説明

位置情報取得システム

【課題】GPSを利用した位置情報取得システムでありながら、誤差の少ない正確な位置情報の取得を実現できるようにする。
【解決手段】圃場の進入口に配置され且つ識別情報IDを有するRFIDタグ41と、RFIDタグ41の識別情報を読み取るタグリーダ42と、人工衛星STからの電波にて自己の測定位置情報を検出する移動局ユニット43と、RFIDタグ41の基準位置情報を識別情報に対応させて予め記憶した外部サーバ44と、トラクタ1に搭載したコントローラ40とを備える。タグリーダ42と移動局ユニット43とはトラクタ1に搭載する。コントローラ40は、トラクタ1が圃場の進入口にあるときに基準位置情報を外部サーバ44から取得し、このときの測定位置情報と基準位置情報とから補正情報を算出し、補正情報と測定位置情報とに基づいて、トラクタ1の現在の自己位置情報を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、トラクタ等の走行型農作業機やクレーン車等の特殊作業機のような作業車両の位置情報を取得するための位置情報取得システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農業分野では、複数の農作業機を所有する個人又は法人に対して、所有者や所在地の異なる複数の圃場の管理を一括して委託するいわゆる委託農業が増加している。このため、作業日時や走行履歴等の作業履歴を正確に記録できるナビゲーション装置を搭載した走行型農作業機(例えば特許文献1及び2等参照)の需要が高まっている。
【0003】
走行型農作業機用のナビゲーション装置は、例えば自動車用のものと同様に、全地球測位システム( Global Positioning System:以下、GPSという)を利用したものであり、その測位方式としては、人工衛星から送信される電波(C/Aコード信号)をそのまま用いる単独測位方式や、コード位相を用いるD−GPS方式がある。
【特許文献1】特開平10−234204号公報
【特許文献2】特開2001−251906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行型農作業機用のナビゲーション装置は、オペレータが変わったりしても過去の圃場内での走行履歴等から作業の進捗状況を把握できるように、高い測位精度を有することが要求される。
【0005】
しかし、前者の単独測位方式は民生用の電波(C/Aコード信号)をそのまま利用するものであるため、例えば人工衛星の軌道誤差、電離層と大気とによる電波伝搬の遅延、及びマルチパス誤差(地上付近の建物や地表等からの反射波による誤差)等が生じ、その結果、測位誤差が10数m程度もあり、走行型農作業機用のナビゲーション装置の測位方式には適していないという問題があった。
【0006】
一方、後者のD−GPS方式は単独測位方式を応用したものであり、位置が明らかな地上のGPS基準局にて測定した測定位置情報(擬似距離)と基準位置情報(基準局と人工衛星との間の距離)との差を補正情報として、中波ビーコンやFM放送等の地上波にてナビゲーション装置(移動局)に送信し、当該補正情報に基づいてナビゲーション装置の測定位置情報を修正するというものである。このため、D−GPS方式の測位誤差は数10cm〜数m程度に抑えられており、D−GPS方式であれば単独測位方式より測位精度が高い。
【0007】
しかし、D−GPS方式では、基準局からの補正情報が中波ビーコンやFM放送等の地上波にて送信されるため、山間部にある圃場等のように地上波が届き難い場所では、測位誤差が大きくなるという問題があった。
【0008】
本願発明は以上のような現状に鑑みてなされたものであり、GPSを利用したものでありながら、正確な位置情報の取得を実現できる位置情報取得システムを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明に係る位置情報取得システムは、所定の場所に配置され且つ個別の識別情報を有する情報媒体と、この情報媒体の前記識別情報を読み取るための読み取り手段と、人工衛星からの電波にて自己の測定位置情報を検出するためのGPS測位手段と、前記情報媒体の配置場所を特定する基準位置情報を前記識別情報に対応させて予め記憶した記憶手段と、前記GPS測位手段と前記記憶手段とに無線又は有線にて接続した情報処理手段とを備えており、前記読み取り手段と前記GPS測位手段とは作業車両に搭載されており、前記情報処理手段は、前記作業車両が前記情報媒体の配置箇所に位置したときに前記読み取り手段にて読み取った前記識別情報に対する前記基準位置情報を前記記憶手段から取得し、このときに前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報と、前記基準位置情報とから補正情報を算出し、この補正情報と前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報とに基づいて、前記作業車両の現在の自己位置情報を算出するように制御するというものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した位置情報取得システムにおいて、前記作業車両は走行型農作業機であり、前記情報媒体は、RFIDタグであって、所定の圃場における進入口の箇所に配置されており、前記記憶手段には、前記基準位置情報と共に圃場名及び領域情報等の圃場特定情報も前記識別情報に対応させて記憶されており、前記情報処理手段には、前記走行型農作業機の前記自己位置情報を時系列の履歴情報として記憶するための履歴記憶手段が無線又は有線にて接続されており、前記走行型農作業機には、現在の前記自己位置情報と前記履歴情報と前記圃場特定情報とを表示し得る表示手段を備えているというものである。
【0011】
請求項3の発明に係る位置情報取得システムは、所定の場所に配置され且つ当該場所を特定する基準位置情報を記憶した情報媒体と、前記情報媒体の前記基準位置情報を読み取るための読み取り手段と、人工衛星からの電波にて自己の測定位置情報を検出するためのGPS測位手段と、前記GPS測位手段に無線又は有線にて接続した情報処理手段とを備えており、前記読み取り手段と前記GPS測位手段とは作業車両に搭載されており、前記情報処理手段は、前記作業車両が前記情報媒体の配置箇所に位置したときに前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報と、このときに前記読み取り手段にて読み取った前記基準位置情報とから補正情報を算出し、この補正情報と前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報とに基づいて、前記作業車両の現在の自己位置情報を算出するように制御するというものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載した位置情報取得システムにおいて、前記作業車両は走行型農作業機であり、前記情報媒体は、前記基準位置情報と共に圃場名及び領域情報等の圃場特定情報も前記識別情報に対応させて記憶されたRFIDタグであって、所定の圃場における進入口の箇所に配置されており、前記情報処理手段には、前記走行型農作業機の前記自己位置情報を時系列の履歴情報として記憶するための履歴記憶手段が無線又は有線にて接続されており、前記走行型農作業機には、現在の前記自己位置情報と前記履歴情報と前記圃場特定情報とを表示し得る表示手段を備えているというものである。
【発明の効果】
【0013】
独立項である請求項1の構成によると、作業車両が情報媒体の配置箇所に位置したときに読み取り手段にて読み取った識別情報に対する基準位置情報を記憶手段から取得し、このときにGPS測位手段にて検出した測定位置情報と前記基準位置情報とから補正情報を算出し、この補正情報と前記測定位置情報とに基づいて前記作業車両の現在の自己位置情報を算出できる。このため、測定したい場所に前記情報媒体を配置しておけば、山間部にある圃場等のようにGPS基準局からの地上波が届き難い場所であっても、測位誤差をD−GPS方式のそれと同程度に維持できる。従って、GPSを利用したものでありながら、地上波の受信状況に関係なく、正確な位置情報の取得を実現できるという効果を奏する。
【0014】
また、独立項である請求項3の構成によると、情報媒体が配置場所を特定する基準位置情報を記憶しているので、作業車両が情報媒体の配置箇所に位置したときにGPS測位手段にて検出した測定位置情報と、このときに読み取り手段にて読み取った前記基準位置情報とから補正情報を算出できる。そして、前記補正情報と前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報とに基づいて前記作業車両の現在の自己位置情報を算出できる。
【0015】
従って、請求項1の場合と同様に、GPSを利用したものでありながら、地上波の受信状況に関係なく、正確な位置情報の取得を実現できるという効果を奏するのである。
【0016】
更に、請求項2及び4のように構成すると、D−GPS方式のGPS基準局に代えて、情報媒体としてのRFIDタグを利用するだけで高い測位精度を実現でき、コストも安価で済み、極めて経済的であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図7)に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図6は本願発明を農作業用トラクタに適用した第1実施形態を示している。図1は第1実施形態におけるトラクタの側面図、図2はトラクタの平面図、図3は位置情報取得システムの機能ブロック図、図4は表示手段の画面にトラクタの現在の自己位置情報と履歴情報と圃場特定情報とを表示した状態の説明図、図5は圃場とRFIDタグとトラクタとの位置関係を示す平面図、図6は位置情報取得制御のフローチャートである。なお、図2ではトラクタにおけるキャビンの図示が省略されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、作業車両としての走行型農作業機の一例であるトラクタ1は、その走行機体2が左右一対の前車輪3,3と同じく左右一対の後車輪4,4とで支持されている。走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて前車輪3,3及び後車輪4,4を駆動することにより、トラクタ1は前後進走行するように構成されている。
【0020】
エンジン5はボンネット6にて覆われている。また、走行機体2の上面にはキャビン7が設置されており、キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3の操向方向を左右に動かすようにした操向丸ハンドル9とが備えられている。操縦丸ハンドル9は操縦座席8の前方に位置する操縦コラム10の箇所に設けられている。
【0021】
操縦コラム10の上部には、表示手段としての液晶表示装置31が設けられている。液晶表示装置31は、文字、記号、画像等の情報を表示できるカラーのドットマトリクス型の液晶パネル32(画面)と、これを収納するケース33とにより構成されている(図4参照)。
【0022】
キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ11が設けられており、ステップ11より内側で且つキャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク12が設けられている。
【0023】
走行機体2は、バンパ13及び前車軸ケース14を有するエンジンフレーム15と、エンジンフレーム15の後部にボルトにて着脱自在に固定された左右の機体フレーム16とにより構成されている。機体フレーム16の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前後四車輪3,3,4,4に伝達するための走行変速機構(図示せず)を有するミッションケース17が搭載されている。後車輪4は、ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18を介して取り付けられている。
【0024】
ミッションケース17には、エンジン5からの回転動力の一部を後述するPTO軸23に伝達するためのPTO変速機構(図示せず)も内蔵されている。PTO変速機構は、走行機体2の後部に配置されたロータリ耕耘機24の回転伝動系への入口において、回転動力の大きさを無段階又は段階的に調節する(適宜変速させる)ためのものである。
【0025】
ミッションケース17の後部上面には、ロータリ耕耘機24を昇降動するための油圧式昇降機構20が着脱可能に取り付けられている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に対して、一対の左右ロワーリンク21及びトップリンク22からなる3点リンク機構を介して連結されている。左右ロワーリンク21の前端側は、ミッションケース17における左右の側面後部に対してピンにて回動可能に連結されている。トップリンク22の前端側は、油圧式昇降機構20のトップリンクヒッチ27に対してピンにて連結されている。ミッションケース17の後面には、ロータリ耕耘機24にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸23が後ろ向きに突出するように設けられている。このPTO軸23は、両端に自在継手を有する伸縮可能な伝動軸25を介して、ロータリ耕耘機24から前向きに突出したPTO入力軸26に連結されている。
【0026】
油圧式の作業機用昇降機構20には、単動形の昇降制御油圧シリンダ(図示せず)にて回動する一対の左右リフトアーム28が取り付けられている。走行機体2の進行方向に向かって左側にあるロワーリンク21とリフトアーム28とは、リフトロッド29を介して連結されている。走行機体2の進行方向に向かって右側にあるロワーリンク21とリフトアーム29とは、複動形の傾斜制御油圧シリンダ30を介して連結されている。
【0027】
次に、図3〜図5を参照しながら、第1実施形態における位置情報取得システムの構成について説明する。
【0028】
この位置情報取得システムは、情報媒体としてのRFID( Radio Frequency IDenti-fication)タグ41と、このRFIDタグ41が有する識別情報IDを読み取るための読み取り手段としてのタグリーダ42と、人工衛星STからの電波(C/Aコード信号)にて自己の測定位置情報を検出するためのGPS測位手段としての移動局ユニット43と、RFIDタグ41の配置場所を特定する基準位置情報BLをRFIDタグ41の識別情報IDに対応させて予め記憶した記憶手段としての外部サーバ44と、移動局ユニット43及び外部サーバ44に無線又は有線にて接続した情報処理手段としてのコントローラ40とを備えている。
【0029】
RFIDタグ41は、自身(個別)の識別情報IDを非接触(無線通信)にてタグリーダ42に送信するためのものであり、第1実施形態では、所定の場所、例えば各圃場Gにおける進入口Aの箇所に敷設されている(図5参照)。
【0030】
第1実施形態のRFIDタグ41は、外部との無線通信を可能にするアンテナ部46と、信号の変復調を行う変復調回路47と、自身の識別情報IDを格納したメモリ部48とを備えたパッシブ型のものである。すなわち、第1実施形態のRFIDタグ41はタグリーダ42からの電波を電源として作動するタイプのものであり、自発的に識別情報を発信するものではない。なお、RFIDタグ41としては、電池を内蔵して自発的に識別情報を発信し得るアクティブ型のものでもよい。
【0031】
タグリーダ42は、外部との無線通信を可能にするアンテナ部49と、信号の変復調処理を行う変復調回路50とを備えている。第1実施形態のタグリーダ42は、トラクタ1における走行機体2の下面(より詳しくはミッションケース17の下面)に取り付けられており、圃場Gの進入口Aに敷設されたRFIDタグ41との間で、それぞれのアンテナ部46,49を介して無線通信するように構成されている。このタグリーダ42にて、RFIDタグ41のメモリ部48に格納された識別情報IDが読み出されることになる。タグリーダ42は、走行機体2に搭載されたコントローラ40の入力インターフェイスに接続されている。
【0032】
移動局ユニット43は走行機体2に搭載されており、キャビン7の天井に取り付けられたGPSアンテナ51と、当該GPSアンテナ51が接続されたGPS受信機52とを備えている。GPS受信機52は、GPSアンテナ51にて捕捉した人工衛星STからの電波(人工衛星の現在位置情報等)から、現時点の自己の測定位置情報ML(ひいてはトラクタ1の測定位置情報)を求めるためのものであり、この測定位置情報MLをコントローラ40に向けて出力するために、コントローラ40の入力インターフェイスに接続されている。
【0033】
外部サーバ44は、前述の通り、RFIDタグ41の配置場所を特定する基準位置情報BLを当該RFIDタグ41の識別情報IDに対応させて予め記憶したものである。第1実施形態の外部サーバ44は、トラクタ1の外部(例えば委託農業管理会社等)に設置されており、インターネット回線網INを介して無線基地局BSに接続されている。一方、トラクタ1側のコントローラ40の入出力インターフェイスには、無線アンテナ53を有する無線通信機54が接続されており、無線基地局BSからの電波が届く範囲内にあるコントローラ40との間で、双方向の無線通信を行えるように構成されている。
【0034】
第1実施形態の外部サーバ44には、RFIDタグ41の識別情報IDに対応した基準位置情報BLと共に、圃場名及び領域情報等の圃場特定情報FIが併せて記憶されており、コントローラ40が外部サーバ44から基準位置情報BLを取得する場合は、これに併せて圃場特定情報FIも読み込むように構成されている。
【0035】
第1実施形態の圃場特定情報FIは、圃場名NAと圃場Gの四隅部C1〜C4を囲んだ領域(作業エリア)に対応した平面視略矩形状等の適宜形状の領域情報MAとで構成されている(図4参照)。これらの情報NA,MAをトラクタ1の現在の自己位置情報TLや後述する履歴情報REと組み合わせて液晶表示装置31の液晶パネル32に表示することにより、オペレータは過去及び現在の作業進捗状況等を視覚的且つ的確に把握できる。
【0036】
なお、外部サーバ44に代えて、RFIDタグ41の基準位置情報BLを当該RFIDタグ41の識別情報IDに対応させて予め記憶したデータベースを、走行機体に搭載してもよい。
【0037】
コントローラ40は、移動局ユニット43にて検出したトラクタ1の測定位置情報MLと、RFIDタグ41の配置場所を特定する基準位置情報BLとを利用して、トラクタ1の現在の自己位置情報TLをできるだけ正確に取得するためのものである。
【0038】
第1実施形態のコントローラ40は、各種演算処理や制御を実行するCPU55、後述する位置情報取得制御のためのプログラムやデータを記憶させる不揮発性メモリとしてのEEPROM56、前記プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM57、入出力系機器(液晶パネル32やGPS受信機52等)に接続してデータ(制御情報)のやり取りをするための入出力インターフェイス(図示せず)等を備えている。
【0039】
第1実施形態のEEPROM56は、トラクタ1の自己位置情報TLを時系列の履歴情報REとして記憶するように構成されている。すなわち、EEPROM56は特許請求の範囲に記載した履歴記憶手段に相当する。
【0040】
次に、図6に示すフローチャートを参照しながら、コントローラ40による位置情報取得制御の一例について説明する。
【0041】
まず、図6に示す位置情報取得制御のスタートに続き、所定の圃場Gにおける進入口Aの箇所にあるRFIDタグ41の識別情報IDがタグリーダ42にて読み取り可能か否かを判別する(ステップS1)。
【0042】
識別情報IDをタグリーダ42にて読み取れない場合というのは、トラクタ1が所定の圃場Gにおける進入口Aの箇所にいない状態(タグリーダ42の下方にRFIDタグ41がない状態)である。従って、識別情報IDをタグリーダ42にて読み取り不能であると判断したときは(S1:NO)、このまま待機するために再びステップS1に戻る。
【0043】
識別情報IDをタグリーダ42にて読み取り可能であると判断したときは(S1:YES)、トラクタ1が所定の圃場Gにおける進入口Aの箇所にいる状態なので、識別情報IDをタグリーダ42を介して読み込む(ステップS2)。
【0044】
次いで、コントローラ40は、読み込んだ識別情報IDに対応した基準位置情報BLと、圃場名NA及び領域情報MAで構成された圃場特定情報FIとを、外部サーバ44から読み込む(ステップS3)。
【0045】
次いで、トラクタ1が進入口Aの箇所に位置した状態で、移動局ユニット43にて当該箇所での測定位置情報MLを測定したのち(ステップS4)、この測定位置情報MLをGPS受信機52から読み込む(ステップS5)。
【0046】
次いで、ステップS3で読み込まれた基準位置情報BL(RFIDタグ41と人工衛星STとの間の距離)と、ステップS5で読み込まれた測定位置情報ML(擬似距離)との差を補正情報AJとして求める(ステップS6)。
【0047】
次いで、この補正情報AJとステップS5で読み込まれた測定位置情報MLとに基づいて、トラクタ1の現在の自己位置情報TLを算出し(ステップS7)、この自己位置情報TL、及び圃場名NA等の圃場特定情報FIを、オペレータに視認可能な状態で、液晶表示装置31の液晶パネル32に表示するのである(ステップS8)。
【0048】
次いで、適宜微少時間経過後(移動後)に、移動局ユニット43にて進入口Aの箇所から少し移動したトラクタ1の測定位置情報MLを測定したのち(ステップS9)、この測定位置情報MLをGPS受信機52から読み込む(ステップS10)。
【0049】
次いで、この補正情報AJとステップS10で読み込まれた測定位置情報MLとに基づいて、トラクタ1の現在の自己位置情報TLを算出し(ステップS11)、この自己位置情報TL、時系列の履歴情報RE及び圃場特定情報FIを、液晶表示装置31の液晶パネル32に表示する(ステップS12)。従って、液晶パネル32には、トラクタ1の移動軌跡EXに対応した履歴情報REも表示されることになる。そして、ステップS9に戻るのである。
【0050】
以上の制御によると、トラクタ1がRFIDタグ41の配置箇所(進入口Aの箇所)に位置したときにタグリーダ42にて読み取った識別情報IDに対する基準位置情報BLを外部サーバ44から取り出し、このときに移動局ユニット43にて検出したトラクタ1の測定位置情報MLと、基準位置情報BLとから補正情報AJを算出し、この補正情報AJと測定位置情報MLとに基づいて、トラクタ1の現在の自己位置情報TLを算出できるので、測定したい場所(圃場G等)にRFIDタグ41を敷設しておけば、山間部にある圃場G等のようにGPS基準局からの地上波が届き難い場所であっても、測位誤差をD−GPS方式のそれと同程度に維持できる。従って、第1実施形態の位置情報取得システムによると、GPSを利用したものでありながら、地上波の受信状況に関係なく、正確な位置情報の取得を実現できるという効果を奏するのである。
【0051】
また、第1実施形態では、D−GPS方式のGPS基準局に代えてRFIDタグを利用するだけで高い測位精度を実現でき、コストも安価で済み、極めて経済的である。
【0052】
更に、圃場名NAと領域情報MAとからなる圃場特定情報FIを、トラクタ1の現在の自己位置情報TLや履歴情報REと組み合わせて液晶表示装置31の液晶パネル32に表示することにより、オペレータは過去及び現在の作業進捗状況等を視覚的且つ的確に把握できる。このため、作業性の向上に寄与できるのである。
【0053】
次に、図7を参照しながら、RFIDタグの別例を示す第2実施形態について説明する。図12は第2実施形態における位置情報取得システムの機能ブロック図である。
【0054】
第2実施形態では、RFIDタグ41′自身がその配置場所を特定するための基準位置情報BL及び圃場特定情報FIを予め記憶している点と、このため、外部サーバ44(無線通信機54も)が不要になった点とにおいて、第1実施形態のものと相違している。その他の構成は第1実施形態と基本的に同様であるから、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
このように構成した場合は、トラクタ1がRFIDタグ41の配置箇所(進入口Aの箇所)に位置したときにタグリーダ42′にて読み取った基準位置情報BLと、このときに移動局ユニット43にて検出したトラクタ1の測定位置情報MLとから補正情報AJを算出し、この補正情報AJと測定位置情報MLとに基づいて、トラクタ1の現在の自己位置情報TLを算出できるので、第1実施形態の場合と同様に、GPSを利用したものでありながら、地上波の受信状況に関係なく、正確な位置情報の取得を実現できるという効果を奏するのである。
【0056】
なお、RFIDタグ41′のメモリ部48′を読み出し・書き込み可能なものとし、タグリーダ42′にも、リーダ機能(メモリ部48′からの読み出し機能)だけでなくライタ機能(メモリ部48′への書き込み機能)を持たせれば、時系列の履歴情報REを作業終了後にRFIDタグ41′のメモリ部48′に格納できる。従って、圃場Gごとに作業に関する情報を保管できて好適である。
【0057】
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明の情報媒体はRFIDタグに限らず、バーコード等の接触型のものでも適用できる。
【0058】
また、情報媒体の配置箇所は進入口Aの1箇所に限るものではない。例えば圃場Gの隅部C1〜C4のそれぞれに情報媒体を設置しておけば、作業車両をいずれの隅部C1〜C4から進入させた場合も、この進入位置の情報に基づいて、基準位置情報BLひいては作業車両の自己位置情報TLを得ることができる。もちろん、圃場Gの形状は様々であるから、領域情報MAはその境界に沿って様々な形状となり得るし、情報媒体をその境界に沿って適宜個数配置できる。
【0059】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態におけるトラクタの側面図である。
【図2】トラクタの平面図である。
【図3】第1実施形態における位置情報取得システムの機能ブロック図である。
【図4】表示手段の画面にトラクタの現在の自己位置情報と履歴情報と圃場特定情報とを表示した状態の説明図である。
【図5】圃場とRFIDタグとトラクタとの位置関係を示す平面図である。
【図6】位置情報取得制御のフローチャートである。
【図7】第2実施形態における位置情報取得システムの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
BL 基準位置情報
FI 圃場特定情報
ID 識別情報
MA 領域情報
ML 測定位置情報
NA 圃場名の情報
TL 自己位置情報
1 トラクタ
2 走行機体
31 液晶表示装置
32 液晶パネル
40 コントローラ
41 RFIDタグ
42 タグリーダ
43 移動局ユニット
44 外部サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の場所に配置され且つ個別の識別情報を有する情報媒体と、この情報媒体の前記識別情報を読み取るための読み取り手段と、人工衛星からの電波にて自己の測定位置情報を検出するためのGPS測位手段と、前記情報媒体の配置場所を特定する基準位置情報を前記識別情報に対応させて予め記憶した記憶手段と、前記GPS測位手段と前記記憶手段とに無線又は有線にて接続した情報処理手段とを備えており、
前記読み取り手段と前記GPS測位手段とは作業車両に搭載されており、
前記情報処理手段は、前記作業車両が前記情報媒体の配置箇所に位置したときに前記読み取り手段にて読み取った前記識別情報に対する前記基準位置情報を前記記憶手段から取得し、
このときに前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報と、前記基準位置情報とから補正情報を算出し、
この補正情報と前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報とに基づいて、前記作業車両の現在の自己位置情報を算出するように制御する、
位置情報取得システム。
【請求項2】
前記作業車両は走行型農作業機であり、
前記情報媒体は、RFIDタグであって、所定の圃場における進入口の箇所に配置されており、
前記記憶手段には、前記基準位置情報と共に圃場名及び領域情報等の圃場特定情報も前記識別情報に対応させて記憶されており、
前記情報処理手段には、前記走行型農作業機の前記自己位置情報を時系列の履歴情報として記憶するための履歴記憶手段が無線又は有線にて接続されており、
前記走行型農作業機には、現在の前記自己位置情報と前記履歴情報と前記圃場特定情報とを表示し得る表示手段を備えている、
請求項1に記載した位置情報取得システム。
【請求項3】
所定の場所に配置され且つ当該場所を特定する基準位置情報を記憶した情報媒体と、前記情報媒体の前記基準位置情報を読み取るための読み取り手段と、人工衛星からの電波にて自己の測定位置情報を検出するためのGPS測位手段と、前記GPS測位手段に無線又は有線にて接続した情報処理手段とを備えており、
前記読み取り手段と前記GPS測位手段とは作業車両に搭載されており、
前記情報処理手段は、前記作業車両が前記情報媒体の配置箇所に位置したときに前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報と、このときに前記読み取り手段にて読み取った前記基準位置情報とから補正情報を算出し、
この補正情報と前記GPS測位手段にて検出した測定位置情報とに基づいて、前記作業車両の現在の自己位置情報を算出するように制御する、
位置情報取得システム。
【請求項4】
前記作業車両は走行型農作業機であり、
前記情報媒体は、前記基準位置情報と共に圃場名及び領域情報等の圃場特定情報も前記識別情報に対応させて記憶されたRFIDタグであって、所定の圃場における進入口の箇所に配置されており、
前記情報処理手段には、前記走行型農作業機の前記自己位置情報を時系列の履歴情報として記憶するための履歴記憶手段が無線又は有線にて接続されており、
前記走行型農作業機には、現在の前記自己位置情報と前記履歴情報と前記圃場特定情報とを表示し得る表示手段を備えている、
請求項3に記載した位置情報取得システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−248336(P2007−248336A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73931(P2006−73931)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】