説明

位相差フィルム、偏光素子、液晶パネルおよび液晶表示装置

【課題】光弾性係数の絶対値が小さく、且つ、逆波長分散特性を示し、成形加工性に優れる高分子フィルムの延伸フィルムを用いて、液晶表示装置の表示特性や表示均一性を改善し得る薄型の位相差フィルムを提供すること。
【解決手段】23℃における波長550nmの光で測定した光弾性係数の絶対値(m2/N)が、50×10-12以下である高分子フィルムの延伸フィルムからなり、Re[450]<Re[550]<Re[650]およびRth[550]<Re[550]を満足する、位相差フィルム。(ただし、Re[450]、Re[550]およびRe[650]は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nmおよび650nmの光で測定した面内の位相差値であり、Rth[550]は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム、および位相差フィルムを用いた偏光素子、ならびに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力などの特徴が注目され、携帯電話や時計などの携帯機器、パソコンモニターやノートパソコンなどのOA機器、ビデオカメラや液晶テレビなどの家庭用電気製品等に広く普及している。これは、画面を見る角度によって表示特性が変化したり、高温や極低温などで作動しなかったりといった欠点が、技術革新によって克服されつつあるからである。ところが、用途が多岐に渡ると、それぞれの用途で要求される特性が変わってきた。例えば、従来の液晶表示装置においては、視野角特性は、白/黒表示のコントラスト比が、斜め方向で10程度あれば良いとされてきた。この定義は、新聞や雑誌等の白い紙上に印刷された黒いインクのコントラスト比に由来する。しかしながら、据え置きタイプの大型カラーテレビ用途では、同時に数人が画面を見ることになるため、異なった視野角からでもよく見えるディスプレイが要求される。具体的には、白/黒表示のコントラスト比は、例えば20以上が必要とされる。また、ディスプレイが大型になると、画面を見る人は、動かなくても画面の四隅を見る場合に違った視角方向から見るのと同じことになるため、液晶パネルの画面全体にわたり、コントラストや色彩にムラがなく、表示が均一であることが重要になっている。
【0003】
そこで、液晶表示装置には、視野角特性を改善するために、各種の位相差フィルムが用いられている。しかしながら、従来の位相差フィルムを用いた大型の液晶表示装置は、斜め方向で、コントラスト比が低下したり、見る角度に伴って変化する画像の色づき(斜め方向のカラーシフトともいう)が生じたりして、液晶パネルの画面全体で、表示が不均一となることが問題となっていた。また、位相差フィルムの光弾性係数の絶対値が大きいために、液晶表示装置のバックライトを長時間点灯させると、偏光子の収縮応力やバックライトの熱によって、該位相差フィルムに位相差値のずれやムラが発生し、画面の表示均一性をさらに悪化させることが問題となっていた。
【0004】
従来、位相差フィルムの一つとして、短波長ほど位相差値が小さい特性(逆波長分散特性ともいう)を示す高分子フィルムの延伸フィルムが提案されている(特許文献1、2)。たとえば、フルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルム(特許文献1)や、セルロースエステルを主成分とする高分子フィルムの延伸フィルム(特許文献2)などが挙げられる。しかしながら、これらの高分子フィルムの延伸フィルムは、光弾性係数の絶対値が大きいために、歪によって位相差値にずれやムラが生じやすく、液晶表示装置に用いた際に、均一な表示が得られないという問題があった。また、ガラス転移温度が高すぎたり、延伸配向性が低かったりしたために、所望の光学特性(例えば、位相差値や屈折率分布)を得ることが難しかった。そのため、光弾性係数の絶対値が小さく、且つ、逆波長分散特性を示し、成形加工性に優れ、薄型の位相差フィルムの開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2002−221622号公報
【特許文献2】特開2001−091743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、光弾性係数の絶対値が小さく、且つ、逆波長分散特性を示し、成形加工性に優れる高分子フィルムの延伸フィルムを用いて、液晶表示装置の表示特性や表示均一性を改善し得る薄型の位相差フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す偏光素子および液晶パネルにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の位相差フィルムは、23℃における波長550nmの光で測定した光弾性係数の絶対値(m2/N)が、50×10-12以下である高分子フィルムの延伸フィルムからなり、下記式(1)および(2)を満足する:
Re[450]<Re[550]<Re[650] …(1)
Rth[550]<Re[550] …(2)
ただし、Re[450]、Re[550]およびRe[650]は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nmおよび650nmの光で測定した面内の位相差値であり、Rth[550]は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムの厚みが20μm〜200μmである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムのRe[550]が20nm〜400nmである。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)が90℃〜185℃である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムが、下記一般式(I)で表される構
造を含むポリアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである:
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(I)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状の
アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を表す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。)。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムが、下記一般式(II)で表される
構造を含むポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである:
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(II)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状
のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を表す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。)。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記位相差フィルムが、下記一般式(III)で表され
る構造のポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである:
【0018】
【化3】

【0019】
(一般式(III)中、R1、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数
1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を示す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。R7は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、ベンジル基、シリル基、リン酸基、アシル基、ベンゾイル基、またはスルホニル基を示す。)。
【0020】
本発明の別の局面によれば、偏光素子が提供される。この偏光素子は、上記位相差フィルムと偏光子とを備える。
【0021】
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記偏光素子と上記液晶セルとを備える。
【0022】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の位相差フィルムは、光弾性係数が小さく、且つ、下記式(1)および(2)を満足することによって、液晶表示装置に用いた際に良好な表示特性が得られ、且つ、従来の位相差フィルムを用いた場合に問題となっていた、液晶表示装置の画面の表示ムラを防ぐことができる。従来、光弾性係数の絶対値が小さく、且つ、下記式(1)および(2)を満足する位相差フィルムは得られていない。一方、本発明によれば、特定構造のポリビニルアセタールを主成分とする高分子フィルムの両面に所定の収縮率を有する収縮性フィルムを貼り合せて、加熱延伸することにより、実際に、光弾性係数の絶対値が小さい高分子フィルムで、目的とする光学特性を得ることができた。上記高分子フィルムは、成形加工性、延伸性、位相差値の安定性に優れる。また、延伸配向性に優れるため、従来のものに比べ、格段に薄い厚みで、例えばλ/2やλ/4の位相差値を達成できる。
Re[450]<Re[550]<Re[650] …(1)
Rth[550]<Re[550] …(2)
ただし、Re[450]、Re[550]およびRe[650]は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nmおよび650nmの光で測定した面内の位相差値であり、Rth[550]は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
A.位相差フィルムの概略
本発明の位相差フィルムは、23℃における波長550nmの光で測定した光弾性係数の絶対値(m2/N)が、50×10-12以下である高分子フィルムの延伸フィルムからなり、下記式(1)および(2)を満足する。
Re[450]<Re[550]<Re[650] …(1)
Rth[550]<Re[550] …(2)
ただし、Re[450]、Re[550]およびRe[650]は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nmおよび650nmの光で測定した面内の位相差値であり、Rth[550]は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値である。
【0025】
本発明において、上記位相差フィルムは、代表的には、液晶セルの少なくとも片側に配置され、液晶表示装置の斜め方向で生じる光漏れを低減し、斜め方向のコントラスト比を高くし、斜め方向のカラーシフト量を小さくするために用いられる。また、光の波長(通常、可視光領域)に対して、面内の位相差値が約1/4であるλ/4板や、面内の位相差値が約1/2であるλ/2板などの波長板の用途としても用いられる。ただし、本発明の位相差フィルムは、これらの用途に限定されない。
【0026】
上記位相差フィルムの厚みは、目的に応じて、適宜選択され得る。上記位相差フィルムの厚みの範囲として好ましくは20μm〜200μmであり、さらに好ましくは30μm〜180μmである。λ/4板として用いられる場合は、好ましくは40μm〜140μmであり、特に好ましくは60μm〜120μmである。λ/2板として用いられる場合は、好ましくは130μm〜230μmであり、特に好ましくは150μm〜210μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や光学均一性に優れ、A−2項で後述する光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
【0027】
A−1.位相差フィルムの光学特性
本明細書において、Re[550]とは、23℃における波長550nmの光で測定した面内の位相差値をいう。Re[550]は、波長550nmにおける位相差フィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)を位相差フィルムの厚みとしたとき、式:Re[550]=(nx−ny)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とは、面内の屈折率の最大となる方向をいう。なお、Re[450]およびRe[650]は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび650nmの光で測定した面内の位相差値を示す。
【0028】
本発明に用いられる位相差フィルムのRe[550]は、好ましくは20nm〜400nmであり、さらに好ましくは80nm〜350nmである。λ/4板として用いられる場合は、好ましくは100nm〜180nmであり、さらに好ましくは110nm〜170nmであり、特に好ましくは120nm〜160nmであり、最も好ましくは130〜150nmである。λ/2板として用いられる場合は、好ましくは220nm〜300nmであり、さらに好ましくは230nm〜290nmであり、特に好ましくは240nm〜280nmであり、最も好ましくは250nm〜270nmである。上記Re[550]を上記の範囲とすることによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。上記Re[550]は、用いられる高分子フィルムを延伸する際の延伸倍率や延伸温度によって適切な値に調整される。
【0029】
一般的に、光学素子(又は位相差フィルム)の位相差値は、波長に依存して変化する場合がある。これを位相差フィルムの波長分散特性という。本発明の位相差フィルムは、短波長ほど位相差値が小さくなる特性(逆波長分散特性ともいう)を示し、式;Re[450]<Re[550]<Re[650]を満足する。本明細書において、上記波長分散特性は、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内の位相差値の比:Re[450]/Re[550]によって求めることができる。
【0030】
本発明の位相差フィルムのRe[450]/Re[550]は、1より小さい。好ましくは0.70〜0.99であり、さらに好ましくは0.76〜0.92であり、特に好ましくは0.80〜0.88であり、最も好ましくは、0.82〜0.86である。上記Re[450]/Re[550]を上記の範囲とすることによって、可視光の広い領域で位相差値が一定になるため、液晶表示装置に用いた場合に、光漏れする光に、波長の偏りが生じ難く、液晶表示装置の斜め方向のカラーシフト量をより一層小さくすることができる。上記Re[450]/Re[550]は、例えば、後述する樹脂の置換基の種類や構造単位のモル比によって調整される。
【0031】
本明細書において、Rth[550]とは、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth[550]は、波長550nmにおける位相差フィルムの遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれnx、nzとし、d(nm)を位相差フィルムの厚みとしたとき、式:Rth[550]=(nx−nz)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とは、面内の屈折率の最大となる方向をいう。
【0032】
本発明に用いられる位相差フィルムのRth[550]は、式:Rth[550]<Re[550]を満足する。このような範囲に設定することによって、斜め方向の位相差値を適切にすることができるので、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。具体的には、上記Rth[550]は、後述する位相差フィルムのNz係数に応じて適宜、適切な範囲が選択される。例えば、本発明の位相差フィルムが、Nz係数が0.5であるλ/4板として用いられる場合、Rth[550]として好ましくは50nm〜90nmであり、さらに好ましくは55nm〜85nmであり、特に好ましくは60nm〜80nmであり、最も好ましくは65nm〜75nmである。また、本発明の位相差フィルムが、Nz係数が0.5であるλ/2板として用いられる場合、Rth[550]として好ましくは110nm〜150nmであり、さらに好ましくは115nm〜145nmであり、特に好ましくは120nm〜140nmであり、最も好ましくは125nm〜135nmである。上記Rth[550]は、用いられる高分子フィルムを延伸する際の延伸倍率や延伸温度によって、また、後述する収縮性フィルムが用いられる場合は、該収縮フィルムの収縮率によって、適切な値に調整される。
【0033】
Re[550]およびRth[550]は、分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いても求めることができる。23℃における波長550nmの面内の位相差値(Re)、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値(R40)、光学素子(または、位相差フィルム)の厚み(d)及び光学素子(または、位相差フィルム)の平均屈折率(n0)を用いて、以下の式(i)〜(iv)からコンピュータ数値計算によりnx、ny及びnzを求め、次いで式(iv)によりRthを計算できる。ここで、φ及びny’はそれぞれ以下の式(v)及び(vi)で示される。
Re=(nx−ny)×d …(i)
R40=(nx−ny’)×d/cos(φ) …(ii)
(nx+ny+nz)/3=n0 …(iii)
Rth=(nx−nz)×d …(iv)
φ =sin-1[sin(40°)/n0] …(v)
ny’=ny×nz[ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)]1/2 …(vi)
【0034】
本明細書において、Rth[550]/Re[550]は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値と面内の位相差値との比をいう(Nz係数ともいう)。
【0035】
本発明の位相差フィルムのNz係数は、1より小さい。すなわち、上記位相差フィルムは、式;Rth[550]<Re[550]を満足する。好ましくは、上記位相差フィルムのNz係数は0を超え1より小さい。すなわち、式;0nm<Rth[550]<Re[550]を満足するものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、上記位相差フィルムのNz係数は0.2〜0.8であり、特に好ましくは0.3〜0.7であり、最も好ましくは0.4〜0.6である。Nz係数を上記の範囲とすることによって、斜め方向の位相差値が適切に調整され(例えば、位相差値の角度依存性が小さくする)液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
【0036】
上記位相差フィルムの23℃における波長550nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0037】
上記位相差フィルムの23℃における波長550nmの光で測定した光弾性係数の絶対値;C[550](m2/N)は、50×10-12以下である。偏光子の収縮応力や、液晶パネルのバックライトの熱によって、位相差フィルムに発生する位相差値のずれやムラを防ぎ、その結果、良好な表示均一性を有する液晶表示装置を得ることができる。好ましくは、上記位相差フィルムのC[550]は1×10-12〜40×10-12であり、特に好ましくは3×10-12〜30×10-12以下であり、最も好ましくは5×10-12〜25×10-12である。C[550]を上記の範囲とすることによって、目的とする位相差値が得られると共に、位相差フィルムに発生する位相差値のずれやムラを低減することができる。
【0038】
A−2.位相差フィルムに用いられる高分子フィルム
本発明の位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムが用いられる。なお、本明細書において、「延伸フィルム」とは、適当な温度で未延伸のフィルムに張力を加え、または予め延伸されたフィルムにさらに張力を加え、特定の方向に分子の配向を高めたプラスチックフィルムをいう。
【0039】
上記熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、透明性、延伸性、配向性、機械的強度、水分遮蔽性などに優れたものが用いられ得る。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン、ポリ塩化ビニル、セルロースエステル、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の汎用プラスチック;ポリアミド、ポリアセタール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。上記の熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記の熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。上記ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端、立体規則性等の変性が挙げられる。
【0040】
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)として好ましくは90℃〜185℃であり、さらに好ましくは90℃〜150℃であり、特に好ましくは100℃〜140℃であり、最も好ましくは110℃〜130℃である。上記ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121(:1987)に準じたDSC法によって求めることができる。
【0041】
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの吸水率として好ましくは、0.01%〜5%であり、さらに好ましくは0.05%〜4%であり、特に好ましくは0.1%〜3%であり、最も好ましくは0.2%〜2%である。上記の範囲とすることによって、良好な位相差値の安定性を示す位相差フィルムが得られ得る。なお、上記位相差フィルムの吸水率は、JIS K 7209(:2000)に準じた方法によって求めることができる。なお、上記位相差フィルムの吸水率は、本発明に用いられる樹脂の置換基の種類や、水酸基の有無(又は残存量)によって、適宜調整される。
【0042】
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が用いられ得る。例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、およびソルベントキャスティング法等から適宜、適切なものが選択され得る。これらの成形加工法のなかでも、特に好ましくは、押出成形法またはソルベントキャスティング法である。得られる高分子フィルムの平滑性を高め、良好な光学均一性(例えば、位相差値が面内にも厚み方向にも均一なフィルム)が得られ得るからである。上記押出成形法は、具体的には、主成分となる樹脂、可塑剤、添加剤等を含む樹脂組成物を加熱溶融し、これを、Tダイ等を用いてキャスティングロール等の基材(支持体ともいう)の表面に、薄膜状に押出して、冷却させてフィルムを製造する方法である。上記ソルベントキャスティング法は、具体的には、主成分となる樹脂、可塑剤、添加剤等を含む樹脂組成物を溶剤に溶解した濃厚溶液(ドープ)を脱法し、エンドレスステンレスベルト、回転ドラム表面、高分子フィルム(例えばPETフィルム)などの基材(支持体ともいう)の表面に均一に薄膜状に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを製造する方法である。
【0043】
高分子フィルムの成形時に採用される条件は、樹脂の組成や種類、成形加工法によって適宜選択され得る。良好な光学均一性を得るための、成形条件の具体例としては、押出成形法が採用される場合、例えば、樹脂温度は170℃〜250℃で、引き取りロール(冷却ドラム)の温度は50℃〜100℃とし、高温から徐々に冷却させることが好ましい。ソルベントキャスティング法が採用される場合、例えば、用いる溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホシキド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンを用いることが好ましく、上記溶剤の乾燥温度としては、50℃〜180℃であり(さらに好ましくは80℃〜150℃であり)、低温から徐々に昇温して乾燥させることが好ましい。
【0044】
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムには、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤、および位相差調整剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜選択され得る。例えば、上記添加剤の含有量は、高分子フィルムの全固形分100に対して、好ましくは0.01(重量比)〜10(重量比)であり、さらに好ましくは0.05(重量比)〜8(重量比)であり、最も好ましくは0.1(重量比)〜5(重量比)である。
【0045】
好ましくは、本発明の位相差フィルムは、下記一般式(I)で表される構造を含むポリ
アセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。上記ポリアセタール系樹脂は、例えば、主鎖又は側鎖に水酸基を有する高分子樹脂と、アルデヒドとの縮合反応(アセタール化ともいう)によって得ることができる。なお、本明細書においては、アルデヒドと同じカルボニル化合物のケトンを用いて、アセタール化して得られる反応生成物(ケタールともいう)も、上記ポリアセタール系樹脂に包含する。
【0046】
【化4】

【0047】
(一般式(I)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状の
アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を表す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。)。
【0048】
上記一般式(I)中、R2、R3およびR4の置換基は、当該置換基が結合しているベンゼン環の立体配座を制御するために用いられる。より具体的には、上記一般式(I)で
表される構造を含むポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを延伸した際、該置換基は、立体障害により、上記一般式(I)中、2つの酸素原子の間に配座しやすくなると推定される。その結果、上記のベンゼン環の平面構造を、該2つの酸素原子を結ぶ仮想線に対して、略直交に配向させ得る。本発明の位相差フィルムの波長分散特性は、この該2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配向したベンゼン環の波長分散特性と、主鎖構造の波長分散特性との相互作用によって得られるものと考えられる。
【0049】
上記一般式(I)のR1、R2、R3およびR4は、例えば、上記ポリアセタール系樹
脂を得る際に、アルコールと反応させるアルデヒド(代表的には、ベンズアルデヒド類)またはケトン(代表的には、アセトフェノン類やベンゾフェノン類)の種類によって適宜、選択され得る。R1に水素原子を置換する場合は、アルデヒドを用いればよく、水素原子以外の置換基を導入する場合は、ケトンを用いればよい。
【0050】
ベンズアルデヒド類の具体例としては、2−メチルベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、2−ニトロベンズアルデヒド、2−エトキシベンズアルデヒド、2−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジスルフォベンザルデヒドナトリウム、o−スルフォベンザルデヒド2ナトリウム、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、2,6−ジメチルベンズアルデヒド、2,6−ジクロロベンズアルデヒド、2,6−ジメトキシベンズアルデヒド、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(メシトアルデヒド)、2,4,6−トリエチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリクロロベンズアルデヒドなどが挙げられる。アセトフェノン類の具体例としては、2−メチルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、2−クロロアセトフェノン、2−ニトロアセトフェノン、2−ヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジメチルアセトフェノン、4´−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン2−ブロモ−4´−クロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾフェノン類としては、2−メチルベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ニトロベンゾフェノン、2,4´−ジクロロベンゾフェノン、2,4´−ジクロロベンゾフェノン、4,4´−ジクロロベンゾフェノン、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロ−4´−ジクロロベンゾフェノンなどが挙げられる。その他、1−ナフトアルデヒド、置換基を有する2−ナフトアルデヒド、9−アントラアルデヒド、置換基を有する9−アントラアルデヒド、アセトナフトン、フルオレン−9−アルデヒド、2,4,7−トリニトロフルオレン−9−オンなどが挙げられる。これらのアルデヒドまたはケトンは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記アルデヒドまたはケトンは、任意の適切な変性を行ってから用いることもできる。
【0051】
上記一般式(I)のR1として好ましくは、水素原子またはメチル基であり、最も好ま
しくは水素原子である。上記一般式(I)のR2およびR3として好ましくは、それぞれ
独立に、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、およびハロゲン化アルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換基であり、最も好ましくはメチル基である。上記一般式(I)のR
4として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ハロゲン原子、およびハロゲン化アルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換基であり、最も好ましくはメチル基である。このような置換基を導入することにより、光学特性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0052】
さらに好ましくは、本発明の位相差フィルムは、下記一般式(II)で表される構造を
含むポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。当該ポリビニルアセタール系樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とアルデヒドまたはケトンとの縮合反応(アセタール化ともいう)によって得ることができる。下記一般式(II)で表される構造を含むポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フ
ィルムの延伸フィルムであれば、逆波長分散特性を示し、且つ、成形加工性、延伸性に優れる位相差フィルムを得ることができる。
【0053】
【化5】

【0054】
(一般式(II)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状
のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を表す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。lは1以上の整数を表す。)。
【0055】
上記アセタール化は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂とアルデヒドまたはケトンを、強無機酸触媒または強有機酸触媒の存在下で反応させる方法である。酸触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。アセタール化の反応温度は、通常、0℃を超え、用いられる溶剤の沸点以下であり、好ましくは10℃〜100℃であり、最も好ましくは20℃〜80℃である。上記の反応温度であれば、高収率が得られ得る。アセタール化に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、4−ジオキサンなどの環式エーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性溶剤等が好ましく用いられる。これらの溶剤は、1種類又は2種類以上を混合して用いられる。また、水と上記溶剤を混合して用いてもよい。
【0056】
上記ポリビニルアセタール系樹脂の原料となるポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、酢酸ビニルである。
【0057】
上記ポリビニルアセタール系樹脂の原料となるポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度としては、任意の適切な平均重合度が採用され得る。平均重合度は、好ましくは800〜3600であり、さらに好ましくは1000〜3200であり、最も好ましくは1500〜3000である。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726(:1994)に準じた方法によって測定することができる。
【0058】
本発明の位相差フィルムに用いられる、ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール化度は、好ましくは40モル%〜99モル%であり、さらに好ましくは50モル%〜95モル%であり、最も好ましくは60モル%〜90モル%である。上記の範囲とすることによって、光学特性、成形加工性、延伸性、および位相差値の安定性に優れる位相差フィルムを得ることができる。
【0059】
上記アセタール化度とは、アセタール化によりアセタール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にアセタール化されている単位の割合を示したものである。なお、ポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化度は、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)によって求めることができる。
【0060】
特に好ましくは、本発明の位相差フィルムは、下記一般式(III)で表される構造の
ポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。当該ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂と、2種類以上のアルデヒド、2種類以上のケトン、または少なくとも1種のアルデヒドと少なくとも1種のケトンを用い、縮合反応(アセタール化ともいう)によって得ることができる。下記一般式II)で表される構造を含むポリビニルアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルム
の延伸フィルムであれば、逆波長分散特性を示し、成形加工性、延伸性、位相差値の安定性に優れる位相差フィルムを得ることができる。また、延伸配向性にも優れるため、位相差フィルムの厚みを薄くすることができる。
【0061】
【化6】

【0062】
(一般式(III)中、R1、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数
1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を示す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。R7は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、ベンジル基、シリル基、リン酸基、アシル基、ベンゾイル基、またはスルホニル基を示す。l、m、およびnは1以上の整数を表す。)
【0063】
上記一般式(III)中、R5およびR6置換基は、上記一般式(III)で表される構造を含むポリアセタール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを延伸して得られる位相差フィルムの波長分散特性をより緻密に制御するために用いられる。より具体的には、R5およびR6に置換基を導入することによって、当該高分子フィルムを延伸した際に、当該置換基を延伸方向に対して略平行に配向させ得る。本発明の位相差フィルムの波長分散特性は、前述した2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配向したベンゼン環の波長分散特性と、主鎖構造の波長分散特性と、ここで述べたR5およびR6に導入される置換基の波長分散特性との相互作用によって得られるものと考えられる。また、該高分子フィルムの成形加工性、延伸性、位相差値の安定性、および延伸配向性をより一層向上させることもできる。
【0064】
上記R5およびR6は、例えば、上記ポリビニルアセタール系樹脂を得る際に、アルコールと反応させるアルデヒド(代表的には、ベンズアルデヒド類)またはケトン(代表的には、アセトフェノン類やベンゾフェノン類)の種類によって適宜、選択され得る。アルデヒドおよびケトンの具体例としては、前述のとおりである。
【0065】
上記R5として好ましくは、水素原子またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。上記R6として好ましくは、メチル基またはエチル基であり、最も好ましくはエチル基である。このような置換基を導入することにより、成形加工性、延伸性、位相差値の安定性、および延伸配向性に極めて優れた位相差フィルムが得られ得る。
【0066】
上記一般式(III)中、R7の置換基は、残存する水酸基を保護(エンドキャップ処理ともいう)することにより吸水率を適切な値に調整し、溶剤に対する樹脂の溶解性、成形加工性、および位相差値の安定性を高めるために用いられる。したがって、得られた位相差フィルムの吸水率や光学特性、また、本発明の位相差フィルムが用いられる用途によっては、R7はエンドキャップ処理されていなくてもよく、水素原子のままでもよい。
【0067】
上記R7は、例えば、水酸基の残存するポリビニルアセタール系樹脂を得た後に、従来公知の、水酸基と反応して置換基を形成するもの(代表的には、保護基)を用いて、エンドキャップ処理することによって得ることができる。上記保護基の具体例としては、ベンジル基、4−メトキシフェニルメチル基、メトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、メタンスルホニル基、ビス−4−ニトロフェニルフォスファイトなどが挙げられる。エンドキャップ処理の反応条件としては、水酸基と反応させる置換基の種類によって、適宜、適切な反応条件が採用され得る。例えば、アルキル化、ベンジル基、シリル化、リン酸化、スルホニル化などの反応は、水酸基の残存するポリビニルアセタール系樹脂と目的とする置換基の塩化物とを、4(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどの触媒の存在下、25℃〜100℃で1時間〜20時間攪拌して行うことができる。上記R7として好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、およびt−ブチルジメチルシリル基から選ばれる1種のシリル基である。これらの置換基を用いることによって、高温多湿下などの環境においても、高い透明性を保ち、位相差値の安定性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
【0068】
上記一般式(III)中、l、m、およびnの比率は、置換基の種類や目的に応じて、適宜選択され得る。好ましくは、l、m、およびnの合計を100(モル%)とした場合に、lは5〜30(モル%)、mは20〜80(モル%)、nは1〜70(モル%)であり、特に好ましくは、lは10〜28(モル%)、mは30〜75(モル%)、nは1〜50(モル%)であり、最も好ましくは、lは15〜25(モル%)、mは40〜70(モル%)、nは10〜40(モル%)である。上記の範囲とすることによって、逆波長分散特性を示し、成形加工性、延伸性、位相差値の安定性、および延伸配向性に極めて優れた位相差フィルムを得ることができる。
【0069】
A−3.位相差フィルムの製造方法
本発明の位相差フィルムは、例えば、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で、加熱延伸して得ることができる。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、特に制限はないが、上記高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの間に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層を設けて接着する方法が、作業性、経済性に優れる点から好ましい。
【0070】
本発明の位相差フィルムの、製造方法の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。高分子フィルム302は、第1の繰り出し部301から繰り出され、ラミネートロール307および308により、該高分子フィルムの両面に、2枚の粘着剤層を備える収縮性フィルムが貼り合わされる。一方の収縮性フィルム304は、第2の繰り出し部303から繰り出され、他方の収縮性フィルム306は、第3の繰り出し部305から繰り出される。両面に収縮性フィルムが貼着された高分子フィルムは、温度制御手段309によって一定温度に保持されながら、速比の異なるロール310、311、312、および313によって、フィルム長手方向の張力を付与され(同時に、収縮性フィルムが収縮することによって、該高分子フィルムへ厚み方向にも張力が付与される)ながら、延伸処理に供される。延伸処理後、粘着剤層を備える収縮性フィルム315および317は、第1の巻き取り部314および第2の巻き取り部316にて巻き取られ、本発明の位相差フィルム318が第3の巻き取り部319で巻き取られる。
【0071】
上記収縮性フィルムは、140℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S(MD)が、2.7%〜9.4%であって、幅方向の収縮率:S(TD)が、4.6%〜15.8%であるものが好ましく用いられる。また、上記収縮性フィルムは、幅方向の収縮率と長手方向の収縮率の差:ΔS=S(TD)−S(MD)が、3.2%〜9.6%の範囲にあるものが好ましい。上記の範囲であれば、光学均一性に優れ、上記A−1項に記載の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
【0072】
上記収縮率S(MD)およびS(TD)は、JIS Z 1712(:1997)の加熱収縮率A法に準じて求めることができる(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃とし、試験片に荷重3gを加えたことが異なる)。具体的には、幅20mm、長さ150mmの試験片を縦(MD)、横(TD)方向から各5枚採り、それぞれの中央部に約100mmの距離において標点をつけた試験片を作製する。該試験片は、温度140℃±3℃に保持された空気循環式乾燥オーブンに、荷重3gをかけた状態で垂直につるし、15分間加熱した後、取り出し、標準状態(室温)に30分間放置してから、JIS B 7507に規定するノギスを用いて、標点間距離を測定して、5個の測定値の平均値を求め、S(%)=[[加熱前の標点間距離(mm)−加熱後の標点間距離(mm)]/加熱前の標点間距離(mm)]×100より算出することができる。
【0073】
上記収縮性フィルムは、好ましくは、二軸延伸フィルムおよび一軸延伸フィルム等の延伸フィルムである。上記収縮性フィルムは、例えば、押出法によりシート状に成形された未延伸フィルムを同時二軸延伸機等で所定の倍率に縦および/または横方向に延伸して得ることができる。なお、成形および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類や目的に応じて、適宜選択され得る。
【0074】
上記収縮性フィルムを形成する材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。本発明に用いられる収縮性フィルムとしては、これらのなかでも、特に、機械的強度、熱安定性、表面均一性等に優れる点で、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
【0075】
また、上記収縮性フィルムとしては、本発明の目的を満足するものであれば、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、および電気絶縁用等の用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販の収縮性フィルムの具体例としては、王子製紙(株)製 商品名「アルファンシリーズ」、グンゼ(株)製 商品名「ファンシートップシリーズ」、東レ(株)製 商品名「トレファンシリーズ」、サン・トックス(株) 商品名「サントックス−OPシリーズ」、東セロ(株) 商品名「トーセロOPシリーズ」等が挙げられる。
【0076】
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を加熱延伸する際の温度制御手段内の温度(延伸温度ともいう)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移点(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃の範囲で行う。位相差値が均一になり易く、かつ、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。より具体的には、上記延伸温度は、好ましくは90℃〜170℃であり、さらに好ましくは100℃〜160℃であり、最も好ましくは110℃〜150℃である。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121(:1987)に準じたDSC法により求めることができる。
【0077】
上記温度制御手段としては、特に制限はないが、熱風又は冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波もしくは遠赤外線などを利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、ヒートパイプロール又は金属ベルトなどを用いた公知の加熱方法や温度制御方法を挙げることができる。
【0078】
また、上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸する倍率(延伸倍率)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。上記延伸倍率は、好ましくは1.1倍〜2.5倍であり、さらに好ましくは1.2倍〜2.0倍である。また、延伸時の送り速度は、特に制限はないが、延伸装置の機械精度、安定性等から好ましくは0.5m/分〜30m/分、より好ましくは1m/分〜20m/分である。上記の延伸条件であれば、目的とする光学特性を満足し得るのみならず、光学均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
【0079】
B.偏光素子の概略
図2(a)〜(c)は、本発明の偏光素子の好ましい実施形態の代表例を示す概略断面図である。なお、見やすくするために、図2における各構成部材の縦、横および厚みの比率は、実際とは異なって記載されていることに留意されたい。この偏光素子10は、偏光子1と位相差フィルム2とを備える。実用的には、上記偏光子1の外側(位相差フィルム2が貼着されていない側)に、任意の保護層が積層され得る。図2(a)は、偏光素子10が、偏光子1の片側に(接着層を介さずに)位相差フィルム2が積層されてなる場合を示す。このような形態によれば、当該位相差フィルムが、偏光子の一方の側の保護層を兼ねることとなり、偏光素子の薄型化に貢献し得る。図2(b)は、偏光素子10が、偏光子1の片側に接着層3を介して位相差フィルム2が積層されてなる場合を示す。このような形態であれば、当該位相差フィルムが、偏光子の一方の側の保護層を兼ねることとなり、偏光素子の薄型化に貢献し得る。また、高温多湿下の環境下においても、偏光子と位相差フィルムとが剥離しにくい偏光素子が得られ得る。図2(c)は、偏光素子10が、偏光子1の片側に接着層3を介して保護層4が積層され、さらに上記保護層4の片側(偏光子1が貼着されていない側)に、接着層5を介して位相差フィルム2が積層されてなる場合を示す。このような形態によれば、高温多湿下の環境下においても、偏光子と位相差フィルムとが剥離しにくい偏光素子が得られ、且つ、該偏光子の収縮応力によって、該位相差フィルムの位相差値のズレやムラが生じにくい偏光素子が得られ得る。なお、本発明の偏光素子は、上記の実施形態に限定されず、例えば、図2に示した各構成部材の間に他の構成部材が配置されたものであっても良い。以下、本発明の偏光素子の構成部材について詳細に説明する。
【0080】
B−1.偏光子
本明細書において、偏光子とは、自然光または偏光を任意の偏光に変換し得る光学フィルムをいう。本発明の偏光板に用いられる偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。好ましくは、自然光または偏光を直線偏光に変換するフィルムが用いられる。
【0081】
上記偏光子の厚みとしては、任意の適切な厚みが採用され得る。偏光子の厚みは、代表的には5μm〜80μmであり、好ましくは10μm〜50μmであり、さらに好ましくは20μm〜40μmである。上記の範囲であれば、光学特性や機械的強度に優れる。
【0082】
上記偏光子の23℃で測定した波長440nmの透過率(単体透過率ともいう)は、好ましくは41%以上、さらに好ましくは43%以上である。なお、単体透過率の理論的な上限は50%である。また、偏光度は、好ましくは99.8%〜100%であり、更に好ましくは、99.9%〜100%である。上記の範囲であれば、液晶表示装置に用いた際に正面方向のコントラスト比をより一層高くすることができる。
【0083】
上記単体透過率および偏光度は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光子の平行透過率(H0)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H0)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlSZ8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0084】
好ましくは、上記偏光子は、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、例えば、特開2000−315144号公報[実施例1]に記載の方法により製造される。
【0085】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。これらのなかでも好ましくは、酢酸ビニルである。
【0086】
上記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度としては、任意の適切な平均重合度が採用され得る。平均重合度は、好ましくは1200〜3600であり、さらに好ましくは1600〜3200であり、最も好ましくは1800〜3000である。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726(:1994)に準じた方法によって測定することができる。
【0087】
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、偏光子の耐久性の点から、好ましくは90.0モル%〜99.9モル%であり、さらに好ましくは95.0モル%〜99.9モル%であり、最も好ましくは98.0モル%〜99.9モル%である。
【0088】
上記ケン化度とは、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を示したものである。なお、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、JIS K 6726(:1994)に準じて求めることができる。
【0089】
上記偏光子に用いられるポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、好ましくは、可塑剤として多価アルコールを含有し得る。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用され得る。本発明においては、延伸性、透明性、熱安定性等の観点から、エチレングリコールまたはグリセリンが好ましく用いられる。
【0090】
上記多価アルコールの使用量としては、ポリビニルアルコール系樹脂の全固形分100に対して、好ましくは1〜30(重量比)であり、さらに好ましくは3〜25(重量比)であり、最も好ましくは0.05〜0.3(重量比)である。上記の範囲であれば、染色性や延伸性をより一層向上させることができる。
【0091】
上記ニ色性物質としては、任意の適切なニ色性物質が採用され得る。具体的には、ヨウ素またはニ色性染料等が挙げられる。本明細書においては、「ニ色性」とは、光軸方向とそれに直交する方向との2方向で光の吸収が異なる光学的異方性をいう。
【0092】
上記ニ色性染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジSおよびファーストブラック等が挙げられる。
【0093】
偏光子の製造方法の一例について、図3を参照して説明する。図3は、本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム201は、繰り出し部200から繰り出され、ヨウ素水溶液浴210中に浸漬され、速比の異なるロール211及び212でフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤および染色工程に供される。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液の浴220中に浸漬され、速比の異なるロール221及び222でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理に供される。架橋処理されたフィルムは、ロール231および232によって、ヨウ化カリウムを含む水溶液浴230中に浸漬され、水洗処理に供される。水洗処理されたフィルムは、乾燥手段240で乾燥されることにより水分率が調節され、巻き取り部260にて巻き取られる。偏光子250は、これらの工程を経て、上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを元長の5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
【0094】
上記偏光子の水分率としては、任意の適切な水分率が採用され得る。好ましくは、水分率は5%〜40%であり、さらに好ましくは10%〜30%であり、最も好ましくは20%〜30%である。
【0095】
また、本発明に用いられる偏光子としては、上述した偏光子の他に、例えば、二色性物質を練り込んだ高分子フィルムの延伸フィルム、二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプのO型偏光子(米国特許5,523,863号)、およびリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光子(米国特許6,049,428号)等も用いることができる。
【0096】
B−2.接着層
図2(b)(c)を参照すると、接着層3および5は、偏光子1と位相差フィルム2との間、または偏光子1と保護層4との間、および保護層4と位相差フィルム2との間に配置され、各構成部材を互いに接着するために用いられる。上記接着層は、各構成部材を互いに接着するためのものであれば特に制限はなく、例えば、接着剤層、粘着剤層、アンカーコート層などが採用され得る。
【0097】
上記接着剤層を形成する接着剤としては、任意の適切な接着剤が採用され得る。好ましくは、透明性、熱安定性、低複屈折性などに優れる材料である。具体例としては、水溶性接着剤、熱可塑性接着剤、ホットメルト接着剤、ゴム系接着剤、熱硬化性接着剤、モノマー反応型接着剤、無機系接着剤、天然物接着剤などが挙げられる。好ましくは、光学透明性に優れ、耐候性や耐熱性に優れるという点で、脂肪族系イソシアネートを主成分とするモノマー反応型接着剤[三井武田ケミカル(株)製 商品名「タケネート631」]、または、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性接着剤[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーゼファイマーZシリーズ」]である。上記接着剤層の厚みは、被着体となる樹脂の種類や、接着力、使用される環境等に応じて、適宜、適切な範囲に決定できる。上記接着剤層の好適な厚みの範囲は、好ましくは0.01μm〜50μmであり、さらに好ましくは0.05μm〜20μmであり、最も好ましくは0.1μm〜10μmである。
【0098】
上記粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。好ましくは、透明性、熱安定性、低複屈折性などに優れる材料である。具体例としては、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系型粘着剤、ホットメルト型粘着剤、液状硬化型粘着剤、硬化型粘着剤、カレンダー法による粘着剤などが挙げられる。好ましくは、光学透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性に優れるという点で、アクリル系重合体をベースポリマーとする溶剤型粘着剤(アクリル系粘着剤ともいう)が好ましく用いられる。具体例としては、アクリル系粘着剤を粘着剤層として備える光学用両面テープ[綜研化学(株)製 商品名「SK−2057」]が挙げられる。上記粘着剤層の好適な厚みの範囲は、一般には、1μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜80μmであり、最も好ましくは10μm〜50μmである。
【0099】
上記アンカーコート層を形成する材料としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。好ましくは、透明性、熱安定性、低複屈折性などに優れる材料である。具体例としては、ポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタンおよびポリ塩化ビニリデン等を主成分とする熱可塑性樹脂が挙げられる。上記の熱可塑性樹脂のなかでも、ポリエステルを主成分とするものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリウレタンとポリエステルを共重合させた変性ポリエステルを主成分とするものである。このような変性ポリエステルは、特開平8−122969号公報の[0025]〜[0032]に記載されている方法により製造される。上記変性ポリエステルの具体例としては、東洋紡(株)製 商品名「バイロンURシリーズ」が挙げられる。
【0100】
上記接着層を形成する方法としては、任意の適切なコータを用いた塗工方式を用いることができる。上記コータの具体例としては、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、ロッドコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータ、エアドクタコータ、キスコータ、ディップコータ、ビードコータ、ブレードコータ、キャストコータ、スプレイコータ、スピンコータ、押出コータ、ホットメルトコータ等が挙げられる。これらのなかでも、本発明にはリバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータ、スピンコータが好ましく用いられる。上記のコータを用いた塗工方式であれば、薄く、且つ、表面均一性に優れた接着層を形成することができる。
【0101】
上記接着層を各構成部材(例えば、偏光子、保護層および位相差フィルム)の表面に積層する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、ホットメルトラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーション、ドライラミネーション等が挙げられる。本発明において、接着層として接着剤層またはアンカーコート層が採用される場合は、ウエットラミネーションが好ましく、接着層として粘着剤層が採用される場合は、ドライラミネーションが好ましい。
【0102】
B−3.保護層
上記保護層を形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽製などに優れるものが好ましく用いられる。具体例としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、生分解性プラスチック等が挙げられる。なかでも、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。上記熱可塑性樹脂は、非晶性ポリマーであっても、結晶性ポリマーであってもよい。非晶性ポリマーは、透明性に優れるという利点を有する。一方、結晶性ポリマーは、剛性、強度、耐薬品性に優れるという利点を有する。
【0103】
前記高分子基材に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、繊維素系樹脂等の汎用プラスチック;ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。また、上記の熱可塑性樹脂は、従来公知のポリマー変性を行ってから用いることもできる。上記ポリマー変性の例としては、共重合、分岐、架橋、分子末端、立体規則性等の変性が挙げられる。なお、本発明において、上記保護層は、以上の例示したものに限定されない。
【0104】
また、上記保護層としては、市販の高分子フィルムを用いることもできる。例えば、富士写真フィルム(株)製 商品名「フジタック」や、日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオノア」、JSR(株)製 商品名「アートン」などが挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルム、たとえば、イソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体、及び/又はアクリロニトリル・スチレン共重合体を含む樹脂組成物の高分子フィルムなども挙げられる。
【0105】
上記保護層の厚みとしては、任意の適切な厚みが採用され得る。保護層の厚みは、代表的には5μm〜150μmであり、好ましくは10μm〜120μmであり、さらに好ましくは20μm〜100μmである。上記の範囲であれば、光学特性や機械的強度に優れる。
【0106】
C.液晶パネル
図4は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略斜視図である。この液晶パネル100は、液晶セル50と、本発明の偏光素子10とを備える。図4(a)(b)は、液晶セル50の一方の側に、偏光素子10(位相差フィルム2と偏光子1との積層体)を備え、液晶セル50の他方の側に、任意の光学フィルム30(代表的には、保護層や他の位相差フィルム)と偏光子20とを備える。図4(a)は、上記位相差フィルム2の遅相軸が偏光子1の吸収軸と実質的に平行である場合を示し、図4(b)は、上記位相差フィルム2の遅相軸が偏光子1の吸収軸と実質的に直交である場合を示す。図4(c)は、液晶セル50の一方の側に、偏光素子10(位相差フィルム2と偏光子1との積層体)と、任意の光学フィルム30(代表的には、保護層や他の位相差フィルム)とを備え、液晶セル50の他方の側に偏光子20を備える。図示例では、位相差フィルム2の遅相軸が偏光子1の吸収軸と実質的に直交である場合を示しているが、これは実質的に平行であってもよい。図4(a)〜(c)の形態によれば、液晶パネルの斜め方向の光漏れを低減し、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。図4(d)は、液晶セル50の両側に、偏光素子10(10’)を備え、上記液晶セル50の一方に任意の光学フィルム30(代表的には、保護層や他の位相差フィルム)を備える。位相差フィルム2は、その遅相軸が、偏光子1(1’)の吸収軸と実質的に45°になるように配置される。このような形態によれば、偏光素子10(10’)を円偏光板とすることができる。
【0107】
なお、本明細書において、「実質的に平行」とは、位相差フィルム2の遅相軸と偏光子1の吸収軸とのなす角度が、0°±2.0°である場合を包含し、好ましくは0°±1.0°であり、更に好ましくは0°±0.5°である。また、「実質的に直交」とは、位相差フィルム2の遅相軸と偏光子1の吸収軸とのなす角度が、90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、更に好ましくは90°±0.5°である。また、「実質的に45°」とは、位相差フィルム2の遅相軸と偏光子1の吸収軸とのなす角度が、45°±2.0°である場合を包含し、好ましくは45°±1.0°であり、更に好ましくは45°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、液晶表示装置に用いた際に、正面および斜め方向のコントラスト比が低下する傾向がある。以下、本発明の液晶パネルの構成部材について詳細に説明する。
【0108】
C−1.液晶セル
本発明の液晶パネルに用いられる液晶セルは、一対の基板と、一対の基板の間に挟持された表示媒体としての液晶層とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターが設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板に設けてもよい。一対の基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。基板の液晶層と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0109】
液晶層は、好ましくは、電界が存在しない状態で、ツイスティッド配列、ホメオトロピック配列、ホモジニアス配列、ベンド配列、およびハイブリッド配列から選ばれた少なくとも1種の分子配列状態に配向されたネマチック液晶を含む液晶層である。上記ツイスティッド配列とは、液晶分子が両方の基板面に対し略平行に配列しているが、その配列方位が両基板間で90°捩れている状態のものをいう。電界が存在しない状態でツイスティッド配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、ツイスティッド・ネマチック(TN)モードが挙げられる。上記ホメオトロピック配列とは、液晶分子が両方の基板面に対し略垂直に配向している状態のものをいう。電界が存在しない状態でホメオトロピック配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、バーティカル・アライメント(VA)モードが挙げられる。上記ホモジニアス配列とは、液晶分子が両方の基板面に対し略平行に配向している状態のものをいう。電界が存在しない状態でホモジニアス配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、インプレーン・スイッチング(IPS)モードや、ホモジニアス型ECBモードが挙げられる。上記ベンド配列とは、液晶分子が一方の基板面に対し略平行であり、液晶層の中心に向かうに従って基板面に対し略垂直な角度を呈し、液晶層から離れるに従って他方の基板と平行になるように漸次連続的に変化している状態のものをいう。電界が存在しない状態でベンド配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、オプティカリー・コンペンセイティド・ベンド(OCB)モードが挙げられる。上記ハイブリッド配列とは、液晶分子が一方の基板面に対し略垂直であり、他方の基板面に対し同一方位で平行に配列している状態の(したがって、液晶分子の配列は両基板間で連続的に90°曲がっている)ものをいう。電界が存在しない状態でハイブリッド配列に配向されたネマチック液晶を含む液晶層を用いる駆動モードの代表例としては、ハイブリッド配列・ネマチック(HAN)モードが挙げられる。
【0110】
上記ネマチック液晶としては、目的に応じて任意の適切なネマチック液晶が採用され得る。例えば、ネマチック液晶は、誘電率異方性が正のものであっても、負のものであっても良い。VAモードの液晶表示装置においては、誘電率異方性が負のネマチック液晶が好ましく用いられる。誘電率異方性が正のネマチック液晶の具体例としては、メルク社製 商品名「ZLI−4535」が挙げられる。誘電率異方性が負のネマチック液晶の具体例としては、メルク社製 商品名「ZLI−2806」が挙げられる。また、上記ネマチック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、すなわち複屈折率(ΔnLC)は、上記液晶セルの応答速度や透過率等によって任意に設定できるが、通常0.05〜0.30であることが好ましい。
【0111】
上記液晶セルのセルギャップ(基板間隔)としては、目的に応じて任意の適切なセルギャップが採用され得る。セルギャップは、好ましくは1.0μm〜7.0μmである。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
【0112】
C−2.他の位相差フィルム
本発明において、他の位相差フィルムは、液晶セルの駆動モードに応じて、適宜、適切なものが採用され得る(液晶セルの駆動モードによっては、他の位相差フィルムは省略され得る)。図4を参照すると、他の位相差フィルム30は、液晶セル50と偏光子20との間か、又は液晶セル50と位相差フィルム2(2’)との間に配置される。なお、図示例では、他の位相差フィルム30が液晶セル50の片側に1枚のみ配置されているが、これは、2枚であってもよいし、該液晶セルの両側に他の位相差フィルムが、それぞれ1枚以上配置されていてもよい。2枚以上の他の位相差フィルムが用いられる場合は、各位相差フィルムは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0113】
好ましくは、上記他の位相差フィルム30は、液晶セル50の位相差値を光学的に補償し、キャンセルするために用いられる。図5は、他の位相差フィルムを用いて液晶セルの位相差値をキャンセルする方法を説明する代表的な概念図である。本明細書において、「液晶セルをキャンセルする」とは、液晶セルと他の位相差フィルムとの積層体が、実質的にnx=ny=nzの関係を有する等方的な屈折率分布となるように、光学的に補償することをいう。図6に示すように、例えば、屈折率分布がnz>nx>nyの関係を有する液晶セル(代表的には、駆動モードがTNモード、OCBモードおよびHANモードである液晶セル)の位相差値をキャンセルするためには、好ましくは、屈折率分布がnx>ny>nzの関係を有する他の位相差フィルムを、液晶セルと他の位相差フィルムの遅相軸がそれぞれ直交するように配置する。なお、簡単のため、図示例では、屈折率分布がnz>nx>nyの関係を有する液晶セルの場合についてのみ示したが、屈折率分布がnz>nx=nyの関係を有する液晶セル、屈折率分布がnx>ny=nzの関係を有する液晶セルにおいても、適宜、適切な屈折率分布を有する他の位相差フィルムを用いて、本発明が適用できることはいうまでもない。
【0114】
他の位相差フィルムを形成する材料としては、従来公知のもののなかから、適宜、適切な材料が選択され得る。好ましくは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽製などに優れるものが好ましく用いられる。具体例としては、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルム、および液晶化合物を任意の配列に配向させ、固化または硬化させた光学フィルムである。なお、他の位相差フィルムの位相差値は、上記液晶セルの屈折率分布(結果としては、位相差値)に応じて、適切な値が設定される。
【0115】
C−3.各構成部材の配置手段
各構成部材(例えば、位相差フィルム、偏光子、液晶セル)を配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、各構成部材の間に接着層(代表的には、接着剤層、または粘着剤層)を設け、対向する部材どうしを接着させる。各構成部材の隙間をこのように接着層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各構成部材の光学軸の関係がずれることを防止したり、各構成部材どうしが擦れて傷がついたりすることを防ぐことができる。また、各構成部材の隙間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際に、正面方向および斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
【0116】
上記接着層の厚み、および接着層を形成する材料の種類は、上記B−2項に記載したものと同様の範囲、同様のものが採用され得る。
【0117】
D.液晶表示装置
本発明の液晶パネルは、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の液晶表示装置や、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機EL)、プロジェクター、プロジェクションテレビ、プラズマテレビ等の画像表示装置に用いることができる。なかでも、本発明の液晶パネルは、液晶表示装置に好適に用いられ、液晶テレビに特に好適に用いられる。
【0118】
図6は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。この液晶表示装置150は、液晶パネル100と、液晶パネル100の両側に配置された保護層60、60’と、保護層60、60’の更に外側に配置された表面処理層70、70’と、表面処理層70'の外側(バックライト側)に配置された、輝度向上フィルム80、プリズムシート110、導光板120およびランプ130とを備える。上記表面処理層70、70’としては、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散処理(アンチグレア処理ともいう)などを施した処理層が用いられる。また、上記輝度向上フィルム80としては、偏光選択層を有する偏光分離フィルム(例:住友3M(株)製 商品名「D−BEFシリーズ」)などが用いられる。これらの光学部材を用いることによって、更に表示特性の高い表示装置を得ることができる。また、別の実施形態においては、図6に例示した光学部材は、本発明を満足する限りにおいて、用いられる液晶セルの駆動モードや用途に応じて、その一部が省略されるか、若しくは他の光学部材に代替され得る。
【実施例】
【0119】
本発明について、以上の実施例および比較例を用いて更に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)組成比の測定:
核磁気共鳴スペクトルメーター[日本電子(株)製 製品名「LA400」](測定溶媒;重DMSO溶媒、周波数;400MHz、観測核;1H、測定温度;25℃)を用い、0.83ppm、0.95−2.0ppm、3.5−5.0ppm、6.76ppmのピークより求めた。
(2)ガラス転移温度の測定:
示差走査熱量計[セイコー(株)製 製品名「DSC−6200」]を用いて、JIS K 7121(:1987)(プラスチックの転移温度測定方法)に準じた方法により求めた。具体的には、10mgの粉末サンプルを、窒素雰囲気下(ガスの流量;50ml/分)で昇温(加熱速度;10℃/分)させて2回測定し、2回目のデータを採用した。熱量計は、標準物質(インジウム)を用いて温度補正を行った。
(3)厚みの測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(4)位相差値(Re、Rth)の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いて、23℃における波長550nmの光で測定した。なお、波長分散測定については、波長450nmおよび650nmの光も用いた。
(5)フィルムの平均屈折率の測定方法:
アッベ屈折率計[アタゴ(株)製 製品名「DR−M4」]を用いて、23℃における波長589nmの光で測定した屈折率より求めた。
(6)透過率の測定方法:
紫外可視分光光度計[日本分光(株)製 製品名「V−560」]を用いて、23℃における波長550nmの光で測定した。
(7)光弾性係数の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5N〜15N)をかけながら、サンプル中央の位相差値(23℃/波長550nm)を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから算出した。
(8)吸水率の測定:
JIS K 7209(:2000)(プラスチックの吸水率および沸騰吸水率試験方法)に準じた方法により測定した。試験サンプルは50mm×50mmで、厚みが40μm〜100μmで行った。
(9)液晶表示装置のコントラスト比の測定方法:
以下の方法、液晶セル[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10に搭載されているもの]、測定装置を用いて、23℃の暗室でバックライトを点灯させてから、所定の時間が経過した後、測定を行った。液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、極角78°方向における全方位(360°)の表示画面のXYZ表色系のY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、全方位のコントラスト比「YW/YB」を算出し、モノクロの濃淡でコントラスト・コンター(等高)図を描いた。なお、極角78°とは表示画面の正面方向を0°としたときに、角度78°に傾斜した方向を表す。
(10)液晶表示装置のカラーシフト量の測定方法:
以下の方法、液晶セル[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10に搭載されているもの]、測定装置を用いて、23℃の暗室でバックライトを点灯させてから、所定の時間が経過した後、測定を行った。液晶表示装置に、黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、極角78°方向における全方位(360°)のXYZ表色系のx値およびy値を測定し、xy色度図上に測定値をプロットした。
【0120】
[参考例1]樹脂の合成(i)
5.0gのポリビニルアルコール系樹脂[日本合成化学(株)製 商品名「NH−18」(重合度;1800、ケン化度;99.0%)]を105℃で2時間乾燥させた後、95mlのジメチルスルホシキド(DMSO)に溶解した。ここに、3.78gの2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(メシトアルデヒド)、1.81gのプロピオンアルデヒド、および1.77gのp−トルエンスルホン酸・1水和物を加えて、40℃で4時間攪拌した。得られた反応生成物を、2.35gの炭酸水素ナトリウムを溶解させた2/1(体積/体積)の水/エタノール溶液に滴下し、再沈殿を行った。これをろ過して得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解して、ジエチルエーテル中に滴下し、再沈殿を行った。これをろ過して得られたポリマーを乾燥させて、7.89gの白色ポリマーを得た。上記白色ポリマーは、1H−NMRにより測定したところ、下記式(IV)に示す構造(l:m:n=22:46:32)のポリビニルアセタール系樹脂であった。また、示差走査熱量計により、該白色ポリマーのガラス転移温度を測定したところ、102℃であった。
【0121】
【化7】

【0122】
[参考例2]樹脂の合成(ii)
5.0gのポリビニルアルコール系樹脂[日本合成化学(株)製 商品名「NH−18」(重合度;1800、ケン化度;99.0%)]を105℃で2時間乾燥させた後、95mlのジメチルスルホシキド(DMSO)に溶解した。ここに、2.02gの2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(メシトアルデヒド)、および0.44gのp−トルエンスルホン酸・1水和物を加えて、40℃で2時間攪拌した。これに、13.41gの1,1−ジエトキシエタン(アセタール)を加え、さらに40℃で2時間攪拌した。その後、1.18gのトリエチルアミンを加え、反応を終了した。得られた反応生成物(ポリマー)を、メタノール溶液に滴下し、再沈殿を行った。このポリマーを沈降させ、上澄み液をデカンテーションで除去した後、さらに、メタノール/水=1/1(体積/体積)を加えて、該ポリマーを洗浄した。これをろ過して得られたポリマーを乾燥させて、7.50gの白色ポリマーを得た。上記白色ポリマーは、1H−NMRにより測定したところ、下記式(V)に示す構造(l:m:n=21:58:21)のポリビニルアセタール系樹脂であった。また、示差走査熱量計により、該白色ポリマーのガラス転移温度を測定したところ、120℃であった。
【0123】
【化8】

【0124】
[参考例3]高分子フィルムの作製(i)
参考例2で得られた上記式(V)に示す構造(l:m:n=21:58:21)のポリビニルアセタール系樹脂(17.7重量部)をトルエン(100重量部)に溶解し、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート[東レ(株)製 商品名「ルミラーS27−E」]の表面に、コンマコーターにて均一に塗工し、多室型の空気循環式乾燥オーブン中(誤差±1℃)で、80℃で20分間、120℃で20分間、140℃で30分間と低温から徐々に昇温しながら乾燥させて、乾燥後の厚みが155μmであり、残留揮発成分量が2%の高分子フィルを作製した。この高分子フィルムの透過率は90%、吸水率は3%であった。
【0125】
[参考例4]樹脂の合成(iii)
下記式(VI)に示す構造のモノマーAと、下記式(VII)に示す構造のモノマーBとを、A/B=32/68(モル/モル)の比率で、水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、少量のハイドロサルファイドを加えた。次に、塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを60分間吹き込んだ。得られた反応溶液に、p−ter―ブチルフェノールを加えて乳化させ、その後、トリエチルアミンを加えて30℃で3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後、反応溶液から有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させて、乳白色のポリマーを得た。得られたポリマーは、1H−NMRにより測定したところ、組成比がモノマー仕込み量とほぼ同様のポリカーボネート系樹脂であった。また、示差走査熱量計により、該ポリマーのガラス転移温度を測定したところ、227℃であった。
【0126】
【化9】

【0127】
【化10】

【0128】
[参考例5]高分子フィルムの作製(ii)
参考例4で得られたポリカーボネート系樹脂(17.7重量部)を塩化メチレン(100重量部)に溶解し、厚み75μmのポリエチレンテレフタレート[東レ(株)製 商品名「ルミラーS27−E」]の表面に、コンマコーターにて均一に塗工し、多室型の空気循環式乾燥オーブン中(誤差±1℃)で、30℃で20分間、60℃で20分間、130℃で30分間と低温から徐々に昇温しながら乾燥させて、乾燥後の厚みが80μmであり、残留揮発成分量が1%の高分子フィルを作製した。この高分子フィルムの透過率は90%であった。
【0129】
[参考例6]他の位相差フィルムの作製
2,2′−ジクロロ−4,4′,5,5′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(40mmol)と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(40mmol)とを出発原料(モノマー)として用い、定法に従ってポリイミド[重量平均分子量=94,000、平均屈折率=1.57、Δnxz=0.07]を合成した。このポリイミド(17.7重量部)を、メチルイソブチルケトン(100重量部)に溶解し、ロッドコータを用いてトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製 商品名「フジタックUZ」]の表面に、一方向に塗工し、135±1℃の空気循環式恒温オーブン内で5分間、次いで、150±1℃の空気循環式恒温オーブン内で10分間乾燥して溶剤を蒸発させて、上記トリアセチルセルロースフィルム層と、厚み3.1μmの上記ポリイミド層とを有する積層体を得た。この積層体を積層位相差フィルムXとした。積層位相差フィルムXのRe[550]は0.2nmであり、Rth[550]は290nmであった。
【0130】
[参考例7]偏光子の作製
ポリビニルアルコールを主成分とする高分子フィルム[クラレ(株)製 商品名「9P75R(厚み:75μm、平均重合度:2,400、ケン化度99.9モル%)」]を30℃±3℃に保持したヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴にて、ロール延伸機を用いて、染色しながら2.5倍に一軸延伸した。次いで、60±3℃に保持したホウ酸とヨウ化カリウム配合の水溶液中で、架橋反応を行いながら、ポリビニルアルコールフィルムの元長の6倍となるように一軸延伸した。得られたフィルムを50℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内で30分間乾燥させて、水分率23%,厚み28μm、偏光度99.9%、単体透過率43.5%の偏光子P1およびP2を得た。
【0131】
[参考例8]VAモードの液晶セルの作製
VAモード(ノーマリーブラックモード)の液晶セルを含む液晶表示装置[松下電器産業(株)製 32V型TH−32LX10]から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた部材(粘着剤層、偏光板、および位相差フィルム)を取り除いて、上記液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。上記液晶セルの無電界印加時におけるRth[550]は320nmであった。
【0132】
[実施例1]位相差フィルムの作製(i)
参考例3と同様の方法により得られた、厚み155μmの高分子フィルム(平均屈折率=1.50、Re[550]=2.0nm、Rth[550]=2.0nm)の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンE60−高収縮タイプ」(厚み60μm)]をアクリル系粘着剤(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、141℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で、1.5倍に延伸し、位相差フィルムAを作製した。得られた位相差フィルムAの特性を、後述の実施例2および比較例1のフィルム特性と併せて下記表1に示す。また、上記位相差フィルムAの一部を80℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内で放置し、100時間後のRe[550]を測定したところ、Re[550]の変化は2%未満であり、上記位相差フィルムAは、優れた位相差値の安定性を示した。
【0133】
【表1】

【0134】
なお、本例で用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、140℃における収縮率が、MD方向に6.4%、TD方向に12.8%であった。アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして、溶液重合により合成されたイソノニルアクリレート(重量平均分子量=550,000)を用い、該ポリマー100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物の架橋剤[日本ポリウレタン(株)製 商品名「コロネートL」]3重量部、触媒[東京ファインケミカル(株)製 商品名「OL−1」]10重量部を混合したものを用いた。
【0135】
[実施例2]位相差フィルムの作製(ii)
延伸前の高分子フィルムの厚みを90μmとし、延伸温度を141℃に代えて138℃とし、延伸倍率を1.5倍に代えて1.6倍とした以外は、実施例1と同様の方法で位相差フィルムBを作製した。得られた位相差フィルムBの特性は表1の通りである。
【0136】
[比較例1]位相差フィルムの作製(iii)
参考例5と同様の方法により得られた、厚み80μmの高分子フィルム(平均屈折率=1.55、Re[550]=2.0nm、Rth[550]=5.0nm)の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム[東レ(株)製 商品名「トレファンE60−高収縮タイプ」(厚み60μm)]をアクリル系粘着剤(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、220℃±1℃の空気循環式乾燥オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で、1.2倍に延伸し、位相差フィルムCを作製した。得られた位相差フィルムCの特性は表1の通りである。
【0137】
[実施例3]偏光素子の作製(i)
参考例7で得た偏光子P1の一方の面に、参考例6で得た位相差フィルムAを、その遅相軸が、上記偏光子P1の吸収軸と平行(0°±0.5°)となるように、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤層(厚み1μm)[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]を介して積層した。このようにして作製した、偏光素子を偏光素子Aとした。
【0138】
[参考例10] 偏光素子の作製(ii)
参考例7で得た偏光子P2の一方の面に、参考例6で得た積層位相差フィルムXを、その遅相軸が、上記偏光子P2の吸収軸と平行(0°±0.5°)となるように、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを主成分とする接着剤層(厚み1μm)[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」]を介して積層した。このようにして作製した、偏光素子を偏光素子Bとした。
【0139】
[実施例4]液晶パネルおよび液晶表示装置の作製
参考例8で得た液晶セルの視認側の表面に、実施例3で得られた偏光素子Aを、位相差フィルムAが偏光子P1と上記液晶セルとの間に配置されるように、且つ、上記液晶セルの長辺と上記偏光子P1の吸収軸が互いに平行となるようにアクリル系粘着剤層(厚み20μm)を介して積層した。続いて、上記液晶セルのバックライト側に、参考例10で得られた偏光素子Bを、積層位相差フィルムXが偏光子P2と上記液晶セルとの間に配置されるように、且つ、上記液晶セルの短辺と上記偏光子P2の吸収軸が互いに平行となるようにアクリル系粘着剤層(厚み20μm)を介して積層した。
【0140】
このようにして得た液晶パネルAをバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作成した。バックライトを点灯させた直後の液晶パネルは、全面で良好な表示均一性を有するものであった。バックライトを点灯し続けて10分経過後に斜め方向のコントラスト比と斜め方向のカラーシフト量を測定した。得られた液晶表示装置の斜め方向のコントラスト・コンター図と、xy色度図を、図7および図8にそれぞれ示す。図7を参照すると、コントラスト比が90以上を示す白く表示された部分(コントラスト比が極めて高い部分)が表示画面の全方位(特に上下左右方向)に大きく広がり、極角78°、方位角360°における斜め方向のコントラスト比の平均値は44.7(最大値;55.3、最小値;30.9)であった。また、図8を参照すると、プロットの上下左右方向への動きはほとんどなく、斜め方向のカラーシフト量は小さかった。さらに、バックライトを点灯し続け、3時間後の表示画面を目視観察したところ、表示ムラは観察されず、液晶表示装置Aは良好な表示均一性を有していた。
【0141】
[評価]
実施例1〜4に示すように、特定構造のポリビニルアセタールを主成分とする高分子フィルムの両面に所定の収縮率を有する収縮性フィルムを貼り合せて、加熱延伸することにより、23℃における波長550nmの光で測定した光弾性係数の絶対値(m2/N)が50×10-12以下であり、Re[450]<Re[550]<Re[650]とRth[550]<Re[550]とを同時に満たす位相差フィルムを、実際に得ることができた。また、本発明の位相差フィルムを組み込んだ液晶表示装置は、良好な表示特性(高コントラスト比、低カラーシフト量)を示し、且つ、長時間バックライトを点灯しても、良好な表示均一性を有するものであった。一方、比較例1に示す位相差フィルムは、Re[450]<Re[550]<Re[650]の関係は満足するものの、光弾性係数の絶対値が大きかった。また、実施例と同様の延伸方法では、Rth[550]<Re[550]の関係を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、本発明の位相差フィルムによれば、光弾性係数の絶対値が小さく、且つ、逆波長分散特性を示すため、液晶表示装置の表示特性向上に、極めて有用であると言える。本発明の液晶パネルは、液晶表示装置および液晶テレビに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
【図2】本発明の偏光素子の好ましい実施形態の代表例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略斜視図である。
【図5】他の位相差フィルムを用いて液晶セルの位相差値をキャンセルする方法を説明する代表的な概念図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図7】実施例4で得られた液晶表示装置の斜め方向のコントラスト・コンター図である。
【図8】実施例4で得られた液晶表示装置の斜め方向のxy色度図である。
【符号の説明】
【0144】
1、1’ 偏光子
2、2’ 位相差フィルム
3、5 接着層
4 保護層
10、10’ 偏光素子
20 偏光子
30 任意の光学フィルム
50 液晶セル
60、60’ 保護層
70、70’ 表面処理層
8 輝度向上フィルム
110 プリズムシート
120 導光板
130 ランプ
100 液晶パネル
200 繰り出し部
201 高分子フィルム
210 ヨウ素水溶液浴
211、212、221、222、231、232 ロール
220 ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液の浴
230 ヨウ化カリウムを含む水溶液浴
240 乾燥手段
250 偏光子
260 巻き取り部
301 第1の繰り出し部
302 高分子フィルム
303 第2の繰り出し部
304、306、315、317 収縮性フィルム
305 第3の繰り出し部
307、308 ラミネートロール
309 温度制御手段
310、311、312、313 ロール
314 第1の巻き取り部
316 第2の巻き取り部
318 位相差フィルム
319 第3の巻き取り部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃における波長550nmの光で測定した光弾性係数の絶対値(m2/N)が、50×10-12以下である高分子フィルムの延伸フィルムからなり、下記式(1)および(2)を満足する、位相差フィルム:
Re[450]<Re[550]<Re[650] …(1)
Rth[550]<Re[550] …(2)
ただし、Re[450]、Re[550]およびRe[650]は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nmおよび650nmの光で測定した面内の位相差値であり、Rth[550]は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値である。
【請求項2】
前記位相差フィルムの厚みが20μm〜200μmである、請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記位相差フィルムのRe[550]が20nm〜400nmである、請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
前記高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)が、90℃〜185℃である、請求項1から3のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項5】
前記位相差フィルムが、下記一般式(I)で表される構造を含むポリアセタール系樹脂
を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである、請求項1から4のいずれかに記載の位相差フィルム:
【化1】

(一般式(I)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状の
アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を表す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。)。
【請求項6】
前記位相差フィルムが、下記一般式(II)で表される構造を含むポリビニルアセター
ル系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである、請求項1から5のいずれかに記載の位相差フィルム:
【化2】

(一般式(II)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状
のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を表す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。lは1以上の整数を表す。)。
【請求項7】
前記位相差フィルムが、下記一般式(III)で表される構造のポリビニルアセタール
系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである、請求項1から6のいずれかに記載の位相差フィルム:
【化3】

(一般式(III)中、R1、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数
1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアントラニル基、又は置換基を有していてもよいフェナントレニル基を表す。R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分鎖状のアルコキシル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基又はチオール基を示す。ただし、R2およびR3は、同時に水素原子ではない。R7は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖状、分鎖状若しくは環状のアルキル基、ベンジル基、シリル基、リン酸基、アシル基、ベンゾイル基、またはスルホニル基を示す。l、m、およびnは1以上の整数を表す。)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の位相差フィルムと偏光子とを備える、偏光素子。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光素子と液晶セルとを備える液晶パネル。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶パネルを備える液晶表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−220726(P2006−220726A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31678(P2005−31678)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】