説明

人体検知装置

【課題】人体検知装置の検知精度を周囲温度が人体温度以上の高温の場合でも向上させること。
【解決手段】人体検知装置3は、赤外線検出部4と、人体の温度付近に定めた所定温度未満では高温であるほど増幅率が高い第一の増幅部(1) と、前記所定温度以上では高温であるほど増幅率が低い第二の増幅部(2) と、赤外線放射物体が人体であるか否かを判定する人体判定部9と、監視エリアの周囲温度を検出する温度測定部7と、検出した温度に応じて前記2つの増幅部を切り替える切替制御部8及びスイッチ回路5とを備える。周囲温度が人体温度以上の高温の場合も含めて、周囲温度によらず人体検知の感度は略一定となり、人体検知装置の検知精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から放射される赤外線を検出して監視エリア内における人体の有無を判定する人体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
差動型の焦電素子を用いて人体から放射される赤外線を検出して侵入者等を検知する人体検知装置が従来から知られている。この差動型の焦電素子は、監視エリア内で生じた温度差に応じた赤外線量を検知するセンサであるため、周囲温度が検知対象である人体の温度に近づくと焦電素子からの信号が小さくなり、人体等の検知精度が低下してしまう不都合があった。
【0003】
これに対し、下記特許文献1に記載の検知装置は、放射エネルギーを検出する光学センサーと、光学センサーの出力変化の大きさを識別する演算回路と、演算回路の出力により動作する警報回路と、周囲温度を検出する温度センサーと、温度センサーの出力に応じて周囲温度が高いときは演算回路又は警報回路の感度を高め、周囲温度が低いときは演算回路又は警報回路の感度を低下させる制御回路とを備えることで、上記人体検知装置とは異なり周囲温度によらず高い検知精度を実現するものとされている。
【特許文献1】特開昭53−66199 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の検知装置は、周囲温度が人体温度以下の場合のみを考慮したものであり、周囲温度が人体温度以上の場合は周囲温度が高くなるほど両者の温度差が大きくなるため検知精度の低下が生じていた。
【0005】
また、焦電素子の出力信号及び周囲温度を検出する温度センサーの出力信号をそれぞれA/D変換器を介してマイコン等に取り込み、デジタル信号処理を行って周囲温度に応じて焦電素子の出力信号の変化の検出感度を調整する人体検知装置もあるが、A/D変換器の消費電力は比較的大きく、電池駆動には適していなかった。
【0006】
本発明は、人体検知装置の検知精度を周囲温度によらず向上させることを目的としたものであり、特に周囲温度が人体温度以上の高温の場合でも人体検知装置の検知精度を向上させることを目的とする。
また、本発明の他の目的は人体検知装置の低消費電力化を図ることにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された人体検知装置は、
監視エリア内の赤外線放射物体により生じる赤外線変化量を検出し該赤外線変化量に応じた検出信号を出力する赤外線検出部と、
人体の温度付近に定められた所定温度に関し、前記所定温度未満では高温であるほど増幅率が高い温度特性にて前記検出信号を増幅して出力する第一の増幅部と、
前記所定温度以上では高温であるほど増幅率が低い温度特性にて前記検出信号を増幅して出力する第二の増幅部と、
前記検出信号に基づいて前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判定する判定部と、
前記監視エリアの周囲温度に応じた出力信号を出力する温度測定部と、
前記温度測定部の前記出力信号を入力され、前記周囲温度が前記所定温度未満であれば前記赤外線検出部からの前記検出信号を前記第一の増幅部により増幅して前記判定部に入力する経路を選択し、前記周囲温度が前記所定温度以上であれば前記赤外線検出部からの前記検出信号を前記第二の増幅部により増幅して前記判定部に入力する経路を選択する切替部と、
を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載された人体検知装置は、請求項1に記載の人体検知装置において、
前記切替部が、
前記第一の増幅部及び前記第二の増幅部の夫々から増幅された前記検出信号を入力されて、スイッチの切り替えにより前記第一の増幅部からの前記検出信号又は前記第二の増幅部からの前記検出信号のいずれか一方を前記判定部に入力して前記経路を構成するスイッチ回路を含むことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載された人体検知回路は、請求項1記載の人体検知回路において、
前記切替部が、
前記赤外線検出部からの前記検出信号を入力されて、スイッチの切り替えにより該検出信号を前記第一の増幅部又は前記第二の増幅部のいずれか一方に入力して前記経路を構成するスイッチ回路を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載された人体検知装置は、請求項1乃至請求項3に記載の人体検知装置において、
前記判定部が、前記検出信号のレベルが予め定めた所定レベルを越えると前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判別するために予め定められた判定期間の計時を開始する計時部を含み、
前記切替部は、前記計時部の計時中は前記経路の切替を禁止することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載された人体検知装置は、請求項1乃至請求項3に記載の人体検知装置において、
前記判定部が、前記検出信号のレベルと予め定めた所定レベルとを比較して前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判定し、
前記切替部は、前記検出信号のレベルが前記所定レベルを越えているときは前記経路の切替を禁止することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の人体検知装置は、
監視エリア内の赤外線放射物体により生じる赤外線変化量を検出し該赤外線変化量に応じた検出信号を出力する赤外線検出部と、
人体の温度付近に定められた所定温度に関し、前記所定温度未満では高温であるほど増幅率が高い温度特性にて前記検出信号を増幅して出力する第一の増幅部と、
前記所定温度以上では高温であるほど増幅率が低い温度特性にて前記検出信号を増幅して出力する第二の増幅部と、
前記第一又は第二の増幅部から入力される増幅された検出信号を所定レベルと比較することにより赤外線放射物体によるレベルの変化があるか否かを判別して判別結果に応じた出力信号を出力するレベル検出部と、前記レベル判別部から入力される出力信号に基づいて人体の有無を判定することにより判定結果に応じた出力信号を出力する人体判定部と、前記人体判定部による人体検知の判定に必要な時間として予め定められた所定時間を計時する計時部とからなり、前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判定する判定部と、
前記監視エリアの周囲温度を測定し周囲温度が前記所定温度以上であるか否かを表す出力信号を出力する温度測定部と、
前記周囲温度が前記所定温度未満であれば前記赤外線検出部からの前記検出信号を前記第一の増幅部により増幅して前記判定部に入力する経路を構成し、前記周囲温度が前記所定温度以上であれば前記赤外線検出部からの前記検出信号を前記第二の増幅部により増幅して前記判定部に入力する経路を構成するスイッチ回路と、前記温度測定部から出力される周囲温度が所定温度以上であるか否かを表す出力信号と前記計時部から出力される計時中か否かを表す出力信号とが入力されてこれらの信号に基づき前記スイッチ回路へ制御信号を出力する切替制御部と、からなる切替部とを備えることにより、
所定温度を境に第一及び第二の増幅部の温度特性を合成し、周囲温度が所定温度未満のときは周囲温度が高くなるほど赤外線検知信号の増幅率が高く、周囲温度が所定温度と一致するときに増幅率は最高となり、周囲温度が所定温度を超えているときは周囲温度が高くなるほど増幅率が低いという温度特性を実現でき、これにより、周囲温度が人体温度以上の高温の場合も含めて、周囲温度によらず人体の検知感度を略一定として人体の検知精度を向上させることができ、さらに、人体判定中又は赤外線放射物体検知時にはスイッチ回路における切替動作を禁止してレベル判別部へ入力される増幅信号に切替動作による乱れが生じないように構成することができるので、人体検知の信頼性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の人体検知装置によれば、人体温度と略一致する所定温度を境に第一の増幅部と第二の増幅部の温度特性が合成される。すなわち、周囲温度が所定温度未満のときは周囲温度が高くなるはど赤外線検知信号の増幅率は高くなり、周囲温度が所定温度と一致するときに増幅率は最高となり、周囲温度が所定温度を超えているときは周囲温度が高くなるほど増幅率は低くなる。このため、周囲温度が人体温度以上の高温の場合も含めて、周囲温度によらず人体検知の感度は略一定となり、人体検知装置の検知精度を向上させることができる。
【0014】
請求項2記載の人体検知装置によれば、特に、周囲温度が所定温度(例えば人体温度)以上か否かを基準として、第一の増幅部からの増幅された検出信号と、第二の増幅部からの増幅された検出信号とをスイッチ回路で切り替えることができる。すなわち、上記切り替え動作によって、検出信号が赤外線検出部からレベル判別部に伝わる電気的な経路を、周囲温度が所定温度未満のときは第一の増幅部を経由する経路、周囲温度が所定温度以上のときは第二の増幅部を経由する経路、というように切り替えることができ、これによって選択された増幅後の検出信号を判定部へ出力することができる。
【0015】
請求項3記載の人体検知装置によれば、特に、周囲温度が所定温度(例えば人体温度)以上か否かを基準として、赤外線検出部から出力された検出信号を、第一の増幅部又は第二の増幅部にスイッチ回路で切り替えることができる。すなわち、上記切り替え動作によって、検出信号が赤外線検出部からレベル判別部に伝わる電気的な経路を、周囲温度が所定温度未満のときは第一の増幅部を経由する経路、周囲温度が所定温度以上のときは第二の増幅部を経由する経路、というように切り替えることができ、これによって選択された増幅後の検出信号を判定部へ出力することができる。
【0016】
請求項4及び請求項5記載の人体検出装置によれば、特に、人体判定中又は赤外線放射物体検知時は、スイッチ回路における切替動作を禁止して、レベル判別部へ入力される増幅信号に切替動作による乱れが生じないようにできるので,人体検知の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するために特許出願人が出願時点で最良と思う本発明の実施の形態を説明する。
1.第1実施形態の構成(図1〜図3)
図1は本実施形態に係る人体検出装置3の構成を示すブロック図であり、図2は第一の増幅部(1) の温度特性のグラフを示す図であり、図3は第二の増幅部(2) の温度特性のグラフを示す図である。
【0018】
[赤外線検出部4]
赤外線検出部4は、監視エリア内の赤外線放射物体により生じる赤外線変化量を検出し、この赤外線変化量に応じた赤外線検出信号を後述する第一の増幅部(1) 及び第二の増幅部(2) へ出力する。
【0019】
赤外線検出部4は、例えば差動型の焦電センサ及び集光板等で構成でき、この場合、集光板が赤外線を焦電センサに集め、焦電センサが赤外線変化量に応じたレベルの赤外線検出信号を出力する。ここで、差動型の焦電センサは、複数の焦電素子によって、監視エリア内の空間的な温度差を微分回路による時間的な変化から赤外線量の変化として検出することができる。
【0020】
また、上記の原理から、赤外線放射物体が監視エリアを横切る方向が逆になると、赤外線検出信号のレベルの正負は逆になる。
【0021】
[第一の増幅部(増幅部(1) )]
増幅部(1) は、赤外線検出部4からの赤外線検出信号を入力してこれを増幅し、その増幅結果を第一の増幅信号として後述するスイッチ回路5へ出力するものであり、少なくとも所定温度以下では周囲温度が高くなるはど増幅率が高くなる温度特性を有している。
【0022】
増幅部(1) は、例えばオペアンプ、抵抗器、サーミスタ、コンデンサを含む増幅回路として構成でき、サーミスタは温度上昇とともに抵抗値が減少する温度特性を示し、上記増幅回路の増幅率は抵抗値により決まるので、サーミスタを温度により抵抗値が変化する可変抵抗器と見立てれば、入力側の抵抗にサーミスタを直列に接続することにより、温度が高くなるほど増幅率が高くなる前記特性の増幅器とすることができる。
【0023】
前記所定温度は、本例では略人体温度である35℃等に設定し、抵抗器の選定により所望の増幅率を得ることができる。図2は、増幅部(1) の温度特性を示す。図中のTは前記所定温度(例えば35℃)である。
なお、オペアンプに代えてトランジスタを含む差動増幅回路等で構成しても良い。
【0024】
[第二の増幅部(増幅部(2) )]
増幅部(2) は、赤外線検出部4からの赤外線検出信号を入力してこれを増幅し、その増幅結果を第二の増幅信号として後述するスイッチ回路5へ出力するものであり、少なくとも所定温度以上では周囲温度が高くなるはど増幅率が低くなる温度特性を有している。
【0025】
増幅部(2) は、例えばオペアンプ、抵抗器、サーミスタ、コンデンサを含む増幅回路として構成でき、サーミスタは温度上昇とともに抵抗値が減少する温度特性を示し、上記増幅回路の増幅率は抵抗値により決まるので、サーミスタを温度により抵抗値が変化する可変抵抗器と見立てれば、負帰還側の抵抗にサーミスタを直列に接続すれば、温度が高くなるほど増幅率が低くなる前記特性の増幅器とすることができる。
【0026】
前記所定温度は、本例では略人体温度である35℃等に設定し、抵抗器の選定により所望の増幅率を得ることができる。図3は、増幅部(2) の温度特性を示す。図中のTは前記所定温度(例えば35℃)である。
なお、オペアンプに代えてトランジスタを含む差動増幅回路等で構成しても良い。
【0027】
[スイッチ回路5](切替部の一構成部分)
スイッチ回路5は、2入力1出力のリレースイッチで構成する。入力側には増幅部(1) 及び増幅部(2) が接続され、出力側には後述するレベル判別部6が接続される。更に、後述する切替制御部8が接続されて切替制御部8から制御信号が入力される。
【0028】
この制御信号は、後述するように周囲温度が人体温度未満のときはLレベル、人体温度以上のときはHレベルに変化する。スイッチ回路5は、制御信号に応じてスイッチを切り替え、入力側からの信号のいずれか一方を出力側へ選択出力する。すなわち、Lレベルの制御信号が入力されると増幅部(1) が接続された入力側と出力側とを結んで第一の増幅信号をレベル判別部6に導く電気的経路を形成し、Hレベルの制御信号が入力されると増幅部(2) が接続された入力側と出力側とを結んで第二の増幅信号をレベル判別部6に導く電気的経路を形成する。
【0029】
[レベル判別部6](判定部の一構成部分)
レベル判別部6は、前記スイッチ回路5から第一の増幅信号又は第二の増幅信号が入力され、これらの信号を所定レベルと比較することにより赤外線放射物体によるレベルの変化があるか否かを判別し、判別結果に応じた出力信号を後述する人体判定部9へ出力する。この所定レベルは、赤外線検出部4が人体を検出したときに増幅信号が示すレベルを雑音等によるレベルと判別できるように事前の実験により予め定めておく。
【0030】
レベル判別部6はコンパレ一夕を含む比較回路(アナログ回路)で構成できる。この部分をアナログ回路(消費電流数μA)で構成することにより、検知信号をA/D変換(消費電流数mA)してマイコンに入力する必要が無くなり、人体検知装置の低消費電力化を図ることができる。
【0031】
本実施形態において、レベル判別部6は2つの比較回路を含み、各比較回路の出力が後述する人体判定部9へ出力される。一方の比較回路は、所定レベルを正レベル(V+)に定めたものであり、増幅信号が所定レベル以上になると赤外線放射物体検知を表すHレベルの信号を出力し、そうでない場合はLレベルの信号を出力する。他方の比較回路は、所定レベルを負レベル(V−)に定めたものであり、増幅信号が所定レベル以下になると赤外線放射物体検知を表すHレベルの信号を出力し、そうでない場合はLレベルの信号を出力する。
【0032】
[温度測定部7]
温度測定部7は、周囲温度を測定し、周囲温度が前記所定温度(35℃)以上であるか否かを表す信号を後述する切替制御部8へ出力する。本例の温度測定部7は、サーミスタ及びコンパレ一タを含む比較回路(アナログ回路)で構成し、レベル判別部6と同様に、人体検知装置の低消費電力化を図る。サーミスタは周囲温度に応じたレベルの信号を比較回路へ出力し、比較回路は、この信号のレベルが前記所定温度に相当するレベル以上であればHレベルの出力信号を出力し、そうでなければLレベルの出力信号を出力する。
【0033】
[切替制御部8](切替部の一構成部分)
切替制御部8には、前記温度測定部7から周囲温度が所定温度以上であるか否かを表す出力信号が入力されるとともに、後述する計時部10から計時中か否かを表す出力信号が入力され、切替制御部8は、これらの信号に基づいて前記スイッチ回路5へ制御信号を出力する。
【0034】
具体的には、温度測定部7からの信号を周期的に監視し、温度測定部7から周囲温度が所定温度未満であることを表すLレベルの信号が入力されるとスイッチ回路5へ第一の増幅信号を選択すべきことを表すLレベルの信号を出力し、温度測定部7から周囲温度が所定温度以上であることを表すHレベルの信号が入力されるとスイッチ回路5へ第二の増幅信号を選択すべきことを表すHレベルの信号を出力する。
【0035】
計時部10から計時中を表すHレベルの信号が入力されているときは、温度測定部7からの信号を監視しないようにする。すなわち、計時部10が計時している間は、周囲温度による制御信号の変更を禁止し、これによりスイッチ回路5による電気的な経路の切り替えも行わない。
【0036】
[人体判定部9](判定部の一構成部分)
人体判定部9には、前記レベル判別部6から、赤外線放射物体によるレベルの変化の有無についての判別結果に応じた出力信号が入力されるとともに、計時部10からは計時中か否かを表す信号が入力される。人体判定部9は、これらの信号に基づいて人体の有無を判定し、判定結果に応じた出力信号を後述する出力部11へ出力する。また、判定動作に伴い計時部10の計時開始・計時停止を制御する。
【0037】
判定は、赤外線検出信号の変化パターンを検出することにより行い、所定時間内に正レベル側の変化が複数回現れた場合又は所定時間内に負レベル側の変化が複数回現れた場合に人体を検出したものとする。具体的には次の処理を行う。
【0038】
前記レベル判別部6から赤外線放射物体検知を表すHレベルの出力信号が入力されると、この信号が正レベル側の変化によるものか負レベル側の変化によるものかを識別可能に保持するとともに、計時部10に計時開始を指示する。計時部10が所定時間を計時している間に、保持している変化と方向が一致するHレベルの信号がレベル判別部6から再び入力されると、人体検知と判定して出力部11へHレベルの信号(人体検知信号)を出力するとともに計時部10に計時停止を指示し、保持した信号を消去する。人体が検知されないまま計時部10が所定時間を計時し終えると、保持した信号を消去して判定を終了する。
【0039】
[計時部10](判定部の一構成部分)
計時部10は、人体検知の判定に必要な時間として予め定められた所定時間を計時するタイマーである。計時部10は、前記人体判定部9により計時開始を指示されて所定時間の計時を開始する。計時部10は、所定時間を計時し終えた場合及び人体判定部9に計時停止を指示された場合に計時を停止する。計時部10は、計時中はHレベルの信号を、非計時中はLレベルの信号を前記人体判定部9及び前記切替制御部8へ出力する。
【0040】
[出力部11]
出力部11は、前記人体判定部9からの人体検知信号を受けてこれを外部に送出する回路で構成される。
【0041】
[電源12]
電源12は、人体検知装置に電力を供給する電池で構成される。電池とすることで外部電源12と接続する電源コードが不要となり、人体検出装置3の設置性が向上する。
【0042】
以上説明した本人体検知装置の構成において、赤外線検出部4が出力する検出信号に基づいて赤外線放射物体が人体であるか否かを判定する判定部として機能する部分は、前記レベル判別部6と、前記人体判定部9と、前記計時部10とによって構成される。また、温度測定部7の検出結果に基づいて、2つの増幅部を適宜に切り替えて適宜の増幅信号を判定部に入力させる切替部として機能する部分は、前記スイッチ回路5と、前記切替制御部8とによって構成される。
【0043】
また、上記機能上の構成の区分に係わらず、実際には、切替制御部8と、人体判定部9と、計時部10とはマイコン、IC等によって構成することができる。
【0044】
2.第1実施形態の作用(図4)
図4は本実施形態に係る人体検出装置3の作用を示すタイミングチャートであり、以下の各信号のタイミングを示してある。
赤外線検出部4が出力する赤外線検出信号
レベル判別部6の出力信号(+及び−)
計時部10の出力信号
切替制御部8が温度測定部7の出力信号を監視するタイミングを示す監視タイミング信号
温度測定部7の出力信号
切替制御部8の出力信号である制御信号
人体判定部9の出力信号(人体検知信号)
以下、図4の時間軸(横軸)においてt1等の符号でタイミングを示すことにより本装置による作用を時系列的に説明する。
【0045】
[〜tl(赤外線放射物体不存在、周囲温度35℃未満)]
監視エリア内に赤外線放射物体が存在しない状態では、赤外線検知信号は0に近いレベルとなり、レベル判別部6は赤外線放射物体の不在を表すLレベルの信号を出力する。また、このとき、計時部10は非計時中を表すLレベルの信号を出力している。
【0046】
温度測定部7は、周囲温度を常に計測しており、切替制御部8は、所定のタイミングで温度測定部7の出力信号を監視している。そして、周囲温度が35℃未満であり、温度測定部7がLレベルの信号を出力しているとき、切替制御部8は、第一の増幅信号の選択出力を表すLレベルの制御信号を出力しており、この制御信号を受けたスイッチ回路5は第一の増幅信号をレベル判別部6へ出力する状態となっている。
【0047】
[tl〜t3(周囲温度上昇)]
周囲温度が上昇し35℃以上になると、温度測定部7の出力信号は、LレベルからHレベルへと変化する。図4においては、このタイミングをt1で示している。
【0048】
切替制御部8は、この直後の監視タイミングt2において、温度測定部7の出力信号がHレベルであることに応じて第二の増幅信号の選択出力を表すHレベル制御信号をスイッチ回路5に出力する。
【0049】
この信号を受けたスイッチ回路5は、スイッチ動作により第二の増幅信号をレベル判別部6へ出力する状態へと切り替わる。
【0050】
[t3〜t4(赤外線放射物体侵入、周囲温度下降)]
監視エリア内に赤外線放射物体が侵入して赤外線検出部4が出力する赤外線検出信号に大きなレベル変化が生じると、レベル判別部6は人体判定部9へ赤外線放射物体検知を意味するHレベルの信号を出力する。図4においてはこのタイミングをt3で示している。
【0051】
この信号を受けた人体判定部9は正レベルの変化が生じたという情報を保持するとともに計時部10へ計時を開始する指令を送信する。指令を受信した計時部10は計時を開始し、計時中はHレベルの信号を人体判定部9及び切替制御部8へ出力する。
【0052】
以降、計時部10が計時している間は、切替制御部8は人体判定中であるとして温度測定部7の出力信号を無視する(スイッチ回路5による切替を禁止する)。図4の例では、タイミングt4にて周囲温度が35℃未満に下降し温度測定部7の出力がLレベルに変化したが、切替制御部8はこれを無視している。
【0053】
[t5〜t6(タイムアップ)]
図4の例では、タイミングt3以降、赤外線検知信号に大きな変化は現れないまま計時部10は所定時間の計時中を終え、タイミングt5にて計時部10の出力信号はLレベルに変化している。人体判定部9は、計時終了を検知すると保持していた情報を消去して人体判定を終了する。また、切替制御部8は、計時終了を検知すると温度測定部7の監視を再開する。
【0054】
切替制御部8は、監視を再開した直後のタイミングt6にて温度測定部7の出力信号がLレベルであることに応じてスイッチ回路5へ第一の増幅信号の選択出力を表すLレベルの信号を出力し、この信号を受けたスイッチ回路5は、第一の増幅信号をレベル判別部6へ出力する状態に切り替わる。
【0055】
[t7〜t8(周囲温度上昇)]
再び周囲温度が上昇しタイミングt7にて35℃以上になると、温度測定部7の出力信号はLレベルからHレベルへと変化し、この直後の監視タイミングt8にて切替制御部8はHレベルの信号をスイッチ回路5に出力し、この信号を受けたスイッチ回路5は第二の増幅信号をレベル判別部6へ出力する状態へと切り替わる。
【0056】
[t9〜tlO (赤外線放射物体侵入、周囲温度下降)]
タイミングt9にて再び監視エリア内に赤外線放射物体が侵入して赤外線検出信号にしきい値V+を越える(上回る)正レベルの大きな変化が生じると、レベル判別部6は人体判定部9へ赤外線放射物体検知を意味するHレベルの出力信号(+)を出力する。
【0057】
この信号を受けた人体判定部9は正レベルの変化が生じたという情報を保持するとともに、計時部10へ計時を開始する指令を送信する。指令を受信した計時部10は、計時を開始してHレベルの信号を人体判定部9及び切替制御部8へ出力し始める。
【0058】
その後、タイミングt10にて周囲温度が35℃未満に下降して温度測定部7の出力がLレベルに変化するが、計時部10が計時中、すなわち人体判定中であるので切替制御部8はこれを無視する(スイッチ回路5による切替を禁止する)。
【0059】
[tll 〜t13 (人体検知)]
タイミングt11にて赤外線放射物体の移動により赤外線検出信号にしきい値V−を越える(下回る)負レベルの大きな変化が生じ、レベル判別部6から人体判定部9へ赤外線放射物体検知を意味するHレベルの出力信号(−)が出力されるが、人体判定部9は保持している情報と一致しないので人体検知の判定は継続される。
【0060】
タイミングt12にて赤外線放射物体の移動により再び赤外線検出信号に正レベルの大きな変化が生じ、レベル判別部6から人体判定部9へ赤外線放射物体検知を意味するHレベルの出力信号(+)が出力されると、人体判定部9は保持している情報と一致したことにより人体検知と判定する。
【0061】
人体判定部9は人体検知信号を出力部11に出力し、この信号を受けた出力部11は外部へ人体検知信号を出力する。また、人体判定部9は計時部10へ計時終了の指令を送信し、この指令を受けた計時部10は計時を終了する。更に、人体判定部9は保持していた情報を消去する。
【0062】
切替制御部8は、計時部10が非計時中になると温度測定部7の監視を再開し、再開直後の監視タイミングt13にて温度測定部7の出力信号がLレベルであることに応じてスイッチ回路5へ第一の増幅信号の選択出力を表すLレベルの信号を出力し、この信号を受けたスイッチ回路5は、第一の増幅信号をレベル判別部6へ出力する状態に切り替わる。.
【0063】
3.他の実施形態
第1実施形態では、スイッチ回路5を2入力1出力のスイッチ回路として説明したが、スイッチ回路5として1入力2出力のスイッチ回路を採用し、入力側に赤外線検出部4を接続し、出力側に増幅部(1) 及び増幅部(2) を接続しても良い。この場合、スイッチ回路5は、スイッチを切り替えることにより赤外線検出部4からの赤外線検出信号を増幅部(1) 又は増幅部(2) のいずれか一方に導く電気的経路を形成する。すなわち、スイッチ回路5は、切替制御部8から第一の増幅信号を選択すべきことを表すLレベルの信号を入力されると入力側と増幅部(1) に接続された出力側とをむすび、切替制御部8から第二の増幅信号を選択すべきことを表すHレベルの信号を入力されると入力側と増幅部(2) に接続された出力側とをむすぶ。また、増幅部(1) 及び増幅部(2) の出力はORゲートを介してレベル判別部6に入力する。
【0064】
また、人体判定部9が人体判定中であるか否かを切替制御部8が判断するために、計時部10の出力信号を切替制御部8に入力する例を示したが、人体判定部9が人体判定中であるか否かを表す信号を出力し、切替制御部8がこの信号の入力によって判断しても良い。
【0065】
さらに、計時部10による計時中は人体判定中として切替制御部8による切替制御を禁止するようにしたが、レベル判別部6が赤外線放射物体を検知しているときに切替制御を禁止するようにしても良い。この場合、切替制御部8は計時部10からの信号に代えてレベル判別部6からの信号を入力し、この信号がHレベルであるときには温度測定部7からの信号を監視しないようにする。
【0066】
4.作用効果
本発明の上記各実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
人体温度と略一致する所定温度を境に増幅部(1) と増幅部(2) の温度特性が合成される。すなわち、周囲温度が所定温度未満のときは周囲温度が高くなるほど赤外線検知信号の増幅率は高くなり、周囲温度が所定温度と一致するときに増幅率は最高となり、周囲温度が所定温度を超えているときは周囲温度が高くなるほど増幅率は低くなる。
【0067】
従って、本人体検知装置3によれば、周囲温度が人体温度以上の高温の場合も含めて、周囲温度によらず人体の検知感度は略一定となり、人体の検知精度を向上させることができる。
【0068】
さらに、人体判定中又は赤外線放射物体検知時は、スイッチ回路5における切替動作を阻止して、レベル判別部6へ入力される増幅信号に切替動作による乱れが生じないようにすることができるので、人体検知の信頼性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る人体検出装置3の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は同実施形態における第一の増幅部(1) の温度特性のグラフを示す図である。
【図3】図3は同実施形態における第二の増幅部(2) の温度特性のグラフを示す図である。
【図4】図4は同実施形態に係る人体検出装置3のタイミングチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
(1) …第一の増幅部
(2) …第二の増幅部
3…人体検知装置
4…赤外線検出部
5…スイッチ回路
6…レベル判別部
7…温度測定部
8…切替制御部
9…人体判定部
10…計時部
11…出力部
12…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリア内の赤外線放射物体により生じる赤外線変化量を検出し該赤外線変化量に応じた検出信号を出力する赤外線検出部と、
人体の温度付近に定められた所定温度に関し、前記所定温度未満では高温であるほど増幅率が高い温度特性にて前記検出信号を増幅して出力する第一の増幅部と、
前記所定温度以上では高温であるほど増幅率が低い温度特性にて前記検出信号を増幅して出力する第二の増幅部と、
前記検出信号に基づいて前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判定する判定部と、
前記監視エリアの周囲温度に応じた出力信号を出力する温度測定部と、
前記温度測定部の前記出力信号を入力され、前記周囲温度が前記所定温度未満であれば前記赤外線検出部からの前記検出信号を前記第一の増幅部により増幅して前記判定部に入力する経路を選択し、前記周囲温度が前記所定温度以上であれば前記赤外線検出部からの前記検出信号を前記第二の増幅部により増幅して前記判定部に入力する経路を選択する切替部と、
を備えたことを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記切替部は、
前記第一の増幅部及び前記第二の増幅部の夫々から増幅された前記検出信号を入力されて、スイッチの切り替えにより前記第一の増幅部からの前記検出信号又は前記第二の増幅部からの前記検出信号のいずれか一方を前記判定部に入力して前記経路を構成するスイッチ回路を含む請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項3】
前記切替部は、
前記赤外線検出部からの前記検出信号を入力されて、スイッチの切り替えにより該検出信号を前記第一の増幅部又は前記第二の増幅部のいずれか一方に入力して前記経路を構成するスイッチ回路を含む請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記検出信号のレベルが予め定めた所定レベルを越えると前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判別するために予め定められた判定期間の計時を開始する計時部を含み、
前記切替部は、前記計時部の計時中は前記経路の切替を禁止する請求項1乃至請求項3に記載の人体検知装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記検出信号のレベルと予め定めた所定レベルとを比較して前記赤外線放射物体が人体であるか否かを判定し、
前記切替部は、前記検出信号のレベルが前記所定レベルを越えているときは前記経路の切替を禁止する請求項1乃至請求項3に記載の人体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−114016(P2007−114016A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304709(P2005−304709)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】