からの光が二次成形体を透過するものの、一次成形体が光不透過であるために、二色成形品の背後からの光が一次成形体を透過して、意匠面側に漏れ出すことがなく、それ故、一次成形体の接合面に形成されたゲート跡が、透明な二次成形体を通じて、極めて見難くなっている。これによって、二色成形品の意匠性が、一次成形体の接合面に形成されたゲート跡にて損なわれることも、効果的に防止され得る。
【0013】
さらに、本発明手法においては、一次成形体の二次成形体との接合面を形成するキャビティ面部分において開口するように形成された第一のゲートが、ピンゲートの形態を有しているところから、一次成形から二次成形に移行するときに、一次成形体に一体化された状態で残される非製品部分を切除する、所謂ゲートカットが、そのためだけに人手を掛けた特別な作業を何等行うことなく、一次成形体を成形する成形金型の型開きと同時に実施され得る。そのため、最終的に得られる二色成形品において、第一のゲートや、それに連通するゲートランド、ランナ、スプルー等の内部で固化せしめられた大きなバリ状の非製品部分が、一次成形体に一体化されたまま残されることが、効果的に回避され得る。そして、その結果として、二色成形品の成形後に、一次成形体に一体化されたバリ状の非製品部分を二色成形品から切除するための面倒なゲートカット作業を行う必要が有利に解消され、以て、目的とする二色成形品の作業工程の簡略化と作業コストの削減とが、有効に図られ得る。
【0014】
しかも、本発明手法では、第二の樹脂材料として、第一の樹脂材料よりも、同一温度及び同一圧力下で流動性の高い樹脂材料が用いられている。このため、第二の樹脂材料の二次成形キャビティ内への射出時に、溶融状態とされた第二の樹脂材料から、一次成形体の二次成形体との接合面に作用せしめられる流動圧が有利に小さく為され、それにより、そのような流動圧に応じて、一次成形体の接合面において生ずるずり応力が、効果的に低く抑えられ得る。その結果、二次成形時に、一次成形体を構成する第一の樹脂材料の一部が第二の樹脂材料中に溶け込んで、二次成形体内部に滲み部分が生ずるようなことが、可及的に回避され得る。
【0015】
さらに、第二の樹脂材料が第一の樹脂材料よりも高い流動性を有しているため、一次成形から二次成形への移行時での型開きに伴うゲートカットにより、一次成形体の二次成形体との接合面に一体化された状態で残された小さなバリ状の非製品部分が、二次成形時に、一次成形体の接合面上を流動する第二の樹脂材料と接触せしめられる。このとき、第二の樹脂材料のバリ状非製品部分との接触により生ずる剪断発熱によって、バリ状非製品部分の先端に存在する凹凸部分が溶融し、それによって、バリ状非製品部分の先端面が可及的に平滑化され得る。その結果、バリ状非製品部分の先端に存在する凹凸部分によって、バリ状非製品部分の先端部分が白色化することも、有利に解消され得、以て、白色化したバリ状非製品部分の先端部分が、透明な二次成形体を通じて視認されることで、二色成形品の意匠性が低下することも、未然に防止され得る。
【0016】
従って、かくの如き本発明に従う二色成形品の製造手法によれば、有色の一次成形体に対して、無色透明な二次成形体が意匠面とは反対側の面において一体的に接合されてなる二色成形品を、ゲート跡や滲み部分により意匠性が損なわれることのない良好な外観と、優れた製作性とをもって、経済的に有利に製造することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係る二色成形品の製造方法の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0018】
先ず、図1及び図2には、本発明手法に従って製造された二色成形品の一実施形態として、自動車のインストルメントパネルに取り付けられる液晶表示部のカバーが、その正面形態と縦断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図からも明らかなように、本実施形態のカバー10は、一次成形体たる矩形状の枠体12と、全体として、枠体12と同一大きさの矩形平板からなる被覆体14とを有している。そして、被覆体14が、枠体12に対して、その開口部15(窓部)の全体を被覆しつつ、かかる開口部15の周縁部を形成する、枠体12の厚さ方向一方の面からなる接合面16に重ね合わされた状態で、一体的に接合されて、構成されている。また、このような枠体12と被覆体14との一体接合品からなるカバー10では、被覆体14の枠体12側とは反対側の表面が、外部に露呈せしめられる意匠面17とされている。
【0019】
そして、ここでは、カバー10を構成する枠体12が、光不透過の黒色を呈するポリカーボネート樹脂を用いて形成されている一方、被覆体14が、無色透明のポリカーボネート樹脂を用いて形成されている。なお、被覆体14を形成するポリカーボネート樹脂には、枠体12を形成するポリカーボネート樹脂よりも、同一温度と同一圧力の条件下で、溶融状態での流動性の高いものが、用いられている。
【0020】
ところで、このようなカバー10は、例えば、以下の如き手順に従って、製造されることとなる。
【0021】
すなわち、先ず、枠体12が射出成形により形成されるのであるが、それには、図3に示される如き固定型18と第一可動型19とが、準備される。ここで準備される固定型18は、矩形の厚肉平板形状を呈する固定盤20と、矩形のブロック形状を呈する固定側パッド22とを有している。また、第一可動型19も、矩形の厚肉平板形状を呈する第一可動盤24と、矩形のブロック形状を呈する第一可動側パッド26とを有している。そして、それら第一可動型19と固定型18は、第一可動側パッド26の下面と固定側パッド22の上面とを、上下方向において互いに対向させるように位置せしめられている。
【0022】
また、固定型18の固定側パッド22においては、第一可動型19の第一可動側パッド26との対向面に、固定型側キャビティ形成凹所27が、設けられている。なお、この固定型側キャビティ形成凹所27は、その内面形状が、目的とするカバー10の枠体12の外面形状に対応した形状とされている。
【0023】
一方、第一可動型19の第一可動盤24には、図示しない射出成形機のノズルに接触せしめられる第一スプルーブッシュ28が、かかるノズルから射出される溶融樹脂が流動せしめられる第一スプルー30を有して、位置固定に設けられている。
【0024】
また、第一可動型19の第一可動側パッド26においては、第一可動盤24に設けられた第一スプルーブッシュ28と接触する部分とは異なる部分に、上下方向に延びる第二スプルーブッシュ32が、位置固定に設けられている。更に、この第二スプルーブッシュ32には、上下方向に延びる第二スプルー34と、かかる第二スプルー34に対して、その下側開口部を通じて連通するゲートランド36とが、第二スプルーブッシュ32を上下方向に貫通するように設けられている。そして、ここでは、このゲートランド36の内周面が、下方に向かって次第に小径化するテーパ筒形状とされて、その下側開口部が、十分に小さな開口面積を有する、第一のゲートとしてのピンゲート38とされている。また、このような第一可動型19においては、第一可動盤24との接触面において開口するランナ40が設けられ、このランナ40を通じて、第二スプルーブッシュ32の第二スプルー34が、第一可動盤24に設けられた第一スプルーブッシュ28の第一スプルー30と連通せしめられている。
【0025】
そして、かかる第一可動型19が取り付けられる第一可動盤24が、図示しない公知の油圧機構等により、固定型18との対向方向の上下両方向に移動せしめられるのに伴って、第一可動型19が、第一可動盤24と共に、それと同一方向に一体移動せしめられて、固定型18に対して接近/離隔移動し得るようになっている。また、ここでは、第一可動盤24が、一軸回りに回転せしめられる、図示しない公知のロータリーテーブルに固設され、更に、このロータリーテーブルには、後述する第二可動型(48)が取り付けられる第二可動盤(50)が、第一可動盤24と左右方向に並んで位置するように固設されている。これによって、ロータリーテーブルが180°回転せしめられる毎に、固定型18の鉛直上方に、第一可動型19と第二可動型(48)とが、交互に位置せしめられるようになっている(図8参照)。
【0026】
而して、かくの如き構造を有する固定型18と第一可動型19とを用いて、枠体12を形成するには、先ず、固定型18の鉛直上方に、第一可動型19が位置せしめられた状態で、第一可動型19が固定型18に接近移動せしめられることにより、図4に示されるように、それら第一可動型19と固定型18とが型合せされる。
【0027】
これにより、固定型18の固定型側キャビティ形成凹所27が、第一可動型19の下面(固定型18の固定側パッド22と対向する第一可動側パッド26の下面)の一部と、第二スプルーブッシュ32の下端面とにて閉塞せしめられて、それら第一可動型19と固定型18との間に、枠体12に対応した形状を有する一次成形キャビティ42が形成される。換言すれば、枠体12の上面からなる接合面16を形成するキャビティ面部分が、第一可動型19の下面の一部と第二スプルーブッシュ32の下端面とにて形成されると共に、枠体12の接合面16を除く下面や内外周面を形成するキャビティ面部分が、固定型側キャビティ形成凹所27の内面にて形成されて、それらのキャビティ面を内面とする一次成形キャビティ42が、形成される。
【0028】
かくして、第一可動型19と固定型18との型合せを行う本工程において、一次成形キャビティ42が形成されると同時に、かかる一次成形キャビティ42に連通する第一のゲートとしてのピンゲート38が、枠体12の接合面16を形成するキャビティ面部分において開口した状態で、形成される。
【0029】
次に、図5に示されるように、枠体12を与える、光不透過の黒色を呈するポリプロピレン等の第一の樹脂材料44が、溶融状態下で、図示しない射出成形機のノズルから射出されて、第一スプルー30、ランナ40、第二スプルー34、ゲートランド36、及びピンゲート38を通じて、一次成形キャビティ42内に充填される。かくして、一次成形体たる枠体12を形成するための一次成形が実施される。
【0030】
その後、図6に示されるように、第一の樹脂材料44の半溶融状態下で、第一可動型19と固定型18とが型開きされる。このとき、半溶融状態の第一の樹脂材料44からなる枠体12が、固定型18の固定型側キャビティ形成凹所27内に保持される。また、ここでは、一次成形キャビティ42と連通するゲートとして、ピンゲート38が採用されているため、枠体12に対する特別なゲートカット作業を何等実施することなく、固定型18の型開きと同時にゲートカットが行われる。
【0031】
それ故、ここでは、図7に示される如く、第一可動型19と固定型18の型開き後に、枠体12の接合面16に不可避的に残存するバリ状の非製品部分46の大きさが、例えば、ピンゲート38の代わりにサイドゲートが採用される場合よりも十分に小さくされる。しかしながら、その一方で、かかる非製品部分46を、その途中で引き千切るようにしてゲートカットが行われるところから、枠体12の接合面16に残存する非製品部分46の先端面が、不可避的に微細な凹凸形状とされる。そのため、枠体12の全体が黒色とされるものの、非製品部分46の先端部分が白色化された状態となる場合がある。
【0032】
次に、前記せるように、図示しないロータリーテーブルが180°回転せしめられることにより、図8に示される如く、第一可動型19に代えて、第二可動型48が、固定型18の鉛直上方に、固定型18と離間して位置せしめられる。この第二可動型48は、矩形の厚肉平板形状を呈する第二可動盤50と、矩形のブロック形状を呈する第二可動側パッド52とを有している。
【0033】
また、第二可動型48の第二可動盤50には、図示しない射出成形機のノズルに接触せしめられる第三スプルーブッシュ54が、かかるノズルから射出される溶融樹脂が流動せしめられる第三スプルー56を有して、位置固定に設けられている。
【0034】
さらに、第二可動型48の第二可動側パッド52には、それを上下方向に貫通して延びる第四スプルー58が、上側開口部において、第三スプルーブッシュ54の第三スプルー56に連通するように設けられている。また、第二可動側パッド52の下面(固定型18の固定側パッド22との対向面)には、可動型側キャビティ形成凹所60とランナ形成凹所62とが、互いに連通する状態で形成されている。なお、この可動型側キャビティ形成凹所60は、その内面形状が、目的とするカバー10の被覆体14の外面形状に対応した形状とされている。また、ランナ形成凹所62の底面には、第四スプルー58の下側開口部が形成され、更に、このランナ形成凹所62が、可動型側キャビティ形成凹所60の側面において、可動型側キャビティ形成凹所60内に向かって開口せしめられている。
【0035】
そして、図9に示されるように、上記の如き構造を有する第二可動型48が、公知の油圧機構等(図示せず)により、固定型18に接近移動せしめられて、それら第二可動型48と固定型18とが型合せされる。
【0036】
これにより、第二可動型48の可動型側キャビティ形成凹所60が、固定型18の上面(第二可動型48の第二可動側パッド52と対向する固定側パッド22の上面)の一部と、固定型18の固定型側キャビティ形成凹所27内に収容、保持された枠体12の接合面16とにて閉塞せしめられて、それら第二可動型48と固定型18との間に、枠体12が内部に収容された、被覆体14に対応した形状を有する二次成形キャビティ64が形成される。換言すれば、被覆体14(カバー10)の意匠面17を形成するキャビティ面部分が、可動型側キャビティ形成凹所60の底面にて形成されると共に、被覆体14の意匠面17とは反対側の面とそれらの面を除く被覆体14の側面を形成するキャビティ面部分が、固定型18の上面の一部と可動型側キャビティ形成凹所60の側面とにて形成されて、それらのキャビティ面を内面とする二次成形キャビティ64が形成される。
【0037】
また、ランナ形成凹所62も、固定型18の上面の一部にて閉塞せしめられて、第二可動型48と固定型18との間に、第四スプルー58と連通する一方、可動型側キャビティ形成凹所60の側面において開口して、二次成形キャビティ64に連通するランナ66が形成される。
【0038】
かくして、第二可動型48と固定型18との型合せを行う本工程において、枠体12が内部に収容された二次成形キャビティ64が形成されると同時に、そのような二次成形キャビティ64に連通する第二のゲート68が、被覆体14の意匠面17とは異なる側面を形成するキャビティ面部分において開口した状態で、ランナ66の二次成形キャビティ64への開口部により、サイドゲートの形態をもって、形成されることとなる。
【0039】
次に、図10に示されるように、被覆体14を与える、無色透明のポリプロピレン等の第二の樹脂材料70が、溶融状態下で、図示しない射出成形機のノズルから射出されて、第三スプルー56、第四スプルー58、ランナ66、及び第二のゲート68を通じて、二次成形キャビティ64内に充填される。これによって、二次成形体たる被覆体14を形成するための二次成形が実施される。
【0040】
なお、本工程では、第二の樹脂材料70として、枠体12を与える第一の樹脂材料44よりも、同一温度と同一圧力の条件下において、溶融状態での流動性が高いもの、つまり、例えば、メルトフローインデックスの値が、第一の樹脂材料44よりも大きな値とされたものが、用いられる。
【0041】
そのため、溶融状態とされた第二の樹脂材料70が、二次成形キャビティ64内を流動する際に、二次成形キャビティ64内に収容されて、二次成形キャビティ64のキャビティ面の一部を構成する枠体12の接合面16に対して、第二の樹脂材料70から作用される流動圧が有利に小さく為され、それにより、そのような流動圧に応じて、枠体12の接合面16で生ずるずり応力が、効果的に低く抑えられ得るようになる。その結果、被覆体14を形成する二次成形時に、枠体12を構成する第一の樹脂材料44の一部が第二の樹脂材料70中に溶け込んで、被覆体14における枠体12の接合面16との接合部位等に、滲み部分が生ずるようなことが、可及的に回避され得ることとなる。
【0042】
また、本工程では、第一の樹脂材料44よりも流動性の高い第二の樹脂材料70が、二次成形キャビティ64内で、枠体12の接合面16上を流動せしめられる際に、かかる接合面16に残存する小さなバリ状の非製品部分46と接触せしめられる。このとき、第二の樹脂材料70の非製品部分46との接触により生ずる剪断発熱によって、非製品部分46の先端面を白色化させる恐れのある凹凸部分が溶融して、かかる先端面が可及的に平滑化される。その結果、非製品部分46の先端面が、白色化された状態となることが、有利に解消され得る。
【0043】
引き続いて、図11に示されるように、二次成形キャビティ64内で、そこに収容保持される枠体12が完全に冷却固化せしめられると共に、射出充填された第二の樹脂材料70が冷却固化せしめられることによって、無色透明な被覆体14が形成されると同時に、この被覆体14が、全体が光不透過の黒色とされた枠体12の接合面16に接合され、以て、それら枠体12と被覆体14とが一体化されてなる一体成形品72が成形される。そして、第二可動型48と固定型18とが型開きされて、成形された一体成形品72が離型せしめられる。なお、ここで成形される一体成形品72においては、枠体12の接合面16に存在する小さなバリ状の非製品部分46が、被覆体14の枠体12との接合部分の内部に埋入せしめられた状態となるものの、第三及び第四スプルー56,58内やランナ66内で固化せしめられた大きな塊状の非製品部分74が、被覆体14の意匠面17とは異なる側面部分に一体化された状態で、存在せしめられる。
【0044】
そのため、一体成形品72が離型せしめられた後、かかる一体成形品72に対して、被覆体14の側面部分に一体化された大きな塊状の非製品部分74を切除するゲートカット作業が、公知の手法に従って実施される。そうして、図1及び図2に示される如き目的とするカバー10が、得られることとなるのである。
【0045】
このように、本実施形態においては、二色射出成形によって成形された枠体12と被覆体14との一体成形品72に対して、枠体12に一体化される非製品部分46を切除するゲートカット作業を何等行うことなく、単に、被覆体14に一体化する非製品部分74を切除するゲートカット作業のみを行うだけで、目的とするカバー10が得られるようになる。それ故、二色射出成形後の仕上げ作業が有利に簡略化されて、かかる仕上げ作業に要されるコストも低減せしめられ、以て、カバー10の製作性の向上と製作コストの削減とが、効果的に図られ得るのである。
【0046】
また、本実施形態では、被覆体14の意匠面17とは異なる側面部分に、非製品部分74が存在せしめられるようになるため、そのような非製品部分74を切除するゲートカット作業によって不可避的に残存するゲート跡が、被覆体14の意匠面17とは異なる側面部分に形成される。そのため、被覆体14に形成されるゲート跡が、カバー10の意匠面に露呈せしめられることが有利に回避され、以て、カバー10の意匠性が、被覆体14のゲート跡にて損なわれることが、効果的に防止され得る。
【0047】
さらに、本実施形態においては、枠体12の接合面16に、小さなバリ状の非製品部分46が存在せしめられて、この非製品部分46が、被覆体14の枠体12との接合部分の内部に埋入せしめられた状態とされるものの、カバー10が、被覆体14の意匠面17側から観察された際に、入射角が被覆体14の臨界角を超える大きさである場合には、光が全反射されて、枠体12の接合面16に存在する非製品部分46が、透明な被覆体14を通じて視認されることがない。また、入射角が被覆体14の臨界角以下の大きさであっても、意匠面17側からの光が被覆体14を透過するものの、枠体12が光不透過の黒色とされているため、枠体12の背後からの光が枠体12を透過して、被覆体14の意匠面側に漏れ出すことがなく、それ故、枠体12の接合面16に存在する非製品部分46を、透明な被覆体14を通じて視認することが、極めて困難となっている。そして、それによって、カバー10の意匠性が、枠体12の接合面16に存在する非製品部分46にて損なわれることも、効果的に防止され得る。
【0048】
しかも、本実施形態においては、被覆体14を形成する二次成形時に、枠体12の接合面16に存在する非製品部分46の先端面の凹凸部分が消失せしめられることで、かかる先端面の白色化の懸念が解消されるだけでなく、被覆体14を与える第二の樹脂材料70中への枠体12を与える第一の樹脂材料44の溶込みに起因した滲み部分が、被覆体14の枠体12との接合部分の内部に生ずることも、有利に回避され得る。それ故、枠体12と被覆体14との接合部分の内部に白色部分や滲み部分が存在せしめられることによって、カバー10の意匠性が低下するようなことも、極めて効果的に防止され得る。
【0049】
従って、かくの如き本実施形態によれば、黒色の枠体12に対して、無色透明な被覆体14が、その意匠面17とは反対側の面において一体的に接合されてなるカバー10が、所望の意匠性を有する良好な外観と、優れた製作性ををもって、経済的に有利に製造され得ることとなるのである。
【0050】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0051】
例えば、一次成形体としての枠体12を形成する第一の樹脂材料44や、二次成形体としての被覆体14を形成する第二の樹脂材料70は、それぞれの具体的な種類が、例示されたものに、何等限定されるものではなく、第一の樹脂材料44には、光不透過の有色を呈する樹脂材料が、また、第二の樹脂材料70には、第一の樹脂材料44よりも、同一の温度と同一の圧力の条件下で、溶融状態での流動性が高い無色透明な樹脂材料が、公知の樹脂材料の中から、それぞれ適宜に選択されて、使用されることとなる。
【0052】
また、枠体12を与える一次成形キャビティ42及びそれに連通する第一のゲートとしてのピンゲート38を形成する固定型18と第一可動型19のそれぞれの構造や、被覆体14を与える二次成形キャビティ64及びそれに連通する第二のゲート68を形成する固定型18と第二可動型48のそれぞれの構造も、例示のものに、特に限定されるものではない。
【0053】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車のインストルメントパネルに取り付けられる液晶表示部のカバーの製造方法に対して適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、有色の一次成形体に対して、無色透明な二次成形体が、その意匠面とは反対側の面において一体的に接合されてなる二色成形品の製造方法の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0054】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明手法に従って製造された二色成形品の一例を示す正面説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】図1に示された二色成形品を製造するに際して、一次成形体の成形に用いられる射出成形用金型の一例を示す縦断面説明図である。
【図4】図1に示された二色成形品を製造する際の一工程例を示す説明図であって、図3に示される射出成形用金型の内部に、二色成形品の一次成形体を与える一次成形キャビティを形成した状態を示している。
【図5】図4に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、一次成形キャビティ内に、第一の樹脂材料を射出充填した状態を示している。
【図6】図5に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、一次成形体を成形する射出成形用金型を型開きした状態を示している。
【図7】図6における VII部拡大説明図である。
【図8】図6に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、二次成形体を成形する射出成形用金型を型開きして、配置した状態を示している。
【図9】図8に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、二色成形品の二次成形体を与える二次成形キャビティを、その内部に一次成形体を収容配置せしめて形成した状態を示している。
【図10】図9に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、二次成形キャビティ内に、第二の樹脂材料を射出充填した状態を示している。
【図11】図10に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、二次成形体を成形する射出成形用金型を型開きして、一次成形体と二次成形体との一体成形品を離型せしめた状態を示している。
【符号の説明】
【0056】
10 カバー 12 枠体
14 被覆体 16 接合面
17 意匠面 18 固定型
19 第一可動型 38 ピンゲート
42 一次成形キャビティ 44 第一の樹脂材料
46,74 非製品部分 48 第二可動型
64 第二成形キャビティ 68 第二のゲート
70 第二の樹脂材料 72 一体成形品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の樹脂材料を用いた一次成形により形成される有色の一次成形体と、第二の樹脂材料を用いた二次成形により形成されて、該一次成形体に対して、意匠面とは反対側の面において一体的に接合される無色透明な二次成形体とからなる二色成形品の製造方法であって、
前記一次成形体を与える一次成形キャビティを形成すると共に、該一次成形キャビティの内面からなるキャビティ面のうちで、該一次成形体の前記二次成形体との接合面を形成するキャビティ面部分において開口して、該一次成形キャビティに連通する第一のゲートを、ピンゲートの形態において形成する工程と、
前記第一の樹脂材料として、光不透過の有色の樹脂材料を用い、かかる第一の樹脂材料を、溶融状態で、前記第一のゲートを通じて、前記一次成形キャビティ内に射出充填して、該一次成形キャビティ内で前記一次成形体を形成する工程と、
前記二次成形体を与える二次成形キャビティを、前記一次成形体が内部に収容された状態で形成すると共に、該二次成形キャビティの内面からなるキャビティ面のうちで、該二次成形体の前記意匠面とは異なる面を形成するキャビティ面部分において開口して、該二次成形キャビティに連通する第二のゲートを形成する工程と、
前記第二の樹脂材料として、前記第一の樹脂材料よりも溶融状態での流動性の高い樹脂材料を用い、かかる第二の樹脂材料を、溶融状態で、前記第二のゲートを通じて、前記二次成形キャビティ内に射出充填して、該二次成形キャビティ内で前記二次成形体を形成すると共に、該二次成形キャビティ内に収容された前記一次成形体に対して、該二次成形体を一体的に接合する工程と、
を含むことを特徴とする二色成形品の製造方法。
【請求項2】
前記一次成形体が、光不透過の有色の枠体であり、且つ前記二次成形体が、該枠体の開口部の全体を覆いつつ、該枠体の開口部の周縁部に一体的に接合される無色透明な被覆体である請求項1に記載の二色成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−6533(P2009−6533A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168515(P2007−168515)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(000157751)丸和電子化学株式会社 (5)
【Fターム(参考)】