説明

低屈折率組成物及び、低屈折率膜、反射防止膜

【課題】
低屈折率である組成物を供給すると伴に、常温・常圧にて低屈折率膜を形成でき、充分な機械強度を有する低屈折率膜及び反射防止膜を提供する。
【解決手段】
ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材とし、粒子径が50nm以下のフッ化マグネシウムが1乃至90重量%含まれる事により上記課題を解決した低屈折率組成物が提供可能となる。また、常温・常圧にて低屈折率膜が形成可能であり、透明基板上に形成する事で充分な機械強度を有する反射防止膜が提供可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化マグネシウムとボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーより構成される低屈折率組成物に関する。更には、低屈折率膜、反射防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
低屈折率組成物は、各種の光学デバイスの重要な構成部材である。特に低屈折率膜は、反射防止膜、反射膜、半透過半反射膜、可視光反射赤外線透過膜、赤外線反射可視光透過膜、青色反射膜、緑色反射又は赤色反射膜、輝線カットフィルター、色調補正膜に含まれる光学機能膜として光学部材に形成される。
【0003】
表面形状が平坦な光学部材に限らず、液晶用バックライトの輝度向上レンズフィルムや拡散フィルム、ビデオプロジェクションテレビのスクリーンに用いられるフレネルレンズやレンチキュラーレンズ又はマイクロレンズなどの光学機能部材では、いずれも樹脂材料が微細構造体をもつことで所望の幾何光学的な性能を得ている。これらの微細構造体表面にも低屈折率膜を含む光学機能膜は必要とされている。
【0004】
低屈折率膜を反射防止膜として用いる場合、単層構造の低屈折率膜はそのまま反射防止膜となる。単層構造の反射防止膜は、反射防止性能をより広い波長範囲で示し、さらに、層数低減によりコストが低減する。単層構造の反射防止膜の屈折率としては、基材が樹脂材料などの透明材料である場合は、1.2〜1.4の範囲の低屈折率が望まれる。
【0005】
低屈折率膜の形成方法には蒸着法、スパッタ法等の気相法や、ディッピング法、スピンコート法等の塗布法が挙げられる。
【0006】
気相法により得られる代表的な低屈折率の薄膜は、屈折率が1.38のMgF2や1.39のLiFであり、これらの薄膜の単層反射防止膜としての性能は低い。一方、塗布法で得られる低屈折率膜の代表的な材料には、屈折率が1.35〜1.4のフッ素系高分子材料や、屈折率が1.37〜1.46であるフッ素モノマーの重合体からなる微粒子を融着させた多孔質材料があるが(例えば、特許文献1参照)、屈折率が1.3以下のフッ素系高分子材料は得られていない。
【0007】
さらに、近年、ボラジン−ケイ素系高分子の適用も検討されており、トリエチニル−N,N’,N”−トリメチルボラジンとのヒドロシリル基を有するケイ素化合物を共重合する事で屈折率1.46の低屈折率膜が形成可能である事が開示されている(特許文献2参照)。また、特許文献3にはボラジン系耐熱樹脂が1.45〜1.47の低い屈折率を示すため、低屈折率樹脂薄膜としての用途にも適用可能である旨の記述がある。しかし、得られた膜の屈折率は反射防止膜として使用するには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3718031号公報
【特許文献2】特開2002−359240号公報
【特許文献3】特開2005−104993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明においては、低屈折率である組成物を供給すると伴に、充分な機械強度を有する低屈折率膜及びその製造方法並びに低屈折率膜を含む反射防止膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために検討を行った結果、以下に示す発明を完成するに至った。
【0011】
〔1〕ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材とし、粒子径が50nm以下のフッ化マグネシウムが1乃至90重量%含まれることを特徴とする低屈折率組成物。
【0012】
〔2〕ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材とし、粒子系が50nm以下のフッ化マグネシウムが1乃至90重量%含まれることを特徴とする低屈折率膜。
【0013】
〔3〕前記低屈折率膜中に微細細孔が形成されていることを特徴とする前記〔2〕に記載の低屈折率膜。
【0014】
〔4〕前記低屈折率膜の表面に微細な凹凸が形成されていることを特徴とする前記〔2〕または〔3〕に記載の低屈折率膜。
【0015】
〔5〕前記〔2〕から〔4〕のいずれかに記載の低屈折率膜を構成層とすることを特徴とする反射防止膜。
【発明の効果】
【0016】
本発明の低屈折率組成物は、ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材としているため充分な機械強度が確保可能であり、フッ化マグネシウムや細孔が共存しても充分な機械強度を確保可能である。また、構成組成物が疎水性である事より、吸湿が抑制され、内部に微細細孔を導入しても吸水による特性変化を生じ難い。
従って、充分な機械的強度を有し、経時安定性に優れた低屈折率膜が形成可能となる。また、得られる低屈折率膜を単独で又は積層して用いる事で機械的特性に優れ大気中の水分の影響による経時変化の少ない反射防止膜が形成可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の低屈折率組成物に含まれるフッ化マグネシウムは、ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマー中に1乃至90重量%含まれる。1重量%より少なければ屈折率低減の効果がなく、90重量%を超えると成膜性に悪影響を与えるため好ましくない。より好ましくは、20乃至80重量%である。
【0018】
フッ化マグネシウムは、粒子径が50nm以下ある事が好ましい。これより大きくなると散乱により充分な透明性を確保する事が困難になる。より好ましくは、20nm以下である。
【0019】
フッ化マグネシウム及びボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーは、ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを有機溶剤中に溶解し、その中にフッ化マグネシウムを分散した状態で使用される。ここで用いられる溶剤を分散溶剤とする。
分散溶剤としては、ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーが溶解し、フッ化マグネシウムが分散可能であれば特に限定されないが、以下に示す非水系の溶剤が用いられる。
【0020】
すなわち、分散溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−α−モノメチルエーテル、プロピレングリコール−α−モノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−α−アセテートなどのポリオール誘導体などが用いられる。
【0021】
低屈折率膜は、前記分散溶剤にボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを溶解し、フッ化マグネシウムを分散させた塗布液を用い、ディップ成膜、スピン成膜、スプレー成膜、バーコート成膜などの方法で形成される。
【0022】
塗布液組成、濃度や乾燥条件を変えることにより、膜中に細孔を導入する事が可能であり、より低屈折率の膜を形成する事が可能である。細孔導入のためには、揮発温度の異なる複数の溶剤を組合せる事が有効である。
【0023】
また、屈折率を低減させるため、ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーとフッ化マグネシウムの複合組成物に微細細孔を導入することも可能である。導入される細孔径は50nm以下が好ましい。50nmを超えると散乱により透明性が低下するため好ましくない。より好ましくは、20nm以下である。
【0024】
微細機構の導入量は50%以下が好ましい。50%を超えると膜の強度を維持する事が出来なくなるため好ましくない。より好ましくは、5〜40%である。
【0025】
膜中への細孔の導入は、沸点の異なる1種又は2種以上の二次添加溶剤を用い、多段的な乾燥・加熱処理により行われる。成膜後の乾燥段階で低沸点溶剤を揮発除去する事で、高沸点溶剤が膜中に残存し、膜形成成分との相分離により微細構造が形成される。更に加熱処理する事で、細孔構造を形成した二次添加溶剤を除去し、細孔が導入された低屈折率膜が形成される。
【0026】
二次添加溶剤の沸点は、分散溶剤の種類により決定されるためその沸点差が30℃以上のものが用いられる。好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上である。分散溶剤を乾燥除去した段階で膜中に十分残存する必要があるため、150℃以上の沸点の有機物が用いられる。好ましくは、180℃以上、より好ましくは200℃以上である。
使用する溶剤は、数10nmレベルでの相分離構造を形成する必要があるため、分散溶剤及び膜形成成分との相溶性が重要となる。具体的な種類は、分散溶剤の種類に依存するため、分相しなければ特に限定されない。
【0027】
二次添加溶剤の種類として、炭素数9以上の炭化水素、例えば、n-ノナン(151℃)、炭素数6以上のアルコール、例えば1-ヘキサノール(156℃)、炭素数7以上のケトン、例えばアミルメチルケトン(151℃)、炭素数7以上のケトン、例えばシクロヘキサノン(157℃)、炭素数7以上のアルデヒド、例えばヘプタナール(155℃)、水素化ナフタリン及びその誘導体、例えば、テトラリン(207℃)、ジヒドロナフタリン(1.2又は1.4、207〜212℃)、テトラロン(257℃)、インダン(180℃)又はインダン(179℃)、単環式モノテルペノイドおよびその誘導体、例えば、リモネン(176℃)、テルピネン(α、β、178、183℃)、α−フェランドレン(175℃)、テルピネオール(α、β、γ、δ型、例えばα型は214〜227℃)、脂肪酸エステル、例えば、フタル酸ジエチル(298℃)、ジエチレングリコール誘導体、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(196℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(230℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(188℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(255℃)、ジエチレングリコールモノアセテート(182℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(219℃)などが用いられる。
【0028】
混合液の溶剤の種類により二次添加溶剤の最適添加量が決定されるが、固形分に対し重量比として0.1から10倍が好ましい。0.1より少ないと初期乾燥時に分散溶剤と一緒に揮発し、十分な気孔が導入できない。10倍より多く入れてもその効果は変らないため、10倍で充分である。好ましくは、0.2から5倍、より好ましくは0.2から2倍である。
【0029】
さらに、インプリントにより、膜表面に微細な凹凸を導入する事により、低屈折率膜を得る事ができる。成膜・乾燥後、成形型の圧着により目的とする形状を転写し、更に加熱硬化する事で膜表面に微細な凹凸構造が導入された低屈折率膜が得られる。
【0030】
インプリントは、ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材とし、粒子系が50nm以下のフッ化マグネシウムが1乃至90重量%含まれることを特徴とする低屈折率膜および前記低屈折率膜中に微細細孔が形成されていることを特徴とする低屈折率膜のいずれにも行うことができる。
【0031】
形成される凹凸の形状は、散乱の原因とならないサイズであれば特に限定されない。円柱状、円錐上、多角中状、多角錐状などの形状及びそれらの組み合わせにより形成される。可視光の散乱を抑制するために、柱状及び錐状形状の最長位置での長さは50nm以下である必要がある。より好ましくは、30nm以下である。柱状及び錐状孔の数は必要とする膜の気孔率量により決定される。
【0032】
柱状及び錐状形状は、乾燥又は1次加熱後あるいは二次添加溶剤除去後の低屈折膜の形成後に雛形からの転写により形成され、最終硬化処理する事で本発明の低屈折率膜となる。
【0033】
本発明の反射防止膜は、本発明による低屈折率膜を単層又は他の高屈折率組成物膜との積層により形成される。
【0034】
高屈折率組成膜としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸カリウムなどのペロブスカイト化合物及びそれら固溶体、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどのイルメナイト化合物及びそれら固溶体、又はこれら化合物を含む複合膜が用いられる。
【0035】
また、上記の酸化物粒子を含む有機系複合膜が高屈折率膜として用いられる。有機マトリックスとして、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、セルロース系樹脂、又はこれらの共重合体樹脂が用いられる。モノマーとして酸化物粒子と混合、成膜を熱・光硬化、又は、重合体と混合、成膜後乾燥する事に形成される。
【0036】
通常、本発明の反射防止膜は、透明基板上に形成される。
反射防止膜が形成される透明基板としては、その用途により決定されるものであり光学材料として使用可能な透明性を具備すれば特に限定されないが、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、PETに代表されるポリエステル系樹脂、脂環式炭化水素系樹脂などが用いられる。
【0037】
続いて、本発明に用いるボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーについて、説明する。
【0038】
ボラジン系ポリマーは、化学式1で示される置換ボラジンの重合物(式中Rは、炭素数1〜3のアルキル基、R’は重合性末端を有するアルキル基を示す)である。
【0039】
又、ボラジン珪素系ポリマーは、化学式2(式中、R1およびR2はアルキル基、アリール基、アラルキル基または水素原子の中から選ばれる同一あるいは相異なる1価の基を示し、R3は置換基を有していても良い芳香族の2価の基、酸素原子、または、オキシポリ(ジメチルシロキシ)基を示す)又は化学式3(式中、R4はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示し、nは3以上の整数を示す)で表される少なくとも2個以上のヒドロシリル基を有するケイ素化合物と前記化学式1で示される置換ボラジンの共重合物である。
【0040】
【化1】


【化2】



【化3】



【0041】
ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーとしては、化学式(4)〜(6)に示される化学構造に代表されるものである(ここで、化学式1の化合物としては、R:メチル、R’:エチニルの場合の化合物の例を示している)。
【0042】
化学式4の式中、x、yは0又は正の整数を示し、両者とも0であることはなく、n、pは1以上の整数を示す。
また、化学式5の式中、x、yは0又は正の整数を示し、両者とも0であることはない。
そして、化学式6の式中、x、yは0又は正の整数を示し、両者とも0であることはなく、qは0又は正の整数を示す。
【0043】
【化4】



【化5】



【化6】

【0044】
ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーの合成は、化学式1又は化学式1と化学式2や3で示されるモノマーを白金などの触媒共存下で重合させる事で得られる。
【実施例】
【0045】
(ボラジン系樹脂1の合成)
エチレンジアミン0.03モルを乾燥トルエン30mLに溶解し、N,N’,N”-トリメチルボラジン0.03モルを滴下した。得られた均一溶液を、反応容器に少量の窒素ガス気流下、110℃で3日間加熱攪拌し、ボラジン系重合物を得た。
【0046】
(ボラジン系樹脂2の合成)
B,B’,B”-トリエチニル-N,N’,N”-トリメチルボラジン1モルとp-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン1モルをエチルベンゼンに溶解し、窒素雰囲気下、白金1,3-ジビニル(1,1,3,3テトラメチル-1,3-ジシロキサン(Pt2(dvs)3)を触媒として50℃で2時間反応し、ヒドロシリル化重合した。
【0047】
(ボラジン系樹脂3の合成)
B,B’,B”-トリエチニル-N,N’,N”-トリメチルボラジン1モルと1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン1モルをエチルベンゼンに溶解し、窒素雰囲気下、Pt2(dvs)3を触媒として50℃で2時間反応し、ヒドロシリル化重合した。
【0048】
(ボラジン系樹脂4の合成)
B,B’,B”-トリス(1’-プロピニル)-N,N’,N”-トリメチルボラジン3.6g(15mmol)と1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン3.6g(15mmol)をメシチレン150mlに溶解し、Pt2(dvs)3のキシレン溶液(白金2%含有)30μlを加え、窒素下40℃で1日間攪拌した。そこへPt2(dvs)3のキシレン溶液(白金2%含有)30μlを追加し、窒素下40℃で1日間攪拌した。続いて、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン0.36g(1.5mmol)を加え、窒素下40℃で1日間攪拌した。
【0049】
(ボラジン系樹脂5の合成)
B,B’,B”-トリス(1’-プロピニル)-N,N’,N”-トリメチルボラジン5.0mmol、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン5.0mmolをエチルベンゼンに溶解し、Pt2(dvs)3のキシレン溶液(白金2%含有)10μlを加え、窒素下40℃で1日間、続いて、室温で3日間撹拌した。
【0050】
(ボラジン系樹脂6の合成)
B,B’,B”-トリス(1’-プロピニル)-N,N’,N”-トリメチルボラジン1.0mmol、p-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン1.0mmolをエチルベンゼンに溶解し、Pt2(dvs)3のキシレン溶液を加え、窒素下40℃で3日間撹拌した。
【0051】
(ボラジン系樹脂7の合成)
B,B',B"-トリエチニル-N,N',N"-トリメチルボラジン1.0mmol、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ジシロキサン1.0mmolをエチルベンゼンに溶解し、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンのキシレン溶液を加え、窒素下40℃で3日間撹拌した。
【0052】
(ボラジン系樹脂8の合成)
B,B',B"-トリエチニル-N,N',N"-トリメチルボラジン1.0mmol、1,3,3,5-テトラメチル-1,5-ジフェニル-1,3,5-トリシロキサン1.0mmolをエチルベンゼンに溶解し、白金ジビニルテトラメチルジシロキサンのキシレン溶液を加え、窒素下40℃で3日間撹拌した。
全ての合成例においてガスクロマトグラフィー(GC)分析により、残存モノマーが残存しない事を確認した。
【0053】
〔実施例1〜13〕
ボラジン系樹脂10%溶液とフッ化マグネシウム分散液(MFS−10P:平均粒径10nm、10%IPA分散液、日産化学工業株式会社製)を混合した後、ガラス基板(Corning7059)及びSi基板にスピンコーティングにより塗布し、100℃で1分乾燥後、大気中でポストアニールする事で高硬度の低屈折率膜を得た。膜厚が0.1μmとなるよう回転数を調整した。比較サンプルとしてボラジン系樹脂3のみを用い同様に薄膜を作成した(比較例1)。
Si基板上に形成された膜の屈折率(nd)を分光反射法で測定した。また、ガラス基板上に形成された膜の鉛筆硬度を測定した。成膜条件と屈折率とボトム位置での反射率を表1にまとめる。
【表1】



【0054】
〔実施例14〜21〕
ボラジン系樹脂3のエチルベンゼン10%溶液とフッ化マグネシウム分散液(MFS−10P)の混合液に高沸点溶剤を加えた後、ガラス基板(Corning7059)及びSi基板にスピンコーティングにより塗布し、100℃で1分感乾燥後、大気中180℃で10分、更に300℃で30分加熱する事で高硬度の低屈折率膜を得た。膜厚が0.1μmとなるよう回転数を調整した。
Si基板上に形成された膜の屈折率(nd)を分光反射法で測定した。また、ガラス基板上に形成された膜の鉛筆硬度を測定した。成膜条件と屈折率とボトム位置での反射率を表2にまとめる。
【表2】

【0055】
〔実施例22〕
ボラジン系樹脂3のエチルベンゼン10%溶液にフッ化マグネシウム50重量%となるにフッ化マグネシウム分散液(MFS−10P)を加えた後、ガラス基板(Corning7059)及びSi基板にスピンコーティングにより塗布し、100℃で1分感乾燥後、ピッチ90nm、高さ80nm、直径40nmの円柱形状を有する金型を用いインプリント処理を行った300℃で30分硬化処理する事で高硬度の低屈折率膜を得た。膜厚が0.1μmとなるよう回転数を調整した。
Si基板上に形成された膜の屈折率(nd)を分光反射法で測定した。また、ガラス基板上に形成された膜の筆硬度を測定した。屈折率は1.36、ボトム位置で反射率が0.1%、鉛筆硬度は1Hであった。外観上問題となるヘイズは観察されなかった。
【0056】
本発明の実施例では、表1と表2に示したようにガラス基板(屈折率1.52、片面4.3%反射率)に比べ十分低い反射率が達成されその反射防止効果が確認されると供に、ボラジン系樹脂のみを使用した比較例1の膜に比べ低い屈折率とする事が可能であった。また、外観上ヘイズが認められず透明性が維持され、全ての実施例において1H以上の鉛筆硬度を示した。結果として、単層膜で表1及び2に示した低反射率の反射防止膜の形成が可能となった。
【0057】
〔比較例2〕
含フッ素シリカゾル(日産化学工業(株)社製LR201(全固形分濃度;4%、溶媒;エタノール/ブチルセロソルブ=50/50、日産化学工業株式会社社製))をガラス基板(Corning7059)にスピンコーティングにより塗布し、100℃で1分感乾燥後、120℃で6時間熱キュアーした。得られた膜は、厚さ0.1μm、屈折率1.38であった。
【0058】
一方、シリカをマトリックスとした比較例2と比較した場合、初期特性は同レベルであったが、比較例2の膜が、1ヶ月間相対湿度45%大気中に放置することによりに1.38から1.42へ屈折率の増加が認められるのに対し、本発明の実施例の膜では、3ヶ月後も屈折率変化が確認されなかった。
【0059】
〔実施例23〕
本発明の低屈折率膜(実施例15、膜厚100nm)の下部層として屈折率1.65、膜厚85nmのチタニア−アクリル複合膜を用いた2層反射膜(基板:Corning7059、屈折率1.52)では、ボトム位置で反射率が0.1%以下の反射防止膜が形成可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の低屈折率組成物は、従来より知られている低屈折率材料に比べ機械的特性が優れる事、大気中水分の影響による経時安定性に優れる事より、反射防止膜としての適用範囲が広がる。機械強度の弱い低屈折率膜が直接触れる事のない場所にその使用範囲が限定されていたのに対し、本発明の低屈折率組成物は反射防止膜として光学素子の最表面部への適用も可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材とし、粒子系が50nm以下のフッ化マグネシウムが1乃至90重量%含まれる事を特徴とする低屈折率組成物
【請求項2】
ボラジン系ポリマー又はボラジン珪素系ポリマーを母材とし、粒子系が50nm以下のフッ化マグネシウムが1乃至90重量%含まれることを特徴とする低屈折率膜
【請求項3】
前記低屈折率膜中に微細細孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の低屈折率膜
【請求項4】
前記低屈折率膜の表面に微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の低屈折率膜
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の低屈折率膜を構成層とした反射防止膜


【公開番号】特開2011−79975(P2011−79975A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233687(P2009−233687)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】