説明

位置検出装置、レンズ鏡筒およびカメラ

【課題】磁気的手段により、移動体の絶対位置を少なくとも検出することが可能であり、着磁作業および位置決め作業が容易な位置検出装置を提供すること。
【解決手段】固定部材と、固定部材に対して移動する移動部材4とを有し、移動部材4の絶対位置を検出する位置検出装置である。移動部材4および固定部材の一方にはN極からS極に磁極が徐々に変化する磁気特性8を有する磁気記録媒体が装着されている。また、他方には、磁気記録媒体に対向するように、磁気記録媒体の表面に垂直方向の磁力を検出する磁気センサ12が装着してあり、磁気センサ12の出力信号に応じて、移動部材4の絶対位置を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、レンズ鏡筒およびカメラに係り、さらに詳しくは、少なくとも移動体の絶対位置を、磁気センサの出力により簡便に検出することができる位置検出装置と、その位置検出装置を用いたレンズ鏡筒およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の絶対位置と相対位置とを、光学センサにより検出することができる位置検出装置として、たとえば特許文献1が知られている。
【0003】
しかしながら、移動体の絶対位置と相対位置とを、光学センサにより検出する装置では、構造が複雑になると共に、製造コストが増大する。
【0004】
カメラや、それに取り付けられるレンズ鏡筒では、より簡便な方法で、しかも正確に、回転筒体などの移動体の絶対位置と相対位置とを磁気的に検出する装置が求められている。そこで、移動体の絶対位置を、磁気センサの出力により検出する位置検出装置として、特許文献2に示す装置が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に示す位置検出装置では、磁気記録媒体の長手方向に沿ってN極およびS極を交互に繰り返す第1磁気パターンを斜めに着磁したり、その第1磁気パターンの幅を変化させたりする必要がある。そのため、着磁作業が困難であると共に、磁気記録媒体を取り付ける際における磁気センサとの位置決めが困難であると言う不都合を有している。
【特許文献1】特許第3442869号公報
【特許文献2】特許第2550085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、磁気的手段により、移動体の絶対位置を少なくとも検出することが可能であり、着磁作業および位置決め作業が容易な位置検出装置およびそれを用いたレンズ鏡筒とカメラとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る位置検出装置は、
固定部材と、
前記固定部材に対して移動する移動部材と、
前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか一方に装着され、前記移動部材の移動方向に沿った方向にN極からS極に磁極が徐々に変化する磁気特性を有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対向するように、前記前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか他方に装着され、前記磁気記録媒体の表面に垂直な方向の磁力を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの出力信号に応じて、前記移動部材の絶対位置を判別する判別手段と、を有する。
【0008】
好ましくは、本発明の位置検出装置は、
前記磁気センサは、前記磁気記録媒体におけるN極からS極に磁極が徐々に変化する間隔の1/2以下の間隔で前記移動部材の移動方向に沿って配置された一対の磁気検出素子で構成されている。
【0009】
好ましくは、前記判別手段は、前記一対の磁気検出素子から出力される信号の差異に基づき、前記移動部材の絶対位置を算出する。
【0010】
本発明の第2の観点に係る位置検出装置は、
固定部材と、
前記固定部材に対して移動する移動部材と、
前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか一方に装着され、前記移動部材の移動方向に沿った方向にN極からS極に磁極が徐々に変化する第1磁気特性を有する第1磁気記録媒体と、
前記第1磁気記録媒体に対向するように、前記前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか他方に装着され、前記第1磁気記録媒体の表面に垂直な方向の磁力を検出する第1磁気センサと、
前記第1磁気センサの出力信号に応じて、前記移動部材の絶対位置を判別する第1判別手段と、
前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか一方に装着され、前記移動部材の移動方向に沿った方向に、前記第1磁気記録媒体におけるN極からS極に磁極が徐々に変化する第1間隔よりも短い第2間隔で、N極とS極が交互に変化する第2磁気特性を有する第2磁気記録媒体と、
前記第2磁気記録媒体に対向するように、前記前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか他方に装着され、前記第2磁気記録媒体の表面に垂直な方向の磁力を検出する第2磁気センサと、
前記第2磁気センサの出力信号に応じて、前記移動部材の相対移動距離を判別する第2判別手段と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記第1磁気センサは、前記移動部材の移動方向に沿って、前記第1の間隔の1/2以下の第3間隔で配置された一対の第1磁気検出素子で構成されており、前記第3間隔が前記第2間隔よりも広い。
【0012】
好ましくは、前記第2磁気センサは、前記移動部材の移動方向に沿って、前記第2間隔に対して所定関係の第4間隔で配置されている一対の第2磁気検出素子と、当該一対の第2磁気検出素子の中心位置から所定の第5間隔で離れた位置に中心位置がある他の一対の第2磁気検出素子とを有する。
【0013】
好ましくは、前記第4間隔が、前記第2間隔をL2で表した場合に、L2×3/2+2×n×L2であり、前記第5間隔が、L2×3/4+2×n×L2(ただし、nは整数)である。
【0014】
好ましくは、前記第5間隔が、前記第3間隔よりも狭い。
【0015】
好ましくは、前記第2判別手段は、4つの前記第2検出素子から出力される信号に基づき、位相が異なる二つのパルス信号を生成し、これらのパルス信号のパルス数をカウントすることにより、前記固定部材に対する前記移動部材の相対移動距離を算出する。
【0016】
前記移動部材としては、特に限定されず、固定部材に対して直線状に移動する移動部材でも良いが、好ましくは、前記移動部材が、前記固定部材に対して回転する回転体である。
【0017】
本発明に係るレンズ鏡筒は、上記に記載の位置検出装置を有するレンズ鏡筒である。
【0018】
本発明に係るカメラは、上記に記載の位置検出装置を有するカメラである。カメラとしては、特に限定されず、デジタルカメラ、一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラなどが例示される。
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る回転位置検出装置の概略斜視図、
図2は図1に示す第1および第2磁気パターンと第1および第2磁気センサとの関係を示す展開平面図、
図3は図2に示す第2磁気センサにおける各磁気検出素子の位置関係を説明する平面図、
図4は(A)〜図4(C)は第1および第2磁気パターンと、各磁気パターンにおける磁力の極性変化との関係を示す図、
図5は各磁気検出素子における磁力の強さと抵抗値との関係を示すグラフ、
図6は第1磁気センサに接続される第1判断手段のブロック図、
図7(A)は第1磁気パターンにおける垂直方向の磁界強度の変化を示すグラフ、
図7(B)は第1磁気パターンの長手方向に沿った平面図、
図7(C)は磁気検出素子を第1磁気パターンの長手方向に沿って移動させた場合における抵抗値の変化を示すグラフ、
図7(D)は第1磁気センサの移動範囲を示す概略図、
図7(E)は第1磁気センサが第1磁気パターンの長手方向に沿って移動した場合において、図6に示すブロック図における第1磁気センサの各出力電圧を示すグラフ、
図7(F)は図6に示すブロック図における切替器の後の出力電圧を示すグラフ、
図8(A)および図8(B)は第2磁気パターンの長手方向に沿って第2磁気センサが移動した場合に発生するパルス信号を示す図、
図9は第2磁気センサに接続される第2判断手段のブロック図、
図10(A)〜図10(C)は第2磁気パターンの長手方向に沿った磁界強度変化とセンサ位置との関係を示す概略図、
図11(A)は図9に示す第2磁気センサの回路図、図11(B)は図11(A)に示すA相およびB相における電圧変化の波形を示すグラフ、
図12(A)〜図12(C)は本発明の他の実施形態に係る第1および第2磁気パターンと、各磁気パターンにおける磁力の極性変化との関係を示す図、
図13は本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒の斜視図である。
第1実施形態
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る回転位置検出装置2は、図示省略してある固定部材に固定してあるセンサ組立体6と、固定部材に対して回転軸5を中心として回転移動する円盤形状の回転移動部材4の外周に接着してある磁気テープ7とを有する。なお、図1に示す実施形態では、センサ組立体6は平板形状であるが、回転移動部材4の円盤形状の外周面に合わせた円弧板形状であっても良い。
【0021】
図1および図2に示すように、磁気テープ7には、第1磁気記録媒体としての第1磁気パターン8と、第2磁気記録媒体としての第2磁気パターン10とが記録してある。また、センサ組立体6には、第1磁気センサ12と第2磁気センサ14とが形成してある。
【0022】
第1磁気センサ12は、回転移動部材4の回転移動位置にかかわらず、第1磁気パターン8に対向するように、位置決めしてある。また、第2磁気センサ14は、回転移動部材4の回転移動位置にかかわらず、第2磁気パターン10に対向するように、位置決めしてある。
【0023】
第1磁気パターン8および第2磁気パターン10の回転移動方向Xに沿う長手方向の長さである第1間隔L1は、本実施形態では、回転移動部材4における円盤形状の外周面の全周に等しい。第1磁気パターン8は、第1間隔L1の長手方向に沿って、N極からS極に磁極が徐々に変化する第1磁気特性を有する。
【0024】
第2磁気パターン10は、第1磁気パターン8におけるN極からS極に磁極が徐々に変化する第1間隔L1よりも短い第2間隔L2で、N極とS極とが交互に変化する第2磁気特性を有する。第1間隔L1に対する第2間隔L2の比L2/L1は、得ようとする相対位置精度にもよるが、好ましくは1/5以上である。第2間隔L2が広すぎると、相対位置の分解能が低下する傾向にあり、狭すぎると、分解能は向上するが、検出が困難になる傾向にある。
【0025】
センサ組立体6における第1磁気センサ12は、この実施形態では、一対の第1磁気検出素子R2およびR4で構成してある。各磁気検出素子R2およびR4は、磁気抵抗(MR)素子などで構成してあり、第1磁気パターン8におけるパターン表面に垂直方向の磁力を検出可能になっている。各磁気検出素子R2およびR4は、たとえば図5に示すように、磁力が0の時に抵抗が最大抵抗R0となり、検出される磁力の強さに応じて抵抗が低くなる特性を有する。
【0026】
図2に示すように、各磁気検出素子R2およびR4は、センサ組立体6において、第3間隔L3で配置される。この第3間隔L3の方向は、第1間隔L1の方向に一致する。
【0027】
第1間隔L1に対する第3間隔L3の比L3/L1は、得ようとする絶対精度および範囲にもよるが、好ましくは1/2以下、さらに好ましくは1/5以上である。この比L3/L1が大きすぎると、回転移動部材4における回転移動量の絶対位置を検出する精度が低下する傾向にある。
【0028】
この第3間隔L3は、第2間隔L2よりも広いことが好ましい。この第3間隔L3が狭すぎると、各磁気検出素子R2およびR4における出力信号の差異が小さくなりすぎ、回転移動部材4における回転移動量の絶対位置を検出する精度が低下する傾向にある。
【0029】
この実施形態では、図3に示すように、第2磁気センサ14は、第4間隔L4で配置してある一対の第2磁気検出素子R11およびR12と、これらの一対の第2磁気検出素子R11およびR12の中心位置から所定の第5間隔L5で離れた位置に中心位置がある他の一対の第2磁気検出素子R13およびR14とで構成してある。
【0030】
図3においては、磁気検出素子R13が、一対の第2磁気検出素子R11およびR12の中心位置に配置されており、磁気検出素子R12が他の一対の第2磁気検出素子R13およびR14の中心位置に配置されている。
【0031】
各磁気検出素子R11〜R14は、素子R2およびR4と同様に、磁気抵抗(MR)素子などで構成してあり、第2磁気パターン10におけるパターン表面に垂直方向の磁力を検出可能になっている。各磁気検出素子R11〜R14は、たとえば図5に示すように、磁力が0の時に抵抗が最大抵抗R0となり、検出される磁力の強さに応じて抵抗が低くなる特性を有する。
【0032】
第4間隔L4は、本実施形態では、第2間隔L2に対して、L2×3/2+2×n×L2であり、第5間隔L5は、L2×3/4+2×n×L2(ただし、nは整数)である。
【0033】
第1磁気センサ12は、図6に示す第1判断回路25に接続してある。具体的には、第1磁気センサ12における第1磁気検出素子R2およびR4は、それぞれ、基準抵抗体R1およびR3に対して接続してある。これらの基準抵抗体R1およびR3の抵抗値は、各第1磁気検出素子R2およびR4に対して磁力が0の時の抵抗R0(図5参照)に設定してある。
【0034】
一対の第1磁気検出素子R2および基準抵抗体R1と、他の一対の第1磁気検出素子R4および基準抵抗体R3とは、ブリッジ回路を構成するように、並列に接続され、それらの間に基準電圧V0が印加される。第1磁気検出素子R2と基準抵抗体R1との接続点は、増幅器20に接続してあり、接続点における出力電位V1を増幅するようになっている。また、第1磁気検出素子R4と基準抵抗体R3との接続点は、増幅器22に接続してあり、接続点における出力電位V2を増幅するようになっている。
【0035】
これらの増幅器20および22で増幅された出力信号は、切替器26へと入力される。また、増幅器20および22で増幅される前の出力電位V1およびV2は、差動増幅器24にて比較された上で増幅され、その出力信号が切替器26へと入力される。
【0036】
切替器26では、出力電位V1およびV2を比較し、V1≧V2である場合には、出力電位V1をA倍に増幅した信号電位V3=A×V1を出力する。また、切替器26にて、出力電位V1およびV2を比較し、V1<V2である場合には、出力電位V2を−A倍に増幅した信号電位V3=−A×V2を出力する。切替器26から出力された信号電位V3は、マイコン28のA/D入力端子などに入力され、その信号電位V3に基づき、マイコン28では、図1に示す回転移動部材4における回転移動量の絶対位置を算出する。
【0037】
次に、図面に基づき、回転移動部材4における回転移動量の絶対位置を算出することができる原理を説明する。以下の説明では、説明の容易化のために、固定された磁気パターンに対して磁気センサが移動することにして説明するが、実際には逆でも良い。
【0038】
図7(B)に示す磁気テープ7における第1磁気パターン8において、そのテープ面に垂直方向の磁界強度は、N極からS極に移動するにつれて、図7(A)に示すように変化する。
【0039】
図7(B)に示す磁気テープ7における第1磁気パターン8上を、その表面から所定間隔離れて、第1磁気センサ12における各磁気検出素子R2およびR4が、図7(D)に示す磁気検出素子R2の位置からR4の位置まで移動したとすると、図7(C)に示すような抵抗変化を示す。
【0040】
磁気検出素子R2およびR4は、第1磁気センサ12において第3間隔L3で離れて配置されるために、第1磁気センサ12の移動範囲(L1−L3)において、第1磁気パターン8の第1間隔L1の中心位置以外では、抵抗値に差異が生じる。そのため、図6に示す出力電位V1およびV2は、第1磁気パターン8の第1間隔L1の長手方向に沿って、図7(E)に示すように変化し、第1磁気パターン8の第1間隔L1の中心位置にて、出力電位V1およびV2が逆転する。
【0041】
そのため、図6に示す出力電位V3は、第1磁気パターン8の第1間隔L1の長手方向に沿って、図7(F)に示すように、第1磁気パターン8の第1間隔L1に沿う長手方向位置によって一義的に決定される出力電位V3となる。そのため、その出力電位V3の大きさを、図6に示すマイコン28で判断することで、第1磁気パターン8の長手方向に対おける第1磁気センサ12の絶対位置を特定することが可能になる。
【0042】
本実施形態では、図1に示すように、第1磁気センサ12が固定部材に固定してあるために、回転移動部材と共に回転する第1磁気パターン8の回転移動量の絶対位置を特定することが可能になる。
【0043】
次に、第2磁気センサ14により、回転移動部材4における回転移動量の相対移動距離を算出することができる原理を説明する。以下の説明では、説明の容易化のために、固定された磁気パターンに対して磁気センサが移動することにして説明するが、実際には逆でも良い。
【0044】
第2磁気センサ14は、図9に示す第2判断回路35に接続してある。具体的には、図11(A)に示すように、第2磁気センサ14における一対の第2磁気検出素子R11およびR12と、一対の第2磁気検出素子R13およびR14は、ブリッジ回路を構成するように、並列に接続され、それらの間に基準電圧V0が印加される。
【0045】
第2磁気検出素子R11およびR12の接続点の出力信号(A相)は、図9に示す増幅器30で増幅され、第2磁気検出素子R13およびR14の接続点の出力信号(B相)は、図9に示す増幅器32で増幅される。これらの増幅器30および32で増幅された出力信号は、比較器34および36へ入力され、そこで、基準電源38からの出力信号と各々比較される。比較器34および36にて生成された出力信号Y1およびY2は、マイコン28へと入力され、それらの出力信号Y1およびY2に基づき、第2磁気パターン10に対して第2磁気センサ14の相対的な移動量を算出する。
【0046】
図10(B)に示す磁気テープ7における第2磁気パターン10において、そのテープ面に垂直方向(すなわちテープ厚み方向)の磁界強度は、第2磁気パターン10の長手方向に沿って、図10(A)に示すように、サインカーブ状に変化する。
【0047】
図10(B)に示す磁気テープ7における第2磁気パターン10上を、その表面から所定間隔離れて、第2磁気センサ14における各磁気検出素子R11〜R14が、図10(C)に示すセンサ位置S1からセンサ位置S4にまで移動したとすると、図11(A)に示すA相およびB相における電圧変化は、センサ位置S1〜S4に対して、図11(B)に示すような変化を示す。
【0048】
そこで、このようなA相およびB相における電圧変化を、図9に示す比較器34および36で処理することにより、図8(B)に示すような所定位相遅れた二つのパルス状出力信号Y1およびY2を生成することができる。これらのパルス状出力信号Y1およびY2を用いることで、図9に示すマイコン28は、第2磁気パターン10の長手方向における第2磁気センサ14の相対移動量(相対位置)を正確に検出し、移動方向を判別することが可能になる。
【0049】
本実施形態では、図1に示すように、第2磁気センサ14が固定部材に固定してあるために、回転移動部材4と共に回転する第2磁気パターン10の回転移動量の相対位置を特定することが可能になる。
【0050】
本実施形態に回転位置検出装置2では、第1磁気パターン8と第1磁気センサ2とから成る磁気的手段により、比較的に正確に、回転移動部材4の回転方向Xの絶対位置を検出することが可能である。また、本実施形態に係る回転位置検出装置2では、第1磁気パターン8は、長手方向にN極からS極に磁極が徐々に変化するパターンであり、そのパターン幅は、長手方向に沿って変化しないと共に、パターンを斜めに形成する必要もない。
【0051】
そのため、絶対位置を検出するための第1磁気パターン8の隣に、第2磁気パターン10をコンパクトな構成で配置することができる。その結果、回転移動部材4の軸方向幅を狭くすることが可能になると共に、センサ組立体6の幅も狭くすることができ、装置2をコンパクトな構成にすることができる。しかも、第2磁気パターン10と第2磁気センサ14との組み合わせにより、回転移動部材4の相対移動距離も測定することができる。
【0052】
また、第1磁気パターン8および第2磁気パターン10のパターン幅は、長手方向に沿って変化しないと共に、パターンを斜めに形成する必要もないので、磁気テープ7に対する着磁作業が容易である。また、各磁気パターン8および10と磁気センサ12および14との位置決め作業も容易である。したがって、回転位置検出装置2を安価に構成することができる。
第2実施形態
【0053】
図12(A)〜図12(C)に示すように、この実施形態では、磁気テープ7の表面に形成する第1磁気パターン8aを、複数の磁気トラック40a〜40fの一部(図12(A)における点線部分)を用いて構成してある。すなわち、各磁気トラック40a〜40fでは、磁気テープ7の長手方向に直交する方向に、N極およびS極が並ぶように磁化する。そして、パターンの全長である第1間隔L1の左半分では、第2磁気パターン10に近い側にN極が位置するように磁化し、右半分では、第2磁気パターン10に近い側にS極が位置するように磁化する。
【0054】
しかも、左半分の磁気トラック40a〜40cでは、磁界の強さが、第1間隔L1の中心に行くほど弱くなるように磁化する。同様に、右半分の磁気トラック40d〜40fでは、磁界の強さが、第1間隔L1の中心に行くほど弱くなるように磁化する。
【0055】
これらの複数の磁気トラック40a〜40fにおける第2磁気パターン10に近い側の直線状一部(図12(A)における点線部分)は、図12(B)に示すように、第1実施形態における第1磁気パターン8の磁気特性(図4(B))と同様な磁気特性を有する。したがって、第1磁気パターン8aに対応して、第1実施形態における第1磁気センサ12を配置させることで、この実施形態の場合においても、同様にして絶対位置と相対位置とを検出することができる。
【0056】
本実施形態におけるその他の構成および作用効果は、第1実施形態の場合と同様である。
第3実施形態
【0057】
図13に示すように、本実施形態では、前述した第1実施形態に係る回転位置検出装置2と同様な機構の回転位置検出装置2aを、カメラ用レンズ鏡筒50に適用してある。レンズ鏡筒50は、回転位置検出装置2a以外の部分は、一般的なレンズ鏡筒であり、固定部分54を介して一眼レフカメラなどのカメラ本体に着脱自在に取り付けられる。カメラ本体の構造は、一般的なものなので、その図示は省略する。
【0058】
レンズ鏡筒50におけるオートフォーカス制御は、レンズを光軸方向に駆動して行われるが、レンズの駆動に超音波モータ等の振動はモータが用いられている。超音波モータは、圧電素子が設けられた振動体(ステータ)と回転体(ロータ)が重ねられて構成されている。圧電素子に高周波電圧を与えることによって、振動体を振動させ、進行波を発生させる。その進行波の影響により、ロータが回転駆動される。本実施形態では、ロータの回転に伴って回転する回転部分52の回転位置検出に回転位置検出装置2aを用いる。
【0059】
この実施形態では、レンズ鏡筒50における回転部分52の外周面の軸方向一部に、略平行に第1磁気パターン8と第2磁気パターン10とが取り付けられる。これらの磁気パターン8および10に対応して、所定間隔で、センサ組立体6aが配置され、そのセンサ組立体6aは、レンズ鏡筒における固定部分54に対して固定される。
【0060】
センサ組立体6aにおける磁気パターン8および10との対向面には、第1実施形態における第1磁気センサ12および第2磁気センサ14が装着してある。
【0061】
本実施形態に係るレンズ鏡筒50およびそれを用いたカメラでは、コンパクトで高精度に回転部分52の絶対位置および相対位置の双方を検出することができる。回転部分52は、内部にレンズなどが内蔵してあり、たとえば固定部分54に対して回転部分52を光軸方向に回転制御することにより、フォーカス調整を実現可能になっている。
【0062】
回転部分52の絶対位置の検出は、カメラの電源をオフしてから再起動した場合に、レンズ鏡筒50における回転部分52の絶対位置を検出する場合に有効であり、相対位置の検出は、レンズ鏡筒50における回転部分52を高精度に制御して回転移動させる場合に有効である。
【0063】
なお、第1実施形態において、第1磁気パターンにおける第1間隔L1は、必ずしも回転移動部材4の全周ではなく、半周あるいは所定の角度範囲内の円弧部分の長さであっても良い。
【0064】
また、上述した実施形態では、回転移動部材4または回転部分52における回転移動における絶対位置と、必要に応じて相対位置とを検出できるように構成したが、移動部材としては、特に限定されず、固定部材に対して直線状に移動する移動部材でも良い。
【0065】
さらに、固定部材側に第1磁気パターン8および第2磁気パターン10を具備させ、移動部材側に、第1磁気センサ12および第2磁気センサ14を配置しても良い。
【0066】
さらにまた、上述した実施形態では、一枚の長手状の磁気テープ7に対して、第1磁気パターン8と第2磁気パターン10とを形成したが、別々の磁気テープに対して、第1磁気パターン8と第2磁気パターン10とを形成しても良い。また、第1磁気記録媒体としての第1磁気パターン8と、第2磁気記録媒体としての第2磁気パターン10とは、磁気テープ以外の部材に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る回転位置検出装置の概略斜視図である。
【図2】図2は図1に示す第1および第2磁気パターンと第1および第2磁気センサとの関係を示す展開平面図である。
【図3】図3は図2に示す第2磁気センサにおける各磁気検出素子の位置関係を説明する平面図である。
【図4】図4は(A)〜図4(C)は第1および第2磁気パターンと、各磁気パターンにおける磁力の極性変化との関係を示す図である。
【図5】図5は各磁気検出素子における磁力の強さと抵抗値との関係を示すグラフである。
【図6】図6は第1磁気センサに接続される第1判断手段のブロック図である。
【図7】図7(A)は第1磁気パターンにおける垂直方向の磁界強度の変化を示すグラフ、図7(B)は第1磁気パターンの長手方向に沿った平面図、図7(C)は磁気検出素子を第1磁気パターンの長手方向に沿って移動させた場合における抵抗値の変化を示すグラフ、図7(D)は第1磁気センサの移動範囲を示す概略図、図7(E)は第1磁気センサが第1磁気パターンの長手方向に沿って移動した場合において、図6に示すブロック図における第1磁気センサの各出力電圧を示すグラフ、図7(F)は図6に示すブロック図における切替器の後の出力電圧を示すグラフである。
【図8】図8(A)および図8(B)は第2磁気パターンの長手方向に沿って第2磁気センサが移動した場合に発生するパルス信号を示す図である。
【図9】図9は第2磁気センサに接続される第2判断手段のブロック図である。
【図10】図10(A)〜図10(C)は第2磁気パターンの長手方向に沿った磁界強度変化とセンサ位置との関係を示す概略図である。
【図11】図11(A)は図9に示す第2磁気センサの回路図、図11(B)は図11(A)に示すA相およびB相における電圧変化の波形を示すグラフである。
【図12】図12(A)〜図12(C)は本発明の他の実施形態に係る第1および第2磁気パターンと、各磁気パターンにおける磁力の極性変化との関係を示す図である。
【図13】図13は本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒の斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
2,2a… 回転位置検出装置
4… 回転移動部材
6,6a… センサ組立体
7… 磁気テープ
8,8a… 第1磁気パターン
10… 第2磁気パターン
12… 第1磁気センサ
14… 第2磁気センサ
25… 第1判断回路
35… 第2判断回路
50… レンズ鏡筒
52… 回転部分
54… 固定部分
R2,R4… 第1磁気検出素子
R11〜R14… 第2磁気検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
前記固定部材に対して移動する移動部材と、
前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか一方に装着され、前記移動部材の移動方向に沿った方向にN極からS極に磁極が徐々に変化する磁気特性を有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対向するように、前記前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか他方に装着され、前記磁気記録媒体の表面に垂直な方向の磁力を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの出力信号に応じて、前記移動部材の絶対位置を判別する判別手段と、
を有する位置検出装置。
【請求項2】
前記磁気センサは、前記磁気記録媒体におけるN極からS極に磁極が徐々に変化する間隔の1/2以下の間隔で前記移動部材の移動方向に沿って配置された一対の磁気検出素子で構成された請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記一対の磁気検出素子から出力される信号の差異に基づき、前記移動部材の絶対位置を算出する請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
固定部材と、
前記固定部材に対して移動する移動部材と、
前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか一方に装着され、前記移動部材の移動方向に沿った方向にN極からS極に磁極が徐々に変化する第1磁気特性を有する第1磁気記録媒体と、
前記第1磁気記録媒体に対向するように、前記前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか他方に装着され、前記第1磁気記録媒体の表面に垂直な方向の磁力を検出する第1磁気センサと、
前記第1磁気センサの出力信号に応じて、前記移動部材の絶対位置を判別する第1判別手段と、
前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか一方に装着され、前記移動部材の移動方向に沿った方向に、前記第1磁気記録媒体におけるN極からS極に磁極が徐々に変化する第1間隔よりも短い第2間隔で、N極とS極が交互に変化する第2磁気特性を有する第2磁気記録媒体と、
前記第2磁気記録媒体に対向するように、前記前記移動部材および前記固定部材のうちいずれか他方に装着され、前記第2磁気記録媒体の表面に垂直な方向の磁力を検出する第2磁気センサと、
前記第2磁気センサの出力信号に応じて、前記移動部材の相対移動距離を判別する第2判別手段と、
を有する位置検出装置。
【請求項5】
前記第1磁気センサは、前記移動部材の移動方向に沿って、前記第1の間隔の1/2以下の第3間隔で配置された一対の第1磁気検出素子で構成されており、前記第3間隔が前記第2間隔よりも広い請求項4記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第2磁気センサは、前記移動部材の移動方向に沿って、前記第2間隔に対して所定関係の第4間隔で配置されている一対の第2磁気検出素子と、当該一対の第2磁気検出素子の中心位置から所定の第5間隔で離れた位置に中心位置がある他の一対の第2磁気検出素子とを有する請求項4または5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第4間隔が、前記第2間隔をL2で表した場合に、L2×3/2+2×n×L2であり、前記第5間隔が、L2×3/4+2×n×L2(ただし、nは整数)である請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第5間隔が、前記第3間隔よりも狭い請求項6または7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記第2判別手段は、4つの前記第2検出素子から出力される信号に基づき、位相が異なる二つのパルス信号を生成し、これらのパルス信号のパルス数をカウントすることにより、前記固定部材に対する前記移動部材の相対移動距離を算出する請求項6〜8のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記移動部材が、前記固定部材に対して回転する回転体である請求項1〜9のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の位置検出装置を有するレンズ鏡筒。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の位置検出装置を有するカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−96262(P2008−96262A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277862(P2006−277862)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】