説明

低酸素誘導因子1αアンタゴニストを用いる慢性関節リウマチの処置

本発明は、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)を処置する新規な方法、ならびに炎症性疾患およびその臨床的症状の処置に有用な薬物を同定およびスクリーニングする新規な方法を包含する。本発明者らは、いくつかの癌に影響を有することが公知の転写調節因子であるHIF−1αの活性が、慢性関節リウマチの病態生理学に顕著な影響を有するということを見出した。炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)の症状は、HIF−1αの活性を阻害する化合物を投与することによって緩和され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(I.導入)
(A.関連出願)
本出願は、2003年11月26日に出願された米国仮特許出願番号60/525,363の利益を主張する。米国仮特許出願番号60/525,363は、本明細書において参考として援用される。
【0002】
(B.発明の分野)
本発明は、慢性関節リウマチを処置する新規な方法および慢性関節リウマチの処置に有用な化合物を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(C.発明の背景)
100を超える種類の関節炎があり、そのうち慢性関節リウマチは最も痛く有害な種類である。関節の一般的な疾患である慢性関節リウマチは、200万人を超えるアメリカ人に影響を及ぼしている自己免疫疾患であり、男性よりも女性の間で発生率が著しく高い。慢性関節リウマチでは、関節を裏打ちする膜または組織(滑膜)が炎症(滑膜炎)を起こすようになる。時間と共に、この炎症は関節組織を破壊し得、障害を引き起こす。慢性関節リウマチは身体の複数の器官に影響を及ぼしうるため、慢性関節リウマチは全身病と呼ばれ、時にはリウマチ様疾患と呼ばれる。リウマチ様疾患の発症は、通常は中年においてであるが、その20代または30代においても頻繁に発生する。さらなる議論については、非特許文献1を参照のこと。
【0004】
リウマチ様疾患に関連する疼痛および全身(全身性)症状は、身体に障害を引き起こし得る。時間と共に、慢性関節リウマチは、重大な関節破壊を生じ得、変形および日常活動の困難につながる。慢性関節リウマチを患った人々が、疼痛および進行性障害によって引き起こされ得るある程度の鬱病に苦しむことは珍しいことではない。ある研究は、慢性関節リウマチを有する人々の4分の1が、その診断の6〜7年後までには働くことができず、20年後には半分が働くことができないということを報告している(非特許文献2)。慢性関節リウマチのような筋骨格状態は、医療ケアならびに逸失賃金および生産などの間接的出費として、米国経済に毎年650億ドル近くを費やさせている。
【0005】
滑膜炎症、軟骨の急速な破壊および罹患関節における骨の侵食が、慢性関節リウマチ(RA)の特徴である。近年の証明により、骨格組織の破壊および炎症がリウマチ関節において重複しているが同一でない生物学的プロセスによって調節されることと、これらの2つの局面に対する治療効果が相関する必要がないこととが示されている。関節における生物学的プロセスの複雑さのために、数学およびコンピュータモデルの使用は、種々の組織対応物、細胞タイプ、メディエータ、ならびに関節疾患および健全なホメオスタシスに関与する他の因子間の相互作用をよりよく理解するのに役立つ。複数の研究者が、慢性関節リウマチの生物学的プロセスではなくむしろ、関節の機械的環境の簡単なモデルを構築して、その結果を軟骨および骨の疾患および発育のパターンと比較した(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。コンピュータで扱うことができる関節疾患の数学モデルは、滑膜を含む複数のコンパートメントを含み、これらのコンパートメントの相互作用は、2002年12月5日に公開された特許文献1および2003年4月24日に2003−0078759として公開された特許文献2に述べられている。どちらの刊行物も参考としてその全体が、本明細書において援用される。
【0006】
慢性関節リウマチは、現在、制御され得るが治癒できない慢性疾患である。処置の目標は、症状の軽減および疾患を悪化させないことである。慢性関節リウマチの大半の処置の目標は、疼痛を軽減し、炎症を減少させ、関節損傷の進行を遅延または停止させて、人の機能する能力を改善することである。処置への現在のアプローチは、ライフスタイルの変化、薬剤、外科手術、ならびに日常的モニタリングおよびケアを含む。慢性関節リウマチの処置に使用される薬剤は、この疾患の進行に影響を与える方法に基づいて2つの群((1)症状緩和薬および(2)疾患改変薬)に分類され得る。
【0007】
症状、例えば、疼痛、硬直、および腫脹を軽減するための薬剤が使用され得る。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、およびナプロキセン)は、疼痛を制御するために使用され、炎症を減少させるのに役立ち得る。これらの抗炎症薬は、疾患を制御せず、または疾患が悪化するのを停止しない。コルチコステロイド、例えば、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾロン(メドロール)は、疼痛を制御して、炎症を減少させるために使用される。それらは疾患を制御して、疾患が悪化するのを停止させる;しかしながら、コルチコステロイドを長期に亘る唯一の療法として使用することは、最良の処置とは見なされない。コルチコステロイドは、多くの場合、最大6ヶ月かかりうる抗リウマチ薬がその全有効性に達するときまで、関節炎症の症状および拡大を制御するために使用される。非処方薬剤(例えば、アセトアミノフェン)および局所用薬剤(例えば、カプサイシン)は疼痛を制御するために使用されるが、通常、関節腫脹または疾患の悪化に影響を及ぼさない。
【0008】
疾患改変抗リウマチ薬(DMARD)は、慢性関節リウマチの進行を制御し、関節破壊および身体障害の予防を試みるために使用される。これらの抗リウマチ薬は、他の抗リウマチ薬と、または他の薬剤、例えば、非ステロイド性抗炎症薬と組合せて投与されることが多い。慢性関節リウマチに一般に処方される疾患改変抗リウマチ薬としては、抗マラリア薬剤、例えば、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)またはクロロキン(Aralen)、メトトレキサート(例えば、Rheumatrex)、スルファサラジン(Azulfidine)、レフルノミド(Arava)、エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)およびアナキンラ(Kineret)が挙げられる。慢性関節リウマチにはあまり一般的に処方されないDMARDとしては、アザチオプリン(Imuran)、ペニシラミン(例えば、CuprimineまたはDepen)、金塩(例えば、RidauraまたはAurolate)、ミノサイクリン(例えば、DynacinまたはMinocin)、シクロスポリン(例えば、NeoralまたはSandimmune)、およびシクロホスファミド(例えば、CytoxanまたはNeosar)を含む。これらの抗リウマチ薬の一部は、作用するまで最大6ヶ月かかることがある。多くは重篤な副作用を有する。
【特許文献1】国際公開第02/097706号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第10/154,123号明細書
【非特許文献1】Merck Manual,第16版,第106節
【非特許文献2】O’Dell JR(2001).Rheumatoid arthritis:The clinical picture.WJ Koopman(編),Arthritis and Allied Conditions:A Textbook of Rheumatology,第14版,第1巻,第58章,pp.1153−1186.Philadelphia:Lippincott Williams and Wilkins
【非特許文献3】WynarskyおよびGreenwald,「J.Biomech.」1983年,第16巻:241−251
【非特許文献4】PollatschekおよびNahir,「J.Theor.Biol.」1990年,第143巻:497−505
【非特許文献5】Beaupreら,「J.Rehabil.Res.Dev.」2000年,第37巻:145−151
【非特許文献6】Shiら,「Acta Med.Okayama」1999年,第17巻:646−653
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ慢性関節リウマチの処置のための新しい、治療的に有効な薬物への要求はもちろんのこと、そのような薬物を同定するための新しい方法への要求も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(D.発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、慢性関節リウマチを有する患者に低酸素誘導因子(Hypoxia−Inducible Factor)1α(HIF−1α)活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を包含する、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を軽減するための方法を提供する。好ましい実施形態において、上記アンタゴニストは、HIF−1α活性を、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%減少する。HIF−1α活性のアンタゴニストは、タンパク質、核酸または低分子インヒビターでありうる。「低分子」は、本明細書では、1000ダルトン未満の分子量を有する分子として定義される。好ましいアンタゴニストとしては、YC−1刺激物質(sGC)、2−メトキシエストラジオール、タキソール、ビンクリスチン、1−メチルプロピル−2−イミダゾリルジスルフィド、プレウロチン(pleurotin)、ラパマイシン/CCI779、LY294002、ワートマニン、ゲルダナマイシン(geldanamycin)、カンプトセシン(およびアナログ(例えば、Topotecan))、PD98059、キノカマイシン(quinocarmycin)(およびアナログ(例えば、NCS−607097(DX−52−1)))、ならびにホスフェートアンドテンションホモログ(phosphate and tension homologue)(PTEN)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、患者は、メトトレキサート耐性患者、TNF−α遮断軟骨ノンレスポンダー(CNR)、TNF−α遮断過形成ノンレスポンダー(HNR)、またはTNF−α遮断二重ノンレスポンダー(DNR)である。
【0011】
別の局面において、本発明は、異常に上昇した滑膜細胞密度に関連する状態を有する患者にHIF−1α活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を包含する、関節内の滑膜細胞の密度を低下させるための方法を提供する。好ましい実施形態において、このアンタゴニストは、HIF−1α活性を、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%減少させる。
【0012】
本発明はまた、異常に高い割合の軟骨破壊に関連する状態を有する患者にHIF−1α活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を包含する、関節内の軟骨破壊を減少させるための方法も提供する。好ましい実施形態において、このアンタゴニストは、HIF−1α活性を、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%減少させる。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、滑膜組織中のIL−6の異常に高い濃度に関連する状態を有する患者にHIF−1α活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を包含する、滑膜組織中のIL−6濃度を低下させるための方法を提供する。好ましい実施形態において、このアンタゴニストは、HIF−1α活性を、少なくとも45%、より好ましくは少なくとも85%、そして最も好ましくは少なくとも95%減少させる。
【0014】
別の局面において、本発明は、炎症性疾患を罹患する患者にHIF−1α活性のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を包含する、炎症性疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供する。好ましい実施形態において、上記アンタゴニストは、HIF−1α活性を、少なくとも45%まで、より好ましくは少なくとも85%まで、そして最も好ましくは少なくとも95%まで減少させる。好ましい実施形態において、炎症性疾患は、糖尿病、動脈硬化症、炎症性大動脈瘤、再狭窄、虚血/再潅流障害、糸球体腎炎、再潅流傷害、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、ライター症候群、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、股関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、骨盤内炎症性疾患、多発性硬化症、骨髄炎、癒着性関節包炎、少数関節炎(oligoarthritis)、変形性関節炎、関節周囲炎、多発性関節炎、乾癬、スティル病、滑膜炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、骨粗鬆症、および炎症性皮膚疾患からなる群より選択される。さらに好ましくは、炎症性疾患は、関節炎、例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎(psoratic arthritis)、股関節炎、骨関節炎、または多発性関節炎である。最も好ましくは、炎症性疾患は慢性関節リウマチである。
【0015】
本発明のさらに別の局面は、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を緩和する方法を提供し、この方法は、HIF−1α活性のアンタゴニストおよび抗リウマチ薬を慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程を包含する。この抗リウマチ薬は、HIF−1αのアンタゴニスト作用と組み合わせて、HIF−1αアンタゴニスト作用または抗リウマチ薬単独での処置よりもより良好な臨床結果を提供する、任意の薬物である得る。この抗リウマチ薬は、症状を緩和する抗リウマチ薬であっても、疾患を改変する抗リウマチ薬であってもよい。例示的な症状を緩和する抗リウマチ薬としては、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、およびコルチコステロイド(例えば、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾロン(Medrol))が挙げられる。例示的な疾患を改変する抗リウマチ薬としては、ヒドロキシクロロキン(Plaquenil)、クロロキン(Aralen)、メトトレキサート(例えば、Rheumatrex)、スルファサラジン(Azulfidine)、レフルノミド(Arava)、エタネルセプト(Enbrel)、インフレキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、アナキンラ(Kineret)、アザチオプリン(Imuran)、ペニシラミン(例えば、CuprimineまたはDepen)、金塩(例えば、RidauraまたはAurolate)、ミノサイクリン(例えば、DynacinまたはMinocin)、シクロスポリン(例えば、NeoralまたはSandimmune)、およびシクロホスファミド(例えば、CytoxanまたはNeosar)が挙げられる。好ましい実施形態において、上記抗リウマチ薬は、メトトレキサート、TNF−αアンタゴニスト、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(例えば、Anakinra)、またはステロイド(例えば、メチルプレドニゾン)である。
【0016】
本発明の別の局面は、炎症性疾患の処置において使用するための薬物を製造するための方法を提供し、この方法は、(a)炎症性疾患の処置において有用なものとして化合物を同定する工程、および上記化合物をヒトが消費するために処方する工程を包含する。この化合物は、(i)上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量を上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量と比較する工程;および(ii)上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも低い場合に、上記化合物を慢性関節リウマチの処置に有用なものとして同定する工程によって、同定される。好ましくは、炎症性疾患は、慢性関節リウマチである。好ましくは、上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量は、上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも45%低い。より好ましくは、上記化合物は、HIF−1α活性を少なくとも85%まで減少させる。最も好ましくは、上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量は、上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも95%低い。
【0017】
本発明の別の局面は、炎症性疾患の処置において有用な化合物を同定するための方法を提供し、この方法は、(a)上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量を上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量と比較する工程;および(b)上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも低い場合に、その化合物を炎症性疾患の処置に有用なものとして選択する工程、を包含する。好ましくは、炎症性疾患は、慢性関節リウマチである。1つの実施形態において、化合物の収集物は、化合物の収集物中の各化合物について、工程(a)および(b)を繰り返すことによってスクリーニングされ得る。ここで、上記収集物の少なくとも1つの化合物は、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)の処置のために有用なものとして選択される。
【0018】
HIF−1α活性の量は、種々の方法によって決定され得る。本発明の1つの方法は、低酸素応答性エレメント(hypoxia−responsive element)(HRE)に結合されたHIF−1αの量を測定する工程、またはHIF−1α応答性遺伝子からの転写の量を測定する工程を包含する。好ましいHIF−1α応答性遺伝子としては、VEGF、Glut−1、エノラーゼ1、およびアルドラーゼ1が挙げられる。
【0019】
HIF−1α活性を測定するための代替的な方法は、上記化合物の存在下において内皮細胞の少なくとも1つの層を通って移動する白血球の量を、上記化合物の非存在下において内皮細胞の少なくとも1つの層を通って移動する白血球の量と比較する工程を包含する。好ましくは、この白血球は、T細胞または単球であり、そして最も好ましくは、単球である。本発明の好ましい実施形態において、化合物は、上記化合物の存在下において移動する白血球の量が、上記化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも30%低い場合に、炎症性疾患(好ましくは、慢性関節リウマチ)の処置に有用であると同定または選択される。より好ましくは、上記化合物は、少なくとも40%まで、そして最も好ましくは少なくとも50%まで、白血球の移動を減少させる。
【0020】
HIF−1α活性の減少を測定するためのさらに別の方法は、上記化合物の非存在下における白血球のアポトーシスの量よりも高い、上記化合物の存在下における白血球のアポトーシスの量を観察する工程を包含する。好ましくは、炎症性疾患(好ましくは、慢性関節リウマチ)の処置に有用な化合物は、マクロファージのアポトーシスの増加を生じる。本発明の好ましい実施形態において、上記化合物は、上記化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、上記化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.25倍高い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定または選択される。より好ましくは、上記化合物は、マクロファージのアポトーシスを少なくとも1.5倍まで、そして最も好ましくは少なくとも1.7倍まで増加する。
【0021】
マクロファージのアポトーシスの量は、現在公知であるか、または将来見出される、あらゆるアポトーシス測定技術によって決定され得る。本発明の1つの実施形態は、上記化合物の存在下か、もしくは上記化合物の非存在下において、アポトーシスの誘発因子に細胞の集団を曝す工程;およびDNA分断を有する細胞の割合を測定する工程を包含するプロセスによって、マクロファージのアポトーシスの量を測定する。ここでDNA分断を有する細胞の割合は、マクロファージのアポトーシスの量を表す。DNA分断を有する細胞の割合は、当該分野で公知の任意の方法によって測定され得る。これらの方法としては、ヨウ化プロピジウム(propidium iodide)の取り込みまたはTUNEL(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性2’−デオキシウリジン5’−トリホスフェート−ビオチンニック末端標識)アッセイが挙げられる。本発明のさらに別の実施形態において、マクロファージのアポトーシスの量は、上記化合物の存在下か、もしくは上記化合物の非存在下において、アポトーシスの誘発因子に細胞の集団を曝す工程;および細胞膜の細胞外表面上にホスファチジルセリンを発現する細胞の割合を測定する工程を包含するプロセスによって測定され、ここで、上記細胞膜の細胞外表面上にホスファチジルセリンを発現する細胞の割合は、マクロファージのアポトーシスの量を表す。好ましくは、細胞質膜の細胞外表面上のホスファチジルセリンの発現は、上記ホスファチジルセリンへのアネキシンVの結合によって測定される。好ましいアポトーシスの誘発因子としては、sFasリガンド、抗Fas、またはTRAILまたは低酸素状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明のさらに別の局面において、HIF−1α活性の量を測定する工程は、上記化合物の存在下における新脈管形成の量を上記化合物の非存在下における新脈管形成の量と比較する工程を包含し、ここで上記新脈管形成の量は、HIF−1α活性の量を表す。好ましくは、上記化合物は、上記化合物の存在下における新脈管形成の量が、上記化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも25%低い場合に、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)の処置に有用であると同定または選択される。より好ましくは、上記化合物は、新脈管形成の量を少なくとも35%まで、そして最も好ましくは少なくとも50%まで減少させる。新脈管形成の量は、現在公知であるか、または将来において発見されるあらゆる新脈管形成測定技術によって決定され得る。本発明の好ましい実施形態において、新脈管形成の量は、(1)基底タンパク質の層を提供する工程、(2)上記化合物の存在下もしくは上記化合物の非存在下において、その基底膜の層上で内皮細胞の集団を培養する工程、および(3)形成された毛細管の数を定量する工程によって測定される。毛細管形成は、細胞の管を可視化する工程、分枝点を計数する工程、または視野における全毛細管の長さを計算する工程によって定量され得る。
【0023】
上記に要約された実施形態を任意の適切な組み合わせと一緒に使用して、上記に明白には列挙されていないさらなる実施形態を作製すること、そしてそのような実施形態は、本発明の一部であると考えられることが、当業者によって認識される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の性質および目的をよりよく理解するために、添付の図面と組み合わせて考慮される以下の詳細な説明への参照が、なされるべきである。
【0025】
(III.詳細な説明)
(A.概要)
一般に本発明は、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)を処置する新規な方法、および炎症性疾患およびその臨床症状の処置に有用な薬物を同定およびスクリーニングする新規な方法を包含するとして考察され得る。ヒトリウマチ関節のコンピュータモデルの使用を通して、本発明者らは、一部の癌に対して効果を有することが既知である転写調節因子であるHIF−1αの活性が、慢性関節リウマチの病態生理学に著しい影響を有することを発見した。炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)の症状は、HIF−1αの活性を阻害する化合物を投与することによって、軽減され得る。
【0026】
(B.定義)
用語「異常に高い滑膜細胞密度」は、本明細書において使用される場合、正常な(すなわち、非罹患)関節で見られる滑膜細胞の数より少なくとも10倍多い、多くの滑膜細胞を含む関節の滑膜組織における状態をいう。
【0027】
用語「異常に高い割合の軟骨破壊」は、本明細書において使用される場合、標準X線撮影方法によって決定される、検出可能な関節空間の狭窄をいう。非罹患関節では、狭窄は検知できない。
【0028】
用語「滑膜組織におけるIL−6の異常に高い濃度」は、本明細書において使用される場合、正常な非罹患関節において見出されるよりも、標準偏差の少なくとも3倍高い罹患関節の滑膜組織におけるIL−6のレベルをいう。
【0029】
「投与(administering)」とは、当業者に公知の薬学的組成物を投与する標準方法のいずれかを意味する。例としては、静脈内投与、筋肉内投与または腹腔内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
用語「HIF−1α活性のアンタゴニスト」は、本明細書において使用される場合、慢性関節リウマチに関連することが示されたHIF−1αの3つ生物学的活性((1)単球/マクロファージおよびT細胞の動員、(2)マクロファージおよびT細胞のアポトーシス、ならびに(3)マクロファージのサイトカイン産生)のいずれか1つを阻害する特性をいう。アンタゴニスト性であるために、阻害は、100%有効である必要はない。さらに、HIF−1α活性の阻害は、HIF−1αの発現を減少させることによってか、HIF−1αのユビキチン化およびタンパク質分解を増加させることによってか、またはHIF−1応答性遺伝子の転写活性を干渉することによって、達成され得る。
【0031】
用語「薬物」は、既知または未知の生物学的機構によって生体系に影響を及ぼしうる、治療的に使用されるかまたは使用されない、いずれかの程度の複雑さを有する化合物をいう。薬物の例は、研究または治療上の興味がある代表的な低分子(1000ダルトン未満の分子量を有する分子);天然に存在する因子(例えば、エンドクリン、パラクリン、または自己分泌(autocrine)因子)、抗体、あるいはいずれかの種類の細胞レセプターと相互作用する因子;細胞内因子(例えば、細胞内シグナル伝達経路のエレメント;他の天然源から単離された因子);農薬;除草剤;および殺虫剤を含む。薬物は、遺伝子療法で使用される薬剤、例えば、DNAおよびRNAも含み得る。また抗体、ウィルス、細菌、ならびに細菌およびウィルスによって産生された生物活性剤(例えば、毒素)も薬物とみなされ得る。薬物に対する応答は、例えば、1つ以上の種のRNAの転写または分解の速度における薬物媒介性変化、1つ以上のポリペプチドの翻訳または翻訳後処理の速度または程度における薬物媒介性変化、1つ以上のタンパク質の分解の速度または程度における薬物媒介性変化、1つ以上のタンパク質の作用または活性の薬物媒介性の阻害または刺激などの結果でありうる。ある例において、薬物は、タンパク質と相互作用することによってその効果を働かせることができる。ある用途では、薬物は例えば、1つ以上の薬物を含む組成物または1つ以上の薬物および1つ以上の賦形剤を含む組成物を包含し得る。
【0032】
「炎症性疾患」は、以下のいずれか1つ:炎症性応答のトリガ(triggering);炎症性カスケードのいずれかのメンバーのアップレギュレーション;炎症性カスケードのいずれかのメンバーのダウンレギュレーションを特徴とする、さまざまな疾患および障害のクラスをいう。炎症性疾患としては、糖尿病、動脈硬化症、炎症性大動脈瘤、再狭窄、虚血/再潅流傷害、糸球体腎炎、再潅流障害、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、ライター症候群、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、股関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、骨盤腹膜炎、多発性硬化症、骨髄炎、癒着性関節包炎、少数関節炎、変形性関節炎、関節周囲炎、多発性関節炎、乾癬、スティル病、滑膜炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、骨粗鬆症、および炎症性皮膚疾患が挙げられる。単数形の用語「炎症性疾患」は、炎症性疾患のクラスから選択されるいずれかの1つ以上の疾患を含み、そして任意の複合体または複合疾患状態を含み、ここで疾患状態の構成成分としては、炎症性疾患のクラスから選択される疾患を含む。
【0033】
用語「関節」は、本明細書において使用される場合、滑膜組織、滑膜液、関節軟骨、骨組織、ならびにその細胞組成物および細胞外組成物、そしてそれらが含有する可溶性メディエータを含む。
【0034】
用語「メトトレキサート耐性患者」は、メトトレキサート処置に効果的に応答しないか、またはメトトレキサートに最初は応答するが、時間が経つにつれて不応となる慢性関節リウマチ患者をいう。
【0035】
本明細書において使用する場合、「正常酸素(normoxic)状態」は、組織酸化の生理学的状態をいう(組織に依存して、PO2は、40〜150mmHgに変動する)。語句「低酸素状態」は、生理学的レベルよりも低い組織酸化のレベル(すなわち、40mmHg以下)をいう。
【0036】
用語「患者」は、任意の温血動物(好ましくは、ヒト)をいう。慢性関節リウマチを有する患者は、例えば、慢性関節リウマチと診断された患者、慢性関節リウマチに関連する症状の1つ以上を示す患者、あるいは慢性関節リウマチを発症するリスクに向かって進行している、またはリスクに瀕している患者を含み得る。
【0037】
本明細書において使用される場合、本発明の薬物の「治療有効量」は、リウマチ関節において滑膜細胞の増加を阻害する化合物の量か、またはリウマチ関節において軟骨破壊の割合を低下される化合物の量か、または滑膜組織においてIL−6濃度を低下させる化合物の量であり、それによって慢性関節リウマチに関連する疼痛および炎症の後退および緩和を引き起こす、化合物の量を意味することが意図される。
【0038】
用語「TNF−α遮断耐性患者」は、TNF−α遮断に効果的に応答しないか、またはTNF−α遮断に最初は応答するが、時間が経つにつれて不応となる慢性関節リウマチ患者をいう。
【0039】
用語「TNF−α遮断軟骨ノンレスポンダー」は、TNF−α遮断に応答して、低下した滑膜過形成を示すが、軟骨破壊の最小限の低下を示す、低い初期TNF−α活性を有する慢性関節リウマチ患者をいう。
【0040】
用語「TNF−α遮断過形成ノンレスポンダー」は、TNF−α遮断に応答して、軟骨破壊の改善を生じるが、滑膜過形成のわずかな低下を生じる、異常に高いまたは耐性レベルのTNF−α活性を有する慢性関節リウマチ患者をいう。
【0041】
用語「TNF−α遮断二重ノンレスポンダー」は、TNF−α遮断に応答して、滑膜過形成および軟骨破壊の両方で低い応答を示す、無視できる初期TNF−α活性を有する慢性関節リウマチ患者をいう。
【0042】
(C.炎症性疾患の処置に有用な化合物の同定)
本発明の1つの局面は、炎症性疾患の処置に有用な化合物を同定する方法であり、この方法は、(a)上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量を上記化合物の非存在下における化合物の量と比較する工程;および(b)上記化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、上記化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも低い場合に、その化合物を炎症性疾患の処置に有用であると選択する工程を包含する。好ましくは、この炎症性疾患は、慢性関節リウマチである。慢性関節リウマチに冒されたヒト関節の生物学的状態に関連する動的なプロセスは、軟骨代謝、組織炎症、および組織過形成に関連するプロセスに関する種々の生物学的な変化物を含む。これらとしては、以下が挙げられる:
・マクロファージ集団の動力学(動員、活性化、増殖、アポトーシスおよびその調節が挙げられる)
・T細胞集団の動力学(動員、抗原依存的活性化および抗原非依存的活性化、増殖、アポトーシスおよびそれらの調節が挙げられる)
・繊維芽細胞様滑膜細胞(FLS)集団の動力学(組織における流入、増殖、およびアポトーシスおよびそれらの調節が挙げられる)
・軟骨細胞集団の動力学(増殖およびアポトーシスが挙げられる)
・種々のタンパク質(増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、タンパク質分解酵素、およびマトリックスタンパク質が挙げられる)の、表された異なる細胞型(マクロファージ、FLS、T細胞、軟骨細胞)による合成および調節
・内皮細胞による接着分子の発現
・滑膜組織と軟骨との間の媒介因子の移動
・サイトカインまたはプロテアーゼと、それらの天然のインヒビターとの間の相互作用、抗原提示、ならびに
・治療剤の細胞媒介因子への結合(TNF−αアンタゴニスト(例えば、エタネルセプトおよびインフリキシマブ)およびIL−1Rアンタゴニスト(例えば、アナキンラ))。
慢性関節リウマチに冒されたヒト関節の機械的再現を提供するインシリコ(in silico)モデルでの観察に基づいて、本発明者らは、HIF−1αのアンタゴニストが、慢性関節リウマチの症状を緩和することを見出した。この緩和は、特に、滑膜細胞の密度の低下、軟骨分解の低減、骨侵食の低減、および滑膜組織におけるIL−6濃度の減少である。これらの観察はまた、血管容積と治療剤(例えば、メトトレキサート、ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬、可溶性TNF−αレセプター、TNF−α抗体、およびインターロイキン−1レセプターアンタゴニスト)の効果とを考慮に入れる。
【0043】
インシリコのモデリングは、関連する生物学的データ(ゲノムデータ、プロテオミクスデータ、および生理学的データ)を、コンピュータベースのプラットフォームに統合し、システムのコントロールの原理を再生する。規定された疾患状態を表現する初期状態の設定を与えると、これらのコンピュータベースのモデルは、システム上の将来の生物学的挙動(バイオシミュレーション(biosimulation)と呼ばれるプロセス)を刺激する。本発明は、これらの状態の観察から生まれた。
【0044】
慢性関節リウマチを暗示する、挙動の一般的セットを規定することによって開始する「トップ−ダウン」アプローチを使用して、これらの挙動は、このシステム上の制約として使用される。ネスティングされたサブシステムのセットを開発して、基礎にある詳細の次のレベルを規定する。例えば、慢性関節リウマチにおける軟骨分解のような挙動を与えると、特定の機構は、その挙動が順番に各々モデリングされ、サブシステムの設定を生じるように誘導し、サブシステムそれ自体は、分解され詳細にモデリングされる。従って、これらのサブシステムの制御とコンテクストは、全体としてこのシステムの動力学を特徴付ける挙動によって既に規定されている。この分解プロセスは、慢性関節リウマチの既知の生物学的挙動を複製するのに十分に詳細になるまで、トップダウンから、ますます生物学をモニタリングし続ける。
【0045】
トップダウンアプローチを使用する場合、2つの特定の目的((1)基本的な生物学を説明する、および(2)全体の系の生理学的な機能または挙動を説明する)を支持するために、データは同定されて収集される。全体の系の生理学的機能または挙動を説明するデータは、モデルの開発の初期に選択される。これらのデータは、モデル系の広い範囲の挙動(すなわち、慢性関節リウマチ患者の測定(挙動)としての軟骨分解)を表す。これらのデータは、十分に確立された臨床試験に基づいた、ヒトのインビボのデータである。基礎生物学を説明するデータは、選択された挙動を刺激するために必要とされるサブシステムを十分にモデリングするように選択される。これらのデータは、基礎となる生物学の理解を提供する、ヒトまたは動物(ヒトが好ましいが、利用可能でない場合)のインビボデータ、インビトロデータ、もしくはエキソビボデータであり得る。
【0046】
トップダウンアプローチは、ヒト関節における慢性関節リウマチのモデルを開発するのに使用された。同様のモデルは、2003年4月24日に2003−0078759として公開された、同時係属の米国特許出願第10/154,123号で記載されている。現在のモデルでは、3つの重要な臨床結果:滑膜細胞密度、軟骨破壊の割合、滑膜組織中のIL−6のレベルが特に興味深い。慢性関節リウマチは、末梢血中の炎症誘発性サイトカイン(特に、IL−6)のレベル上昇を伴う全身性炎症性疾患である。C応答性タンパク質(CRP)は、血漿中で日常的に測定される、炎症の一般的なマーカーであり、複数の研究が慢性関節リウマチ患者でのIL−6濃度とCRP濃度との相関を示している。したがって、関節中または血漿中のどちらかのIL−6濃度は、炎症の良好なマーカーとなる。
【0047】
疾患の基礎にある生物学の明示的な表現は、特定の臨床結果(例えば、軟骨破壊または滑膜細胞密度)に対して最も影響のあるサブシステムを識別するために、単独または組合された各サブシステムの調節を可能にする。慢性関節リウマチの表現型開始および進行に最大の影響を持つこれらのサブシステムのモデル化およびデータ収集作業に集中することによって、このアプローチは、システムの複雑さをさらに明確に表現して、慢性関節リウマチの病態生理学の基礎にある原因因子を同定するのに役立つ。インシリコで各システムを調節する(例えば、1つの細胞型または細胞間媒介因子をノックアウトする、あるいは1つの特定の生物学的プロセスを遮断する)ことによって、慢性関節リウマチを促進する生物学的現象をよりよく理解し、それゆえ最良の、最も関連する標的を識別するために、疾患病態生理学全体へのその寄与を評価することができる。
【0048】
慢性関節リウマチの場合において、疾患状態は、例えば、その疾患状態を引き起すか、影響を及ぼすか、またはその疾患状態によって改変される1つ以上の生物学的プロセスを示し得る酵素活性、生成物形成動態および細胞機能に関連するアウトプットとして表現され得る。代表的には、コンピュータモデルのアウトプットは、生物学的構成要素のレベルまたは活性あるいは疾患状態の他のいずれかの挙動を示す値のセットを含む。これらのアウトプットに基づいて、1つ以上の生物学的プロセスを重要な生物学的プロセスと呼ぶことができる。
【0049】
コンピュータモデルは、2004年9月10日に出願された同時係属の米国特許番号10/938,072に詳細に記載されたように、1つ以上の生物学的プロセスへの改変を表すために実行され得る。特に、生物学的プロセスへの改変は、生物学的プロセスと慢性関節リウマチとの間の関連度(例えば、相関度)を同定するためにコンピュータモデルにて表現され得る。例えば、生物学的プロセスへの改変は、生物学的プロセスが慢性関節リウマチを引き起こすか、影響を及ぼすか、または慢性関節リウマチによって改変される程度を同定するために、コンピュータモデルにて表現され得る。生物学的プロセスは、この生物学的プロセスに対する改変が、慢性関節リウマチに関連する症状(すなわち、滑膜組織における細胞密度の増加、軟骨破壊、骨侵食、およびIL−6レベルの上昇)を生じさせると観察された場合に、慢性関節リウマチを引き起こすとして同定され得る。ある例において、生物学的プロセスへの改変は、他の生物学的プロセスと慢性関節リウマチとの間の関連度を同定するために、コンピュータモデルにて表現され得る。
【0050】
いくつかの例において、生物学的プロセスのセットを同定することは、感受性分析を包含し得る。感受性分析は、疾患状態に関連する生物学的プロセスの優先順位決定を含むことができる。感受性分析は、この優先順位決定のエラー強さを判定するために、コンピュータモデルの異なる構成を用いて実施され得る。いくつかの例において、感受性分析は、疾患状態との関連度に基づいた生物学的プロセスの順位序列を含み得る。感受性分析によって、ユーザは疾患状態の状況における生物学的プロセスの重要性を決定できる。非常に重要な生物学的プロセスの例は、疾患状態の重篤度を上昇させる生物学的プロセスである。それゆえ、この生物学的プロセスの阻害は、疾患状態の重篤度を低下させ得る。生物学的プロセスの重要性は、その生物学的プロセスと疾患状態との間の関連の存在だけでなく、疾患状態の重篤度において変更を達成するために生物学的プロセスを改変しなければならない程度にも依存しうる。順位序列において、疾患状態においてより重要な役割を果たす生物学的プロセスは、代表的には、より高い順位を得る。順位序列は、疾患状態においてより重要な役割を果たす生物学的プロセスがより低い順位を得るような逆の様式でも実施され得る。代表的には、生物学的プロセスのセットは、疾患状態においてより重要な役割を果たすとして同定される生物学的プロセスを含む。
【0051】
慢性関節リウマチの感受性分析の処理の間に、これらに限定されるわけではないが、単球動員、T細胞動員、細胞アポトーシス、およびサイトカイン産生などの生物学的プロセスの活性は、コンピュータモデルで一度に1つずつ調節される(増加または減少する)。次にバイオシミュレーションが実施され、刺激または阻害の異なるレベルでの1つの生物学的プロセスの調節の結果が、これらに限定されるわけではないが、軟骨破壊、滑膜細胞密度、骨侵食、およびIL−6レベルなどの臨床結果を測定することによって評価される。この分析の結果は、臨床結果に著しい影響を有する生物学的プロセスを同定した。
【0052】
本発明において、感受性分析は、疾患病態生理学に著しい影響を有する慢性関節リウマチの生物学の3つの分野((1)単球/マクロファージおよびT細胞の動員、(2)単球/マクロファージおよびT細胞のアポトーシス、および(3)マクロファージのサイトカイン産生(特に、TNF−α、IL−1、およびIL−10))を識別した。
【0053】
(1.標的の同定)
上述のモデルによるHIF−1α活性阻害の効果に基づいて、本発明者らは、HIF−1α活性の遮断が、慢性関節リウマチの効果的な療法であることが予測されることを発見した。
【0054】
単球/マクロファージおよびT細胞の動員、マクロファージおよびT細胞のアポトーシス、ならびにマクロファージのサイトカイン産生(特に、TNFα、IL−1、およびIL−10)に対するHIF−1α活性の効果は、慢性関節リウマチのコンピュータモデルにおいて定量され、明示的に表現された。これらの各生物学的プロセスに対するHIF−1α活性の寄与が正確に定量されていないので、HIF−1α活性の寄与を特徴付けるために一連の効果を定義した(表1)。「より低い最大効果」の値は、他のタンパク質との考えられる重複を考慮して記録された最も低い効果を表し、「より高い最大効果」は、各生物学的プロセスに対するHIF−1α活性の最大効果であり、そして「最も有望な最大効果」は、インビボ環境および他のタンパク質との重複を考慮した、各生物学的プロセスにおけるHIF−1α活性の現実的な寄与の概算である。
【0055】
(表1.関節モデルに対するHIF−1α活性の効果)
【0056】
【表1】

次に、慢性関節リウマチに対するHIF−1α活性の効果のシミュレーションを、関連する生物学的プロセスすべてにおいていっせいにか、または一度に1つの生物学的プロセスでか、またはいくつかの生物学的プロセスを組合せて、HIF−1αを遮断することによって実施した。シミュレーションの結果は、6ヶ月間のHIF−1α活性の遮断が、軟骨破壊を12〜45%、滑膜細胞過形成を12〜57%、そして滑膜組織中のIL−6レベルを14〜65%低下させることによって、慢性関節リウマチの臨床結果を改善することを示した。図1は、滑膜細胞密度に対するHIF−1α遮断の効果を示す。図2は、軟骨破壊に対するHIF−1α遮断の効果を示す。図3は、滑膜組織中のIL−6レベルに対するHIF−1α遮断の効果を示す。
【0057】
1つの生物学的プロセスにおいて同時にHIF−1α遮断をシミュレーションすることは、臨床結果に対してHIF−1α遮断の影響を与える(drive)主要な生物学的プロセスが、単球動員に対して効果的であることを実証した。マクロファージのアポトーシスに対するHIF−1α遮断の影響はまた、慢性関節リウマチの臨床的マーカーの改善に重要な役割を果たす。図4は、それぞれ、単球およびT細胞の動員、単球/マクロファージおよびT細胞のアポトーシス、ならびにマクロファージのサイトカイン産生に対する、HIF−α遮断の効果のシミュレーションの際の、代表的な慢性関節リウマチ患者における3つの重要な治療指標の応答を提供する。
【0058】
メトトレキサートは、慢性関節リウマチには一般的な処置である。メトトレキサート処置は、滑膜細胞密度をおおよそ30%まで低下させ、軟骨破壊の割合をおおよそ15%まで低下させ、滑膜組織におけるIL−6の濃度を93%まで低下させることが既知である。100%有効性では、コンピュータモデルは、HIF−1αアンタゴニスト作用が、これらの3つの治療指標においてメトトレキサートよりも大きな改善を誘発する可能性が最も高いことを予測する。このモデルは、HIF−1α活性の80%の阻害のみを引き起こす化合物が、滑膜細胞密度および軟骨破壊の割合の低下において、メトトレキサートよりも優れていることを予測している。
【0059】
一部の慢性関節リウマチ患者は、メトトレキサート処置に効果的に応答しない(初期ノンレスポンダー)が、メトトレキサートに最初は応答した他の患者は、時間が経つにつれて不応となる(漸進的ノンレスポンダー)。両方の型の患者は、メトトレキサート耐性患者といわれる。メトトレキサート耐性患者でのHIF−1α活性遮断のシミュレーションは、非耐性患者と類似した応答パターンを明らかにする。図5は、単球およびT細胞の動員、単球/マクロファージおよびT細胞のアポトーシス、ならびにマクロファージのサイトカイン産生に対する、HIF−1α遮断の効果をシミュレーションする際に、メトトレキサート耐性患者における3つの主要な治療指標の応答を提供する。メトトレキサート耐性患者において、6ヶ月間HIF−1α活性を遮断することは、軟骨破壊を8〜47%まで、滑膜細胞過形成を5〜52%まで、そしてIL−6濃度を13〜73%まで低下されることによって慢性関節リウマチの臨床結果を改善する。図6は、メトトレキサート耐性患者における滑膜細胞密度に対するHIF−1α遮断の効果を実証する。図7は、メトトレキサート耐性患者における軟骨破壊に対するHIF−1α遮断の効果を実証する。図8は、メトトレキサート耐性患者におけるIL−6濃度に対するHIF−1α遮断の効果を実証する。
【0060】
慢性関節リウマチのインシリコモデルの適用は、HIF−1α活性のアンタゴニスト作用が、慢性関節リウマチを罹患する患者のための有望な治療的ストラテジーであるという驚くべき結果を提供した。
【0061】
(2.閾値)
HIF−1α阻害の量は、単球/マクロファージの動員の減少およびマクロファージのアポトーシスの増加に相関しているが、動員率およびアポトーシス率の変化は、HIF−1α阻害に直線的には関連しない。図9は、HIF−1αアンタゴニスト作用の「より高い最大効果」における、HIF−1α阻害の、マクロファージのアポトーシスの割合の増加と単球動員の割合の減少とから予測した比較を提供する。これらの割合の各々は、滑膜細胞密度の治療指標と比較される。このモデルは、参照患者において慢性関節リウマチの症状の有意な改善(すなわち、滑膜細胞密度のすくなくとも30%の減少)を達成するために、マクロファージのアポトーシスが、HIF−1α遮断の24時間後に少なくともおよそ1.7倍まで増加しなければならないこと、および単球動員率が、少なくともおよそ30%まで減少しなければならないことを見出した。HIF−1α遮断のこのようなレベルは、新脈管形成のおよそ25%の低下を生じるべきである。
【0062】
図10は、HIF−1αアンタゴニスト作用の「最も有望な最大効果」における、HIF−1α阻害の、マクロファージのアポトーシスの割合の増加と単球動員の割合の減少とから予測した比較を提供する。これらの割合の各々は、滑膜細胞密度の治療指標と比較される。このモデルは、参照患者において慢性関節リウマチの症状の有意な改善(すなわち、滑膜細胞密度の少なくとも30%の減少)を達成するために、HIF−1α遮断の24時間後にマクロファージのアポトーシスが、少なくともおよそ1.25倍まで増加しなければならないこと、および単球動員率が、少なくともおよそ50%まで減少しなければならないことを見出した。両方の仮説を考慮して、HIF−1α活性の治療的アンタゴニスト作用に対する全体的な閾値は、結果として、マクロファージのアポトーシスで少なくとも1.5倍の増加となり、滑膜への単球動員で少なくとも40%の減少となる。HIF−1α遮断のこのようなレベルは、新脈管形成においておよそ50%の減少を生じるべきである。
【0063】
(D.HIF−1α)
HIF−1αは、低酸素状態(例えば、リウマチ性関節において生じる)への細胞適合の制御において中心的な役割を果たす転写因子である。滑膜は、生理学的には低酸素環境である。高レベルの乳酸によって、そしていくぶん驚くべきことに、高レベルのVLDL、LDL、およびHDLによって特徴付けられる慢性関節リウマチ炎症の間、酸素レベルは関節においてさらに低くなる。TreuhaftおよびMcCarty,Arthritis Rheum.14:475−84(1971);ならびにNaughtonら,FEBS Lett 332:221−225(1993)。この環境への細胞適合は、持続的な炎症を促進すると考えられる。
【0064】
低酸素誘導因子1(HIF−1)は、2つのサブユニット(HIF−1αおよびHIF−1β)からなるヘテロダイマータンパク質である。HIF−1αは、塩基性ヘリックス−ループ−ヘリックス−PAS転写因子ファミリーのメンバーである。HIF−1αは、6959daの分子量を有し、826個のアミノ酸残基、そして4つの機能的ドメインから構成される。HIF−1は、新脈管形成、グルコース代謝、細胞増殖/細胞生存および浸潤/転移に関連するタンパク質をコードする多くの遺伝子の転写を活性化する。低酸素は、ユビキチン媒介性分解を阻害することによって、HIF−1αタンパク質のレベルを調節する(図11)。Semenza,「Targeting HIF−1 for Cancer Therapy」Nat Rev Cancer 3:721−732(2003年10月)を参照のこと。
【0065】
20年前にエリスロポエチンの低酸素誘導発現の調節因子として最初に記載されてから、転写因子HIF−1は、組織酸化における変化に応答して、そしてまた増殖因子の刺激に応答して、遺伝子の数の増加を調節することが示されている(表2)。Semenza(2003)。
【0066】
(表2:HIF−1によって転写活性された遺伝子)
【0067】
【表2】

HIF−1αタンパク質合成は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)経路およびERKマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化によって調節される。これらの経路は、レセプターチロシンキナーゼ、非レセプターチロシンキナーゼ、またはGタンパク質連結型レセプターを介したシグナル伝達によって活性化され得る。
【0068】
低酸素は、HIF−1αのユビキチン媒介性分解を阻害することによって、HIF−1αをタンパク質安定性のレベルで調節する。HIF−1αタンパク質分解は、E3ユビキチン−タンパク質リガーゼによるユビキチン化についてタンパク質を標的にする、O依存性プロリルヒドロキシル化によって調節される。プロリルヒドロキシラーゼは、基質として分子酸素を使用し、従って酸素のアベイラビリティーの直接測定を提供する。このE3ユビキチン−タンパク質リガーゼは、ヒドロキシル化HIF−1αに特異的に結合するvon Hippel−Lindau腫瘍抑制タンパク質(VHL)を含む。ユビキチン化HIF−1αは、プロテアソームによって迅速に分解される。
【0069】
HIF−1αは、腫瘍内低酸素および遺伝的変更(例えば、癌遺伝子(すなわち、ERBB2)中の機能獲得変異(gain−of−function mutation)および腫瘍抑制遺伝子(すなわち、VHLおよびPTEN)中の機能喪失変異(loss−of−function mutation))の結果として、多くのヒト癌において過剰発現されることが公知である。HIF−1αの活性が腫瘍生存に相関している一方で、HIF−1α活性(特に、本発明によって規定された閾値での活性)のアンタゴニスト作用は、慢性関節リウマチの病理学に関連していない。
【0070】
(E.HIF−1αアンタゴニストおよび抗リウマチ薬を同定する方法)
(1.単球動員)
上記に記載されたように、単球/マクロファージの動員は、HIF−1α遮断の利益へ主要に貢献するものである。HIF−1α活性のアンタゴニストを同定するための1つの好ましいアッセイは、代表的な遊出アッセイの改変である。単球は、内因性(内皮によって作製された)または外因性の化学誘引物質の下部ウェル上の多孔性支持体で増殖する内皮層の上に懸濁している。アッセイ終了時に下部チャンバに達した単球は、遊出したものとしてカウントされる。HIF−1αの活性を阻害する化合物は、内皮層を通過して移動する細胞の数を減少させる。
【0071】
1つの好ましいアッセイにおいて、内皮細胞は、フィブロネクチンを重ねた水和I型コラーゲンゲル上で培養される。培養培地の成分は、多孔性ゲル中に浸透する。あるいは、内皮細胞は、下部チャンバ上に吊るされた多孔性フィルタの上表面で培養され得る。培養培地は、上部チャンバおよび下部チャンバに配置されて、単層の先端面および基底面に達する。単球は、上部チャンバに添加される。「移動した」とカウントするためには、単球は、(1)内皮細胞の先端表面に付着し、(2)細胞内接合点まで移動して、(3)内皮細胞間で漏出し、(4)内皮細胞から分離して、基底膜に浸透し、(5)フィルタまたはゲルを通過して、(6)フィルタまたはゲルから分離して、下部チャンバに入る必要がある。
【0072】
健常ドナーまたはリウマチドナーの末梢血から新たに単離された単球または好中球は、試験化合物の存在下または非存在下でコンフルエントな内皮単層上に37℃にて静置する。アッセイは、これに限定されるわけではないが、必要に応じてヒト血清アルブミンを添加した完全培地、培地199、またはRPMI1640を含む種々の培地中で実施され得る。経内皮移動のための十分な時間(一般に1時間)の後、単層をEGTAなどのキレート化剤で洗浄して、先端表面になお結合している単球または好中球を除去する。コラーゲンゲルを基材として使用する場合、次に単層を、2価カチオンを含むリン酸緩衝生理食塩水でリンスして、グルタルアルデヒド中で一晩固定する。固定はコラーゲンゲルを強化するので、ゲルが操作しやすくなる。単層は、好ましくはWright−Giemsaを用いて染色し、好ましくはノマルスキー顕微鏡下で直接観察するためにスライドに載せる。ノマルスキー顕微鏡を使用すると、焦点面によって、単層の先端表面に付着した単球または好中球を遊出したものから識別することができる。遊出の定量化できる測定は、単層の下に移動した、単層に関連するこれらの単球または好中球の割合である。したがって、遊出の測定は、単層への接着の程度とは独立している。
【0073】
HIF−1αは、低酸素状態および正常酸素状態の両方の下で、マクロファージ中の低酸素応答性遺伝子の発現レベルを調節することが実証されている。Cramerら、Cell 112:645〜657(2003)。従って、単球移動率は、低酸素状態または正常酸素状態のいずれかのもとで評価され得る。好ましくは、このアッセイは、低酸素状態のもとで実施される。
【0074】
単球または好中球の移動は、内皮のサイトカイン刺激の存在下または非存在下で決定され得る。内皮細胞の活性化は、刺激メディエータとの接触から生じ得、代表的には、内皮を通過する単球または好中球の移動を促進する。本発明の目的のためには、内皮細胞の活性化は、好ましくは、腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキン−1(IL−1)などのサイトカインとの接触から生じる。
【0075】
用語「内皮細胞」は、当該分野での普通の意味を有する。内皮細胞は、体全体にわたって、特に血管組織(静脈、動脈、および毛細血管)の管腔に見出される内皮を構成する。関節炎においては、白血球が循環血から関節に移動して、そこで炎症に関与する。
【0076】
(2.単球/マクロファージおよびT細胞のアポトーシス)
上記に記載のように、単球/マクロファージのアポトーシスの阻害は、HIF−1α遮断の予想される利益に対する第二の貢献因子である。アポトーシスの測定は、細胞の型と使用するアッセイとに依存して、異なり得る。標準的なアポトーシスアッセイ(例えば、アネキシンVおよびTUNELアッセイ)の組み合わせを使用して、アポトーシスを起こした単球/マクロファージの割合を測定すること、および定量的な抗ヒストンELISAを使用して、アポトーシスに対するHIF−1α遮断の全体的な効果を測定することは、有利であり得る。マクロファージのアポトーシスの量は、低酸素状態または正常酸素状態のいずれのもとでも評価され得る。好ましくは、上記アッセイは、低酸素状態のもとで実施され得る。
【0077】
(a.DNA分断アッセイ)
DNAの完全性の喪失が、アポトーシスの特徴である。アポトーシス細胞から抽出されたDNAがゲル電気泳動を使用して分析される場合、DNA分断の特徴的な「ラダー」がみられる。しかし、細胞からのDNAの抽出は、時間を消費するプロセスであり、そして代替的な方法は、アポトーシス細胞におけるDNAの特徴的な分断を検出するために同等に適切である。DNA分断は、種々のアッセイによって検出され得る。これらのアッセイとしては、ヨウ化プロピジウムアッセイ、アクリジンオレンジ/エチジウムブロマイド二重染色、TUNEL技術およびISNT技術、ならびに変性に対するDNA感受性のアッセイが挙げられる。
【0078】
(b.アネキシンVアッセイ)
ホスファチジルセリン(PS)およびホスファチジルエタノールアミンの外面化(externalization)は、アポトーシスの間の細胞表面の変化の証明である。アネキシンVは、35〜36kDaのCa2+依存性リン脂質結合タンパク質であり、アネキシンVは、PSに対して高い親和性を有し、露出されたPSを有する細胞に結合する。アネキシンVは、種々のマーカーのうちのいずれかに結合対化され得て顕微鏡またはフローサイトメトリーによって検出されることを可能にする。HIF−1α活性を阻害する化合物を同定する方法での使用またはHIF−1α活性を阻害する化合物についてスクリーニングする方法において使用するためには、フローサイトメトリーによって検出される蛍光的に標識されたアネキシンVを使用することが好ましい。
【0079】
マクロファージは、リウマチの被験体または健常な被験体のいずれかから、上で議論されたように得られる。細胞は、必要に応じてアポトーシスのデスレセプター依存性誘導因子の存在下において、1時間〜24時間の間、試験化合物とともにインキュベートされる。アポトーシスを起こす細胞の数は、標識されたアネキシンVおよびバイタル色素(例えば、ヨウ化プロピジウム(PI)または7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD))での染色によって決定される。PSの外面化はアポトーシスの初期段階で起こるので、アネキシンV染色は、アポトーシスプロセスまたはネクローシスプロセスのいずれかから生じる、細胞死の最後の段階に伴って起こる膜の完全性の喪失に先行する。従って、バイタル色素(例えば、ヨウ化プロピジウム(PI)または7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD))と組み合わせたアネキシンVでの染色は、初期アポトーシス細胞(アネキシンV陽性かつバイタル色素陰性)の同定を可能にする。
【0080】
(3.HIF−1α発現)
HIF−1αの活性は、HIF−1αの発現を減少させることか、または発現されたHIF−1αのタンパク質分解性分解を増加させることによって、アンタゴナイズされ得る。タンパク質の発現レベルを決定する方法は、当該分野で周知である。現在公知であるか、または将来見出される任意の測定技術が、細胞において発現されるか、または存在するHIF−1αタンパク質の量を決定するために使用され得る。本明細書において例示された方法は、HIF−1α発現レベルを測定するための多くの受容可能な方法のうちの1つにすぎない。
【0081】
単球またはマクロファージは、PercollもしくはHistopaque(Sigma Chemical Co.)勾配遠心分離、または向流遠心エルトリエーション(elutriation)(Beckman−Coulter)のいずれかによって、慢性関節リウマチ患者もしくは健常なドナー由来の滑液または末梢血単核細胞から単離され得る。単球は、20%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)+1μg/mlポリミキシンB硫酸(Sigma Chemical Co.)を含むRPMIを用いて、24ウェルプレート(Costar)中でマクロファージに分化され得る。このマクロファージは、本発明の化合物と共に1時間〜数日間の範囲の期間の間インキュベートされる。インキュベーションの後、これらの細胞は、任意の適切な方法によって溶解されて、細胞溶解物を生成する。HIF−1α発現の量は、ウエスタンブロット、免疫沈降、または抗HIF−1α抗体を利用した任意の他の定量手順を介して決定され得る。適切な抗HIF−1α抗体としては、ポロクローナル抗体およびモノクローナル抗体(クローン OZ12、OZ15、H1α67、ESEE122)が挙げられる。HIF−1αに特異的な任意の抗体もしくは抗体フラグメント、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体が、HIF−1α発現を定量するために使用され得る。適切なネガティブコントロール(試験化合物に曝露されたことを除いて試験細胞と同様に処置された細胞が挙げられる)は、実験の間の細胞の操作よりも上記化合物に曝露されたことに起因する、HIF−1α発現の変更を同定するために実施されるべきである。
【0082】
当該分野で周知の種々の手順は、HIF−1αに対するポリクローナル抗体の産生のために使用され得る。例えば、ポリクローナル抗体を産生するために、種々の宿主動物(ウサギ、マウス、ラットなどが挙げられるがこれに限定されない)が、HIF−1αまたはその誘導体を用いた注射によって免疫され得る。種々のアジュバントが、宿主の種に依存して、免疫応答を増加させるために使用され得る。このアジュバントとしては、フロイントアジュバント(完全アジュバントおよび不完全アジュバント)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えば、リゾレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および有用なヒトアジュバントの可能性のあるもの(例えば、BCG(bacille Calmette−Guerin)およびcorynebacterium parvum)が挙げられるが、これらに限定されない。このようなアジュバントもまた、当該分野で周知である。
【0083】
HIF−1αに対するモノクローナル抗体(mAb)は、当該分野で公知の任意の技術を使用して調製され得る。この技術は、培養における連続的な細胞株による抗体分子の産生を提供する。これらの技術としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:KohlerおよびMilstein(Nature 256:495−497(1979))により最初に記載されたハイブリドーマ技術、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,Immunology Today 4:72(1983))、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら,1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgAおよびIgD任意の免疫グロブリンクラスおよびその任意のサブクラスの抗体であり得る。本発明において用いるmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロで培養されてもインビボで培養されてもよい。
【0084】
(4.HIF−1α転写活性)
本発明の方法はまた、HIF−1αの転写活性化活性の直接的な阻害を企図する。HIF−1αの転写活性化活性は、標的の低酸素応答性エレメント(HRE)に結合したHIF−1αタンパク質の量を試験することによるか、または低酸素応答性遺伝子(例えば、VEGF)のHIF−1α誘導性発現の量を試験することのいずれかにより決定され得る。HIF−1αとHREとの間の相互作用は、現在公知かまたは将来見出される任意の標準的なタンパク質−DNA相互作用アッセイによって決定され得る。HREの好ましい配列は、配列5’−TACGTGCT−3’(配列番号1)である。好ましい方法において、HIF−1α応答性遺伝子からの転写の量は、HIF−1α応答性遺伝子産物(例えば、VEGFまたはエリスロポエチン)の量を決定することによって直接測定され得る。あるいは、HIF−1α応答性遺伝子のプロモーターは、容易に検出可能なタンパク質(例えば、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)の発現を制御するように配置され得る。
【0085】
(5.新脈管形成)
HIF−1αの活性は、新脈管形成において重要な役割を果たす。従って、HIF−1α活性の阻害は、新脈管形成の阻害によって実証され得る。新脈管形成活性を決定するいくつかの方法が、当該分野で公知である。現在公知であるか、または将来見出される任意の測定技術を使用して、新脈管形成に対するHIF−1α活性のアンタゴニストの効果が測定され得る。例示的方法において、内皮細胞は、基底タンパク質の固体ゲル(Chemicon,Intl.,Temecula,CAからのECMatrixTMとして利用可能)上でインキュベートされる。上記基底膜は、多くの関連タンパク質(例えば、ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン、ニドジェン、増殖因子(例えば、TGFβおよびFGF)、ならびにタンパク質分解酵素(例えば、プラスミノゲン、tPA、およびMMP))を含み得る。内皮細胞の任意の供給源が使用され得る。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、本発明のアッセイのための内皮細胞の好ましい供給源である。この内皮細胞は、試験化合物の存在下または非存在下において4〜18時間、基底タンパク質とともにインキュベートされる。毛細管形成の指標である細胞ネットワークの形成は、種々の方法によって同定され得る。これらの方法は、細胞管を可視化する工程、分枝点をカウントする工程、または規定された視野領域での全毛細管の長さを計算する工程を包含する。クリスタルバイオレットなどの薬剤を用いた細胞の染色は、毛細管形成の同定を容易にし得る。
【0086】
(F.処置の方法)
一つの局面において、本発明は、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ)の少なくとも1つの症状を緩和する方法を提供し、この方法は、治療有効量のHIF−1α活性のアンタゴニストを炎症性疾患を有する患者に投与する工程を包含する。本発明はまた、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を緩和するための方法を提供し、この方法は、治療有効量のHIF−1α活性のアンタゴニストを慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程を包含する。HIF−1α活性のアンタゴニストは、タンパク質であっても、核酸であっても、低分子インヒビターであってもよい。好ましいタンパク質アンタゴニストは抗体であり、より好ましくはモノクローナル抗体である。好ましい核酸アンタゴニストとしては、HIF−1αをコードする遺伝子のアンチセンスインヒビターが挙げられる。本発明はまた、治療有効量のHIF−1α活性のアンタゴニストを投与することによって滑膜細胞密度を低下させる方法、軟骨分解を減少させる方法、および滑膜組織におけるIL−6濃度を減少させる方法を包含する。
【0087】
アンチセンスインヒビターは、標的タンパク質の発現を干渉し得ることが示されている。Cohen,「Designing antisense oligonucleotides as pharmaceutical agents」,Trends Pharmacol Sci.10:435−7(1989)およびWeintraub「Antisense RNA and DNA」,Sci Am.262:40−6(1990)(両方とも、本明細書において参考として援用される)を参照のこと。HIF−1αのアンチセンスインヒビターは、PCT公開公報WO 03/085110(本明細書において参考として援用される)において詳細に記載される。
【0088】
低分子はまた、抗癌療法の文脈においてHIF−1α活性を阻害し得ることが示されている。例えば、低分子は、タンパク質分解のためにHIF−1αを標的にするプロリルヒドロキシラーゼ酵素の活性を増加させ得る。例示的な化合物は、PCT公開公報WO 02/074981(本明細書において参考として援用される)に記載されている。HIF−1α活性を阻害することが公知の他の化合物としては、YC−1刺激物質(5’−ヒドロキシメチル−2’−フリル)−1−ベンジルインダゾール)、2−メトキシエストラジオール、タキソール、ビンクリスチン、1−メチルプロピル−2−イミダゾリルジスルフィド、プレウロチン(pleurotin)、ラパマイシン/CCI779、LY294002、ワートマニン、ゲルダナマイシン、カンプトテシン(およびアナログ(例えば、Topotecan))、PD98059、ならびにキノカマイシン(quinocarmycin)(およびアナログ(例えば、NCS−607097(DX−52−1)))が挙げられる。HIF−1α活性の例示的なタンパク質インヒビターは、ホスフェートアンドテンションホモログ(PTEN)である。
【0089】
本発明において有用な化合物は、医療的に受容可能な投与経路によって、治療有効量で患者に投与される。このような経路は、例えば、経口経路、非経口経路(例えば、筋肉内経路、静脈内経路、皮下経路、腹腔内経路)、経皮経路、直腸経路、吸入による経路などである。採用される投薬量範囲は、投与の経路ならびに処置される患者の年齢、体重および状態に依存する。
【0090】
種々の送達系が公知であり、種々の送達系を使用して本発明の組成物(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現し得る組換え細胞、レセプター媒介性エンドサイトーシス中の被包物(例えば、WuおよびWu,1987,J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照のこと)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築物など)を投与し得る。導入の方法としては、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、硬膜外経路、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。上記化合物は、任意の便利な経路によって、例えば、注入もしくはボーラス注射によってか、上皮の裏打ちもしくは粘膜皮膚の裏打ち(例えば、口粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)を通じた吸収によって投与され得る。そして上記化合物は、他の生物学的活性因子と一緒に投与され得る。投与は、全身投与であっても局所投与であってもよい。さらに、本発明の組成物を任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射が挙げられる)によって中枢神経系に導入することが所望され得る。脳室内注射は、例えば、リザーバー(例えば、Ommayaリザーバー)に取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にされ得る。肺投与はまた、例えば、吸入器または噴霧器の使用と、エアロゾル化因子との処方とによって適用され得る。
【0091】
(G.組み合わせ療法)
1つの局面において、本発明は、慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を緩和する方法を提供し、この方法は、HIF−1α活性のアンタゴニストおよび抗炎症薬を慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程を包含する。好ましくは、抗炎症薬は、メトトレキサート、TNF−αアンタゴニスト、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、およびステロイドの群より選択される。より好ましくは、抗炎症薬は、メトトレキサート、アナキンラ、またはプレドニゾンである。本発明の1つの実施形態において、上記患者は、メトトレキサートまたはTNF−α遮断に対して耐性である。
【0092】
種々の処置プロトコルが、単独か、またはHIF−1α活性のアンタゴニスト作用と組み合わせてシミュレートされた。いくつかの治療の効果は、モデルにおいて表されている。上記モデルは、以下(1)〜(4)を用いた処置の影響を再現する:(1)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID;例えば、インドメタシン)、(2)Etanercept(可溶性II型TNF−αレセプター)、(3)メトトエレキサート(MTX)、(4)糖質コルチココイド(例えば、メチルプレドニゾロン)、および(5)Anakinra(IL−1レセプターアンタゴニスト(IL−1Ra))。
【0093】
各治療は、その作用の様式、分子活性、および薬物動態学的特徴、ならびにその推奨される臨床的投与レジメンに基づいて実施される。臨床的に推奨される定期的な薬物投与に関連する薬物曝露における、時間依存的バリエーションの重要性を決定するために、本発明者らは、臨床的スケジュールに基づいたシミュレーション結果を一定濃度の持続的用量に対する結果と比較した。この持続的用量は、血清濃度時間曲線下面積(serum area−under−the−curve)(AUC)の正味の薬物曝露と同等である。2種の異なる投与スケジュールに対するシミュレーションの結果は、最小限にのみ異なった。定期的な投与に起因する一過性の効果を排除することによって結果の提示を単純化するために、本明細書において議論される結果は、持続的用量療法のシミュレーションに基づく。
【0094】
シミュレートされた処置の影響は、現実の分子活性から生じる。例えば、Etanerceptは、TNF−αへの結合および中和としてモデル化される;過形成における任意の引き続く変化、軟骨分解、または他の測定は、Etanerceptの直接的効果または特定の効果ではなく、遊離した活性TNF−αのこの減少の二次的な結果である。各治療について直接実現された効果は、以下のとおりである。
【0095】
本来のNSAIDの作用の共通様式は、シクロオキシゲナーゼ(COX)経路およびそれらの下流の生成物(特に、プロスタグランジン−E2(PGE2))の合成の阻害である。このNSAIDのモデル実行は、マクロファージ、FLS、および軟骨細胞におけるPGE2合成のNSAIDによる用量依存的阻害に関するインビトロデータに基づく。提示されたシミュレーション結果は、1日に3回50mgのインドメタシンを経口投与される投与スケジュールによって達成されたものと等しい血清AUC薬物曝露である、一定持続的用量のためのものである。
【0096】
EtanerceptおよびInfliximab(それぞれ、外因性sTNF−RIIおよび抗TNF−α抗体)は、可溶性TNF−αの結合および中和としてモデル化される。これらの因子のTNF−αへの結合は、各分子の結合率のパラメータについての適切な値を使用してモデル化される。TNF−αへの可溶性レセプター(または抗TNF−α)の正味の結合率は、以下のように結合率と解離率との間の差異として計算される:
【0097】
【化1】

提示されたシミュレーション結果は、Etanerceptの一定の持続的用量についてのものである。この用量は、週に2回25mgを皮下投与する投与スケジュールで達成されたものと同程度の血清AUC薬物曝露である。
【0098】
メトトレキサート療法は、特定の細胞機能に対する直接的効果を定量するインビトロデータに基づいて実施される。この細胞機能としては、T細胞増殖およびFLS増殖の用量依存的阻害、媒介因子の合成、およびアポトーシスが挙げられる。さらに、血管増殖および血管新生に対するメトトレキサートの阻害効果を説明するために、内皮接着分子の全発現の減少がまた、実施される。提示されたシミュレーション結果は、1週あたり12.5mgを経口投与される投与スケジュールのものと同程度の血清AUC薬物曝露の一定の持続的用量についてのものである。
【0099】
メチルプレドニゾロンは、インビトロデータに従う種々の細胞性媒介因子合成の割合を用量依存的に調節することによって再現される。他の細胞機能に対する効果は、直接的にはモデル化されないが、変更された媒介因子依存的な調節から生じ得る。提示されたシミュレーション結果は、1日1回5mgのメチルプレドニゾンを経口投与される投与スケジュールのものと同程度の血清AUC薬物曝露の一定の持続的用量についてのものである。
【0100】
Anakinraは、内因性IL−IRaと同様に、全ての細胞機能に対するIL−1βの影響を減少させるものとしてモデル化される。これは、レセプターアンタゴニストの即効濃度の存在下においてレセプター結合の減少の影響を説明するように適応されている「有効な」IL−1βの濃度を計算することによって実施される。提示されたシミュレーション結果は、1日1回100mgのAnakinraを皮下投与される投与スケジュールのものと同程度の血清AUC薬物曝露の一定の持続的用量についてのものである。
【0101】
仮想的な患者におけるリウマチ疾患の進行に対する処置の効果のシミュレーションは、このモデルにおいて基線を確立するための1年間処置をしない仮想的な患者において慢性関節リウマチをシミュレートすることによって実施された。次いで、処置なし、現在の処置プロトコル、またはHIF−1αアンタゴニスト作用と組み合わせた現在のプロトコルのいずれかが、モデル化された。HIF−1αアンタゴニスト作用は、以下(i)〜(iii)を有するHIF−1α活性の100%阻害を想定してモデル化された:(i)各生物学的プロセスに対するHIF−1α活性の最大の予想効果を表す「より高い最大効果」、(ii)HIF−1α活性の現実的な寄与の見積もりである「最も有望な最大効果」(これは、インビボ環境および重複性を考慮する);および(iii)最も低い実証された効果を表す「より低い最大効果」(これは、他のタンパク質との起こり得る重複を考慮する)。滑膜細胞密度および軟骨分解の割合に対して6ヶ月間、代表的な患者においてシミュレーションされた処置(または処置を欠く)の効果は、表3に示される。
【0102】
【表3】

代表的な慢性関節リウマチ患者におけるシミュレーションの結果は、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(例えば、Anakinra)の投与に加えたHIF−1α活性の遮断は、軟骨分解を56%〜76%まで、そして滑膜細胞過形成を35%〜71%まで減少することによって、慢性関節リウマチの臨床的結果を改善し得ることを示した。同様に、メトトレキサート、Etanerceptまたはステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン)と組み合わせたHIF−1α阻害での処置は、単独療法で達成することができない滑膜細胞過形成の減少および軟骨分解の減少を示す。
【0103】
メトトレキサート耐性患者における標準的な抗リウマチ処置と組み合わせたHIF−1αアンタゴニスト作用のシミュレーションは、正常なメトトレキサート応答性患者においての応答パターンと類似した応答パターンを明らかにした。滑膜細胞密度に対して6ヶ月間、メトトレキサート耐性患者においてシミュレートされた処置(または処置を欠いた)の効果は、表3に要約される。シミュレーションの結果は、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(例えば、Anakinra)の投与に加えたHIF−1α活性の遮断は、軟骨分解を55%〜71%まで、そして滑膜細胞過形成を27%〜57%まで減少することによって、慢性関節リウマチの臨床的結果を改善し得ることを示した。興味深いことに、メトトレキサート耐性患者へのHIF−1αアンタゴニスト作用とメトトレキサートの投与とを含む組み合わせ療法は、HIF−1αアンタゴニスト作用またはメトトレキサート処置単独によって達成されたものよりも大きな程度まで、軟骨分解および滑膜細胞過形成を減少することによって慢性関節リウマチの臨床的結果を改善し得る。代表的な慢性関節リウマチ患者と同様に、Etanerceptまたはステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン)と組み合わせたHIF−1αアンタゴニスト作用での処置は、単独療法では達成することができない滑膜細胞過形成および軟骨分解の減少を示す。
【0104】
TNF−α中和療法は、慢性関節リウマチ患者の処置においてますます重要になっている。しかし、全ての慢性関節リウマチ患者のおおよそ3分の1は、TNF−α中和療法に対して臨床的に顕著な応答を達成しない。TNF−α遮断耐性患者の3つの潜在的なクラスは、上に記載されたモデルにおいて規定された。滑膜細胞過形成および軟骨分解は、TNF−αが、異なる範囲内で変動する場合、差次的に影響され、現在のモデル内の3つのノンレスポンダーのクラスの同定につながる。具体的には、初期のTNF−α活性が低い患者は、TNF−α遮断に応答して、滑膜細胞過形成の減少を示すが、軟骨分解においては最小限の減少を示す(軟骨ノンレスポンダー、すなわちCNR)一方、初期のTNF−α活性が無視できる患者は、滑膜細胞過形成および軟骨分解の両方において弱い反応しか示さない(二重ノンレスポンダー、すなわちDNR)。あるいは、異常に高いレベルまたは耐性レベルのTNF−α活性を有する患者においてTNF−αの中和が不十分なことは、軟骨分解の改善を生じるが、過形成においては弱い応答しか生じない(過形成ノンレスポンダー、すなわちHNR)。機構的に、低レベルのTNF−αを有する患者において、リウマチ疾患は、代替的なマクロファージ活性化経路(例えば、CD−40−ライゲーション)の活性の増加、抗炎症サイトカイン(例えば、IL−10)の活性の減少、および分解を促進するサイトカイン(例えば、IL−1β)の活性の増加によって永続された。ノンレスポンダーの患者はまた、他の治療(例えば、IL−1Ra)に対する変更された応答を示した(データは示さず)。
【0105】
TNF−α遮断に対して顕著な臨床的応答を達成しない患者は、慢性関節リウマチの集団の相当のサブセットを表す。TNF−α過形成ノンレスポンダーにおける標準的な抗リウマチ処置と組み合わせたHIF−1αアンタゴニスト作用のシミュレーションは、正常なメトトレキサート応答性患者においてよりもわずかに異なるパターンの応答を明らかにした。滑膜細胞密度および軟骨分解に対して6ヶ月間、TNF−α過形成ノンレスポンダーにおいてシミュレートした処置(または処置を欠いた)の効果は、表3に示される。シミュレーションの結果は、TNF−α遮断耐性患者に対するHIF−1αアンタゴニスト作用およびメトトレキサートの投与を含む組み合わせ療法が、HIF−1αアンタゴニスト作用単独と比較して臨床的な結果に改善はないことを示した。しかし、Etanercept、IL−1Raまたはステロイドの処置とのHIF−1αアンタゴニスト作用の組み合わせは、単独療法またはHIF−1αアンタゴニスト作用単独と比較して、滑膜細胞過形成が少なく、より低い軟骨分解の割合を生じ得る。インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(例えば、Anakinra)の投与に加えたHIF−1α活性の遮断は、軟骨分解を55%〜76%まで、そして滑膜細胞過形成を32%〜71%まで減少させることによって慢性関節リウマチの臨床的結果を改善する。
【0106】
HIF−1α活性のアンタゴニストおよび別の抗リウマチ薬は、同時に投与される。「同時投与」および「同時に投与する」とは、本明細書において使用される場合、HIF−1α活性のアンタゴニストと別の疾患を改変する抗リウマチ薬とを、混合物(例えば、1つの薬学的組成物または溶液)、あるいは連続的に、同時に、または異なる時期であるがHIF−1α活性のアンタゴニストと他の疾患を改変する抗リウマチ薬とが相互作用ができないような時間ほどは時間が隔てていない時期に投与される別個の化合物として(例えば、別個の薬学的組成物または溶液)、投与する工程を包含する。
【0107】
選択される投与の経路に関わらず、HIF−1α活性のアンタゴニストおよび他の抗リウマチ薬は、薬学の分野で公知の従来の方法によって薬学的に受容可能な単位投薬形態に処方される。HIF−1α活性のアンタゴニストおよび他の抗リウマチ薬の有効であるが、毒性のない量が、処置に使用される。HIF−1α活性のアンタゴニストおよび他の抗リウマチ薬は、混合物でか、もしくは別個に、経腸的および/または非経口的に、同時に投与され得る。非経口投与としては、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、静脈内投与、関節への直接注射、および当該分野で公知の他の投与方法が挙げられる。経腸投与は、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、液剤、などを含む。
【0108】
(2.薬学的組成物)
本発明の局面は、温血動物の慢性関節リウマチを処置するのに有用な薬物を製造する方法を提供する。薬物は、経口投与、局所投与、経皮投与、経直腸投与、吸入投与、非経口(静脈内、筋肉内、または腹腔内)投与などに適した組成物を提供するために、既知の処方技術に従って調製される。本発明の組成物を調製するための詳細な指針は、Mack Publishing Co.,Easton,PA 18040によって出版されたRemington’s Pharmaceutical.Sciencesの第18版または第19版を参照することによって見出される。関連する部分は、参考として本明細書に援用される。
【0109】
単位用量または複数回用量の様式が考慮され、それぞれ特定の臨床状況において利点を提供する。単位用量は、慢性関節リウマチを処置する状況において、所望の効果を生じるように計算されたHIF−1α活性のアンタゴニストの所定量を含有する。複数回用量様式は、所望の結果を達成するために、複数の1回用量、または分別用量が必要なときに、特に有用であり得る。これらの投薬様式のどちらも、特定の化合物の独自の特徴、達成されるべき特定の治療効果、および炎症性疾患の処置のための特定の化合物を調製する当該分野に固有の任意の制限によって、決定されるか、またはそれらに直接依存する仕様を有し得る。
【0110】
単位用量は、被験体において慢性関節リウマチを処置するのに十分な治療有効量を含有し、化合物を約1.0〜1000mg(例えば、約50〜500mg)含有し得る。
【0111】
好ましい実施形態において、本発明の薬物は、ヒトへの静脈内投与に適した薬学的組成物として、日常的な手順に従って処方される。通例、静脈内投与用の薬学的組成物は、滅菌等張水性緩衝液による溶液である。必要な場合に、薬学的組成物は、可溶化剤および注射部位の疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、活性剤の量を表示したアンプルまたはサシェなどの密封容器内に、例えば、凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、個別に、または共に混合されて単位投薬様式で供給される。組成物が注入によって投与される場合、滅菌製薬グレードの水または生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて分配され得る。組成物を注射によって投与する場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルは、成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【0112】
本発明の薬物は、中性または塩の形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、アニオンを用いて形成された塩(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩)、およびカチオンを用いて形成された塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩)が挙げられる。
上記化合物は好ましくは、摂取錠剤、口腔錠、カプセル剤、カプレット剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、トローチ剤、カシェ剤、ロゼンジなどとして、適切な処方物で経口投与される。一般に、最も容易な処方物は、錠剤またはカプセル剤である(個別にまたは集合的に「経口投薬単位」と呼ばれる)。適切な処方物は、化合物の特徴を適切な組成物を処方するために利用可能な賦形剤に適合させる、利用可能な標準的処方技術に従って調製される。
【0113】
その形態は、化合物を迅速に送達し得るか、または持続放出性調製物であり得る。化合物は、硬カプセルまたは軟カプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、または飲料、食品もしくは他の食物に組み入れられ得る。最終組成物および調製物のパーセンテージは、もちろん変化し得、好都合には最終形態(例えば、錠剤)の重量の1%と90%との間の範囲であり得る。このような治療的に有用な組成物の量は、適切な投薬量が得られる量である。本発明による好ましい組成物は、経口投薬単位形態が5mgと1000mgとの間の重さの投薬単位中で約5.0重量%〜約50重量%(%w)を含有するように調製される。
【0114】
経口投薬単位の適切な処方物は、バインダー(例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン);甘味剤(例えば、ラクトースまたはスクロース);崩壊剤(例えば、コーンスターチ、アルギン酸など);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);または着香料(例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油など)も含み得る。種々の他の物質が、コーティングとして存在し得るか、またはそうでなければ経口投薬単位の物理的形態を改変するために存在し得る。経口投薬単位は、シェラック、糖またはその両方でコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、染料および着香料を含有し得る。利用されるいずれの物質も、薬学的に受容可能で、かつ実質的に非毒性でなければならない。有用な賦形剤の種類の詳細は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」の第19版、Mack Printing Company,Easton,PAに見出され得る。特に、より完全な議論については91−93章を参照のこと。
【0115】
本発明の薬物は、非経口的(例えば、静脈内、筋肉内、静脈内、皮下、または腹腔内)に投与され得る。キャリアまたは賦形剤もしくは賦形剤混合物は、溶媒、あるいは例えば、種々の極性または非極性溶媒、その適切な混合物、または油を含有する分散媒体でありうる。本明細書で使用される場合、「キャリア」または 「賦形剤」は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を意味し、ありとあらゆる溶媒、分散剤または媒体、コーティング剤、抗菌剤、等張剤/低張剤/高張剤、吸収改変剤などを含む。そのような物質および薬剤の製薬活性物質への使用は、当該分野で周知である。従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療組成物での使用が企図される。さらに、他の活性成分または補助活性成分も最終組成物に組み入れられ得る。
【0116】
化合物の液剤は、適切な希釈剤(例えば、水、エタノール、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、種々の油および/またはその混合物、および当業者に既知のその他のものに、調製され得る。
【0117】
注射用途に適切な薬学的形態は、滅菌液剤、分散剤、乳剤、および滅菌粉剤を含む。最終形態は、製造および貯蔵条件下で安定でなければならない。その上、最終の薬学的形態は、汚染に対して防御されなければならず、したがって細菌または真菌などの微生物の増殖を阻害できなければならない。単回静脈内用量または単回腹腔内用量が投与され得る。あるいは、通例1〜8日間続く、低速の長期注入または複数回の短期1日注入が利用され得る。別の日数または数日に一回の投薬もまた利用され得る。
【0118】
滅菌注射用液剤は、必要な量の化合物を1つ以上の適切な溶媒に組み入れ、必要な場合、挙げた他の成分または当業者に既知である他の成分をそれに添加することによって、調製される。滅菌注射用液剤は、必要な量の化合物を必要に応じた種々の他の成分と共に適切な溶媒に組み込むことによって調製される。濾過などの滅菌手順が次に続く。通例、分散剤は、分散媒体および上で示した必要な他の成分も含む滅菌ビヒクルに、化合物を組み入れることによって作製される。滅菌粉剤の場合、好ましい方法は真空乾燥または凍結乾燥を含み、それに任意の必要な成分が添加される。
【0119】
いずれの場合でも、上記の最終形態は、滅菌されなければならず、中空針などの注射用デバイスを簡単に通過できなければならない。適正な粘度は、溶媒または賦形剤の適正な選択によって、達成および維持され得る。その上、レクチンなどの分子または粒子コーティングの使用、分散剤中の粒径の適正な選択、または界面活性剤特性を備えた物質の使用が、利用され得る。
【0120】
微生物の増殖の防止または阻害は、1つ以上の抗菌剤(例えば、クロロブタノール、アスコルビン酸、パラベン、テルメロサール(thermerosal)などの添加によって達成され得る。張性を変化させる薬剤(例えば、糖または塩)を含むことも好ましい。
【0121】
特定の実施形態において、本発明の組成物を処置の必要な領域に局所的に投与することが所望され得る;これは例えば、これに限定されるわけではないが、外科処置中の局所注入、外科処置後の例えば、創傷被覆材と併せた局所塗布によってか、注射、カテーテル、坐剤によってか、またはシラスティック膜などの膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン状材料の移植によって、達成され得る。
【0122】
別の実施形態において、組成物は、小胞(特に、リポソーム)中で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez−Berestein,同書,pp.317−327を参照;一般に同書を参照のこと)。
【0123】
なお別の実施形態において、組成物は制御放出系、または持続放出系において送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer,前出;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwaldら,1980,Surgery 88: 507;Saudekら,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照のこと)。別の実施形態においては、ポリマー材料が、制御放出系に使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)も参照のこと)。なお別の実施形態において、制御放出系は、治療標的(例えば、脳、腎臓、胃、膵臓、および肺)に近接して配置され得、従って全身用量の画分のみを必要とし得る(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,前出,第2巻,pp.115−138(1984)を参照のこと)。他の制御放出系は、Langer(1990)による総説に述べられている。
【0124】
本発明の薬物がタンパク質をコードする核酸である特定の実施形態において、その核酸は、そのコードされたタンパク質の発現を促進するために、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築して、それが細胞内となるように投与することによって、インビボで投与され得る。例えば、この投与は、レトロウィルスベクターの使用(米国特許第4,980,286号を参照のこと)、または直接注入、または微粒子銃(例えば、遺伝子ガン;Biolistic,Dupont)の使用、あるいは脂質または細胞表面レセプターまたは形質移入剤を用いたコーティング、あるいは核に入ることが既知であるホメオボックス様ペプチドへの結合しての投与など(例えば、Joliotら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868を参照のこと)による。あるいは、核酸は相同組換えによって、細胞内に導入され、発現のために宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【実施例】
【0125】
以下の実施例を、当業者の指針として提供する。これらの実施例は、単に本発明の実施形態の理解および実施において有用な特定の方法論を提供するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0126】
(A.実施例1:単球/T細胞の動員)
ヒトPBLを、健常ドナーまたは慢性関節リウマチ患者のクエン酸塩抗凝固処理全血から、デキストラン沈降およびFicoll−Hypaque上での密度分離によって単離する。この単核細胞を洗浄して、以前に記載されているように(Carr 1996)、ナイロンウール上およびプラスチック接着によってさらに精製する。得られたPBL(>90%CD3Tリンパ球)は、使用前にLPSを含まないRPMI/10%FCS中で15〜18時間培養する。メモリーCD4Tリンパ球サブセットおよびナイーブなCD4Tリンパ球サブセット(それぞれCD45ROおよびCD45RA)は、製造者の説明書に従って磁気細胞分離(MACS,Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach、ドイツ)を使用して、ネガティブセレクションによって単離する。HUVECを、臍帯静脈から単離して(jaffe 1973)、10%FCS、8%プールヒト血清、50μg/ml 内皮細胞成長因子(Sigma−Aldrich)、10U/mlブタ腸ヘパリン(Sigma−Aldrich)、および抗生物質を含有するM199中で一次培養物として確立する。実験を、96ウェル培養プレート内で水和I型コラーゲンゲル上に培養された2代継代の細胞に対して実施する(Muller 1989)。特定の実験において、TNF−αまたはIL−1β(それぞれ10ng/mlおよび10U/mlの最終濃度)あるいは健常ドナーまたは慢性関節リウマチ患者からの希釈滑膜液を、最後の4〜24時間に亘って培養培地に添加する。
【0127】
内皮細胞の層を通過する単球またはT細胞の移動を、測定する。このアッセイの詳細は、Mullerら、J Exp Med 176:819−828(1992)およびMullerら,J Exp Med 178:449−460(1993)において記載される。経内皮移動を、Liaoら、J Exp Med 182:1337−1343(1995)およびMullerら、J Exp Med 178:449−460(1993)において記載されるNamarski光学によって定量する。水和コラーゲンゲル上で増殖させたHUVECのコンフルエントな単層に、白血球を添加する。インキュベーション(1時間)後、非接着細胞を洗浄によって除去し、そして残った接着細胞および遊出した細胞を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の2.5%グルタルアルデヒド中で一晩インキュベートすることによって、内皮の単層上の適当な位置に固定する。複数の倍率の高い視野を顕微鏡下で観察し、記録する。遊出のデータを、内皮の下にある単層と一緒に残った全細胞の割合として表す。
【0128】
経内皮移動をまた、パラフィン包埋した単層の断面上で定量する。これらの標本を、複製したサンプルの単層を注意深く除き、外側を向いたコラーゲンゲル側と互いに対して内皮表面を配置することによって調製する。このことは、包埋プロセスの間に細胞が機械的に除かれることを防止する。ワックス中に置換した後、その標本が4つの単層サンプル(各々2つの単層の2つの異なる部分)の断面を作製するようにその標本を切断して、二等分する。標本の異なる領域をサンプリングして、同じ細胞を2度数えることがないように、少なくとも50μm離れた標本の3つのレベルに対して定量を行う。
【0129】
(B.実施例2:アポトーシスの活性化およびアネキシンVアッセイ)
単離した慢性関節リウマチの滑液MNCおよびマクロファージを、1μg/mlの抗Fas抗体(クローンCH11;Beckman Coulter)または無関係のIgMモノクローナル抗体のコントロールとともに24時間インキュベートする。冷PBSで細胞を2回洗浄し、次いで10mM HEPES(pH7.4);140mM NaCl;2.5mM CaCl中に、約1×10個の細胞/mlの濃度で再懸濁する。100μlの溶液(約1×10個の細胞)を5ml培養チューブに移す。5μlの2.5μgのアネキシンV−フィコエリトリンおよび2.5μgのバイタル色素の7−AADを各チューブに添加し、穏やかに混合して、暗所において室温で15分間インキュベートする。400μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)を各チューブに添加し、次いでその細胞を出来るだけ早く(1時間以内)細胞サイトメトリーによって分析する。アネキシンV陽性細胞の割合によって、アポトーシス細胞の割合を測定する。
【0130】
(C.実施例3:TUNELアッセイ)
細胞を24時間、組換えTNF(10ng/ml)、または1μg/mlの抗Fas、抗TNF−R1もしくは抗TRAILレセプター抗体とともにインキュベートすることによって、滑膜MNCおよびマクロファージにアポトーシスを誘導した。1〜2×10個の単球を400×Gで数分間遠心分離し、上清を廃棄して、その細胞を0.5mlのリン酸緩衝化食塩水(PBS)中に再懸濁する。5mlの1%(w/v)パラホルムアルデヒド(PBS中)に細胞懸濁液を添加し、15分間氷上に配置し、PBSで2回細胞を洗浄し、そして最後に0.5mlのPBS中に懸濁した細胞を5mlの氷冷70%(v/v)エタノールと合わせることによって、細胞を固定する。この細胞を最小限30分間、氷上またはフリーザーに静置して、次の染色工程に進める。
【0131】
このチューブを回転させて細胞を再懸濁し、細胞懸濁液の1.0mlアリコート(約2〜4×10細胞/ml)を取り出して12×75mm遠心チューブに配置する。この細胞懸濁液を、5分間300×gで遠心分離して、70%(v/v)エタノールを吸引によって除去する。遠心分離およびPBS+0.05%アジ化ナトリウム中への再懸濁によって、この細胞を2回洗浄し、沈殿させ、次いで50μlの染色溶液(カコジル酸緩衝化食塩水中、TdT酵素/FITC−dUTP)に再懸濁する。この細胞を、少なくとも1時間37℃でインキュベートする。1.0mlのPBS+0.05%アジ化ナトリウムを添加することによって、染色を停止する。300×g、5分間の遠心分離によって細胞をペレット化し、PBS+0.05%アジ化ナトリウム中に再懸濁し、そして再びペレット化する。吸引によって上清を除去し、ペレットを暗所において室温で30分間インキュベートする。この細胞を、フローサイトメトリーによって分析する。
【0132】
(D.実施例4:ヨウ化プロピジウム染色)
試験化合物の存在下もしくは非存在下において、9日目の接着性滑液マクロファージを、抗Fas抗体またはコントロールIgMとともに24時間インキュベートする。次いで、0.02% EDTAにより培養物を回収し、70%エタノール中に一晩固定し、ヨウ化プロピジウム(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)で染色する。そして、G/Gピーク(2N)の直後のサブ2倍体(subdiploid)のピークを、フローサイトメトリーによって決定する。残骸を表す可能性の高い最小限の光散乱を有する対象を除くことが必要であり得る。この残骸は、サブ2倍体集団の推定値を人工的に増加させる。代表的には、アポトーシスを起こす滑膜マクロファージ(サブ2倍体集団)の割合は、HIF−1αアンタゴニストの非存在下における2〜5%から、HIF−1α活性が完全に抑制される場合の35〜40%まで増加する。
【0133】
(E.実施例5:抗ヒストンサンドイッチアッセイ)
10個の滑膜MNCまたはマクロファージを、1μg/mlの抗Fas抗体(CH11)またはTNF−α(10ng/ml)とともに24時間インキュベートすることによって、アポトーシスを誘導する。インキュベーション後、細胞を遠心分離によってペレット化し、そして上清(インキュベーションの間、膜を通って漏れ出たネクローシス細胞からのDNAを含む)を捨てる。この細胞を溶解緩衝液中に再懸濁し、30分間室温においてインキュベートする。溶解の後、細胞核および断片化されていないDNAを、20000×gで10分間遠心分離することによってペレット化する。
【0134】
上清のアリコート(すなわち、細胞質画分)を、マイクロタイタープレートの抗ヒストン抗体のウェルに移す。複合体は、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用を介してプレートに結合される。固定化抗体−DNA抗体の複合体を3回洗浄し、免疫反応性でない全ての成分を除く。結合した複合体を、ペルオキシダーゼ基質によって明らかにした抗DNA(ペルオキシダーゼ結合体化)モノクローナル抗体を用いて検出し、着色生成物の量(従って、固定化抗体−ヒストン複合体の量)を分光光度法的に決定する。DNA−ヒストン複合体の定量的な比色分析的測定は、試験する細胞集団中に存在する、アポトーシス細胞の総量に比例する。
【0135】
(F.実施例6:HIF−1α発現のウエスタンブロット分析)
0.1%NP−40溶解緩衝液中への溶解によって、全細胞抽出物を滑膜MNCおよびマクロファージから調製する。25〜50μgの抽出物を、12.5%ポリアクリルアミドゲル上でのSDS−PAGEによって分析し、半乾燥ブロッティング(semidry blotting)によってImmobilonP(Millipore)にトランスファーする。PBS/0.2% Tween−20/5%無脂肪粉乳中で、室温で1時間フィルターをブロッキングする。PBS/0.2% Tween−20/2%無脂肪粉乳中で、4℃において、ウサギ抗HIF−1α抗体を用いてフィルターをブロットする。PBS/0.2% Tween−20/2%無脂肪粉乳中で、フィルターを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Amersham PharmaciaBiotech)に結合体化するロバ抗ウサギ二次抗体または抗マウス二次抗体(1:2,000希釈)とともにインキュベートする。Enhanced Chemiluminescence Plusキット(AmershamPharmacia Biotech)を使用して、免疫複合体の可視化を実施する。
【0136】
(G.実施例7:毛細管形成アッセイ)
基底タンパク質のゲルを、製造者の指示書に従いECMatrixTMシステム(Chemicon Intl.,Temecula,CAから利用可能)を利用して、96ウェル組織培養プレートの底に適用する。HUVECを臍帯静脈から単離し、10% FCS、8%プール化ヒト血清、50μg/ml内皮細胞増殖因子(Sigma−Aldrich)、10U/mlブタ腸ヘパリン(Sigma−Aldrich)、および抗生物質を含むM199中で、初代培養物として確立する。96ウェル培養プレート中で水和I型コラーゲンゲル(Muller 1989)上で培養した2代継代の細胞に対して、実験を行う。このHUVEC細胞を5%胎児ウシ血清を補充した増殖培地中に再懸濁する。重合化ECMatrixの表面に、5×10個の細胞を適用する。この細胞を、試験化合物の存在下または非存在下において、一晩インキュベートする。一晩のインキュベーションの後に、新脈管形成の進行を、形成された毛細管の分枝点を計数することによって定量する。少なくとも3箇所の別個の視野を計測して、別個の視野に関連する計数の平均として実験値を決定する。
【0137】
上記の明細書において言及された全ての刊行物および特許は、本明細書において参考として援用される。本発明の記載された方法およびシステムの種々の改変ならびに変化物は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、特許請求された本発明が、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際、本発明を実施するための、記載された様式の種々の改変は、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、代表的な慢性関節リウマチ患者における、滑膜細胞密度に対するHIF−1α遮断の効果を説明する。
【図2】図2は、代表的な慢性関節リウマチ患者における、軟骨分解に対するHIF−1α遮断の効果を説明する。
【図3】図3は、代表的な慢性関節リウマチ患者における、滑膜組織中のIL−6に対するHIF−1α遮断の効果を説明する。
【図4】図4は、代表的な慢性関節リウマチ患者における、個々の有意な生物学的プロセスに対するHIF−1α遮断のシミュレーションを説明する。
【図5】図5は、メトトレキサート耐性患者における、個々の有意な生物学的プロセスに対するHIF−1α遮断のシミュレーションを説明する。
【図6】図6は、メトトレキサート耐性患者における、滑膜細胞密度に対するHIF−1α遮断の効果を説明する。
【図7】図7は、メトトレキサート耐性患者における、軟骨分解に対するHIF−1α遮断の効果を説明する。
【図8】図8は、メトトレキサート耐性患者における、滑膜組織中のIL−6に対するHIF−1α遮断の効果を説明する。
【図9】図9は、HIF−1α阻害の比較を提供する。この比較は、代表的な慢性関節リウマチ患者におけるHIF−1αアンタゴニスト作用の「より高い最大効果(upper maximum effect)」での、マクロファージのアポトーシスの割合の増加および単球漸増割合の減少から予測した比較である。
【図10】図10は、HIF−1α阻害の比較を提供する。この比較は、代表的な慢性関節リウマチ患者におけるHIF−1αアンタゴニスト作用の「最も可有望な最大効果(most likely maximum effect)」での、マクロファージのアポトーシスの割合の増加および単球漸増の割合の減少から予測した比較である。
【図11】図11は、低酸素レベルでの炎症部位における低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)を制御するか、またはこれによって制御される因子を説明する。左上のボックス:低酸素は、HIF−1αを分解するプロリルヒドロキシラーゼ酵素を阻害する。右上のボックス:HIF−1αは、炎症のいくつかの局面(すなわち、損傷組織の赤みおよび腫れ、ならびに糖分解酵素を介した損傷領域への白血球の移動)に対して必要とされる;HIF−1αはまた、血管内皮増殖因子(VEGF)の産生を誘導する。下のボックス:HIF−1αは、一酸化窒素(NO)の産生を増加させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を緩和する方法であって、該方法は、
HIF−1α活性のアンタゴニストの治療有効量を慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸が、アンチセンスインヒビターである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記HIF−α活性のアンタゴニストが、低分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アンタゴニストが、少なくとも45%HIF−1α活性を低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アンタゴニストが、少なくとも85%HIF−1α活性を低下させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アンタゴニストが、少なくとも95%HIF−1α活性を低下させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、メトトレキサート耐性患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、TNF−α遮断ノンレスポンダーである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
関節において滑膜細胞の密度を低下させる方法であって、該方法は、
異常に上昇した滑膜細胞密度に関連する状態を有する患者に、治療有効量のHIF−1α活性のアンタゴニストを投与する工程
を包含する、方法。
【請求項12】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、タンパク質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、核酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸が、アンチセンスインヒビターである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、低分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記アンタゴニストが、少なくとも45%HIF−1α活性を低下させる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記アンタゴニストが、少なくとも85%HIF−1α活性を低下させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アンタゴニストが、少なくとも95%HIF−1α活性を低下させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、メトトレキサート耐性患者である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、TNF−α遮断ノンレスポンダーである、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
関節において軟骨分解を減少させる方法であって、該方法は、
異常に高い率の軟骨分解に関連する状態を有する患者に、治療有効量のHIF−1α活性のアンタゴニストを投与する工程
を包含する、方法。
【請求項22】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、タンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、核酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸が、アンチセンスインヒビターである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記HIF−α活性のアンタゴニストが、低分子である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記アンタゴニストが、少なくとも45%HIF−1α活性を低下させる、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記アンタゴニストが、少なくとも85%HIF−1α活性を低下させる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記アンタゴニストが、少なくとも95%HIF−1α活性を低下させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が、メトトレキサート耐性患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が、TNF−α遮断ノンレスポンダーである、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
滑膜組織においてIL−6濃度を低下する方法であって、該方法は、
滑膜組織における異常に高い濃度のIL−6に関連する状態を有する患者に、治療有効量のHIF−1α活性のアンタゴニストを投与する工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、タンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、核酸である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記核酸が、アンチセンスインヒビターである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記HIF−1α活性のアンタゴニストが、低分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記アンタゴニストが、少なくとも45%HIF−1α活性を低下させる、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記アンタゴニストが、少なくとも85%HIF−1α活性を低下させる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記アンタゴニストが、少なくとも95%HIF−1α活性を低下させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記患者が、メトトレキサート耐性患者である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、TNF−α遮断ノンレスポンダーである、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
慢性関節リウマチの処置に使用するための薬物を製造する方法であって、該方法は、
(a)以下の工程:
(i)化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量を該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量と比較する工程;および
(ii)該化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも低い場合に、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用なものとして同定する工程
によって、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用なものとして同定する工程;ならびに
(b)ヒトでの消費のために該化合物を処方する工程
を包含する、方法。
【請求項42】
前記化合物の存在化におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも45%低い、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記化合物の存在化におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも85%低い、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物の存在化におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも95%低い、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記HIF−1α活性の量が、低酸素条件下で測定される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記HIF−1α活性の量を測定する工程が、低酸素応答性エレメント(HRE)に結合されたHIF−1αの量を測定する工程を包含する、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記HREが、配列5’−TACGTGCT−3’(配列番号1)を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記HIF−1α活性の量を測定する工程が、HIF−1α応答性遺伝子からの転写の量を測定する工程を包含する、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記HIF−1α応答性遺伝子が、サイクリンG2、インスリン増殖因子(IGF)−2、IGF結合タンパク質1/2/3、WAF1、TGF−α、TGF−β3、アドレノメデュリン、エリスロポエチン、IGF−2、IGF結合タンパク質1/2/3、一酸化窒素シンタテーゼ−2、TGF−α、血管内皮増殖因子(VEGF)、NIP3、NIX、RTP801、自己分泌型運動因子/GPI、c−MET、LDLレセプター関連タンパク質1、TGF−α、ケラチン14/18/19、ビメンチン、MIC2/CD99、エリスロポエチン、内分泌腺由来型VEGF、エンドグリン、レプチン、LDLレセプター関連性タンパク質1、TGF−β3、α1B−アドレナリン作用性レセプター、アドレノメデュリン、エンドセリン−1、ヘムオキシゲナーゼ−1、一酸化窒素シンタテーゼ−2、DEC1、DEC2、ETS−1、NUR77、カルボニックアンヒドラーゼ9、腸三葉型因子、多剤耐性1、アデニレートキナーゼ3、Ecto−5’−ヌクレオチダーゼ、セルロプラスミン、トランスフェリン、トランスフェリンレセプター、ヘキソキナーゼ1/2、自己分泌型運動因子/GPI、エノラーゼ1、グルコース輸送体1、GAPDH、乳酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホフルクト−2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビホスファターゼ−3、ホスホフルクトキナーゼL、ホスホグリセレートキナーゼ1、ピルビン酸キナーゼM、トリオースホスフェートイソメラーゼ、カテプシンD、V型コラーゲン(α1)、フィブロネクチン1、マトリックスメタロプロテアーゼ2、プラスミノゲン活性化因子インヒビター1、プロリル−4−ヒドロキシラーゼα(I)、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子レセプター、レプチン、およびトランスグルタミナーゼ2からなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記HIF−1α応答性遺伝子が、VEGF、Glut−1、エノラーゼ1、アルドラーゼAからなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記HIF−1α活性の量が、以下:
(a)前記化合物の存在下において内皮細胞の少なくとも1つの層を通って移動する白血球の量を、該化合物の非存在下において内皮細胞の少なくとも1つの層を通って移動する白血球の量と比較する工程
を包含するプロセスによって測定され、そしてここで、該移動する白血球の量は、該HIF−1α活性の量を表す、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記化合物は、該化合物の存在下において移動する白血球の量が、該化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも30%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物は、該化合物の存在下において移動する白血球の量が、該化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも40%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記化合物は、該化合物の存在下において移動する白血球の量が、該化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも50%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記内皮細胞が、培養ヒト臍静脈内皮細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記内皮細胞が、腫瘍壊死因子またはインターロイキン−1によって刺激される、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの層の内皮細胞が、単層の内皮細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記白血球が、単球である、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記HIF−1α活性の量が、正常酸素条件下で測定される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記化合物の存在化におけるHIF−1α活性の低下が、該化合物の非存在下における白血球のアポトーシスの量よりも多い、該化合物の存在下における白血球のアポトーシスの量を観察することによって同定される、請求項41に記載の方法。
【請求項61】
前記白血球が、マクロファージである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、該化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.25倍多い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、該化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.5倍多い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、該化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.7倍多い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記マクロファージのアポトーシスの量が、以下:
(1)前記化合物の存在下か、もしくは該化合物の非存在下において、アポトーシスの誘発因子に細胞の集団を曝す工程;および
(2)DNA分断を有する該集団において細胞の割合を測定する工程
を包含するプロセスによって測定され、ここで該DNA分断を有する細胞の割合は、マクロファージのアポトーシスの量を表す、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記アポトーシスの誘発因子が、Fasリガンド、TRAIL、TNF−αまたはアゴニスト性抗デスレセプター抗体からなる群より選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記アゴニスト性抗デスレセプター抗体が、抗TNF−R1抗体、抗Fas抗体、抗TRAIL−R抗体、または抗DR6抗体である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記DNA分断を有する細胞の割合が、細胞のプロピジウム取込みのFACS分析によって測定される、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記DNA分断を有する細胞の割合が、TUNELアッセイによって測定される、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記マクロファージのアポトーシスの量が、以下:
(1)前記化合物の存在下か、もしくは該化合物の非存在下において、アポトーシスの誘発因子に細胞の集団を曝す工程;および
(2)細胞膜の細胞外表面上にホスファチジルセリンを発現する集団において、細胞の割合を測定する工程
を包含するプロセスによって測定され、ここで、該細胞膜の細胞外表面上にホスファチジルセリンを発現する細胞の割合は、マクロファージのアポトーシスの量を表す、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
前記アポトーシスの誘発因子が、Fasリガンド、TRAIL、TNF−α、またはアゴニスト性抗デスレセプター抗体からなる群より選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記アゴニスト性抗デスレセプター抗体が、抗TNF−R1抗体、抗Fas抗体、抗TRAIL−R抗体、または抗DR6抗体である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
細胞質膜の細胞外表面上に存在するホスファチジルセリンを発現する細胞の割合が、該ホスファチジルセリンへのアネキシンVの結合によって測定される、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
前記アネキシンVが、蛍光マーカーに結合体化される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記HIF−1α活性の量が、以下:
(a)前記化合物の存在下における新脈管形成の量を該化合物の非存在下における新脈管形成の量と比較する工程
を包含するプロセスによって測定され、ここで該新脈管形成の量は、HIF−1α活性の量を表す、請求項41に記載の方法。
【請求項76】
前記化合物は、該化合物の存在下における新脈管形成の量が、該化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも25%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記化合物は、該化合物の存在下における新脈管形成の量が、該化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも35%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記化合物は、該化合物の存在下における新脈管形成の量が、該化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも50%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記新脈管形成の量が、以下:
(1)基底タンパク質の層を提供する工程;
(2)前記化合物の存在下もしくは該化合物の非存在下において、該基底膜の層上の内皮細胞の集団を培養する工程;
(3)形成された毛細管の量を定量する工程
を包含するプロセスによって測定される、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記形成された毛細管の量が、細胞の管を可視化する工程、分枝点を計数する工程、または視野における全毛細管の長さを計算する工程によって同定される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
慢性関節リウマチの処置において有用な化合物を同定する方法であって、該方法は、
(a)該化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量を、該化合物の非存在下におけるHIF−1αの化合物の量と比較する工程;および
(b)該化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1αの化合物の量よりも低い場合に、該化合物を慢性関節リウマチの処置に有用なものとして選択する工程
を包含する、方法。
【請求項82】
化合物の収集物をスクリーニングするための請求項81に記載の方法であって、該方法は、該収集物の各化合物について工程(a)および(b)を繰り返す工程をさらに包含し、ここで該収集物のうちの少なくとも1つの化合物は、慢性関節リウマチの処置に有用なものとして選択される、方法。
【請求項83】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも45%低い場合に、慢性関節リウマチの処置において有用なものとして選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも85%低い場合に、慢性関節リウマチの処置において有用なものとして選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるHIF−1α活性の量が、該化合物の非存在下におけるHIF−1α活性の量よりも少なくとも95%低い場合に、慢性関節リウマチの処置において有用なものとして選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記HIF−1α活性の量が、低酸素条件下で測定される、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記HIF−1α活性の量が、低酸素応答性エレメント(HRE)に結合されたHIF−1αの量によって測定される、請求項81に記載の方法。
【請求項88】
前記HREが、配列5’−TACGTGCT−3’(配列番号1)を有する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記HIF−1α活性の量が、HIF−1α応答性遺伝子からの転写の量によって測定される、請求項81に記載の方法。
【請求項90】
前記HIF−1α応答性遺伝子が、サイクリンG2、インスリン増殖因子(IGF)−2、IGF結合タンパク質1/2/3、WAF1、TGF−α、TGF−β3、アドレノメデュリン、エリスロポエチン、IGF−2、IGF結合タンパク質1/2/3、一酸化窒素シンテターゼ−2、TGF−α、血管内皮増殖因子(VEGF)、NIP3、NIX、RTP801、自己分泌型運動因子/GPI、c−MET、LDLレセプター関連タンパク質1、TGF−α、ケラチン14/18/19、ビメンチン、MIC2/CD99、エリスロポエチン、内分泌腺由来型VEGF、エンドグリン、レプチン、LDLレセプター関連タンパク質1、TGF−β3、α1B−アドレナリン作用性レセプター、アドレノメデュリン、エンドセリン−l、ヘムオキシゲナーゼ−1、一酸化窒素シンテターゼ−2、DEC1、DEC2、ETS−1、NUR77、カルボニックアンヒドラーゼ9、腸三葉型因子、多剤耐性1、アデニレートキナーゼ3、Ecto−5’−ヌクレオチダーゼ、セルロプラスミン、トランスフェリン、トランスフェリンレセプター、ヘキソキナーゼ1/2、自己分泌型運動因子/GPI、エノラーゼ1、グルコース輸送体1、GAPDH、乳酸デヒドロゲナーゼ、6−ホスホフルクト−2−キナーゼ/フルクトース−2,6−ビホスファターゼ−3、ホスホフルクトキナーゼL、ホスホグリセレートキナーゼ1、ピルビン酸キナーゼM、トリオースホスフェートイソメラーゼ、カテプシンD、V型コラーゲン(α1)、フィブロネクチン1、マトリックスメタロプロテアーゼ2、プラスミノゲン活性化因子インヒビター1、プロリル−4−ヒドロキシラーゼα(1)、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子レセプター、レプチン、およびトランスグルタミナーゼ2からなる群より選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記HIF−1α応答性遺伝子が、VEGF、Glut−1、エノラーゼ1、アルドラーゼAからなる群より選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記HIF−1α応答性遺伝子が、検出可能なマーカーに結合される、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記検出可能なマーカーが、蛍光マーカーである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記HIF−1α活性の量が、以下:
(a)前記化合物の存在下において内皮細胞の少なくとも1つの層を通って移動する白血球の量を、該化合物の非存在下において内皮細胞の少なくとも1つの層を通って移動する白血球の量と比較する工程
を包含するプロセスによって測定され、そしてここで、該移動する白血球の量は、HIF−1α活性の量を表す、請求項81に記載の方法。
【請求項95】
前記化合物は、該化合物の存在下において移動する白血球の量が、該化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも30%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であるものと選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記化合物は、該化合物の存在下において移動する白血球の量が、該化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも40%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であるものと選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記化合物は、該化合物の存在下において移動する白血球の量が、該化合物の非存在下において移動する白血球の量よりも少なくとも50%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であるものと選択される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記内皮細胞が、培養ヒト臍静脈内皮細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記内皮細胞が、腫瘍壊死因子またはインターロイキン−1によって刺激される、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
前記内皮細胞の少なくとも1つの層が、内皮細胞の単層である、請求項94に記載の方法。
【請求項101】
前記白血球が、単球である、請求項94に記載の方法。
【請求項102】
前記HIF−1α活性の量が、正常酸素条件下で測定される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記化合物の存在化におけるHIF−1α活性の低下が、該化合物の非存在下における白血球のアポトーシスの量よりも多い、該化合物の存在下における白血球のアポトーシスの量を観察することによって同定される、請求項81に記載の方法。
【請求項104】
前記白血球が、マクロファージである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、該化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.25倍多い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であるものと選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、該化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.5倍多い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であるものと選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記化合物は、該化合物の存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量が、該化合物の非存在下におけるマクロファージのアポトーシスの量よりも少なくとも1.7倍多い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であるものと選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記マクロファージのアポトーシスの量が、以下:
(1)前記化合物の存在下か、もしくは該化合物の非存在下において、アポトーシスの誘発因子に細胞の集団を曝す工程;および
(2)DNA分断を有する集団において細胞の割合を測定する工程
を包含するプロセスによって測定され、ここで該DNA分断を有する細胞の割合は、マクロファージのアポトーシスの量を表す、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記アポトーシスの誘発因子が、Fasリガンド、TRAIL、TNF−αまたはアゴニスト性抗デスレセプター抗体からなる群より選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記アゴニスト性抗デスレセプター抗体が、抗TNF−R1抗体、抗Fas抗体、抗TRAIL−R抗体、または抗DR6抗体である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記DNA分断を有する細胞の割合が、細胞のプロピジウム取込みのFACS分析によって測定される、請求項108に記載の方法。
【請求項112】
前記DNA分断を有する細胞の割合が、TUNELアッセイによって測定される、請求項108に記載の方法。
【請求項113】
前記マクロファージのアポトーシスの量が、以下:
(1)前記化合物の存在下か、もしくは該化合物の非存在下において、アポトーシスの誘発因子に細胞の集団を曝す工程;および
(2)細胞膜の細胞外表面上にホスファチジルセリンを発現する集団において、細胞の割合を測定する工程
を包含するプロセスによって測定され、ここで、該細胞膜の細胞外表面上にホスファチジルセリンを発現する細胞の割合は、マクロファージのアポトーシスの量を表す、請求項104に記載の方法。
【請求項114】
前記アポトーシスの誘発因子が、Fasリガンド、TRAIL、TNF−α、またはアゴニスト性抗デスレセプター抗体からなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記アゴニスト性抗デスレセプター抗体が、、抗TNF−R1抗体、抗Fas抗体、抗TRAIL−R抗体、または抗DR6抗体である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
細胞質膜の細胞外表面上に存在するホスファチジルセリンを発現する細胞の割合が、該ホスファチジルセリンへのアネキシンVの結合によって測定される、請求項113に記載の方法。
【請求項117】
前記アネキシンVが、蛍光マーカーに結合体化される、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記HIF−1α活性の量が、以下:
(a)前記化合物の存在下における新脈管形成の量を該化合物の非存在下における新脈管形成の量と比較する工程
を包含するプロセスによって測定され、ここで該新脈管形成の量は、HIF−1α活性の量を表す、請求項81に記載の方法。
【請求項119】
前記化合物は、該化合物の存在下における新脈管形成の量が、該化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも25%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記化合物は、該化合物の存在下における新脈管形成の量が、該化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも35%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記化合物は、該化合物の存在下における新脈管形成の量が、該化合物の非存在下における新脈管形成の量よりも少なくとも50%低い場合に、慢性関節リウマチの処置に有用であると同定される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記新脈管形成の量が、以下:
(1)基底タンパク質の層を提供する工程;
(2)前記化合物の存在下もしくは該化合物の非存在下において、該基底膜の層上の内皮細胞の集団を培養する工程;
(3)形成された毛細管の量を定量する工程
を包含するプロセスによって測定される、請求項118に記載の方法。
【請求項123】
前記形成された毛細管の量が、細胞の管を可視化する工程、分枝点を計数する工程、または視野における全毛細管の長さを計算する工程によって同定される、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
慢性関節リウマチの少なくとも1つの症状を緩和する方法であって、該方法は、
HIF−1α活性のアンタゴニストおよび抗リウマチ薬を、慢性関節リウマチを有する患者に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項125】
前記抗リウマチ薬が、症状を軽減する抗リウマチ薬である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記抗リウマチ薬が、疾患を改変する抗リウマチ薬である、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記抗リウマチ薬が、メトトレキサート、TNF−αアンタゴニスト、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、およびステロイドからなる群より選択される、請求項124に記載の方法。
【請求項128】
前記患者が、メトトレキサート耐性患者であり、そして前記抗リウマチ薬が、メトトレキサート、TNF−αアンタゴニスト、インターロイキン−1レセプターアンタゴニストまたはステロイドである、請求項124に記載の方法。
【請求項129】
前記患者が、TNF−α遮断耐性患者であり、そして前記抗リウマチ薬が、TNF−αアンタゴニスト、インターロイキン−1レセプターアンタゴニストまたはステロイドである、請求項124に記載の方法。
【請求項130】
前記患者が、TNF−α遮断過形成ノンレスポンダーである、請求項129に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−512369(P2007−512369A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541691(P2006−541691)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039484
【国際公開番号】WO2005/053744
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500200535)エンテロス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】