位置算出方法及び電子機器
【課題】位置算出用モジュールを搭載した電子機器における位置算出主体の適正化。
【解決手段】GPS処理部10と、GPS処理部10よりも演算処理能力の高いホスト処理部30とを備えた携帯型電話機1において、GPSアンテナ5は、GPS衛星から送出されるGPS衛星信号を受信する。GPS処理部10は、GPSアンテナ5が受信した信号に対する衛星サーチを行い、位置算出の基礎情報とするメジャメント情報を算出する。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10がメジャメント情報に基づいて位置算出するセルフモードと、ホスト処理部30がメジャメント情報に基づいて位置算出するホストモードとを、記憶部100に記憶されたモード切替条件テーブル103に従って切り替える。
【解決手段】GPS処理部10と、GPS処理部10よりも演算処理能力の高いホスト処理部30とを備えた携帯型電話機1において、GPSアンテナ5は、GPS衛星から送出されるGPS衛星信号を受信する。GPS処理部10は、GPSアンテナ5が受信した信号に対する衛星サーチを行い、位置算出の基礎情報とするメジャメント情報を算出する。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10がメジャメント情報に基づいて位置算出するセルフモードと、ホスト処理部30がメジャメント情報に基づいて位置算出するホストモードとを、記憶部100に記憶されたモード切替条件テーブル103に従って切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置算出用モジュールと演算処理部とを備えた電子機器における位置算出方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
測位用信号を利用した位置算出システムとしては、GPS(Global Positioning System)が広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等の電子機器にGPSモジュールとして内蔵されて利用されている。GPSを利用した位置算出では、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から受信装置までの擬似距離等の情報に基づいて、GPSモジュールの位置座標及び時計誤差を求める位置演算を行う。
【0003】
GPSモジュールを搭載した電子機器における位置算出方法の一例として、例えば特許文献1には、GPSモジュールがGPS衛星信号を復号(デコード)することで取得した衛星軌道データ等を用いて、電子機器のホストプロセッサーが位置算出を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−190723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、電子機器のホストプロセッサーに位置算出の役割を担わせる方法も確かに1つの方法ではある。しかし、電子機器に搭載されたGPSモジュール自体が位置算出を行うことができることもまた事実である。ホストプロセッサーは、電子機器の各部を制御するため、ホストプロセッサーの演算負荷等によっては、位置算出を一手に担わせることが適切とは言えない場合もある。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、位置算出用モジュールを搭載した電子機器における位置算出主体の適正化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための第1の形態は、位置算出用モジュールと、前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、を備えた電子機器における位置算出方法であって、衛星信号を受信することと、前記位置算出用モジュールが前記衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出することと、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替えることと、を含む位置算出方法である。
【0008】
また、他の形態として、衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出する位置算出用モジュールと、前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替える切替制御部と、を備えた電子機器を構成してもよい。
【0009】
この第1の形態等によれば、位置算出用モジュールが、受信した衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出する。そして、位置算出用モジュールが基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部が基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替える。このように演算処理能力が異なる位置算出用モジュール及び演算処理部がそれぞれ位置算出を行う2種類のモードを切り替えることで、位置算出を行う主体を適切に切り替えることができる。
【0010】
また、第2の形態として、第1の形態の位置算出方法であって、前記電子機器は、前記位置算出用モジュールと前記演算処理部とを接続するバスを更に備えており、前記第1のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、前記第2のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した前記基礎情報を前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、を含む位置算出方法を構成してもよい。
【0011】
この第2の形態によれば、第1のモードでは、位置算出用モジュールが算出した位置のデータをバスを介して演算処理部が取得して、各種のアプリケーション等に利用することができる。また、第2のモードでは、位置算出用モジュールが算出した基礎情報をバスを介して演算処理部が取得して、位置算出に利用することができる。
【0012】
また、第3の形態として、第1又は第2の形態の位置算出方法であって、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う頻度よりも高頻度に、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報を算出し、前記演算処理部が、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、前記第2のモードにおいて前記基礎情報を取得する、位置算出方法を構成してもよい。
【0013】
この第3の形態によれば、第1のモードにおいて位置算出用モジュールが位置算出を行う頻度よりも高頻度に、位置算出用モジュールが基礎情報を算出するため、位置算出のタイミングが到来するまでの間に算出した複数の基礎情報を位置算出に利用することができる。また、演算処理部は、第1のモードにおいて位置算出用モジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、第2のモードにおいて基礎情報を取得するため、第2のモードでは、第1のモードと比べて位置算出を高頻度に行うことができる。
【0014】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の位置算出方法であって、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔で、前記第2のモードにおいて前記演算処理部が前記位置算出を行う、位置算出方法を構成してもよい。
【0015】
この第4の形態によれば、第1のモードにおいて位置算出用モジュールが位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔で、第2のモードにおいて演算処理部が位置算出を行う。つまり、第1のモードは第2のモードよりも位置算出の頻度が低くなるため、省電力に適したモードとなる。
【0016】
また、第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の位置算出方法であって、前記切り替えることは、衛星の航法データの有効期間が経過した場合に、前記第2のモードに切り替えることを含む、位置算出方法を構成してもよい。
【0017】
この第5の形態によれば、衛星の航法データの有効期間が経過した場合に、第2のモードに切り替える。例えば、第2のモードに切り替えた後、有効な衛星軌道データを外部から取得するなどして、演算処理部が位置算出を行うと好適である。
【0018】
また、第6の形態として、第1〜第5の何れかの形態の位置算出方法であって、前記切り替えることは、前記電子機器のバッテリー状態に応じて前記切り替えを行うことを含む、位置算出方法を構成してもよい。
【0019】
この第6の形態によれば、電子機器のバッテリー状態に応じて、位置算出の主体を切り替えることができる。
【0020】
また、第7の形態として、第1〜第6の何れかの形態の位置算出方法であって、前記切り替えることは、前記演算処理部の処理負荷に応じて前記切り替えを行うことを含む、位置算出方法を構成してもよい。
【0021】
この第7の形態によれば、演算処理部の処理負荷に応じて、位置算出の主体を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】セルフモードにおけるデータの流れの説明図。
【図2】ホストモードにおけるデータの流れの説明図。
【図3】データ更新処理の説明図。
【図4】セルフモードにおける位置算出動作の説明図。
【図5】ホストモードにおける位置算出動作の説明図。
【図6】携帯型電話機の機能構成の一例を示すブロック図。
【図7】ベースバンド処理回路部の回路構成の一例を示す図。
【図8】モード切替条件テーブルのテーブル構成の一例を示す図。
【図9】ホスト処理の流れを示すフローチャート。
【図10】ホスト処理の流れを示すフローチャート。
【図11】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図12】変形例におけるモード切替テーブルのテーブル構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した好適な実施形態の一例について説明する。本実施形態は、衛星測位システムの一種であるGPS(Global Positioning System)を適用した実施形態である。GPSを利用して位置算出を行うモジュールであるGPSモジュールと、GPSモジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部としてのホスト処理部と、を備えた電子機器において位置算出を行うことを想定した実施形態である。
【0024】
1.原理
最初に、本実施形態における位置算出方法について説明する。
GPSを利用した衛星測位システムにおいて、測位用衛星の一種であるGPS衛星は、エフェメリスやアルマナックといった衛星軌道データを含む航法データ(航法メッセージ)を、測位用の衛星信号の一種であるGPS衛星信号に乗せて発信している。GPS衛星信号は、拡散符号の一種であるC/A(Coarse and Acquisition)コードによって、スペクトラム拡散方式として知られるCDMA(Code Division Multiple Access)方式によって変調された1.57542[GHz]の通信信号である。C/Aコードは、コード長1023チップを1PNフレームとする繰返し周期1msの擬似ランダム雑音符号であり、各GPS衛星に固有のコードである。
【0025】
GPS衛星がGPS衛星信号を発信する際の周波数(搬送波周波数)は1.57542[GHz]と予め規定されている。しかし、GPS衛星及びGPSモジュールの移動により生ずるドップラーの影響等により、GPSモジュールがGPS衛星信号を受信する際の周波数は、必ずしも上記の搬送波周波数とは一致しない。そのため、GPSモジュールは、GPS衛星信号を受信した信号に対して、モジュール内部で発生させた擬似的なC/AコードであるレプリカC/Aコードとの相関演算を、周波数方向及び位相方向それぞれについて行って、GPS衛星(GPS衛星信号)を捕捉する。
【0026】
周波数方向の相関演算は、受信した搬送波(キャリア)の信号である「受信キャリア信号」の周波数(以下、「受信周波数」と称す。)を特定するための演算(いわゆる周波数サーチ)である。また、位相方向の相関演算は、受信信号に含まれるC/Aコードである「受信C/Aコード」の位相(以下、「コード位相」と称す。)を特定するための演算(いわゆる位相サーチ)である。本実施形態では、この周波数サーチ及び位相サーチを総称して「衛星サーチ」と称する。
【0027】
GPSモジュールが衛星サーチによって算出した受信周波数やコード位相といった情報は、位置算出や速度算出を行うための基礎となる基礎情報である。例えば、コード位相は、GPSモジュールとGPS衛星との間の擬似距離を算出するために必要な情報である。本実施形態では、GPSモジュールが衛星サーチによって算出した受信周波数及びコード位相の情報(基礎情報)のことを「メジャメント情報」と呼称する。なお、基礎情報であるメジャメント情報には、コード位相のみを含むこととし、受信周波数を含まないこととしてもよい。メジャメント情報の内容は、システムに応じて適宜設定変更可能である。
【0028】
本実施形態では、GPSモジュールが、算出したメジャメント情報に基づいて位置算出する第1のモードとしての「セルフモード」と、電子機器のホスト処理部(演算処理部)がメジャメント情報に基づいて位置算出する第2のモードとしての「ホストモード」とを切り替えて、電子機器の位置を算出する。本実施形態において、電子機器のホスト処理部は、演算処理能力の高いプロセッサーを有して構成されるものとする。それに対して、GPSモジュールに内蔵される演算処理部は、ホスト処理部と比べて演算処理能力が劣る比較的安価なプロセッサーを有して構成されるものとする。
【0029】
本実施形態では、ホスト処理部は、高い演算処理能力を活かして高精度な位置算出を実現する。GPSを利用した位置計算では、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星からGPSモジュールまでの擬似距離等の情報を用いて、位置収束演算を行って位置を近似的に求める手法が用いられる。その中でも、最小二乗法を用いた位置収束演算が広く用いられている。
【0030】
ホスト処理部は、例えば、捕捉に成功した全てのGPS衛星について、想定される全ての衛星組合せについて位置収束演算を行って電子機器の位置を算出する。この際、位置収束演算の反復回数(繰り返し回数)を多めにして、より確からしい位置が求まるようにする。従って、ホストモードは、高精度の位置が要求されるアプリケーションに適したモードであると言える。詳細な位置検索や店舗検索、ナビゲーションといったアプリケーションに好適である。
【0031】
それに対して、GPSモジュールに内蔵される演算処理部は、例えば、捕捉に成功したGPS衛星の中から選択した所定数の衛星の組合せについて、例えば最小二乗法を利用した位置収束演算を行って電子機器の位置を算出する。この際、位置収束演算の反復回数を抑えて、比較的簡易な演算を実現する。従って、セルフモードは、ホストモードほどの高精度な位置を要求しないアプリケーションに適したモードであると言える。例えば、市町村レベルの大域的な位置検索や天気予報検索といったアプリケーションに好適である。セルフモードでは、位置算出に係る演算量を低減させることで、省電力を図る狙いもある。
【0032】
図1は、セルフモードにおけるデータの流れの説明図である。GPSモジュール及びホスト処理部それぞれの機能部を概念的に示し、各機能部間でやり取りされるデータを示している。セルフモードでは、GPSモジュールにおいて、捕捉・追尾部によりGPS衛星が捕捉・追尾されて、メジャメント情報が算出される。そして、GPSモジュールの位置算出部が、捕捉・追尾部により算出されたメジャメント情報に基づいて位置算出を行う。位置算出部により算出された算出位置データは、バスを介してホスト処理部に出力される。そして、ホスト処理部は、GPSモジュールから取得した算出位置データを上位のアプリケーションに利用する。
【0033】
図2は、ホストモードにおけるデータの流れの説明図である。ホストモードでは、GPSモジュールにおいて、捕捉・追尾部によりGPS衛星が捕捉・追尾されて、メジャメント情報が算出される。算出されたメジャメント情報は、バスを介してホスト処理部に出力される。ホスト処理部の位置算出部は、GPSモジュールから取得したメジャメント情報に基づいて位置算出を行う。そして、ホスト処理部は、算出位置データを上位のアプリケーションに利用する。
【0034】
本実施形態では、上記のセルフモードとホストモードとを、予め定められたモード切替条件に従って切り替える。モード切替条件としては、種々の条件を設定可能である。実施例で後述するように、例えば、GPS衛星の航法データの有効期間、電子機器のバッテリー状態、ホスト処理部の処理負荷等に応じた切替条件を定めておくと好適である。モード切替条件に従って位置算出モードを切り替えた場合は、データ更新処理を行う。
【0035】
図3は、データ更新処理の説明図である。データ更新処理は、位置算出に必要なデータを、GPSモジュール及びホスト処理部間で更新する処理である。具体的には、GPSモジュールは、捕捉・追尾部により捕捉・追尾されたGPS衛星信号を復号(デコード)することで航法データを取得する。航法データには、アルマナックやエフェメリスといった衛星軌道データが含まれる。ホスト処理部は、例えばサーバーアシストによって衛星軌道データを外部取得する。すなわち、衛星軌道データの生成・提供を行うサーバーと通信を行い、衛星軌道データを含むアシストデータをサーバーに要求する。そして、サーバーから衛星軌道データをダウンロードするなどして取得する。
【0036】
本実施形態のデータ更新処理では、上記の衛星軌道データを、GPSモジュールとホスト処理部との間で更新する。つまり、位置算出モードをセルフモードとホストモードとの間で切り替えた場合に、GPSモジュール側の衛星軌道データと、ホスト処理部側の衛星軌道データとを比較して、古い方のデータを最新のデータで更新する。
【0037】
図4は、セルフモードにおける位置算出動作の説明図である。セルフモードでは、GPSモジュールはGPS衛星の捕捉及び位置算出を所定時間間隔(例えば数分間隔)で行う。位置算出タイミングが到来するまでの間、GPSモジュールはスリープ状態である。位置算出タイミングが到来すると、GPSモジュールはスリープ状態から復帰(ウェイクアップ)して、GPS衛星の捕捉及び位置算出を行う。
【0038】
位置算出が完了すると、GPSモジュールは算出位置データを、データバスを介してホスト処理部に出力する。ホスト処理部は、GPSモジュールから取得した算出位置データを上位のアプリケーションに利用する。この場合、ホスト処理部が算出位置データを取得する時間間隔は、GPSモジュールが位置算出を行う時間間隔と等しくなる。GPSモジュールが位置算出を行う時間間隔は、ホストモードにおいてホスト処理部が位置算出を行う時間間隔よりも長い時間間隔(例えば5分間隔)とすることが好ましい。
【0039】
図5は、ホストモードにおける位置算出動作の説明図である。ホストモードでは、GPSモジュールの捕捉・追尾部は、継続的に捕捉処理を行ってメジャメント情報を算出する。メジャメント情報は、衛星毎に、また、捕捉の度に算出されるため、例えば1秒間の間に数千回もメジャメント情報が算出される場合もある。そして、ホスト処理部は、GPSモジュールにより算出されたメジャメント情報をデータバスを介して随時取得する。
【0040】
ホスト処理部がメジャメント情報を取得する時間間隔は、ホスト処理部の位置算出部が位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔(例えば1ミリ秒間隔)とすることが好ましい。ホスト処理部の位置算出部は、一定時間分(例えば1秒分)のメジャメント情報をもとに位置算出を行う。ホスト処理部が位置算出を行う時間間隔は、セルフモードにおいてGPSモジュールが位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔(例えば1秒間隔)とすることが好ましい。
【0041】
ホスト処理部は、位置算出タイミングが到来するまでの間に取得された一定時間分のメジャメント情報を利用して位置算出を行う。例えば、取得した複数のメジャメント情報を衛星毎に平均化し、この平均化されたメジャメント情報を用いて位置算出を行う。或いは、メジャメント情報の算出に用いた相関値に基づいてメジャメント情報の信頼度を判定し、この信頼度に基づいて、位置算出に用いるメジャメント情報を選別してもよい。更には、メジャメント情報の信頼度で重み付けを行って、メジャメント情報を加重平均して位置算出に用いてもよい。
【0042】
メジャメント情報の信頼度としては、例えば、コード位相別に算出した相関値のうちの最大の相関値(ピーク相関値)と、ピーク相関値に対応する位相から所定位相離れた位相における相関値(ノイズフロア相関値)との比として算出されるSN比(Signal to Noise ratio)で表すこととしてもよい。SN比が大きいほど、メジャメント情報の信頼性が高いことを意味する。
【0043】
このように、ホストモードでは、セルフモードにおいてGPSモジュールが位置算出を行う頻度よりも高頻度に、GPSモジュールがメジャメント情報を算出することが好ましい。また、ホスト処理部は、セルフモードにおいてGPSモジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、GPSモジュールからメジャメント情報を取得することが好ましい。このようにすると、GPSモジュールとホスト処理部間のデータのやり取りは、ホストモードの方がセルフモードよりも高頻度になる。逆に考えると、セルフモードではホストモードと比べて位置算出の頻度が低く、データのやり取りの頻度も低くなるため、データ転送に伴う省電力が実現される。
【0044】
2.実施例
次に、GPSモジュールを搭載した電子機器の一例として、携帯型電話機に本発明を適用した場合の実施例について説明する。但し、本発明を適用可能な実施例が以下の実施例に限定されるわけでないことは勿論である。
【0045】
2−1.機能構成
図6は、本実施例における携帯型電話機1の機能構成の一例を示すブロック図である。携帯型電話機1は、GPSアンテナ5と、GPS処理部10と、ホスト処理部30と、操作部40と、表示部50と、携帯電話用アンテナ60と、携帯電話用無線通信回路部70と、クロック部80と、電源部90と、記憶部100とを備えて構成される。
【0046】
GPSアンテナ5は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF(Radio Frequency)信号を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS処理部10に出力する。
【0047】
GPS処理部10は、GPSアンテナ5から出力された信号を利用して衛星捕捉・追尾や位置算出を行う処理回路であり、GPSモジュールに相当する機能ブロックである。GPS処理部10は、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とを備えて構成される。なお、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能である。
【0048】
RF受信回路部11は、RF信号の受信回路である。回路構成としては、例えば、GPSアンテナ5から出力されたRF信号をA/D変換器でデジタル信号に変換し、デジタル信号を処理する受信回路を構成してもよい。また、GPSアンテナ5から出力されたRF信号をアナログ信号のまま信号処理し、最終的にA/D変換することでデジタル信号をベースバンド処理回路部20に出力する構成としてもよい。
【0049】
後者の場合には、例えば、次のようにRF受信回路部11を構成することができる。すなわち、所定の発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ5から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換して、ベースバンド処理回路部20に出力する。
【0050】
ベースバンド処理回路部20は、GPS衛星の捕捉・追尾を行う衛星捕捉・追尾装置であり、ホストモードにおいては、算出したメジャメント情報をホスト処理部30に出力する。また、ベースバンド処理回路部20は、メジャメント情報や衛星軌道データに基づいて位置算出を行う位置算出装置であり、セルフモードにおいては、算出した位置のデータをホスト処理部30に出力する。
【0051】
ホスト処理部30は、記憶部100に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御する制御装置及び演算装置である。ホスト処理部30は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーによって構成され、その演算処理能力は、後述するベースバンド処理回路部20が具備する処理部25よりも高い。ホスト処理部30は、例えば、モード切替制御部と、位置算出部とを機能部として有する。
【0052】
ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30とは、例えば、データバス及び制御バスで接続されている構成とすることが好ましい。データバスは、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30との間でデータ授受を行うためのバスである。セルフモードでは算出位置データが伝送され、ホストモードではメジャメント情報が伝送される。また、データ更新処理においては、衛星軌道データが伝送される。
【0053】
なお、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30との間のデータ授受を行う方法は、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30とをデータバスで接続する方法以外の方法でもよい。例えば、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30とがともに、データ書き込み及びデータ読み出し可能な共有メモリーを介してデータを授受することとしてもよい。また、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30との間で通信可能な近距離無線通信手段によってデータ授受を行ってもよい。
【0054】
制御バスは、位置算出モードを切り替えるためのモード切替信号等の制御信号が伝送されるバスである。
【0055】
操作部40は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号をホスト処理部30に出力する。この操作部40の操作により、通話指示操作やアプリケーション指示操作、GPS設定指示操作、緊急通報指示操作等の各種指示操作入力がなされる。
【0056】
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホスト処理部30から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部50には、各種のアプリケーション画面や機能設定画面、時刻情報等が表示される。
【0057】
携帯電話用アンテナ60は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
【0058】
携帯電話用無線通信回路部70は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで、通話やメールの送受信等を実現する。
【0059】
クロック部80は、携帯型電話機1の各部の作動用のクロック信号を生成する回路部であり、水晶発振器等を有して構成される。生成されたクロック信号は、例えばベースバンド処理回路部20及びホスト処理部30に随時出力される。クロック部80は、ホスト処理部30及びGPS処理部10それぞれの内部に個別に構成されていてもよいのは勿論である。
【0060】
電源部90は、携帯型電話機1の駆動用電圧を供給する電源回路であり、駆動用電圧は、例えばGPS処理部10及びホスト処理部30に供給される。
【0061】
記憶部100は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリー)によって構成され、ホスト処理部30が携帯型電話機1を制御するためのシステムプログラムや、各種アプリケーション処理を実行するための各種アプリケーションプログラム、各種データ等を記憶している。
【0062】
記憶部100の主要なデータ構成としては、プログラムとして、ホスト処理部30により読み出され、ホスト処理(図9及び図10参照)として実行されるホスト処理プログラム101や、不図示のアプリケーションプログラム等が記憶されている。
【0063】
ホスト処理とは、ホスト処理部30が、携帯型電話機1の機能を発揮させるための各種の処理を行う他、位置算出モードを切り替えて携帯型電話機1の位置算出を実現する処理である。すなわち、ホスト処理部30は、位置算出モードを切り替える切替制御部に相当する。
【0064】
位置算出モードをセルフモードに切り替えた場合は、ホスト処理部30は、データバスを介してベースバンド処理回路部20から算出位置データを取得して、各種のアプリケーション処理に利用する。また、位置算出モードをホストモードに切り替えた場合は、ホスト処理部30は、データバスを介してベースバンド処理回路部20からメジャメント情報を取得し、これを用いて位置算出を行う。ホスト処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0065】
また、記憶部100には、データとして、モード切替条件テーブル103と、衛星軌道データ105と、メジャメント情報107と、セルフ算出位置データ109と、ホスト算出位置データ111とが記憶される。
【0066】
モード切替条件テーブル103は、位置算出モードを切り替えるためのモード切替条件が定められたテーブルであり、そのテーブル構成の一例を図8に示す。モード切替条件テーブル103には、切替条件の番号1031と、切替条件1033と、切替先1035とが対応付けて記憶されている。
【0067】
具体的には、番号1031が“1”の切替条件1033として「アプリケーションA実行中」が定められており、その場合の切替先1035として「ホストモード」が定められている。これは、アプリケーションAの実行を条件として、位置算出モードをホストモードに切り替えることを意味する。アプリケーションAとしては、高い位置算出精度が要求されるアプリケーション、例えば、詳細な位置検索や店舗検索、ナビゲーションといったアプリケーションを設定しておくと好適である。
【0068】
番号1031が“2”の切替条件1033として「ホスト処理部の処理負荷70%以上」が定められており、その場合の切替先1035として「セルフモード」が定められている。これは、ホスト処理部30の処理負荷に応じてモードの切り替えを行うことを意味する。ホスト処理部30の処理負荷が過大である場合はセルフモードに切り替えて、ホスト処理部30の処理負荷を軽減する狙いがある。
【0069】
番号1031が“3”の切替条件1033としては「電池残量30%以下」が定められており、その場合の切替先1035として「セルフモード」が定められている。これは、携帯型電話機1のバッテリー状態に応じてモードの切り替えを行うことを意味する。携帯型電話機1のバッテリー状態が悪化した場合はセルフモードに切り替えて、省電力を図る狙いがある。
【0070】
衛星軌道データ105は、全てのGPS衛星の概略の衛星軌道情報を記憶したアルマナックや、各GPS衛星それぞれについて詳細な衛星軌道情報を記憶したエフェメリス等のデータである。衛星軌道データ105は、携帯電話用無線通信回路部70を介して携帯型電話機1の基地局と通信を行い、アシストデータとして取得可能である。また、衛星軌道データ105は、データ更新処理によって更新される。
【0071】
メジャメント情報107は、ベースバンド処理回路部20で算出したメジャメント情報であり、ホストモードにおいては、ベースバンド処理回路部20からデータバスを介してホスト処理部30に伝送される。
【0072】
セルフ算出位置データ109は、ベースバンド処理回路部20が算出した位置のデータであり、セルフモードにおいては、ベースバンド処理回路部20からデータバスを介してホスト処理部30に伝送される。
【0073】
ホスト算出位置データ111は、ホストモードにおいてホスト処理部30がメジャメント情報107を用いて算出した位置のデータである。
【0074】
2−2.ベースバンド処理回路部の回路構成
図7は、ベースバンド処理回路部20の回路構成の一例を示す図であり、本実施例に係わる回路ブロックを中心に記載した図である。ベースバンド処理回路部20は、主要な機能構成として、処理部25と、記憶部27とを有する。
【0075】
処理部25は、ベースバンド処理回路部20の各機能部を統括的に制御する制御装置及び演算装置である。処理部25は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサーを有して構成され、例えば、ホスト処理部30と比べて演算処理能力が劣る比較的安価なプロセッサーが搭載される。処理部25は、主要な機能部として、捕捉・追尾部251と、位置算出部253とを有する。
【0076】
捕捉・追尾部251は、GPS衛星の捕捉・追尾を行う機能部である。具体的には、捕捉・追尾部251は、複数の相関演算器やメモリー等を有し、RF受信回路部11から出力されるデジタル化された受信信号に対して、キャリア(搬送波)除去や相関演算をデジタル信号処理として実行して、GPS衛星を捕捉する。そして、捕捉・追尾部251は、相関演算で取得した相関値に対するピーク判定を行って、メジャメント情報(受信周波数及びコード位相)を算出する。捕捉・追尾部251は、相関値に基づいて航法データも併せて復号・取得する。
【0077】
位置算出部253は、捕捉・追尾部251により算出されたメジャメント情報や航法データを用いて、従来公知の位置計算を行って位置(位置座標)を算出する。位置計算は、携帯型電話機1とGPS衛星との間の擬似距離及び幾何学的距離の関係に基づいて実現することができる。
【0078】
記憶部27は、ベースバンド処理回路部20のシステムプログラムや、捕捉・追尾機能、位置算出機能等の各種機能を実現するための各種プログラム、データ等を記憶している。また、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
【0079】
図7に示すように、記憶部27には、プログラムとして、処理部25により読み出され、ベースバンド処理(図11参照)として実行されるベースバンド処理プログラム271が記憶されている。
【0080】
ベースバンド処理とは、処理部25が、ホスト処理部30から指示された位置算出モードに従って、GPS衛星の捕捉や位置算出を行う処理である。指示された位置算出モードがセルフモードであれば、捕捉・追尾部251が算出したメジャメント情報を用いて位置算出を行う。そして、算出位置データをホスト処理部30に出力する。一方、指示された位置算出モードがホストモードであれば、捕捉・追尾部251が算出したメジャメント情報をホスト処理部30に出力する。ベースバンド処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0081】
また、記憶部27には、データとして、衛星軌道データ273と、メジャメント情報275と、算出位置データ277とが記憶される。衛星軌道データ273は、捕捉・追尾部251が受信したGPS衛星信号を復号(デコード)することで取得する。また、衛星軌道データ273は、データ更新処理によって更新される。
【0082】
2−3.処理の流れ
図9及び図10は、記憶部100に記憶されたホスト処理プログラム101がホスト処理部30により読み出されることで、携帯型電話機1において実行されるホスト処理(位置算出方法)の流れを示すフローチャートである。
【0083】
先ず、ホスト処理部30は、モード設定を初期設定する(ステップA1)。具体的には、例えば、位置算出モードの初期設定を「セルフモード」とする。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10を起動して、設定した位置算出モードをGPS処理部10に指示する(ステップA3)。
【0084】
次いで、ホスト処理部30は、操作部40を介してユーザーによりなされた指示操作を判定し(ステップA5)、指示操作が通話指示操作であると判定した場合は(ステップA5;通話指示操作)、通話処理を行う(ステップA7)。具体的には、携帯電話用無線通信回路部70に無線基地局との間の基地局通信を行わせ、携帯型電話機1と他機との間の通話を実現する。
【0085】
また、ステップA5において指示操作がアプリケーション指示操作であると判定した場合は(ステップA5;アプリケーション指示操作)、ホスト処理部30は、アプリケーション処理を行う(ステップA9)。アプリケーション処理には、メールの送受信やインターネット、ゲーム、GPSを利用した各種のコンテンツ、といった携帯型電話機1に組み込まれた各種のアプリケーションに相当する処理が含まれる。
【0086】
また、ステップA5において指示操作がGPS設定指示操作であると判定した場合は(ステップA5;GPS設定指示操作)、ホスト処理部30は、GPS設定処理を行う(ステップA11)。具体的には、ユーザーの指示操作に従って、GPS機能のON/OFFといったGPSに関する各種設定を行う。
【0087】
また、ステップA5において指示操作が緊急通報指示操作であると判定した場合は(ステップA5;緊急通報指示操作)、ホスト処理部30は、緊急通報位置通知処理を行う(ステップA13)。具体的には、所定の緊急通報受理機関(例えば警察)に対して、携帯型電話機1が算出した最新の位置を通知する。
【0088】
上記の各種の処理の後、又は、ステップA5において指示操作がなされなかったと判定した場合は(ステップA5;なし)、ホスト処理部30は、記憶部100に記憶されたモード切替条件テーブル103を参照して、位置算出モードの切替条件が成立したか否かを判定する(ステップA15)。具体的には、モード切替条件テーブル103に定められた番号1031の若い順に、切替条件1033が成立したか否かを順番に判定する。すなわち、番号1031は優先順位を表している。
【0089】
切替条件1033が成立したと判定した場合は(ステップA15;Yes)、ホスト処理部30は、当該切替条件1033に対応付けられた切替先1035にモード設定を変更する(ステップA17)。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10に位置算出モードを指示して(ステップA19)、データ更新処理を行う(ステップA21)。
【0090】
次いで、ホスト処理部30は、モード設定がセルフモードであるか否かを判定し(ステップA23)、セルフモードであると判定した場合は(ステップA23;Yes)、予め定められたウェイクアップ許容時間が経過したか否かを判定する(ステップA25)。ウェイクアップ許容時間は、例えば、セルフモードの間欠動作の時間間隔(例えば5分)に所定秒数(例えば20秒)を加算した時間とすると好適である。
【0091】
ウェイクアップ許容時間が経過したと判定した場合は(ステップA25;Yes)、ホスト処理部30は、GPS処理部10を起動して、位置算出モードを指示する(ステップA27)。何らかの不具合によってウェイクアップ許容時間が経過してもGPS処理部10がウェイクアップしない場合は、GPS処理部10を強制的にウェイクアップさせて、位置算出を行わせる狙いがある。
【0092】
次いで、ホスト処理部30は、GPS処理部10から算出位置データを入力したか否かを判定し(ステップA29)、入力したと判定した場合は(ステップA29;Yes)、記憶部100のセルフ算出位置データ109に記憶させる(ステップA31)。また、入力しなかったと判定した場合は(ステップA29;No)、次のステップに移行する。
【0093】
ホスト処理部30は、GPS処理部10からモード移行要請があったか否かを判定し(ステップA33)、モード移行要請がなかったと判定した場合は(ステップA33;No)、ステップA5に戻る。また、モード移行要請があったと判定した場合は(ステップA33;Yes)、ホスト処理部30は、モード設定をホストモードに変更する(ステップA35)。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10に位置算出モードを指示する(ステップA37)。
【0094】
次いで、ホスト処理部30は、記憶部100に記憶された衛星軌道データ105が利用不可であるか否かを判定する(ステップA39)。衛星軌道データ105が利用不可であるとは、例えば、衛星軌道データの有効期間が経過していることを意味する。この場合は、衛星軌道データを位置算出に用いることができないため、基地局と通信を行って、衛星軌道データをいわゆるアシストデータとして取得する。
【0095】
すなわち、ステップA39において衛星軌道データ105が利用不可であると判定した場合は(ステップA39;Yes)、ホスト処理部30は、携帯電話用無線通信回路部70を介して基地局と通信を行って、衛星軌道データ(アシストデータ)を取得する(ステップA41)。また、衛星軌道データ105が利用可能であると判定した場合は(ステップA39;No)、次のステップに移行する。
【0096】
ホスト処理部30は、GPS処理部10から取得したメジャメント情報を記憶部100に蓄積的に記憶させる(ステップA43)。そして、ホスト処理部30は、位置算出タイミングであるか否か(例えば前回の位置算出から1秒が経過したか否か)を判定し(ステップA45)、位置算出タイミングではないと判定した場合は(ステップA45;No)、ステップA5に戻る。
【0097】
また、位置算出タイミングであると判定した場合は(ステップA45;Yes)、ホスト処理部30は、位置算出処理を行う(ステップA47)。そして、ホスト処理部30は、算出位置を記憶部100のホスト算出位置データ111に記憶させた後(ステップA49)、ステップA5に戻る。
【0098】
一方で、ステップA23においてモード設定がセルフモードではなく、ホストモードであると判定した場合は(ステップA23;No)、ホスト処理部30は、上記のステップA39〜ステップA49と同様の処理を行う。そして、ホスト処理部30は、ステップA5に戻る。
【0099】
一方で、ステップA15において切替条件1033が成立していないと判定した場合は(ステップA15;No)、ホスト処理部30は、ステップA23に移行する。また、ステップA25においてウェイクアップ許容時間が経過していないと判定した場合は(ステップA25;No)、ホスト処理部30は、ステップA29に移行する。
【0100】
図11は、記憶部27に記憶されたベースバンド処理プログラム271が処理部25により読み出されることで、ベースバンド処理回路部20において実行されるベースバンド処理の流れを示すフローチャートである。
【0101】
最初に、処理部25は、ホスト処理部30から位置算出モードの指示入力があったか否かを判定し(ステップB1)、指示入力があったと判定した場合は(ステップB1;Yes)、スリープモードから復帰(ウェイクアップ)する(ステップB3)。そして、処理部25は、モード設定を変更して(ステップB5)、データ更新処理を行う(ステップB7)。また、ステップB1において位置算出モードの指示入力がなかったと判定した場合は(ステップB1;No)、次のステップに移行する。
【0102】
処理部25は、モード設定がセルフモードであるか否かを判定し(ステップB9)、セルフモードであると判定した場合は(ステップB9;Yes)、位置算出タイミングであるか否かを判定する(ステップB11)。この位置算出タイミングの判定は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、位置算出を終了した後、クロック部80のクロック信号の計数を開始する。そして、予め定められた位置算出時間間隔(例えば5分)に相当する計数値に達した場合に、位置算出タイミングが到来したと判定する。位置算出タイミングではないと判定した場合は(ステップB11;No)、ステップB1に戻る。
【0103】
また、位置算出タイミングであると判定した場合は(ステップB11;Yes)、処理部25は、スリープモードから復帰(ウェイクアップ)する(ステップB13)。そして、処理部25は、記憶部27に記憶されている衛星軌道データ273が利用可能であるか否かを判定する(ステップB15)。つまり、衛星軌道データ273が有効期間内のデータであるか否かを判定する。
【0104】
ステップB15において衛星軌道データ273が利用可能であると判定した場合は(ステップB15;Yes)、捕捉・追尾部251は、衛星捕捉処理を行ってメジャメント情報を算出し、記憶部27のメジャメント情報275を更新する(ステップB17)。
【0105】
その後、位置算出部253は位置算出処理を行い(ステップB19)、その算出位置を記憶部27の算出位置データ277に記憶させる(ステップB21)。そして、処理部25は、算出位置データ277をホスト処理部30に出力し(ステップB23)、再びスリープ状態に移行した後(ステップB25)、ステップB1に戻る。
【0106】
一方、ステップB15において衛星軌道データ273が利用不可であると判定した場合は(ステップB15;No)、処理部25は、ホスト処理部30に対してホストモードへの移行要請を行う(ステップB27)。そして、処理部25は、モード設定をホストモードに変更した後(ステップB29)、ステップB1に戻る。
【0107】
また、ステップB9においてモード設定がホストモードであると判定した場合は(ステップB9;No)、捕捉・追尾部251は、衛星捕捉処理を行ってメジャメント情報を算出し、記憶部27のメジャメント情報275を更新する(ステップB31)。そして、処理部25は、メジャメント情報275をホスト処理部30に出力した後(ステップB33)、ステップB1に戻る。
【0108】
2−4.作用効果
GPS処理部10と、GPS処理部10よりも演算処理能力の高いホスト処理部30とを備えた携帯型電話機1において、GPSアンテナ5は、GPS衛星から送出されるGPS衛星信号を受信する。GPS処理部10は、GPSアンテナ5が受信した信号に対する衛星サーチを行い、位置算出の基礎情報とするメジャメント情報を算出する。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10がメジャメント情報に基づいて位置算出するセルフモードと、ホスト処理部30がメジャメント情報に基づいて位置算出するホストモードとを、記憶部100に記憶されたモード切替条件テーブル103に従って切り替える。
【0109】
このように演算処理能力が異なるGPS処理部10及びホスト処理部30がそれぞれ位置算出を行うセルフモード及びホストモードの2種類の位置算出モードを切り替えることで、位置算出を行う主体を適切に切り替えることができる。
【0110】
GPS処理部10とホスト処理部30とはデータバスで接続されている。セルフモードでは、GPS処理部10が算出した位置のデータを、データバスを介してホスト処理部30が取得する。それに対して、ホストモードでは、GPS処理部10が算出したメジャメント情報を、データバスを介してホスト処理部30が取得する。
【0111】
また、セルフモードでは、GPS処理部10は比較的長い時間間隔(例えば1分や3分、5分等)で間欠動作する。次回の位置算出タイミングが到来するまでの間は、GPS処理部10はスリープ状態となる。位置算出タイミングが到来すると、GPS処理部10はウェイクアップしてGPS衛星の捕捉を行い、メジャメント情報を算出する。そして、メジャメント情報を利用して位置算出を行い、データバスを介して算出位置データをホスト処理部30に出力した後、再びスリープ状態へと移行する。位置算出タイミングが到来するまでの間GPS処理部10は動作しないため、消費電力を削減することができる。
【0112】
一方、ホストモードでは、GPS処理部10は継続的にGPS衛星を捕捉し、算出したメジャメント情報を、データバスを介してホスト処理部30に随時出力する。そして、ホスト処理部30は、セルフモードにおける位置算出の時間間隔よりも短い時間間隔(例えば1秒や3秒、5秒等)で、位置算出を行う。ホストモードでは、ホスト処理部30が、セルフモードにおいてGPS処理部10から算出位置データを取得する頻度よりも高い頻度で、GPS処理部10からメジャメント情報を取得する。そのため、ホストモードでは、セルフモードと比べて位置算出を高頻度に行うことができる。また、この際、一定期間分のメジャメント情報を位置算出に利用することができる。
【0113】
3.変形例
本発明を適用可能な実施形態は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明するが、上記の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0114】
3−1.位置算出用モジュール
上記の実施形態では、位置算出用モジュールとしてGPSモジュールを例に挙げて説明したが、位置算出用モジュールはこれに限られない。例えば、GPS以外の衛星測位システムとして、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の衛星測位システムを利用した位置算出用モジュールとしてもよい。
【0115】
3−2.演算処理部
上記の実施形態では、電子機器のメインのプロセッサーであるホスト処理部を演算処理部として説明したが、演算処理部はこれに限られない。電子機器に内蔵される演算処理能力の高い演算処理装置であればよい。
【0116】
また、ホストモードにおいて、上記の実施形態のように位置算出用モジュールが位置算出の基礎情報を算出するのではなく、演算処理部が位置算出の基礎情報を算出することとしてもよい。すなわち、ホストモードでは、位置算出用モジュールが受信してA/D変換した衛星信号を演算処理部にデータ転送する。そして、演算処理部が衛星信号に基づいて基礎情報を算出し、さらに位置算出までをも行うこととしてもよい。
【0117】
3−3.基礎情報
上記の実施形態では、コード位相や受信周波数といったメジャメント情報を位置算出の基礎となる基礎情報として説明したが、位置算出の基礎情報はこれに限られない。例えば、衛星信号を復号(デコード)することで得られる衛星軌道情報やクロック補正情報、時刻情報等を基礎情報としてもよい。
【0118】
また、位置算出用モジュールが衛星信号に基づいて簡易な位置演算を行って電子機器の概略位置を算出し、当該概略位置を位置算出の基礎情報に含めることとしてもよい。簡易な位置演算とは、電子機器の位置を大まかに求めるための演算である。例えば、位置算出に必要な最低数の衛星を利用して位置算出を行ったり、位置収束計算の反復回数を1〜2回程度に抑えるなどの簡易な演算とする。この場合は、位置算出用モジュールにより算出された概略位置を、電子機器の初期位置とする。そして、セルフモードでは、位置算出用モジュールが最終的な位置を算出し、ホストモードでは、演算処理部が最終的な位置を算出する。
【0119】
3−4.電子機器
上記の実施例では、電子機器の一種である携帯型電話機に本発明を適用した場合の実施例を説明したが、本発明を適用可能な電子機器は携帯型電話機に限られない。例えば、カーナビゲーション装置や携帯型ナビゲーション装置、パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、腕時計といった他の電子機器についても同様に適用可能である。
【0120】
3−5.モード切替
上記の実施形態のようにモード切替をソフトウェア的に行うのではなく、ハードウェアの制御によりモード切替を行うこととしてもよい。例えば、ユーザーのモード切替操作に応じた操作部からのハードウェア割り込みによって、ホスト処理部が位置算出モードの切替を行うこととしてもよい。
【0121】
また、上記の実施形態で説明したモード切替条件はあくまでも一例であり、適宜設定変更可能である。例えば、電子機器に対する電源供給状態をモード切替条件として定めておくこととしてもよい。この場合は、例えば、電子機器の一種であるナビゲーション装置において、装置本体が自動車等に取り付けられて電力が安定して供給される状態となった場合は、位置算出モードを高精度のホストモードに切り替えるようにモード切替条件を定めておくと好適である。逆に、装置本体が自動車等から取り外されて電力供給が行われなくなった場合は、位置算出モードを省電力のセルフモードに切り替えるようにモード切替条件を定めておくと好適である。
【0122】
また、電子機器が実行するアプリケーションの種類に応じたモード切替条件を定めておいてもよい。図12は、この場合におけるモード切替条件テーブル104のテーブル構成の一例を示す図である。モード切替条件テーブル104には、番号1041と、実行アプリケーション1043と、切替先1045とが対応付けて記憶されている。モード切替条件テーブル104は、ホスト処理部が実行しているアプリケーションの種類によって位置算出モードを切り替えるためのテーブルであり、実行アプリケーションの種類に応じて、位置算出モードの切替先が定められている。
【0123】
原理説明でも言及したが、切替先をホストモードとするアプリケーションとしては、高い位置算出精度が要求されるアプリケーションを設定しておくと好適である。また、切替先をセルフモードとするアプリケーションとしては、それほど高い位置算出精度が要求されないアプリケーションを設定しておくと好適である。
【0124】
3−6.衛星軌道データの取得要請
上記の実施例では、セルフモードにおいて衛星軌道データが利用不可である場合は、GPS処理部10がホスト処理部30に対してホストモードへの移行要請を行い、位置算出モードをホストモードに変更するものとして説明した。つまり、位置算出モードをホストモードに切り替えて、ホスト処理部30が位置算出を行うものとして説明した。これを次のようにしてもよい。
【0125】
衛星軌道データが利用不可である場合は、GPS処理部10は、ホスト処理部30に対して衛星軌道データの取得要請を行う。ホスト処理部30は、GPS処理部10から取得要請を受けると、サーバーアシストによって衛星軌道データを外部取得する。そして、GPS処理部10とホスト処理部30との間でデータ更新処理を行って最新の衛星軌道データに更新する。最終的に、GPS処理部10が、更新された最新の衛星軌道データを利用して位置算出を行う。つまり、この場合は、位置算出モードを切り替えずにセルフモードのままとし、ホスト処理部30に、サーバーアシストによって衛星軌道データを外部から取得してもらう構成とする。
【符号の説明】
【0126】
1 携帯型電話機、 10 GPS処理部、 11 RF受信回路部、 20 ベースバンド処理回路部、 25 処理部、 27 記憶部、 30 ホスト処理部、 40 操作部、 50 表示部、 60 携帯電話用アンテナ、 70 携帯電話用無線通信回路部、 80 クロック部、 90 電源部、 100 記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置算出用モジュールと演算処理部とを備えた電子機器における位置算出方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
測位用信号を利用した位置算出システムとしては、GPS(Global Positioning System)が広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等の電子機器にGPSモジュールとして内蔵されて利用されている。GPSを利用した位置算出では、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から受信装置までの擬似距離等の情報に基づいて、GPSモジュールの位置座標及び時計誤差を求める位置演算を行う。
【0003】
GPSモジュールを搭載した電子機器における位置算出方法の一例として、例えば特許文献1には、GPSモジュールがGPS衛星信号を復号(デコード)することで取得した衛星軌道データ等を用いて、電子機器のホストプロセッサーが位置算出を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−190723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、電子機器のホストプロセッサーに位置算出の役割を担わせる方法も確かに1つの方法ではある。しかし、電子機器に搭載されたGPSモジュール自体が位置算出を行うことができることもまた事実である。ホストプロセッサーは、電子機器の各部を制御するため、ホストプロセッサーの演算負荷等によっては、位置算出を一手に担わせることが適切とは言えない場合もある。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、位置算出用モジュールを搭載した電子機器における位置算出主体の適正化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための第1の形態は、位置算出用モジュールと、前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、を備えた電子機器における位置算出方法であって、衛星信号を受信することと、前記位置算出用モジュールが前記衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出することと、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替えることと、を含む位置算出方法である。
【0008】
また、他の形態として、衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出する位置算出用モジュールと、前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替える切替制御部と、を備えた電子機器を構成してもよい。
【0009】
この第1の形態等によれば、位置算出用モジュールが、受信した衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出する。そして、位置算出用モジュールが基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部が基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替える。このように演算処理能力が異なる位置算出用モジュール及び演算処理部がそれぞれ位置算出を行う2種類のモードを切り替えることで、位置算出を行う主体を適切に切り替えることができる。
【0010】
また、第2の形態として、第1の形態の位置算出方法であって、前記電子機器は、前記位置算出用モジュールと前記演算処理部とを接続するバスを更に備えており、前記第1のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、前記第2のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した前記基礎情報を前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、を含む位置算出方法を構成してもよい。
【0011】
この第2の形態によれば、第1のモードでは、位置算出用モジュールが算出した位置のデータをバスを介して演算処理部が取得して、各種のアプリケーション等に利用することができる。また、第2のモードでは、位置算出用モジュールが算出した基礎情報をバスを介して演算処理部が取得して、位置算出に利用することができる。
【0012】
また、第3の形態として、第1又は第2の形態の位置算出方法であって、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う頻度よりも高頻度に、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報を算出し、前記演算処理部が、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、前記第2のモードにおいて前記基礎情報を取得する、位置算出方法を構成してもよい。
【0013】
この第3の形態によれば、第1のモードにおいて位置算出用モジュールが位置算出を行う頻度よりも高頻度に、位置算出用モジュールが基礎情報を算出するため、位置算出のタイミングが到来するまでの間に算出した複数の基礎情報を位置算出に利用することができる。また、演算処理部は、第1のモードにおいて位置算出用モジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、第2のモードにおいて基礎情報を取得するため、第2のモードでは、第1のモードと比べて位置算出を高頻度に行うことができる。
【0014】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の位置算出方法であって、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔で、前記第2のモードにおいて前記演算処理部が前記位置算出を行う、位置算出方法を構成してもよい。
【0015】
この第4の形態によれば、第1のモードにおいて位置算出用モジュールが位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔で、第2のモードにおいて演算処理部が位置算出を行う。つまり、第1のモードは第2のモードよりも位置算出の頻度が低くなるため、省電力に適したモードとなる。
【0016】
また、第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の位置算出方法であって、前記切り替えることは、衛星の航法データの有効期間が経過した場合に、前記第2のモードに切り替えることを含む、位置算出方法を構成してもよい。
【0017】
この第5の形態によれば、衛星の航法データの有効期間が経過した場合に、第2のモードに切り替える。例えば、第2のモードに切り替えた後、有効な衛星軌道データを外部から取得するなどして、演算処理部が位置算出を行うと好適である。
【0018】
また、第6の形態として、第1〜第5の何れかの形態の位置算出方法であって、前記切り替えることは、前記電子機器のバッテリー状態に応じて前記切り替えを行うことを含む、位置算出方法を構成してもよい。
【0019】
この第6の形態によれば、電子機器のバッテリー状態に応じて、位置算出の主体を切り替えることができる。
【0020】
また、第7の形態として、第1〜第6の何れかの形態の位置算出方法であって、前記切り替えることは、前記演算処理部の処理負荷に応じて前記切り替えを行うことを含む、位置算出方法を構成してもよい。
【0021】
この第7の形態によれば、演算処理部の処理負荷に応じて、位置算出の主体を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】セルフモードにおけるデータの流れの説明図。
【図2】ホストモードにおけるデータの流れの説明図。
【図3】データ更新処理の説明図。
【図4】セルフモードにおける位置算出動作の説明図。
【図5】ホストモードにおける位置算出動作の説明図。
【図6】携帯型電話機の機能構成の一例を示すブロック図。
【図7】ベースバンド処理回路部の回路構成の一例を示す図。
【図8】モード切替条件テーブルのテーブル構成の一例を示す図。
【図9】ホスト処理の流れを示すフローチャート。
【図10】ホスト処理の流れを示すフローチャート。
【図11】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図12】変形例におけるモード切替テーブルのテーブル構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した好適な実施形態の一例について説明する。本実施形態は、衛星測位システムの一種であるGPS(Global Positioning System)を適用した実施形態である。GPSを利用して位置算出を行うモジュールであるGPSモジュールと、GPSモジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部としてのホスト処理部と、を備えた電子機器において位置算出を行うことを想定した実施形態である。
【0024】
1.原理
最初に、本実施形態における位置算出方法について説明する。
GPSを利用した衛星測位システムにおいて、測位用衛星の一種であるGPS衛星は、エフェメリスやアルマナックといった衛星軌道データを含む航法データ(航法メッセージ)を、測位用の衛星信号の一種であるGPS衛星信号に乗せて発信している。GPS衛星信号は、拡散符号の一種であるC/A(Coarse and Acquisition)コードによって、スペクトラム拡散方式として知られるCDMA(Code Division Multiple Access)方式によって変調された1.57542[GHz]の通信信号である。C/Aコードは、コード長1023チップを1PNフレームとする繰返し周期1msの擬似ランダム雑音符号であり、各GPS衛星に固有のコードである。
【0025】
GPS衛星がGPS衛星信号を発信する際の周波数(搬送波周波数)は1.57542[GHz]と予め規定されている。しかし、GPS衛星及びGPSモジュールの移動により生ずるドップラーの影響等により、GPSモジュールがGPS衛星信号を受信する際の周波数は、必ずしも上記の搬送波周波数とは一致しない。そのため、GPSモジュールは、GPS衛星信号を受信した信号に対して、モジュール内部で発生させた擬似的なC/AコードであるレプリカC/Aコードとの相関演算を、周波数方向及び位相方向それぞれについて行って、GPS衛星(GPS衛星信号)を捕捉する。
【0026】
周波数方向の相関演算は、受信した搬送波(キャリア)の信号である「受信キャリア信号」の周波数(以下、「受信周波数」と称す。)を特定するための演算(いわゆる周波数サーチ)である。また、位相方向の相関演算は、受信信号に含まれるC/Aコードである「受信C/Aコード」の位相(以下、「コード位相」と称す。)を特定するための演算(いわゆる位相サーチ)である。本実施形態では、この周波数サーチ及び位相サーチを総称して「衛星サーチ」と称する。
【0027】
GPSモジュールが衛星サーチによって算出した受信周波数やコード位相といった情報は、位置算出や速度算出を行うための基礎となる基礎情報である。例えば、コード位相は、GPSモジュールとGPS衛星との間の擬似距離を算出するために必要な情報である。本実施形態では、GPSモジュールが衛星サーチによって算出した受信周波数及びコード位相の情報(基礎情報)のことを「メジャメント情報」と呼称する。なお、基礎情報であるメジャメント情報には、コード位相のみを含むこととし、受信周波数を含まないこととしてもよい。メジャメント情報の内容は、システムに応じて適宜設定変更可能である。
【0028】
本実施形態では、GPSモジュールが、算出したメジャメント情報に基づいて位置算出する第1のモードとしての「セルフモード」と、電子機器のホスト処理部(演算処理部)がメジャメント情報に基づいて位置算出する第2のモードとしての「ホストモード」とを切り替えて、電子機器の位置を算出する。本実施形態において、電子機器のホスト処理部は、演算処理能力の高いプロセッサーを有して構成されるものとする。それに対して、GPSモジュールに内蔵される演算処理部は、ホスト処理部と比べて演算処理能力が劣る比較的安価なプロセッサーを有して構成されるものとする。
【0029】
本実施形態では、ホスト処理部は、高い演算処理能力を活かして高精度な位置算出を実現する。GPSを利用した位置計算では、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星からGPSモジュールまでの擬似距離等の情報を用いて、位置収束演算を行って位置を近似的に求める手法が用いられる。その中でも、最小二乗法を用いた位置収束演算が広く用いられている。
【0030】
ホスト処理部は、例えば、捕捉に成功した全てのGPS衛星について、想定される全ての衛星組合せについて位置収束演算を行って電子機器の位置を算出する。この際、位置収束演算の反復回数(繰り返し回数)を多めにして、より確からしい位置が求まるようにする。従って、ホストモードは、高精度の位置が要求されるアプリケーションに適したモードであると言える。詳細な位置検索や店舗検索、ナビゲーションといったアプリケーションに好適である。
【0031】
それに対して、GPSモジュールに内蔵される演算処理部は、例えば、捕捉に成功したGPS衛星の中から選択した所定数の衛星の組合せについて、例えば最小二乗法を利用した位置収束演算を行って電子機器の位置を算出する。この際、位置収束演算の反復回数を抑えて、比較的簡易な演算を実現する。従って、セルフモードは、ホストモードほどの高精度な位置を要求しないアプリケーションに適したモードであると言える。例えば、市町村レベルの大域的な位置検索や天気予報検索といったアプリケーションに好適である。セルフモードでは、位置算出に係る演算量を低減させることで、省電力を図る狙いもある。
【0032】
図1は、セルフモードにおけるデータの流れの説明図である。GPSモジュール及びホスト処理部それぞれの機能部を概念的に示し、各機能部間でやり取りされるデータを示している。セルフモードでは、GPSモジュールにおいて、捕捉・追尾部によりGPS衛星が捕捉・追尾されて、メジャメント情報が算出される。そして、GPSモジュールの位置算出部が、捕捉・追尾部により算出されたメジャメント情報に基づいて位置算出を行う。位置算出部により算出された算出位置データは、バスを介してホスト処理部に出力される。そして、ホスト処理部は、GPSモジュールから取得した算出位置データを上位のアプリケーションに利用する。
【0033】
図2は、ホストモードにおけるデータの流れの説明図である。ホストモードでは、GPSモジュールにおいて、捕捉・追尾部によりGPS衛星が捕捉・追尾されて、メジャメント情報が算出される。算出されたメジャメント情報は、バスを介してホスト処理部に出力される。ホスト処理部の位置算出部は、GPSモジュールから取得したメジャメント情報に基づいて位置算出を行う。そして、ホスト処理部は、算出位置データを上位のアプリケーションに利用する。
【0034】
本実施形態では、上記のセルフモードとホストモードとを、予め定められたモード切替条件に従って切り替える。モード切替条件としては、種々の条件を設定可能である。実施例で後述するように、例えば、GPS衛星の航法データの有効期間、電子機器のバッテリー状態、ホスト処理部の処理負荷等に応じた切替条件を定めておくと好適である。モード切替条件に従って位置算出モードを切り替えた場合は、データ更新処理を行う。
【0035】
図3は、データ更新処理の説明図である。データ更新処理は、位置算出に必要なデータを、GPSモジュール及びホスト処理部間で更新する処理である。具体的には、GPSモジュールは、捕捉・追尾部により捕捉・追尾されたGPS衛星信号を復号(デコード)することで航法データを取得する。航法データには、アルマナックやエフェメリスといった衛星軌道データが含まれる。ホスト処理部は、例えばサーバーアシストによって衛星軌道データを外部取得する。すなわち、衛星軌道データの生成・提供を行うサーバーと通信を行い、衛星軌道データを含むアシストデータをサーバーに要求する。そして、サーバーから衛星軌道データをダウンロードするなどして取得する。
【0036】
本実施形態のデータ更新処理では、上記の衛星軌道データを、GPSモジュールとホスト処理部との間で更新する。つまり、位置算出モードをセルフモードとホストモードとの間で切り替えた場合に、GPSモジュール側の衛星軌道データと、ホスト処理部側の衛星軌道データとを比較して、古い方のデータを最新のデータで更新する。
【0037】
図4は、セルフモードにおける位置算出動作の説明図である。セルフモードでは、GPSモジュールはGPS衛星の捕捉及び位置算出を所定時間間隔(例えば数分間隔)で行う。位置算出タイミングが到来するまでの間、GPSモジュールはスリープ状態である。位置算出タイミングが到来すると、GPSモジュールはスリープ状態から復帰(ウェイクアップ)して、GPS衛星の捕捉及び位置算出を行う。
【0038】
位置算出が完了すると、GPSモジュールは算出位置データを、データバスを介してホスト処理部に出力する。ホスト処理部は、GPSモジュールから取得した算出位置データを上位のアプリケーションに利用する。この場合、ホスト処理部が算出位置データを取得する時間間隔は、GPSモジュールが位置算出を行う時間間隔と等しくなる。GPSモジュールが位置算出を行う時間間隔は、ホストモードにおいてホスト処理部が位置算出を行う時間間隔よりも長い時間間隔(例えば5分間隔)とすることが好ましい。
【0039】
図5は、ホストモードにおける位置算出動作の説明図である。ホストモードでは、GPSモジュールの捕捉・追尾部は、継続的に捕捉処理を行ってメジャメント情報を算出する。メジャメント情報は、衛星毎に、また、捕捉の度に算出されるため、例えば1秒間の間に数千回もメジャメント情報が算出される場合もある。そして、ホスト処理部は、GPSモジュールにより算出されたメジャメント情報をデータバスを介して随時取得する。
【0040】
ホスト処理部がメジャメント情報を取得する時間間隔は、ホスト処理部の位置算出部が位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔(例えば1ミリ秒間隔)とすることが好ましい。ホスト処理部の位置算出部は、一定時間分(例えば1秒分)のメジャメント情報をもとに位置算出を行う。ホスト処理部が位置算出を行う時間間隔は、セルフモードにおいてGPSモジュールが位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔(例えば1秒間隔)とすることが好ましい。
【0041】
ホスト処理部は、位置算出タイミングが到来するまでの間に取得された一定時間分のメジャメント情報を利用して位置算出を行う。例えば、取得した複数のメジャメント情報を衛星毎に平均化し、この平均化されたメジャメント情報を用いて位置算出を行う。或いは、メジャメント情報の算出に用いた相関値に基づいてメジャメント情報の信頼度を判定し、この信頼度に基づいて、位置算出に用いるメジャメント情報を選別してもよい。更には、メジャメント情報の信頼度で重み付けを行って、メジャメント情報を加重平均して位置算出に用いてもよい。
【0042】
メジャメント情報の信頼度としては、例えば、コード位相別に算出した相関値のうちの最大の相関値(ピーク相関値)と、ピーク相関値に対応する位相から所定位相離れた位相における相関値(ノイズフロア相関値)との比として算出されるSN比(Signal to Noise ratio)で表すこととしてもよい。SN比が大きいほど、メジャメント情報の信頼性が高いことを意味する。
【0043】
このように、ホストモードでは、セルフモードにおいてGPSモジュールが位置算出を行う頻度よりも高頻度に、GPSモジュールがメジャメント情報を算出することが好ましい。また、ホスト処理部は、セルフモードにおいてGPSモジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、GPSモジュールからメジャメント情報を取得することが好ましい。このようにすると、GPSモジュールとホスト処理部間のデータのやり取りは、ホストモードの方がセルフモードよりも高頻度になる。逆に考えると、セルフモードではホストモードと比べて位置算出の頻度が低く、データのやり取りの頻度も低くなるため、データ転送に伴う省電力が実現される。
【0044】
2.実施例
次に、GPSモジュールを搭載した電子機器の一例として、携帯型電話機に本発明を適用した場合の実施例について説明する。但し、本発明を適用可能な実施例が以下の実施例に限定されるわけでないことは勿論である。
【0045】
2−1.機能構成
図6は、本実施例における携帯型電話機1の機能構成の一例を示すブロック図である。携帯型電話機1は、GPSアンテナ5と、GPS処理部10と、ホスト処理部30と、操作部40と、表示部50と、携帯電話用アンテナ60と、携帯電話用無線通信回路部70と、クロック部80と、電源部90と、記憶部100とを備えて構成される。
【0046】
GPSアンテナ5は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF(Radio Frequency)信号を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS処理部10に出力する。
【0047】
GPS処理部10は、GPSアンテナ5から出力された信号を利用して衛星捕捉・追尾や位置算出を行う処理回路であり、GPSモジュールに相当する機能ブロックである。GPS処理部10は、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とを備えて構成される。なお、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能である。
【0048】
RF受信回路部11は、RF信号の受信回路である。回路構成としては、例えば、GPSアンテナ5から出力されたRF信号をA/D変換器でデジタル信号に変換し、デジタル信号を処理する受信回路を構成してもよい。また、GPSアンテナ5から出力されたRF信号をアナログ信号のまま信号処理し、最終的にA/D変換することでデジタル信号をベースバンド処理回路部20に出力する構成としてもよい。
【0049】
後者の場合には、例えば、次のようにRF受信回路部11を構成することができる。すなわち、所定の発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ5から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換して、ベースバンド処理回路部20に出力する。
【0050】
ベースバンド処理回路部20は、GPS衛星の捕捉・追尾を行う衛星捕捉・追尾装置であり、ホストモードにおいては、算出したメジャメント情報をホスト処理部30に出力する。また、ベースバンド処理回路部20は、メジャメント情報や衛星軌道データに基づいて位置算出を行う位置算出装置であり、セルフモードにおいては、算出した位置のデータをホスト処理部30に出力する。
【0051】
ホスト処理部30は、記憶部100に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御する制御装置及び演算装置である。ホスト処理部30は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーによって構成され、その演算処理能力は、後述するベースバンド処理回路部20が具備する処理部25よりも高い。ホスト処理部30は、例えば、モード切替制御部と、位置算出部とを機能部として有する。
【0052】
ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30とは、例えば、データバス及び制御バスで接続されている構成とすることが好ましい。データバスは、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30との間でデータ授受を行うためのバスである。セルフモードでは算出位置データが伝送され、ホストモードではメジャメント情報が伝送される。また、データ更新処理においては、衛星軌道データが伝送される。
【0053】
なお、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30との間のデータ授受を行う方法は、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30とをデータバスで接続する方法以外の方法でもよい。例えば、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30とがともに、データ書き込み及びデータ読み出し可能な共有メモリーを介してデータを授受することとしてもよい。また、ベースバンド処理回路部20とホスト処理部30との間で通信可能な近距離無線通信手段によってデータ授受を行ってもよい。
【0054】
制御バスは、位置算出モードを切り替えるためのモード切替信号等の制御信号が伝送されるバスである。
【0055】
操作部40は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号をホスト処理部30に出力する。この操作部40の操作により、通話指示操作やアプリケーション指示操作、GPS設定指示操作、緊急通報指示操作等の各種指示操作入力がなされる。
【0056】
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホスト処理部30から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部50には、各種のアプリケーション画面や機能設定画面、時刻情報等が表示される。
【0057】
携帯電話用アンテナ60は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
【0058】
携帯電話用無線通信回路部70は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで、通話やメールの送受信等を実現する。
【0059】
クロック部80は、携帯型電話機1の各部の作動用のクロック信号を生成する回路部であり、水晶発振器等を有して構成される。生成されたクロック信号は、例えばベースバンド処理回路部20及びホスト処理部30に随時出力される。クロック部80は、ホスト処理部30及びGPS処理部10それぞれの内部に個別に構成されていてもよいのは勿論である。
【0060】
電源部90は、携帯型電話機1の駆動用電圧を供給する電源回路であり、駆動用電圧は、例えばGPS処理部10及びホスト処理部30に供給される。
【0061】
記憶部100は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリー)によって構成され、ホスト処理部30が携帯型電話機1を制御するためのシステムプログラムや、各種アプリケーション処理を実行するための各種アプリケーションプログラム、各種データ等を記憶している。
【0062】
記憶部100の主要なデータ構成としては、プログラムとして、ホスト処理部30により読み出され、ホスト処理(図9及び図10参照)として実行されるホスト処理プログラム101や、不図示のアプリケーションプログラム等が記憶されている。
【0063】
ホスト処理とは、ホスト処理部30が、携帯型電話機1の機能を発揮させるための各種の処理を行う他、位置算出モードを切り替えて携帯型電話機1の位置算出を実現する処理である。すなわち、ホスト処理部30は、位置算出モードを切り替える切替制御部に相当する。
【0064】
位置算出モードをセルフモードに切り替えた場合は、ホスト処理部30は、データバスを介してベースバンド処理回路部20から算出位置データを取得して、各種のアプリケーション処理に利用する。また、位置算出モードをホストモードに切り替えた場合は、ホスト処理部30は、データバスを介してベースバンド処理回路部20からメジャメント情報を取得し、これを用いて位置算出を行う。ホスト処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0065】
また、記憶部100には、データとして、モード切替条件テーブル103と、衛星軌道データ105と、メジャメント情報107と、セルフ算出位置データ109と、ホスト算出位置データ111とが記憶される。
【0066】
モード切替条件テーブル103は、位置算出モードを切り替えるためのモード切替条件が定められたテーブルであり、そのテーブル構成の一例を図8に示す。モード切替条件テーブル103には、切替条件の番号1031と、切替条件1033と、切替先1035とが対応付けて記憶されている。
【0067】
具体的には、番号1031が“1”の切替条件1033として「アプリケーションA実行中」が定められており、その場合の切替先1035として「ホストモード」が定められている。これは、アプリケーションAの実行を条件として、位置算出モードをホストモードに切り替えることを意味する。アプリケーションAとしては、高い位置算出精度が要求されるアプリケーション、例えば、詳細な位置検索や店舗検索、ナビゲーションといったアプリケーションを設定しておくと好適である。
【0068】
番号1031が“2”の切替条件1033として「ホスト処理部の処理負荷70%以上」が定められており、その場合の切替先1035として「セルフモード」が定められている。これは、ホスト処理部30の処理負荷に応じてモードの切り替えを行うことを意味する。ホスト処理部30の処理負荷が過大である場合はセルフモードに切り替えて、ホスト処理部30の処理負荷を軽減する狙いがある。
【0069】
番号1031が“3”の切替条件1033としては「電池残量30%以下」が定められており、その場合の切替先1035として「セルフモード」が定められている。これは、携帯型電話機1のバッテリー状態に応じてモードの切り替えを行うことを意味する。携帯型電話機1のバッテリー状態が悪化した場合はセルフモードに切り替えて、省電力を図る狙いがある。
【0070】
衛星軌道データ105は、全てのGPS衛星の概略の衛星軌道情報を記憶したアルマナックや、各GPS衛星それぞれについて詳細な衛星軌道情報を記憶したエフェメリス等のデータである。衛星軌道データ105は、携帯電話用無線通信回路部70を介して携帯型電話機1の基地局と通信を行い、アシストデータとして取得可能である。また、衛星軌道データ105は、データ更新処理によって更新される。
【0071】
メジャメント情報107は、ベースバンド処理回路部20で算出したメジャメント情報であり、ホストモードにおいては、ベースバンド処理回路部20からデータバスを介してホスト処理部30に伝送される。
【0072】
セルフ算出位置データ109は、ベースバンド処理回路部20が算出した位置のデータであり、セルフモードにおいては、ベースバンド処理回路部20からデータバスを介してホスト処理部30に伝送される。
【0073】
ホスト算出位置データ111は、ホストモードにおいてホスト処理部30がメジャメント情報107を用いて算出した位置のデータである。
【0074】
2−2.ベースバンド処理回路部の回路構成
図7は、ベースバンド処理回路部20の回路構成の一例を示す図であり、本実施例に係わる回路ブロックを中心に記載した図である。ベースバンド処理回路部20は、主要な機能構成として、処理部25と、記憶部27とを有する。
【0075】
処理部25は、ベースバンド処理回路部20の各機能部を統括的に制御する制御装置及び演算装置である。処理部25は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサーを有して構成され、例えば、ホスト処理部30と比べて演算処理能力が劣る比較的安価なプロセッサーが搭載される。処理部25は、主要な機能部として、捕捉・追尾部251と、位置算出部253とを有する。
【0076】
捕捉・追尾部251は、GPS衛星の捕捉・追尾を行う機能部である。具体的には、捕捉・追尾部251は、複数の相関演算器やメモリー等を有し、RF受信回路部11から出力されるデジタル化された受信信号に対して、キャリア(搬送波)除去や相関演算をデジタル信号処理として実行して、GPS衛星を捕捉する。そして、捕捉・追尾部251は、相関演算で取得した相関値に対するピーク判定を行って、メジャメント情報(受信周波数及びコード位相)を算出する。捕捉・追尾部251は、相関値に基づいて航法データも併せて復号・取得する。
【0077】
位置算出部253は、捕捉・追尾部251により算出されたメジャメント情報や航法データを用いて、従来公知の位置計算を行って位置(位置座標)を算出する。位置計算は、携帯型電話機1とGPS衛星との間の擬似距離及び幾何学的距離の関係に基づいて実現することができる。
【0078】
記憶部27は、ベースバンド処理回路部20のシステムプログラムや、捕捉・追尾機能、位置算出機能等の各種機能を実現するための各種プログラム、データ等を記憶している。また、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
【0079】
図7に示すように、記憶部27には、プログラムとして、処理部25により読み出され、ベースバンド処理(図11参照)として実行されるベースバンド処理プログラム271が記憶されている。
【0080】
ベースバンド処理とは、処理部25が、ホスト処理部30から指示された位置算出モードに従って、GPS衛星の捕捉や位置算出を行う処理である。指示された位置算出モードがセルフモードであれば、捕捉・追尾部251が算出したメジャメント情報を用いて位置算出を行う。そして、算出位置データをホスト処理部30に出力する。一方、指示された位置算出モードがホストモードであれば、捕捉・追尾部251が算出したメジャメント情報をホスト処理部30に出力する。ベースバンド処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0081】
また、記憶部27には、データとして、衛星軌道データ273と、メジャメント情報275と、算出位置データ277とが記憶される。衛星軌道データ273は、捕捉・追尾部251が受信したGPS衛星信号を復号(デコード)することで取得する。また、衛星軌道データ273は、データ更新処理によって更新される。
【0082】
2−3.処理の流れ
図9及び図10は、記憶部100に記憶されたホスト処理プログラム101がホスト処理部30により読み出されることで、携帯型電話機1において実行されるホスト処理(位置算出方法)の流れを示すフローチャートである。
【0083】
先ず、ホスト処理部30は、モード設定を初期設定する(ステップA1)。具体的には、例えば、位置算出モードの初期設定を「セルフモード」とする。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10を起動して、設定した位置算出モードをGPS処理部10に指示する(ステップA3)。
【0084】
次いで、ホスト処理部30は、操作部40を介してユーザーによりなされた指示操作を判定し(ステップA5)、指示操作が通話指示操作であると判定した場合は(ステップA5;通話指示操作)、通話処理を行う(ステップA7)。具体的には、携帯電話用無線通信回路部70に無線基地局との間の基地局通信を行わせ、携帯型電話機1と他機との間の通話を実現する。
【0085】
また、ステップA5において指示操作がアプリケーション指示操作であると判定した場合は(ステップA5;アプリケーション指示操作)、ホスト処理部30は、アプリケーション処理を行う(ステップA9)。アプリケーション処理には、メールの送受信やインターネット、ゲーム、GPSを利用した各種のコンテンツ、といった携帯型電話機1に組み込まれた各種のアプリケーションに相当する処理が含まれる。
【0086】
また、ステップA5において指示操作がGPS設定指示操作であると判定した場合は(ステップA5;GPS設定指示操作)、ホスト処理部30は、GPS設定処理を行う(ステップA11)。具体的には、ユーザーの指示操作に従って、GPS機能のON/OFFといったGPSに関する各種設定を行う。
【0087】
また、ステップA5において指示操作が緊急通報指示操作であると判定した場合は(ステップA5;緊急通報指示操作)、ホスト処理部30は、緊急通報位置通知処理を行う(ステップA13)。具体的には、所定の緊急通報受理機関(例えば警察)に対して、携帯型電話機1が算出した最新の位置を通知する。
【0088】
上記の各種の処理の後、又は、ステップA5において指示操作がなされなかったと判定した場合は(ステップA5;なし)、ホスト処理部30は、記憶部100に記憶されたモード切替条件テーブル103を参照して、位置算出モードの切替条件が成立したか否かを判定する(ステップA15)。具体的には、モード切替条件テーブル103に定められた番号1031の若い順に、切替条件1033が成立したか否かを順番に判定する。すなわち、番号1031は優先順位を表している。
【0089】
切替条件1033が成立したと判定した場合は(ステップA15;Yes)、ホスト処理部30は、当該切替条件1033に対応付けられた切替先1035にモード設定を変更する(ステップA17)。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10に位置算出モードを指示して(ステップA19)、データ更新処理を行う(ステップA21)。
【0090】
次いで、ホスト処理部30は、モード設定がセルフモードであるか否かを判定し(ステップA23)、セルフモードであると判定した場合は(ステップA23;Yes)、予め定められたウェイクアップ許容時間が経過したか否かを判定する(ステップA25)。ウェイクアップ許容時間は、例えば、セルフモードの間欠動作の時間間隔(例えば5分)に所定秒数(例えば20秒)を加算した時間とすると好適である。
【0091】
ウェイクアップ許容時間が経過したと判定した場合は(ステップA25;Yes)、ホスト処理部30は、GPS処理部10を起動して、位置算出モードを指示する(ステップA27)。何らかの不具合によってウェイクアップ許容時間が経過してもGPS処理部10がウェイクアップしない場合は、GPS処理部10を強制的にウェイクアップさせて、位置算出を行わせる狙いがある。
【0092】
次いで、ホスト処理部30は、GPS処理部10から算出位置データを入力したか否かを判定し(ステップA29)、入力したと判定した場合は(ステップA29;Yes)、記憶部100のセルフ算出位置データ109に記憶させる(ステップA31)。また、入力しなかったと判定した場合は(ステップA29;No)、次のステップに移行する。
【0093】
ホスト処理部30は、GPS処理部10からモード移行要請があったか否かを判定し(ステップA33)、モード移行要請がなかったと判定した場合は(ステップA33;No)、ステップA5に戻る。また、モード移行要請があったと判定した場合は(ステップA33;Yes)、ホスト処理部30は、モード設定をホストモードに変更する(ステップA35)。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10に位置算出モードを指示する(ステップA37)。
【0094】
次いで、ホスト処理部30は、記憶部100に記憶された衛星軌道データ105が利用不可であるか否かを判定する(ステップA39)。衛星軌道データ105が利用不可であるとは、例えば、衛星軌道データの有効期間が経過していることを意味する。この場合は、衛星軌道データを位置算出に用いることができないため、基地局と通信を行って、衛星軌道データをいわゆるアシストデータとして取得する。
【0095】
すなわち、ステップA39において衛星軌道データ105が利用不可であると判定した場合は(ステップA39;Yes)、ホスト処理部30は、携帯電話用無線通信回路部70を介して基地局と通信を行って、衛星軌道データ(アシストデータ)を取得する(ステップA41)。また、衛星軌道データ105が利用可能であると判定した場合は(ステップA39;No)、次のステップに移行する。
【0096】
ホスト処理部30は、GPS処理部10から取得したメジャメント情報を記憶部100に蓄積的に記憶させる(ステップA43)。そして、ホスト処理部30は、位置算出タイミングであるか否か(例えば前回の位置算出から1秒が経過したか否か)を判定し(ステップA45)、位置算出タイミングではないと判定した場合は(ステップA45;No)、ステップA5に戻る。
【0097】
また、位置算出タイミングであると判定した場合は(ステップA45;Yes)、ホスト処理部30は、位置算出処理を行う(ステップA47)。そして、ホスト処理部30は、算出位置を記憶部100のホスト算出位置データ111に記憶させた後(ステップA49)、ステップA5に戻る。
【0098】
一方で、ステップA23においてモード設定がセルフモードではなく、ホストモードであると判定した場合は(ステップA23;No)、ホスト処理部30は、上記のステップA39〜ステップA49と同様の処理を行う。そして、ホスト処理部30は、ステップA5に戻る。
【0099】
一方で、ステップA15において切替条件1033が成立していないと判定した場合は(ステップA15;No)、ホスト処理部30は、ステップA23に移行する。また、ステップA25においてウェイクアップ許容時間が経過していないと判定した場合は(ステップA25;No)、ホスト処理部30は、ステップA29に移行する。
【0100】
図11は、記憶部27に記憶されたベースバンド処理プログラム271が処理部25により読み出されることで、ベースバンド処理回路部20において実行されるベースバンド処理の流れを示すフローチャートである。
【0101】
最初に、処理部25は、ホスト処理部30から位置算出モードの指示入力があったか否かを判定し(ステップB1)、指示入力があったと判定した場合は(ステップB1;Yes)、スリープモードから復帰(ウェイクアップ)する(ステップB3)。そして、処理部25は、モード設定を変更して(ステップB5)、データ更新処理を行う(ステップB7)。また、ステップB1において位置算出モードの指示入力がなかったと判定した場合は(ステップB1;No)、次のステップに移行する。
【0102】
処理部25は、モード設定がセルフモードであるか否かを判定し(ステップB9)、セルフモードであると判定した場合は(ステップB9;Yes)、位置算出タイミングであるか否かを判定する(ステップB11)。この位置算出タイミングの判定は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、位置算出を終了した後、クロック部80のクロック信号の計数を開始する。そして、予め定められた位置算出時間間隔(例えば5分)に相当する計数値に達した場合に、位置算出タイミングが到来したと判定する。位置算出タイミングではないと判定した場合は(ステップB11;No)、ステップB1に戻る。
【0103】
また、位置算出タイミングであると判定した場合は(ステップB11;Yes)、処理部25は、スリープモードから復帰(ウェイクアップ)する(ステップB13)。そして、処理部25は、記憶部27に記憶されている衛星軌道データ273が利用可能であるか否かを判定する(ステップB15)。つまり、衛星軌道データ273が有効期間内のデータであるか否かを判定する。
【0104】
ステップB15において衛星軌道データ273が利用可能であると判定した場合は(ステップB15;Yes)、捕捉・追尾部251は、衛星捕捉処理を行ってメジャメント情報を算出し、記憶部27のメジャメント情報275を更新する(ステップB17)。
【0105】
その後、位置算出部253は位置算出処理を行い(ステップB19)、その算出位置を記憶部27の算出位置データ277に記憶させる(ステップB21)。そして、処理部25は、算出位置データ277をホスト処理部30に出力し(ステップB23)、再びスリープ状態に移行した後(ステップB25)、ステップB1に戻る。
【0106】
一方、ステップB15において衛星軌道データ273が利用不可であると判定した場合は(ステップB15;No)、処理部25は、ホスト処理部30に対してホストモードへの移行要請を行う(ステップB27)。そして、処理部25は、モード設定をホストモードに変更した後(ステップB29)、ステップB1に戻る。
【0107】
また、ステップB9においてモード設定がホストモードであると判定した場合は(ステップB9;No)、捕捉・追尾部251は、衛星捕捉処理を行ってメジャメント情報を算出し、記憶部27のメジャメント情報275を更新する(ステップB31)。そして、処理部25は、メジャメント情報275をホスト処理部30に出力した後(ステップB33)、ステップB1に戻る。
【0108】
2−4.作用効果
GPS処理部10と、GPS処理部10よりも演算処理能力の高いホスト処理部30とを備えた携帯型電話機1において、GPSアンテナ5は、GPS衛星から送出されるGPS衛星信号を受信する。GPS処理部10は、GPSアンテナ5が受信した信号に対する衛星サーチを行い、位置算出の基礎情報とするメジャメント情報を算出する。そして、ホスト処理部30は、GPS処理部10がメジャメント情報に基づいて位置算出するセルフモードと、ホスト処理部30がメジャメント情報に基づいて位置算出するホストモードとを、記憶部100に記憶されたモード切替条件テーブル103に従って切り替える。
【0109】
このように演算処理能力が異なるGPS処理部10及びホスト処理部30がそれぞれ位置算出を行うセルフモード及びホストモードの2種類の位置算出モードを切り替えることで、位置算出を行う主体を適切に切り替えることができる。
【0110】
GPS処理部10とホスト処理部30とはデータバスで接続されている。セルフモードでは、GPS処理部10が算出した位置のデータを、データバスを介してホスト処理部30が取得する。それに対して、ホストモードでは、GPS処理部10が算出したメジャメント情報を、データバスを介してホスト処理部30が取得する。
【0111】
また、セルフモードでは、GPS処理部10は比較的長い時間間隔(例えば1分や3分、5分等)で間欠動作する。次回の位置算出タイミングが到来するまでの間は、GPS処理部10はスリープ状態となる。位置算出タイミングが到来すると、GPS処理部10はウェイクアップしてGPS衛星の捕捉を行い、メジャメント情報を算出する。そして、メジャメント情報を利用して位置算出を行い、データバスを介して算出位置データをホスト処理部30に出力した後、再びスリープ状態へと移行する。位置算出タイミングが到来するまでの間GPS処理部10は動作しないため、消費電力を削減することができる。
【0112】
一方、ホストモードでは、GPS処理部10は継続的にGPS衛星を捕捉し、算出したメジャメント情報を、データバスを介してホスト処理部30に随時出力する。そして、ホスト処理部30は、セルフモードにおける位置算出の時間間隔よりも短い時間間隔(例えば1秒や3秒、5秒等)で、位置算出を行う。ホストモードでは、ホスト処理部30が、セルフモードにおいてGPS処理部10から算出位置データを取得する頻度よりも高い頻度で、GPS処理部10からメジャメント情報を取得する。そのため、ホストモードでは、セルフモードと比べて位置算出を高頻度に行うことができる。また、この際、一定期間分のメジャメント情報を位置算出に利用することができる。
【0113】
3.変形例
本発明を適用可能な実施形態は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明するが、上記の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0114】
3−1.位置算出用モジュール
上記の実施形態では、位置算出用モジュールとしてGPSモジュールを例に挙げて説明したが、位置算出用モジュールはこれに限られない。例えば、GPS以外の衛星測位システムとして、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の衛星測位システムを利用した位置算出用モジュールとしてもよい。
【0115】
3−2.演算処理部
上記の実施形態では、電子機器のメインのプロセッサーであるホスト処理部を演算処理部として説明したが、演算処理部はこれに限られない。電子機器に内蔵される演算処理能力の高い演算処理装置であればよい。
【0116】
また、ホストモードにおいて、上記の実施形態のように位置算出用モジュールが位置算出の基礎情報を算出するのではなく、演算処理部が位置算出の基礎情報を算出することとしてもよい。すなわち、ホストモードでは、位置算出用モジュールが受信してA/D変換した衛星信号を演算処理部にデータ転送する。そして、演算処理部が衛星信号に基づいて基礎情報を算出し、さらに位置算出までをも行うこととしてもよい。
【0117】
3−3.基礎情報
上記の実施形態では、コード位相や受信周波数といったメジャメント情報を位置算出の基礎となる基礎情報として説明したが、位置算出の基礎情報はこれに限られない。例えば、衛星信号を復号(デコード)することで得られる衛星軌道情報やクロック補正情報、時刻情報等を基礎情報としてもよい。
【0118】
また、位置算出用モジュールが衛星信号に基づいて簡易な位置演算を行って電子機器の概略位置を算出し、当該概略位置を位置算出の基礎情報に含めることとしてもよい。簡易な位置演算とは、電子機器の位置を大まかに求めるための演算である。例えば、位置算出に必要な最低数の衛星を利用して位置算出を行ったり、位置収束計算の反復回数を1〜2回程度に抑えるなどの簡易な演算とする。この場合は、位置算出用モジュールにより算出された概略位置を、電子機器の初期位置とする。そして、セルフモードでは、位置算出用モジュールが最終的な位置を算出し、ホストモードでは、演算処理部が最終的な位置を算出する。
【0119】
3−4.電子機器
上記の実施例では、電子機器の一種である携帯型電話機に本発明を適用した場合の実施例を説明したが、本発明を適用可能な電子機器は携帯型電話機に限られない。例えば、カーナビゲーション装置や携帯型ナビゲーション装置、パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、腕時計といった他の電子機器についても同様に適用可能である。
【0120】
3−5.モード切替
上記の実施形態のようにモード切替をソフトウェア的に行うのではなく、ハードウェアの制御によりモード切替を行うこととしてもよい。例えば、ユーザーのモード切替操作に応じた操作部からのハードウェア割り込みによって、ホスト処理部が位置算出モードの切替を行うこととしてもよい。
【0121】
また、上記の実施形態で説明したモード切替条件はあくまでも一例であり、適宜設定変更可能である。例えば、電子機器に対する電源供給状態をモード切替条件として定めておくこととしてもよい。この場合は、例えば、電子機器の一種であるナビゲーション装置において、装置本体が自動車等に取り付けられて電力が安定して供給される状態となった場合は、位置算出モードを高精度のホストモードに切り替えるようにモード切替条件を定めておくと好適である。逆に、装置本体が自動車等から取り外されて電力供給が行われなくなった場合は、位置算出モードを省電力のセルフモードに切り替えるようにモード切替条件を定めておくと好適である。
【0122】
また、電子機器が実行するアプリケーションの種類に応じたモード切替条件を定めておいてもよい。図12は、この場合におけるモード切替条件テーブル104のテーブル構成の一例を示す図である。モード切替条件テーブル104には、番号1041と、実行アプリケーション1043と、切替先1045とが対応付けて記憶されている。モード切替条件テーブル104は、ホスト処理部が実行しているアプリケーションの種類によって位置算出モードを切り替えるためのテーブルであり、実行アプリケーションの種類に応じて、位置算出モードの切替先が定められている。
【0123】
原理説明でも言及したが、切替先をホストモードとするアプリケーションとしては、高い位置算出精度が要求されるアプリケーションを設定しておくと好適である。また、切替先をセルフモードとするアプリケーションとしては、それほど高い位置算出精度が要求されないアプリケーションを設定しておくと好適である。
【0124】
3−6.衛星軌道データの取得要請
上記の実施例では、セルフモードにおいて衛星軌道データが利用不可である場合は、GPS処理部10がホスト処理部30に対してホストモードへの移行要請を行い、位置算出モードをホストモードに変更するものとして説明した。つまり、位置算出モードをホストモードに切り替えて、ホスト処理部30が位置算出を行うものとして説明した。これを次のようにしてもよい。
【0125】
衛星軌道データが利用不可である場合は、GPS処理部10は、ホスト処理部30に対して衛星軌道データの取得要請を行う。ホスト処理部30は、GPS処理部10から取得要請を受けると、サーバーアシストによって衛星軌道データを外部取得する。そして、GPS処理部10とホスト処理部30との間でデータ更新処理を行って最新の衛星軌道データに更新する。最終的に、GPS処理部10が、更新された最新の衛星軌道データを利用して位置算出を行う。つまり、この場合は、位置算出モードを切り替えずにセルフモードのままとし、ホスト処理部30に、サーバーアシストによって衛星軌道データを外部から取得してもらう構成とする。
【符号の説明】
【0126】
1 携帯型電話機、 10 GPS処理部、 11 RF受信回路部、 20 ベースバンド処理回路部、 25 処理部、 27 記憶部、 30 ホスト処理部、 40 操作部、 50 表示部、 60 携帯電話用アンテナ、 70 携帯電話用無線通信回路部、 80 クロック部、 90 電源部、 100 記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置算出用モジュールと、前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、を備えた電子機器における位置算出方法であって、
衛星信号を受信することと、
前記位置算出用モジュールが前記衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出することと、
前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替えることと、
を含む位置算出方法。
【請求項2】
前記電子機器は、前記位置算出用モジュールと前記演算処理部とを接続するバスを更に備えており、
前記第1のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、
前記第2のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した前記基礎情報を前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、
を含む請求項1に記載の位置算出方法。
【請求項3】
前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う頻度よりも高頻度に、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報を算出し、
前記演算処理部が、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、前記第2のモードにおいて前記基礎情報を取得する、
請求項1又は2に記載の位置算出方法。
【請求項4】
前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔で、前記第2のモードにおいて前記演算処理部が前記位置算出を行う、
請求項1〜3の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項5】
前記切り替えることは、衛星の航法データの有効期間が経過した場合に、前記第2のモードに切り替えることを含む、
請求項1〜4の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項6】
前記切り替えることは、前記電子機器のバッテリー状態に応じて前記切り替えを行うことを含む、
請求項1〜5の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項7】
前記切り替えることは、前記演算処理部の処理負荷に応じて前記切り替えを行うことを含む、
請求項1〜6の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項8】
衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出する位置算出用モジュールと、
前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、
前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替える切替制御部と、
を備えた電子機器。
【請求項1】
位置算出用モジュールと、前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、を備えた電子機器における位置算出方法であって、
衛星信号を受信することと、
前記位置算出用モジュールが前記衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出することと、
前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替えることと、
を含む位置算出方法。
【請求項2】
前記電子機器は、前記位置算出用モジュールと前記演算処理部とを接続するバスを更に備えており、
前記第1のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、
前記第2のモードにおいて、前記位置算出用モジュールが算出した前記基礎情報を前記バスを介して前記演算処理部が取得することと、
を含む請求項1に記載の位置算出方法。
【請求項3】
前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う頻度よりも高頻度に、前記位置算出用モジュールが前記基礎情報を算出し、
前記演算処理部が、前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが算出した位置のデータを取得する頻度よりも高頻度に、前記第2のモードにおいて前記基礎情報を取得する、
請求項1又は2に記載の位置算出方法。
【請求項4】
前記第1のモードにおいて前記位置算出用モジュールが前記位置算出を行う時間間隔よりも短い時間間隔で、前記第2のモードにおいて前記演算処理部が前記位置算出を行う、
請求項1〜3の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項5】
前記切り替えることは、衛星の航法データの有効期間が経過した場合に、前記第2のモードに切り替えることを含む、
請求項1〜4の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項6】
前記切り替えることは、前記電子機器のバッテリー状態に応じて前記切り替えを行うことを含む、
請求項1〜5の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項7】
前記切り替えることは、前記演算処理部の処理負荷に応じて前記切り替えを行うことを含む、
請求項1〜6の何れか一項に記載の位置算出方法。
【請求項8】
衛星信号に基づいて位置算出の基礎となる基礎情報を算出する位置算出用モジュールと、
前記位置算出用モジュールよりも演算処理能力の高い演算処理部と、
前記位置算出用モジュールが前記基礎情報に基づいて位置算出する第1のモードと、前記演算処理部が前記基礎情報に基づいて位置算出する第2のモードとを切り替える切替制御部と、
を備えた電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−145465(P2012−145465A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4518(P2011−4518)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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