説明

交差点運転支援装置

【課題】非優先道を走行する車両が優先道に進入するに際し、見通しの良い交差点では交差点支援情報を報知しないことで、運転者に与える煩雑感を軽減させるようにする。
【解決手段】非優先道102から優先道101に進入するに際し、見通し判定処理部14は一時停止位置104付近に設置されている第1インフラ設備103aから得られた優先道101側の移動体情報と、車両に搭載されている自律センサで検出した優先道101側の移動体情報とを比較し、不一致の場合は見通しが悪いと判定し、一致した場合は見通しが良いと判定する。そして不一致の場合は運転者に交差点支援情報を運転者に報知し、一致した場合は、運転者が目視により確認済みであると判定し報知しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非優先道から優先道に進入しようとする車両の運転者に対して、優先道側の移動体に関する支援情報を報知する交差点運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号機のない交差点において、優先道に交差する非優先道側には、通常「止まれ」の交通標識が掲げられていると共に、道路上に停止線が描かれている。又、優先道が二車線の場合、センターラインが非優先道の延長線上で途切れることなく描かれている場合も有る。従って、非優先道から優先道に自車両を進入させようとする運転者は、交通標識、停止線やセンターラインを視認することで、現在走行している道路が非優先道であることを認識する。そして、交差点手前で徐行し、停止線で一時停止した後、安全を確認しながら優先道に進入する。
【0003】
この場合、車体前部にエンジンが搭載されているセダンタイプやワゴンタイプ等の車両は、車体前端と運転席との間が離れているため、フロントバンパが停止線にかかる位置で車両を一時停止させても、交差点の周囲に建物などの遮蔽物がある場合、この遮蔽物に遮られて優先道を走行する自転車、車両等を容易に認識することができない。このような見通しの悪い交差点から優先道に入ろうとする場合、運転者は徐行運転を行いながら車両の前端部を優先道に進入させ、見通しを確保し、優先道の状況を把握して安全を確認した後、自車両を優先道に合流させる。
【0004】
しかし、車両前端部を優先道に進入させる際に、優先道を走行する車両が、丁度、交差点を通過するような場合、出会い頭に衝突する可能性が高くなる。そのため、このような出会い頭の衝突を防止すべく、自車両を優先道に進入させようとする運転者に対し、安全に進入できるように、優先道側の情報を報知して、運転者を支援するようにした運転支援装置が種々提案されている。
【0005】
例えば特許文献1(特開2006−185137号公報)には、非優先道を走行中の自車両と優先道を走行中の相手車両との車車間通信により、自車両と相手車両との交差点の到達時間を計算し、自車両が交差点に進入した時点での相手車両の走行状況に応じて、衝突注意等の支援情報の報知タイミングや警報レベルを設定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した文献に開示されている技術では、例えば非優先道から優先道に進入するに際し、優先道側の見通しが良く、運転者は優先道の状況を目視により容易に把握できたとしても、優先道を走行する車両が近づいてくると、支援情報が逐一報知されるため、運転者が煩雑感を覚えてしまう不都合がある。
【0007】
又、優先道を走行中の車両が、交差点手前で、右左折したために自車両との衝突の危険性がなくなった場合であっても、ある距離以上離れるまでは、注意を促す支援情報が報知し続けられてしまう。このとき、非優先道から優先道に進入しようとする運転者は、優先道を走行する車両が近接していると思い込んでいるため、車両が来ないことによって誤報と認識してしまう不都合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、非優先道を走行する車両を優先道に進入させるに際し、当該車両の運転者に対して、必要な支援情報のみを報知させ、不要な支援情報は報知しないことで、運転者に与える煩雑感を軽減させると共に、誤報との認識を与えることなく、高い信頼性を得ることのできる交差点運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明による交差点運転支援装置は、運転者に支援情報を報知する情報報知手段と、車外情報発信源から取得した優先道側の移動体情報を解析する第1移動体情報解析手段と、車両に搭載された自律センサから取得した前記優先道側の移動体情報を解析する第2移動体情報解析手段と、前記優先道に交差する非優先道を走行中の前記車両の前記第2移動体情報解析手段で検出した前記優先道方向の移動体情報と前記第1移動体情報解析手段で検出した移動体情報とを比較し、前記両移動体情報が不一致の場合、交差点に死角があり見通しが悪いと判定し、一致した場合交差点の見通しが良いと判定する見通し判定処理手段と、前記見通し判定処理手段で前記交差点の見通しが悪いと判定した場合は死角領域に存在する移動体の情報を知らせる交差点支援情報を前記情報報知手段に出力し、前記交差点の見通しが良いと判定した場合は前記交差点支援情報は出力しない支援処理手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、好ましくは、前記支援処理手段は、前記車両が前記一時停止位置に到達した際、前記第1移動体情報解析手段で解析した最新の移動体情報に基づき前記優先道を走行している車両が非直進車であると判定した場合は、当該車両に関する情報を前記移動体情報から除外した支援情報を前記情報報知手段に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車外情報発信源から取得した優先道側の移動体情報と、車両に搭載されている自律センサから取得した前記優先道側の移動体情報とを比較し、両移動体情報が一致している場合、すなわち、見通しが良く運転者が目視により優先道側の移動体を容易に認識することができる場合は交差点支援情報が報知されないので、運転者に与える煩雑感を低減させることができる。一方、不一致の場合は交差点支援情報が報知されるので運転者に安心感を与えることでがきる。
【0012】
又、車外情報発信源から取得した優先道側の移動体情報と、車両に搭載されている自律センサから取得した前記優先道側の移動体情報とが不一致であっても、その後、優先道を走行する車両が非直進車であると判定された場合は、当該車両に関する情報を移動体情報から除外することにより、車両が交差点に進入するに際し、運転者が目視により優先道側の移動体の通過を確認する場合に、運転者の把握する移動体と支援情報から報知される移動体情報とが一致するため運転者に誤報との認識を与えることがなく、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】交差点運転支援装置を示す機能ブロック図
【図2】交差点進入運転支援処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図3】交差点進入運転支援処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図4】見通し確認処理ルーチンを示すフローチャート
【図5】非優先道から優先道に進入する車両に対して一時停止の支援情報を報知する状況の説明図
【図6】非優先道から優先道の見通しが悪い場合に支援情報を報知する状況の説明図
【図7】非優先道から優先道に進入する車両の運転者に対して支援情報を報知しない態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。本実施形態による交差点運転支援装置1は、車外から得られる情報や自車両に搭載されている各種センサ類22から得られる情報に基づき、自車両を非優先道から優先道に進入させる際に、当該優先道に安全に合流させるようにするための支援情報を運転者に報知するものである。
【0015】
この交差点運転支援装置1に制御装置(ECU)2が設けられている。このECU2は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、運転支援を実現する機能として、第1の移動体情報解析手段の一例である受信データ解析部11、第2の移動体情報解析手段の一例であるセンサ検出データ解析部12、一時停止判定処理部13、見通し判定処理手段としての見通し判定処理部14、支援処理手段としての支援処理部15を有している。又、この支援処理部15が情報報知手段としての情報提供装置23に接続されている。更に、車両にアダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)装置26が搭載されている場合、一時停止判定処理部13からの指令により、このACC装置26に停止制御(ブレーキ制御)を実行させることができる。
【0016】
受信データ解析部11は、送受信機21で受信した優先道側の情報、及び自車両が走行している非優先道の情報等の車外情報をデータ解析する。車外情報発信源としては、交差点から所定距離だけ離れた位置に設置されているインフラ設備(光ビーコンや電波ビーコン等のビーコン送受信機等)との路車間通信によって得られる情報、交差点付近を走行する車両との車車間通信によって得られる相手車両の保有する情報等がある。
【0017】
図6に示すように、本実施形態では、優先道101に対してT字状に交差されている非優先道102の交差点付近と、この交差点からやや離れた位置に第1、第2のインフラ設備103a,103bが各々設置されている態様が示されている。
【0018】
第1インフラ設備103aから得られる情報(第1インフラ情報)としては、優先道101を走行している車両、自転車、及び歩行者等の注意対象物の位置、速度、数に関する移動体情報がある。又、第2インフラ設備103bから得られる情報(第2インフラ情報)としては、上述した移動体に加え、優先道の線形情報、非優先道の線形情報、及びインフラ設備103bから一時停止位置104までの距離情報等がある。この一時停止位置104は非優先道102側の交差点の直前に設定されている。尚、路面上に一時停止線が描かれている場合、この一時停止線が一時停止位置104となる。
【0019】
この優先道101の線形情報は、優先道101の車線数、車幅、歩道の有無等に関する情報を有している。又、非優先道102の線形情報は路面状態(路面摩擦係数)に関する情報を有している。尚、第2インフラ設備103bは一時停止位置104から所定距離L1(図5参照)だけ離れた位置に設置され、又、第1インフラ設備103aは、一時停止位置104の近くに設置されているため、この第1インフラ設備103aから取得される移動体情報は、第2インフラ設備から取得される移動体情報よりも最新のものとなる。
【0020】
センサ検出データ解析部12は、車両に搭載されている各種センサ類22で検出した情報をデータ解析する。車両に搭載されている各種センサ類22としては、自律センサ、車両センサ類等がある。自律センサは自車両の走行方向の環境情報を検出するものであり、ミリ波レーダ、赤外線センサ、カメラ等がある。この自律センサで検出した情報に基づいて、前方遮蔽物及び先行車の有無や、交差点を通過する自転車、歩行者、車両等の注意対象物の数、速度、及び移動方向等、優先道101を移動する移動体情報を解析する。尚、自律センサとしてカメラが搭載されている場合は、このカメラによって認識した移動体をパターンマッチング処理することで、移動体の種別を瞬時に判別することができる。又、車両センサ類は、速度を検出する車速センサ、ブレーキの踏込みを検出するブレーキスイッチ等、車両の運転状態を検出するセンサ類が含まれている。
【0021】
一時停止判定処理部13は、各データ解析部11,12で解析したデータに基づき、自車両を安全な減速度で一時停止位置104に停止させることのできる距離(安全停止距離)L2(図5参照)を算出し、自車両がこの安全停止距離L2の位置に達しても、運転者がブレーキ操作を行わないときは一時停止を促す警報を情報提供装置23へ出力する。
【0022】
見通し判定処理部14は、一時停止判定処理部13にて自車両が安全停止距離L2に到達したと判定した場合、各データ解析部11,12で解析した第2インフラ情報の内の優先道101を移動する移動体情報と、各種センサ類22に設けられている自律センサで検出した前方の優先道101に存在する移動体情報とを比較し、第2インフラ情報による移動体情報と自律センサで検出した移動体情報とが一致しない場合、見通しの悪い交差点と判定し、一致した場合、見通しの良い交差点であると判定する。
【0023】
支援処理部15は、見通し判定処理部14で見通しの悪い交差点であると判定した場合、自車両が一時停止位置104で停車する前に、交差点支援情報を情報提供装置23を介して運転者に報知する。更に、自車両が一時停止位置104から優先道101に進入する際には進入支援情報を報知する。
【0024】
情報提供装置23は、カーナビゲーションシステムのモニタやスピーカを利用した画像音声表示装置、液晶モニタなどの画像表示装置、スピーカシステム等の音声表示装置、多数配列されたLED等の発光素子の点灯、点滅により文字情報等を表示させる発光表示装置、或いはブザーやウォーニングランプ等であり、画像情報、音声情報、文字情報等、視覚的或いは聴覚的な報知手段の内の1つ或いは2つ以上によって、運転者に優先道101に進入する際の支援情報(交差点支援情報、進入支援情報)を報知する。
【0025】
上述した一時停止判定処理部13、見通し判定処理部14、支援処理部15で実行される運転支援処理は、具体的には、図2、図3に示す交差点進入運転支援処理ルーチンに基づいて行われる。
【0026】
このルーチンは、非優先道102を走行する車両に搭載されている送受信機21が第2インフラ設備103bからの信号を受信したときに起動され、先ず、ステップS1,S2で、各データ解析部11,12での処理が実行される。すなわち、ステップS1では、第2インフラ設備103bから送信される第2インフラ情報を解析して、優先道101側の情報を取得する。優先道101側の情報としては、優先道101の線形情報、道路工事による片側通行等の規制情報、及び優先道101を走行する車両、自転車、歩行者等の注意対象物の位置、速度、数に関する移動体情報を取得する。
【0027】
そして、ステップS2へ進み、自車両の走行している非優先道102の線形情報から路面摩擦係数等の路面状態を取得し、更に、第2インフラ設備103bと一時停止位置104との間の安全停止距離L2を取得する。更に、自車両が第1インフラ設備103aを通過した際には、優先道101の状況に関する最新の道路情報及び移動体情報が取得される。尚、路面摩擦係数については、自律センサから推定した値を用いてもよい。
【0028】
次いで、ステップS3へ進み、ステップS3〜ステップS8において、一時停止判定処理部13での処理が実行される。ステップS3では、非優先道102の路面摩擦係数と車速センサで検出した車速とに基づき、自車両が安全な減速度を維持したまま一時停止位置104で停止させることのできる距離L2を算出する。
【0029】
又、ステップS4では、第2インフラ設備103bを通過する際に取得した第2インフラ設備103bと一時停止位置104との間の距離(インフラ間距離)L1と、車速センサで検出した車速と、自車両が第2インフラ設備103bを通過したときからの経過時間とに基づき、自車両と一時停止位置104との間の距離(到達距離)L3(図5参照)を算出する。
【0030】
そして、ステップS5へ進み、到達距離L3が、安全停止距離L2に到達したか否かを調べ、未だ到達していない場合は(L3>L2)、ステップS4へ戻り、到達距離L3が安全停止距離L2に達するまで待機する。
【0031】
その後、自車両の到達距離L3が安全停止距離L2に達すると(L3≦L2)、ステップS6へ進み、運転者が車両を停止させる意思があるか否かを調べる。車両を停止させる意思があるか否かは、例えば運転者がブレーキ操作を行っているか否かで判定することができる。ブレーキの動作状態を調べる際のパラメータとして代表的なものは、ブレーキペダルの踏込みでON動作するブレーキスイッチ、車速、ブレーキ圧センサで検出するブレーキ圧がある。そして、ブレーキスイッチがON、或いは演算周期毎に検出する車速の変化量(減速度)が所定値以上、或いはブレーキ圧が所定圧以上の場合、運転者がブレーキ操作を行っていると判定する。
【0032】
そして、運転者がブレーキ操作を行っていると判定した場合は、ステップS9へジャンプし、又、ブレーキ操作を行っていないと判定した場合は、ステップS7へ進む。ステップS7へ進むと、ACC装置26に対して停止制御を実行させる指令信号を出力した後、ステップS8へ進む。すると、ACC装置26は、制御モードを通常のACC制御(定速走行制御、或いは先行車と自車両との車間距離を適切に維持する追従走行制御)から、停止制御(ブレーキ制御)に切換える。この停止制御は、現在の車速と路面摩擦係数と到達距離L3とに基づいて制御が実行される。
【0033】
その後、ステップS8へ進むと、一時停止の注意を促す進入支援情報を支援処理部15を介して情報提供装置23へ出力し、ステップS9へ進む。すると、この情報提供装置23から、ブザー、音声等の聴覚的手段、或いはLEDランプの点滅等による視覚的手段により運転者に、自車両の一時停止を報知する。
【0034】
そして、ステップS6或いはステップS8からステップS9へ進むと、このステップS9〜S11で見通し判定処理部14での処理が実行される。
【0035】
先ず、ステップS9では、運転者から見た優先道101の見通しの程度を調べる見通し確認処理を実行する。この見通し確認処理は、図4に示す見通し確認処理ルーチンに従って実行される。ここで、見通し確認処理ルーチンについて説明する。
【0036】
このルーチンでは、先ず、ステップS21で、第1インフラ設備103aから取得した第1インフラ情報に基づき、優先道101を走行する自転車、歩行者、車両等の注意対象物の位置、速度、数をそれぞれ取得する。
【0037】
又、ステップS22では、自律センサで検出した走行方向の環境情報に基づき優先道101の移動体情報(注意対象物の位置、速度)を取得する。図6に示すように、自律センサの有する検出範囲が実線で示す領域であったとしても、交差点付近に建物などの遮蔽物105が立設されている場合、この遮蔽物105により本来の検出範囲が制限を受け、実際の視界範囲は破線で示す領域まで狭められ、同図にハッチングで示す領域に死角が発生し、その分見通しが悪くなる。
【0038】
例えば、同図に示すように、第1インフラ情報からの移動体情報として、自転車が2台、歩行者が2人の数情報と、交差点左に自転車が1台、交差点右側に自転車が1台と歩行者が2人の位置情報が取得されているとした場合、このうち、交差点右側の1台の自転車と1人の歩行者が死角に隠れている。従って、自律センサにて取得した移動体情報は、自転車が1台、歩行者が1人の数情報と、交差点左に自転車が1台、交差点右側に歩行者が1人の位置情報となる。
【0039】
次いで、ステップS23へ進むと、第1インフラ設備103aから得た移動体情報と、自律センサにて取得した移動体情報とを比較し、各情報が一致しているか否かを調べる。そして、一致している場合は見通しが良いと判定し、ステップS24へ進む。又、各情報の1つでも不一致の場合は見通しが悪いと判定し、ステップS25へ分岐する。
【0040】
ステップS24へ進むと、見通し可能フラグをセットし(見通し可能フラグ←1)、ステップS26へ進み、交差点支援情報の提供を不要とした後、交差点進入運転支援処理ルーチンのステップS10へ進む。一方、ステップS25へ進むと、見通し可能フラグをクリアし(見通し可能フラグ←0)、ステップS27へ進み、交差点支援情報の提供を必要とした後、交差点進入運転支援処理ルーチンのステップS10へ進む。従って、図6に示すような状況では、交差点の見通しが悪い(見通し可能フラグ←0)と判定される。
【0041】
交差点支援情報の提供が必要とされると、見通し判定処理部14から支援処理部15を介して情報提供装置23に対し交差支点支援情報が出力される。すると、この情報提供装置23から交差点支援情報に対応する音声が出力され、運転者に報知される。この交差点支援情報は、自車両が安全停止距離L2と一時停止位置104との間で減速している際に報知される。報知される交差点支援情報の内容は、死角に注意対象物が隠れているので出会い頭に注意する旨を単に報知するだけであっても良いが、死角に隠れている注意対象物の種類(車両、自転車、歩行者)、近づいてくる方向、その数等を具体的に報知するようにしても良い。
【0042】
死角に隠れている注意対象物の存在を示す交差点支援情報は、一時停止位置104で停止する前に運転者に報知されるので、交差点に近づくに従い慎重な運転となり、その結果、出会い頭の衝突事故を未然に防止することができる。一方、交差点の見通しが良い場合、すなわち運転者が交差点付近の状況を目視により容易に安全確認できる状況では、交差点支援情報が報知されないので、運転者が目視により確認済みの状況が再度報知されることがなく、運転者に与える煩雑感を軽減させることができる。
【0043】
交差点進入運転支援処理ルーチンのステップS10では、自車両が一時停止位置104に到達しているか否かを調べる。自車両が一時停止位置104に到達しているか否かは、到達距離L3が0±α(α:許容誤差)に達したか否かで判定する。そして、一時停止位置104に未達のときは、ステップS4へ戻る。一方、一時停止位置104に到達したと判定したときは、ステップS11へ進む。
【0044】
ステップS11では、見通し可能フラグの値を参照して見通しの良し悪しを確認する。そして、見通し可能フラグがセットされている場合(見通し可能フラグ=1)、見通しが良いと判定し、ステップS18へジャンプする。又、見通し可能フラグがクリアされている場合(見通し可能フラグ=0)、見通しが悪いと判定し、ステップS12へ進む。
【0045】
ステップS12へ進むと、このステップS12〜S19において、支援処理部15での処理が実行される。先ず、ステップS12では、優先道101側を走行している他車(優先車両)が交差点を直進しようとしているか否かを調べる。
【0046】
他車(優先車両)が交差点を直進しようとしているか否かは、第1インフラ設備103aから送信される最新の移動体情報に基づいて判定する。すなわち、この第1インフラ設備103aから送信される最新の移動体情報基づいて解析した結果、他車のターンシグナルランプが点滅しており、且つ交差点手前で減速している場合、当該他車は非直進であると判定する。或いは優先道101を走行する他車との車車間通信により、当該車両のターンシグナルスイッチがONで、且つ交差点手前で減速していることを検出した場合、当該他車は非直進であると判定する。
【0047】
そして、他車(優先車両)が直進と判定した場合は、第1インフラ設備103aから得た移動体情報中の車両に関するデータは変更することなく、ステップS17へ進む。又、他車(優先車両)の中に非直進の車両(非直進車)を検出した場合、ステップS13へ分岐し、当該非直進車を注意対象物のから除外した後、ステップS14へ進む。従って、図7に示すように、例えば、優先道101を右側から1台の他車(優先車両)が、左ターンシグナルランプを点滅させながら、減速して交差点に近づいてくる場合、当該他車(優先車両)は非直進であると判断し、注意対象物から除外する。この場合、後述するように、運転者に対して進入支援情報は報知されない。
【0048】
ステップS12或いはステップS13からステップS14へ進むと、自車両を非優先道102から優先道101へ安全に進入させることができるか否かの進入可否判定を行う。この進入可否判定は、第1インフラ設備103aから得られた移動体情報に基づき、優先道101を走行する車両、自転車、及び歩行者等の注意対象物の速度と、当該移動体情報を得たときからの経過時間とに基づき、自車両が優先道101に進入した場合に、この何れかの移動体と衝突する可能性が無い場合は、進入可と判定し、ステップS15へ進む。又、衝突する可能性が有る場合は、ステップS16へ進む。
【0049】
ステップS15へ進むと、車両進入の際の注意を促す進入支援情報は行わず、例えば、「左右の安全を確認後、進入してください」等の進入可能情報を音声で報知して注意を促した後、ステップS17へ進む。尚、この進入可能情報は提供しなくても良く、この場合、運転者が操作スイッチを操作して、進入可能情報の提供を受けるか否かを選択できるようにしても良い。
【0050】
一方、ステップS16へ進むと、進入支援情報を提供して、ステップS17へ進む。この進入支援情報は、基本的には、第1インフラ設備103aから得られた移動体情報に基づいているが、上述したステップS13で除外されている車両がある場合、当該車両についての情報は、この進入支援情報から除外される。
【0051】
その結果、自車両が一時停止位置104で一時停止した後、優先道101に進入しようとするに際し、進入支援情報の提供が必要とされている場合は、情報提供装置23から進入支援情報が出力され、運転者に報知される。この進入支援情報が音声の場合、優先道101の交差点に進入しようとしている注意対象物の種類(車両、自転車、歩行者)、近づいてくる方向、その数を報知する。その際、上述したように、ステップS13において非直進車が注意対象物から除外されているので、例えば当該非直進車が非優先道102に進入する場合には非直進車の近接を知らせる進入支援情報が報知されない。その結果、運転者が目視により確認できる車両に対しては進入支援情報が報知されないので、運転者に与える煩雑感を低減することができる。
【0052】
又、例えば自車両が一時停止位置104に近接する際に報知された交差点支援情報では、死角に存在する優先車両として報知されたが、自車両が一時停止位置104に到達したときには、当該優先車両が既に交差点の手前で右左折して非直進車と認定された場合は、当該非直進車が進入支援情報から除外されるため、自車両が一時停止位置104から優先道101に進入する際に、当該非直進車に関する情報は報知されない。その結果、自車両を一時停止位置104から優先道101へ進入させる際に、運転者が確認する優先道101を移動する注意対象物の数、種類と、進入支援情報から報知された注意対象物の数、種類とが一致するため、運転者に誤報との認識を与えることがなく、高い信頼性を得ることができる。
【0053】
更に、上述したステップS14で自車両を優先道101へ安全に進入させることができると判定された場合は、その安全である旨が報知されるため、運転者に安心感を与えることができる。
【0054】
そして、ステップS17へ進むと、自車両が交差点を通過したか否か、すなわち、自車両が優先道101に合流したか否かを調べ、未だ、交差点を通過していない場合は、ステップS14へ戻る。一方、自車両が交差点を通過したと判定した場合はステップS18へ進み、記憶されている各種データをクリア(初期化)し、ステップS19へ進み、ACC装置26のセットを許可してルーチンを抜ける。
【0055】
ACC装置26は、一時停止位置104で自車両を停止させた際に自動的に解除される。そして、ステップS19で、セット可となるまでは再セットすることができない。従って、非優先道102を走行する自車両が、先行車に対して追従走行制御が行われている場合であっても、一時停止位置104で停止した際にACC装置26が自動的に解除されるので、自車両が先行車に追従して優先道101に進入してしまうことはない。
【0056】
このように、本実施形態によれば、非優先道102から優先道101に進入するに際し、交差点近傍の遮蔽物105により死角が発生した場合には、当該死角に隠れている車両や自転車や歩行者等の注意対象物の存在を報知するようにしたので、運転者に安心感を与えることができると共に、交差点にさしかかる際にはより注意を払った運転となり、出会い頭の衝突事故を未然に防止することができる。
【0057】
又、非優先道102から優先道101へ進入するに際し、優先道101を直進する他車が交差点の手前で右左折した場合には、当該他車は注意対象物から除外されるので、当該他車に関する情報が運転者に報知されることがなく、運転者に誤報と認識されることがない。
【符号の説明】
【0058】
1…交差点運転支援装置、
11…受信データ解析部、
12…センサ検出データ解析部、
13…一時停止判定処理部、
14…見通し判定処理部、
15…支援処理部、
21…送受信機、
22…各種センサ類、
23…情報提供装置、
101…優先道、
102…非優先道、
103a…第1インフラ設備、
103b…第2インフラ設備、
104…一時停止位置、
105…遮蔽物、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2006−185137号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に支援情報を報知する情報報知手段と、
車外情報発信源から取得した優先道側の移動体情報を解析する第1移動体情報解析手段と、
車両に搭載された自律センサから取得した前記優先道側の移動体情報を解析する第2移動体情報解析手段と、
前記優先道に交差する非優先道を走行中の前記車両の前記第2移動体情報解析手段で検出した前記優先道方向の移動体情報と前記第1移動体情報解析手段で検出した移動体情報とを比較し、前記両移動体情報が不一致の場合見通しが悪いと判定し、一致した場合交差点の見通しが良いと判定する見通し判定処理手段と、
前記見通し判定処理手段で前記交差点の見通しが悪いと判定した場合は死角領域に存在する移動体の情報を知らせる交差点支援情報を前記情報報知手段に出力し、前記交差点の見通しが良いと判定した場合は前記交差点支援情報を出力しない支援処理手段と
を備えることを特徴とする交差点運転支援装置。
【請求項2】
前記支援処理手段は、前記交差点支援情報を、前記車両が前記交差点直前の一時停止位置に到達する前に前記情報報知手段へ出力する
ことを特徴とする請求項1記載の交差点運転支援装置。
【請求項3】
前記支援処理手段は、前記第1移動体情報解析手段で解析した最新の移動体情報に基づき前記優先道を走行している車両が非直進車であると判定した場合は、当該車両に関する情報を前記移動体情報から除外した進入支援情報を前記情報報知手段に出力する
ことを特徴とする請求項1記載の交差点運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−96009(P2011−96009A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249368(P2009−249368)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】