説明

二足走歩行機構

【課題】バイタリティのある二足走歩行を実現する。
【解決手段】本機構を、左右一対の脚体3L,3Rを、それぞれの足先が前後方向へ交互に送り出し可能に連結してなる脚体ジョイント部1と、脚体ジョイント部1の上方に設けられるバランサ5と、脚体ジョイント部1とバランサ5との間に介在し、バランサ5を左右何れかに傾倒させ、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせて他方側の傾倒姿勢まで傾倒させるスナップ力を有してなる腰関節ジョイント部4と、バランサ5を起立姿勢を乗り越えさせ、バランサ5の傾倒姿勢を他方側へ切り換える切換手段と、を備え、脚体ジョイント部1を、切換手段でバランサ5の傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、腰関節ジョイント部4の揺動力によって、一方側の脚体を後方向へ送り出すとともに、一方側の脚体に連動して、他方側の脚体を前方向へ送り出すように連結して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、奇抜な発想に基づき、その発想の実現化に成功した二足走歩行機構に関する。
【背景技術】
【0002】
二足走歩行のメカニズムは、ヒューマノイド型ロボットの完成度を高めるための重要且つ不可欠な課題である。
ヒューマノイド型ロボットとしては、特許文献1や特許文献2に開示のように、両手両足を備え、手には腕や肘に、足には膝やくるぶしにそれぞれ関節を持ち、各関節の動作をアクチュエータを駆使することで、蓄電池を背負ったり頭部が可動なボディのバランスを取りながら、円滑動作可能にコントロールするものが知られている。
【0003】
これらのヒューマノイド型ロボットでは、人が歩く動作をティーチングし、ティーチングから得られたデータに基づいて手足の動きが再現されている。
従って、複数のアクチュエータとそれらを個々に制御するための高性能なコントローラは不可欠であるし、複数のアクチュエータ駆動用として大型のバッテリを搭載することになれば、その分アクチュエータのパワーアップも必要になる。
【0004】
又、二足歩行機構単独としては、特許文献3に開示のように、膝関節を省略したタイプも知られている。この二足歩行機構の各脚体は、ボディと足(接地部)とが平行リンクで連結されていて、両リンクをクランク運動させることにより疑似歩行させるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−154078号公報
【特許文献2】特開2002−166062号公報
【特許文献3】特開2003−200366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コントロールから切り離された脚体が自然に動いて二足歩行する動作こそが、ヒューマノイド型ロボットには必須なものと考える。上記従来の二足歩行機構は、脚体の動きを直
接動かすことにより、模範的な二足歩行動作を忠実に再現している。
しかしながらロボットといえば、漫画の主人公とまではいわないまでも、たくましく機敏に動き、強いと言ったイメージがあって、前記のように、脚体を直接動かして二足歩行させる機構を採用したロボットは、たとえボディが後に傾いていても、ボディの姿勢に関係なく二足歩行するので、ボディの姿勢との連携を図っても、バイタリティにあふれた豪快な歩きからはほど遠い感じを受ける。
【0007】
出願人は、ボディを動かし、脚体はボディの姿勢変化に追従させる逆の発想に基づけば、バイタリティのある歩行及び走行が可能になると確信している。また、ボディの姿勢変化を利用して脚体をコントロールすれば、アクチュエータ等の駆動部品やその制御手段を省くことができるだけでなく、義足の代用、歩行や走行が困難な患者や障害者の自立支援アイテムとしての用途も期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係る二足走歩行機構は、メインとなるボディ動作に追従して脚体をサブ的に動作させることにより二足走歩行を可能とする斬新な発想を基に開発された二足走歩行機構であって、その構成は、左右一対の脚体を、それぞれの足先が前後方向へ交互に送り出し可能に連結してなる脚体ジョイント部と、脚体ジョイント部に対して重心位置を位置決めした所定重量の重量体が、左右何れか一方側へ所定角度で傾倒し、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えて他方側の傾倒姿勢まで傾倒するように切り換える揺動手段と、を備え、脚体ジョイント部が、揺動手段によって重量体の傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、一方側の脚体を後方向へ送り出すとともに、一方側の脚体に連動して、他方側の脚体を前方向へ送り出すように連結してなるように構成される。
【0009】
請求項2の発明に係る二足走歩行機構は、脚体ジョイント部が、重量体と同じ側へ傾倒する傾倒体と、傾倒体の左右両側の対称位置から外方へ突設された一対の突起体と、傾倒体から前方へ突設されたベース体と、ベース体の左右両側の対称位置に一対の軸点をそれぞれ規定し、それぞれの軸点を通る前後軸及び左右軸の2軸周りに回動自在に形成された一対の側方軸部と、ベース体の左右両側で前後方向に沿う梁状に形成され、左右の側方軸部にそれぞれ軸着されるとともに、その軸着位置よりも後部が突起体に上側から当接する所定長さの一対の側方梁体と、ベース体の前方で左右方向に沿う梁状に形成され、左右の側方梁体の前端部にそれぞれ設けられるとともに、所定の間隔をおいて隣り合い、それぞれの外側端部に左右の脚体の上端部が取り付けられた一対の前方梁体と、前方梁体の相対する内側同士を所定位置で連結する前方梁体連結手段と、左右の突起体と側方梁体との当接状態をそれぞれ維持するように所定の引付力で両者を引き付ける一対の引付手段と、を有してなり、前方梁体連結手段が、側方軸部の前後軸よりも上側の左右対称位置同士を連結する短尺の第1リンク体と、同前後軸よりも下側の左右対称位置同士を連結する長尺の第2リンク体と、を有してなるように構成される。
【0010】
請求項3の発明に係る二足走歩行機構は、揺動手段が、脚体ジョイント部と重量体との間に介在し、重量体を左右何れか一方側かつ前方側へ傾倒させ、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせて他方側の傾倒姿勢まで傾倒させる揺動力を有してなる腰関節ジョイント部と、重量体を一方側の傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせ、重量体の傾倒姿勢を他方側へ切り換える切換手段と、を備え、腰関節ジョイント部が、切換手段で重量体の傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、腰関節ジョイント部の揺動力によって、脚体ジョイント部の傾倒体を同じ側へ傾倒させるように傾倒体に連結されてなるように構成される。
【0011】
請求項4の発明に係る二足走歩行機構は、腰関節ジョイント部が、板状に形成された4枚の分節体を所定の間隔をおいて積み上げ、隣接する分節体間に、下段の分節体に対して隣接する上段の分節体を所定角度で傾倒させるスナップ力を有する弾性体をそれぞれ配置してなり、下から一段目と二段目の分節体は、一段目に対する二段目の傾倒を左右方向のみに規制する左右方向規制体で連結され、二段目と三段目の分節体は、二段目に対する三段目の傾倒を後方向に偏るように規制する後方向規制体で連結され、三段目と四段目の分節体は、三段目に対する四段目の傾倒を前後方向のみに規制する前後方向規制体で連結され、一段目の分節体を脚体ジョイント部の傾倒体に連結するとともに、四段目の分節体を重量体に連結してなるように構成される。
【0012】
請求項5の発明に係る二足走歩行機構は、切換手段が、重量体に設けたモータによって駆動されるクランク機構と、クランク機構と脚体との相互間に張設したワイヤと、を有してなり、クランク機構によるワイヤの引張操作によって実行されるように構成される。
【0013】
請求項6の発明に係る二足走歩行機構は、揺動手段が、乗者が乗降可能な座面を備えて構成され、乗車が座面に乗った際に、脚体ジョイント部に対して乗者の重心位置を重量体の重心位置として位置決めする乗用手段を備え、乗用手段が、乗者が傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、乗者が備える揺動力によって、脚体ジョイント部の傾倒体を同じ側へ傾倒させるように傾倒体に連結されてなるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜4、6の発明によれば、バイタリティのある二足歩行及び二足走行を実現できる。また二足走歩行のためのアクチュエータ等、及びそれらの制御手段を省くことができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、クランク機構と脚体との相互間に張設したワイヤをクランク機構で引張操作することによって、重量体の傾倒動作を実行するので、クランク機構を1基のモータで駆動することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る二足走歩行機構の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る二足走歩行機構の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)はA−A線断面図である。本二足走歩行機構Aは、左右一対の脚体3L,3Rを、それぞれの足先が前後方向へ交互に送り出し可能に連結してなる脚体ジョイント部1と、脚体ジョイント部1の上方に重心位置を位置決めした所定重量の重量体としてのバランサ5が、左右何れか一方側かつ前方側へ所定角度で傾倒し、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えて他方側の傾倒姿勢まで傾倒するように切り換える揺動手段と、を備えて構成されている。
【0017】
揺動手段は、脚体ジョイント部1とバランサ5との間に介在し、バランサ5を左右何れか一方側かつ前方側へ傾倒させ、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせて他方側の傾倒姿勢まで傾倒させる揺動力を有してなる腰関節ジョイント部4と、バランサ5を一方側の傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせ、バランサ5の傾倒姿勢を他方側へ切り換える切換手段と、を備えて構成されている。
【0018】
図1において、脚体ジョイント部1は人体の骨盤部に相当し、左右両側には、それぞれ左右一対の脚体3L,3Rの上端部が取り付けられている。それらの脚体3L,3Rの下端部には、左右の足13L,13Rが、本機構A全体の安定性を確保可能とする所定の長さの棒状に形成され前後方向に沿って突設されている。脚体ジョイント部1は、脚体3L,3Rを、それぞれの足先が前後方向へ交互に送り出し可能に連結して構成されている。
【0019】
図2に示すように、腰関節ジョイント部4は、下から一段目〜四段目のそれぞれが四角板状に形成された第1〜第4分節体4a〜4dと、第1,第2分節体4a,4b間を連結するように設けられた左右2本のコイルバネ16L,16Rと、第2,第3分節体4b,4c間を連結するコイルバネ17と、第3,第4分節体4c,4d間を連結するコイルバネ18と、を備えて構成されている。第1〜第4分節体4a〜4dは、それぞれの4辺を前後左右に揃え、所定間隔をおいて積み上げられている。コイルバネ16L,16R,17,18は、第2〜第4分節体4b〜4dを所定角度で傾倒させるスナップ力を有するように形成されている。
【0020】
第1,第2分節体4a,4bは、前辺及び後辺の各中央部同士が前辺及び後辺左右規制体41で連結され、第1分節体4aに対する第2分節体4bの傾きが左右方向のみに規制されている。第2,第3分節体4b,4cは、第2分節体4bの左右辺の後端部と第3分節体4cの左右辺の前端部とが左辺及び右辺後方規制体42で連結され、第2分節体4bに対する第3分節体4cの傾きが後方へ偏るように規制されている。第3,第4分節体4c,4dは、左辺及び右辺の各後端部同士が左辺及び右辺前方規制体43で連結され、第3分節体4cに対する第4分節体4dの傾きが前方向のみに規制されている。第1分節体4aはその下面で脚体ジョイント部1と固定され、第4分節体4dはその上面でバランサ5を固定している。この腰関節ジョイント部4は、バランサ5を脚体ジョイント部1に対して左右いずれか一方側に所定角度で傾倒させ、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせて他方側の傾倒姿勢まで傾倒させる揺動力を有するように構成されている。バランサ5の所定重量は、腰関節ジョイント部4の揺動力に対応して所定角度で傾倒するように設定されている。さらに、バランサ5は、切換手段によって、一方側の傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせ、バランサ5の傾倒姿勢を他方側へ切り換えるように構成されている。
【0021】
脚体ジョイント部1は、水平に配置された第1分節体4aに対して、その下面後方の中央位置から、長方形板状の板面を正面に向けながら長手中心線を下方へ沿うように垂直に突設され、腰関節ジョイント部4を介してバランサ5と同じ側へ傾倒する傾倒体21と、傾倒体21の左右両側の対称位置から外方へ突設された一対の突起体23と、長方形板状の板面を第1分節体4aの下面と所定間隔を置いて平行とし、一対の突起体23の突設位置よりも上側であって、長手中心線を傾倒体21の前面側から前方へ沿うように垂直に突設してなるベース体25と、傾倒体21の前面から所定距離をおいて、ベース体25の左右両側の対称位置にそれぞれ規定された軸点を通る前後軸M1及び左右軸M2の2軸周りに回動自在に形成された一対の側方軸部27と、ベース体25の左右両側で前後方向に沿う梁状に形成され、左右の側方軸部27にそれぞれ軸着されて前後軸M1及び左右軸M2周りに回動し、側方軸部27との軸着位置よりも後部が突起体23に上側から当接する長尺の一対の側方梁体29と、ベース体25の前辺から所定距離を隔てた前方において長方形板の梁状に形成され、その板面を左右の側方梁体29の各前端部に対して梁軸が垂直に沿うように設けるとともに、相対する内側の短手辺の間に所定の間隔を設けてなる左右の一対の前方梁体31と、左右の前方梁体31の相対する内側の短手辺側同士を所定位置で連結する前方梁体連結手段33と、傾倒体21の左右下端と一対の側方梁体27の対応する後端部とを所定の伸縮力で引き付けるように張設された一対の引付手段としてのバネ39と、を備えて構成されている。
【0022】
側方軸部27は、ベース体25に対して左右両側の側方梁体29を、それぞれが独立して前後軸M1周りに全体を上下動自在に、かつ左右軸M2周りに前後端部を上下動自在とするようにボールジョイントにより構成されている。左右の側方梁体29には、突起体23と当接する位置を側方軸部27から外側の所定位置に配置するために、所定太さの補助梁体30がそれぞれ取り付けられている。
【0023】
左右の前方梁体31には、それぞれの外側の短手辺に、左右の脚体3L,3Rの上端部が取り付けられている。
【0024】
前方梁体連結手段33は、左右一対の前方梁体31に対して、両者の間に設けた所定の間隔に掛け渡すように、側方軸部27の前後軸M1よりも上側の左右対称位置に一対の軸点UL,URを規定し、各軸点UL,URに配置した球状軸部同士を連結する短尺の第1リンク体35と、同前後軸M1よりも下側の左右対称位置に一対の軸点DL,DRを規定し、各軸点DL,DRに配置した球状軸部同士を連結する長尺の第2リンク体36と、から構成されている。第1リンク体の軸点UL,UR及び第2リンク体の軸点DL,DRは、上辺よりも下辺が長く、上辺と下辺とが平行かつ左右対称の台形となる位置に配置されている。
【0025】
バランサ5には、ギヤードモータ7が搭載されている。そのモータ7は、左右のクランク機構8L,8Rを所定の回転数で駆動するように構成されている。左右のクランク機構8L,8Rは、左右の前方梁体31の上部にワイヤ9L,9Rで接続されている。
【0026】
図3は上記二足走歩行機構Aによる一連の歩行姿勢を示し、(a)は左側傾倒姿勢、(b)は起立姿勢、(c)は右側傾倒姿勢の各正面図であり、図4は図3(c)の右側傾倒姿勢を示し、(a)は要部左側面図、(b)は正面図、(c)は要部右側面図、(d)〜(f)は軸点の移動説明図である。以下、図3,4により歩行動作を説明する。
【0027】
本二足走歩行機構Aは、歩行動作中、バランサ5が左側に傾倒しながら、右の脚体3Rによる片足立ち状態になる(図3(a))。この傾倒姿勢は、モータ7によってクランク機構8L,8Rが回転駆動され、左の前方梁体31に接続された脚体3L側のワイヤ9Lを介して、バランサ5が左側の所定角度まで傾くように引っ張られることで形成される。この時、バランサ5には、所定角度で傾いた腰関節ジョイント部4によって、所定の揺動力が貯えられる。この傾倒姿勢におけるバランサ5の傾き方向は、第1〜第4分節体4a〜4dの相互が平行となる起立姿勢に対して、第1〜第4分節体4a〜4dのそれぞれの規制方向を合成した方向となる。この左側傾倒姿勢において、右の前方梁体31に接続された脚体3R側のワイヤ9Rはゆるめられている。
【0028】
クランク機構8L,8Rのさらなる回転によって、バランサ5を引っ張っていたワイヤ9Lがゆるめられ、バランサ5に貯えられていた揺動力が開放される。バランサ5は、この揺動力によって起立姿勢(図3(b))を乗り越える。乗り越えると同時に、クランク機構8Rによって、ワイヤ9Rを介してバランサ5を右側に前方から引っ張る。そして、左側の傾倒姿勢から右側の所定角度の傾倒姿勢へ切り換えられ、再び揺動力が貯えられる(図3(c))。
【0029】
この切換動作によって、右側の傾倒姿勢になる際、腰関節ジョイント部4を介して脚体ジョイント部1の傾倒体21も同じ右側へ傾き、また傾倒体21の左側に突設された突起体23は上昇する。バランサ5は、側方梁体29の後部に対して下側に当接するように配置された突起体23を介して、左の側方梁体29後部の当接位置に取り付けられた補助梁体30を左の側方軸部27を通る左右軸M2周りに持ち上げる。後部が持ち上げられた側方梁体29は、その前端部の左の前方梁体31を下降させながら、取り付けられた左の脚体3Lを後方へ送り出す(図4(c))。
【0030】
左の脚体3Lの後方への送り出しに伴い、左の前方梁体31に与えられた下降力は、左の前方梁体31において規定された第1リンク体35の左軸点ULを前方へ、また同様に規定された第2リンク体36の左軸点DLを後方へ移動させるように、両軸点UL,DLを結んでなる左側辺部に対して左側面から見て反時計回りの回転力を加える(図4(f))。同時に、左側辺部の反時計回りの回転力は、第1及び第2リンク体35,36で連結された右側の前方梁体31に伝えられる。また左の脚体3Lは、左右の前方梁体31が第1及び第2リンク体35,36で連結されているため、左足13Lの接地点を支点として左の側方軸部27を通る前後軸M1周りに左へ傾く(図3(c)、図4(b))。
【0031】
第1及び第2リンク体35,36は、台形の上辺両端に相当する第1リンク体35の両端の軸点UL,URの規定位置が、下辺両端に相当する第2リンク体の両端の軸点位置よりも短くなるように配置されている(図4(e))。従って、左の前方梁体31の下降に伴い、第2リンク体36の左軸点DLが右軸点DRを右の側方軸部27を通る前後軸M1周りに外側へ押すとともに、左側辺部が反時計回りに回転することによって、右の前方梁体31に規定された第1リンク体35の右軸点URを後方へ、また同様に規定された第2リンク体36の右軸点DRを前方へ移動させるように、両軸点UR,DRを結んでなる右側辺部を右側面から見て反時計回りに連動して回転させる(図4(d))。よって、左の前方梁体31の反時計回りの回転力は、第1及び第2リンク体35,36の左右側辺部のねじれ動作によって、右の前方梁体31の反時計回りの回転力に変換して伝えられる。
【0032】
反時計回りの回転力と、前後軸M1周りに脚体3Rを外側へ押し出す力を受けた右の前方梁体31は、右の側方梁体29を介して、右の側方軸部27を通る左右軸M2周りに持ち上げられ、同時に取り付けられた右の脚体3Rを外側前方へ送り出す(図4(a))。
【0033】
また、バランサ5の傾倒動作に伴い傾倒体21が右側へ傾くことによって、傾倒体21の右側に突設された突起体23は下降する。傾倒体21の右下端部と右の側方梁体29の後端部を接続するバネ39は、突起体23と側方梁体29との当接状態を維持するように所定の引き付け力で両者を引き付ける引付手段として、側方梁体29の後端部を、下降する突起体23から離れないように引き付け、左右軸M2周りの回転力を前方梁体31に対して上昇するように加え、右の脚体3Rによる前方への送り出しを助勢する。
【0034】
このように、本機構Aは、バランサ5の右側の傾倒動作を腰関節ジョイント部4へ伝え、後方へ送り出される左の脚体3Lを支持脚としながら、遊脚となる右の脚体3Rを前方へ送り出し、一歩を踏み出す。
【0035】
次に、右の前方梁体31に接続されたワイヤ9Rをゆるめて、一歩踏み出した右側の傾倒姿勢から、バランサ5に貯えられた揺動力を開放し、起立姿勢を乗り越えさせると同時に、ワイヤ9Lを介してバランサ5を左側に前方から引っ張る(図3(a))。この切換動作によるバランサ5の左側の傾倒動作を腰関節ジョイント部4へ伝え、右側の傾倒動作と同様に、後方へ送り出される右の脚体3Rを支持脚としながら、遊脚となる左の脚体3Lを前方へ送り出し、次の一歩を踏み出す。
【0036】
上記構成の走歩行機構Aによれば、上記動作を左右交互に繰り返すことで、バイタリティのある二足歩行を実現できる。また二足歩行のためのアクチュエータ等、及びそれらの制御手段を省くことができる。
【0037】
また、切換手段を、バランサ5に設けたモータ7によって駆動されるクランク機構8L,8Rと脚体3L,3Rとの相互間に張設したワイヤ9L,9Rで構成したので、クランク機構8L,8Rで引張操作することによって、バランサ5の傾倒動作を左右交互に実行でき、クランク機構8L,8Rを1基のモータで駆動することができる。
【0038】
図6は本発明に係る二足走歩行機構の他の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。本二足走歩行機構Bは、機構Aと同様に構成された脚体ジョイント部101と、乗者50が乗降可能に形成され、跨った際に、脚体ジョイント部101の上方に乗者50の重心位置を位置決めするサドル51、サドル51に跨った乗者50の上半身を所定角度で傾倒支持するハンドル52、および、サドル51に跨った乗者50の両脚を支持する左右一対の足掛け53を備えて構成された揺動手段と、を備えて構成されている。
【0039】
脚体ジョイント部101は、傾倒体121が垂直方向よりも前方側へ、ベース体125が水平方向よりも下方側へ、それぞれ所定角度で傾けた状態で配置されている。また側方梁体129も、ベース体125に沿って下方側へ傾けた状態で配置されている。左右の側方軸部127は、機構Aの間隔Laよりも、機構Bの間隔Lbが多少広くなる位置に設けられている。また側方梁体129の後端部は、左右の側方梁体129同士の間隔を所定距離で維持する後端部連結リンク体131によって連結されている。また側方梁体129の後端部と傾倒体121とは、引付手段としてのバネ137によって当接状態が維持されている。
【0040】
サドル51は、脚体ジョイント部101の傾倒体121から後方へ突設された後方梁体61に、緩衝バネを介して設けられたサドル設置体62に取り付けられている。ハンドル52は、脚体ジョイント部101のベース体125から上方やや前方へ傾けて突設されたハンドルステムと、ハンドルステムの上端に設けられた水平ハンドルバーと、その両端からハンドルステムとほぼ同じ方向へ突設された左右一対の握り部と、を備えて構成されている。足掛け53は、サドル設置体62に取り付けられている。
【0041】
また、左右の脚体3L,3Rと足部13L,13Rとの間には、足部13L,13Rのいずれかが接地した際に、脚体3L,3Rに対して足部13L,13Rを内旋させる内旋手段が設けられている。内旋手段は、脚体3L,3Rと足部13L,13Rを内側位置で軸着する軸着部66と、脚体3L,3Rと足部13L,13Rの内側同士を連結する内側リンク体67と、脚体3L,3Rと足部13L,13Rの外側同士を連結する外側リンク体68と、接地時に内旋状態となる足部13L,13Rを、非接地時に内旋状態から正対状態へ復帰させる復帰バネ69と、を備えて構成されている。内側および外側リンク体67,68は、略同一長さに形成され、脚体3L,3Rにおける両者の連結位置が、外側リンク体68よりも内側リンク体67の方が高くなるように構成されている。その他の構成について、機構Aと同様の構成の説明は省略する。
【0042】
本機構Bの歩行動作は、サドル51に跨った乗者が上半身を揺動させ、重心位置を左右に移動させることによって行われる。サドル51を介して傾倒体121を上半身と同じ一方側に傾けることで、他方側の突起体123を持ち上げることによって側方梁体129の後部を持ち上げ、一方側の脚体を前方へ送り出す。これ以降の歩行動作は機構Aと同様であり省略する。
【0043】
上記構成の走歩行機構Bによれば、乗者による揺動によって、バイタリティーのある歩行が可能となる。また内旋手段を設けたので、スムーズが歩行が可能となる。
【0044】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)本二足走歩行機構は、バランサの所定重量と腰関節ジョイント部の揺動力とを調整して、歩行及び走行が可能である。
(2)第1〜第4分節体の間は、コイルバネに限らず、折り曲げバネを利用して連結しても良い。
(3)バランサ5は、図5の変更例の説明図に示すように、座席12を装備して構成しても良い。本機構では、バランサ5が左右交互に傾倒することで発生する慣性力を利用し、機構全体でバランスを取りながら二足歩行を可能としているので、モータを搭載していなくても、例えば座者が座席10に跨って乗り、体重を左右交互に加えてバランサ5を傾倒動作すれば、機構全体を揺らしながら二足走歩行動作をさせることが可能である。したがって、義足の代用、歩行や走行が困難な患者や障害者の自立支援アイテムとしての用途も期待できる。尚、図5の二足走歩行機構は、クランク機構に替えて、駆動手段を座者によって実行させるためのハンドル11を設けて構成されている。また脚体3L,3Rには、座者用のステップ12L,12Rが設けられている。
(4)本二足走歩行機構では、バランサによる前方側への傾倒姿勢を強めるように調整して、平地だけでなく、坂道を上ることもできる。
(5)側方梁体は、梁状であれば良く、円柱形状や角柱形状であっても良い。
(6)前方梁体は、側方梁体との設置点や第1及び第2リンク体の軸点を所定の位置に配置できれば良く、板状の他、各点を結ぶフレームのみで構成しても良い。
(7)切換手段は、クランク機構とワイヤとの構成からなるものに限らず、左右の脚体の送り出しのタイミングを検知し、検知結果に基づき、バランサを一方側から他方側の傾倒姿勢へ切り換えるものであれば良い。
(8)側方梁体は、補助梁体を取り除いて構成することもできる。この場合には、突起体と側方梁体との当接位置を、前後軸との間に所定距離を確保して配置するために、側方軸部を補助梁体の梁幅だけ中心側へづらすことが望ましい。側方梁体と突起体との当接位置を、前後軸からなるべく遠ざけることで、傾倒体の傾きに伴う突起体の上昇距離をより長くでき、小さい揺動力で十分な前方への送り出し量を確保できる。よって、対応するバランサの重量を減らし、全体を軽量化できる。また、側方軸部の軸点位置をベース体の中心線に近づけることができ、走歩行機構の運動性を向上できる。
(9)ベース体は、側方軸部の軸点を所定位置に配置できれば良く、板状の他、所定位置の部材を結ぶフレームのみで構成しても良い。
(10)切換手段は、モータに限らず、エンジンや油圧シリンダ等の他の動力を用いて構成しても良い。
(11)引付手段は、突起体と側方梁体とを引き付けるものであれば良く、側方梁体と傾倒体とを引き付けるバネに限らず、側方梁体の側方軸部にバネ等の引き付け部材を内装して構成したり、磁力により両者を引き付けるように構成しても良い。
(12)切換手段は、重心位置を左右側に切り換え可能な揺動力を発揮できるものであれば良く、モータの他、油圧や空気圧シリンダを用いて構成しても良い。
(13)重量体は、揺動力を傾倒体に適切に伝達できれば、脚体ジョイント部の上方に限らず、脚体ジョイント部の下方、前後方、左右位置に設けて構成しても良い。
(14)重量体は、1つに限らず、分割して設けても良い。
(15)サドルは、乗者の揺動力を傾倒体に適切に伝達できれば、ハンドル、足掛けを省いて構成することも可能である。例えば座板等の乗用スペースに手すりを設けるのみで構成しても良い。
(16)機構A,Bにおいて、側方軸部の間隔La,Lbは、広く取ることが望ましい。その場合、同じ傾き角度であれば広い方が変異量を増加でき、揺動力を傾倒体に効率よく伝達できる。
(17)脚体は、側方梁体に直接取り付けても構成できる。この場合には、前方梁体は省くことができ、前方梁体連結手段は、左右の側方梁体同士を直接連結するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る二足走歩行機構の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)はA−A線断面図である。
【図2】腰関節ジョイント部の説明図である。
【図3】図1の二足走歩行機構による一連の歩行姿勢を示し、(a)は左側傾倒姿勢、(b)は起立姿勢、(c)は右側傾倒姿勢の各正面図である。
【図4】図3(c)の右側傾倒姿勢を示し、(a)は要部左側面図、(b)は正面図、(c)は要部右側面図、(d)〜(f)は軸点の移動説明図である。
【図5】変更例の説明図である。
【図6】本発明に係る二足走歩行機構の他の実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1、101・・脚体ジョイント部、3L,3R・・脚体、4・・腰関節ジョイント部、4a〜4d・・第1〜第4分節体、5・・バランサ(重量体)、7・・モータ、8L,8R・・クランク機構、9L,9R・・ワイヤ、10・・座席、11・・ハンドル、12L,12R・・ステップ、13L,13R・・足部、16L,16R,17,18・・コイルバネ、21・・傾倒体、23・・突起体、25・・ベース体、27・・側方軸部、29・・側方梁体、30・・補助梁体、31・・前方梁体、33・・前方梁体連結手段、35・・第1リンク体、36・・第2リンク体、39・・バネ(引付手段)、41・・左右規制体、42・・後方規制体、43・・前方規制体、50・・乗者、51・・サドル、52・・ハンドル、53・・足掛け、A,B・・二足走歩行機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の脚体を、それぞれの足先が前後方向へ交互に送り出し可能に連結してなる脚体ジョイント部と、
脚体ジョイント部に対して重心位置を位置決めした所定重量の重量体が、左右何れか一方側へ所定角度で傾倒し、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えて他方側の傾倒姿勢まで傾倒するように切り換える揺動手段と、を備え、
脚体ジョイント部は、
揺動手段によって重量体の傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、一方側の脚体を後方向へ送り出すとともに、一方側の脚体に連動して、他方側の脚体を前方向へ送り出すように連結してなる、
ことを特徴とする二足走歩行機構。
【請求項2】
脚体ジョイント部は、
重量体と同じ側へ傾倒する傾倒体と、
傾倒体の左右両側の対称位置から外方へ突設された一対の突起体と、
傾倒体から前方へ突設されたベース体と、
ベース体の左右両側の対称位置に一対の軸点をそれぞれ規定し、それぞれの軸点を通る前後軸及び左右軸の2軸周りに回動自在に形成された一対の側方軸部と、
ベース体の左右両側で前後方向に沿う梁状に形成され、左右の側方軸部にそれぞれ軸着されるとともに、その軸着位置よりも後部が突起体に上側から当接する所定長さの一対の側方梁体と、
ベース体の前方で左右方向に沿う梁状に形成され、左右の側方梁体の前端部にそれぞれ設けられるとともに、所定の間隔をおいて隣り合い、それぞれの外側端部に左右の脚体の上端部が取り付けられた一対の前方梁体と、
前方梁体の相対する内側同士を所定位置で連結する前方梁体連結手段と、
左右の突起体と側方梁体との当接状態をそれぞれ維持するように所定の引付力で両者を引き付ける一対の引付手段と、を有してなり、
前方梁体連結手段は、
側方軸部の前後軸よりも上側の左右対称位置同士を連結する短尺の第1リンク体と、
同前後軸よりも下側の左右対称位置同士を連結する長尺の第2リンク体と、を有してなる、
請求項1に記載の二足走歩行機構。
【請求項3】
揺動手段は、
脚体ジョイント部と重量体との間に介在し、重量体を左右何れか一方側かつ前方側へ傾倒させ、その傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせて他方側の傾倒姿勢まで傾倒させる揺動力を有してなる腰関節ジョイント部と、
重量体を一方側の傾倒姿勢から起立姿勢を乗り越えさせ、重量体の傾倒姿勢を他方側へ切り換える切換手段と、を備え、
腰関節ジョイント部は、
切換手段で重量体の傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、腰関節ジョイント部の揺動力によって、脚体ジョイント部の傾倒体を同じ側へ傾倒させるように傾倒体に連結されてなる、
請求項1または2に記載の二足走歩行機構。
【請求項4】
腰関節ジョイント部は、
板状に形成された4枚の分節体を所定の間隔をおいて積み上げ、隣接する分節体間に、下段の分節体に対して隣接する上段の分節体を所定角度で傾倒させるスナップ力を有する弾性体をそれぞれ配置してなり、
下から一段目と二段目の分節体は、一段目に対する二段目の傾倒を左右方向のみに規制する左右方向規制体で連結され、
二段目と三段目の分節体は、二段目に対する三段目の傾倒を後方向に偏るように規制する後方向規制体で連結され、
三段目と四段目の分節体は、三段目に対する四段目の傾倒を前後方向のみに規制する前後方向規制体で連結され、
一段目の分節体を脚体ジョイント部の傾倒体に連結するとともに、四段目の分節体を重量体に連結してなる、
請求項3に記載の二足走歩行機構。
【請求項5】
切換手段は、
重量体に設けたモータによって駆動されるクランク機構と、
クランク機構と脚体との相互間に張設したワイヤと、を有してなり、
クランク機構によるワイヤの引張操作によって実行される、
請求項3または4に記載の二足走歩行機構。
【請求項6】
揺動手段は、
乗者が乗降可能な座面を備えて構成され、乗者が座面に乗った際に、脚体ジョイント部に対して乗者の重心位置を重量体の重心位置として位置決めする乗用手段を備え、
乗用手段は、
乗者が傾倒姿勢を他方側へ切り換えた際、乗者が備える揺動力によって、脚体ジョイント部の傾倒体を同じ側へ傾倒させるように傾倒体に連結されてなる、
請求項1または2に記載の二足走歩行機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−114361(P2008−114361A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75336(P2007−75336)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(506346163)有限会社 生体機構研究所 (1)
【Fターム(参考)】