説明

付加硬化型シリコーン組成物、該組成物からなる光学素子封止材並びに光学素子

【課題】 本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有する硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物、および該組成物からなる光学素子封止材を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、(A)25℃における粘度が30Pa・s以上であり、下記式(1)で表される構造を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)下記式(2)で表される環状シロキサン化合物:0.5〜100質量部、(C)下記平均組成式(3)で表される構造を有する分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2ケ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分と(B)成分のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基に対する(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が0.2〜10となる量、および(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:触媒量を含むことを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型の硬化性シリコーン組成物に関し、特に、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好な硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物、および該組成物からなる光学素子封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
付加硬化性シリコーン組成物は、アルケニル基等の脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサンを含み、ヒドロシリル化反応によって硬化してシリコーン硬化物を与える。このようにして得られる硬化物は、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れるため、各種の光学用途に用いられている。
【0003】
光学用途に使用するシリコーン組成物は、光学素子および銀やポリフタルアミドといった光学素子周辺に使用される部材と接着が必要であり、また、高い透明性、高い耐熱変色性が要求される。
【0004】
しかしながら、通常接着力を向上させるためにはアルコキシシランやエポキシ基といった官能基を有する接着性付与剤を使用する必要が有り(特許文献1、2)、これら官能基が透明性の低下や、タック感および変色の原因となっていた。
【0005】
あるいは、接着力を向上させるためにプライマーを使用することも可能であるが(特許文献3)、溶剤が使用されている場合が多く、工程が増えるといった問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−327777号公報
【特許文献2】特開2001−2922号公報
【特許文献3】特開2008−179694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好な硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物、および該組成物からなる光学素子封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、アルコキシシランやエポキシ基といった官能基を有する接着性付与剤を使用することなく、高分子量の両末端不飽和基を有するポリジメチルシロキサンと不飽和基含有環状シロキサンを用い、水素化ケイ素を有するシロキサン単位の割合が大きい架橋材を使用することによって、タック感が無く、高い耐熱変色性および接着性を有するシリコーン硬化物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、少なくとも、
(A)25℃における粘度が30Pa・s以上であり、下記式(1)で表される構造を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】

(式中、Meはメチル基であり、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、nは1以上の整数であって、上記粘度を満足させる整数である。)
(B)下記式(2)で表される環状シロキサン化合物:0.5〜100質量部、
【化2】

(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、mは3以上の整数である。)
(C)下記平均組成式(3)で表される分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2ケ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分と(B)成分のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基に対する(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が0.2〜10となる量、および
【化3】

(式中、Rは同種または異種の、水素原子または飽和の1価炭化水素基であり、pは1以上の整数、qは0または1以上の整数であるが、qが1以上の整数である場合はp≧2qを満たす整数である。)
(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:触媒量
を含むことを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【0010】
このような付加硬化型シリコーン組成物を硬化させて得られるゲル、エラストマー等の硬化物は、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好なLED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等の光学素子の封止材等として好適に用いることができる。
【0011】
また、本発明では、前記C成分が下記平均組成式(4)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【化4】

(式中、R´は同種または異種の、水素原子またはメチル基である。)
【0012】
このように、前記C成分を上記平均組成式(4)で表される構造を有する化合物とすることによって、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好な硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物を得ることができる。
【0013】
また、本発明では、前記付加硬化型シリコーン組成物からなる光学素子封止材を提供する。
【0014】
本発明の提供する付加硬化型シリコーン組成物は、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好なものであるため、LED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等の光学素子の封止材等として好適に用いることができる。
【0015】
また、本発明では、前記光学素子封止材の硬化物で封止された光学素子を提供する。
【0016】
このように、本発明の提供する付加硬化型シリコーン組成物からなる光学素子封止材を用いて硬化物を得ることによって、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好な光学素子封止材により封止された光学素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、付加硬化型シリコーン組成物を硬化させて得られるゲル、エラストマー等の硬化物は、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れる上、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好なLED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等の光学素子の封止材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき詳しく説明する。
前述のように、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好な付加硬化型シリコーン組成物の開発が待たれていた。
【0019】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、少なくとも、
(A)25℃における粘度が30Pa・s以上であり、下記式(1)で表される構造を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化5】

(式中、Meはメチル基であり、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、nは1以上の整数であって、上記粘度を満足させる整数である。)
(B)下記式(2)で表される環状シロキサン化合物:0.5〜100質量部、
【化6】

(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、mは3以上の整数である。)
(C)下記平均組成式(3)で表される分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2ケ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分と(B)成分のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基に対する(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が0.2〜10となる量、および
【化7】

(式中、Rは同種または異種の、水素原子または飽和の1価炭化水素基であり、pは1以上の整数、qは0または1以上の整数であるが、qが1以上の整数である場合はp≧2qを満たす整数である。)
(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:触媒量
を含むことを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物であれば、アルコキシシランやエポキシ基といった官能基を有する接着性付与剤を使用することなく、高分子量の両末端不飽和基を有するポリジメチルシロキサンと不飽和基含有環状シロキサンを用い、水素化ケイ素を有するシロキサン単位の割合が大きい架橋材を使用することによって、タック感が無く、高い耐熱変色性および接着性を有するシリコーン硬化物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
以下に、各成分について詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[A成分]
(A)成分は、下記式(1)で表される主鎖がジメチルシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端が脂肪族不飽和基を含有するジメチルビニルシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジメチルポリシロキサンであり、25℃における粘度が30Pa・s以上である。(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いてもよく、分子量、ケイ素原子に結合した有機基の種類等が相違する二種以上を併用してもよい。
【化8】

(式中、Meはメチル基であり、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、nは1以上の整数であって、上記粘度を満足させる整数である。)
【0021】
(A)成分は、回転粘度計により測定された25℃における粘度が30Pa・s以上であり、好ましくは40〜1000Pa・sであり、より好ましくは50〜300Pa・sである。25℃における粘度が30Pa・s未満であると銀やポリフタルアミド(PPA)等との接着性が不十分となる。尚、回転粘度計で測定できない生ゴム(ガム)状のものであっても作業性はやや劣るが接着性向上効果を有する。
【0022】
(A)成分において、ジメチルシロキサン単位の重合度nは25℃における粘度が30Pa・s以上となる数であるが、700〜2000であることが好ましく、800〜1800であることがより好ましく、1000〜1500であることが更に好ましい。
【0023】
式(1)中のRおよびR中の脂肪族不飽和基は、ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、プロペニル基、ブテニル基等の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のアルケニル基が好ましい。これらの中でビニル基、アリル基および5−ヘキセニル基がより好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中において、前記脂肪族不飽和基以外のケイ素原子に結合した有機基は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1〜12、好ましくは1〜10の1価炭化水素基である。この非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0025】
[B成分]
(B)成分は、下記式(2)で表される脂肪族不飽和基を有するジオルガノシロキサン単位からなる環状オルガノポリシロキサンである。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いてもよく、分子量、ケイ素原子に結合した有機基の種類等が相違する二種以上を併用してもよい。
【化9】

(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、mは3以上の整数である。)
【0026】
環状オルガノポリシロキサンである(B)成分は、(A)成分と併用することによって、タック感を無くすとともに、耐熱変色性を与える効果を有する。
【0027】
(B)成分において、シロキサン単位の重合度mは3〜20であることが好ましく、3〜10であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。特にテトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサンが好ましい。
【0028】
式(2)中のRおよびR中の脂肪族不飽和基は、(1)式のRおよびR中の脂肪族不飽和基の場合と同様のものが例示され、アルケニル基が好ましく、ビニル基、アリル基および5−ヘキセニル基がより好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0029】
(B)成分のオルガノポリシロキサン分子中において、前記脂肪族不飽和基以外のケイ素原子に結合した有機基は、(1)式の場合と同様のものが例示され、好ましくはアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0030】
(B)成分の配合量は、(A)成分を100質量部としたときに0.5〜100質量部、好ましくは1〜50質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。0.5質量部未満であるとタック感を無くすとともに、耐熱変色性を与える効果が不十分となり、100質量部を超えると硬化特性が低下する。
【0031】
[C成分]
(C)成分は、下記平均組成式(3)で表され1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有し、そして脂肪族不飽和基を有さないオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分及び(B)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用する。C成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【化10】

(式中、Rは同種または異種の、水素原子または飽和の1価炭化水素基であり、pは1以上の整数、qは0または1以上の整数であるが、qが1以上の整数である場合はp≧2qを満たす整数である。)
【0032】
(C)成分は直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、両末端ケイ素には飽和の1価炭化水素基または水素原子が結合しており、非末端部はメチルハイドロジェンシロキサン単位(D単位)とジメチルシロキサン単位に代表されるジオルガノシロキサン単位(D単位)で構成される。
【0033】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個程度)、好ましくは3個以上(通常、3〜200個、好ましくは4〜100個程度)のSiH基を有する。
【0034】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの1分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは3〜1,000個、より好ましくは3〜200個、更により好ましくは4〜100個程度である。更に、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは25℃で液状であることが好ましく、回転粘度計により測定された25℃における粘度は、好ましくは1〜1,000mPa・s、より好ましくは10〜100mPa・s程度である。
【0035】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいてD単位が存在する場合、D単位とD単位の比率は2以上(p≧2q)であり、好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上である。この比率を満たさないと接着性等の特性が著しく低下する。最も好ましくは下記(4)式に示すようなD単位が無く、非末端部がD単位のみからなるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【化11】

(式中、R´は同種または異種の、水素原子またはメチル基である。)
【0036】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体などが挙げられる。
【0037】
(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基に対する(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が0.2〜10、好ましくは0.3〜5、特に好ましくは0.5〜2となる量である。
【0038】
[D成分]
(D)成分の白金族金属系ヒドロシリル化触媒としては、(A)および(B)成分中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基と(C)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するものであればいかなる触媒を使用してもよい。(D)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(D)成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属や、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金化合物である。
【0039】
(D)成分の配合量は、ヒドロシリル化触媒としての有効量でよく、好ましくは(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計質量に対して白金族金属元素の質量換算で0.1〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppmの範囲である。
【0040】
[その他の成分]
本発明の組成物には、前記(A)〜(D)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0041】
・(A)および(B)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物
本発明の組成物には、(A)および(B)成分以外にも、(C)成分と付加反応する脂肪族不飽和基含有化合物を配合してもよい。(A)および(B)成分以外のこのような脂肪族不飽和基含有化合物としては、肪族不飽和基含有シリコーンレジンが好ましい。肪族不飽和基含有シリコーンレジンとしては、アルケニル基、特にビニル基含有シリコーンレジンが好ましく、1官能シロキサン単位(M単位)と4官能シロキサン単位(Q単位)からなるMQレジンや3官能シロキサン単位(T単位)を含むシリコーンレジンが例示される。この成分の配合量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜200質量部、特に5〜100質量部であることが好ましい。この成分は、得られる硬化物に高い硬度が必要な場合、配合することが好ましいものである。
【0042】
上記ポリオルガノシロキサン以外の脂肪族不飽和基含有有機化合物を配合することも可能である。該脂肪族不飽和基含有化合物の具体例としては、ブタジエン、多官能性アルコールから誘導されたジアクリレートなどのモノマー;ポリエチレン、ポリプロピレンまたはスチレンと他のエチレン性不飽和化合物(例えば、アクリロニトリルまたはブタジエン)とのコポリマーなどのポリオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸のエステル等の官能性置換有機化合物から誘導されたオリゴマーまたはポリマーが挙げられる。A成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物は室温で液体であっても固体であってもよい。
【0043】
・付加反応制御剤
ポットライフを確保するために、付加反応制御剤を本発明組成物に配合することができる。付加反応制御は、上記(D)成分のヒドロシリル化触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、従来から公知のものを用いることもできる。その具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類(例えば、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール)等のアセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。
【0044】
付加反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その付加反応制御剤の化学構造によって異なる。よって、使用する付加反応制御剤の各々について、その添加量を最適な量に調整することが好ましい。最適な量の付加反応制御剤を添加することにより、組成物は室温での長期貯蔵安定性および加熱硬化性に優れたものとなる。通常は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましく、特に0.1〜1質量部である。
【0045】
・その他の任意成分
硬化物の着色、白濁、酸化劣化等の発生を抑えるために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の従来公知の酸化防止剤を本発明組成物に配合することができる。また、光劣化に対する抵抗性を付与するために、ヒンダードアミン系安定剤等の光安定剤を本発明組成物に配合することもできる。更に、本発明組成物から得られる硬化物の透明性に影響を与えない範囲で、強度を向上させるためにヒュームドシリカ等の無機質充填剤を本発明組成物に配合してもよいし、必要に応じて、染料、顔料、難燃剤等を本発明組成物に配合してもよい。さらに、A〜D成分以外のシリコーン化合物あるいは有機化合物等の接着性向上剤を配合してもよい。
【0046】
[硬化物]
本発明のシリコーン組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、通常、80〜200℃、好ましくは100〜160℃で加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分〜5時間程度、特に1分〜3時間程度でよいが、LED封止用等精度が要求される場合は、硬化時間を長めにすることが好ましい。得られる硬化物の形態は特に制限されず、例えば、ゲル硬化物、エラストマー硬化物および樹脂硬化物のいずれであってもよい。
【0047】
[光学素子封止材]
本発明組成物の硬化物は、通常の付加硬化性シリコーン組成物の硬化物と同様に耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れると共に透明性にも優れる。本発明の組成物から成る封止材によって封止される光学素子としては、例えば、LED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等が挙げられる。このような光学素子は、該光学素子に本発明の組成物から成る封止材を塗布し、塗布された封止材を公知の硬化条件下で公知の硬化方法により、具体的には上記したとおりに硬化させることによって封止することができる。
【0048】
[光学素子]
本発明の提供する付加硬化型シリコーン組成物からなる光学素子封止材を用いることによって、高い透明性を有し、タック感が無く、高い耐熱変色性を有し、銀およびポリフタルアミド等への接着が良好な光学素子封止材により封止された光学素子を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、調製例、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0050】
下記の例で、粘度は回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0051】
下記の例で、硬度はJIS−K6249に準じて測定した値である。
【0052】
下記の例で、接着試験は、液状封止材に板状の銀またはポリフタルアミド(PPA)を浸け、封止材硬化後に被着体を引き抜いたときの状態を剥離(×)、封止材破壊(○)の2種に分類した。
【0053】
下記の例でタック感は、重量30mg、直径2.5mm、深さ1mmの凹みを有する銀、PPAからなるLEDパッケージに組成物を充填、硬化後させ、硬化物部分がスパチュラにくっ付いて持ち上がるか否かで判定した。
【0054】
下記の例において、シリコーンオイルまたはシリコーンレジンの平均組成を示す記号は以下の通りの単位を示す。又、各シリコーンオイルまたは各シリコーンレジンのモル数は、各成分中に含有されるビニル基又はSiH基のモル数を示すものである。
M:(CHSiO1/2
Vi:(CH=CH)(CHSiO1/2
3Vi:(CH=CH)SiO1/2
:(CH)HSiO2/2
D:(CHSiO2/2
Q:SiO4/2
【0055】
[調製例1]白金触媒の調製
本実施例に使用した白金触媒は、六塩化白金酸とsym−テトラメチルジビニルジシロキサンとの反応生成物であり、この反応生成物を白金含量が1.0質量%となるように粘度0.6Pa・sの液体ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンで希釈したもの(触媒a)である。
【0056】
[実施例1]
粘度100Pa・s、平均組成式:Mvi1100のシリコーンオイル100g(2.4ミリモル)、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10g(116.1ミリモル)および触媒a0.2gの混合物を、粘度15mPa・s、平均組成式:M14のシリコーンオイル13.2g(142.1ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
粘度100Pa・s、平均組成式:Mvi1100のシリコーンオイル100g(2.4ミリモル)、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10g(116.1ミリモル)および触媒a0.2gの混合物を、粘度4.5mPa・s、平均組成式:Mのシリコーンオイル11.4g(141.7ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
粘度100Pa・s、平均組成式:M3vi1100のシリコーンオイル100g(7.3モル)、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10g(116.1ミリモル)および触媒a0.2gの混合物を、粘度4.5mPa・s、平均組成式:Mのシリコーンオイル11.9g(148.0ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
粘度100Pa・s、平均組成式:Mvi1100のシリコーンオイル100g(2.4ミリモル)、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10g(116.1ミリモル)、M単位とMVi単位とQ単位とから構成され、MVi単位に対するM単位のモル比が6.25であり、Q単位に対するM単位とMVi単位との合計のモル比が0.8であるシリコーンレジン10g(8.2ミリモル)、および触媒a0.2gの混合物を、粘度4.5mPa・s、平均組成式:Mのシリコーンオイル12.3g(152.9ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
粘度100Pa・s、平均組成式:Mvi1100のシリコーンオイル100g(2.4ミリモル)、制御剤としてのエチニルシクロヘキサノール0.1gおよび触媒a0.2gの混合物を、粘度4.5mPa・s、平均組成式:Mのシリコーンオイル0.25g(3.1ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た(本発明のB成分なし)。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
粘度5.0Pa・s、平均組成式:Mvi450のシリコーンオイル100g(6.0ミリモル)、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10g(116.1ミリモル)および触媒a0.2gの混合物を、粘度4.5mPa・s、平均組成式:Mのシリコーンオイル11.8g(146.7ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た(A成分の粘度が本発明外)。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0062】
[比較例3]
粘度100Pa・s、平均組成式:Mvi1100のシリコーンオイル100g(2.4ミリモル)、テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10g(116.1ミリモル)および触媒a0.2gの混合物を、粘度15mPa・s、平均組成式:M13のシリコーンオイル40.5g(141.9ミリモル)と混合してシリコーン組成物を得た(C成分が本発明外)。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0063】
[比較例4]
テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10gを0.2gとした以外は実施例1と同様としシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例5〕
テトラメチルテトラビニルテトラシクロシロキサン10gを3gとした以外は実施例1と同様としシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
比較例において示されるように、本発明の各成分の条件を満たさない組成物を硬化させた場合の硬化物は透明性がなく、タック感がなく、硬度が低くまた銀およびポリフタルアミドへの接着が悪いといったいずれかの欠点をもつ。特に、接着力を向上させるために常用されるエポキシ基を有する接着性付与剤を加えた組成物においては透明性が悪いことが比較例4により示されている。一方で、実施例において示されるように、本発明の各成分の条件を満たす組成物を硬化させた場合の硬化物は、高透明性を有し、タック感がなく、高い耐熱変色性を有し、エポキシ基を有する接着性付与剤を加えなくとも銀およびポリフタルアミドへの接着が良好な硬化物を与えることが示された。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)25℃における粘度が30Pa・s以上であり、下記式(1)で表される構造を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】

(式中、Meはメチル基であり、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、nは1以上の整数であって、上記粘度を満足させる整数である。)
(B)下記式(2)で表される環状シロキサン化合物:0.5〜100質量部、
【化2】

(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、脂肪族不飽和または飽和の1価炭化水素基であり、mは3以上の整数である。)
(C)下記平均組成式(3)で表される分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2ケ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分と(B)成分のケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基に対する(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が0.2〜10となる量、および
【化3】

(式中、Rは同種または異種の、水素原子または飽和の1価炭化水素基であり、pは1以上の整数、qは0または1以上の整数であるが、qが1以上の整数である場合はp≧2qを満たす整数である。)
(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:触媒量
を含むことを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
前記C成分が下記平均組成式(4)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【化4】

(式中、R´は同種または異種の、水素原子またはメチル基である。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の付加硬化型シリコーン組成物からなる光学素子封止材。
【請求項4】
請求項3に記載の光学素子封止材の硬化物で封止された光学素子。

【公開番号】特開2011−246581(P2011−246581A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120362(P2010−120362)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】