説明

低酸素濃度下において骨誘導性タンパク質で被覆された金属インプラント

本発明は、(a)溶解した骨誘導性タンパク質を含有する溶液を提供する工程、(b)工程(a)の溶液と金属または金属アロイの表面を含むキャリアとを接触させる工程、(c)該キャリアの表面を該溶解タンパク質で被覆する工程、および(d)工程(c)で得られる被覆キャリアを乾燥する工程を含み、工程(b)〜(d)が低酸素濃度下で行われるデバイスの製造方法に関する。本発明はまた、本発明の方法により得られうるデバイスを含む。さらに、本発明は、上記デバイスを含有する組成物ならびにオッセオインテグレーションおよび新規骨形成の促進のために使用される医薬組成物の調製のためのデバイスの使用に関する。最後に、本発明は、本発明のデバイスを含有するキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、(a)溶解した骨誘導性タンパク質を含有する溶液を提供する工程、(b)前の工程の溶液と金属または金属アロイの表面を含むキャリアとを接触させる工程、(c)上記キャリアの表面を上記溶解タンパク質で被覆する工程および(d)工程(c)で得られた被覆キャリアを乾燥させる工程を含み、工程(b)〜(d)が低酸素濃度下で行われるデバイスの製造方法に関する。本発明はまた、本発明の方法により得られうるデバイスを含む。さらに、本発明は、上記デバイスを含有する医薬組成物に関し、オッセオインテグレーション(osseointegration)および新規骨形成の促進に使用される医薬組成物の調製のためのデバイスの使用に関する。最後に、本発明は、本発明のデバイスを含むキットに関する。
【0002】
過去10年間、骨インプラント接触およびその生体適合性に関するインプラントの質を改善するための多くの方法が記載された。インプラントの需要は、かかるデバイスが骨に堅固に固定され、例えば高圧に対して安定(例えば、歯、関節)でなければならないので極めて大きい。埋め込み後の初期組織応答は、細胞増殖および分化を刺激する周囲の組織から放出される特異的な増殖因子の存在に依存する。
【0003】
十分に確立された歯科インプラントの固定方法が存在するが、依然として時間とともにそれらが緩む傾向がある。それぞれのインプラントの埋め込み(オッセオインテグレーション)を改善するために種々のアプローチが記載された。これらのアプローチは、生分解性材料(例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト)での種々の供給源(例えば、セラミック、金属等、EP-B1 0 657 146参照)のインプラントの被覆および金属表面のエッチングのための種々の方法を含む。ナノメートルおよびマイクロメートル範囲の表面の不規則性がコラーゲンおよび細胞の内部への成長を改善すると考えられている(T.Albrektsson in:Handbook of Biomaterials(Black, JおよびHastings, G(編), Chapman & Hall, London, 1998, pp500-512)。
【0004】
セラミック表面での金属インプラントの被覆は、例えば、焼結プロセス間にインプラント材料に処理される2つの粉体、1つの金属粉体および1つのリン酸カルシウムを含有する粉体の混合物(EP 0467948)として記載される。
【0005】
合成セラミック材料を製造するための種々の他の焼結法が記載されている(Offenlegungsschrift DE 2928007, US-特許4,882,196)。主な焦点は、インプラントの取り込みを改善する(USP 6,312,472 3; USA-20020038149)リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム (Y. Tsui, 1998)での金属表面の被覆に当てられた。記載されたリン酸カルシウムおよび種々の他の無機生体適合材料は孔(pore)を形成する特徴を有する。天然の骨はインプラントの無機リン酸カルシウム層を生分解しながら同時に孔内に成長するので、これらの孔は天然の骨へのインプラントの取り込みを増強すると言われる(WO 00/72776; USP 4,051,598号; EP 0806211, H.Jennissen, 2001)。また、層からなる合成材料インプラントが記載されるが、しばしばチタンまたはチタンアロイのような金属またはアロイを含有するインプラントの下方の層(WO98/43550; WO 00/72777)はリン酸カルシウムの層で被覆される(EP0478532)。典型的には、リン酸カルシウムでの被覆は温水処理(EP 0548365)または湿潤および沈殿(USP 6,129,928号、WO 97/41273号)またはプラズマ溶射(USP 5,697,997、USP 6,113,993、EP 0548365、EP 0739191、Lichtinger, 2001)により達成される。
インプラントの本体上のリン酸カルシウムの層は、一層内の材料の混合物(WO 98/48862、USP 5,934,287号; US出願A-20020033548号)または多層形成(WO 02/09788、USP 6,322,728号)のいずれかの一部でありうる。
【0006】
表面の修飾に加えて、タンパク質またはタンパク質混合物(主として成長因子)が整形外科または歯科インプラントに被覆されるいくつかの方法が記載されている。これらのタンパク質は、インプラントの取り込みを有意に促進すると言われている(Lichtinger, 2001;Shah, 1999)。金属表面へのタンパク質の直接被覆に関するいくつかの方法が記載されている。しかし、これらの方法はいくつかの欠点、特に骨形成の誘導が必要な時間タンパク質を維持することができない金属表面からのタンパク質の迅速な放出を有する(Lichtinger, 2001)。
【0007】
タンパク質の迅速な放出(自発的バースト)を回避するために、K.Endo(1995)およびVoggenreiterら(2001)は、金属表面への共有結合によるタンパク質の固定化を記載している。それぞれのタンパク質の活性が維持される。しかし、共有結合は、タンパク質の免疫原性に対して影響を有する構造変化を誘導しうる。
【0008】
多くの研究者は、軟骨内骨形成のための骨形成因子の良好な埋め込みは、タンパク質が、適用の部位にタンパク質を維持する適切なキャリア材料またはマトリックスに会合していることを必要とすると述べてきた(USP5,344,654)。これらの問題を解消するために、USP5,258,029号は、「本発明の骨形成タンパク質は薬学的に許容されうる固体または流体キャリアを用いて骨形成的に有効な量で通常製剤化されるだろう。好ましくは、製剤は、骨および軟骨を発生するための構造を提供することができるマトリックスを含む。潜在的なマトリックスは、生分解性でも非生分解性でもよく、化学的または生物学的に規定されうる」ことを教示している。TGF-β-タンパク質およびキャリアの懸濁物は乾燥され、続いて負荷を支える補綴物に適用されうる。これらの方法の欠点は、埋め込みの間に磨耗しうる動物由来のコラーゲンまたは無機成分の使用である。
【0009】
タンパク質の急速なアウトウォッシュを解消するさらなる方法は、超親水性生体接着用面を達成するためにクロモ硫酸でチタンアロイ表面を処理するLichitingerら(2001)に記載されている。しかし、クロモ硫酸は、表面に残存するかかる酸の残留量がタンパク質の酸化、続いて構造および機能の変化を生じ得、さらに患者に害を生じうるので医薬品または医療用具の製造の間は回避されるべきである。
【0010】
さらなる方法は、チタニウム表面上の厚い酸化物層の孔配置、または内部空間、チャンネルもしくは窪み(recess)により形成される貯蔵所(depot)を使用するWO 00/72777およびWO 00/72778に記載されている。しかし、タンパク質は金属および金属イオンの存在下で酸化される傾向があることが知られている(Liら、(1997), Ann.Occup.Hyg. 41, suppl. 1, 379-383)。従って、上記デバイスの欠点は、タンパク質がインプラントの表面上で酸化されることでありうる。酸化は、免疫原性反応の形成を生じうる構造変化を生じうる。
【0011】
従って、本発明の基礎となる技術的課題は、骨増強を改善するための手段を提供することである。この技術的課題は、特許請求の範囲に特徴付けられる態様により解決される。
【0012】
従って、本発明は
(a) 溶解した骨誘導性タンパク質を含有する溶液を提供する工程;
(b) 工程(a)の溶液と金属または金属アロイの表面を含むキャリアとを接触させる工程;
(c) 上記溶解タンパク質で上記キャリアの表面を被覆する工程;
(d) 工程(c)で得られた被覆キャリアを乾燥させる工程
を含み、ここで工程(b)〜(d)が低減した低酸素濃度下で行われるデバイスの製造方法に関する。
用語「製造」は、明白に言及される工程のほかにパッケージング等の製造の工程を含む。好ましくは、本発明の方法は、適切なロボットによって補助される自動化製造方法として行われる。用語「製造(producing)」および「製造(manufacturing)」は本発明の意味では交換可能である。
本発明に従って使用される用語「デバイス」は、少なくとも2つの成分を含有するものをいう。上記成分の1つはキャリアである。本発明の意味内で使用されうるキャリアとしては、完全な金属またはアロイキャリア等の固相キャリア、および金属またはアロイマトリックスが挙げられる。さらに本発明は、中空空間および窩洞を含む固相キャリアを含む。さらに、上記キャリアは、好ましくはマクロ孔およびミクロ孔の形成のために拡大した表面を有する。好ましくは、上記マクロ-またはマイクロ-孔はキャリアの表面層に制限される。本発明はまた、少なくとも2つの異なる成分からなるキャリアを含み、ここで金属またはアロイ成分はコア(core)またはコア層として使用され、例えば、セラミック材料が表面層として使用される。キャリア表面は、骨誘導性タンパク質に対して高い親和性を有するが、それにもかかわらずインビボでの上記タンパク質の放出を可能にする。本発明に従って、上記キャリアは、好ましくは、下記の金属またはアロイである。本発明のデバイスにより含まれるキャリアは、インビボでのデバイスの投与に適切な形態になされうる。これはまた、インプラントまたは完全な外科補綴物(chirurgic prostheses)の形成を含む。これらの補綴物は、好ましくは、さらに下記に詳細に記載されるようにメタリック表面から形成されるか、またはメタリック表面で被覆される。補綴物は、チタンアロイまたはステンレススチールのようなチタンまたはチタンアロイから製造される。
【0013】
上記デバイスの別の成分は、下記に詳細に説明される骨誘導性特性を有するタンパク質またはポリペプチドである。タンパク質またはポリペプチドは、キャリアの表面上に固定化される。キャリアへの上記タンパク質またはポリペプチドの結合は可逆性であることが好ましい。従って、骨誘導性特性を有するタンパク質またはポリペプチドは共有結合によりキャリアのメタリック表面に結合されないと考えられる。好ましくは、カップリングは、ファンデルワールス力等の静電的相互作用、疎水性または非静電的相互作用により起こる。骨誘導性タンパク質の可逆的結合のために、一旦デバイスが骨窩洞等の適切なインビボ環境にもたらされると上記タンパク質の分離が可能になる。好ましくは、上記タンパク質の分離は緩徐な放出であり、デバイスを取り囲む組織へのタンパク質の拡散を可能にする。従って、実施例に示されるように、デバイスは、新規骨の形成およびマトリックスの表面への骨の内部への成長を促進する骨誘導性および天然のタンパク質の局所存在を可能にする。本発明のデバイスはインプラントであり得、このことは本明細書中で使用される用語「デバイス」および「インプラント」が交換可能であることを意味する。用語「インプラント」が、完全にまたは部分的に上皮表面下にもたらされるように設計される本発明により提供される全てのデバイスをいうことは周知である(Koeck, B.およびWagner, W. (編) 1996)。インプラントは、平らな、密集した(dense)、または複雑な形状であり得、すなわち、任意の通常使用される、または手術可能なデバイスが使用されうる。上記インプラントは、例えば長骨の置換のために、または義歯の基部として使用される単純な円筒形形状から頭部扁平骨および股関節、膝または肘のような人口関節の置換に使用される平らなインプラントまで多岐にわたる。
骨誘導性タンパク質での本発明のデバイスの被覆は、下記に記載される骨芽細胞および軟骨細胞への間葉幹細胞の形質転換を開始し、刺激することが意図される。従って、本発明のデバイスの一部のみが被覆される必要があり、これはそれぞれの骨組織に向けられると考えられる。上記部分は、好ましくは、全表面または骨組織に並列する少なくともその一部である。例えば、欠けた歯を補充するために使用される歯科インプラントは、顎骨にネジ止めされるネジ込み部分および人口歯冠を固定するために使用される伸長部(ソケット)を含有する。従って、ネジ部を骨誘導性タンパク質で被覆することが唯一必要である。しかし、骨誘導性タンパク質で被覆されない部分は、リン酸カルシウム、コラーゲンまたは類似の因子等の他の因子で被覆されうる。
【0014】
用語「骨誘導性」は、骨芽細胞への間葉幹細胞および前骨芽細胞の形質転換の能力をいう。骨誘導のための必要条件は、上記骨芽細胞前駆体および他の間葉細胞が活性化される周囲の組織にデバイスにより分配されるシグナルである。本明細書中で使用される骨誘導は、骨前駆細胞、骨芽細胞への間葉細胞の分化を含む。さらに、骨誘導はまた、骨の成熟した細胞である骨細胞への上記骨芽細胞の分化を含む。従って、骨誘導は、骨を形成することができる骨細胞への未分化または十分に分化していない細胞の分化を必要とする。上記のように、本発明に従って使用される骨誘導性タンパク質は移植後にデバイスから緩徐に放出され、周囲の組織中に効率的に分配される。さらに、本発明に含まれるタンパク質およびポリペプチドはインビボで骨誘導性特性を有する。例えば、形質転換成長因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは骨誘導性特性を有するメンバーを含むことは当該分野で周知である。特に良好な骨誘導性特性を有する上記TGF-βスーパーファミリーの個々のメンバーが下記に列挙される。結論として、表面上にあり、およびキャリアから放出された後の本発明のデバイスの骨誘導性タンパク質は、デバイスの埋め込みの側を包囲する組織の骨細胞前駆体の骨誘導性シグナルとして働く。
【0015】
用語「骨誘導性タンパク質」または上記のような用語は、成長分化因子-5等の骨誘導性特性を有する形質転換成長因子-β(TGF-β)スーパーファミリーメンバーをいう;下記参照。驚くべきことに、これらの骨誘導性タンパク質は、実施例に示されるメタリック表面に高い親和性を発揮する。メタリック表面の吸着プロセス等の重要な必須条件は被覆溶液中のタンパク質の十分な溶解性である。
【0016】
本発明のデバイスまたはインプラントは、好ましくは、上記の任意のタイプのメタリック表面である。溶解骨誘導性タンパク質を含有する溶液と本明細書中に記載される金属または金属アロイの表面を含むキャリアとを接触させる前に、それぞれのメタリック表面は好ましくは、任意の表面汚染物質を除去し、被覆の良好な接着強度を促進するために清掃されるかまたは処理されることが考えられる。この目的に適したいくつかの方法は当該分野で周知であり、また実施例に例示されている。例えば、本発明のデバイスのメタリック表面は、例えばアセトン、エタノールのようなアルキルアルコールでリンスされ得、次いで滅菌蒸留水または脱塩水で十分にリンスされうる。
【0017】
本発明のデバイスは、好ましくは、多孔性、ビーズまたはメッシュ表面修飾により拡大した表面を有する。かかる修飾は、化学的または機械的手段を含む当該分野で周知の方法により導入されうる。さらに、ナノメートルおよびマイクロメートル範囲の凹凸を有する増大した表面はオッセオインテグレーションに有利であることが示されている。
【0018】
医薬製品中のタンパク質の安定化に関して多くの方法が記載されている。しかし、本発明の基礎となる実験は、液体または凍結乾燥タンパク質製剤におけるタンパク質安定化の周知の技術は金属表面への吸着タンパク質に直接適合され得ないことを示した。上記の最新技術に開示された方法による金属表面、例えば、チタンまたはチタンアロイへのタンパク質の被覆は、タンパク質の凝集または酸化を生じるタンパク質の修飾種の発生を引き起こす(詳細については実施例5参照)。さらに、還元剤を添加しても酸化タンパク質の量が減少しない(詳細については実施例10参照)。本発明の方法のおかげで、埋め込み後に骨を効率的に増強するデバイスを製造することができる。有利なことに、酸化タンパク質の免疫原性の増強による炎症等の望まれない副作用は回避されうる。さらに、本発明の方法は、あまり時間がかからず、費用対効果が優れた本発明の医療デバイスの製造方法を可能にする。なぜならば、リン酸カルシウムまたはコラーゲン層を有するインプラントの金属またはアロイ体(corpus)の被覆が必要でないからである。この文脈での別の利点は、感染性ウイルスを伝染しうるコラーゲン等の潜在的に汚染した材料が製造方法から排除されることである。
【0019】
本発明の方法の好ましい態様では、工程(b)〜(d)は、10体積%未満、好ましくは5%未満、最も好ましくは、2%未満の酸素濃度下で行われる。
【0020】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、工程(b)〜(d)は25℃未満、好ましくは15℃未満、最も好ましくは8℃未満の温度で行われる。
【0021】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、上記金属または金属アロイはチタンまたはチタンアロイである。
本発明の金属/金属アロイは生体適合性であることが好ましい。用語「生体適合性」は生物系に対して毒性または損傷効果を有さない性質を意味する(Williams D.F. 1999)。上記特性はとりわけ下記に明確に言及されるものを含むチタンまたはチタンアロイについて知られている。
【0022】
より好ましくは、チタンアロイは、少なくとも50%のチタンを含有するチタンアロイである。さらに好ましくは、上記チタンアロイはTi-Al-V-アロイ、Ti-Al-Feアロイ、Ti-Al-Nb-アロイまたはTi-Mo-Zr-Al-アロイであり、最も好ましくはTi6Al4Vである。
【0023】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、被覆は、上記タンパク質溶液にメタリック表面を浸漬することにより行われる。
【0024】
本発明の方法の別のさらに好ましい態様では、被覆はメタリック表面に上記タンパク質溶液を滴下することにより行われる。
【0025】
被覆が、上記タンパク質溶液をメタリック表面に噴霧することにより行われる方法もまた好ましい態様に含まれる。
用語「乾燥」は、過剰のバッファー溶液等の液体(骨誘導性タンパク質でのキャリアの被覆後に依然として存在する)を除去する手段を含む。好ましくは、乾燥は、減圧-または凍結-乾燥により達成される。
【0026】
本発明の方法の別の好ましい態様では、乾燥は、不活性ガス流中で室温でのエバポレーションにより達成される。
【0027】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、上記骨誘導性タンパク質はTGF-βファミリーのメンバーである。
用語「TGF-βファミリーのメンバー」は、上記タンパク質の生物学的に活性な成熟種およびそれぞれのプロフォーム、すなわち、下記により詳細に記載されるようなTGF-βファミリーのこれらのメンバーのそれぞれのプロドメインを含むプロタンパク質を含む。
成長分化因子のTGF-βファミリーは、骨形成を含む多数の生物学的プロセスに関与することが示された。上記ファミリーの全てのメンバーは、特徴的なドメイン構造を含む分泌ポリペプチドである。極めてN-末端に、TGF-βファミリーメンバーはシグナルペプチドまたは分泌リーダーを含む。この配列には、プロドメイン、および成熟ポリペプチドの配列がC-末端に続く。成熟ポリペプチドの配列は、7つの保存システインを含み、この内6つは分子内ジスルフィド結合の形成に必要とされ、1つは2つのポリペプチドの二量体化に必要とされる。生物学的に活性なTGF-βファミリーメンバーは二量体であり、好ましくは2つの成熟ポリペプチドからなる。TGF-βファミリーメンバーは、成熟配列に加えてプレ(シグナル配列)-およびプロ配列を含有するプレプロタンパク質として通常分泌される。シグナル配列およびプロドメインは細胞外で切断され、シグナル伝達分子の一部ではない。しかし、プロドメインが成熟ポリペプチドの細胞外安定化に必要であるかもしれないことが報告されている。TGF-βスーパーファミリーのメンバーの概要は:Wozney JM, Rosen V (1998): Bone morphogenetic protein and bone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346:26-37に示される。TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列はインターネット(http://www.expasy.ch/sprot/sprot-top.html)によりSwiss-Prot等の周知のデータベースから得られうる。特に高い骨形成能力を有するTGF-βファミリーのメンバーであるBMP2、BMP7およびGDF-5のプレプロフォームのアミノ酸配列はまた、それぞれ配列番号1〜3に示されている。
本発明の文脈において、用語「TGF-βファミリーメンバー」または下記に言及される上記ファミリーのタンパク質は、上記タンパク質またはメンバーの全ての生物学的に活性なバリアントおよび全てのバリアントならびにその不活性な前駆体を含む。従って、単に成熟配列を含むタンパク質、ならびに成熟タンパク質およびプロドメインを含有するタンパク質、または成熟タンパク質、プロドメインおよびリーダー配列を含有するタンパク質ならびにその生物学的に活性な断片が本発明の範囲内にある。TGF-βメンバーの断片が生物学的活性を有するかどうかは、例えばKatagiri T, Yamaguchi A, Ikeda T, Yoshiki S, Wozney JM, Rosen V, Wang EA, Tanaka H, Omura S, Suda T, (1990): The non-osteogenic mouse pluripotent cell line, C3H10T1/2, is induced to differentiate into osteoblastic cells by recombinant human bone morphogenetic protein-2. Biochem.Biophys.Res.Commun. 172:295-299またはNishitoh H, Ichijo H, Kimura M, Matsumoto T, Makishima F, Yamaguchi A, Yamashita H, Enomoto S, Miyazono K (1996): Identification of type I and type II serine/threonine kinase receptors for growth/differentiation factor-5.J.Biol.Chem.271:21345-21352に記載される生物学的分析により容易に決定されうる。
好ましくは、本発明の生物学的活性は、実施例に記載されるインビボモデルにより決定されうる。さらに、本明細書中に言及されるTGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列、特に配列番号:1〜3のいずれかに示されるものに少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するTGF-βメンバーのバリアントもまた本発明に含まれる。
【0028】
さらに好ましくは、TGF-βファミリーの上記メンバーはBMPサブファミリーのメンバーである。
骨形成タンパク質(BMP)サブファミリーのメンバーは、とりわけ骨組織の誘導および再構築に関与することが示されている。BMPは当初、骨マトリックスから単離された。これらのタンパク質は、異所部位で新規骨形成を誘導する能力により特徴付けられる。種々のインビボ研究は、BMPによる前駆細胞の骨形成および軟骨形成の促進を示し、各BMP分子が骨格発達の間に異なる役割を有する可能性を高める。BMPの分子および生物学的特性に関するさらなる詳細は、Wozney JM, Rosen V (1998): Bone morphogenetic protein and bone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346: 26-27, Schmitt J, Hwang K, Winn, SR, Hollinger J (1999): Bone morphogenetic proteins: an update on basic biology and clinical relevance. J Orthop Res 17: 269-278およびLind M (1996): Growth factors: possible new clinical tools. A rewiew.Acta Orthop Scand 67:407-17に記載されている。最も好ましくは、BMPファミリーの上記メンバーはBMP2またはBMP7である。BMP2のプレプロフォームのアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P12643で寄託されており、下記に示される。アミノ酸1〜23はシグナル配列に対応し、アミノ酸24〜282はプロペプチドに対応し、アミノ酸283〜396は成熟タンパク質に対応する。BMP7のプレプロフォームのアミノ酸配列はSwiss-Protアクセッション番号P18075で寄託されているか、または配列番号:2に示される。アミノ酸1〜29はリーダー配列に対応し、アミノ酸30〜292はプロフォームに対応し、アミノ酸293〜431は成熟タンパク質に対応する。好ましくは、BMP-2またはBMP7は、それぞれプレプロフォーム、プロフォームまたは成熟BMP-2またはBMP-7ペプチドをいう。さらにまた、本質的に同じ生物学的活性、好ましくは骨誘導性特性を有する上記タンパク質の断片が含まれる。BMP2およびBMP7に関するさらなる配列情報が下記に提供される。proBMP-2と呼ばれるBMP2のプロフォームのアミノ酸配列は、とりわけ、アクセッション番号Pro BMP2_HUMAN; P12643でSwiss-Protから検索され得、配列番号:4にも示される。配列番号:5では、N-末端にさらなるHis-タグを含むrhproBMP-2のアミノ酸配列が示される。rhproBMP2はヒトpro-BMP-2の組換え型である。
配列番号:4に示されるrhproBMP-2および配列番号:5に示されるN-末端His-タグを含むrhproBMP-2の両方がとりわけ実施例で使用されうる。しかし、実施例は、配列番号:4または5それぞれに限定されない。下記の実施例はまた、本明細書中に開示される任意の他のアミノ酸配列を用いても行われうることが考えられる。
【0029】
さらにより好ましくは、上記TGF-βファミリーのメンバーはGDFサブファミリーのメンバーである。
成長分化因子(GDF)はまた、とりわけ骨組織の導入および再造形に関与することが示されている。軟骨由来形態形成タンパク質1(CDMP-1)としても知られる成長分化因子5(GDF-5)は、BMPファミリーのサブグループのメンバーであり、これはまた、他の関連するタンパク質、好ましくはGDF-6およびGDF-7を含む。タンパク質の成熟形態は27kDaホモダイマーである。種々のインビボおよびインビトロ研究は、哺乳動物骨格の種々の形態的特徴の形成の間のGDF-5の役割を示す。GDF-5の変異は、脚の長骨の長さの減少、脚および胸骨の異常関節発達を含む骨格異常の原因である(Storm & Kingsley (1999), Development Biology, 209, 11-27)。マウスとヒトとの間でアミノ酸配列は高度に保存されている。
好ましくは、GDFサブファミリーの上記メンバーはGDF-5である。最も好ましい態様では、上記GDF-5は、下記により詳細に記載される組換えヒトGDF-5(rhGDF-5)である。
GDF-5のプレプロフォームのアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P 43 0 26で寄託されているか、または配列番号:3に示される。アミノ酸1〜27は、リーダー配列に対応し、アミノ酸28〜381はプロフォームに対応し、アミノ酸382〜501は成熟タンパク質に対応する。好ましくは、GDF-5はプレプロフォーム、プロフォームまたは成熟GDF-5ペプチドをいう。さらに、本質的に同じ生物学的活性、好ましくは骨誘導性特性を有するGDF-5の断片もまた含まれる。さらに好ましい態様では、上記断片は、配列番号:3に示される配列のアミノ酸383〜501を含む。TGF-βファミリーの上記メンバーの任意の組み合わせが本発明の方法で使用される溶液中で使用されうることも考えられる。以下の表は、BMP-2、BMP-7およびGDF-5のプレプロフォームのアミノ酸配列を示す:
【0030】





【0031】
Swiss-Protから検索される場合、上記の公開された配列は、例えば配列決定の間の不正確さにより生じるエラーを含むかもしれない。結果として、かかる配列決定のエラーは、サイレント変異またはコドンの変化(従って先に公開されたように他のアミノ酸をコードする)を導きうる。しかし、Swiss-Protは、配列決定のエラーが起こったと思われる場合には更新されるので、最も新しい配列がリファレンス番号または上記に示したポリペプチドの各々の名称でSwiss-Protから検索されうる。
例えば、配列番号:3は、ヒトGDF-5のプレプロフォームのプロフォームに以下のアミノ酸置換を含みうる:38位のアミノ酸セリン(S)がアミノ酸スレオニン(T)に置換され、配列番号:3の254位のアミノ酸バリン(V)がアミノ酸アラニン(A)に置換され、配列番号:3の256位のアミノ酸アルギニン(R)がアミノ酸グリシン(G)に置換され、配列番号:3の257位のアミノ酸セリン(S)がアミノ酸グリシン(G)に置換され、配列番号:3の258位のアミノ酸アルギニン(R)がアミノ酸グリシン(G)により置換され、276位のアミノ酸アラニン(A)がアミノ酸セリン(S)により置換され、配列番号:3の321位のアミノ酸スレオニン(T)がアミノ酸アラニン(A)により置換される。上記アミノ酸置換が生じうる得られるアミノ酸配列は配列番号:6に示される。配列番号:3に示されるGDF-5のプレプロフォームのアミノ酸配列のプロフォーム中のアミノ酸置換はGDF-5の生理的機能を変更、変化または廃止しないとわかる。本発明の文脈では、配列番号:6はまた、本発明の手段および方法と共に使用されうることが考えられる。
【0032】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、上記デバイスは毒性物質を有さない。
用語「毒性物質」は、好ましくは、当該分野で記載された方法により使用される毒性有機溶媒および添加物、例えばアセトニトリルまたはクロモ硫酸を含む。上記物質は、上記物質を含むデバイスの移植後に炎症および他の反応を生じうる。上記デバイスは、当該分野で記載された被覆方法およびいくつかの表面処理法によっては回避され得ない上記の望ましくない副作用のために治療的受容性がより低い。さらに、治療用タンパク質の開発のための国際ガイダンスは、製造プロセスにおいて有害および有毒な物質が回避されることを求めている(詳細はInternational Conference on Harmonisation (ICH), Topic Q3C; www.emea.eu.int/参照)。しかし、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られうるデバイスは、有利に、上記毒性物質を含まず、それ故、治療的に良好に許容され得、監督機関の要件を満たす。
【0033】
本発明の方法のさらに好適な態様において、上記溶液によって担体の上記金属表面を均一に被覆するのに十分な時間上記タンパク質が溶解する。
【0034】
用語「担体の上記金属表面を均一に被覆するのに十分な時間上記タンパク質が溶解する溶液」は、骨誘導タンパク質が効率よく溶解し得る溶液をいう。均一な被覆とは、上記溶液で処理した後、担体の表面が上記骨誘導タンパク質で完全に被覆されることを意味する。均一な被覆は、本質的に同一量のタンパク質が上記担体の表面のそれぞれ全ての領域に存在することで特徴付けられる。均一な被覆は、移植の部位の周囲の組織への骨誘導タンパク質の効率的な放出ならびに均一な分配および活性に不可欠である。さらに、骨誘導タンパク質は集合せず、沈殿または微小沈殿によって部分的にまたは全体的に不活性化されないことが理解され得、むしろ均一な被覆によって生物学的に活性のある非集合タンパク質の付着が成され得る。上記均一な被覆は本発明の方法によって、付随する実施例に記載されているように得られる。さらに、固定化タンパク質の均一な被覆、定量および特徴付けを制御する手段および方法が、付随する実施例に記載されている。溶液は、当業者によって、骨誘導タンパク質の溶解度に基づいて作成され得、溶解度はpH、イオン強度、および担体を上記溶液に接触させた後の上記パラメータに対する担体の影響に依存する。本発明によって、本発明の方法に適切な溶液が、骨誘導タンパク質の酸化状態に影響を与えない成分のみを含有することが見出された。例えば、しばしばタンパク質製剤中で賦形剤(安定剤および充填剤)として用いられるショ糖やトレハロース等の糖(詳細については実施例9参照)は、タンパク質の金属表面に対する結合を還元するので、被覆方法には用いることができない。避けるべき他の成分は、後に付随する実施例に記載されている。
【0035】
本発明の方法によって、上記溶液によって上記骨誘導タンパク質の濃度は0.5 mg/mlよりも高く、好ましくは2 mg/mlよりも高く、最も好ましくは3 mg/mlよりも高くなる。
【0036】
また、上記溶液のpHが酸性である方法も好ましい。
用語「弱酸」は、イオン結合した(ionogenically bound)水素原子を少なくとも一つ含む有機または無機化合物をいう。弱酸は当該分野で周知であり、化学の辞書であるRompp等の標準的な教科書に記載されている。好ましくは、上記弱酸は解離度が低く、3〜7、好ましくは4〜6のpK値で表される。
【0037】
最も好ましくは、上記酸性溶液はHCl、酢酸、クエン酸および/またはコハク酸を含む。
【0038】
本発明の方法の別の最も好ましい態様において、酸の濃度は100 mmol/l以下、好ましくは50 mmol/l未満、さらに好ましくは25 mmol/l未満、最も好ましくは15 mmol/l未満である。
【0039】
本発明の方法の別の最も好ましい態様において、溶液は不活性な気体で飽和されており、最も好ましくは窒素、アルゴンまたはヘリウムで飽和されている。この最も好ましい態様において、本発明の方法は、雰囲気、湿度、温度が制御され、かつ雰囲気交換速度が決められた区画において行われる。
【0040】
本発明は、さらに本発明の方法によって得ることができる装置に関する。
本発明の方法の文脈において上でなされた用語の定義および説明は、下記の装置に、必要な変更を加えて適用される。
上記装置は、上記方法による特性によって特徴づけられる。特に、この装置は、装置の金属または合金の多孔質または無孔の表面に均一に被覆された骨誘導タンパク質を含み、そのため骨誘導タンパク質の酸化状態は、上記金属または合金の表面を被覆していない骨誘導タンパク質と比較して、あまり増強されない。好ましい装置は、付随する実施例に詳細に記載されている。
【0041】
本発明は、本発明の装置または本発明の方法によって得ることができる装置を含有する医薬組成物を含む。
本発明の方法および装置の文脈において上でなされた用語の定義および説明は、本明細書中に記載された医薬組成物に、必要な変更を加えて適用される。
【0042】
本発明はまた、骨誘導および新しい骨の形成を促進するために用いる医薬組成物を調製するための、本発明の装置または本発明の方法によって得られうる装置の使用を含む。上述の用語の定義は、上記本発明の使用および下記の使用に、必要な変更を加えて適用される。
【0043】
用語「オッセオインテグレーションおよび新しい骨の形成」は、骨がインプラントの周りに新しい骨を形成し、インプラントと統合する能力を有することを表す。統合は、骨細胞がインプラント表面に付着し、機能の負荷下で痛み、炎症または弛緩なしで人工器官の復元を堅固に、永久的に固定することを表す。
【0044】
さらに好ましくは、上記オッセオインテグレーションおよび新しい骨の形成の促進は、外傷性、悪性または人工的欠損の処置のため、歯の欠損の処置または腰、肘、脊柱、膝、指または足首の関節の処置のために行われる。上記の疾患または障害の症状は、PschyrembelおよびStedman等の医学の標準的な教科書に詳細に記載されている。
【0045】
本発明の使用によって挙げられた疾患の一つ以上を処置するための方法も本発明の範囲に含まれ、上記方法は少なくとも本発明の装置または本発明の方法によって得ることができる装置を薬学的に許容され得る形態で被験体に投与する工程を含む。好ましくは、上記被験体はヒトである。
【0046】
最後に、本発明は本発明の装置または本発明の方法によって得ることができる装置を含むキットに関する。
本発明の方法、装置、医薬組成物および使用の文脈において上でなされた用語の定義および説明は、本明細書中に記載されたキットに、必要な変更を加えて適用される。
本発明のキットの部品は、個々にバイアルに、もしくは各成分に応じて他の適切な手段に包装され得、または組み合わせて適切なコンテナまたはマルチコンテナユニットに包装され得る。キットの製造は、好ましくは当業者に公知の標準的な手順に従う。好ましくは、この装置は不活性な気体、好ましくは窒素からなる空気中、無酸素の雰囲気中でコンテナまたはバイアルに包装される。
【0047】
以下の生物学的実施例を参照することによって本発明を説明するが、これらは単なる例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
実施例1:RP-HPLCによるrhGDF-5の定量
rhGDF-5の量を逆相HPLC分析によって測定する。0.1%蟻酸、21%アセトニトリルで平衡化したPoros C8-18-カラム(R2/10、21.x 30 mm)に試料をアプライする。カラムの洗浄の後、0.1%蟻酸、および21〜84%アセトニトリルのグラジエントで溶出を行う(流速:0.4 ml/分)。溶出は、220 nmの吸光度を測定することによって観察する。ピークおよび作成した検量線の使用によって定量を行う。
【0049】
実施例2:結合タンパク質の抽出および定量
被覆体をまずPBS中、室温で1時間インキュベーションすることによってタンパク質を抽出した。続いて被覆体を10 mmol/l HCl中、室温で3時間インキュベートした。PBS試料をpH 2に調節した後、抽出された骨成長因子を含むPBSおよびHCl溶液を実施例1記載のRP-HPLCによって分析した。
【0050】
実施例3:抽出されたタンパク質を含む溶液中の可溶性集合体の定量
抽出されたタンパク質を含む試料中の可溶性集合体の量を、サイズ排除HPLCによって測定した。カラム(TSK 3000)は50 mmol/l 酢酸、50 mmol/l リン酸、NaOH、pH 3.0で平衡化した。
溶出は、220 nmのUV検出によって観察する。総ピーク領域に対する集合体のピーク領域の割合によって、定量を行う。
【0051】
実施例4:抽出されたタンパク質の化学修飾の測定
抽出されたタンパク質を含む溶液中の骨成長因子の化学修飾、すなわち酸化の量を、RP-HPLCによって測定した。0.15% TFA、20% アセトニトリルで平衡化したVydak C8-18カラム(2 x 250 mm)に試料をアプライする。カラムの洗浄の後、0.1% TFA、および20%〜84%アセトニトリルの段階的なグラジエントで骨成長因子の溶出を行う(流速:0.3 ml/分)。溶出は、220 nmの吸光度を測定することによって観察する。総ピーク領域に対する修飾種(modified species)のピーク領域の割合によって定量を行う。
【0052】
実施例5:骨成長因子を用いたTi6Al4Vの被覆および放出
チタン薄板を表面として用いた被覆‐放出サイクルの後、rhGDF-5をかなりの程度まで酸化し得る。ここで、被覆操作の間のタンパク質の酸化を防ぐ被覆方法および装置について説明する。
【0053】
チタンまたはチタン合金を骨成長因子で被覆する装置:
被覆の方法は、酸素を排除するために、不活性な気体雰囲気中で行われる。この条件を維持するために、チャンバーが用いられる。このチャンバーは、不活性な気体、例えばN2ガスが継続的に流れる密閉した部屋からなる。チャンバーの内部では、やや過剰な圧力が維持されている。被覆方法に必要な材料は、気密ロックを通してチャンバーに送られる。チャンバーによって手動および自動被覆方法ができる。被覆方法の定義付けおよび標準化のため、チャンバー中の相対湿度は監視され、調節される。
【0054】
被覆:
チタン薄板の汚れを落とし、純水で洗浄して乾燥した。チタン薄板を60μgのrhGDF-5で被覆した。各薄板をディッシュ内に平らに敷き、金属薄板の片面をrhGDF-5溶液で被覆した。N2ガス雰囲気下、上述のようなチャンバー内、0°C〜4°Cの温度で被覆を行った。被覆後、それぞれの条件で30分、真空下で薄板を乾燥した。
【0055】
抽出:
rhGDF-5を、まずPBS中でインキュベートして生理的条件に似せた。試料をほぼ無酸素に維持するために、各試料についてPBS溶液をN2ガスで飽和した。
PBSインキュベーションの後、薄板を10 mmol/l HClで3時間、それぞれの温度でインキュベートした。抽出溶液中のrhGDF-5をRP-HPLCによって定量した(実施例1参照)。酸化rh-GDF-5の量もまた、RP-HPCLによって測定した(実施例4参照)。
上述のように被覆および抽出された試料を比較できるようにするために、同じ操作を室温かつ酸素雰囲気下で行った。
【0056】
【表1】

【0057】
この実験において試験されたパラメータは、チタン薄板から抽出された後の酸化rhGDF-5の量に影響を及ぼす:空気の酸素存在下、室温で被覆された試料は、表1および図1に示されるように10.0%±1.6%の酸化rhGDF-5の量を示す。
4°CでN2ガス下にて処理した試料は、抽出後5.6%±0.6%の酸化rhGDF-5を示す。rhGDF-5バルク溶液と比較して、4°CおよびN2ガスで処理した試料は酸化rhGDF-5の量において有意な差を示さない(4.7%±0%)。
【0058】
実施例6:チタン表面上の骨成長因子の被覆の均一性の蛍光顕微鏡使用による測定
チタン体上の骨成長因子の被覆密度を、タンパク質に対する蛍光標識を用いて調べた。測定は、蛍光顕微鏡によって行った。
【0059】
被覆:
ディッシュ内に薄板1枚を平らに敷き、6.18 mg/ml 10 mmol/l HCl rhGDF-5溶液10μlで金属薄板の片面を被覆した。2枚目の薄板を10 mmol/l HCl 10μlで被覆した。これらの薄板を30分真空下で乾燥した。3枚目の薄板は被覆せず、ブランクとして用いた。さらに1枚の薄板をPBS中の6.0 mg/ml rhGDF-5溶液で被覆した。
【0060】
タンパク質の蛍光染色:
Alexa Fluor(登録商標)488の10 mmol/l溶液2.3μlを0.15 M NaHCO3溶液1 mlに加えた。3枚の金属薄板を蛍光染料混合物1 ml中、暗闇下、室温で4時間インキュベートした。タンパク質:蛍光物質の比は1: 10である。ブランクとして用いた薄板は20分だけインキュベートした。インキュベーションの後、薄板を純水で広範囲に渡って洗浄し、真空下、暗黒下で15分乾燥した。
【0061】
蛍光シグナルを蛍光顕微鏡使用で検出し、結像ソフトウエアによって文書化した。
図2において、rhGDF-5で被覆された領域は、蛍光顕微鏡ではっきりと確認できる。タンパク質に結合した蛍光標識を表している。一方、図3はPBSを含む被覆溶液としてのrhGDF-5の溶媒の影響(importance)によって不均一なタンパク質の分布およびタンパク質の点が生じることを示す。
【0062】
アーティファクトを排除するために、図4に10 mmol/l HClで被覆した薄板を示す。10 mmol/l HClは、溶液中のrhGDF-5の溶媒である。
【0063】
溶媒のあらゆる効果を排除するために、rhGDF-5または10 mmol/l HClで被覆されていないが蛍光標識Alexa FluorTM488中でインキュベートされたブランク薄板も調製した(図5)。
写真に、rhGDF-5のみが蛍光標識で染色されているのがはっきりと示されている。さらに、表面のタンパク質の分布は10 mmol/l HClを溶媒として用いた場合、規則的である。
【0064】
実施例7:前処理されたチタン表面からの骨成長因子の長期インビトロ放出
骨成長因子をチタン表面に被覆する方法を開発した。標準化した抽出の後、タンパク質を集合体に関して(実施例3)、酸化骨成長因子の量に関して(実施例4)分析することができ、かつ抽出されたタンパク質の定量ができる(実施例1)。本明細書中に記載された実験において、被覆されたチタン薄板を細胞培養培地中で30日間インキュベーションすることによって骨成長因子の放出動力学を測定した。生理的条件および代謝活性に似せるため、培地を48時間ごとに交換し、放出されたタンパク質の量をELISAによって定量した。
【0065】
被覆:
実施例5に記載されているように試料を被覆した。
【0066】
30日間の放出:
薄板を放出培地(89% αMEM、1% ペニシリン、ストレプトマイシン、10% FCS)6 ml中、4°Cで30日間インキュベートした。試料をミキサー中で永続的に圧延した。48時間インキュベーションするごとに上清をとり、-70°Cで冷凍して保存した。新しい培地6 mlを放出試料に加えた。
試料中の放出されたタンパク質を骨成長因子ELISAによって定量した。96ウェルプレートのウェルを、rhGDF-5に対するモノクローナル抗体で被覆する。プレートを0.05% Tween 20を含むPBSで洗浄し、SuperBloc溶液(Pierce製、カタログ番号 37515)でブロッキングした後、rhGDF-5含有試料をプレートに加え、プレートを室温で60分インキュベートする。試料を洗浄した後(上を参照)、rhGDF-5に対する二次ビオチン化抗体を加え、試料を室温で60分インキュベートする。洗浄工程後、ストレプトアビジンペルオキシダーゼ複合体を加え、試料を室温で60分インキュベートする。続いて、ウェルを0.05% Tween 20を含むPBSで洗浄し、結合したペルオキシダーゼの量をBM Blue-POD-基質(Roche Diagnostics製、カタログ番号:1 484 28)を用いて定量する。検出波長は450 nm、参照波長は630 nmである。rhGDF-5の量を、rhGDF-5検量線を用いて計算する。
ELISAで測定した骨成長因子の放出の結果を表2および図6にまとめる。ELISAで測定した、30日後に放出されたタンパク質の量は100.4±0.8である。
【0067】
【表2】


実施例8:rhBMP-2によるチタンまたはチタン合金の被覆および抽出
【0068】
ここで、被覆‐抽出方法の間のrhBMP-2の性質を調べた:rhBMP2は、rhGDF-5様のTGF-βタンパク質ファミリーの別のメンバーである。
【0069】
被覆:
薄板をディッシュ内に平らに敷き、薄板の片面を6.0 mg/ml骨成長因子溶液またはrhBMP2溶液いずれか10μlで被覆した。全ての薄板を30分、真空下で乾燥した。
【0070】
抽出:
全ての薄板を室温で1時間、PBSで抽出した。次いで骨成長因子およびrhBMP2で被覆した薄板を10 mmol/l HCl中で3時間インキュベートした。上記の実験の結果を表3にまとめる。
【0071】
【表3】

【0072】
PBS中でインキュベーションしている間に抽出されたrhBMP-2はなかった。PBSで8.8%のrhGDF-5が抽出された。
【0073】
結果から、TGFβタンパク質ファミリー起源のタンパク質は金属表面に結合し、PBS中でのインキュベーション後、10 mmol/l HCL中に(ほぼ)完全に抽出され得ることを示す。
【0074】
実施例9:ショ糖存在下でのチタンまたはチタン合金の骨成長因子による被覆
ここで、10%ショ糖を含むrhGDF-5溶液でチタン表面を被覆する工程について説明する。比較として、チタン表面を10 mmol/l HCl中の骨成長因子で被覆した。
【0075】
チタン薄板を純水で洗浄し、乾燥し、10 mmol/l HCl中の骨成長因子40μg、またはそれぞれ10%ショ糖、10 mmol/L HAcおよび5 mmol/l HCl)中の骨成長因子40μgで被覆した。
続いて、チタン材料を室温で1時間、PBS中で洗浄した。次いで100 mmol/l HCl中、室温で3時間インキュベーションすることによってタンパク質を抽出した。全ての溶液のタンパク質含量をRP-HPLC定量によって測定した。定量の前に、骨成長因子の溶解度を上げるためにPBS溶液をpH 2に調整した。
本明細書中に記載の実験において、二つの異なる被覆金属片を調製した:
10%ショ糖を含んだ、または含まない骨成長因子溶液で被覆したチタン薄板。
被覆および抽出操作の結果を表4にまとめる:
【0076】
【表4】

【0077】
10%ショ糖を含んだ、または含まない骨成長因子溶液によるチタン薄板の被覆には有意な差がある。ショ糖を含む試料からは32.5%のタンパク質が回収され、ショ糖を含まない試料からは70.3%の骨成長因子が回収される(図7参照)。
【0078】
上述の実験において、骨成長因子の金属表面への結合時の被覆溶液中のショ糖の存在を評価したかった。結果から、総回収率は、ショ糖なしで被覆した後の骨成長因子の回収率よりかなり低いことが示される。
【0079】
実施例10:Ti6Al4V骨成長因子の被覆および放出―還元剤の影響
A) 被覆溶液中の還元剤の影響:
被覆および抽出サイクルの間のタンパク質のタンパク質酸化を防ぐために、被覆溶液に還元剤を含めた:次の化合物またはそれらの組み合わせ:
10μl 試料1(ブランク):10 mmol/l HCl中の5.04 mg/ml骨成長因子
12μl 試料2:10 mmol/l EDTA + 3.94 mg/ml骨成長因子
10μl 試料3:10 mmol/l Met + 4.54 mg/ml骨成長因子
10μl 試料4:10 mmol/l Na2SO3 + 4.54 mg/ml骨成長因子
11μl 試料5:10 mmol/l Met + 10 mmol/l EDTA + 3.84 mg/ml骨成長因子
11μl 試料6:10 mmol/l EDTA + 10 mmol/l Na2SO3 + 3.84 mg/ml骨成長因子;を、骨成長因子被覆溶液に10 mmol/l加え、実施例5に記載されているように被覆を行った。
【0080】
抽出:
まず骨成長因子をPBSで1時間、室温で抽出した(PBS中でのインキュベーションは体内での生理的状態の刺激に当たる)。続いて、薄板を10 mmol/l HClで3時間抽出した。全ての試料の抽出溶液中の骨成長因子を、実施例1に記載されているようにRP-HPLCで定量した。酸化タンパク質の量を実施例4に記載されているように測定した。上述の実験の結果を表5にまとめる:
【0081】
【表5−1】

【0082】
【表5−2】

【0083】
全ての試料の回収率は、50%〜82%の間である。Na2SO3を含む試料を除き、全ての試料においてPBS中にタンパク質が抽出される。酸化種(oxidized species)の量を、PBS中に抽出された試料およびHCl中に抽出された試料において測定した。酸化種の量は8%〜23%の間である。
結論として、被覆溶液中に還元剤を用いる方法は、骨成長因子の酸化を防ぐために精選された方法ではない。総回収率が低いか、タンパク質がPBS中にかなりの量抽出されてしまっているか、または酸化骨成長因子の量がかなり多いかのいずれかである。したがって、被覆および抽出サイクルの間の骨成長因子の酸化を防ぐために、他の方法が必要である。
【0084】
B) 被覆方法開始前の還元剤での表面の浸潤:
被覆溶液中の還元剤の影響について説明した。ここで、前処理された金属薄板をそれぞれの還元剤を含む溶液中で24時間インキュベートした後の種々の還元剤の効果を比較する。続いて、被覆および抽出操作を二つの異なる温度で行った。
【0085】
全ての試料を以下の還元剤の10 mmol/l溶液の一つの中でインキュベートした:チオカルバミド、アスコルビン酸、硫酸ナトリウム、システイン、メチオニン、メルカプトエタノール。
【0086】
24時間インキュベーションした後、薄板を純水で洗浄し、真空下、室温で15分乾燥した。
全ての薄板をディッシュ内に平らに敷き、金属薄板の片面を6.95 mg/ml rhGDF-5溶液10μlで被覆した。半数の薄板を真空下、4°Cで乾燥し、残りの半数の薄板を真空下、室温で乾燥した。
被覆および抽出操作を4°Cで、および室温で行った。まず、rhGDF-5をPBSで1時間、室温で抽出した。次いで薄板を10 mmol/l HClで3時間インキュベートした。全ての試料の抽出溶液中のrhGDF-5をRP-HPLCで定量した(実施例1)。続いて、酸化種の量をRP-HPLCで測定した(実施例4)。
表6に前処理の様式に従って試料を列挙する。
【0087】
【表6】

【0088】
全ての試料中の酸化rhGDF-5の量は9.0%〜12.6%の間であり、出発物質として用いられたタンパク質溶液の酸化種の含有量は5%であった。4°Cでインキュベートされた試料において、酸化タンパク質の量は室温で処理された各試料におけるものよりも少ない。これらの結果から、結論として、用いた賦形剤の中で酸化を有意に防ぎ得るものはない。
酸化タンパク質の量を図8および9に示す。
【0089】
本明細書中に記載された実験の主題は、前処理された薄板を種々の還元剤とともにインキュベーションすることである。結論として、金属薄板を還元剤の溶液中で24時間インキュベーションすることは、タンパク質の酸化を防ぐための精選された方法ではない。
【0090】
実施例11:RP-HPLCによるrhproBMP-2およびrhBMP-2の定量:
rhproBMP-2/rhBMP-2の量を逆相HPLC分析で測定する。0.045% TFAで平衡化したPoros C4-カラム(20 x 2 mm)に試料をアプライする。カラムの洗浄の後、0.025% TFA、84%アセトニトリル、および21〜84%アセトニトリルのグラジエントで溶出を行う(流速:0.4 ml/分)。溶出は、220 nmの吸光度を測定することによって観察する。ピークおよび検量線の使用によって定量を行う。
【0091】
実施例12:抽出されたrhproBMP-2の化学修飾の測定:
抽出されたタンパク質を含む溶液中の骨成長因子の修飾形の量を、RP-HPLCで測定した。0.1% TFAで平衡化したYMC C4カラム(4.6 x 250 mm)に試料をアプライする。カラムの洗浄の後、100%アセトニトリル、0.1% TFA、および25%〜100%アセトニトリルの段階的なグラジエントで溶出を行う(流速:0.8 ml/分)。溶出は、220 nmの吸光度を測定することによって観察する。修飾種の相対量を、各々のピーク領域と総ピーク領域との割合(ration)から計算する。
【0092】
実施例13:抽出後の修飾rhproBMP-2の量の測定:
この実施例において、最適条件における被覆‐抽出方法の間のrhproBMP-2の性質を調べた:rhproBMP2はpro-BMP-2の組み換え形である。上記rhproBMP2のアミノ酸配列を配列番号:4に示す。抽出後、修飾種の量を測定した。
【0093】
被覆:
実施例5で上述されているように、チタン薄板をrhproBMP-2で被覆した。一組の薄板を標準条件(空気、室温)で被覆した(組1);別の組の薄板をN2雰囲気下で被覆した(組2)。
各薄板をディッシュ内に平らに敷き、金属薄板の片面をそれぞれ1,9 mg/ml rhproBMP-2溶液10μlで被覆した。
【0094】
抽出:
実施例5で上述されているように抽出を行った。修飾rhproBMP-2の量もまたRP-HPLCで測定した;上の実施例12参照。
【0095】
抽出されたタンパク質の特徴付けを、修飾種の定量によって行った。それに応じて、修飾rhproBMP-2の量の変化をrhproBMP-2バルク溶液と比較した。これらのデータを、抽出後の化学修飾rhproBMP-2の量を示す表7に示す:
【0096】
【表7−1】

【0097】
【表7−2】

【0098】
これらの実験において試験されたパラメータは、チタン薄板から抽出された後の修飾rhproBMP-2の量に影響を及ぼす:空気雰囲気下で被覆された試料は、修飾rhproBMP-2の量が上の表2に示した被覆溶液と比較して4.9%±1.2%を示す。
室温で、かつN2ガス下で処理された試料は抽出後の修飾rhproBMP-2に1.5%±0.6%の増加を示す。
【0099】
空気下で処理された試料は、タンパク質バルク溶液と比較して+4,9%の増加を示す(下の図10参照)。図10は、被覆溶液と比較した被覆/抽出の後の修飾rhproBMP-2の増加を示す。下の図10において、各試料のエラーバーは重複していない。したがって、結論として、周囲の気体雰囲気は、チタン薄板から抽出された後の修飾rhproBMP-2の量に有意な影響を及ぼす。
【0100】
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【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1:10 mmol/l HClで抽出した後の、酸化rhGDF-5のパーセンテージ
【図2】図2:10 mM HCl中のrhGDF-5で被覆した金属薄板の蛍光染色
【図3】図3:PBS中のrhGDF-5で被覆した金属薄板の蛍光染色
【図4】図4:10 mmol/l HClで被覆した金属薄板の蛍光染色
【図5】図5:ブランク金属薄板の蛍光染色
【図6】図6:前処理されたチタン表面からのrhGDF-5の放出。ELISAで測定した結果の概要
【図7】図7:ショ糖を含む、およびショ糖を含まないrhGDF-5溶液によるチタン表面の被覆
【図8】図8:前処理された薄板から室温で抽出した後の酸化rhGDF-5のパーセンテージ
【図9】図9:前処理された薄板から4°Cで抽出した後の酸化rhGDF-5のパーセンテージ
【図10】図10:被覆溶液と比較した被覆/抽出後の修飾rhproBMP-2の増加
【配列表】












【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶解した骨誘導性タンパク質を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液と金属または金属アロイの表面を含むキャリアとを接触させる工程;
(c)該キャリアの表面を該溶解タンパク質で被覆する工程;および
(d)工程(c)で得られる被覆キャリアを乾燥する工程;
を含み、工程(b)〜(d)が低酸素濃度下で行われるデバイスの製造方法。
【請求項2】
工程(b)〜(d)が10体積%未満の酸素濃度下で行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)〜(d)が25℃未満の温度で行われる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記金属または金属アロイがチタンまたはチタンアロイである請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
チタンアロイが少なくとも50%のチタンを含有するチタンアロイである請求項4記載の方法。
【請求項6】
チタンアロイがTi-Al-V-アロイ、Ti-Al-Feアロイ、Ti-Al-Nb-アロイまたはTi-Mo-Zr-Al-アロイである請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
Ti-Al-VアロイがTi6Al4Vである請求項6記載の方法。
【請求項8】
被覆が前記タンパク質溶液にメタリック表面を浸漬することにより行われる請求項1〜7記載いずれか記載の方法。
【請求項9】
被覆がメタリック表面に前記タンパク質溶液を滴下することにより行われる請求項1〜7いずれか記載の方法。
【請求項10】
被覆がメタリック表面に前記タンパク質を噴霧することにより行われる請求項1〜7いずれか記載の方法。
【請求項11】
乾燥が真空乾燥により達成される請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
乾燥が凍結乾燥により達成される請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項13】
乾燥が不活性ガス流中で室温でのエバポレーションにより達成される請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項14】
前記骨誘導性タンパク質がTGF-βファミリーのメンバーである請求項1〜13いずれか記載の方法。
【請求項15】
前記TGF-βファミリーのメンバーがBMPサブファミリーのメンバーである請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記BMPファミリーのメンバーがBMP2またはBMP7である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記TGF-βファミリーのメンバーがGFDサブファミリーのメンバーである請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記GDFサブファミリーのメンバーがGDF-5である請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスが毒性物質を含まない請求項1〜18いずれか記載の方法。
【請求項20】
前記溶液が、前記キャリアのメタリック表面の均質な被覆に十分な時間、前記タンパク質の分離を可能にする請求項1〜19いずれか記載の方法。
【請求項21】
前記溶液が0.5mg/mlよりも高い前記骨誘導性タンパク質の濃度を可能にする請求項1〜20いずれか記載の方法。
【請求項22】
前記溶液が酸性pHを有する請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記酸性溶液がHCl、酢酸、クエン酸またはコハク酸を含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
酸の濃度が100mmol/l以下である請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
溶液が不活性ガスで飽和される請求項1〜24いずれか記載の方法。
【請求項26】
不活性ガスが窒素、アルゴンまたはヘリウムである請求項25記載の方法。
【請求項27】
制御された雰囲気および湿度を有する区画内で行われる請求項1〜26いずれか記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜27いずれか記載の方法により得られうるデバイス。
【請求項29】
請求項1〜27いずれか記載の方法により得られうるデバイスを含有してなる医薬組成物。
【請求項30】
オッセオインテグレーションおよび新規骨形成の促進に使用される医薬組成物の調製のための、請求項1〜27いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項31】
オッセオインテグレーションおよび新規骨形成の促進が、外傷性、悪性または人工性欠陥の処置に使用されるものである請求項30記載の使用。
【請求項32】
オッセオインテグレーションおよび新規骨形成の促進が歯科欠陥の処置に使用されるものである請求項30記載の使用。
【請求項33】
オッセオインテグレーションおよび新規骨形成の促進が股関節、肘、脊椎、膝、指または足関節の処置に使用されるものである請求項30記載の使用。
【請求項34】
請求項1〜27いずれか記載の方法により得られうるデバイスを含有してなるキット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−503611(P2006−503611A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535048(P2004−535048)
【出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007439
【国際公開番号】WO2004/024199
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(504129939)スキール テヒノロギー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】