説明

低発泡性酸性低温洗浄剤および表面洗浄法

【課題】リン含有化合物をおよび揮発性有機溶媒を含まず、現在使用されている一般的な市販のプラスチック用酸性洗浄剤よりも汚染の少ない、低発泡性工業用洗浄組成物を提供する。
【解決手段】水と、少なくとも1種のカルボン酸、1種以上の芳香族水溶性または水分散性非イオン界面活性剤、ならびに所望により、カルボン酸の塩、ヒドロトロープ材料、pH調整剤、多価アルコールおよび保存剤を含む低発泡性工業用洗浄組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発泡性工業用洗浄組成物および工作中のプラスチック表面、コンポジット、金属/プラスチックコンポジット、ならびに限定されるものではないがアルミニウムを含む金属表面を洗浄する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、酸性工業用洗浄剤組成物に関するものであり、この洗浄剤組成物は38℃という低温で洗浄を提供するものであり、この洗浄剤組成物は、リン含有成分もしくは溶剤成分をほとんどまたは全く含まず、かつ、低発泡特性を有し、この特性は洗浄剤を噴霧法で洗浄表面に対して使用するのに好適にするものである。
【背景技術】
【0002】
現在、この技術分野では、工業的環境においてでプラスチック表面を洗浄する多数の組成物および方法が公知である。それらの大部分は酸、界面活性剤およびリン酸塩を含んでいる。また、アルカリ洗浄剤が油汚れをよく落とすことも知られているが、これらは、例を挙げれば、限定されるものではないが、高分子材料の洗浄などの特定の用途には望ましくないと考えられる。アルカリ洗浄剤には、エッチング速度と処理浴パラメーターとの制御が困難であること、ならびに洗浄表面に残留物が残ることなどの欠点がある。また、リン酸塩が、工業廃水が排出される水系の潜在的汚染および富栄養化を避けるために禁止されていたり、厳しい制限があったりする場合もある。よって、リン含有成分をほとんどまたは全く含まず、しかもなお、有効な洗浄剤である酸性洗浄組成物が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
酸性洗浄剤は、さらなる処理工程またはコーティングの前に、成形潤滑剤、指紋およびその他の汚れなどの工業的混入物を除去するのに使用する目的で知られている。通常の酸性洗浄剤のためには、有効な洗浄のためには、少なくとも130°Fの処理浴温度を必要とする。このように高い温度は洗浄を助け、浴内の微生物の増殖を抑えるという付加的な利点もあるが、高温を要求することには欠点がある。周囲温度よりも十分に高い温度で多量の洗浄剤を維持する必要があるので、加熱装置やエネルギーを要し、製造コストが高くつく。また、高温浴は蒸発のため容量損失率が高くなる。最後に、高温浴を用いて操業するときには、安全に対する高い予防措置を採らなければならない。これらの、およびその他の理由により、適度に低い浴温で、高温酸性洗浄剤と少なくとも同様の洗浄をもたらす酸性洗浄剤を提供することが望まれている。
【0004】
低温で洗浄剤槽浴を稼働させる利点は、結果としての洗浄剤浴内の微生物増殖の増加に見合ったものでなければならない。界面活性剤や汚れなどの有機物質を含むどんな洗浄剤でも、懸念点の1つに、例えば真菌および/または細菌などの微生物の増殖を助長する可能性があることがある。微生物が増殖すれば洗浄剤の有効性が低下し、汚泥が生じ、存在する微生物の種にもよるが、健康への害があることもある。濃縮物および低温実用洗浄剤浴の双方で微生物の増殖を抑える洗浄剤を提供することが望まれている。
【0005】
アルカリ性洗浄剤および酸性洗浄剤の普遍的成分は界面活性剤である。通常の製品に見られる多くの界面活性剤の欠点は、洗浄剤の発泡性である。特に、油汚れを落とす場合には、油汚れを水溶液中に溶解または分散させる十分な働きをする界面活性剤は発泡しやすい。様々な一般的家庭用製品は界面活性剤を含むアルカリ性洗浄剤または酸性洗浄剤であるが、これらはかなりの発泡性である。多くの消費者製品については、発泡性は望ましいと考えられているが、工業用途、特に加圧スプレー洗浄剤を用いる場合には、発泡性は望ましくない。このような用途に用いられる従来の家庭用洗浄剤は、すぐさま扱いにくい量の泡を発生する。工業用スプレー洗浄に用いるのに好適な低発泡性洗浄剤を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の組成物は、リン含有成分を、実質的にまたは全く含まず、また、揮発性有機溶媒も、実質的にまたは全く含まなくすることができ、かつそれにより、現在のプラスチック用のに用いられている一般市販酸性洗浄剤よりも汚染が低いものである。
【0007】
本発明は、その一実施形態では、組成物であって、
(A)カルボン酸(1種又は複数種)と、
(B)非イオン性界面活性剤と、所望により下記(C)〜(G):
(C)1種以上のカルボン酸の陰イオン、好ましくは、成分(A)で特定されたものと同一の1種以上の酸の陰イオンを含む塩、
(D)水中で成分(A)〜(C)の安定で均質な溶液または分散液を形成するのに十分な量のヒドロトロープ材料、
(E)pH調整剤、
(F)多価アルコール、および
(G)1種類以上の保存剤
の1以上とを含む、好ましくは、これらから本質的になる、またはより好ましくは、これらからなるものである。
【0008】
本発明の他の実施形態は、水性濃縮液であって、これは、水で希釈するだけで、上述の組成物を製造することができ、このとき、所望により酸または塩基を加えることによりpHを調整した後に前記希釈を行い、この濃縮液は、限定されるものではないが、例を挙げれば、プラチック表面および金属表面などの洗浄表面に使用される。本明細書において「水だけ」とは、通常の家庭用水および工業用水ならびに脱イオン水、蒸留水または他の特殊精製水からの水を包含するものとする。
【0009】
本発明の方法は、汚れた表面に本明細書に記載の適当な組成物を、所望の量の汚れを除去するのに十分な高温で、かつ十分な時間にわたり接触させることを含むものである。この洗浄剤は、100〜150°Fの温度で使用した際に、60%以上の汚れ除去率であることが望ましい。
【0010】
本発明に従って有効に洗浄可能なプラスチック表面の例としては、これらに限定されるものではないが、ポリエステルシート成形用混合物(「SMC」);ポリ{塩化ビニル}(「PVC」)ホモポリマーおよびコポリマー;ポリウレタンおよびポリ尿素プラスチックなどの表面(これらのプラスチックから射出成形により商業的に製造された物品の表面など);アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンのターポリマー(「ABS」);ポリ(フェニレンオキシド)(以下、「PPO」と呼ぶ)、および「フェニレンオキシド」と、ポリアミドなどの他の材料とのコポリマー;ポリカーボネート(「PCO」)ポリマーおよびコポリマー;ならびに熱可塑性ポリオレフィン(「TPO」)が挙げられる。有効に洗浄可能な金属表面の例としては、軽金属、鉄系金属および非鉄系金属、特に、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ならびにガルバリウムおよびガルバニールなどのように、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金によりめっきされた金属基材が挙げられる。また、本発明の範囲内には、ペイント表面および特殊表面処理フィルムまたは硬質ラミネートの積層によって形成された基板の洗浄がある。
【0011】
本発明の一実施形態では、低揮発性溶剤を追加成分として添加される。好適な溶剤としては、限定されるものではないが、例を挙げれば、低級アルコールおよびグリコールエーテル、例えば(エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールn−プロピルエテンなどの水溶性溶剤がある。
【0012】
特許請求の範囲および実施例、またはそうではないことが明示されている場合を除き、材料の量、または反応および/または使用の条件を示す本明細書中の数字は全て、本発明の最も広い範囲を表す「約」という言葉で修飾されているものと理解すべきである。記載されている数値の限界内で実施することが一般に好ましい。また、そうではないことが明示されていない限り、パーセント、「部」、および割合の値は重量に対するものであり;「ポリマー」とは、「オリゴマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」などを含み;本発明に関しての所与の目的に好適または好ましいものとしての、材料のある群または種の記載は、その群またはクラスのいずれか2以上のメンバーの混合物が、等しく好適または好ましいことを意味し;化学用語での構成要素の記載は、その記載で明示された任意の組合せに加える際の、または酸−塩基反応によりin situで量が減少または増加する場合でも、それらの成分を指し、ひと度混合すれば、混合物の成分間に化学的相互作用は必ずしも発生しない;イオン形態で材料を明示している場合は、全体としてのその組成物を電気的に中性とするに十分な対イオンが存在することを意味する(このように暗に特定される対イオンは、好ましくは、可能な程度で、イオン形態で暗に特定される他の対イオンの中から選択されるべきであり;本発明の対象に悪影響を及ぼす対イオンを避けること以外、それ以外の点ではこのような対イオンは自由に選択することができる);「モル」およびその変形形態は、元素、イオン、および存在する原子の数と種類により定義される他の化学種、ならびに十分定義された分子を有する化合物にも当てはまり;酸の1当量とは、完全にイオン化した際に1グラムの水素原子を生じる量と理解され;このような酸の塩の1当量は、1グラムの水素イオンで他のいくつかの陽イオンを置換して遊離酸を再生成するのに必要な塩の量として理解される。実施例以外、また、そうではないことが示されていない限り、成分の量、反応条件を表すか、または本明細書で使用される成分パラメーターを規定する全ての数値は、全ての場合、「約」という言葉によって修飾されているものと理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最も広い範囲で、各分子が少なくとも1種類のカルボキシル基、および所望により付加的なヒドロキシル基またはカルボキシル基を含む有機酸を、上記成分(A)として使用することができる。よって、例えば、グルコン酸、イタコン酸、ヒドロキシ酢酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸カリウム、酒石酸、マロン酸、およびクエン酸は全て使用可能である。成分(A)はカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸を含むことが望ましい。望ましくは、これらの酸はクエン酸、イタコン酸、ヒドロキシ酢酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸および/またはRAPを含む。成分(A)として最も好ましい酸はクエン酸である。本明細書に記載の実施組成物では、成分(A)および成分(C)(後者が存在する場合)の総濃度は、望ましくは、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.00、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11グラム/リットル(以下、通常、「g/l」と略記する)以上であり(示された順に好ましさが増す)、これとは独立に好ましくは、少なくとも経済的な理由からは、6.0、5.7、5.4、5.2、5.1、5.0、4.7、4.4、4.2、4,1、4.0、3.7、3.4、3.2、3.1、3.0、2.7、2.4、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2g/l以下である(示された順に好ましさが増す)。
【0014】
本発明の最も広い範囲で、水溶性または水分散性である通常の芳香族非イオン性界面活性剤は、成分(B)として使用可能である。この成分の好ましい分子は、一般に、当技術分野で一般に知られているように、好適な量のエチレンオキシドで、また所望によりプロピレンオキシドまたは他の高級アルキレンオキシドで置換されたフェノールおよび/またはベンジルアルコールなどのアルコキシル化芳香族アルコールである。
【0015】
本発明の一実施形態では、このアルコキシル化芳香族アルコールは、少なくとも1つの位置において、2以上のエトキシレート単位を含む脂肪族基で置換された芳香環、例えばフェニル環を有する1以上の化合物を含む。末端エトキシレート単位は水素、C1−C6アルキルまたはフェニルで末端キャップされていてもよい。この芳香環はまた、1〜4個の炭素を有する1以上のアルキル置換基を含むことができる。アルキル置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルが挙げられる。
【0016】
本発明の一実施形態では、このアルコキシル化芳香族アルコールは、芳香環と一般式I:
【化1】

[式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ他から独立に水素およびメチルから選択され;R5は、水素原子、C1−C6アルキル、またはフェニル基であり;nは2、3、4、5または6である]
のエトキシレート単位を有する1種以上の化合物を含有する。式Iのエトキシレート単位は直接またはエーテル(酸素)結合もしくはオキシメチレン(−CHR8O−)(ここで、R8は水素原子またはC1−C4アルキル基である)結合を介して芳香環と結合している。
エトキシル化芳香族アルコール組成物の一例は、数平均(Navg.)が約3〜約8のエトキシレート単位を有する一般式II(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は前記式Iにおいて、定義された通りであり、R6、R7およびR8は、それぞれ他から独立に水素原子およびC1−C4アルキル基から選択される)の1種以上のエトキシル化化合物を含む。置換基R1、R2、R3およびR4の、水素原子との結合率は、少なくとも60原子%、または少なくとも80原子%であってもよい。また、Navg.が4未満であるときは、R5は水素原子であることが好ましい。
【化2】

エトキシル化芳香族アルコール組成物のさらに別の例は、エトキシレート単位の数平均(Navg.)が約3〜約8の式IIIの1種以上のエトキシル化合物を含むものであり、式III中のR1、R2、R3、R4およびR5は、式Iで定義された通りであり、R6、R7およびR8は、それぞれ他から独立に水素原子およびC1−C4アルキル基から選択される。置換基R1、R2、R3およびR4の水素原子との結合率は、少なくとも60%、または少なくとも80%であってもよい。また、Navg.が4未満のときは、R5は水素原子であることが好ましい。
【化3】

【0017】
本発明の洗浄組成物は本明細書に挙げられている市販のアルコキシル化芳香族アルコール種に限定されるものではないと理解されるべきである。これらのタイプのアルコールは、単に、本発明の洗浄液組成物で使用可能な界面活性組成物の例として示されるものである。出願者らは、本発明の洗浄組成物に芳香族エトキシル化アルコールを用いる場合には、その芳香族エトキシル化アルコールは、芳香族有機部分と結合した式Iのエトキシレート基により、定義された一般クラスの化合物である。
【0018】
上記からは独立に、本明細書に記載されるような実施組成物中での成分(B)の濃度は、好ましくは、50、75、100、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、197 parts per million(以下、通常、「ppm」と略す)以上であり(示された順に好ましさが増す)、これとは独立に、好ましくは、少なくとも経済的な理由からは、3000、2000、1000、900、800、700、600、500、400、300ppm以下である(示された順に好ましさが増す)。
【0019】
ヒドロトロープは、一般に、部分的にしか溶解しない別の物質の水中溶解度を高める物質として定義されている。本明細書においては、ヒドロトロープは、水における、より詳しくは、上記で定義したような成分(B)の実質量の塩を含有する水における溶解度を高める物質である。ヒドロトロープ成分(D)は、組成物中に、大量の塩が存在する場合に、このような組成物中に含まれることが通常好ましい。前記塩とは、非イオン性界面活性剤および有機物質の溶解度を逆に低下させ、その組成物の有機質汚れを除去および分散させる能力が望ましいレベルに満たないレベルにまで低下させてしまう傾向があるものである。ヒドロトロープ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクメンのスルホン酸塩のアンモニウムまたはアルカリ金属塩が存在すると、水溶液中に塩および非イオン性界面活性剤の双方が比較的多量に存在し得るようにすることができる。最も好ましいヒドロトロープは、クメンスルホン酸ナトリウムである。
【0020】
成分(C)が存在する場合には、塩成分(C)の存在濃度の1/4〜3/4、またはより好ましくは、35〜45%に相当するヒドロトロープ濃度(ppm)が一般に好ましいが、また、成分(C)が存在しない場合であっても、ヒドロトロープは、組成物中で、洗浄剤に存在する非イオン性界面活性剤およびその他の有機物質の一部、または、全部を可溶化させるのに有用であり得る。組成物中のヒドロトロープの濃度は、限定されるものではなく、例を挙げれば、ヒドロトロープの種類、存在する酸性塩成分の量および種類、組成物中の界面活性剤の性質、ならびに影響を受ける混合物の所望の曇点に応じて、広範囲に異なり得る。よって、ヒドロトロープの好適な量は、洗浄剤中に存在する少なくとも数種の、好ましくは全ての非イオン性界面活性剤、最も好ましくは、全ての有機物質を可溶化するのに十分な量である。組成物中に存在するヒドロトロープの量は、存在する界面活性剤の少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95重量%が可溶化されるような量が望ましい。上記から独立に、特に成分(C)が組成物中に存在しない場合、本明細書に記載される実施組成物中のヒドロトロープの量は好ましくは、25、35、45、55、65、75、85、95、96、97、98、99、または100 parts per million(以下、通常、「ppm」と略す)以上であり(示された順に好ましさが増す)、これとは独立に、好ましくは、少なくとも経済的な理由からは、5000、4500、4000、3500、3000、2500、2000、1500、1000、750、500、450、400、350、300、250、200、150、または120ppm以下である(記載の順に好ましさが増す)。
【0021】
上記ですでに述べたように、本発明の主要な目的の1つは、リン酸塩汚染を避けることである。よって、本発明の組成物は、リン酸塩またはその他のリン含有成分、例えば、限定されるものではないが、例を挙げると、リン酸、濃リン酸および/またはリン酸エステルのイオン化により生じる陰イオンなどを、2、1、0.5、0.25、0.1、または0.01重量%を超えて含まないことが記載の順によりいっそう好ましい。同様に、大気汚染や火災の危険を回避するために、本発明の組成物は、溶剤または引火性物質または可燃性物質と認められる有機物質を2、1、0.5、0.25、0. 1、0.07、0.05、0.03、0.02、または0.01重量%を超えて含まないことが、記載の順によりいっそう好ましい。このような化合物の例は、密閉カップ引火点が38℃(引火性)未満であるもの、および引火点が38℃〜54℃の間(可燃性)であるものがある。安全性と環境上の懸念の他、このような物質は揮発しやすく、典型的な工業用洗浄機でスプレーした場合、洗浄区域から失われ、揮発した物質をプラントの大気から除去する必要が生ずる。
【0022】
本発明の組成物のpHおよび総酸含量の選択はいくつかの重要な特性を左右する。これらの特性には洗浄有効性、pH安定性、金属腐食性および微生物増殖性が含まれる。後に示されるように、洗浄有効性は洗浄される汚れの種類によって変動する。トリグリセリド系の汚れは、例えば、pHが高いほど、その洗浄組成物の効果がより高くなる。低pHは石鹸加工材料、特に亜鉛および/またはカルシウムのステアリン酸塩、パルミチン酸塩、ならびに類似の物質の除去に好適である。pH安定性と浴液寿命は、多量の酸および塩成分の存在により向上するが、経済性を考慮して、この鉱物質の量が定められる。金属腐食は、適用分野に応じて好ましいとも好ましくないとも考えられる。pHが低く、総酸含量が高いほど、金属腐食が促進される。微生物制御はpHに左右され、一般に、pH値が低いほど微生物制御は良好となる。よって、各組成については種々の考慮事項の妥当化を行う必要がある。よって、本発明の組成物の使用において腐食が問題とならない場合には、実施組成物のpHは、好ましくは、1.0、1.5、1.7、1.9、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、3.0、3.1、3.2、3.25、または3.3以上(示された順に好ましさが増す)であり、これとは独立に、好ましくは、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.45、または3.4以下(示された順に好ましさが増す)である。
【0023】
上記の任意選択成分(C)の包含により緩衝される本明細書に記載の組成物において、成分(C)が高い緩衝力を与える理由の1つは、組成物を用いる場合に、洗浄効果と前述の成分を含めて、pHにより左右される性能特性の実質的一致を与えるためである。このような場合、本発明の酸成分が使用中に消費されるにつれこれを補充することが最終的に有利となる。しかしながら、このように必要とされる補充の頻度を最小とするためには、実施組成物のpHが3.5を超える場合、組成物の緩衝力は必要を満たす十分に高いものであることが好ましく、組成物のpH値をpH単位で0.1引き上げるためには、組成物1リットル当たり強塩基が少なくとも0.06、0.10、0.15、0.19、0.23、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.30ミリ当量(示された順に好ましさが増す)の量で加えられなければならない。よって、酸または塩基であり得る任意選択のpH調節剤(E)は一般に、使用する場合には塩基であることが好ましい。一般に、本明細書に記載される実施組成物中の、NaOH、KOH、およびLiOHなどのアルカリ金属塩基の量に対する当量として計測されるpH調整剤の存在量は、好ましくは、20、30、40、50、75、100、150、175、200、225、250、260、270、280、290、または300 parts per million(以下、通常、「ppm」と略す)以上(示された順に好ましさが増す)であり、これとは独立に、好ましくは、少なくとも経済的な理由により、1000、900、800、700、600、500または400ppm以下(示された順に好ましさが増す)である。
【0024】
洗浄剤の他の任意選択成分として、多価アルコール(F)がある。本発明の最も広い範囲において、水溶性または水分散性である通常の芳香族または非芳香族多価アルコールが、成分(F)として使用可能である。この成分の好ましい分子は一般に、当技術分野で一般に知られているようなグリコール、グリセロールなどのような、1分子当たり少なくとも2つの−OH基、好ましくは、1分子当たり少なくとも3つのOH基を有するアルキルアルコールである。これとは独立に、本明細書に記載される実施組成物中の成分(F)の濃度は、好ましくは、10、20、30、40、50、75、100、150、175、200、225、250、300、325、または350 parts per million(以下、通常、「ppm」と略す)以上(示された順に好ましさが増す)であり、これとは独立に、好ましくは、少なくとも経済的理由により、2000、1500、1000、900、800、700、600、500または400ppm以下である(示された順に好ましさが増す)である。本発明の一実施形態では、その実施組成物は、10〜70、望ましくは20〜60、好ましくは30〜50、最も好ましくは35〜55ppmの成分(F)を含む。
【0025】
任意選択成分(G)、すなわち保存剤を、組成物の、微生物増殖を助長する傾向を軽減するために加えることができる。好適な保存剤としては、限定されるものではないが、重亜硫酸ナトリウム、微生物増殖に干渉し阻害する、最小限の毒性を有する還元剤、ならびに最小限の毒性を有する保存剤でもある安息香酸、およびその中性塩が挙げられる。当業者に既知の保存性、殺生物性、殺真菌性、抗菌性物質はいずれも、このような物質が、濃縮形態であれ、実施浴液形態であれ、洗浄剤のコロニー形成によって起こる、微生物感染、バイオフィルム形成及び他の有害な微生物作用を防止または軽減するのに十分な量で存在する場合には、保存剤(G)としての使用に好適である。
【0026】
本発明の洗浄溶液で使用可能な任意選択の溶剤組成物としては、溶剤が低揮発性および低可燃性の基準(viteria)を満たす限り、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノフェニルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、テトラエチレングリコールモノベンジルエーテル、ペンタエチレングリコールモノベンジルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノベンジルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルの水溶性エトキシレート(好ましくは、1分子当たり少なくとも平均2個のオキシエチレン部分を含有する)など、及びその混合物の1種以上を包含する。
【0027】
当業者に明らかな実施上の理由に対し、実際の使用温度で比較的発泡性の小さい本発明の洗浄組成物の成分を選択することが極めて好ましい。一般に、本発明のほとんどの組成物は、上記の試験によって測定された場合、通常の周囲温度では発泡容積が大きいが、通常使用され、洗浄に好ましい下記のいくつかの温度では、発泡量は劇的に少なくなる。このことは特定の実施例について下記に示す。上記のように測定される本発明の洗浄用組成物の発泡体積は、実際洗浄に使用する温度で、25、20、15、12、10、8.0、6.0、5,0、4.0、3.0、2.0、1.0または0.5mL以下であることが記載の順序にいっそうより好ましい。意図する使用の温度が未知である場合、発泡体積が60℃、54℃、43℃、または32℃において上記の値を超えないことが、記載の順序にいっそうより好ましい。
【0028】
通常、本明細書に記載される濃縮液が、この濃縮液の0.5〜5容積%、望ましくは1〜4容積%、好ましくは2〜3容積%濃度の水溶液が、上記のようにプラスチックを洗浄するために、おそらくは上述のようにpHを調整した後に、そのまま使用するのに好適であるような組成を有するものであることが好ましい。
【0029】
本明細書に記載される方法における表面と液体組成物との接触は、液体組成物の容器に表面を浸漬すること、または組成物を表面に噴霧すること、あるいは上記方法の混合を用いることなど、いずれかの常法によって達成することができる。一般に、液体洗浄組成物の凍結点のやや上からの沸点のやや下の間の温度が使用でき、少なくとも35、38、40℃の温度が一般に好ましい。温度の上限は、経済的考慮に基づけば、約70℃である場合が多い。好ましい温度範囲としては、42℃〜60℃、より好ましくは45℃〜57℃であり、好ましい温度は経済性と洗浄力の組合せにより著しく左右される。好ましい温度では、20〜120秒の接触時間が一般に好ましく、45〜75秒がより好ましい。
【0030】
すぐ前に記載したように洗浄した後、一般に、洗浄したプラスチックを、次に使用または表面仕上げする前に、洗浄面を水ですすぎ洗いして洗浄組成物の残留物を除去することが好ましい。最も好ましくは、少なくともこのような最後のすすぎ洗いは、脱イオン水または他の精製水を用いるべきである。通常、すすぎ洗いされた表面は、その後、次の仕上げ処理の前に乾燥させるべきである。乾燥はまた、温風炉、赤外線暴露、脱水乾燥機、またはマイクロ波加熱などのような常法により行ってもよい。
【実施例】
【0031】
本発明の実際は、下記の非限定的実施例からさらに理解できるであろう。
【0032】
実施例において下記の界面活性剤を試験した。
界面活性剤#1は、製造業者がβイミノ二プロピオン酸二ナトリウムと記述している両性界面活性剤である。
界面活性剤#2は、製造業者がエトキシル化直鎖アルコールと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#3は、製造業者がアルコキシル化エーテルアミンオキシドと記述している窒素含有界面活性剤である。
界面活性剤#4は、製造業者がイソデシルアルコールエトキシル化物および塩化物と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#5は、製造業者がオクチル/デシルアルコールエトキシル化物およびプロポキシル化物と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#6は、製造業者により塩素キャップされ、エトキシル化されている修飾直鎖C10−C14脂肪族ポリエーテル混合物と記述されている。
界面活性剤#7は、製造業者がベンジルアルコールエトキシレート,-C65CH2−O−(CH2−CH2−O)n−H,n=2と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#8は、製造業者がPEG−15ロジンと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#9は、製造業者が修飾第一級アルコールエチレンオキシド付加物と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#10は、製造業者がC14-15アルコールと12.9モル(平均)のエチレンオキシドから製造したと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#11は、製造業者が20モルのエチレンオキシドで置換したオレイルアルコールポリグリコールエーテルと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#12は、製造業者がカプリロアンホ二プロピオン酸二ナトリウムと記述している両性界面活性剤である。
界面活性剤#13は、製造業者がベンジルアルコールエトキシレート,C65CH2−O−(CH2−CH2−O)n−H,n−4と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#14は、製造業者が第一級ヒドロキシル基を末端に有する二官能性ブロックコポリマーと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#15は、製造業者により水中50%のEO/PO脂肪族アルコールブレンドと記述されている。
界面活性剤#16は、製造業者がベンジルアルコールエトキシレート,C65−CH2−O−(CH2−CH2−O)n−H,n=5と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#17は、製造業者がベンジルアルコールエトキシレート,C65CH2−O−(CH2−CH2−O)n,n=6と記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#18は、製造業者がエトキシル化フェノールと4モルのエチレンオキシドと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#19は、製造業者が6モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたフェノールと記述している非イオン性界面活性剤である。
界面活性剤#20は、製造業者がプロピレンオキシドキャップを末端に有する4モルのベンジルアルコールのエトキシレートと記述している非イオン性界面活性剤である。
【0033】
実施例1
一群の市販洗浄剤ならびに特定の界面活性剤および関連化合物を、単独で、かつビルダーマトリックスなしで、水中洗浄性能試験に供した。各洗浄剤の洗浄有効度を次のように試験した。
1.試験片として汚れたアルミパネル1×4インチを用いた。パネルは120°F、90秒暴露、3反復で試験した。
2.各々10%グラファイトを添加して改質した鉱油およびトウモロコシ油を各スクリーニングの汚れとして用いた。試験直前に、アルミニウム上に汚れのパッチを付着させた。
試験片を低衝撃連続循環実施浴により洗浄し、化学洗浄強度を測定した。泡立ち度についてのスクリーニングも行った。連続循環は発泡を促進した。洗浄効力を重量測定により評価し、配合物に除去された油汚れの割合(%)を、洗浄前後の汚れの重量を比較することにより算出した。この技術は分析化学で一般的な手順であり、当業者によく知られている。これらの実験の結果を表1および3に汚れの減少率(%)としてまとめる。
【0034】
【表1】

【0035】
下記の試験の方法は、発泡性の高い界面活性剤(違いは下表で示す)を使用することを除き、その他は常に同一であった。(パネルを120°F、90秒暴露、3反復で試験した)。
試験サンプル1および2を表2に示したように配合した。
【0036】
【表2】

【0037】
試験サンプル1および2を水中単独で数種の他の界面活性剤種とともに、洗浄性能に関して試験した。
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
界面活性剤#6は、塩素キャップ直鎖アルコールエトキシレートである。これは著しく発泡性のある材料であり、強度60%、曝気せずに実施しなければならなかった。
化合物トリ(プロピレングリコール)プロピルエーテルは不活発な溶剤であって、これは有害大気汚染物質(hazardous air pollutant, HAP)でもなく、また揮発性有機化合物(volatile organic compound, VOC)でもない。この種の化合物は、そのまま使用できる5%オーダーのレベルの家庭用洗浄剤での使用が知られており、溶解力と油保持性を付与するものである。洗浄剤浴液では0.05%の実施レベルで鉱油およびトウモロコシ油の双方を良好に洗浄できる。
【0041】
【表5】

【0042】
界面活性剤#7は、2モルのエチレンオキシドを含むベンジルアルコールエトキシレートであり、この材料が単独で存在する場合、試験汚れを良好に落とすことができる。
界面活性剤#8は、通常濃縮物で消泡剤とともに使用される発泡性界面活性剤である。この泡の量では、方法の変更が必要であった。曝気は用いなかった。試験パネルは、洗浄剤槽中の最大乱流の領域に手で置かれた。トウモロコシ油の除去の結果として、かなりの消泡が見られた。鉱油試験片を試験する際には、加減抵抗器のポンプ速度の設定を「60」から「30」という低い値に(最高能力に対する%)にしばしば引き下げた。そうしなければ、泡が容器からあふれ出していた。トウモロコシ油片は通常の「60」で実施し、これはトウモロコシ油試験片にいくつかの利点をもたらし、鉱油片よりも良好に洗浄できた。
界面活性剤#8は、エトキシル化ロジンである。これは極めて発泡性が高く、商業使用を可能とするためには、同重量の消泡剤と組み合わせる必要がある(界面活性剤#9)。
界面活性剤#9は、32〜37℃の示された曇点を有する直鎖アルコールエトキシレートである。これは界面活性剤#8単独とは異なり、その溶液は約42℃の曇点を示す。また、このレベルで界面活性剤#9を加えると、その系は完全に消泡する。この流動特性およびポンプ速度は、この試験サンプルでは、標準値「60」におけるものであった。
界面活性剤#10および界面活性剤#11は発泡性物質であり、ポンプ速度40%、曝気せずに実施しなければならなかった。
【0043】
実施例2
新たな配合物を調製し、実施例1の手順に従って洗浄性能を試験した。
【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
配合物Aは、2%、120°Fで極めて発泡性が高かった。
配合物Bは、透明なトウモロコシ油に対する洗浄力に著しい低下があることを示す。
配合物Cは、鉱油の洗浄に関しては良好であったが、トウモロコシ油の洗浄においては、すぐ不良になった。
配合物Dは、洗浄効率レベルを90%/90%に上昇させる第一位の原材料であった。
配合物Eは、イタコン酸をクエン酸に対する遊離酸性度比1:1で含む配合物であった。前記1:1の遊維酸性度比は、酸1当量当たりイタコン酸=65.05グラム;酸1当量当たりクエン酸一水和物=70.03グラムに対応する。この配合物は、クエン酸55g、水910.7g、45%KOH 33.5gおよび重亜硫酸ナトリウム0.8gを用い、配合物Eと同様に調製した。これらの配合物の洗浄強度は次の通りであった。
鉱油の除去 トウモロコシ油の除去
イタコン酸マトリックス 84.0% 69.7%
クエン酸マトリックス 85.6% 74.7%
この2つ異種酸の洗浄強度平均は、互いの推定実験誤差の範囲内であった。試験後のイタコン酸配合物の洗浄廃液は黄色であったが、これはスチール腐食がより高い証拠である。
【0047】
配合物Fは、溶解のために加熱を必要とする(m−ニトロベンゼンスルホン酸塩)であるリザボール(Reservol)Pを用いて製造された無リン配合物であった。後に、この濃縮物から過剰分が沈殿した。この系に発泡は見られなかった。黄色の程度は著しく、金属腐食を示した。リザボールP組成の比較は次の通り。
鉱油の除去 トウモロコシ油の除去
2%市販洗浄剤#9 99.0% 71.0%
2%試験サンプル2 85.6 74.7
配合物F 96.2 61.2
リザボールPの有機油除去抗力は最小であることが分かった。
【0048】
配合物Gは、トウモロコシ油除去を促進する試みのためにグリセリンを含んでいた。単一の理論に縛られるものではないが、グリセリンは除去メカニズムの一部として、トウモロコシ油中のトリグリセリドの再構成をいくらか促進すると考えられている。この試験には新たなアルミ試験パネルセットを用いた。この配合物は低発泡性であり、曇点はなかった。平均除去率は、トウモロコシ油除去効率では上昇を示したが、鉱油除去では低下を示した。
鉱油の除去 トウモロコシ油の除去
2%試験サンプル2 85.6 74.7
配合物G 75.9 78.7
【0049】
配合物Hは、BASFから得られる一般品界面活性剤#14を用いて調製された。この活性剤については表面張力低下力が比較的小さいEO−POブロックコポリマーとして記載されている。平均分子量は2900であった。さらに、いくらかのグリセンリンとエトキシル化プロポキシル化テルペン物質である界面活性剤#15を加えた。配合物Hをともによく混合し、好ましくない曇点は見られなかった。2%混合物は、試験装置内で適度な量の泡を生じた。平均洗浄強度の比較を次に示す。
鉱油の除去 トウモロコシ油の除去
2%試験サンプル2 85.6 74.7
配合物G 75.9 78.7
配合物H 83.4 60.2
以上の結果のまとめを表8に示す。鉱油の除去率が80%を超える配合物だけを挙げている。各組成物の欠点ももう一度記載している。
【0050】
【表8】

【0051】
有機および無機双方の油汚れに対する低発泡性の効率的洗浄剤に最も必要な要件は、配合物Dにより満たされると思われる。これは双方の目標汚れに対して優れた洗浄を備え、発泡性は120°Fで極めて低いか、または全く無く、しかも、濃縮物は、完全な安定性を有すると思われる。
【0052】
実施例3
新たな配合物を調製し、実施例1の手順に従って洗浄性能を試験した。
【0053】
【表9】

【0054】
【表10】

【0055】
中和剤を水酸化カリウムから配合物Dの水酸化アンモニウムへ変更して、配合物Iを生成した。この配合物も極めて高い曇点(140°F)を有し、試験装置内での発泡は、配合物Dの極めて低い発泡レベルとほぼ同等であった。次に、KOHで中和した配合物Dと水酸化アンモニウムで中和した配合物Iの平均洗浄率%を比較する。
鉱油の除去 トウモロコシ油の除去
配合物D 99.3 91.2
配合物I 96.2 78.9
【0056】
配合物JおよびKは、配合物Dとは異なるレベル(20ppt(parts per thousand))の界面活性剤#13を含んでいた。これらの配合物は双方とも低発泡性であり、配合物D同様、試験後にスチール腐食による顕著な着色は見られなかった。下記に、界面活性剤#13の添加量に従って挙げた4種類の配合物の洗浄力の比較表を示す。
界面活性剤#13の量 鉱油の除去 トウモロコシ油の除去
配合物D、無し(0ppt) 86.6 74.7
5ppt 100.0 76.9
10ppt 98.7 88.8
20ppt 99.3 91.2
界面活性剤#13のレベルとして改良されたトウモロコシ油洗浄力は上昇した。界面活性剤#13を含有する全てのサンプルの鉱油除去率は100%に近かった。
【0057】
配合物Lは、界面活性剤#13とグリセロールの添加物を含み、洗浄に予想外の有効性を示した。配合物Lは120°Fで極めて低発泡性であり、顕著な黄色も見られず、低腐食性を示した。洗浄力は鉱油に対し100%でありトウモロコシ油に対し平均98.2%であって、この洗浄力は既知の洗浄剤を超える明確な向上を示していた。140°Fを下回る曇点は見られなかった。
【0058】
配合物Mでは界面活性剤#12を用いた。この配合物は、10グラムのナキソネートSCを加えた後であっても曇りが顕著であった。この曇りを数日間静置したところ、水洗いでも消えなかった。この曇りは、この界面活性剤がこのpHでは不溶性であることを示すものと思われる。ここで、少なくともこのpHでのこの界面活性剤の使用が効果的であるとは考えられない。鉱油除去率平均57.0%、トウモロコシ油除去率53.1%は、これまでの配合物Lの結果より明らかに劣っている。
【0059】
配合物Nの性能は良好であったが、最高強度でも配合物Lほど良好ではなく、配合物Nの低いイオン強度はスチールの腐食を軽減する。
【0060】
配合物Lの付加的洗浄試験
通常の人の指紋ならびに明澄化したバターによる指紋を新しいTPOチップに付け、実施例1の手順に従い、配合物Lを入れた試験装置にて120°Fで実施した。120秒の休止時間の後、両種の指紋の跡は全てこれらのプラスチック表面から除去された。実施例1の手順に従ってTPOに油汚れを付け、指紋試験と同じ条件下で実施した。視覚的評価に基づけば、両汚れとも完全にTPOから落ちた。以上の試験は、定量試験結果と洗浄効率を決定するために通常製造業で用いられる肉眼的洗浄結果の間の良好な相関を示した。
【0061】
実施例4
配合物LとNに関する腐食試験を次の手順に従って行った。1×4インチの孔あきCRSパネルを切り取り、スコッチ−ブライトパッドでこすって表面腐食を除去し、重量を測定した。各槽3枚のCRSパネルを、表11に示された温度で、配合物LまたはNの32リットル実施浴に浸漬した。加熱ポンプを用いて浴温を一定に維持した。浴液を振盪させ、約100ml/分の速度での空気噴射を用いて曝空気した。曝気時間1時間の後、これらのCRSパネルを取り出し、乾燥させ、再び重量を測定した。2種の配合物の腐食率を比較した。
【0062】
【表11】

【0063】
腐食率の低下は様々であるが、クエン酸塩強度を引き下げると、腐食率が低下する。
【0064】
実施例5
低温における配合物Lの性能を実施例1の手順に従って試験した。2%、110°Fで3回の独立した試験により配合物Lを試験し、結果を表12に示した。TPOチップ上の通常の人の指紋に対する実施浴液の洗浄有効性も評価した。
【0065】
【表12】

【0066】
さらに、水接触角も清浄性の尺度として用いた。この尺度は、RIM(reaction-injection-molded)ポリウレタンを含有する内部離型(internal mold release, IMR)製品に関して重要である。RIMは、鉱油およびトウモロコシ油の汚れとは異なる種類の洗浄任務を与える。IMRは通常、ステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物であり、カルシウムなどの他の陽イオンを含む場合もある。(これらの石鹸は、金型表面に塗布される内部離型剤の形態で、他の基板上で用いることもできる。)IMRはそれが部品表面ににじみ出ることにより機能する。IMRはRIM基板への塗料の付着を妨害するので、IMRの除去は重要である。
【0067】
プラスチック表面、特にRIM上にステアリン酸塩石鹸が存在すると、水接触角の使用による検出が容易になる。この石鹸は極めて疎水性であるので、それが洗い流された際に、基板上の水接触角は10°〜20°小さくなると考えることができる。接触角の測定(前進角、4滴法)は次の通りであった。また、TPOに対する水接触角を測定した。但し、TPOはIMRまたはステアリン酸種の外部離型製品によっては通常形成されるものではない。
【0068】
【表13】

【0069】
RIMの接触角においては14.4°減少した。このことは、疎水性のステアリン酸塩の残留物が除去されたことを示す。TPOの水接触角のこのわずかな上昇は、おそらくは、未知ではあるが、比較的親水性の汚れの除去を正確に反映していると思われた。
【0070】
配合物Lはここでも2%、100°Fで試験し、結果を表14に示す。
【0071】
【表14】

【0072】
これらの数値は、洗浄剤温度110°Fの場合と全く同等である。低温では、トウモロコシ油の洗浄力にはやや低下が見られたが、鉱油洗浄力は変わらず強力である。TPOからの指紋の除去をこの温度での最初の実施で試験し、表15に示されているように指紋は完全に除去された。
【0073】
【表15】

【0074】
この接触角の数値は、110°Fで測定されたものと一致する。
【0075】
実施例6
表16に示すように、配合物Lの性能を通常の洗浄温度で既知の洗浄剤と比較した。試験は実施例4の手順に従って行った。
【0076】
【表16】

【0077】
市販の洗浄剤#6:2%(鉱油:84.0%、トウモロコシ油:35.8%)は、汚れ減少率の平均値は、実施例1から得られた98.6%および40.9%の平均結果とはやや異なる。この試験では、指紋はTPOから完全に除去されなかった。指紋はいくらか取れたが、まだ容易に視認できたので、この洗浄剤では指紋の除去は不十分であるか、全く除去されなかった。
表17は、本実施例および実施例1から120°Fで得られた鉱油およびトウモロコシ油洗浄に関する累積数値を比較したものである。
【0078】
【表17】

【0079】
市販の洗浄剤#6:2%、120°Fでの結果は、鉱油およびトウモロコシ油の双方で全く違うことが明らかである。トウモロコシ油の洗浄値は、配合物Lの場合よりも一貫してずっと弱い。
【0080】
130°Fでの市販の洗浄剤#6,2%は、TPOから指紋を完全には除去しなかった。また「油層(slick)」が残っており、かなりこすれて不明瞭になり、指紋の畝の鮮明さは低下していた。また、市販の洗浄剤#6:2%は140°Fでも指紋を除去しなかったが、130°Fで処理した後に見られたものより改善していた。
配合物L,2%は、130°Fにおいて双方の汚れに対して優れた性能を示す。TPO上の指紋は完全には除去されなかったが、140°Fにおいて市販の洗浄剤#6:2%と同様の性能を示した。
【0081】
配合物Lの性能は140°Fでも130°Fの場合と基本的に同じであり、トウモロコシ油では市販の洗浄剤#6よりも著しく良好であった。TPOからの指紋の除去は、130°Fの配合物Lで見られたものとほとんど同じであった。洗浄剤の平均接触角(°)は次の通りである。
【0082】
【表18】

【0083】
接触角は、2つの基面間においてはっきりした一致を示す。配合物Lの4つのTPO値の平均は88.5°であり、市販の洗浄剤#6の場合のTPOでは89.5°である。RIMでは、配合物Lの平均は70.1°であるのに対し、市販の洗浄剤#6では70.0である。各種内で温度による傾向は認められない。これらのRIM値は、配合物Lがステアリン産亜鉛の除去において市販の洗浄剤#6とちょうど同じ効果を有することを示す。
【0084】
配合物Lと市販の洗浄剤#6(ともに2%、いくつかの温度において)。洗浄強度を表19に示す(配合物Lの120°Fでの数値は実施例3から得られたものである)。
【0085】
【表19】

【0086】
配合物Lによる実施例は、全ての温度で本質的に完全な鉱油の除去を示す。これらの数値の標準偏差は100°Fおよび110°Fに関して上記に示されているもののオーダーである(±1%または2%)。その目標温度における市販の洗浄剤#6の数値もまた、一貫してこの優れた範囲にある。配合物Lはトウモロコシ油の除去においてより強力である。この配合物の洗浄強度は120°Fおよび130°Fの領域にピークを有すると思われるが、全ての温度でのその性能は標準的な標準的な市販の洗浄剤#6よりも有意に良い。100°Fであっても、配合物Lのトウモロコシ油洗浄強度は、市販の洗浄剤#6の最高値(130°F)よりも50%良好である。
【0087】
実施例7
取り組まなければならない低温洗浄のもう1つの態様は、洗浄剤の温度を通常の130〜160°Fから引き下げた際に見られる高い微生物増殖率である。低温プラスチック洗浄剤を導入する場合の主要な問題の1つは、特に、相当な長さの「停止時間」がある処理浴では(一晩または週末などの他の長期にわたって周囲温度に戻ることを意味する)、その洗浄剤が微生物の増殖を助長するかどうかということである。この試験は、8時間高温、16時間周囲温度の規則的な高温周期、24時間連続、1週間に7日など、いずれの所望の温度および加熱周期で行うこともできる。これは、選択された作動温度で1日一交替の中程度の使用強度をシミュレートする。
【0088】
この試験では、一定の温度設定を用いた。設定は、溶液32,653グラム(水道水32,000グラムと2%目標洗浄剤製品653グラム)、およびポンプ循環が一定方向の恒温装置よりなされた。大気条件を常に維持するために、適度な曝気を連続的に行った。
この溶液に、配合物Lの2%v/v溶液などのような、酸性洗浄剤浴内で一定期間培養され、かつそこで、生存するように馴化された細菌および真菌検体から採取した接種物を加えた。コンシステンシーに関しては、工業用酸性洗浄剤槽から採取した濃厚な粘液から接種標準濃縮物を調製し、培養し、適当な濾過により均質な固体を分離し、その後の使用のために2.0mlずつ冷凍した。この方法により、各試験では、一貫した初期微生物集団を評価した。
【0089】
微生物集団レベルは、微生物分野の熟練者に周知の商業供給源から入手可能な、微生物増殖用の寒天ディップスライドを用いてモニタリングした。集団レベルは、製造業者が提供している説明書に準拠する好適なインキュベーションの後、曝したディップスライド(exposed dip slides)と既知の集団レベルの公開写真を目で比較することにより判定した。さらに、バイオフィルムおよびその他の肉眼的増殖を定期的に目でモニタリングした。各試験の後、装置の目に見える残渣を機械洗浄し、水道水で数回すすいだ。試験間の系の滅菌は試みなかった。
【0090】
110°Fにおける配合物Lの2%実施浴の微生物増殖の特徴を下記の手順に従って試験した。この試験では、24時間中に、高温期8時間を挟み、その後、1日周囲条件とする「最悪の」ラインのシミュレーションを設けた。さらに、週末は一様に周囲条件とした。温度周期は、加熱/攪拌装置にタイマーを接続して行った。約8.25ガロンタンクで、絶えず弱い曝気を行った。細菌は110°Fで非常に良く制御され、ディップスライドにはわずかな数値しか読みとれなかった。試験後期には数個の真菌コロニーが形成し始めた。次の表は、記録された読み取り値を示す。設定および接種は月曜日の朝に行った。
【0091】
【表20】

【0092】
ディップスライドの読み取り値が好ましいものであったにもかかわらず、タンク中では相当量の真菌増殖が見られ、これらは特定の硬質面に存在していた。この真菌増殖は、浴内に分散していなかったため、ディップスライドでは検出されなかった。
【0093】
表21に示したように、安息香酸を配合した配合物Lの組成を変動させた新たな配合物L1,L2,L3を調製した。
【0094】
【表21】

【0095】
配合物Lに、その1000グラム当たり2.5グラムの安息香酸を配合した配合物L1を、中性(または酸性)水において安息香酸の溶解度に限定があるため、表に示された順序で作製した。配合物L1の2%溶液を調製すると、溶液100に対する安息香酸/安息香酸カリウムの濃度は、0.005、すなわち0.005%となった。
【0096】
また、安息香酸レベルの高い配合物L2も調製した。配合物L1の洗浄性能は実施例1の手順を用いて試験した。110°Fの実施溶中で、2%濃度の配合物L1は、92.0%鉱油を除去し、そして94.2%トウモロコシ油を除去した。さらに、配合物が安息香酸を含む場合、泡の連続保持性は低くなり、許容し得るものであった。
配合物L2の微生物増殖を、配合物Lで示した手順に従って試験した。この試験では、選択された温度で8時間、次いで周囲条件で16時間の一定周期とした。循環と周期的加熱を行って3日後、この場合も無添加の配合物Lの場合と同じタンクの表面に真菌の増殖が認められた。増殖量は配合物Lの両分の実験で見られた量よりも少なかったが、顕著なものであった。この増殖量は最初に見られた後は、進行しなかった。月曜日の朝に培養を始めたものについての試験のディップスライド結果を表22に示す。読み取り値は真菌/細菌として表されている。
【0097】
【表22】

【0098】
ここでも、タンク内の真菌増殖の量は、真菌が表面に付着しているために、ディップスライド読み取り値を反映しているとは思われなかった。配合物L2は、細菌は増殖させるが、真菌の増殖は適度に抑えるものと思われる。嫌気性菌を含め、数種の細菌は明らかに存在していないことに注意されたい。
【0099】
第3配合物、配合物3を、配合物L(pH3.58)に対比したとき、還元濃縮物のpHが3.36になるように調製した。この濃縮物は平衡状態でやや濁りのある混合物であり、この濁りは、コロイド状の安息香酸と考えられる。配合物L3の微生物増殖を、配合物Lで示した手順に従って試験した。循環と周期的加熱を行って3日後、非常に少量の真菌がタンク内に見られた。長期の増殖パターンを観察するため、翌週も試験を続けた。月曜日に調製した溶液に関し、試験結果を表23に示す。
【0100】
【表23】

【0101】
配合物Lでの最初の試験に関して記載した真菌の表面増殖は、配合物L3でも存在したが、少なかった。また、真菌は増殖を示すのも遅かった。
【0102】
実施例8
表24に従って新たな配合物を調製した。配合物O〜SをTPO上の指紋に対する洗浄性能および発泡性に関して試験した。指紋の除去は視覚的に判断した。
発泡試験は、補助加熱と曝気を追加したこと以外は、通常の試験設定条件を用いて行った。実際の洗浄に使用できる洗浄組成物1000mlを、少なくとも2500ml容のガラス栓付きメスシリンダーに入れた。このシリンダーと内容物をマントルヒーターにより温度を平衡状態としたが、温度制御浴などの便利な方法も使用可能である。液体はポンプによって強く循環させた。補助空気を用いて、空気捕捉導力レベルを作り出し、それにより発泡により洗浄剤系を分離する。例えば、循環ポンプ単独で作り出される泡は、通常、その洗浄剤が安定な泡レベルで実施用可能であることを示した。噴霧洗浄操作により近い使用と考えられる曝気を施すことにより、試験された系および条件の約半数において、管からあふれ出すに十分な量の泡を形成した。泡の一番上とシリンダー中の底にある液体組成物の一番上の目盛りの差を記録することにより、シリンダーの目盛りから泡の体積を求めた。
【0103】
試験を行うに当たり従った基本法は次の通りである。
1.温かい水道水で、最初の溶液温度を約105°Fとして洗浄剤溶液1000mlを調製する。
2.その洗浄剤溶液をシリンダーに注ぎ、循環ポンプを始動する。
3.必要であれば、約108°Fまで液体を加熱し、この時点で加熱を止め、110°Fまで昇温させる。
4.曝気を始める。泡が管をあふれ出ないように動的泡レベルを観察する。目標は、その系で可能な限り多くの泡を形成することである。最大の泡生成が達成されるまで、空気治量を増大する(あるいは、場合によっては引き下げる)。この時点で、最大泡レベルが管をあふれ出るかどうか、または飛沫に同伴される空気が最大レベルであっても、その溶液が泡立ちあふれることに耐えるかどうかに注意する。
5.目的の温度に達したところで、カラムに泡を満たす(できる限りたくさん泡立てる)。ポンプによる循環を維持しつつ、曝気を止める。泡は管内のガラスに付着しているので、120秒の終了時に「フル」ライン(液体レベル)から泡の一番上までの泡のレベルを記録する。流体の流れは変動し得るので、多くの場合、これは大略値となる。このレベルは「動的な泡」である。
6.管を再び泡で満たす。この時、曝気と循環ポンプは止める。120秒後、「フル」ラインから泡の層の中央部の泡の下の点までの、最終の泡レベルを記録する(この読み取り値は、この時点での泡の層の安定状態であるため、まだ発泡する可能性がある)。このレベルが「安定な泡」である。
7.循環ポンプと曝気を再始動する(可能な限り強く)。もう一度加熱を始め、約113°Fまで温める、115°Fで、ステップ5および6を繰り返す。
8.循環ポンプと曝気を再始動する(可能な限り強く)。もう一度加熱を始め、約118°Fまで温める、120°Fで、ステップ5および6を繰り返す。
9.発泡傾向の痕跡がなくなるまで装置を繰り返しすすぐ。完全すすぎとパージを数回行ってもよい)。
試験の結果を表24に示す。
【0104】
【表24】

【0105】
配合物O〜Sについても実施例1に従って試験し、配合物Lの結果と比較した(表25参照)。
【0106】
【表25】

【0107】
配合物P材料が特に良好であった。配合物RおよびSは十分な値であったが、洗浄されたパネルの外観が、特にトウモロコシ油の場合に、グラファイトの残留により明らかに黒ずんでいた。配合物Pでは、洗浄の終了時には非常にきれいなアルミニウムチップが得られた。包装安定性を妨げるほどの濁度を持つことが分かった配合物は無く、商業用として許容されないほど発泡の過剰な配合物も無かった。
【0108】
実施例9
新たな配合物を調製し、安定性の試験を行った。次の配合物について、濃縮物と実施槽液の低温安定性(通常の冷蔵庫、35°F〜45°F)を試験した。
【0109】
【表26】

【0110】
調製した配合物T濃縮物はやや濁りがあったが、安定であることが明らかであった。2%槽液では濁りは全く無かった。配合物Uは35°Fで完全に安定であることが明らかであった。配合物Uの実施浴液は、実施浴液中で正味の活性材料を確保するために3%で作製したが、安定であった。
【0111】
配合物Tについては、1%と2%の2つの濃度で微生物増殖に関しても試験した。この試験は配合物L2で用いた手順に従い、温度105°Fで8時間、周囲温度で16時間、1週間に7日間で行った。試験は、1日目の火曜日に初期構成して始め、12日目の月曜日に終了した。表27に示したディップスライドの読み取り値は、13日目に採集して読み取った。
【0112】
【表27】

【0113】
濃度2%の配合物Tのディップスライド読み取り値にはやや変動があった。その微生物抑制効果は経時的にその有効性が高まるものと思われ、真菌および細菌の両集団とも12日までにゼロとなった。試験中、硬質面にも他の部分にも目に見える真菌の蓄積は見られなかった。
【0114】
最高105°Fの周期で1%配合物T(2.5g/M安息香酸、パッケージpH2.75)を用いて微生物培養を行ったところ、ディップスライドにもタンク装置にも細菌および真菌がたくさん観察された。さらに、水曜日までに槽内の上記の硬質面にも真菌増殖が肉眼的に見られた。
【0115】
実施例7の配合物L2%が入った別のタンクを準備した。配合物Lは、目に見える真菌として相当速い応答を確保するために選択した。微生物増殖試験は、温度が毎日105°Fではなく115°Fに上昇するように設定したこと以外は、配合物L2の試験に用いた手順に従って行った。試験は火曜日に始めた。金曜日までに少量の真菌が肉眼で確認できた。最初の配合物Lの試験の場合と同様に、月曜日までに、その増殖は拡大した。
【0116】
本発明の実施形態を例示および記載してきたが、これらの実施形態は本発明の全ての可能な形態を例示および記載するものではない。本明細書で使用する用語は、限定ではなく説明のための用語であり、本発明の精神および範囲を逸脱することなく様々な変更を行えるものと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
(A)少なくとも1種類のカルボン酸と、
(B)1種類以上の芳香族水溶性または水分散性非イオン性界面活性剤と、所望により下記成分(C),(D),(E),(F)及び(G):
(C)成分(A)と同じカルボン酸、成分(A)とは異なるカルボン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されたカルボン酸の1種類以上の塩、
(D)水中で成分(A)〜(C)の安定で均質な溶液または分散液を形成するのに十分な量のヒドロトロープ、
(E)pH調整剤、
(F)1種類以上の多価アルコール、および
(G)1種類以上の保存剤
の1以上とを含み、さらに約2重量%を超えない、リン含有成分を含む洗浄組成物。
【請求項2】
実質的に揮発性有機溶媒を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも25〜5000ppmの量の成分(D)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(A)が少なくとも1つのカルボキシル基と、所望により付加的なヒドロキシル基またはカルボキシル基を各々含む分子を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
成分(A)がグルコン酸、イタコン酸、ヒドロキシ酢酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸水素カリウム、酒石酸、マロン酸、クエン酸およびその混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
成分(B)が1種類以上のアルコキシル化された芳香族アルコールを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
成分(B)が4〜6モルのエトキシル化物を有する少なくとも1種類のアルコキシル化された芳香族アルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
成分(B)がベンジルアルコールエトキシレートおよび/またはフェノールエトキシレートから選択された少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
成分(D)がトルエンスルホネート、キシレンスルホネートまたはクメンスルホネートの、少なくとも1種類のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールn−プロピルエーテルから選択された1種類以上の水溶性溶剤からなる追加成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
固体表面を洗浄するために、
1)固体表面を、請求項1に記載の洗浄組成物に、下記の条件a及びb:
a.組成物が少なくとも35℃〜約70℃の温度にあること、
b.表面が約20〜約120秒の接触時間の間、組成物と接触すること
の下で、接触させること、および
2)その後、所望により、その表面を水ですすぎ洗いすること
を含む、固体表面を洗浄する方法。
【請求項12】
接触工程1)の間に、
a.前記組成物が約42〜約60℃の温度にあり;かつ
b.前記表面が、約20〜約120秒の接触時間の間、前記組成物と接触する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水と、
(A)約0.2g/l〜約6.0g/lの少なくとも1種類のカルボン酸からなる成分と、
(B)約50〜約3000ppmの少なくとも1種類の界面活性剤からなる成分と、
(C)所望により、成分(A)と同じカルボン酸、成分(A)とは異なるカルボン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択されたカルボン酸の1種類以上の塩と
(D)約25〜約5000ppmのヒドロトロープと、
(E)前記組成物のpHが1.0以上、4.0以下となるような量のpH調整剤と、
(F)所望により、1種類以上の多価アルコール成分と、
(G)所望により、1種類以上の保存剤と
を含む、洗浄組成物。
【請求項14】
(B)約100〜約1000ppmの少なくとも1種類の界面活性剤成分と、
(D)約25〜約5000ppmの、トルエン、キシレンまたはクメンのスルホネートの少なくとも1種類のアンモニウムまたはアルカリ金属塩から選択されるヒドロトロープと、
(E)約10〜約2000ppmの1種類以上の多価アルコール成分と
を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記成分(A)がグルコン酸、イタコン酸、ヒドロキシ酢酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸カリウム、酒石酸、マロン酸、クエン酸およびその混合物からなる群から選択され、
前記成分(B)が芳香族環と、一般式(I):
【化1】

[式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、互に独立に、水素およびメチルから選択され;R5は水素であり;nは2、3、4、5または6である]
のエトキシレート単位とを有する1種類以上の化合物を含有するアルコキシル化された芳香族アルコールから選択され前記式(I)の単位は、前記芳香族環に、直接またはエーテル(酸素)結合を介して、もしくはオキシメチレン(−CHR8O−)結合(ここで、R8は水素またはC1−C4アルキルである)を介して、結合しており、
所望により、成分(C)が成分(A)と同じカルボン酸、成分(A)とは異なるカルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択されたカルボン酸の1種類以上の塩を含み、
成分(D)は約25〜約5000ppmのヒドロトロープを含み、
成分(E)は、前記組成物のpHが1.0以上、4.0以下となる量のpH調整剤を含み、
所望により、前記(F)は1種類以上の多価アルコール成分からなり、及び
所望により、成分(G)は1種類以上の保存剤からなる
ことを特徴とする、請求項13に記載の組成物。

【公開番号】特開2008−101193(P2008−101193A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−215219(P2007−215219)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】