説明

亜鉛有価物の製造方法およびその亜鉛有価物

【課題】 亜鉛ショットを用いたブラスト加工において発生する亜鉛集塵ダストから高純度の酸化亜鉛や亜鉛末に係る亜鉛有価物を製造する方法、およびその製造方法により製造された亜鉛有価物を提供すること。
【解決手段】 亜鉛集塵ダストを加熱して亜鉛蒸気を吐出させる気化・吐出工程と、亜鉛蒸気を冷却して亜鉛有価物を捕集する冷却・捕集工程からなる亜鉛有価物の製造工程において、前記気化・吐出工程の前工程に成型工程を設けて亜鉛集塵ダストを塊状に成型し、その成型体を酸化性雰囲気中または弱酸化性雰囲気中で加熱して前記成型体を構成する亜鉛集塵ダストの粉粒体の表面に酸化層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミダイキャスト製品等の軽合金鋳物からなる被加工物の表面に、亜鉛ショットからなる投射材を高速で衝突させ、前記被加工物の面粗度の調整や鋳バリ除去等を目的としたブラスト加工において、該ブラスト加工後に回収される亜鉛集塵ダストから、酸化亜鉛あるいは亜鉛末に係る亜鉛有価物を製造する方法、およびその方法により製造された亜鉛有価物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の亜鉛集塵ダストは埋め立て処分されていて、本発明者らは、亜鉛集塵ダスト中に被加工物のブラスト研削された加工屑のほかに、破砕あるいは摩滅した亜鉛ショットの粉粒体が前記亜鉛集塵ダスト中に80〜95質量%含有されていることに着目し、該亜鉛集塵ダストを分離して酸化亜鉛粉末の原料とする分離工程とその分離した原料を加熱・気化させた後、気化した亜鉛を空気または酸素を含む気体により酸化・気化させる酸化工程を備えた高純度酸化亜鉛粉末の製造方法について特許文献1より提案し、また、亜鉛集塵ダストを鋳バリと亜鉛粉とに分離する工程と、前記鋳バリを再溶解して鋳造粗材とする工程と、前記亜鉛粉から高純度酸化亜鉛粉末を回収する工程とからなる亜鉛集塵ダストの回収処理方法を特許文献2により提案した。
【0003】
前記特許文献1および特許文献2の亜鉛集塵ダストから高純度酸化亜鉛粉末を製造(回収)する方法として好適なのは、亜鉛集塵ダスト中に含まれる破砕あるいは摩滅した亜鉛ショット組成が高純度亜鉛か、または該亜鉛ショットを製造する過程において硬さ調整のために10質量%程度まで添加されるマンガンあるいは銅のほかに、高純度(亜鉛99.99質量%以上)の亜鉛地金が90質量%以上含有されていることにある。
【0004】
しかしながら、前記亜鉛集塵ダストから鋳バリを分離して除去した亜鉛粉末の原料中には被加工物からブラスト研削された加工屑が含まれていて、該加工屑は、気化容器内で前記亜鉛粉末の原料を加熱・気化する際に、その沸点が後記の如く亜鉛のそれよりも1,000℃以上高いことから気化されずに気化容器内に残存し、加熱・気化により気化して得られた亜鉛蒸気の圧力による攪拌作用により気化容器内で激しく舞い上がり亜鉛蒸気と混合され、次の冷却・捕集工程に吐出されることとなるから、捕集される酸化亜鉛粉末中に前記ブラスト研削の加工屑が混在することとなる。
【特許文献1】特開2003−095654号公報
【特許文献2】特開2003−113432号公報
【0005】
なお、亜鉛集塵ダスト中に混在する被加工物であるアルミダイキャスト製品等の軽合金鋳物をブラスト研削して発生した加工屑は、アルミニウム(沸点:2,060℃)、シリコン(沸点:2,335℃)、銅(沸点:2,582℃)等であり、その沸点は、亜鉛集塵ダスト中に破砕あるいは摩滅して混在する亜鉛ショットに90質量%以上含有する亜鉛(沸点:907℃)の沸点に比べていずれも1,000℃以上高いものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する問題点は、前記のように、亜鉛集塵ダストから捕集した酸化亜鉛粉末の原料を気化容器内で加熱して気化させて得られた亜鉛蒸気を使用して次工程で冷却して捕集される酸化亜鉛粉末中に前記ブラスト研削の加工屑が混在することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記問題点を解決して、亜鉛集塵ダストから捕集した亜鉛粉末の原料を加熱して気化させ冷却して酸化亜鉛あるいは亜鉛末の亜鉛有価物を得る際に、ブラスト研削などによる加工屑が混在しない高純度の亜鉛有価物を製造する方法およびその亜鉛有価物を提供することを目的とする。
【0008】
第1の発明は、亜鉛集塵ダストを加熱して亜鉛蒸気を吐出させる気化・吐出工程と、該亜鉛蒸気を冷却して亜鉛有価物を捕集する冷却・捕集工程からなる亜鉛有価物の製造工程において、前記気化・吐出工程の前工程に、前記亜鉛集塵ダストの粉粒体を塊状に成型したのちその成型体を酸化性雰囲気中または弱酸化性雰囲気中で加熱して前記成型体を構成する亜鉛集塵ダストの粉粒体の表面に酸化層を形成する成型工程を設けた亜鉛有価物の製造方法である。
【0009】
この発明は、本発明者らが既に提案している前記特許文献1または特許文献2の亜鉛集塵ダストを加熱して気化させ冷却して酸化亜鉛粉末を得る製造方法において、亜鉛集塵ダストの粉粒体を加熱・気化する前工程に亜鉛集塵ダストを塊状に成型する成型工程を設けて被加工物のブラスト研削などの加工屑を亜鉛粉末の原料となる亜鉛ショットの破砕あるいは摩滅した粉粒体と塊状に成型し、その成型体を酸化性雰囲気中または弱酸化性雰囲気中で加熱して成型体を構成する亜鉛集塵ダストの粉粒体の表面に酸化層を形成した状態とする。なお、前記の亜鉛集塵ダストの粉粒体の表面に形成される酸化層の形成は、成型体にする前の亜鉛集塵ダストの粉粒体を予め酸化性雰囲気または弱酸化性雰囲気中で加熱して酸化層を形成してもよく、また、前記亜鉛集塵ダストの粉粒体に替えて酸素が吸着されて既に酸化層が形成されている亜鉛を含有した粉粒体を使用してもよい。
【0010】
次に、気化・吐出工程において、前記成型体を亜鉛の沸点付近に加熱すれば亜鉛蒸気が得られるとともに前記成型体は破壊されず、従来の問題点であった被加工物の加工屑が、亜鉛蒸気の気化圧力により攪拌され舞い上がって、生成された亜鉛蒸気と混在することがないので、亜鉛蒸気のみが冷却され捕集されて高純度の亜鉛有価物を得ることができる。
【0011】
第2の発明は、前記第1の発明の成型工程における亜鉛集塵ダストを成型するサイズを、球相当径:2mm乃至100mmにした亜鉛有価物の製造方法である。
【0012】
この発明は、亜鉛集塵ダストの成型サイズを、球相当径が2mm乃至100mmにすることによって、該成型体1個当たりの重量が、成型前の粉粒体1個当たりの重量に比較して桁違いに重く、また気化容器内において充填された成型体間に形成される間隙が亜鉛蒸気の通り道となり、気化容器の吐出孔からは亜鉛蒸気だけが吐出し、その結果、純度の高い亜鉛有価物を得ることができる。
【0013】
その成型サイズについて、気化容器内に亜鉛蒸気の通り道(間隙)を形成する目的から最小サイズは球相当径:2mm以上が好ましく、逆に、ハンドリング時あるいは気化時に自己破壊しない強度を有した最大サイズは球相当径:100mmまでとするのが好ましい。
【0014】
前記成型品の球相当径とは、成型体と同体積の球の直径であって、アーモンド状、棒状、楕円球体状、針状、塊状などの非球状体を同一の体積の球体とみなした時の直径を指すものであって、成型品の形状については、球体および前記非球状体の総てが適用できるもので、制限をするものでない。
【0015】
第3の発明は、前記第1または第2の発明の気化・吐出工程における亜鉛集塵ダストの加熱温度を、850℃乃至1,400℃にした亜鉛有価物の製造方法である。
【0016】
この発明は、前記成型工程にて成型された亜鉛集塵ダストの成型体を加熱して気化させて得られた亜鉛蒸気を吐出させる気化・吐出工程における加熱温度に関するもので、下限温度は亜鉛の沸点(907℃)付近の850℃前後から亜鉛蒸気の発生が開始するから850℃前後が好ましく、上限温度は(1)高ければ高いほど亜鉛集塵ダストの成型品に単位時間に伝達される熱エネルギーが多くなるため亜鉛蒸気の吐出速度が速くなって気化効率は向上するが、逆に(2)加熱温度が高いほど原料中に含まれる沸点が亜鉛より高い不純物が気化し易くなり且つ気化容器の熱による損耗も激しくなるため、前記(1)と(2)を勘案して、1,400℃前後が好ましい。
【0017】
第4の発明は、前記第1乃至第3のいずれか記載の発明の冷却・捕集工程における亜鉛蒸気の吐出雰囲気を空気または酸素を含む気体にし、その雰囲気中で亜鉛蒸気を酸化させたのち冷却し酸化亜鉛にして捕集する亜鉛有価物の製造方法である。
【0018】
この発明は、冷却・捕集工程における亜鉛蒸気を冷却する雰囲気を、空気または酸素を含む気体中としてその冷却と捕集を行えば、前記亜鉛蒸気を酸化させて高純度の酸化亜鉛が捕集できるものである。
【0019】
第5の発明は、前記第1乃至第3のいずれか記載の発明の冷却・捕集工程における亜鉛蒸気の吐出雰囲気を不活性ガスまたは還元性ガスにし、その雰囲気中で亜鉛蒸気を凝集させたのち冷却し亜鉛末にして捕集する亜鉛有価物の製造方法である。
【0020】
この発明は、冷却・捕集工程における亜鉛蒸気を冷却する雰囲気を不活性ガスまたは還元性ガスとし、その冷却と捕集を行えば前記亜鉛蒸気を酸化させて高純度の亜鉛末が捕集できるものである。
【0021】
第6の発明は、第4の発明である製造方法を用いて製造された高純度の酸化亜鉛であり、第7の発明は、第5の発明である製造方法を用いて製造された高純度の亜鉛末である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、従来埋め立て処分されていた亜鉛集塵ダストを加熱し気化させて亜鉛蒸気を生成する気化と吐出させる工程と、生成した亜鉛蒸気を空気または酸素を含む気体または不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気中で冷却し、酸化亜鉛または亜鉛末の亜鉛有価物を捕集する、冷却・捕集する工程を設けた製造方法であって、資源の有効利用ができる、原料価格が安価であること、等の利点があるばかりでなく、前記亜鉛蒸気を生成する気化・吐出工程の前工程に亜鉛集塵ダストの粉粒体を成型する工程を設けたことにより、前記気化・吐出工程から吐出され、冷却・捕集工程へ移行する亜鉛有価物(酸化亜鉛または亜鉛末)となる亜鉛蒸気には、被加工物からブラスト研削された粉粒体(不純物)が混入することがないから、従来法では製造できなかった高純度の亜鉛有価物(酸化亜鉛または亜鉛末)を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、亜鉛集塵ダストを加熱し気化させて亜鉛蒸気を発生させ、その亜鉛蒸気から高純度の酸化亜鉛または亜鉛末の亜鉛有価物を得るために亜鉛集塵ダストを加熱して亜鉛蒸気を吐出させる気化・吐出工程と、亜鉛蒸気を空気または酸素を含む気体または不活性ガスまたは還元性ガスの雰囲気中で冷却し亜鉛有価物を捕集する冷却・捕集工程において、前記気化・吐出工程の前工程に亜鉛集塵ダストをサイズ(A)以上に成型する成型工程を設けるとともにその成型体を構成する亜鉛集塵ダストの粉粒体の表面に酸化層を形成させることを基本構成とする。
【0024】
また、前記亜鉛集塵ダスト中に特定する分離のサイズ(B)以上の被加工物から剥離した鋳バリや異物がある場合には、これらを除去するための分離工程を、前記成型工程の前工程に必要に応じて設けるものとする。
【0025】
前記成型工程にて成型する成型体のサイズ(A)は、次工程の気化・吐出工程において亜鉛の成分を気化させて亜鉛蒸気を発生させた時点で、気化していない被加工物の成分の粉粒体が前記で亜鉛蒸気の圧力による攪拌作用によって亜鉛蒸気と共に気化容器外へ吐出しない質量とそのサイズであれば良く、具体的には前記第2の発明に記した球相当径が2mm乃至100mmであれば良い。
【0026】
なお、成型工程に使用する成型装置の選定と成型加工の条件は、その成型強度がハンドリング時あるいは気化時に自己破壊しない強度を有する必要があり、球状あるいはアーモンド形状など、種々の形状で量産ができる成型装置を使用すると良い。
【0027】
また、必要に応じて設ける前記分離工程にて特定する分離のサイズ(B)は、前記成型体のサイズ(A)およびその形状により決定された成型装置の成型性能を発揮するサイズであれば良い。
【0028】
次に、本発明の原料となる亜鉛集塵ダストが発生するブラスト加工を行う被加工物とその投射材、およびそのブラスト加工により発生する亜鉛集塵ダストについて説明する。
【0029】
亜鉛集塵ダストが発生するブラスト加工を行う被加工物は、近年量産されている自動車部品等に多く用いられているダイキャスト製品等の軽合金鋳物であって、そのブラスト加工の目的を表面の粗さ調整や鋳バリの除去等としたこの種のブラスト加工において用いられる投射材は、ブラスト加工時に発生する恐れがある粉塵爆発あるいは被加工物表面の黒化などを防ぐために、亜鉛成分を90質量%以上含有する亜鉛ショットが用いられている。
【0030】
前記ブラスト加工によって集塵機により捕集された亜鉛集塵ダストの組成は、投射材に使用した亜鉛ショットが破砕あるいは摩滅した粉粒体:80〜95質量%、および被加工物であるダイキャスト製品から除去された鋳バリ:0〜8質量%と被加工物からブラスト研削された粉粒体:5〜20質量%から成る。なお、この組成は、亜鉛ショットの種類やダイキャスト製品の種類により若干変わるものであるが主な組成は変わらない。
【0031】
従来、亜鉛蒸気を生成する気化・吐出工程において、集塵機で捕集された亜鉛集塵ダストを粉粒体の状態で気化容器に充填し加熱すると、亜鉛集塵ダスト中の投射材として用いた亜鉛ショットが破砕あるいは摩滅した粉粒体の亜鉛成分の気化現象が850℃付近から開始して亜鉛蒸気が発生し、さらに加熱し気化容器内の温度が亜鉛の沸点温度(907℃)に達すると気化容器内の亜鉛蒸気が激しく沸騰してその気化圧力により攪拌現象が起こり、その攪拌作用によって被加工物からブラスト研削された気化していない粉粒体(不純物)が亜鉛蒸気と共に気化容器外へ吐出される。
【0032】
気化容器外へ吐出された亜鉛蒸気は、亜鉛有価物(酸化亜鉛または亜鉛末)にするために、次の冷却・捕集工程に移行することとなるが、この時点で、前記のように亜鉛蒸気中に気化していない被加工物からブラスト研削された粉粒体(不純物)が混入しているから、その混入の割合に相当して生成される亜鉛有価物の亜鉛純度を低下させることとなる。
【0033】
以下、本発明の各工程について図1を参照しつつ詳しく説明する。
【0034】
本発明に係る亜鉛集塵ダストの粉粒体を特定のサイズに成型する成型工程1は、亜鉛蒸気中に気化していない被加工物からブラスト研削された粉粒体(不純物)の混入を阻止して、亜鉛有価物の亜鉛純度を低下させている従来の問題点を解決した高純度の亜鉛有価物(酸化亜鉛または亜鉛末)を得るために必要不可欠の工程であって、集塵機で捕集された亜鉛集塵ダスト(亜鉛ショットが破砕あるいは摩滅した粉粒体と被加工物からブラスト研削された粉粒体の混合)を前記特定する成型のサイズ(A)以上にした成型体を形成するものである。
【0035】
その成型体を気化・吐出工程2における気化容器内に充填し、気化容器内の温度を亜鉛の沸点温度(907℃)まで加熱すれば、前記成型体の亜鉛成分が激しく気化されて亜鉛蒸気となり、該亜鉛蒸気が成型体の間隙および成型体を構成する塊状化された粉粒体間を通過して、亜鉛蒸気のみが気化容器外の空気または酸素を含む気体からなる吐出雰囲気3A、または不活性ガスまたは還元性ガスからなる吐出雰囲気3Bに吐出されて冷却・捕集工程4に移行して高純度の亜鉛有価物(酸化亜鉛または亜鉛末)を得ることができる。
【0036】
なお、前記気化容器内の成型体は、その内部が破砕あるいは摩滅した亜鉛ショットの粉粒体と被加工物からブラスト研削された加工屑が溶けた状態となるが、前記破砕あるいは摩滅した亜鉛ショットの粉粒体と被加工物からブラスト研削された加工屑の表面に形成された酸化層により、当該成型体は亜鉛蒸気の激しい気化圧力により破壊されることなく塊状を保った状態で気化容器内に残存している。
【0037】
また、前記亜鉛蒸気が冷却・捕集工程4へ移行する際の雰囲気に関し、該亜鉛蒸気から酸化亜鉛を生成する場合は、亜鉛蒸気を空気または酸素の気体からなる吐出雰囲気3Aにて酸化反応をさせて冷却する必要があり、前記亜鉛蒸気から亜鉛末を生成する場合は、亜鉛蒸気を不活性ガスまたは還元性雰囲気の気体からなる吐出雰囲気3Bにて酸化反応をさせずに冷却する必要がある。
【0038】
次に、必要に応じて設ける分離工程5について説明する。
【0039】
分離工程5を設ける目安は、成型工程1における第2の発明で述べた成型体のサイズと成型装置の成型効率を勘案し、前記ブラスト加工により発生する鋳バリのサイズが特定する分離のサイズより大きい場合に設ける必要がある。また、分離工程5に使用する装置は、一般的に篩網を用いた振動篩装置、あるいは風力を用いた風力分級装置があって、その装置の選定は適宜行なえば良く、またこれらを組み合わせても良い。
【0040】
なお、亜鉛集塵ダスト中に混入する鋳バリのサイズあるいはその量は、ブラスト加工する被加工物とそのブラスト加工設備によって決定されるもので、前記鋳バリが無い場合もあるが、その鋳バリのサイズが大きい場合は、成型工程1に使用する成型装置の造粒効率に悪影響を及ぼすから、その鋳バリや異物を除去する必要がありその分離工程5を前記成型工程1の前工程に設ける必要がある。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明をする。
【0042】
本実施例に用いた亜鉛集塵ダストは、被加工物が自動車部品のアルミダイキャスト製品であって、鋳バリの除去と表面の清浄化を目的とし、投射材に亜鉛ショットを用いてブラスト加工をしたもので、その亜鉛集塵ダスト中には、大きさが2.000mm以上の鋳バリが混入していたことから、次に示す分離工程5を設けてその鋳バリを除去した。
【0043】
分離工程5に使用する分離装置は、徳寿工作所製のジャイロシフター(GS−B2−25・AM型)を採用し、その篩網にナイロン製の開き目2.000mmをセットし、亜鉛集塵ダスト4,000Kgを供給して篩い分けを行なった結果、篩網上の産物に被加工物の鋳バリが8Kg、篩網下の産物に投射材に用いた亜鉛ショットが破砕および摩滅した粉粒体と被加工物のブラスト研削粉が混合された粉粒体が3,990Kgを得た。この篩網下の産物である粉粒体の組成を表1、その粒度分布を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
成型工程1に使用する成型装置は、新東工業製のブリケッティングマシーン(BCS1型)を採用し、成型体のサイズ:長軸長さ28mm×短軸長さ18mm×厚み9mm、形状:アーモンド形状、バインダー:なし、として前記分離装置で得られた篩網下の産物1,500Kgを供給して成型した結果、見かけ比重5.6の前記成型体を1,500Kg得た。
【0047】
気化容器は、上部を開口とし、サイズ:内径520mm・高さ940mm、材質:内面をモルタルコーティングした耐熱鋼からなる坩堝本体と、サイズ:外径660mm、材質:坩堝本体と同じである中央部に筒状の吐出孔を備えた前記坩堝本体の蓋、とから成るもので、前記坩堝本体内に前記成型工程1で得られた成型体300Kgを大気雰囲気中で充填して蓋をした。
【0048】
前記気化容器を4個作製し、該気化容器4個を気化炉にセットしてその気化容器の蓋部に設けた吐出孔が気化炉上部に設けた孔より外部に突出するようにセットし、吐出孔は気化炉の外部(大気)に連通したままの状態で気化炉内を加熱するようになっていて、400℃前後まで加熱することにより、前記気化容器内に充填した成型体を構成する亜鉛集塵ダストの粉粒体(亜鉛ショットの破砕あるいは摩滅した粉粒体と被加工物のブラスト研削などの加工屑)の表面に酸化層が形成された。
【0049】
次の気化・吐出工程では、気化炉内の加熱を継続し、気化炉内にセットした気化容器内に充填している前記成型体の温度が850℃に達すると亜鉛成分が気化し始め、さらに温度が上昇して亜鉛の沸点温度(907℃)に達すると亜鉛蒸気が沸騰状態となって吐出孔から吐出を開始した。
【0050】
さらに加熱して炉内温度が1,100℃に達したら、その温度に保持して吐出孔より亜鉛蒸気を吐出させ続けた。
【0051】
前記気化・吐出工程2の気化容器より吐出する亜鉛蒸気の吐出雰囲気3Aを空気または酸素を含む気体にし、該亜鉛蒸気を酸化反応させて酸化亜鉛にしてから次の冷却・捕集工程へ移行させた。
【0052】
同様にして、前記気化・吐出工程2の気化容器より吐出する亜鉛蒸気の吐出雰囲気3Bを不活性ガスまたは還元性雰囲気にし、該亜鉛蒸気を酸化反応させずに亜鉛末にしてから次の冷却・捕集工程4へ移行させた。
【0053】
冷却・捕集工程4に使用する冷却・捕集装置は、新東工業製のバグフィルタータイプの集塵機(UDC―1518NS型)を採用し、捕集に用いたダクトフードの直径1.5m、捕集風量は160m3/min、として本発明の亜鉛有価物(酸化亜鉛Aおよび亜鉛末A)を夫々冷却・捕集をした。
【0054】
前記亜鉛有価物(酸化亜鉛Aおよび亜鉛末A)の冷却と捕集は、該亜鉛有価がダクトフードと集塵機間のダクト内を通過して耐熱ナイロンフェルト製濾布に捕集されるまでの間で自然冷却し、前記耐熱ナイロンフェルト製濾布を振動させて振るい落とし、集塵機下部のロータリーバルブより酸化亜鉛Aおよび亜鉛末Aを回収した。
【0055】
<比較例>
次に、前記本発明の実施例と比較するため、従来の製造方法である亜鉛集塵ダストを成型しない粉粒体を原料として製造し回収された亜鉛有価物(酸化亜鉛Bおよび亜鉛末B)について説明する。
【0056】
前記本発明の実施例で示した分離工程5の分離装置で得られた篩網下の産物を4個の各気化容器に夫々300Kg充填し、前記4個の気化容器を前記本発明の実施例と同様に気化炉内にセットし、LPGバーナーで加熱して、以下本発明の実施例と全く同様のプロセスを経て、酸化亜鉛Bおよび亜鉛末Bを回収した。
【0057】
本発明の実施例である酸化亜鉛Aと、従来の比較例である酸化亜鉛Bの品質について、酸化亜鉛の日本工業規格(JIS−K1410/1種)との比較のために表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
なお、亜鉛末については、日本工業規格による規定がないため亜鉛の純度(%)のみを記載するが、本発明の方法により製造された亜鉛末Aは99.7%、従来法の亜鉛末Bは96.8%であった。
【0060】
表3に示す酸化亜鉛の日本工業規格(JIS−K1410/1種)の品質項目に対し、本発明の方法により製造された酸化亜鉛Aは、全ての品質項目をクリアし、その中でも特に亜鉛の純度(99.5%)はクリアできているが、従来法の酸化亜鉛Bはクリアできなかった。この要因は、本発明の成型工程による亜鉛集塵ダストの粉粒体((亜鉛ショットの破砕あるいは摩滅した粉粒体と被加工物のブラスト研削などの加工屑))を成型し、該粉粒体の表面に酸化層を形成させた結果であり、亜鉛末についても同様の結果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の亜鉛有価物の製造プロセスを説明する工程図。
【符号の説明】
【0062】
1 成型工程
2 気化・吐出工程
3A 吐出雰囲気
3B 吐出雰囲気
4 冷却・捕集工程
5 分離工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛集塵ダストを加熱して亜鉛蒸気を吐出させる気化・吐出工程と、該亜鉛蒸気を冷却して亜鉛有価物を捕集する冷却・捕集工程からなる亜鉛有価物の製造工程において、前記気化・吐出工程の前工程に、前記亜鉛集塵ダストの粉粒体を塊状に成型したのちその成型体を酸化性雰囲気中または弱酸化性雰囲気中で加熱して前記成型体を構成する亜鉛集塵ダストの粉粒体の表面に酸化層を形成する成型工程を設けたことを特徴とする亜鉛有価物の製造方法。
【請求項2】
前記成型工程における亜鉛集塵ダストを成型するサイズを、球相当径:2mm乃至100mmにしたことを特徴とする請求項1記載の亜鉛有価物の製造方法。
【請求項3】
前記気化・吐出工程における亜鉛集塵ダストの加熱温度を、850℃乃至1,400℃にしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の亜鉛有価物の製造方法。
【請求項4】
前記冷却・捕集工程における亜鉛蒸気の吐出雰囲気を空気または酸素を含む気体にし、その雰囲気中で亜鉛蒸気を酸化させたのち冷却し酸化亜鉛にして捕集することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の亜鉛有価物の製造方法。
【請求項5】
前記冷却・捕集工程における亜鉛蒸気の吐出雰囲気を不活性ガスまたは還元性ガスにし、その雰囲気中で亜鉛蒸気を凝集させたのち冷却し亜鉛末にして捕集することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の亜鉛有価物の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の亜鉛有価物の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする酸化亜鉛。
【請求項7】
請求項5記載の亜鉛有価物の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする亜鉛末。

【図1】
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【公開番号】特開2007−154312(P2007−154312A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303225(P2006−303225)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(390031185)新東ブレーター株式会社 (27)
【Fターム(参考)】