説明

人物特定システム、人物特定装置、人物特定方法および人物特定プログラム

【課題】人物を特定できるレベルの顔の映像を容易に抽出できる人物特定システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る人物特定システムは、センター処理装置300が、カメラ100から受信した映像データを蓄積する映像蓄積部301と、蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理部303と、蓄積された映像データと地図上での座標データとから映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出エンジン305と、軌跡上の移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出エンジン304とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカメラに撮影された映像の処理に関し、特に撮影された映像から人物を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
顔認識技術により、カメラに撮影された顔からその人物を特定することが既に可能である。そのような技術を応用した防犯システムなどが、たとえば空港、駅、銀行、繁華街などに導入されている。また、顔認識システムは市販のデジタルカメラや携帯電話にも採用され、ユーザの認証や焦点位置の検出などに使われている。
【0003】
カメラによって撮影された人物を追尾もしくは特定などする技術として、たとえば以下のような文献がある。特許文献1には、複数のカメラで撮影された画像から同一人物を検出し、その人物の動線情報を収集するという技術が開示されている。特許文献2には、自律的に動作する複数のカメラで撮影された画像から同一人物を示す特徴量を検出して特定の人物を追尾する方法について開示されている。
【0004】
特許文献3には、自律的に動作する複数のカメラが移動体の移動速度および方向についての情報を交換して特定の移動体を追尾する方法について開示されている。特許文献4には、複数のカメラで撮影された画像から動体の位置および位置精度についての情報を交換し、それらが同一の動体である場合にそれらの情報を統合するという技術について開示されている。特許文献5には、カードなどを持つユーザの軌跡情報を記録するという技術について開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−200357号公報
【特許文献2】特開2004−072628号公報
【特許文献3】特開2006−086591号公報
【特許文献4】特開2006−245795号公報
【特許文献5】特開平11−027751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人物の映像が監視カメラに撮影されていても、該監視カメラの設置場所やアングルなどのような条件によっては、該人物の特定が困難である場合がある。顔認識の技術によって人物を特定できるレベルの顔の映像を抽出することは可能ではあるが、抽出できるのは対象人物がカメラの正面に顔を向けている場合だけである。対象人物が、その他の方向に顔を向けている場合には、映像を抽出することはできない。
【0007】
人物の特定をしやすくするには、監視カメラの設置台数を増やし、対象となる人物が可能な限り長い時間、多くの角度から撮影されているようにすることが望ましい。しかしながら、設置されているカメラの数が多いほど、撮影されて記録されている映像は膨大なものになる。そこから人物を特定できるレベルの顔の映像を探し出すためには、それらの映像を人間が全部見る必要があるので、膨大な労力を要する。
【0008】
さらに、設置されているカメラの数が多いほど、コストがかかり、大量の映像データを常時伝送し続けることによってネットワークに負荷がかかるという問題がある。ちなみに特許文献1〜5では、カメラに撮影された映像から人物の動きを検出し追尾することはできるが、そこから人物を特定するものではない。
【0009】
本発明の目的は、現実的に可能な設置台数のカメラで、人物の特定が難しい多量の映像の中から人物を特定できるレベルの顔の映像を容易に抽出できる人物特定システム、人物特定装置、人物特定方法および人物特定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る人物特定システムは、複数のカメラと、各カメラにより撮影された映像データを受信するセンター処理装置とを備えた人物特定システムであって、センター処理装置が、カメラから受信した映像データを蓄積する映像蓄積部と、蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理部と、蓄積された映像データと地図上での座標データとから映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出エンジンと、軌跡上の移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出エンジンとを有することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る人物特定装置は、複数のカメラによって撮影された映像データを受信する人物特定装置であって、カメラから受信した映像データを蓄積する映像蓄積部と、蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理部と、蓄積された映像データと地図上での座標データとから映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出エンジンと、軌跡上の移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出エンジンとを有することを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る人物特定方法は、複数のカメラとカメラにより撮影された映像データを受信するセンター処理装置とからなるカメラネットワークによって撮影された人物を特定する方法であって、カメラから受信した映像データを蓄積する映像蓄積工程と、蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理工程と、蓄積された映像データと地図上での座標データとから映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出工程と、軌跡上の移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出工程とを有することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る人物特定プログラムは、複数のカメラとカメラにより撮影された映像データを受信するセンター処理装置とからなるカメラネットワークによって撮影された人物を特定するプログラムであって、センター処理装置を構成するコンピュータに、カメラから受信した映像データを蓄積する処理と、蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける処理と、蓄積された映像データと地図上での座標データとから映像上の移動体の軌跡を検出する処理と、軌跡上の移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記したようにカメラから受信した映像データから検出された軌跡の中から人物を特定できるレベルの人間の顔を検出するように構成したので、膨大な量の映像を人間が全部見る必要はない。これによって、現実的に可能な設置台数のカメラで、人物の特定が難しい多量の映像の中から人物を特定できるレベルの顔の映像を容易に抽出できるという、従来にない優れた人物特定システム、人物特定装置、人物特定方法および人物特定プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るカメラネットワーク1の構成を示すブロック図である。カメラネットワーク1は、スタンドアローン型カメラ100(以後カメラ100という)と専用端末200とセンター処理装置300が相互に接続されることによって構成される。図1には、紙面の都合で2台のみのカメラ100を記載しているが、実際にはさらに多くの台数が存在することが可能である。
【0016】
カメラ100は、カメラ100相互間、および専用端末200との間で近距離無線通信を行う。ここでいう近距離無線通信は、IEEE802.11シリーズ、Bluetooth(登録商標)、ワイヤレスUSBなどの公知の通信方法が適用できる。専用端末200とセンター処理装置300との間の接続は、たとえばイーサネット(登録商標)などのような有線ネットワークによる接続、または前述のような近距離無線通信による接続である。
【0017】
図2は、図1で示したカメラ100の構成を示すブロック図である。カメラ100は、他から電力の供給を受ける必要はなく、自律的に撮影およびそれに付随する動作を行うことのできるカメラであるという意味で、スタンドアローン型と称している。ネットワークに接続しないという意味でのスタンドアローンではない。
【0018】
カメラ100は、監視対象地域に多数配置されている。その際、あるカメラ100の撮影領域と、他のカメラ100の撮影領域との間に、必ず重複する領域が存在するように配置する。
【0019】
カメラ100は、発電機構部101、映像撮影部102、映像蓄積部103、無線送信部104、無線受信部105、端末認証部106とを備える。
【0020】
発電機構部101は、カメラ100が動作するための電力を発生する機構である。発電方式としてたとえば、太陽光発電、蛍光灯発電、風力発電などを利用することができる。発電機構部101を備えることによって、カメラ100は電力の供給を他から受ける必要がないので、設置場所に対する制約が少なくなるメリットがある。逆に、他から容易に電力を供給できる設置場所であれば、カメラ100は発電機構部101を備えず、他から電力の供給を受けて動作するものとしてもよい。
【0021】
映像撮影部102は、レンズやシャッターなどの光学部品と、画像を電子信号に変換するCCD素子などから構成される、映像を撮影して映像データに変換する機構である。映像蓄積部103は、映像撮影部102により撮影された映像を映像データとして保存する機構であり、主にフラッシュメモリやハードディスクなどの記憶装置によって構成される。
【0022】
無線送信部104は、無線モジュールと、該無線モジュールを駆動するソフトウェアなどで構成される、無線通信により外部にデータを送信する機構である。カメラ100が通常動作状態である時には、無線送信部104は後述の端末認証部106から送られてくる固有ID情報107を、近傍にある他のカメラ100に送信する。
【0023】
また、専用端末200による指示があった場合には、無線送信部104は映像蓄積部103に蓄積された映像データを、後述の固有ID情報107によって暗号化してから専用端末200に送信する。なお、映像データを専用端末200に送信し終わったら、映像蓄積部103に蓄積されていた映像データは消去される。
【0024】
無線受信部105は、無線モジュールと、該無線モジュールを駆動するソフトウェアなどで構成される、無線通信により外部からデータを受信する機構である。無線受信部105を構成する無線モジュールおよびソフトウェアは、無線送信部104におけるそれらと同一であることが普通であるが、ここでは説明上の便宜から、図2において無線送信部104と無線受信部105とを別々のものとして記載している。
【0025】
カメラ100が通常動作状態である時には、無線受信部105は近傍にある他のカメラ100から送られてくる固有ID情報107を受信する。また、専用端末200による指示情報を、固有ID情報107によって復号化してから受信する。いずれの場合も、無線受信部105は受信したデータを後述の端末認証部106に送信する。
【0026】
端末認証部106は、以上で説明したカメラ100の各部分の動作を制御するプロセッサと、該プロセッサで動作するソフトウェアなどで構成される。端末認証部106には、固有ID情報107と、一定の周期で割り込み信号を発行するタイマ108と、近傍に存在するカメラ100の一覧であるIDリスト109が付属する。
【0027】
端末認証部106は、近傍に存在するカメラ100から固有ID情報107が送られてきたら、該固有ID情報107とその受信時刻をIDリスト109に記録する。新規に設置されたカメラ100は、既存のカメラ100に自らの固有ID情報107を送信することにより、いつでも既存のカメラ100上のIDリスト109に加わってカメラネットワーク1に参加することが可能である。
【0028】
また端末認証部106は、タイマ108が割り込み信号を発行する1周期ごとに、固有ID情報107を無線送信部104に送る。そして、タイマ108の1周期ごとに、IDリスト109に載っているカメラの中でタイマ108の1周期以内に固有ID情報107を受信していないものがあるか否かをチェックし、受信していないものがある場合にエラー情報を生成して無線送信部104に送る。
【0029】
無線受信部105が専用端末200による指示情報を受信した場合、該指示情報を復号化することによって認証し、正規の専用端末200からの指示情報である場合に、映像蓄積部103に蓄積された映像データを無線送信部104に送るよう端末認証部106に指示する。正規の専用端末200からの指示情報ではない場合には、該指示情報は破棄される。
【0030】
固有ID情報107は、個々のカメラ100の間で重複しない識別子である。固有ID情報107は、タイマ108が割り込み信号を発行する周期ごとに、近傍にあるカメラ100に送信される。また固有ID情報107は、映像蓄積部103に蓄積された映像データを専用端末200に送信する際に、専用端末200との間で交換するデータの暗号化および復号化にも使用される。
【0031】
タイマ108は、前述の割り込み信号を端末認証部106に発行すると同時に、全てのカメラ100の間で同期した時刻を保持する。時刻の同期は、たとえばGPS衛星もしくはNTPサーバなどから時刻データを取得することによって可能である。固有ID情報107、およびタイマ108によって保持される時刻は、映像撮影部102により撮影された映像と共に映像蓄積部103に蓄積される。
【0032】
なお、無線送信部104および無線受信部105によって無線ネットワークの通信を行う理由も、前述の発電機構部101と同じように、カメラ100の設置場所に対する制約を少なくするためである。カメラ100を有線ネットワークによってセンター処理装置300に接続できる場所に設置する場合は、無線送信部104および無線受信部105を、それぞれ有線ネットワーク通信による送信部および無線受信部に置き換えてもよい。
【0033】
図1に戻って、専用端末200は、カメラ100との間で近距離無線通信を行い、また専用端末200とセンター処理装置300との間で有線ネットワークもしくは近距離無線通信による接続で通信を行う。カメラ100から受信したデータはそのままセンター処理装置300に送られ、逆にセンター処理装置300から送信されたデータはそのまま各々のカメラ100に送られる。専用端末200は、複数のカメラ100と同時に接続可能である。また、専用端末200が複数存在してもよい。
【0034】
カメラ100の近距離無線通信には、電波の到達距離に制約がある。そこで、複数のカメラ100とセンター処理装置300とが直接通信する際の電波の到達距離よりも、広い範囲をカメラネットワーク1が監視できるようにするために、専用端末200を介してカメラ100とセンター処理装置300とが通信するようにしている。もし、近距離無線通信の電波の到達距離よりも狭い範囲を監視対象範囲とするのであれば、複数のカメラ100とセンター処理装置300とが直接通信するようにしてもよい。
【0035】
センター処理装置300は、サーバもしくはパーソナルコンピュータなどで構成されるコンピュータ装置であり、物理的に1台のコンピュータであってもよく、相互に接続された複数のコンピュータであってもよい。センター処理装置300は、映像蓄積部301、映像再生部302、地図処理部303、顔検出エンジン304、移動軌跡検出エンジン305、制御部306、および暗号化/復号化部308を備える。制御部306は、CPUおよびメモリおよびOSによって構成される、ソフトウェアを実行する機能である。制御部306には、一定の周期で割り込み信号を発行するタイマ307が付属する。
【0036】
映像蓄積部301は、各々のカメラ100から回収した映像を保存する機構であり、主にハードディスクなどの大容量記憶装置によって構成される。映像再生部302は、映像蓄積部301に保存されている映像を再生する機構であり、ディスプレイおよび該ディスプレイを駆動するハードウェアとソフトウェアから構成される。
【0037】
地図処理部303は、制御部306で実行される機能であり、各々のカメラ100から送られた固有ID情報107を地図上の位置情報へ変換して、当該カメラの映像を地図上の一意の場所へ位置づける。地図処理部303は、固有ID情報107と各々の地図上での座標とを関連づける座標テーブル311を保持する。
【0038】
顔検出エンジン304は、制御部306で実行される機能であり、映像蓄積部301に保存されている映像の中から、人間の顔を検出する。また、顔検出エンジン304にあらかじめ複数の人物の顔を登録しておいて、検出された顔が登録された人物の顔と一致する場合、その人物についての情報をユーザに提示することも可能である。
【0039】
移動軌跡検出エンジン305は、制御部306で実行される機能であり、複数のカメラ100の映像における撮影領域が重複する部分に映った移動体を同一の移動体として認識して、移動軌跡を同一の移動体として追跡する。なお、顔検出エンジン304が人間の顔を検出する際に使用する処理、および移動軌跡検出エンジン305が移動体の軌跡を検出する処理は、既に前述の各特許文献などによって公知のものであるので、詳しく言及しない。
【0040】
暗号化/復号化部308は、カメラ100に送信する指示情報を、送信先となる各々のカメラ100の固有ID情報107によって暗号化する。また、カメラ100から送られる映像データを、送信元となる各々のカメラ100の固有ID情報107によって復号化する。センター処理装置300が送信する指示情報、および受信する映像データは、すべて暗号化/復号化部308を通って暗号化/復号化される。
【0041】
図3は、図1および図2で示されたカメラ100において実行される処理を書き表すフローチャートである。処理を開始すると、端末認証部106はタイマ108からの割り込み信号を待つ状態となる(ステップS401)。割り込み信号があると、後述のステップS406以後の処理に進む。割り込み信号がない場合、端末認証部106は近傍にある他のカメラ100から固有ID情報107が送られたか否かをチェックし(ステップS402)、送られていればIDリスト109に固有ID情報107を記憶して(ステップS403)、映像蓄積部103に蓄積されていた映像データを消去し、ステップS404に進む。送られていなければそのままステップS404に進む。
【0042】
続いて端末認証部106は、無線受信部105を介して、専用端末200からの指示情報を受信したか否かをチェックし(ステップS404)、受信していれば、映像蓄積部103に蓄積された映像データを専用端末200に送信するよう、無線送信部104に指示し(ステップS405)、ステップS401に戻る。指示情報を受信していなければそのままステップS401に戻る。
【0043】
ステップS401で割り込み信号があった場合、端末認証部106は近傍にある他のカメラ100に固有ID情報107を送信し(ステップS406)、IDリスト109に記憶されている他のカメラ100からの固有ID情報107をチェックする(ステップS407)。IDリスト109にあるカメラ100すべてについて、タイマ108の1周期以内に固有ID情報107の受信記録が残っていれば、異常なしと判断し、ステップS401に戻る。
【0044】
ステップS407で、固有ID情報107の受信記録が残っていないカメラ100が一つでもあるなら、異常が発生したと判断し、カメラネットワーク1に属するすべてのカメラ100と専用端末200に対してアラートを送信し(ステップS408)、処理を終了する。これによって、故障や破壊行為などによって発生した異常を検出することが可能となっている。
【0045】
図4は、図1で示されたセンター処理装置300において実行される処理を書き表すフローチャートである。処理を開始すると、制御部306はタイマ307からの割り込み信号を待つ状態となる(ステップS501)。割り込み信号があると、制御部306はカメラネットワーク1に属するすべてのカメラ100に、撮影された映像を送信させる指示情報を送信する(ステップS502)。
【0046】
該指示情報を受けたカメラ100は、固有ID情報107と、タイマ108によって保持された時刻と共に、映像データをセンター処理装置300に送信する。制御部306は、固有ID情報107および時刻情報と共に、受信した映像データを映像蓄積部301に記録して(ステップS503)ステップS504に進む。その際、地図処理部303によって座標テーブル311を更新し、カメラ100の固有ID情報107と地図上の座標とを関連づける。割り込み信号がなければ、そのままステップS504に進む。
【0047】
なお、タイマ307の周期は、カメラ100にあるタイマ108の周期とは、特に関係ない。カメラ100の映像蓄積部103の容量に応じて、該映像蓄積部103が満杯になる前に映像データを回収して記録できる周期であればよい。
【0048】
また、各々のカメラ100との通信は、各々の固有ID情報107に基づいて暗号化されている。そのため、カメラ100とセンター処理装置300との間の通信が他の装置に傍受されていたとしても、センター処理装置300以外の装置がカメラ100に映像データを送信させたり、またセンター処理装置300に送信された映像データを再生したりすることはできない。なお、暗号化の方法は公知の方法が適用でき、また暗号化の鍵として固有ID情報107以外のデータを適用することもできる。
【0049】
ステップS501でタイマ307からの割り込み信号がない場合、制御部306は、ユーザからの操作を待つ状態となる(ステップS504)。ユーザは、センター処理装置300を操作して、カメラネットワーク1の監視対象地域および時間において、任意の地点および時点の映像を映像再生部302によって再生することができる。
【0050】
センター処理装置300では、座標テーブル311によって、カメラ100の固有ID情報107と地図上の座標が関連づけられている。また、各々のカメラ100からの映像は時刻情報が同期されているため、ある特定の時刻における映像を複数のカメラ100において同期させて再生することが可能となる。なお、これらの再生については、図4には特に記載されていない。
【0051】
そのため、センター処理装置300を操作するユーザは、ある特定の時間および地点にいた人物が、複数のカメラ100においてどのように撮影されているかを見ることができる。同時に、複数のカメラ100を同期させて、巻き戻し、早送り、スローモーションやコマ送りなどの再生操作を行うことによって、ある特定の時間および地点にいた人物の移動を複数のカメラの映像によって追跡することが可能となる。
【0052】
図5は、図1で示されたカメラネットワーク1における人物の移動軌跡の検出と人物の特定を示す概念図である。監視対象地域に設置されている複数のカメラ100が撮影した映像を、ユーザはセンター処理装置300を操作して見ている。今、ユーザは特定のカメラ100bによって撮影された人物像701に注目した。
【0053】
しかしながら、特定の時間および地点における人物像701だけでは、顔や体型、服装などの情報が不十分であるため、ユーザはその人物を特定できない。しかも、多数のカメラ100によって撮影されたすべての映像を、ユーザが全部見ることは困難である。そこでユーザは、対象となる人物として人物像701を指定し、センター処理装置300に人物を特定させる人物特定コマンドを発行する。
【0054】
人物特定コマンドを受けた制御部306は、移動軌跡検出エンジン305によって、座標テーブル311を利用して複数のカメラ100に映った映像を結びつけ、人物像701に該当する人物の移動軌跡702を検出し、人物を特定するために必要な映像を抽出する(ステップS505)。
【0055】
ステップS505で特定された移動軌跡702に該当する(当該人物が映っている)映像の中から、顔検出エンジン304が、人物を特定できるレベルの顔の映った映像が存在するか否かを検出し(ステップS506)、存在すればその顔が映る画像として、特定のカメラ100cが撮影した人物像701bを検出し、表示する(ステップS507)。
【0056】
さらに、検出された人物像701bに映る顔が、顔検出エンジン304に登録されている特定の人物の顔である場合、その人物についての情報をユーザに提示して(ステップS508〜509)、ステップS501に戻る。たとえば指名手配犯や行方不明者などの顔を顔検出エンジン304に登録しておけば、その人物を検出し、移動軌跡702が記録されるので、捜査において極めて有用な情報となる。
【0057】
ステップS506で人物を特定できるレベルの顔の映像が存在しなかった場合、およびステップS508で登録されている人物の顔でなかった場合は、いずれもステップS501に戻る。
【0058】
なお、ステップS506〜507で、移動軌跡702から人物を特定できる人物像701bが検出された時点で、移動軌跡検出エンジン305および顔検出エンジン304による処理を終了してもよい。またそれらによる処理を継続して、同一の対象人物に対して複数の人物像を検出するようにしてもよい。
【0059】
これにより、多数のカメラ100によって撮影されたすべての映像を見なくても、人物を特定できるレベルの人物像を検出することができるので、カメラネットワーク1の監視対象地域で犯罪が発生した場合などで人物の特定が容易になる。さらに、人物の移動軌跡を検出して記録できるので、指名手配犯や行方不明者などの捜査にも有用である。
【0060】
また、複数のカメラ100の映像の撮影領域が、それぞれどこかに重複する部分が存在するように配置されていればよいので、それ以上に多くのカメラ100を設置する必要はない。そのため、必要以上にカメラ100を設置するコスト、および膨大な量の映像データを伝送することに伴うネットワークへの負荷を削減することができる。
【0061】
カメラ100はスタンドアローン型であるので、設置場所についての制約は少なく、電源および有線ネットワークと接続が不可能な場所にも設置できる。また、カメラ100の中に災害や破壊行為などによって機能を停止したものがあった場合にも、それらを検出してアラートを出すので、ユーザがすぐに対応することができる。
【0062】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることは言うまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
空港、駅、銀行、繁華街、店舗などに設置される、監視カメラによる防犯システムにおいて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係るカメラネットワークの構成を示すブロック図である。
【図2】図1で示したカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】図1および図2で示されたカメラにおいて実行される処理を書き表すフローチャートである。
【図4】図1で示されたセンター処理装置において実行される処理を書き表すフローチャートである。
【図5】図1で示されたカメラネットワークにおける人物の移動軌跡の検出と人物の特定を示す概念図である。
【符号の説明】
【0065】
1 カメラネットワーク(人物特定システム)
100 カメラ
101 発電機構部
102 映像撮影部
103 映像蓄積部
104 無線送信部
105 無線受信部
106 端末認証部
107 固有ID情報
108 タイマ
109 IDリスト
200 専用端末
300 センター処理装置(人物特定装置)
301 映像蓄積部
302 映像再生部
303 地図処理部
304 顔検出エンジン
305 移動軌跡検出エンジン
306 制御部
307 タイマ
308 暗号化/復号化部
701 人物像
702 移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカメラと、前記各カメラにより撮影された映像データを受信するセンター処理装置とを備えた人物特定システムであって、
前記センター処理装置が、
前記カメラから受信した映像データを蓄積する映像蓄積部と、
前記蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理部と、
前記蓄積された映像データと前記地図上での座標データとから前記映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出エンジンと、
前記軌跡上の前記移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出エンジンと
を有することを特徴とする人物特定システム。
【請求項2】
前記センター処理装置が、前記撮影された映像データを送信させる指示情報を前記複数のカメラに送信させるための割り込み信号を発生するタイマを有することを特徴とする、請求項1に記載の人物特定システム。
【請求項3】
前記複数のカメラがそれぞれ、自身に対応する固有ID情報を有し、
前記センター処理装置が、前記指示情報を前記固有ID情報に基づいて暗号化してから送信する暗号化部を有することを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項4】
前記センター処理装置が、前記複数のカメラから受信した映像データを前記固有ID情報に基づいて復号化してから前記映像蓄積部に保存する復号化部を有することを特徴とする、請求項3に記載の人物特定システム。
【請求項5】
前記センター処理装置が、前記蓄積された映像データを再生する映像再生部を有することを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項6】
前記顔検出エンジンが、前記検出された映像に含まれる顔があらかじめ登録された特定の人物の顔と一致するか否かを判断することが可能であることを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項7】
前記複数のカメラと前記センター処理装置とが無線通信によって接続されることを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項8】
前記複数のカメラと専用端末とが無線通信によって接続され、前記専用端末と前記センター処理装置とがネットワークによって接続されることを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項9】
前記複数のカメラがそれぞれ、自身が動作するための電力を発生する発電機構部を有することを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項10】
前記複数のカメラがそれぞれ、自身に対応する固有ID情報を相互に交換し、近傍にある前記カメラから前記固有ID情報を受信しない場合にアラートを発信することを特徴とする、請求項2に記載の人物特定システム。
【請求項11】
複数のカメラによって撮影された映像データを受信する人物特定装置であって、
前記カメラから受信した映像データを蓄積する映像蓄積部と、
前記蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理部と、
前記蓄積された映像データと前記地図上での座標データとから前記映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出エンジンと、
前記軌跡上の前記移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出エンジンと
を有することを特徴とする人物特定装置。
【請求項12】
前記撮影された映像データを送信させる指示情報を前記複数のカメラに送信させるための割り込み信号を発生するタイマを有することを特徴とする、請求項11に記載の人物特定装置。
【請求項13】
前記指示情報を前記複数のカメラのそれぞれに対応する固有ID情報に基づいて暗号化してから送信する暗号化部を有することを特徴とする、請求項12に記載の人物特定装置。
【請求項14】
前記複数のカメラから受信した映像データを前記固有ID情報に基づいて復号化してから前記映像蓄積部に保存する復号化部を有することを特徴とする、請求項13に記載の人物特定装置。
【請求項15】
前記蓄積された映像データを再生する映像再生部を有することを特徴とする、請求項12に記載の人物特定装置。
【請求項16】
前記顔検出エンジンが、前記検出された映像に含まれる顔があらかじめ登録された特定の人物の顔と一致するか否かを判断することが可能であることを特徴とする、請求項12に記載の人物特定装置。
【請求項17】
複数のカメラと前記カメラにより撮影された映像データを受信するセンター処理装置とからなるカメラネットワークによって撮影された人物を特定する方法であって、
前記カメラから受信した映像データを蓄積する映像蓄積工程と、
前記蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける地図処理工程と、
前記蓄積された映像データと前記地図上での座標データとから前記映像上の移動体の軌跡を検出する移動軌跡検出工程と、
前記軌跡上の前記移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する顔検出工程と
を有することを特徴とする人物特定方法。
【請求項18】
複数のカメラと前記カメラにより撮影された映像データを受信するセンター処理装置とからなるカメラネットワークによって撮影された人物を特定するプログラムであって、前記センター処理装置を構成するコンピュータに、
前記カメラから受信した映像データを蓄積する処理と、
前記蓄積された映像データを地図上での座標データと関連づける処理と、
前記蓄積された映像データと前記地図上での座標データとから前記映像上の移動体の軌跡を検出する処理と、
前記軌跡上の前記移動体の映像の中から人物を特定できるレベルの人間の顔の映った映像を検出する処理と
を実行させることを特徴とする人物特定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−152733(P2009−152733A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327290(P2007−327290)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】