説明

伸縮可撓継手のフランジ構造

【課題】 管路のフランジ部にシール部材を装着する必要がある場合でも別に円状鋼板などを挟み込む必要がなく、簡単に施工することができる伸縮可撓継手のフランジ構造を提供すること。
【解決手段】 管路20のシール部材23を取り付けたフランジ部21間に締結される伸縮可撓継手30のフランジ構造40で、伸縮可撓継手30の締結フランジ部31の表面を弾性部材42(17)で被覆するとともに、この締結フランジ部31のシール部材23と対向する位置に環状の金属部材43を配置し、この金属部材43を弾性部材42(17)に埋設・接着して構成する。
これにより、管路20のフランジ部21に装着したシール部材23と、このシール部材23と対向する締結フランジ部41の表面を被覆する弾性部材42に埋設・接着した環状の金属部材43とを接続面とすることができ、シール性を確保することができ、しかも円状鋼板を別に用意する必要もなく、簡単に施工できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は伸縮可撓継手のフランジ構造に関し、上下水道や工業用、農業用の水路などとして一般に使用されている管路に介装されて伸縮やあらゆる方向の変位を許容する伸縮可撓継手をフランジ部間に金属円板を介装することなく簡単に施工できるようにしたもので、特にダクタイル鋳鉄管に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道や工業用、農業用の水路などとして使用される管体の1つにダクタイル鋳鉄管があり、管体の端部に一体に設けたフランジ部にシ-ル部材の装着凹部を形成し、シール部材を取り付けてフランジ部同士を締結することでシール状態で接続するようにしている。
【0003】
このようなダクタイル鋳鉄管のフランジ部間に伸縮可撓継手を介装することで、地盤沈下、温度変化、地震による地盤変動などに伴う管路の変位を軽減し、管路の安全性を高めることが行われている。
【0004】
このような伸縮可撓継手10は、例えば特許文献1に開示されているものを図5に示すように、可撓継手本体11と、この可撓継手本体11の両端部の締結フランジ部12,12とで構成されており、可等継手本体11は、補強リング、補強ワイヤ、補強コードなどの補強部材13が内挿された基径部14と、この基径部14、14間に外側に半円状に膨出し補強コードなどの補強部材13が内挿された天然ゴムなどの内層弾性部材15で構成された可撓部16とを備え、可撓継手本体の端部を保持するとともに、フランジ接続のための金属製のリテイナーフランジで構成された締結フランジ部12,12が両端の基径部14,14に連結してある。
【0005】
そして、例えば4つの基径部14とその間の3つの可撓部16と、両端に連結された締結フランジ部12とで伸縮可撓継手10が構成され、基径部14、可撓部16の内面および締結フランジ部12の管路のフランジ部に連結される表面が合成ゴムなどのパッキン部を構成する弾性部材17で被覆され、基径部14および可撓部16の外面が合成ゴムなどの外被弾性部材18で被覆してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−269757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このような伸縮可撓継手10を従来のダクタイル鋳鉄管による管路に介装しようとすると、図6に示すように、ダクタイル鋳鉄管20のダクタイルGFフランジで構成されたフランジ部21の装着凹部22に装着したシール部材23と、伸縮可撓継手10のリテイナーフランジで構成された締結フランジ部12の表面に被覆された弾性部材17とが接触し、接続面がゴム同士となるため、シール性(止水性)を確保することが難しい。
【0008】
このため、ダクタイル鋳鉄管20のフランジ部21と伸縮可撓継手10の締結フランジ部12との間に円状鋼板25を挟み込んでゴム同士が接触しないようにする必要があり、施工に手間がかかるとともに、円状鋼板25を用意しなければならないという問題もある。
【0009】
この発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、管路のフランジ部にシール部材を装着する必要がある場合でも別に円状鋼板などを挟み込む必要がなく、簡単に施工することができる伸縮可撓継手のフランジ構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の伸縮可撓継手のフランジ構造は、管路のシール部材を取り付けたフランジ部間に締結される伸縮可撓継手のフランジ構造であって、この伸縮可撓継手の締結フランジ部の表面を弾性部材で被覆するとともに、この締結フランジ部の前記管路の前記シール部材と対向する位置に環状の金属部材を配置し、この金属部材を前記弾性部材に埋設・接着して構成したことを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項2記載の伸縮可撓継手のフランジ構造は、請求項1記載の構成に加え、前記締結フランジ部の前記弾性部材に埋設・接着される前記金属部材を弾性部材の表面と面一として構成したことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明の請求項3記載の伸縮可撓継手のフランジ構造は、請求項1または2記載の構成に加え、前記締結フランジ部の表面を覆う前記弾性部材を、前記伸縮可撓継手の可撓継手本体の内周面を覆う内面弾性部材を延長して構成したことを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項4記載の伸縮可撓継手のフランジ構造は、請求項3記載の構成に加え、前記締結フランジ部の表面を被覆する前記弾性部材を前記可撓継手本体の端部までとし、当該締結フランジ部の表面を、前記環状の金属部材と兼用して構成したことを特徴とするものである。
【0014】
さらに、この発明の請求項5記載の伸縮可撓継手のフランジ構造は、請求項4記載の構成に加え、前記締結フランジ部を、前記可撓継手本体の補強管部と一体に設けて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の請求項1記載の伸縮可撓継手のフランジ構造によれば、管路のシール部材を取り付けたフランジ部間に締結される伸縮可撓継手のフランジ構造であって、この伸縮可撓継手の締結フランジ部の表面を弾性部材で被覆するとともに、この締結フランジ部の前記管路の前記シール部材と対向する位置に環状の金属部材を配置し、この金属部材を前記弾性部材に埋設・接着して構成したので、管路のフランジ部に装着したシール部材と、このシール部材と対向する締結フランジ部の表面を被覆する弾性部材に埋設・接着した環状の金属部材とを接続面とすることができ、シール性を確保することができ、しかも円状鋼板を別に用意する必要もなく、簡単に施工することができる。
【0016】
また、この発明の請求項2記載の伸縮可撓継手のフランジ構造によれば、前記締結フランジ部の前記弾性部材に埋設・接着される前記金属部材を弾性部材の表面と面一として構成したので、弾性部材に埋設・接着した金属部材があっても平坦な締結フランジ部にすることができ、通常のフランジ部同士と同様に施工することができる。
【0017】
さらに、この発明の請求項3記載の伸縮可撓継手のフランジ構造によれば、前記締結フランジ部の表面を覆う前記弾性部材を、前記伸縮可撓継手の可撓継手本体の内周面を覆う内面弾性部材を延長して構成したので、伸縮可撓継手を従来と同一の構造にすることができ、製作も容易にすることができる。
【0018】
また、この発明の請求項4記載の伸縮可撓継手のフランジ構造によれば、前記締結フランジ部の表面を被覆する前記弾性部材を前記可撓継手本体の端部までとし、当該締結フランジ部の表面を、前記環状の金属部材と兼用して構成したので、締結フランジ部の表面をそのまま管路のフランジ部のシール部材との接続面にすることができ、こうすることでもシール性の確保と施工の容易性を確保することができる。
【0019】
さらに、この発明の請求項5記載の伸縮可撓継手のフランジ構造によれば、前記締結フランジ部を、前記可撓継手本体の補強管部と一体に設けて構成したので、締結フランジ部をそのまま管路のフランジ部のシール部材との接続面にする場合の締結フランジ部の強度の向上を図ることができ、一層シール性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の伸縮可撓継手のフランジ構造の一実施の形態にかかる半裁縦断面図である。
【図2】この発明の伸縮可撓継手のフランジ構造の一実施の形態にかかるダクタイル鋳鉄管のフランジ部とともに示す部分拡大断面図である。
【図3】この発明の伸縮可撓継手のフランジ構造の他の一実施の形態にかかる半裁縦断面図である。
【図4】この発明の伸縮可撓継手のフランジ構造の他の一実施の形態にかかるダクタイル鋳鉄管のフランジ部とともに示す部分拡大断面図である。
【図5】従来の伸縮可撓継手にかかる半裁縦断面図である。
【図6】従来の伸縮可撓継手のフランジ構造とダクタイル鋳鉄管のフランジ部との部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
この伸縮可撓継手のフランジ構造40では、伸縮可撓継手30の可撓継手本体31は、図5に基づいて既に説明した伸縮可撓継手10と可撓継手本体11は同一構成であり、両端部のリテイナーフランジで構成された締結フランジ部41の構造が異なるものである。なお、伸縮可撓継手30については、すでに説明した伸縮可撓継手10の可撓継手本体11と同一部分に同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0022】
すなわち、この伸縮可撓継手のフランジ構造40では、締結フランジ部41の表面にパッキン部となる弾性部材42が設けられた締結フランジ部41の構造に本願発明が適用され、例えば介装される管路を構成するダクタイル鋳鉄管20のダクタイル鋳鉄GFフランジで構成されたフランジ部21に設けたシール部材用の装着凹部22にシール部材23を装着してフランジ部同士を接続するのに好適なもので、これまでの円状鋼板を挟み込むことなくリテイナーフランジの締結フランジ部41と管路のダクタイルGFフランジのフランジ部21をそのまま接続できるようにしたものである。
【0023】
このようなリテイナーフランジの締結フランジ部41と管路のダクタイルGFフランジのフランジ部21をそのまま接続できるようにした伸縮可撓継手のフランジ構造40では、図1、2に示すように、伸縮可撓継手30の可撓継手本体31の両端部のリテイナーフランジで構成された締結フランジ部41の表面にパッキン部となる弾性部材42が設けられて接続側の表面が被覆され、この実施の形態では、この弾性部材42が可撓継手本体31の内面を覆う内面弾性部材17を延長して一体に構成してある。
【0024】
パッキン部となる弾性部材42で接続側の表面が覆われた締結フランジ部41の被接続管路となるダクタイル鋳鉄管20のフランジ部21のシール部材用の装着凹部22のシール部材23と対向する位置に、環状の薄板状の金属部材43が配置され、弾性部材42に埋設されて焼付接着して取り付けてある。
【0025】
この環状の金属部材43は弾性部材42に埋設され、金属部材43の表面が弾性部材42の表面と同一平面になる面一とされ、裏面側には弾性部材42が介在して直接締結フランジ部41と接触しない状態で取り付けてある。
【0026】
これにより、ダクタイル鋳鉄管20の管路にこの伸縮可撓継手30を介装する場合には、図2に示すように、ダクタイル鋳鉄管のフランジ部21のシール部材23と伸縮可撓継手30の締結フランジ部41の金属部材43とが接触することになり、ゴム同士42,23の接続面とならず、しかも別に用意した円状鋼板を介在させる必要もなく、通常のフランジ接続と同様に施工することができる。
【0027】
また、伸縮可撓継手のフランジ構造40では、締結フランジ部41としてRFフランジ(JIS規格品)を使用せず、リテイナーフランジを使用することで、安価に製作することができ、しかも環状の金属部材43によってダクタイル鋳鉄管のGFパッキン23との当り面を、金属面とすることができ、RFフランジと同等の止水性を確保することができる。
【0028】
なお、この伸縮可撓継手のフランジ構造40では、伸縮可撓継手30の可撓継手本体31の構成については、図示例に限らず、基径部や可撓部の数、これら基径部や可撓部の補強構造などを他の構成としても良く、少なくとも両端部に締結フランジ部41を備えるものに広く適用でき、同一の作用効果を奏するものとなる。
【0029】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図3および図4により説明する。
この伸縮可撓継手のフランジ構造60では、伸縮可撓継手50の可撓継手本体51の両端部に位置する締結フランジ部61の構造が異なるものである。
【0030】
このフランジ構造60では、リテイナーフランジで構成した締結フランジ部61の内径部に可撓継手本体51に内挿される環状の鋼管で構成した補強管部62が溶接して一体に取り付けてあり、リテイナーフランジで構成した締結フランジ部61の剛性をRFフランジ(JIS規格品)と同等に確保できるようにしてある。
【0031】
そして、補強管部62とリテイナーフランジで構成した締結フランジ部61とが伸縮可撓継手50の両端の基径部14に、補強コード、補強リング、補強ワイヤなどの補強部材13とともに内層ゴムに内挿してある。
【0032】
この締結フランジ部61の接続側の表面は、リテイナーフランジの金属表面のままとされ、伸縮可撓継手50の可撓継手本体51の3つの可撓部16,4つの基径部14の内面を被覆する弾性部材17は、可撓継手本体51の端部までとしてあり、可撓継手本体51の外面が外被弾性部材18で被覆してある。
【0033】
なお、この伸縮可撓継手50の他の構成は、すでに説明した伸縮可撓継手10および伸縮可撓継手30と同一であり、同一部分に同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0034】
このような伸縮可撓継手のフランジ構造60では、ダクタイル鋳鉄管20の管路にこの伸縮可撓継手50を介装する場合には、図4に示すように、ダクタイル鋳鉄管のフランジ部21のシール部材23と伸縮可撓継手50の締結フランジ部61の金属表面とが接触することになり、ゴム同士の接続面とならず、しかも円状鋼板を別に用意して介在させる必要もなく、通常のフランジ接続と同様に施工することができる。
【0035】
また、伸縮可撓継手のフランジ構造60では、リテイナーフランジを補強管部62で補強して内挿使用することで、締結フランジ部61としてRFフランジ(JIS規格品)を使用せず、RFフランジと同等の剛性強度を確保することができるとともに、RFフランジと同等の止水性を確保することができ、安価に製作することができる。
【0036】
なお、上記実施の形態で説明した伸縮可撓継手は一例に過ぎず、地震による変位などを吸収する可撓部の構造やその材料などは、どのようなものであっても良く、両端部に締結フランジ部を設けたものであれば良い。
【0037】
また、被接続管路としてダクタイル鋳鉄管による管路を例に説明したが、必ずしもダクタイル鋳鉄管の管路に限るものでなく、フランジ部の接続面に弾性シール材を介装して接続する他の材質の管路にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0038】
10 伸縮可撓継手
11 可撓継手本体
12 締結フランジ部
13 補強部材
14 基径部
15 内層弾性部材
16 可撓部
17 弾性部材(内面)
18 外被弾性部材(外面)
20 ダクタイル鋳鉄管(被接続管路)
21 フランジ部(ダクタイルGFフランジ)
22 装着凹部
23 シール部材(GFパッキン)
30 伸縮可撓継手
31 可撓継手本体
40 フランジ構造
41 締結フランジ部(リテイナーフランジ)
42 弾性部材(パッキン部)
43 金属部材
50 伸縮可撓継手
51 可撓継手本体
60 フランジ構造
61 締結フランジ部(リテイナーフランジ)
62 補強管部(鋼管部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路のシール部材を取り付けたフランジ部間に締結される伸縮可撓継手のフランジ構造であって、
この伸縮可撓継手の締結フランジ部の表面を弾性部材で被覆するとともに、この締結フランジ部の前記管路の前記シール部材と対向する位置に環状の金属部材を配置し、この金属部材を前記弾性部材に埋設・接着して構成したことを特徴とする伸縮可撓継手のフランジ構造。
【請求項2】
前記締結フランジ部の前記弾性部材に埋設・接着される前記金属部材を弾性部材の表面と面一として構成したことを特徴とする請求項1記載の伸縮可撓継手のフランジ構造。
【請求項3】
前記締結フランジ部の表面を覆う前記弾性部材を、前記伸縮可撓継手の可撓継手本体の内周面を覆う内面弾性部材を延長して構成したことを特徴とする請求項1または2記載の伸縮可撓継手のフランジ構造。
【請求項4】
前記締結フランジ部の表面を被覆する前記弾性部材を前記可撓継手本体の端部までとし、当該締結フランジ部の表面を、前記環状の金属部材と兼用して構成したことを特徴とする請求項3記載の伸縮可撓継手のフランジ構造。
【請求項5】
前記締結フランジ部を、前記可撓継手本体の補強管部と一体に設けて構成したことを特徴とする請求項4記載の伸縮可撓継手のフランジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−99461(P2011−99461A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252749(P2009−252749)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】