説明

二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】 1枚当りの容量が1GBを超えるような高密度大容量磁気記録フレキシブルディスクのベースフィルムとして、好適に使用できる二軸配向ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】 直径1.8インチの円形サンプルとして、60℃、湿度50%の雰囲気下で24時間放置したのち、室温、湿度50%の雰囲気下で1時間放置し、円形サンプルを円形サンプルの厚み方向が水平方向になるように配したときのカール値が0.6mm以下である二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムのカールが極めて小さい二軸配向ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは記憶容量が1GB以上のような高密度記録のフレキシブルディスクのベースフィルムとして好適な二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸配向ポリエチレンナフタレートフィルムに代表される二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた物理的、化学的特性の故に、特に磁気記録媒体のベースフィルムとして広く用いられている。特に、パーソナルコンピュータ等の普及とともに記憶装置としてのフレキシブルディスクは、そのドライブ装置とともに広く普及している。これらのフレキシブルディスクは、近年のハードディスクの大容量化や処理される情報量の増大にともない、記憶容量の大容量化、すなわち記録密度の高密度化が進められている。
【0003】
このような要望に応えるために、国際公開第00/21731号パンフレット(特許文献1)では、二軸配向フィルムの両表面の物性を等しくすることで、ベースフィルムのカールを抑えることが、また特開平10−198944号公報(特許文献2)では、内部応力を緩和することで磁気ディスクのカールを抑えることが提案されている。しかしながら、近年の高密度化の要求は一段と厳しくなってきており、このような両表面の物性を等しくした二軸配向フィルムでも、十分に対応できなくなってきていた。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/21731号パンフレット
【特許文献2】特開平10−198944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、1枚当りの容量が1GBを超えるような高密度大容量磁気記録フレキシブルディスクのベースフィルムとして、好適に使用できる二軸配向ポリエステルフィルムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、本発明によれば、直径1.8インチの円形サンプルとして、60℃、湿度50%の雰囲気下で24時間処理後、室温、湿度50%の雰囲気下で1時間放置してから、円形サンプルの厚み方向が水平方向になるように配したときのカール値が0.6mm以下である二軸配向ポリエステルフィルムによって達成される。
【0007】
また、本発明の二軸配向フィルムは、その好ましい態様として、150℃で30分間処理したときの熱収縮率が、フィルム面内の全ての方向で0〜1.2%の範囲にあること、それぞれのフィルム表面の面内方向における屈折率の最大値と最小値の差(屈折率差)を測定したとき、一方の表面(表面A)は屈折率差Aが0.004以下で、他方の表面(表面B)は屈折率差Bが屈折率差Aよりも0.001以上大きくかつ0.02以下であること、厚みが20〜60μmの範囲にあること、平均粒径10〜100nmの有機球状粒子(A)とスルホン酸塩基を分子中に有するTgが90〜120℃の水性ポリエステル樹脂とからなる塗膜層が、フィルムの両表面に塗設されていること、ポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートであること、フレキシブルディスク、特に1枚当たりの記録容量が1GB以上であるフレキシブルディスクのベースフィルムとして用いることの少なくともいずれかを具備する二軸配向ポリエステルフィルムも包含するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、極めてカールが小さいことから、フレキシブルディスクのベースフィルムとして用いたときに、安定的な出力特性が発現され、特に1枚当たりの記録容量が1GB以上であるフレキシブルディスクのベースフィルムとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを説明する前に、カールの測定方法について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明におけるカールを測定するための装置を正面から見た図であり、図2は本発明におけるカールを測定するための装置を、側面から見た図である。図1および図2中の符号1は二軸配向ポリエステルフィルム、符号2は回転軸、符号3はモータ、符号4は円形サンプルの最外周の位置、符号5は軸と円形サンプルの接点から鉛直方向に下ろした位置である。
【0010】
まず、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを、直径1.8インチの円形サンプル1とする。この円形サンプル1を、60℃、湿度50%の雰囲気下で24時間放置したのち、室温、湿度50%の雰囲気下で1時間放置して、ベースフィルムに内在されていたカールを発現させる。そして、カールが発現された円形サンプル1に、図1および図2のとおり、その重心に軸2を通し、該円形サンプル1の厚み方向が水平方向、すなわち円形サンプル1の面方向が鉛直方向になるように配して、重心に通した軸2をゆっくりと回転させ、円形サンプルの最外周の位置4と円形サンプルの軸と接している位置から鉛直に下ろした位置5、すなわち図1の符号4と符号5の厚み方向における変位を読み取る。そして、この測定をひとつの円形サンプルが3回転するまで行い、測定値の中の最も変位の大きなものから3点を抽出し、それらを平均した値をカールとする。
【0011】
そして、このカールが、0.6mm以下のとき、安定した出力特性が得られることを見出したのが、本発明である。このカールが上限を超えると、特に1枚当たりの記憶容量が1GB以上のようなフレキシブルディスクのベースフィルムとして用いたとき、ベースフィルムのカールによって出力特性が不安定化する。好ましいカールの値は、0.4mm以下、さらに0.2mm以下である。カールの下限は特に制限されないが、通常0.1mm程度である。
【0012】
本発明のカール0.6mm以下の二軸配向ポリエステルフィルムは、それぞれのフィルム表面の面内方向における屈折率の最大値と最小値の差(屈折率差)を測定したとき、一方の表面(表面A)は屈折率差Aが0〜0.004の範囲となるようにし、他方の表面(表面B)は屈折率差Bが屈折率差Aよりも0.001以上大きくかつ0.02となるように積極的に物性差を付与することなどで得ることができる。前述の特許文献1では、二軸配向フィルムの両表面の物性を等しくするように教示している。しかし、単に物性差を小さくするだけでは、二軸配向フィルムを製膜する工程において、フィルムのそれぞれの表面に異なる処理が施されるためか、ここまでカールを小さくすることはできなかった。より詳述すれば、ポリエステルを溶融押し出ししてシート状の未延伸フィルムとする工程では、一方の表面は冷却ドラムと接した状態で冷却されるが、他方の表面は空気と接した状態で冷却される。また、巻取り工程では、フィルムの厚みが薄いので極わずかではあるが、一方の表面を内側に、他方の表面を外側に、曲げられた状態でロール状に巻き取られる。このように、二軸配向ポリエステルフィルムのそれぞれの表面にごくわずかではあるが異なる処理が施されており、カールを0.6mm以下という極めて抑制された範囲にしようとすると、それらの極わずかな差が大きく影響するようになるためと考えられる。したがって、このような極めてカールの小さなフィルムを得るには、例えばカールの内側に位置する表面の屈折率差を極めて小さくし、他方カールの外側に位置する表面の屈折率差をそれよりも大きくすること、すなわち配向を大きくすることにより逆側に抗力が働き、結果としてカールを0.6mm以下にすることができる。ちなみに、通常、冷却ドラムと接した側の表面を内側にしたカールが発生しやすい。好ましい屈折率差Aは0.002以下で、好ましい屈折率差Bは0.002〜0.015、さらに0.0025〜0.0100の範囲である。また、屈折率差Bは、屈折率差Aよりも0.002以上大きいことが好ましい。屈折率差Aが上限を超えるか、屈折率差Aと屈折率差Bとの差が近くなると、屈折率差Bが上述の範囲であっても、抗力が足りずにカールが発生してしまい好ましくない。また、屈折率差Bが上限を超えると、逆に効力が強すぎて、屈折率差Aや屈折率差Aと屈折率差Bとの差が上述の範囲内でも、かえってカールが悪くなってしまいやすい。
【0013】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、さらに無荷重下、30分間、150℃で加熱したときの熱収縮率がフィルム面内の全ての方向で0〜1.2%の範囲にあることが好ましい。好ましくは0〜1.0%、更に好ましくは0〜0.8%である。カールは、フィルム製造工程の熱固定時に生じたフィルムの表裏での熱収縮率差による影響が大きく、熱収縮率差を上記範囲にすることで、表裏での熱収縮率差による影響を小さくできるためである。したがって、熱収縮率差は、小さければ小さいほど好ましく、具体的には0〜1.0%の範囲、さらに0〜0.8%の範囲にあることが好ましい。
【0014】
さらに本発明の二軸配向ポリエステルフィルムについて、詳述する。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、芳香族カルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる。このポリエステルは実質的に線状であり、フィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。具体的な芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸などを挙げることができる。また、具体的な脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコールなどの如き炭素数2〜10のポリメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールなどを挙げることができる。これらの中でも、アルキレンテレフタレートおよび/またはアルキレンナフタレンジカルボキシレート(アルキレンナフタレートと云うことがある)を主たる繰り返し構成成分とするポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレート系ポリエステルであって、全ジカルボン酸成分の80モル%以上、更には90モル%以上がテレフタル酸または2,6―ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上、更には90モル%以上がエチレングリコールである単一重合体ないし共重合体が好ましい。特にエチレン―2,6―ナフタレート成分が、全繰返し単位を基準として、95モル%以上のポリエステルは、得られる二軸配向ポリエステルフィルムに加工時の張力や使用時の温度上昇に対する優れた寸法安定性を具備させやすいことから好ましい。
【0015】
ポリエステルが共重合体の場合、全酸成分の20モル%未満、さらには10モル%未満は、例えばテレフタル酸または2,6―ナフタレンジカルボン酸以外の上記ジカルボン酸であることができ、また、例えばアジビン酸、ゼバチン酸などの如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサン―1,4―ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸であることができる。また、全グリコール成分の20用モル%未満、更には10モル%未満はエチレングリコール以外の上記グリコールであることができ、また、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパンなどの如き芳香族ジオール、1,4―ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)などであることもできる。さらにまた、本発明におけるポリエステルには、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω―ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸などのオキシカルボン酸を、ジカルボン酸成分とオキシカルボン酸成分の総量に対して20モル%以下、更にには10モル%以下の量で共重合したものも包含される。この共重合量が20モル%を超えると、物理的、化学的性質が低下し、フレキシブルディスクのベースフィルムとして使用することが難しい。さらに、本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量、例えば、全酸成分に対して2モル%以下の量で、三官能以上のポリカルボン酸成分またはポリヒドロキシ化合物成分、例えばトリメリット酸またはペンタエリスリトールなどを共重合したものも包含される。この共重合量が2モル%を超えると、線状ポリマーとしての特性が損なわれ、フィルムの形成性が低下する。
【0016】
本発明におけるポリエステルはそれ自体公知であり、公知の溶融重合法で製造することができる。そして、得られるポリエステルの重合度は、o―クロロフェノール溶液中、35℃で測定して求めた固有粘度が0.4〜0.9程度、更には0.45〜0.75のものが好ましい。固有粘度が0.4未満では、所望の物性が得られがたく、一方固有粘度が0.9を超えると、成形が困難となりやすい。
【0017】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フレキシブルディスクとした時に高密度記録ができるように、平坦であることが好ましい。かかるフィルムの表面性としてフィルム両面の中心線平均粗さ(Ra)が1〜7nm、好ましくは2〜6nmであることが好ましい。この表面粗さ(Ra)が1nm未満ではフィルム製造時に極端に傷が発生しやすく、一方7nmを超えると、記録出力が低下するため好ましくない。なお、この中心線平均粗さは、易接着層がフィルム表面に積層されている場合は易接着層表面を測定した値を意味する。
【0018】
かかる表面特性を満足させるためには、フィルム中に平均粒径0.01μm以上0.2μm以下の不活性粒子(A)を0.1〜0.5重量%含有させるのが好ましく、さらには該不活性粒子(A)との併用で平均粒径0.25μm以上0.8μm以下の不活性粒子(B)を0.001〜0.1重量%含有させるのが好ましい。かかる粒子としては、内部析出粒子は粒径のコントロールが難しいため、外部添加粒子が好ましい。外部添加粒子としては、例えば炭酸カルシウム、球状シリカ、凝集シリカ、アルミナ、有機粒子(例えば、架橋ジビニルベンゼン粒子、架橋シリコーン粒子など)などを好ましく挙げることができる。これら粒子は単一粒子(非凝集粒子)か凝集粒子からなるが、表面粗さの再現性、粗大な突起を減少させる等の観点から、単一粒子、特に球状シリカ、有機粒子を主な粒子として含有させる場合が好ましい。かかる単一粒子は、更に、球状粒子であることが好ましい。また、粒径の異なる単一粒子を組合せて(例えば、球状シリカと炭酸カルシウムを組合せて、または球状シリカと球状シリカを組合せて)添加してもよく、粒径の異なる単一粒子と凝集粒子を組合せて(例えば、コロイダルシリカ、炭酸カルシウムまたは有機粒子とアルミナを組合せて)添加してもよいが、前者の方が好ましい。
【0019】
不活性粒子(A)の平均粒径は0.01μm以上0.2μm以下、好ましくは0.01μm以上0.18μm未満、更に好ましくは、0.05μm以上0.15μm未満である。この平均粒径が0.01μm未満ではフィルムの易滑性が十分ではなく、一方0.2μm超では記録出力が低下するため好ましくない。該粒子の含有量は所定の表面粗さを得るために0.1〜0.5重量%の範囲で適宜選択される。好ましくは0.1〜0.3重量%である。また、不活性粒子(B)の平均粒径は、0.25μm以上0.8μm以下、好ましくは0.25m以上0.7μm未満、更に好ましくは0.25μm以上0.6μm未満である。この平均粒径が0.25μm未満ではフィルムの易滑性が不十分となり易く、一方0.8μm超では記録出力が低下するため好ましくない。該粒子の含有量は所定の摩擦係数を得るため0.001〜0.1重量%範囲で適宜選択される。好ましくは0.005〜0.05重量%である。さらにまた、不活性粒子(A)、(B)を併用する場合、不活性粒子(A)が小粒子、不活性粒子(B)が大粒子となり、これらの平均粒径の差は少なくとも0.15μmであることが好ましい。さらに、不活性粒子(A)、(B)は、それぞれ、球状シリカ粒子であることが好ましい。
【0020】
ところで、前記不活性粒子(A)、(B)、特に球状シリカ粒子は、その99%以上の粒子粒径が、平均粒径aに対して、0.5a〜1.5a、更には0.7a〜1.3aの範囲内にあることが好ましい。さらに、該粒子の80%以上の粒子粒径が平均粒径aに対して0.8a〜1.2a、更には0.9a〜1.1aの範囲内にあることが好ましい。このような粒子を用いることによって、フィルム表面の粗大突起の数を効率よく低減することができる。
【0021】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁性層との密着性を付与するために易接着層として機能する塗膜層を設けることが好ましい。また塗膜層は、フィルム同士の摩擦を下げることができ、製膜および磁性層塗布加工時での巻取り時のハンドリング性がよくなる、例えばシワや擦り傷等の発生を防ぐことができるものが好ましい。具体的なフィルム同士の静摩擦係数(μs)としては0.55以下であることが好ましく、他方動摩擦係数(μd)は、0.2〜0.55であることが好ましい。動摩擦係数(μd)が0.55を超えると、製膜工程中および磁性層塗布加工中でのハンドリング性が悪くなりやすく、例えば工程内のロール上での走行中またはロール状に巻取る際にしわやスクラッチといった欠点を生じることがある。
【0022】
本発明における塗膜層は、前述の摩擦係数を得るために、有機粒子を含有した塗膜層をフィルム表面に積層することが好ましい。この層は磁性層との接着性を向上する層(易接層)であるが、磁性層を設けるまでは有機粒子を層の表面に保持しているために易滑層にもなる。特に好ましい塗膜層は、分子内にスルホン酸塩基を5〜18モル%(全ジカルボン酸成分当たり)有し、かつガラス転移温度が90〜120℃の水性ポリエステル樹脂と、平均粒径が10〜100nmの有機粒子とを含むものである。
【0023】
ここで、水性ポリエステル樹脂の分子内に含有されるスルホン酸塩基としては、―SO3M(ここで、Mは、―SO3と同当量の金属原子、アンモニウム基または第4級アミンである。)で表される基が好ましく、その割合は、全ジカルボン酸成分当たり、5〜18モル%、好ましくは8〜16モル%、特に好ましくは9〜12モル%である。この割合が下限未満では、ポリエステル樹脂の水分散性や塗工性が悪くなり、一方上限を超えると、接着性や耐ブロッキング性が低下するので好ましくない。具体的なスルホン酸塩基としては、下記式(1)、(2)
【化1】

(ここで、m、nは1〜2の数で、m+nは2〜4である。)
【化2】

(ここで、p、qは1〜2の数で、p+qは2〜4である。)
で示されるスルホン酸塩基を有するジヒドロキシ化合物などを用いることが好ましい。
【0024】
前記水性ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4'―ジフェニルジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸などを例示することができる。これらの成分は2種以上を用いることができる。さらに、これら成分とともに、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの如き不飽和多塩基酸やp―ヒドロキシ安息香酸、p―(β―ヒドロキシエトキシ)安息香酸などの如きヒドロキシカルボン酸を小割合用いることができる。不飽和多塩基酸成分やヒドロキシカルボン酸成分の割合は、高々10モル%、好ましくは5モル%以下である。これら酸成分の割合が10モル%を超えると、ポリエステル樹脂の耐削れ性や耐ブロッキング性が低下する。
【0025】
また、前記水性ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物成分としては、エチレングリコール、1,4―ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6―ヘキサンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物などを例示することができる。これら成分は2種以上を用いることができる。
【0026】
前記水性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(DSC法)は、90〜120℃、好ましくは100〜110℃である事が好ましい。このガラス転移温度が下限未満では、易接着層の耐削れ性や耐ブロッキング性が低下しやすく、一方上限を超えると、接着性や塗工性が低下することがある。
【0027】
本発明において、前記塗膜層中の有機粒子の平均粒径は、10〜100nm、さらに20〜80nm、特に30〜60nmであることが好ましい。この平均粒径が下限未満では、粒子が小さすぎて、耐ブロッキング性や磁性層の耐削れ性に対する効果が充分に発揮されにくく、一方平均粒径が上限を超えると、粒子が削れ落ち易くなり、ベースの耐削れ性が悪くなりやすい。さらに、該有機粒子は、下記式(I)で表される体積形状係数(f)が0.4〜π/6の範囲内、すなわち形状が球状であることが好ましい。
f=V/D (I)
(式中、f=体積形状係数、V=粒子の平均体積(μm3)、D=粒子の平均最大径(μm)である。)
【0028】
この体積形状係数(f)が下限未満では、耐ブロッキング性や磁性層の耐削れ性に対する効果が充分に発揮されにくい。前記有機球状粒子(A)の配合量は、前記水性ポリエステル樹脂100重量部に対して、5〜150重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜80重量部である、この配合量が下限未満では、耐ブロッキング性に対する効果が充分発揮されにくく、一方上限を超えると、粒子が凝縮し易くなり、ベースの耐削れ性が悪くなりやすい。また、前記有機球状粒子の凝集率は、50%以下であることが好ましい。該凝集率が上限を超えると回収した時の再溶融で凝集が十分に解砕されず、粗大突起の原因となるために好ましくない。前記有機球状粒子(A)としては、耐熱性有機高分子粒子が好ましく例示できる。かかる粒子の例としては架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、テフロン(登録商標)粒子、ポリイミド粒子等を挙げることができる。なかでも架橋シリコーン樹脂粒子あるいは架橋アクリル樹脂粒子が好ましい。
【0029】
ところで、塗膜層形成の塗液、好ましくは水性塗液には、必要に応じて、他の樹脂、帯電防止剤、滑剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤を添加してもよく、また易接剤の耐熱性、耐ブロッキング性を向上させる為にメラミン、エポキシ、アジリジン化合物等の架橋剤等を添加することができる。水性塗液には少量の有機溶剤が含まれていてもよい。塗液の固形分濃度は任意に決められるが、1〜15wt%、好ましくは1〜12wt%、更に好ましくは1〜10wt%である。塗液の塗布量は、走行するフィルム(一軸延伸後のフィルム)1m2当り0.5〜20gが好ましく、さらには1〜10gが好ましい。また乾燥後の塗布厚みは5〜200nm、更に10〜100nmが好ましい。
【0030】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独又は組合せて適用するとよい。塗液を塗布する時期は、二軸配向ポリエステルフィルムに施してもよいが、縦一軸延伸ポリエステルフィルムに施すのが塗膜層の接着性を向上できることから好ましい。具体的な塗布方法として、水性塗液を塗布した一軸延伸ポリエステルフィルムを、乾燥し、横延伸、所望により再縦延伸、次いで熱固定処理等の工程に導き、フィルム上に連続皮膜を形成するのが好ましい。なお、乾燥は横延伸前あるいは横延伸時や熱固定時に実施すると良い。
【0031】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に高密度磁気記録フレキシブルディスク用であることが好ましく、このためフィルムの厚みは20〜60μm、さらには25〜55μmであることが好ましい。さらに前記表面粗さを有することが好ましい。これらは高密度記録方式の要請を充たすもので、フィルム厚さ20μm未満ではディスクとしての剛性度が極端に低く、60μmを超えると磁気ヘッドによる記録再生においてフィルムの柔軟性が不足し、また小型化の観点から好ましくない。
【0032】
つぎに、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法について説明する。
本発明の2軸配向ポリエステルフィルムは、それ自体公知の逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法によって製造することができる。例えば、十分に乾燥されたポリエステルを(融点+10)〜(融点+70)℃の温度で溶融押出し、キャスティングドラム上で急冷して未延伸フィルムとし、次いで該未延伸フィルムを逐次又は同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。ちなみに、ポリマー中の粗大粒子の個数を減らすには、溶融押出しに先立ち、溶融物のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜30μm、好ましくは15〜25μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。この濾過により、大きさ10μm以上、高さ0.27μm以上の突起数を、100cm2当たり20個以下にすることが実現できる。
【0033】
本発明において、二軸延伸は逐次二軸延伸が好ましく、その際未延伸フィルムを縦方向に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜5.0倍延伸する。この時、内側にカールしやすい側の表面の屈折率差を0.004以下となるように、また他方の屈折率差が前述の屈折率差よりも0.001以上大きくかつ0.02以下になるように、延伸時のフィルム表面温度を調整する、好ましくはフィルムの表面温度の表裏差が5℃以上、より好ましくは10℃以上になるように延伸温度を調整するか、延伸前に補助加熱を実施するのが好ましい。より具体的には、屈折率差を0.004以下とする側の表面の温度を高く、他方のより大きな屈折率差を持たせる側の表面の温度を低くすることにより調整できる。また、一軸延伸フィルムに前記の塗工を施し、次いで、延伸前に補助加熱を施すが、この温度を(Tg)〜(Tg+20)(℃)に設定して、この部分でフィルムを一部結晶化させることが、カールをより少なくする上で有効である。この後、上記延伸方向と直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に補助加熱温度〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜5.0倍の倍率で延伸することにより、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを製造できる。なお、延伸倍率は、面積延伸倍率で、9〜30倍、さらには12〜22倍にするのが好ましい。
【0034】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、さらに、(Tg+70)℃〜Tm(℃)の温度で熱固定することのが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムについては、180〜235℃で熱固定することが好ましい。ポリエチレン―2,6―ナフタレートフィルムについては185〜240℃で熱固定することが好ましい。熱固定は数ゾーンに分けて実施することが望ましく、好ましくは3ゾーン以上として、第1ゾーンを180〜210℃、第2ゾーンを第1ゾーンよりも高く最大の温度となるように設定する。第3ゾーンは第2ゾーンよりも低く180〜200℃に設定することが、フィルムの平面性を良好に保つために好ましい。また、フィルムの製膜方向に直交する方向、すなわち幅方向の熱収縮率を小さくするために、熱固定領域の最後のゾーンでレール幅を1〜10%縮めることも好ましい。3ゾーン以上設ける場合も、前述のように真ん中のゾーンを最高温度として前後を低く温度に傾斜をつけることが好ましい。熱固定ゾーンの後に冷却ゾーンを設けることもフィルムの平面性を良好に保つために好ましい。この温度は、(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃で実施することが好ましく、熱固定ゾーン同様に数ゾーンに分けることが好ましく出口に近いゾーンほど温度を低く設定することが好ましい。ここでも弛緩処理を施すことにより熱収縮率を小さくすることができる。熱固定温度が上記範囲より低いと、150℃熱収縮率が1.2%を超えることがあり、他方、熱固定温度が上記範囲より高いと、ステンターの中央付近で物性が各方向に均等であっても端の方では斜め配向が強くなる傾向が強まる。この現象は上記熱固定温度好適範囲の低温側でも避けられないが、程度は比較的小さい。熱固定時間は、例えば1〜60秒が好ましい。熱固定領域を経過し、フィルム温度が120℃程度になったところで、ナイフ刃でステンタークリップからフィルムを切り離し、引き取り速度をステンターより1〜10%遅くすることで縦方向の熱収縮率をさらに小さくすることができる。これら弛緩処理は過度に実施するとフィルムの平面性を損なうので注意を要する。
【0035】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムはフレキシブルディスクのベースフィルムとして使用するので、物性の面内方向差は小さいことが望まれ、可及的に低温熱固定して端部分の物性方向差を抑制し、弛緩処理によって熱収縮率を下げるのが一つの望ましい方法である。また、縦方向及び横方向の延伸条件は得られる二軸配向ポリエステルフィルムの物性が両方向にほぼ等しくなり、面内方向のヤング率が6000MPa以上で、最大値と最小値の差が100kg/mm2以下になる様な条件を選択するのが好ましい。同時二軸延伸の場合においても、上記延伸温度、延伸倍率、熱固定温度などを参考に調整することができる。もちろん、必要に応じて二軸延伸ポリエステルフィルムを、さらに縦方向及び/又は横方向に再延伸する、いわゆる3段延伸法、4段延伸法も採用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準であり、本発明における物性値および特性は、それぞれ以下の方法で測定したものである。
【0037】
(1)フィルム表裏面における屈折率差
フィルムの屈折率はレーザー屈折率計(Metricon社製 Model2010プリズムカプラー)を使用して測定する。標準サンプルとしてICS−14(石英板、屈折率1.4570)を200−P−1のプリズム、633nmの波長のレーザーを使用して校正する。サンプルは473nmの波長で測定し、各表面について、製膜方向を0°、製膜方向に直交する方向を90°となるように15°ずつ回転させ、0°〜165°までそれぞれの方向の屈折率を測定した。なお、測定は、それぞれの角度で5回測定し、この5回の平均値を、それぞれの方向の屈折率の値とした。そして、屈折率がもっとも大きかった方向の屈性率を屈折率の最大値と屈折率がもっとも小さかった方向の屈性率を屈折率の最小値とした。
【0038】
(2)熱収縮率
温度150℃に設定されたオーブン中に予め正確な長さを測定した長さ約30cm四方のフィルムを懸垂し、無荷重下に30分間保持処理した後取り出し、室温に戻してからその寸法の変化を読み取る。熱収縮率は下記式で定義される。
熱収縮率(%)=(△L/L0)×100
ここで、ΔL=|L0−L|、L0:熱処理前のフィルムの長さ、L:熱処理後のフィルムの同方向の長さである。
【0039】
上記測定を、製膜方向を0°、製膜方向に直交する方向を90°となるように15°ずつ回転させ、0°〜165°までそれぞれの方向の熱収縮率を測定した。なお、測定は、それぞれの角度で5回測定し、この5回の平均値を、それぞれの方向の熱収縮率とした。そして、熱収縮率がもっとも大きかった方向の熱収縮率を熱収縮率の最大値と熱収縮率がもっとも小さかった方向の熱収縮率を熱収縮率の最小値とした。
【0040】
(3)カール量
60℃、湿度50%の雰囲気下で直径1.8インチの円形サンプルを24時間放置した後取り出し、1時間室温(湿度50%)で放置する。次にサンプルの中心を図1および図2に示すように固定して、重心に通した軸をゆっくりと回転させ、円形サンプルの最外周の位置と円形サンプルの軸と接している位置から鉛直に下ろした位置、すなわち図1の符号6と7の厚み方向における変位をマイクロメーターにより読み取る。そして、この測定をひとつの円形サンプルが3回転するまで行い、測定値の中の最も変位の大きなものから3点を抽出し、それらを平均した値をカールとする。
【0041】
(4)フィルムの全体の厚み
ゴミが入らないようにしてフィルムを10枚重ね、打点式電子マイクロメータにて厚みを測定し、1枚当たりのフィルム厚みを計算する。
【0042】
(5)ガラス転移温度
DSC測定器(セイコーインスツルメンツ社製DSC220、SCC/5200)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、ポリエステルのガラス転移温度を求める。
【0043】
(6)粒子の平均粒径1(ポリエステルフィルムに含有させる粒子)
島津製作所製CP−50型セントリフューグル パーティクルサイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径とする(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年、頁242〜247参照)。
【0044】
(7)粒子の平均粒径2(塗膜層に含有させる粒子)
塗膜層中の粒子は、光散乱法を用いて測定する。即ち、Nicomp Instruments Inc.社製のNICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZERにより求められる全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球直径」をもって表示する。
【0045】
(8)出力
実施例で得られたフィルムの両面に、下記組成の非磁性層を乾燥後の厚みが1.5μm、磁性層を乾燥後の厚みが0.5μm塗布した磁気記録媒体を直径1.8インチに打抜いてフロッピーディスクを作成した。
磁性層用塗料:
バリウムフェライト磁性粉:100部、塩化ビニル共重合体(極性基(−SO3K)含有、MR555(日本ゼオン社製)):12部、ポリウレタン(−SO3 Na含有、UR8200(東洋紡社製):3部、hα−アルミナ(平均粒径0.2μm、HIT55(住友化学社製)):10部、#50(旭カーボン社製):5部、ブチルステアレート:10部、ブトキシエチルステアレート:5部、イソヘキサデシルステアレート:3部、ステアリン酸:2部、メチルエチルケトン:125部、シクロヘキサノン:125部
非磁性層用塗料:
非磁性無機粉末(TiO2(結晶系ルチル)):80部、カーボンブラック(コンダクテックスSC−U、コロンビアンカーボン社製):20部、塩化ビニル共重合体(極性基(−SO3K)含有、MR110、日本ゼオン社製):12部、UR8200:5部、ブチルステアレート:10部、ブトキシエチルステアレート:5部、イソヘキサデシルステアレート:2部、ステアリン酸:3部、メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤):250部
【0046】
出力の測定は、国際電子工業社(旧東京エンジニアリング)製のディスク試験装置とSK606B型評価装置を用いギャップ長0.3μmのメタルインギャップヘッド用い、半径20.0mmの位置において記録波長90KFCIで記録した後ヘッド増幅機の再生出力をテクトロニクス社製オシロスコープ7633型で測定した。出力は実施例1の出力・ノイズを0dBとして下記基準にて判定する。
○:−0.5dB以上
△:−1dB以上〜−0.5db未満
×:−3dB以上〜−1dB未満
××:−3db未満
【0047】
[実施例1]
2,6―ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン・4水塩0.03部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、さらに不活性粒子として平均粒径0.3μmの球状シリカ0.01%および平均粒径0.12μmの球状シリカ0.3%を添加して、次いで220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042部(2mmol%に相当)を添加した。引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後燐酸トリメチル0.023部を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空下にて重縮合反応を行って25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.61dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)ポリマーを得た。このPENポリマーを170℃において6時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度310℃で溶融し、平均目開き10μmの不織ステンレス鋼線フィルターでろ過して開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温度50℃の回転ドラム上に押出し、700μm厚みの未延伸フィルムを得た。このとき、表面Aが回転ドラムと接触する側に位置し、表面Bが接しない側に位置していた。こうして得られた未延伸フィルムを110℃に予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より950℃の、下方より750℃の表面温度のI(赤外線)ヒーターにて延伸時のフィルム表面温度で上方を135℃、下方を125℃に加熱して縦方向に3.5倍に延伸し、急冷後テレフタル酸―5Naスルホイソフタル酸(4モル%)―エチレングリコール―ジエチレングリコール共重合ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg=100℃)100部と平均粒径40nmのアクリルフィラー20部および界面活性剤としてHLB12.6のポリオキシアルキレンアルキルエーテル10部からなる組成の水性塗液(固形分濃度:4.0%)を一軸延伸フィルムの両面に、リバースコータで二軸延伸後の乾燥塗布厚みが20nm(固形分換算)になるように塗布し、ついで、135℃で予熱し、140℃で横方向に3.7倍延伸し、さらに熱固定第1ゾーン1で200℃4秒間、第2ゾーンで225℃4秒間、第3ゾーンで180℃、4秒間熱固定処理及び幅方向に10%収縮させ(トウイン)、厚さ53μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
750μmの未延伸フィルムとなるように押出し量を調節し、縦延伸時のフィルム表面温度を上側を135℃、下側を130℃になるようにIRヒーターの出力を調整加熱し縦延伸倍率を3.7倍、横延伸倍率を3.9倍とする以外は、実施例1と同様にして、厚さ52μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
450μmの未延伸フィルムとなるように押出し量を調節し、縦延伸時のフィルム表面温度を上方を135℃、下方を125℃になるようにIRヒーターの出力を調整する以外は実施例1と同様にして、厚さ33μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
1100μmの未延伸フィルムとなるように押出し量を調節し、縦延伸時のフィルム表面温度を上側を137℃、下側を130℃に加熱し縦延伸倍率を4.5倍、横延伸倍率を4.9倍とする以外は、実施例1と同様にして、厚さ52μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
縦延伸時のフィルム温度を上側で127℃、下側を127℃となるようにIRヒーターの出力を調整し、横延伸時の前、110℃で予熱する以外は、実施例1と同様にして、厚さ53μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
実施例1において、第2熱固定ゾーンの温度を215℃とする以外は、実施例1と同様にして、厚さ53μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
縦延伸時のフィルム温度を上側で138℃、下側を138℃となるようにIRヒーターの出力を調整し、横延伸時の前、110℃で予熱する以外は、実施例1と同様にして、厚さ53μmの二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0054】
[比較例4]
比較例1において、1軸延伸後、テレフタル酸―5Naスルホイソフタル酸(11モル%)―エチレングリコール―ジエチレングリコール共重合ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg=55℃)100部と平均粒径80nmのシリカフィラー80部および界面活性剤としてHLB12.6のポリオキシアルキレンアルキルエーテル10部からなる組成の水性塗液(固形分濃度:4.0%)を一軸延伸フィルムの両面に、リバースコータで二軸延伸後の乾燥塗布厚みが20nm(固形分換算)になるように塗布する以外は、全て比較例1と同様にして、厚さ53μm二軸配向PENフィルムを得た。得られた二軸配向PENフィルムの特性を表1に示す。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、極めてカールが小さいことから、フレキシブルディスク、特に1枚当たりの記憶容量が1GB以上のような大容量のフレキシブルディスクのベースフィルムとして好適に使用できる。そして、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いたフレキシブルディスクは、出力が極めて安定し、その工業的価値はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明におけるカールを測定するための装置を正面から見た図である。
【図2】本発明におけるカールを測定するための装置を、側面から見た図である。
【符号の説明】
【0058】
1 二軸配向ポリエステルフィルムの円形サンプル
2 回転軸
3 モータ
4 円形サンプルの最外周の位置
5 円形サンプルの軸と接している位置から鉛直に下ろしたカール0mmの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径1.8インチの円形サンプルとして、60℃、湿度50%の雰囲気下で24時間処理後、室温、湿度50%の雰囲気下で1時間放置してから、円形サンプルの厚み方向が水平方向になるように配したときのカール値が0.6mm以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
150℃で30分間処理したときの熱収縮率が、フィルム面内の全ての方向で0〜1.2%の範囲にある請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
それぞれのフィルム表面の面内方向における屈折率の最大値と最小値の差(屈折率差)を測定したとき、一方の表面(表面A)は屈折率差Aが0.004以下で、かつ他方の表面(表面B)は屈折率差Bが屈折率差Aよりも0.001以上大きくかつ0.02以下である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
厚みが20〜60μmの範囲にある請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
平均粒径10〜100nmの有機粒子とスルホン酸塩基を分子中に有するTgが90〜120℃の水性ポリエステル樹脂とからなる塗膜層が、フィルムの両表面に塗設されている請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ポリエステルがポリエチレンー2,6−ナフタレートである請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
フレキシブルディスクのベースフィルムとして用いる請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項8】
フレキシブルディスクの1枚当たりの記録容量が1GB以上である請求項7記載の二軸配向ポリエステルフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−305870(P2006−305870A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131479(P2005−131479)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】