説明

低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性コーティング又は成形体

本発明は、低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性の層又は成形体を作製するための組成物、(前記組成物は(a)少なくとも1つの官能基又はその前駆体を含む少なくとも1つの有機ポリマー又はオリゴマーを含む硬化性バインダー系、(b)該結合剤系の官能基と反応し得る少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのフッ素含有ポリマー又はオリゴマー、及び(c)無機粒子、を含有する)、及びこのようにして得られる該プロダクトに関する。得られるコーティング及び成形体はクリーンに維持される表面に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エネルギー表面を有する耐磨耗性層又は成形体の生産のための組成物、それを用いて生産可能なコーティングされた支持体及び成形体、並びにそれらを生産するための方法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特別な性質(例えば、透明性、高耐磨耗性、及び特定の表面化学特性の組合せ)を有する多機能性層の作製は、今日依然として大部分が未解決の問題である。例えば、純粋に無機であり、高温工程によってのみ得られ得るグラファイト又はBNに基づいた既知の系以外に、非常に高い耐磨耗性を有する低エネルギー層は存在しない。耐磨耗性は、例えば、テーバー磨耗試験機で測定され得る。
【0003】
低エネルギー表面を有するPTFE等のポリマーは、軟かく、低い耐磨耗性を有することが知られる。研磨粒子とともにPTFEを充填することは状況を改善するが、これらの層でさえ日々の使用において非常に早く磨耗するため、それは満足できる解決策をもたらさない。更にこのような系は、困難を伴ってのみ層として適用され得、また比較的高温で焼かれなければならない。
【0004】
EP 587667(WO92/21729)は、PTFEと比較して、顕著に向上した耐磨耗性を既に有する、低エネルギー表面を有するコーティングを記載する。これらのコーティングはシリケートネットワーク(silicatic network)を有し、このためにフッ素化シランも使用される。しかし、コーティングが勾配層(ここにおいて、低エネルギー表面を生じるペルフッ素化炭化水素基が、表面に対するコーティングの最上層領域にのみ見られ得る)であるため、低表面エネルギーは、テーバー磨耗試験機を用いた比較的少ないサイクルの後でさえ、実質的に検出できない。
【0005】
更に、Si−O−Si結合を有する材料(例えば、ガラス、SiO、又は他のケイ酸ヘテロ重縮合物)は、アルカリによって非常に容易に加水分解されることが知られるため、この特許に記載されるコーティングは、シリケートネットワークに起因して、比較的高いpH値に特に敏感である。従って、このような層は一般的に、例えば、産業において、特に脱脂するために非常に頻繁に使用されるアルカリ洗浄工程のために適さない。このような層が繰返される自動皿洗い機のオペレーションに供される場合でさえも、これが加水分解によってペルフッ素化された側鎖を保持するシランの脱着を特に結果的に生じるため、これは非常に迅速に低エネルギー特性の損失に導く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は向上された耐アルカリ性を有する耐磨耗性低エネルギー層を見出し、従って上記の不都合を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は以下を含む組成物によって達成される:
a)1つ以上の官能基又はその前駆体を有する少なくとも1つの有機ポリマー又はオリゴマーを含有する硬化性バインダー系、
b)該バインダー系の官能基と反応性である少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー又はオリゴマー、及び
c)無機粒子。
【0008】
該組成物は、低エネルギー表面を有する、驚くほど耐磨耗性の層(これは更に改善された耐アルカリ性を有する)を作製するために使用され得る。該組成物は、同一の好ましい特性を有する成形体を作製するためにも適している。
【0009】
驚いたことに、本発明に従った組成物は、非常に耐磨耗性であるコーティングを提供する。テーバー磨耗試験機(Taber Abrader)を用いて1000サイクルで測定した磨耗値は、幾つかの場合、精密バランスの測定精度(measurement accuracy of a precision balance)内であり(即ち、それらは測定できない)又は好ましい場合は3mg以下である。
【0010】
しかし、テーバー磨耗試験機を用いた実験によって測定される接触角が実験前に測定される値と殆ど変わらないことは特に驚くべきである。仮に変わったとしても、それらはより高い値に向く、即ちより優れた低エネルギー性能に向かう傾向さえある。これは、フッ素化フラクションによって得られる低エネルギー表面の効果が、最上表面層が磨り減らされる場合でさえも完全に保持されることを意味する。
【0011】
表面エネルギーは、固体及び液体材料の両方の性質である。低表面エネルギーを有する表面(低エネルギー表面とも呼ばれる)を有する固体材料は、例えば、疎水性及び疎油性の性質を示し得る。これらは液体媒体に対する接触角を介して検出され得る。これらの関係は、当業者に公知である。低エネルギー表面はフッ素化炭化水素基の存在によって頻繁に得られる。
【0012】
本発明に従って得られる低エネルギー表面は、好ましくは、水に対して少なくとも80°(疎水性)の接触角(滑らかな表面上で測定される)、及びヘキサデカンに対して少なくとも45°、好ましくは少なくとも50°(疎油性)の接触角(滑らかな表面上で測定される)を有する。
【0013】
出発成分としての側鎖上でペルフッ素化されたシラン及び低エネルギー表面のキャリアから始めることによるのではなく、むしろフッ素化ポリマー又はオリゴマー、好ましくは官能化短鎖フルオロオリゴマーを、官能基と共に、好ましくはOH基と共に、出発化合物として選択し、ポリマーを提供するために、これらを粉末、好ましくは研磨粉の存在下で硬化性バインダー系と反応させることによって目的は達成される。本発明は、以下に詳細に説明される。
【0014】
該組成物は、a)1つ以上の官能基又はその前駆体を有する少なくとも1つの有機ポリマー又はオリゴマーを含有する硬化性バインダー系を含む。それらはコーティング組成物、又は成形材料のために使用される通常のバインダー系であり得る。バインダー系は、特に通常の有機樹脂を含む。バインダー系は、物理的、又は好ましくは化学的に硬化する系であり得る。該系は、酸化的硬化性、低温硬化性(cold-curing)又は熱硬化性、又は放射線硬化性(irradiation curable)系であり得る。コーティング材料は、1−又は2−成分のコーティング材料であり得る。バインダー系は、好ましくは化学的な硬化性又は架橋性バインダー系である。このような硬化性バインダー系は、当業者によく知られている。
【0015】
有用なバインダー系若しくはコーティング材料又はそのために使用されるポリマー若しくはオリゴマー又はその前駆体は、例えば、Ullmanns, Encyklopadie der technischen Chemie, vol.15, 4th ed., 1978, p.589ffに記載されるように、当該技術分野において公知の通常のバインダー系である。特に、それらは有機ポリマー、オリゴマー又はその前駆体である。ポリマー又はオリゴマーの前駆体は、モノマー又はそれから形成される低分子量の重合、縮合又は付加プロダクト(これにポリマー又はオリゴマーが由来する)を意味すると理解される。
【0016】
バインダー系若しくはコーティング材料又はそのために使用される有機ポリマー若しくはオリゴマーの例は、例えば、必要に応じてポリブタジエン油で改質された亜麻仁油、ウッドオイル、又は大豆油などの油を含む油ベースのコーティング材料;ニトロセルロースを含むニトロセルロースコーティング材料;セルロースの有機酸エステル(例えば、エステル、即ちセルロースと酢酸、若しくは酪酸、又はそれらの無水物などとのエステル、これらのうち例えばセルロースアセトブチレートはポリウレタンコーティング材料においても用途を見る)から構成されるコーティング材料;例えば、塩化ポリイソプレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンなどを含む塩素化ゴムコーティング材料;例えば、ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体及びエチレン−マレイン酸/無水物共重合体、PVC、塩化ポリビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)、ポリビニルエーテル(例えば、メチル又はエチルエーテル)、ポリビニルエステル(例えば、ポリビニルアセテート(PVA))及びポリエチレンテレフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレン−マレイックエステル共重合体、スチレンブタジエン共重合体及びスチレンマレイン酸無水物共重合体などのポリオレフィン等のポリビニル化合物又はポリビニル樹脂から構成されるコーティング材料;例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、アクリリックエステル又はメタクリリックエステル(例えば、ポリメチル(メト)アクリレート)などのアクリル樹脂に基づいたコーティング材料;フタル酸及び無水フタル酸、などの二塩基酸又は無水物とポリオール又はオレイン酸又は脂肪酸で修飾されたそれらの縮合プロダクトを含むアルキド樹脂;2つ以上の官能基(OH及び/又はCOOH基)を有する飽和モノマーの飽和ポリエステルを含む飽和ポリエステル樹脂コーティング材料;2成分系として頻繁に使用され、ブロック又は非ブロック化ポリイソシアネート及びポリヒドロキシル化合物を含むポリウレタンコーティング材料;ビスフェノールA樹脂、ビスフェノールF樹脂、脂肪族及び複素環式エポキシ樹脂又は熱可塑性エポキシコーティング材料樹脂などのエポキシ樹脂コーティング材料;シリコン樹脂コーティング材料;尿素、メラミン及びフェノール樹脂コーティング材料;またポリアリーレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド及びポリカーボネートである。これらコーティング材料又はこれらポリマーの組合せを使用することも可能である。例えば、記載されるポリマー又はオリゴマーのモノマー等の前駆体を使用することも常に可能である。
【0017】
好ましいバインダー系は、ポリウレタンコーティング材料及びポリエポキシド樹脂コーティング材料である。また、ポリアミド、ポリイミド又はポリベンゾイミダゾール又はこれらの前駆体等も同様に適しており、特にこれが特に高温安定性系を得ることを可能にするために、芳香族基を含むものが好ましい。
【0018】
該バインダーは、1つ以上の官能基を有する有機ポリマー若しくはオリゴマー又はこれらの前駆体を含む。適切な官能基の例は、C−C二重結合、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシル、酸無水物基、エポキシ及び/又はイソシアネート基である。更なる例は、酸塩化物基、ニトリル、イソニトリル及びSH基である。
【0019】
官能基は所望の硬化反応が起こり得るように選択されることが理解される。それ自体と反応性のある1つの官能基のみ、又は互いに反応性のある2つ以上の官能基が存在することが可能である。基は、同一若しくは異なるポリマー、オリゴマー又はこれらの前駆体上に存在し得、或いは基は、硬化剤又は架橋剤によって導入され得る。関係は、当業者に公知である。該バインダー系は、適切である場合は、使用される硬化剤又は架橋剤も含む。それは好ましくは、フッ素化ポリマー又はオリゴマーの官能基と反応性のあるこれらの官能基の1つであることが好ましい。しかし、フッ素化ポリマー又はオリゴマーの官能基とのみ反応性のある独立官能基(independent functional group)でもあり得る。
【0020】
好んで使用される有機ポリマー若しくはオリゴマー又はこれらの前駆体(例えば、モノマー)は、ポリエポキシド、ポリオール、非ブロック化(unblocked)若しくは特にブロック化ポリイソシアネート、ポリエステル、ポリアミン、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸無水物であり、これらの各々は、2つ以上の官能基を含む。ここで、“ポリ”という表現は、官能基を示し、重合の程度を示すのでは無い。従って、ポリオールは2つ以上のヒドロキシル基を有し、分子はモノマー、オリゴマー又はポリマー(例えば、ポリウレタン)であり得る。特定の成分が好ましいバインダー系についての例として以下に例証される。
【0021】
ポリイソシアネートは、例えばポリウレタン樹脂のために使用される。ポリイソシアネートは2つ以上のイソシアネート基を有し得る。それは例えば、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式、単環式又は多環式であり得る。
【0022】
通常のポリイソシアネート、例えば、モノマーポリイソシアネート、ポリイソシアネート付加物、いわゆる改質ポリイソシアネート又はこれらの混合物を使用することが可能である。これらは当業者に公知であり、商業的に入手可能であり、例えばG. Oertel, Polyurethane Handbook, Hanser-Verlag 1993及び“Methoden der organischenChemie” [Methods of organic chemistry] (Houben-Wey), vol. 14/2, Thieme Verlag, 1963に記載されている。該付加物は、例えば、2〜6、好ましくは2.4〜4の平均NCO官能価(functionality)を有し得る。
【0023】
該ポリシアネート付加物は、例えば、2成分ウレタンコーティング系のための硬化剤として典型的に使用が見られるものであり、“Lackharze: Chemie, Eigenschaften und Anwendungen”, [Resin coating materials: chemistry: properties and applications], eds. D. Stoye, W. Freitag, Hanser Verlag Munich, Vienna, 1996に記載される。
【0024】
適切なポリイソシアネートの例は、例えば、1,3−ジイソシアネートベンゼン、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、4,4’−及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、パラフェニルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ポリメチルポリフェニルイソシアネート、1,6−ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートから誘導されるより高分子量のポリイソシアネート(例えば、イソシアヌレート、ウレトジオン、アロファネート、及びビウレットに基づく)などのポリウレタン化学から知られるジイソシアネートである。イソシアネートは、例えば、商品名Desmodur(登録商標)及びBaymidur(登録商標)(Bayerから)、CARADATE(登録商標)(Shellから)、TEDIMON(登録商標)(Enichemから)及びLUPRANAT(登録商標)(BASFから)として得られ得る。2つよりも多いイソシアネート基を有するモノマーポリイソシアネートの例は、例えば、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンジイソシアネート及び4,4,’4,’’−トリフェニルメタントリイソシアネート又はポリフェノールポリメチレンポリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートである。
【0025】
ポリイソシアネートは、制御されない急速な反応が起こることを防ぎ、例えば加熱による脱ブロック化(deblocking)の後にだけ活性になるように、ブロック化形態で使用され得る。イソシアネートのブロッキングは、イソシアネートの反応性を可逆的に低下させることについて当業者に知られるプロセスである。イソシアネートをブロック化するために、全ての一般的ブロッキング剤、例えば、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルエチルケトキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、エチルマロネート、エチルアセテート、ε−カプロラクタム、フェノール又はエタノールなどが有用である。
【0026】
使用されるポリオール成分は、純粋なジ−、トリ−またはポリアルコール、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、又は部分的に加水分解された脂肪酸グリセリドであり得る。しかし、これらは一般的により高い分子量のポリヒドロキシル化合物のための出発ベースとしてだけ使用される。これらは、例えば、エポキシド(Desmophen U(登録商標)タイプ)の添加によって形成されるジカルボン酸又はポリエーテルポリオールで形成される多少高度に分岐したポリエステルポリオール(Desmophen(登録商標)タイプ)であり得る。他の例は、ヒドロキシ−官能化アクリル樹脂(Desmophen A(登録商標)タイプ)である。
【0027】
ポリウレタン樹脂コーティング材料は、ポリイソシアネートとポリオールから形成され得る。勿論、特に非ブロック化ポリイソシアネートの場合、使用のほんの短期間前に該成分を互いに混合する必要があり得る。ポリイソシアネートはまた、活性水素を含む他の官能基を有する化合物と反応し得る。これらの基の例は、チオール基(−SH)、第一級又は第2級アミノ基(−NHR’ここでR’は、例えば、H、アルキル、シクロアルキル、アリール及び対応するアラルキル及びアルカリール基であり得る)又はカルボキシル基(−COOH)である。イソシアネートとの反応において形成される反応生成物は、ウレタン(ヒドロキシル又はカルボキシルの場合)、チオウレタン(チオールの場合)又はウレア(アミンの場合)である。
【0028】
ポリエポキシドの例は、ビスフェノールA樹脂(例えば、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合プロダクト)、ビスフェノールF樹脂(例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの縮合プロダクト)、脂肪族エポキシ樹脂(例えば、低粘度グリシジルエーテル)、脂環式エポキシ樹脂及び複素環式エポキシ樹脂(例えば、トリグリシジルイソシアヌレート)又は熱可塑性エポキシ樹脂コーティング材料である。膜形成のための架橋を達成するために、ポリエポキシド樹脂は硬化剤と混合される。有用な硬化剤には、エポキシ又はヒドロキシル基と反応し得る反応性水素を有する有機又は無機化合物が含まれる。使用される硬化剤の例は、ポリアミン、ポリアミノアミド樹脂、ポリイソシアネート、ヒドロキシル含有合成樹脂(例えばウレア、メラミン及びフェノール樹脂)、脂肪酸及び反応性のある二重結合を有する有機酸(例えば、アクリル酸又はメタクリル酸)である。後者の硬化剤が使用される場合、架橋はまた、電子放射によってもたらされ得る。
【0029】
ポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸又はこれらの誘導体の縮合プロダクトであり、脂肪族及び/又は芳香族化合物が使用され得る。芳香族ユニットを有するポリアミドは、熱安定性に関して特に関心がある。ポリイミド、例えば、芳香族ジアミン(例えば、ベンジジン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル又は4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン)と芳香族テトラカルボン酸又はその誘導体(例えば、4,4’−ジベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物又はピロメトリット二無水物)の重縮合体、及びポリベンゾイミダゾール(芳香族テトラミン又はその誘導体とジカルボン酸の縮合プロダクトである)はまた、高耐熱性について顕著である。本発明の組成物において、対応するモノマー又は低分子量の縮合プロダクトが記載されるポリマーのために使用され得る。
【0030】
上記のバインダー系は、特にコーティング組成物に適している。しかし、それらは成形体を作製するための成形材料のためのバインダー系としても適しており、成形体はフィルムも含む。エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂も、例えば成形体作製のために非常に適している。成形体のために好適に使用される更なるバインダー系は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂(例えば、ウレア−ホルムアルデヒド樹脂、及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、架橋性メタクリレート樹脂(これは、予め重合化したものとモノマーメタクリルエステルの混合物を含む)、ブタジエン及びスチレンに基づいた予め重合化された及びモノマーのプロダクトの混合物、シリコーン、ポリスルフィド、及びアクリレート樹脂である。
【0031】
該組成物は、バインダー系(硬化剤又は架橋剤を含む)の官能基と反応性のある少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー又はオリゴマーを含む。該分子は、好ましくはオリゴマーであり、特に官能性の短鎖フルオロオリゴマーであり、官能基は、好ましくはカルボキシル基、より好ましくはヒドロキシル基である。
【0032】
適切なポリマー又はオリゴマーは、フッ素化され且つバインダー系の官能基と反応性のある少なくとも1つの官能基を有するもの全てである。
【0033】
原則として、これらポリマー又はオリゴマーの全ては、それらがフッ素置換を有する場合、前記ポリマーに基づき得られ得る。ここにおける適切なポリマー又はオリゴマーは、フッ素化ポリエーテル、特にペルフッ素化ポリエーテルである。他の例は、フッ素化エポキシド及びフッ素化ポリウレタンである。エポキシ又はポリウレタン樹脂系中へのフッ素原子の導入のために適したモノマーの例は、1,3,5−フルオロアルキルベンゼンのジグリシジルエーテルである。
【0034】
共重合体を使用することも可能であり、この場合1つのモノマータイプはフッ素化され、例えば、通常のフッ素化モノマー、例えば、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、トリフルオロクロロエチレン、ビニリデンフルオライド及びヘキサフルオロプロピレンであり、1つのモノマータイプはそれと共重合することができ、且つ官能基を有し、例えば、官能基を有するビニル化合物、例えば、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルアルコール、ビニルアセテート、ビニルアミン(これらは、官能基を有する又はそれで置換される)である。1つの例は、フルオロエチレン−アルキルビニルエーテル共重合体であり、ここでアルキル基(例えば、直鎖又は分枝を有するC〜C(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、又はn−、sec−、又はtert‐ブチル)は好適な官能基、例えばOH、COOH又はオキシアルキロール([−O−(CH−OH、ここでnは同一又は異なり、1〜8であり、xは1〜3である)によって置換される。フルオロエチレンは、例えば、テトラフルオロエチレン又はトリフルオロクロロエチレンであり得る。共重合体は、1つのアルキルビニルエーテル又は異なるアルキルビニルエーテル、例えば官能基を有するもの及び官能基を有さないものを含み得る。テトラフルオロエチレン及びペルフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体も使用できる。
【0035】
スルホン酸又はリン酸基を、例えばトリフルオロビニルスルホクロリド又はペルフルオロビニルエーテルスルホフルオリドとテトラフルオロエチレンの共重合による共重合を介して導入することも可能である。ポリテトラフルオロエチレンも、上記のビニル化合物又はアクリル酸でのグラフト重合によっても官能化し得る。
【0036】
官能基を有するこのようなフッ素化ポリマー又はオリゴマーは、例えばLumiflon(登録商標)(旭硝子株式会社から)、Fluorolink(登録商標)(Solvay Solexisから)商業的に入手可能である。少なくとも1つの官能基を有する好ましいフッ素化ポリマー又はオリゴマーは、フッ素化ポリエーテル、好ましくはペルフルオロポリエーテル及びフルオロエチレン−アルキルビニルエーテル共重合体であり、該フルオロエチレンは好ましくはテトラフルオロエチレン及び/又はトリフルオロモノクロロエチレンである。
【0037】
フッ素化ポリマー又はオリゴマーの官能基はバインダー系の官能基と反応性がある。それは好ましくは、硬化又は架橋反応にも参加するバインダー系における官能基であり得る。しかしそれは、それとは独立する基でもあり得る。フッ素化ポリマー又はオリゴマーは、1つ以上の官能基を有し得る。該化学結合反応は、フッ素化ポリマー又はオリゴマーをバインダー系中に組み込む。それはまた必要に応じて硬化剤又は架橋剤の機能を呈し得、必要に応じてそうでなければ通常であるものを部分的に又は完全に置換する。
【0038】
適切な官能基は、原則的にポリマーについて既に記載されたものと同一であり、即ちC−C二重結合、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、酸無水物基、エポキシ、イソシアネート基、酸塩化物基、ニトリル、イソニトリル、及びSH基である。−SOH基及び−POH基も適切である。アミノ、ヒドロキシル、及びカルボキシル基が好ましく、カルボキシル、特にヒドロキシル基が好ましい。
【0039】
官能基は、勿論互いに適合されなければならない。例えば、OH基を有するフッ素化されたポリマー又はオリゴマーの代わりに、COOH基を有するものが使用される場合、例えば、酸無水物をエポキシ架橋剤として使用することが適切である。
【0040】
記載されるように、フッ素化ポリマー又はオリゴマーが使用され得、一般的にオリゴマーが好ましい。ポリマー又はオリゴマーの分子量は、広い範囲内で変化し得る。オリゴマーが使用される場合、適切な分子量(重量平均)は、頻繁に、例えば少なくとも100、より適切には少なくとも500又は好ましくは少なくとも600から5000まで、より適切には3000まで、好ましくは1500まで又は1000までの範囲であり得る。
【0041】
更に、該組成物は、無機粒子を含む。適切な粒子は、実質的に全てセラミック及びガラス系であるが、幾つかの場合、金属、半導体、及び通常の充填剤である。それらは好ましくはセラミック粒子である。しばしば、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物、ケイ化物又はホウ化物が使用される。異なる粒子の混合物を使用することも可能である。研磨粒子又は硬い物質を使用することが好ましい。該粒子は、表面が改質されていても、又は改質されていなくてもよい。
【0042】
該粒子は、例えば金属合金、半金属(例えば、B、Si及びGe)又は金属化合物、特に金属カルコゲニド、より好ましくは酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、ケイ化物及びホウ化物を含む金属の粒子である。1タイプの粒子又は混合物を使用することも可能である。
【0043】
例は、(必要に応じて水和された)酸化物、例えばZnO、CdO、SiO、GeO、TiO、ZrO、CeO、SnO、Al(例えば、Amperit、ベーマイト、AlO(OH)、水酸化アルミニウムの形態も)、B、In、La、Fe(例えば、ヘマタイト)、Fe、CuO、Ta、Nb、V、MoO又はWO;更なるカルコゲニド、例えば硫化物(例えば、CdS、ZnS、PbS及びAgS)、セレン化物(例えば、GaSe、CdSe及びZnSe)及びテルル化物(例えば、ZnTe又はCdTe);ハライド、例えばAgCl、AgBr、Agl、CuCl、CuBr、CdI及びPbI;炭化物、例えば、CdC又はSiC;砒化物、例えばAlAs、GaAs、及びGeAs;アンチモン化物、例えば、InSb、窒化物、例えば、BN、AlN、Si及びTi;リン化物、例えば、GaP、InP、Zn及びCd;ホスフェート、比較的複雑なケイ化物を含むケイ化物、例えば、シートシリケート、タルク、ジルコネート、アルミナート、スタンネート、及び対応する混合酸化物(例えばインジウムスズオキシド(ITO)、アンチモンスズオキシド(ATO)、フッ素でドープされた酸化スズ(FTO)、Y−又はEu含有化合物を含む発光顔料、スピネル、フェライト、又はペロブスカイト構造を有する混合酸化物、例えばBaTiO及びPbTiO)。通常の顔料及び充填剤、例えばグラファイト、スルフェート、例えばバライト及び石膏、カーボネート例えば方解石、ドロマイト、及びチョーク、硫化物、例えば硫化亜鉛又はリトポン、ガラス、及び酸化物及びケイ酸塩、例えばシリカ、クリストバライト、タルク、カオリン、雲母、(それらは選択された媒体中で不溶性である)も有用である。
【0044】
該粒子のために研磨粉を使用することが好ましい。研磨材とも呼ばれる研磨用又は硬い粉末の例は、ダイヤモンド、花崗岩、軽石、トリペル(tripel)、シリコンカーバイド、エメリー、アルミナ、例えば、アンペリット(amperit)及びコランダム、シリカ、例えば、珪藻土、クオーツ、又は研磨用砂、石膏、炭化ホウ素、及び他の酸化物、ホウ化物、ケイ化物、炭化物、炭窒化物及び窒化物である。
【0045】
該粒子は、好ましくは、SiC、BC、改質された又は改質されていないSiO、特にクオーツ、Al、ZrO及びTiOの群から選択される。
【0046】
粒子の粒径は、特に制限されない。好適には、平均粒子直径は、例えば、少なくとも0.1μm、好ましくは少なくとも0.5μm、より好ましくは少なくとも1μmで、100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは20又は10μm以下の範囲である。異なる粒径の粒子の混合物を使用することも可能である。例えば、より粗いUF−05及び更により細かいUF−15とSiC UF−10が組合せで使用され得る。更に、通常のように、例えば、nm範囲までのより細かい粒子フラクションを、例えばDE4212633に記載されるナノコンポジット中に添加することも可能である;それらはナノスケール固体粒子であり得、後に記載される。平均粒子の直径がただ0.1μmよりも低いこのようなナノスケール固体粒子の非常に細かい粒子を使用することも可能である。
【0047】
後のデータにおいてもであるが、平均粒子直径は、測定された平均体積に基づき、分布は、1〜2000μmの粒径範囲においてはレーザー回折プロセス(Mieに従った評価)、3.5nm〜3μmの範囲においてはUPA(超微粒子分析器、Leeds Northrup(レーザー光学)を用いて測定される。1〜3μmの共通部分の範囲においては、UPAを用いた測定がここで参照される。
【0048】
使用される粒子は、表面が改質されていてもよい。例えば、SiO粒子、特にクオーツ粒子は、エポキシ又はアミノ基又は他の官能基で表面改質され得る。
【0049】
粒子表面の改質は、例えばWO93/21127又はWO96/31572においてナノスケール固体粒子について出願人によって記載されるように、公知のプロセスである。表面改質粒子の調製は、原則として、2つの異なる方法において、特に第一に既に調製された粒子を改質することによって、第二に適切な官能部分を有する1つ以上の化合物の使用によって粒子を調製することによって実施され得る。
【0050】
改質剤は、粒子の表面上に官能基を接着させるために使用され得る。例は、バインダー系及びフッ素化ポリマー又はオリゴマーについて上記で示された官能基であり、例えば(メト)アクリロイル、エポキシ、チオール、カルボキシ、カルボン酸無水物又はアミノ基である。
【0051】
無機酸又は有機酸に加えた好適な改質剤は、粒子の表面上に存在する基と反応及び/又は(少なくとも)相互作用し得る少なくとも1つの非加水分解性基を有する低分子量の加水分解性シラン又は低分子量の有機化合物でもある。例えば、残留原子価としての反応性基は粒子上の表面基として存在し、例えば金属酸化物の場合、ヒドロキシル基及びオキシ基、又は例えば金属硫化物の場合、チオール基及びチオ基であり、例えば窒化物の場合、アミノ、アミド及びイミド基である。
【0052】
粒子の改質は、例えば、ナノスケール粒子を下記に表される改質剤と、必要に応じて溶媒中及び触媒の存在下で混合することによってもたらされ得る。勿論、温度、量比率、反応時間等の好適な条件は、特定の反応物及び所望の被覆度に依存する。
【0053】
改質剤は、例えば、共有、イオン(塩タイプ)又は配位結合を粒子の表面に形成し得、一方で純粋な相互作用は、例としては、双極子−双極子相互作用、水素結合及びファンデルワールス相互作用を含む。共有、イオン及び/又は配位結合の形成が好ましい。配位結合は、錯体形成を意味すると理解される。表面改質剤と粒子の間に、例えば、ブレンステッド又はルイス酸/塩基反応、錯体形成又はエステル化が起こり得る。
【0054】
粒子への接着のための表面改質剤の好適な官能基の例は、カルボン酸基、無水物基、アミド基、(第一級、第二級、第三級、第四級)アミノ基、SiOH基、シランの加水分解性基及びC−H酸性部分、例えばβ−ジカルボニル化合物である。複数のこれらの基が1つの分子中に同時に存在することも可能である(ベタイン、アミノ酸、EDTA等)。
【0055】
表面改質のために使用される化合物の例は、必要に応じて置換される(例えば、ヒドロキシルによって)、飽和又は不飽和のモノ−及びポリカルボン酸であり、これは1〜24個の炭素原子を有し、エーテル結合、及びまたそれらの無水物、エステル(好ましくはC〜Cアルキルエステル)及びアミド、例えば、メチルメタクリレートも含み得る。
【0056】
更に好適な表面改質剤の例は、式NR4+の第四級アンモニウム塩であり、ここでR〜Rは、好ましくは1〜12、特に1〜8の炭素原子を有する必要に応じて異なる脂肪族、芳香族又は脂環式基であり、例えば、1〜12、特に1〜8、より好ましくは1〜6の炭素原子を有するアルキル基であり(例えば、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、ブチル又はヘキシル)、そしてXは、無機又は有機のアニオン、例えば、アセテート、OH、Cl、Br又はIである;モノアミン及びポリアミン、特に一般式R3−nNHのもの、ここでn=0、1又は2、R基は1〜12、特に1〜8、より好ましくは1〜6の炭素原子を有する各々独立したアルキル基であり(例えば、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、ブチル又はヘキシル)、エチレンポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなど);アミノ酸;イミン;4〜12、特に5〜8の炭素原子を有するβ−ジカルボニル化合物、例えばアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸、及び例えばエチルアセトアセテート等のC〜Cアルキルアセトアセテート、;及びシランである。
【0057】
改質のために、加水分解性シランを用いることが可能であり、この場合シランは非加水分解性基を有する。加水分解性シランを用いるこの表面改質は、SiOについて特に好適である。例は、以下の一般式:
SiX(4−n) (I)
(式中、X基は同一又は異なり、各々加水分解性基、またはヒドロキシル基であり、R基は、同一又は異なり、非加水分解性基であり、nは、1、2又は3である)のシラン又はそれ由来のオリゴマーである。
【0058】
一般式(I)において、互いに同一又は異なり得る加水分解性のX基は、例えば水素、又はハロゲン(F,Cl、Br又はI)、アルコキシ(好ましくはC1−6−アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ及びブトキシ)、アリールオキシ(好ましくは、C6−10−アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくは、C1−6アシルオキシ、例えば、アセトキシ又はプロピオニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくはC2−7−アルキルカルボニル、例えばアセチル)、アミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノ(好ましくは1〜12、特に1〜6炭素原子を有する)。好ましい加水分解性基は、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解性基は、C1−4−アルコキシ基、特にメトキシ及びエトキシである。
【0059】
互いに同一又は異なり得る非加水分解性のR基は、例えば、それを介した架橋が可能であり得る官能基を有する非加水分解性R基又は官能基を有さない非加水分解性R基であり得る。非加水分解性R基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、又は他の対応するアルキルアリール及びアリールアルキルである。R及びX基は、必要に応じて1つ以上の通常の置換基、例えば、ハロゲン又はアルコキシを有し得る。
【0060】
R基についての官能基の具体例は、例えば、エポキシ、ヒドロキシ、エーテル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、アクリル、メタクリロイル、イソシアネート、アルキルカルボニル、酸無水物、及びリン酸基である。これらの官能基は、アルキレン、アルケニレン又はアリーレン架橋基(これらは酸素又はNH基によって中断され得る)を介して珪素原子に結合する。勿論、R基はまた1つよりも多い官能基を有し得る。
【0061】
重合性/重縮合性表面基を有するナノスケール無機固体粒子のin situ調製について、WO98/51747(DE19746885)が参照される。
【0062】
好ましい実施形態において、該粒子は、表面上の上記の反応性基を介して、特に表面上に上記の改質によって適用された官能基を介して、同様にバインダー系及び/又はフッ素化ポリマー又はオリゴマーと特にそこに存在する官能基への結合を介して相互作用し得、形成するマトリクス中への粒子の改善された取り込みが可能になる。
【0063】
改質されない及び改質された粒子は当業者に公知であり、大部分が商業的に入手可能である。
【0064】
組成物中の粒子の量は変化し得る。粒子の適切な量は、しばしば、例えば、バインダー系(使用される任意の硬化剤及び架橋剤を含み、溶媒を含まない)(成分a)、フッ素化ポリマー又はオリゴマー(成分b)及び粒子(成分c)に基づいて、少なくとも5重量%、例えば10〜60重量%又は10〜50重量%である。組成物中のフッ素化ポリマー又はオリゴマーの量も変化し得る。好適な量は、例えば、しばしば成分a)、b)及びc)に基づいて、1〜50重量%の範囲であり得る。バインダー系(成分a)の量も変動する;例えば、成分a)、b)及びc)に基づいて少なくとも2又は少なくとも5重量%が存在し得る。
【0065】
硬化又は架橋が、互いに反応し得、例えば各々がバインダー中及び架橋剤中に存在する2つ以上の異なる官能基によってもたらされる場合、第1と反応性の第2グループの官能基に対する第1グループの官能基のモル比は、例えば約1:1である(そこからはずれるモル比率も可能であるが)。
【0066】
該粉末が10〜60重量%の濃度において混合される場合、驚くべきことに、粒子のこの高い割合にも拘らず、水に対する約90〜100°、ヘキサデカンに対する約60〜70°の接触角が達成され得ることが見出され、これは非常に疎油性の表面(低エネルギー表面)を示唆する。
【0067】
該組成物は、目的及び所望の性質によって成形体のための組成物又はコーティング組成物に産業において通常の添加される更なる添加剤を含み得る。具体例は、チキソトロープ剤、溶媒、又は分散剤、有機又は無機の着色顔料、ナノスケール無機固体粒子、金属コロイド、例えば、光学作用のキャリア、染料、抗酸化剤、UV吸収剤、潤滑剤、流動制御剤、湿潤剤、接着促進剤、及び触媒である。成形体のために、例えば樹脂キャリア、例えば織物用繊維を使用することが可能である。
【0068】
任意のタイプの商業的顔料の該組成物中への添加は、例えば、特定の色彩効果又は伝導性効果(カーボンブラック)を奏するために働き得る。該組成物は触媒を含み得る。ポリウレタン樹脂のための触媒の例は、スズ化合物又はアミンである。有用なナノスケール固体粒子は、例えば、50nm未満、及び一般的に少なくとも1又は2nmの平均粒径を有する。それらは、上記の粒子と同一の材料で構成され得、一般的に酸化物が好ましい。それらはまた表面改質又はドープされ得る。適切な潤滑剤の一例は、グラファイトである。
【0069】
使用される溶媒(分散剤)は、例えば、コーティングのための通常の溶媒であり得る。好適な溶媒は水である。好適な有機溶媒は、極性又は非極性の非プロトン性溶媒である。この例は、アルコール、好ましくは低級脂肪族アルコール(C〜Cアルコール)、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、i−プロパノール及び1−ブタノール、ケトン、好ましくは脂肪酸ケトン、例えばアセトン、メチルケトン、及びメチルイソブチルケトン、エステル、例えば、2−メトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート、及びエチルアセテート、エーテル、好ましくは低級ジアルキルエーテル、例えば、ジエチルエーテル、環状エーテル、例えばジオキサン又はTHF、又はジオールのモノエーテル、例えば、C〜Cアルコールとエチレングリコール又はプロピレングリコール、芳香族又は脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、アミド、例えばジメチルホルムアミド、及びこれらの混合物である。ブロック化イソシアネートが使用される場合、プロトン性溶媒は、副反応を最小限に抑えるために、ブロック化イソシアネートの非ブロック化温度よりも低い沸点を有するべきである。例は、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールである。メチル−2−ピロリドン(NMP)などの高沸点溶媒も適切である。
【0070】
該組成物は、コーティングとして好ましく使用される。該組成物がコーティング組成物として使用される場合、全ての通常の材料がコーティングされ得る。好適な支持体の例は、金属、半導体、ガラス、セラミック(多孔質セラミックを含む)、ガラスセラミック、プラスチック、木材、紙、建築材料、又は無機−有機複合材料製の支持体であり得る。支持体は、例えば、コロナ処理によって、又は例えば、ラッカーコーティング(ラッカーを塗られた表面)、エナメルコーティング、ペイントコーティング又は金属化された表面などの予備的コーティングを用いて、又は含浸法によって調製され得る。
【0071】
金属支持体の例には、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、鉄、鋼及びスズが含まれる。半導体の例は、シリコン(例えば、ウエハの形態)、及びガラス上のインジウムスズオキシド層(ITO層)である。使用されるガラスは、任意の従来のガラスタイプ、例えば、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、又はソーダ石灰ケイ酸ガラスであり得る。プラスチック支持体の例は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレートである。特に光学的又は光電子工学的用途のために、透明な支持体が好適であり、例えばガラス又はプラスチックである。建築資材の例は、石、コンクリート、タイル、プラスターボード、レンガである。
【0072】
該組成物は、任意の通常の様式において支持体に適用され得る。全ての一般的コーティングプロセスを使用することが出来る。例は、スピン−コーティング、(エレクトロ)ディップコーティング、ナイフコーティング、吹付け、噴出(squirting)、キャスティング、ペインティング、フローコーティング流し塗り、ナイフ−キャスティング、スロット−コーティング、メニスカス−コーティング、カーテン−コーティング及びローラー塗布である。
【0073】
成形体を作製するために、該組成物は成形され、そのために、例えば、押出、射出成形、キャスティング、圧縮成形などの通常のプロセスが同様に使用され得る。
【0074】
これに硬化が続く。硬化はその性質により実質的に使用されるバインダー系に依存するため、特別な記載はされ得ない。当業者は、どの硬化条件が特定の公知バインダー系に適切であるか知っている。記載されるように、該系は、酸化的硬化性、低温硬化性、又は熱硬化性、又は放射硬化性の系であり得る。
【0075】
特に好ましい実施形態において、好ましくはOH基を有する官能性短鎖フッ素化オリゴマーが出発化合物として使用され、それらはポリマーを与えるために、例えば酸化アルミニウム又はシリコンカーバイトなどの研磨粉の存在下でブロック化イソシアネート又はエポキシドと反応する。脱ブロック化イソシアネート及びエポキシドの両方が、例えば、フッ素化オリゴマーに結合したOH基と反応し得る。
【0076】
ポリマーを与えるために、このような粉末の存在下でポリアミド、ポリイミド、又はポリベンゾイミダゾールについてのモノマーの存在下でこのようなフッ素化オリゴマーを変換させることは更なる好ましいバリアントである。ここで好適なモノマーは、カルボン酸成分、例えば、ジ−、トリ−、又はテトラカルボン酸又はより高級のポリカルボン酸、好ましくはジ−又はテトラカルボン酸、又はその誘導体(特に無水物)、及びアミン成分、例えば、ジ−、トリ−またはテトラアミン又はより高級のポリアミン、好ましくはジ−又はテトラカルボン酸であり、少なくとも1つの成分、好ましくは両方の成分はそこに官能基が結合した芳香族基を有する。例えば、耐磨耗性に加えて、ポリアミド又はポリイミド系の形成は、300℃までの特に高い熱安定性も奏することが見出された。
【0077】
添加された粒子の粒径に依存して、性質は種々の範囲で修飾され得る。μmの範囲にある粒子が利用され、マトリクスの屈折率が粒子に調整されない場合、オパークから透明な層が達成される。しかし、出発成分、特にエポキシド及び芳香族(非常に屈折する)成分と脂肪族成分のフラクションの選択は、μm範囲にある平均粒径を有する使用される種々の粉末に屈折率を調整することを可能にする。該粉末の屈折率は、ここで役割を担い、これについて比較的幅広い選択肢が存在する(非常に低い屈折率を有するSiOからより高い屈折率を有する二酸化ジルコニウム、シリコンカーバイト及び酸化アルミニウム)。
【0078】
透明な層を達成するために、該マトリクスの屈折率に調整され、且つ例えば混合酸化物によって得られ得る粒子を使用することも可能である。このような屈折率の調整は、光の散乱を防ぎ、層が透明で存続することを可能にする。高い透明度は、例えばサブ−μm又はnm範囲の粉末の使用による低い粒度によっても達成され得る(レイリーの公式に従ってここにおける光の散乱は自動的に低下し、透明度が上昇するためである)。従って、オパーク又は不透明から透明なコーティングまでを達成する可能性が存在する。
【0079】
上記の原理によるペルフッ素化モノマー及びオリゴマーの取り込みは、次いでマトリクス全体を疎水化及び疎油化することを可能にし、非常に高い耐磨耗性に加えて、磨耗ストレス後でさえもポジティブな性質は損なわれない(全ての表面は長いストレスの後僅かな程度磨耗し得る)。例えば、テーバー磨耗試験機を用いた磨耗試験において、1000サイクル後でさえも、水に対する接触角(例えば、90〜100℃)及びヘキサデカンに対する接触角(例えば、60〜70℃)において如何なる変化も検出されなかった。
【0080】
これより、フッ素化成分は層又は成形体において均一に分配され、実質的に如何なる濃度勾配又は垂直方向の線状勾配を形成せず、一方で表面においてフッ素成分がリッチ化され又は濃縮される従来の層において問題がしばしば生じる。
【0081】
屈折率調整との組合せで、これは高い耐磨耗性及び耐アルカリ性を有する高い透明度の系を可能にする。従って、例えばTaber Abrader CFIO磨耗試験機を用いて1000サイクル後に調べられる系について、非常に耐磨耗性である独創的な層又は成形体が得られ得、5mg未満の値の磨耗物(attritus)が得られる。
【0082】
層及び成形体は多くの用途に使用可能である。説明されるように、該組成物は実質的に全ての支持体のためのコーティング組成物として好適であり、実質的に全ての物がコーティングされ得る。
【0083】
更に格別に耐アルカリ性である耐磨耗性且つ疎油性の層又は成形体が本発明に従って得られ得ることも見出された。独創的なコーティングは、pH12で65℃の媒体に3時間曝露された。この間に該層は安定に存続し、試験された層は浸食されていなかった。
【0084】
該独創的な組成物で完全に又は部分的にコーティングされ得る、又は成形体の形状に形成され得る器具に関して制限も無い。例えば、該組成物は、乗り物部門、例えば、自動車、船、飛行機、エンジンコンストラクション、家庭、機械工学、化学産業、食品産業、食品加工産業、加工技術、特にマイクロエレクトロニクス、ナノ技術、衛生分野、例えば、バスルーム分野、ホテル、医療分野(特に病院について)におけるものに適している。コーティング及び成形体は、全てのタイプの器具又は建築構造物をクリーンに維持するために特に適している。
【0085】
処理対象物又は対象物の処理可能な部分の例は、ベッド、インストルメント、容器(特に病院における)、家庭器具、台所用具(kitchen fitting)、バスルーム用具、例えば、バスタブ、タイル、シャワー室、洗面器、便器、用具、機械の外部、及び他の物、機械的ストレスのかかる部分、例えば、輸送システム、チューブ、機械的加工システム、ニーダー、ミル、ミキサー、食品包装、ルーフタイル、窓、壁面、乾燥した及び液体物のための全てのタイプの容器、水系、非水系、及びサイロ、又はウィンドローターまたはタービンである。
【0086】
更に、殺菌剤、顔料様成分又は殺菌活性金属粒子によって殺菌特性がもたらされ得る。
【0087】
本発明の例証する実施例が続く。
【実施例】
【0088】
実施例1 (1−成分系)
使用された支持体は、アルミニウム(100×100mm AlMg3)であった。支持体は、下塗り剤(4.23gのLM910(Asahi)、0.96gのDesmodur N3300(Bayer)及び4.00gのトルエン)を備えていた。下塗り剤は、ナイフ−コーティングによって塗布され、50〜60℃において5分間で乾燥された。
【0089】
次に、本発明の組成物が塗布され硬化された。得られた機能性層は、テーバー磨耗試験機及び接触角の測定を用いて評価された。
Fluorolink C (Solvay) 4.28g
ポリオール(Desmophen 670,Bayer): 10.16g
トルエン 5g
Desmodur BL 3175 SN(Bayer): 15.87g
SiC UF−10(H.C. Starck): 11.29g
上記の組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて90分間1500rpmで分散され、保存安定であった。該組成物は、上記の支持体にナイフ−コーティングによって塗布され、160℃で60〜120分間で硬化された。
500サイクル後の磨耗物 3.4mg
接触角:
水に対して: 未処理部分において110°
処理部分において(磨耗試験機)125°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において70°
処理部分において(磨耗試験機)70°
【0090】
実施例2 (2−成分系)
Fluorolink C(Solvay) 1.54g
LM910(Asahi): 15.64g
キシレン: 3g
SiC UF−10(H.C.Starck): 6.82g
上記の組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて90分間1500rpmで分散され、保存安定であった。4.05gのDesmodur N 3300(Bayer)が次いで添加された:Desmodurの添加後、該系は塗布されなければならない。該組成物は、ナイフ−コーティングによって実施例1の支持体に塗布され、160℃で60〜120分間で硬化された。硬化はより低い温度でも可能である。
500サイクル後の磨耗物: 4mg
接触角
水に対して: 未処理部分において110°
処理部分において(磨耗試験機)115°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において65°
処理部分において(磨耗試験機)50°
【0091】
実施例3 エポキシド系(2−成分系)
エポキシド L20: 4gのIPE中に20g
Fluorolink C(Solvay) 2.28g
SiC UF−10(H.C.Starck): 10.7g
上記の組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて90分間1500rpmで分散され、保存安定であった。5gのVE3261架橋剤が次いで添加された。架橋剤の添加後に、該系は塗布されなければならない。該組成物は、ナイフ−コーティングによって実施例1の支持体に塗布され、130℃で60〜120分間硬化された。硬化はより低い温度でも可能である。
1000サイクル後の磨耗物(attritus): 1.5mg
接触角
水に対して: 未処理部分において108°
処理部分において(磨耗試験機)110°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において65°
処理部分において(磨耗試験機)40°
【0092】
実施例4 エポキシド系(2−成分系)
エポキシド L20: 4gのIPE中に20g
Fluorolink D10H(Solvay): 4.16g
SIC UF−10(H.C.Starck): 12.5g
上記の組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて90分間1500rpmで分散され、保存安定であった。5gのVE3261架橋剤が次いで添加された。架橋剤の添加の後に、該系は塗布されなければならない。該組成物はナイフ−コーティングによって支持体に塗布され、130℃で60〜120分間硬化された。硬化はより低い温度でも可能である。
1000サイクル後の磨耗物: 0.5〜1mg
接触角
水に対して: 未処理部分において110°
処理部分において(磨耗試験機)100°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において75°
処理部分において(磨耗試験機)60〜65°
【0093】
実施例5 エポキシド系(2−成分系)
エポキシド L20 4gのIPE中に20g
Fluorolink D10H(Solvay): 4.16g
SKIRON SF 300 19.44g
上記組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散され、保存安定であった。5gのVE3261架橋剤が次いで添加された。架橋剤の添加後に該系は塗布されなければならない。該組成物は、ナイフ−コーティングによって支持体に塗布され、130℃で60〜120分間硬化された。硬化は、より低い温度でも可能である。
1000サイクル後の磨耗物: 7〜9mg
接触角
水に対して: 未処理部分において95°
処理部分において(磨耗試験機)105°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において70°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0094】
実施例6 エポキシド系(2−成分系)
エポキシド L20 4gのIPE中に20g
Fluorolink D10H(Solvay): 4.16g
SILBOND 600EST 19.44g
上記組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散され、保存安定であった。5gのVE3261架橋剤が次いで添加された。架橋剤の添加後に該系は塗布されなければならない。該組成物は、ナイフ−コーティングによって支持体に塗布され、130℃で60〜120分間硬化された。硬化は、より低い温度でも可能である。
1000サイクル後の磨耗物: 4〜6mg
接触角
水に対して: 未処理部分において100°
処理部分において(磨耗試験機)100°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において70°
処理部分において(磨耗試験機)65°
【0095】
実施例7 エポキシド系(2−成分系)
エポキシド L20 4gのIPE中に20g
Fluorolink D10H(Solvay): 4.16g
SILBOND 100EST 19.44g
上記組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散され、保存安定であった。5gのVE3261架橋剤が次いで添加された。架橋剤の添加後に該系は塗布されなければならない。該組成物は、ナイフ−コーティングによって支持体に塗布され、130℃で60〜120分間硬化された。硬化は、より低い温度でも可能である。
1000サイクル後の磨耗物: 2〜3mg
接触角
水に対して: 未処理部分において95°
処理部分において(磨耗試験機)110°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において65°
処理部分において(磨耗試験機)65°
【0096】
実施例8 エポキシド系(2−成分系)
エポキシド L20 4gのIPE中に20g
Fluorolink D10H(Solvay): 4.16g
SILBOND 100EST 19.44g
グラファイト 4.86g
上記組成物は、10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散され、保存安定であった。5gのVE3261架橋剤が次いで添加された。架橋剤の添加後に該系は塗布されなければならない。該組成物は、ナイフ−コーティングによって支持体に塗布され、130℃で60〜120分間硬化された。硬化は、より低い温度でも可能である。
1000サイクル後の磨耗物: 3〜4mg
接触角
水に対して: 未処理部分において100°
処理部分において(磨耗試験機)100°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において68°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0097】
実施例9 高温耐性の疎油性及び疎水性の層
32.87g(0.076モル)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシジフェニルスルホン)は200gのメチル−2−ピロリドン(NMP)中にRTで溶解された。混合物は、次いで最初に5.6g(0.008モル)のFluorolink(登録商標)D10Hと混合され、次いで25.78g(0.08モル)の4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と混合された。全混合物は、終夜RTで撹拌された。この混合物において、42.77gのSiC UF−10(H.C.Starck)が10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散された。
【0098】
この系は10×10cmアルミニウムプレートを500rpmのスピン−コーティングによってコーティングするために使用された。コーティングされたアルミニウムプレートは、10分間室温での保存の後、200℃で120分間硬化された。結果生じる層の厚みは、10〜15μmであった。
【0099】
付着特性の試験の間、クロスカット/テープ(crosscut/tape)試験においてコーティングの剥離は存在しなかった(Gt0/Gtt0)。テーバー磨耗試験(ローラー材料:CS10F、1000サイクル、500gローラーロード)を用いたコーティングされたAlプレートの耐磨耗性の試験は、4mgの重量損失を与えた。
接触角
水に対して: 未処理部分において105°
処理部分において(磨耗試験機)90°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において65°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0100】
実施例10 高温耐性の疎油性及び疎水性層
32.87g(0.076モル)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホンは200gのメチル−2−ピロリドン(NMP)中にRTで溶解された。混合物は、次いで最初に5.6g(0.008モル)のFluorolink(登録商標)D10Hと混合され、次いで25.78g(0.08モル)の4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と混合された。全混合物は、終夜RTで撹拌された。この混合物において、42.77gのAmperit(5〜15μm)(H.C.Starck)が10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散された。
【0101】
この系は10×10cmアルミニウムプレートを500rpmのスピン−コーティングによってコーティングするために使用された。コーティングされたアルミニウムプレートは、10分間室温での保存の後、200℃で120分間硬化された。結果生じる層の厚みは、10〜15μmであった。
【0102】
付着特性の試験の間、クロスカット/テープ試験においてコーティングの剥離は存在しなかった(Gt0/Gtt0)。テーバー磨耗試験(ローラー材料:CS10F、1000サイクル、500gローラーロード)を用いたコーティングされたAlプレートの耐磨耗性の試験は、5〜6mgの重量損失を与えた。
接触角
水に対して: 未処理部分において105°
処理部分において(磨耗試験機)90°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において58°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0103】
実施例11 高温耐性の疎油性及び疎水性層
31.14g(0.072モル)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホンは200gの2−メチルピロリドン(NMP)中にRTで溶解された。混合物は、次いで最初に11.2g(0.016モル)のFluorolink(登録商標)D10Hと混合され、次いで25.78g(0.08モル)の4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と混合された。全混合物は、終夜RTで撹拌された。この混合物において、45.41gのSiC UF−10(H.C.Starck)が10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散された。
【0104】
この系は10×10cmアルミニウムプレートを500rpmのスピン−コーティングによってコーティングするために使用された。コーティングされたアルミニウムプレートは、10分間室温での保存の後、200℃で120分間硬化された。結果生じる層の厚みは、10〜15μmであった。
【0105】
付着特性の試験の間、クロスカット/テープ試験においてコーティングの剥離は存在しなかった(Gt0/Gtt0)。テーバー磨耗試験(ローラー材料:CS10F、1000サイクル、500gローラーロード)を用いたコーティングされたAlプレートの耐磨耗性の試験は、1.5mgの重量損失を与えた。
接触角
水に対して: 未処理部分において108°
処理部分において(磨耗試験機)90°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において65°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0106】
実施例12 高温耐性の疎油性及び疎水性層
31.14g(0.072モル)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホンは200gの2−メチルピロリドン(NMP)中にRTで溶解された。混合物は、次いで最初に11.2g(0.016モル)のFluorolink(登録商標)D10Hと混合され、次いで25.78g(0.08モル)の4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と混合された。全混合物は、終夜RTで撹拌された。この混合物において、45.41gのAmperit(H.C.Starck)が10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散された。
【0107】
この系は10×10cmアルミニウムプレートを500rpmのスピン−コーティングによってコーティングするために使用された。コーティングされたアルミニウムプレートは、10分間室温での保存の後、200℃で120分間硬化された。結果生じる層の厚みは、10〜15μmであった。
【0108】
付着特性の試験の間、クロスカット/テープ試験においてコーティングの剥離は存在しなかった(Gt0/Gtt0)。テーバー磨耗試験(ローラー材料:CS10F、1000サイクル、500gローラーロード)を用いたコーティングされたAlプレートの耐磨耗性の試験は、3mgの重量損失を与えた。
接触角
水に対して: 未処理部分において95°
処理部分において(磨耗試験機)90°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において59°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0109】
実施例13 高温耐性の疎油性及び疎水性層
31.14g(0.072モル)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホンは200gの2−メチルピロリドン(NMP)中にRTで溶解された。混合物は、次いで最初に11.2g(0.016モル)のFluorolink(登録商標)D10Hと混合され、次いで17.45g(0.08モル)のピロメリット酸二無水物と混合された。混合物全体は、終夜RTで撹拌された。この混合物において、45.41gのSiC UF−10(H.C.Starck)が10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散された。
【0110】
この系は10×10cmアルミニウムプレートを500rpmのスピン−コーティングによってコーティングするために使用された。コーティングされたアルミニウムプレートは、10分間室温での保存の後、200℃で120分間硬化された。結果生じる層の厚みは、10〜15μmであった。
【0111】
付着特性の試験の間、クロスカット/テープ(crosscut/tape)試験においてコーティングの剥離は存在しなかった(Gt0/Gtt0)。テーバー磨耗試験(ローラー材料:CS10F、1000サイクル、500gローラーロード)を用いたコーティングされたAlプレートの耐磨耗性の試験は、2.0mgの重量損失を与えた。
接触角
水に対して: 未処理部分において107°
処理部分において(磨耗試験機)90°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において63°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0112】
実施例14 高温耐性の疎油性及び疎水性層
31.14g(0.072モル)の4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホンは200gの2−メチルピロリドン(NMP)中にRTで溶解された。混合物は、次いで最初に11.2g(0.016モル)のFluorolink(登録商標)D10Hと混合され、次いで17.45g(0.08モル)のピロメリット酸二無水物と混合された。混合物全体は、終夜RTで撹拌された。この混合物において、45.41gのAmperit(H.C.Starck)が10〜15gのガラスビーズを用いて1500rpmで90分間分散された。
【0113】
この系は10×10cmアルミニウムプレートを500rpmのスピン−コーティングによってコーティングするために使用された。コーティングされたアルミニウムプレートは、10分間室温での保存の後、200℃で120分間硬化された。結果生じる層の厚みは、10〜15μmであった。
【0114】
付着特性の試験の間、クロスカット/テープ試験においてコーティングの剥離は存在しなかった(Gt0/Gtt0)。テーバー磨耗試験(ローラー材料:CS10F、1000サイクル、500gローラーロード)を用いたコーティングされたAlプレートの耐磨耗性の試験は、2.5mgの重量損失を与えた。
接触角
水に対して: 未処理部分において95°
処理部分において(磨耗試験機)92°
ヘキサデカンに対して: 未処理部分において62°
処理部分において(磨耗試験機)60°
【0115】
実施例8〜14で得られたコーティングされたプレートは、300℃の温度に45分間供された。水及びヘキサデカンに対する接触角は、変化しなかった。
【0116】
実施例1〜14に従って得られた全ての層は、耐アルカリ性についても試験された。この目的のために、コーティングはpH12の媒体に65℃の温度で3時間曝露された。該層は安定に存続した。試験された層上に浸食は見られなかった。Fluorolink D10Hを用いて作製されたコーティングは、Fluorolink Cを用いて作製された層よりも優れた耐アルカリ性を示した。更に、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を用いて作製された層は、ピロメリット酸二無水物を用いて作製された層よりもよりアルカリ−安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性の層又は成形体を作製するための組成物であって、以下を含む:
a)1つ以上の官能基又はその前駆体を有する少なくとも1つの有機ポリマー又はオリゴマーを含有する硬化性バインダー系、
b)該バインダー系の官能基と反応性である少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのフッ素化ポリマー又はオリゴマー、及び
c)無機粒子。
【請求項2】
フッ素化ポリマー又はオリゴマーの該官能基が、−SOH基、−POH基、アミノ基、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該フッ素化ポリマー又はオリゴマーがフッ素化ポリエーテル又はフッ素化ポリエチレン−アルキルビニルエーテルコポリマーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
該粒子が、該組成物の成分a)、b)及びc)に基づいて5〜60重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1〜3の1項に記載の組成物。
【請求項5】
該無機粒子が、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物、ケイ化物又はホウ化物であることを特徴とする、請求項1〜4の1項に記載の組成物。
【請求項6】
該粒子が、SiC、BC、SiO、Al、ZrO及びTiOの群から選択され、該粒子が、例えばエポキシ又はアミン基を含有する基で表面改質され得ることを特徴とする、請求項1〜5の1項に記載の組成物。
【請求項7】
該バインダー系がエポキシ樹脂、ポリオール、ブロック又は非ブロック化(unblocked)ポリイソシアネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミド及び/又はポリベンゾイミダゾール又はこれらの前駆体を含有することを特徴とする、請求項1〜6の1項に記載の組成物。
【請求項8】
該バインダー系が架橋剤又は硬化剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7の1項に記載の組成物。
【請求項9】
該架橋剤又は硬化剤がブロック又は非ブロック化イソシアネート基、酸無水物基、アミン基又はヒドロキシル基を含むことを特徴とする請求項1〜8の1項に記載の組成物。
【請求項10】
それが更にd)溶媒及び/又は少なくとも1つの添加剤を含むことを特徴とする請求項1〜9の1項に記載の組成物。
【請求項11】
該バインダー系がジ−又はテトラカルボン酸、その無水物、又はカルボン酸成分としてのその他の誘導体、及びアミン成分としてのジ−又はテトラアミン(少なくとも1つの成分は芳香族である)を含むことを特徴とする、請求項1〜10の1項に記載の組成物。
【請求項12】
低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性のコーティングを有する支持体を作製するための方法であって、以下と特徴とする:
a)請求項1〜11の1項に記載の組成物が該支持体に塗布され、
b)該塗布された組成物が硬化する。
【請求項13】
請求項1〜11の1項に記載の硬化組成物から構成される低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性のコーティングを有する支持体。
【請求項14】
該層中の該フッ素化ポリマー又はオリゴマーの濃度が垂直方向において実質的に同一であることを特徴とする、請求項13に記載の低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性のコーティングを有する支持体。
【請求項15】
該コーティングが高温耐性であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性のコーティングを有する支持体。
【請求項16】
低エネルギー表面を有する耐磨耗性及び耐アルカリ性の成形体を作製するための方法であって、以下を特徴とする:
a)請求項1〜11の1項に記載の組成物が成形され、
b)該成形された組成物が硬化される。
【請求項17】
請求項1〜11の1項に記載の硬化組成物を含む耐磨耗性及び耐アルカリ性成形体。
【請求項18】
物又は建築構造物をクリーンに維持するための、請求項17に記載の耐磨耗性及び耐アルカリ性の成形体又は請求項13〜15の1項に記載の耐磨耗性及び耐アルカリ性のコーティングの使用。




【公表番号】特表2007−526366(P2007−526366A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553566(P2006−553566)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001841
【国際公開番号】WO2005/080465
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(500449008)ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク (22)
【Fターム(参考)】