説明

住宅における温度調整システム

【課題】特に寒冷地、とりわけ一年の間の寒暖の差が激しい山形地方などにおいても効果的な暖房効果を与えることができる温度調整システムを提供する。
【解決手段】住宅の居室13,14にガラス17b,18bを介して隣接するサンヒーティングルーム17,18の室外に面したガラス戸またはガラス窓17a,18aの室内側に、フィン角度を自動調整可能なブラインド19,20を設置し、且つ、室外側のガラス戸またはガラス窓からサンヒーティングルームに入り込む日射量を検知する日射センサ22およびサンヒーティングルームの室温を検知する温度センサ23を設け、制御ユニット32が、該日射センサが検知した日射量および温度センサが検知した室温に応じてブラインドのフィン角度を自動調整することにより、住宅室内の温度調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地においても効果的な暖房効果を発揮することができる、住宅における温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に寒冷地では戸建住宅などで快適な生活を送るために暖房は欠かせないものと考えられており、エアコン、電気式・温水式などの床暖房、灯油・ガス・電気などを熱源とするファンヒーター(FFファンヒーターを含む)やストーブ、こたつ、電気カーペットなどが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような暖房機器を使用するには当然のことながらコストがかかり、省エネルギーの観点からもできるだけ使用を控えることが好ましい。
【0004】
本発明者は、冬季には外気が−10℃あるいはそれ以下にまで下がる寒冷地であり且つ寒暖差も激しい山形地方において長年に亘って住宅建設を手掛ける中で、暖房器具を一切使用せずに冬季を含む一年間を快適に過ごすことができるような住宅構造および工法を開発し、「ノーヒーティングシステム」の実現に成功した。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、特に寒冷地、とりわけ一年の間の寒暖の差が激しい山形地方などにおいても効果的な暖房効果を与えることができる温度調整システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る発明は、住宅の居室に室内側透光面を介して隣接するサンヒーティングルームの室外に面した室外側透光面の室内側に、フィン角度を自動調整可能なブラインドを設置し、且つ、室外側透光面からサンヒーティングルームに入り込む日射量を検知する日射センサおよびサンヒーティングルームの室温を検知する温度センサを設け、該日射センサが検知した日射量および温度センサが検知した室温に応じてブラインドのフィン角度を自動調整するようにしたことを特徴とする住宅における温度調整システムである。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の温度調整システムにおいて、サンヒーティングルーム内にヒートポンプ給湯装置のコンプレッサーを設置し、サンヒーティングルームの室温を有効利用してコンプレッサーの熱効率を高めると共に、コンプレッサーからの低温化された排気を冷房用に用いることを可能にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、住宅の居室にガラスを介して隣接するサンヒーティングルームの室外側のガラス戸またはガラス窓の内側に、フィン角度を自動調整可能なブラインドを設置し、且つ、室外側のガラス戸またはガラス窓からサンヒーティングルームに入り込む日射量を検知する日射センサおよびサンヒーティングルームの室温を検知する温度センサを設け、該日射センサが検知した日射量および温度センサが検知した室温に応じてブラインドのフィン角度を自動調整するようにしたので、日射量が少ないときでもブラインドのフィン角度の自動調整を介してサンヒーティングルームの室温を上げることができる。たとえば、冬季に外気が−10℃であってもサンヒーティングルームの室温を40℃以上にまで上げることができ、また、夏季には日射をブラインドで遮って日射量を減らすことでサンヒーティングルームの室温が過度に上昇することを防ぐことができ、これによって居室を快適温度に維持することができる。
【0009】
また、サンヒーティングルーム内にヒートポンプ給湯装置のコンプレッサーを設置することにより、サンヒーティングルームの室温を有効利用してコンプレッサーの熱効率を高めると共に、コンプレッサーからの低温化された排気を冷房用に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。図1において、符号10は木造家屋住宅であり、この実施形態では二階建の住宅として示されている。符号11は一階居室の床、12は一階居室13の天井ないし二階居室14の床、15は屋根、16は階段を示す。
【0011】
この住宅10の南側には、一階居室13および二階居室14に隣接してサンヒーティングルームが設けられている。サンヒーティングルームは一階と二階を通して吹き抜けで設けても良いが、この実施形態では一階サンヒーティングルーム17と二階サンヒーティングルーム18とに分けて設けてある。一階サンヒーティングルーム17の外壁面17aと一階居室13側の室内面17bはいずれもほぼ全面または少なくとも比較的大面積の領域に亘ってガラス面(ガラス戸またはガラス窓)とされていて日射を有効に一階居室13に取り込めるようになっている。同様に、一階サンヒーティングルーム18についても外壁面18aと二階居室14側の室内面18bはいずれもほぼ全面または少なくとも比較的大面積の領域に亘ってガラス面(ガラス戸またはガラス窓)とされていて日射を有効に二階居室14に取り込めるようになっている。一階居室13と一階サンヒーティングルーム17との間の室内ガラス面17bと、二階居室14と二階サンヒーティングルーム18との間の室内ガラス面18bにはそれぞれドア(図示せず)が設けられていて一階居室13と一階サンヒーティングルーム17との間および二階居室14と二階サンヒーティングルーム18との間での出入りを可能にしている。
【0012】
一階サンヒーティングルーム17および二階サンヒーティングルーム18の各外壁ガラス面17a,18aの室内側にはブラインド19,20が取り付けられている。ブラインド19,20はフィンの角度が自動調整可能なタイプであり、このための制御ユニット32が適所に取り付けられている。なお、この実施形態では単一の制御ユニット32で一階のブラインド19と二階のブラインド20のフィン角度調整を同時に一括して制御するようにしているが、これらのブラインド19,20のフィン角度を個別独立に制御するために各々に専用の制御ユニットを用いる実施形態を採用しても良い。
【0013】
制御ユニット32は、日射量を検出する日射センサ22およびサンヒーティングルーム17,18の室温を検出する温度センサ23からの検出信号に基づいて、ブラインド19,20のフィン角度を自動調整する。このような日射センサ22および温度センサ23は公知であり、市場において容易に入手可能である。
【0014】
太陽光の日射角度は季節や時間および場所(緯度)によって大きく変動する。たとえば山形地方では、正午における日射角度は夏至のときで約80度、冬至のときで約30度である。日射センサ22が検出する日射量は日射角度および天候に依存して変動するが、冬季は積極的に日射を室内に取り込んで室温を上げる必要があるので、制御ユニット32は、ブラインド19,20のフィン角度を日射角度にほぼ一致させるように制御する。本発明者の実験によれば、このようにすると、外気温が−10℃のときであってもサンヒーティングルーム17,18の室温は40℃以上まで上昇することが分かった。このサンヒーティングルーム17,18の室温が境界ガラス面17b,18bを介して一階居室13および二階居室14に熱伝達して、これら居室を効果的に(たとえば上記外気温のときであっても室温20℃程度まで)暖房することができる。
【0015】
厳冬期以外では上記のようにするとサンヒーティングルーム17,18の室温が上がりすぎてしまうことがあるので、温度センサ23がたとえば40℃以上の室温を検出したときは、制御ユニット32は、日射を遮るようにブラインド19,20のフィン角度を調整する。図1において符号Sは夏季の日射、符号Wは冬季の日射を示している。
【0016】
なお、室内温度を上げるにはブラインド19,20のフィン角度を日射角度に略一致させて積極的に日射を取り込むようにするのが基本的な制御手法であるが、ブラインド19,20のフィン表面を黒色などの濃色にしたり、トランス1,4−ポリブタジエンなどの蓄熱性材料を主成分とする塗料を塗布したりすることで、日射をフィン表面に当てて蓄熱させることができるようにしても良い。この場合には、ブラインドの表面における蓄熱が徐々にサンヒーティングルーム17,18に放散されて該サンヒーティングルームの室温を維持し、したがって居室13,14内の室温低下を防ぐことができるので、たとえば、日射が得られている日中はブラインド19,20のフィン角度を日射角度に略一致させておき、日射が得られなくなる夕刻にブラインド19,20のフィン角度を日射角度に所定角度で交差させるようにして蓄熱効果を得るように制御することができる。
【0017】
一階サンヒーティングルーム17には、ヒートポンプ給湯装置21のコンプレッサー24が設置されている。コンプレッサー24は一般的には室外に設置されることが多いが、特に冬季の寒冷地などでは室外設置のコンプレッサー24から100℃近くの熱湯を作り出すのは熱効率がきわめて悪く、エネルギーを無駄に使うことになる。この実施形態によれば、前述のように外気温が−10℃などの厳冬期であってもサンヒーティングルーム17の室温を40℃以上とすることができるので、熱効率良くコンプレッサー24を作動させることができ、エネルギーの無駄な消費を抑える。また、コンプレッサー24を通過した空気は熱交換によって約7℃温度が下がるので、コンプレッサー24をサンヒーティングルーム17に設置することで、夏季にはこの冷排気を冷房用に使用することができる。
【0018】
この住宅10では、雨水を利用してトイレ25,26で使用する水を作り出すようにしている。符号27は雨水タンクであり、住宅10の構造躯体の凹所を利用して設置した雨水利用設備空間28内に収容され、外に向けた開口に扉を開閉可能に設けてメンテナンスなどを行えるようにしている。雨水は、屋根15、軒樋29および竪樋30を伝って落下し、フィルター31で濾過された後に雨水タンク27に貯水される。
【0019】
一階居室13や浴室(図示せず)などに換気ファン33が設けられ、この換気ファン33の作動によって室内からの排熱を排熱管34に送り込む。排熱管34は、雨水利用設備空間28に排気口を有する排熱利用管35と戸外に向けて排気口を有する排気管36とに分岐しており、いずれか一方を分岐スイッチ37で選択する。主に冬季においては室内からの排熱を排熱利用管35に通過させるように分岐スイッチ37を操作し、排熱を雨水利用設備空間28に送り込む。これにより雨水利用設備空間28が暖房されるので、冬季であっても雨水タンク27が凍らず、貯まっている水をトイレ25,26で利用することができる。雨水タンク27の凍結防止のためにヒータを設置する必要がないので、東北などの寒冷地でも一年中雨水を家庭用トイレに利用することができ、水資源の節約およびコスト削減にきわめて有効である。
【0020】
一方、主として夏季においては室内の排熱を排気管36に通過させるように分岐スイッチ37を操作して、排熱を直接戸外に排出して室内温度が過度に上昇することを防止する。換気ファン33は常時作動させても良いが、電気代が安く済む深夜の時間帯を中心として作動させることが好ましい。また、分岐スイッチ37の操作を手動で行うことに代えて、外気温を検出する温度センサなどからの検出結果を受けて自動的に分岐制御するようにしても良い。
【0021】
図示の実施形態における雨水タンク27はトイレ25,26の水として雨水を利用・供給するものであるが、これに代えて、またはこれと併用して、他の目的に雨水利用しても良いことは言うまでもない。たとえば、サンヒーティングルーム17,18や居室13,14に観葉植物などを置く場合の植栽用の水として雨水利用するために雨水タンクを使用することができる。特に、冬季であっても40℃以上の室温となる一階サンヒーティングルーム17に雨水タンクを設置すると、室内の排熱を利用しなくても凍結を防止することができるので、好ましい実施形態である。
【0022】
また、図示の実施形態では、ヒートポンプ給湯装置21のコンプレッサー24を一階サンヒーティングルーム17に設置しているが、これに代えて、またはこれと併用して、前述の雨水利用設備空間28に該コンプレッサーを設置しても良い。この場合も、前述のように冬季であっても室内からの排熱利用によって雨水利用設備空間28を暖めることができるので、熱効率を高めて省エネルギー消費に資すると共に、夏季には該コンプレッサーからの冷排気を冷房用に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による温度調整システムの一実施形態が適用された住宅の概略立面図である。
【図2】雨水利用設備空間の内部構造を概略的に示す平面図であり、(a)は主として冬季、(b)は主として夏季における排熱の流れを示す。
【符号の説明】
【0024】
10 住宅
11 一階床
12 二階床
13 一階居室
14 二階居室
15 屋根
16 階段
17 一階サンヒーティングルーム
17a 一階サンヒーティングルームの外壁ガラス面(室外側透光面)
17b 一階サンヒーティングルームの室内側ガラス面(室内側透光面)
18 二階サンヒーティングルーム
18a 二階サンヒーティングルームの外壁ガラス面(室外側透光面)
18b 二階サンヒーティングルームの室内側ガラス面(室内側透光面)
19 一階ブラインド
20 二階ブラインド
21 ヒートポンプ給湯装置
22 日射センサ
23 温度センサ
24 コンプレッサー
25 一階トイレ
26 二階トイレ
27 雨水タンク
28 雨水利用設備空間
29 軒樋
30 竪樋
31 フィルター
32 制御ユニット
33 換気ファン
34 排熱管
35 排熱利用管
36 排気管
37 分岐スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の居室に室内側透光面を介して隣接するサンヒーティングルームの室外に面した室外側透光面の室内側に、フィン角度を自動調整可能なブラインドを設置し、且つ、室外側透光面からサンヒーティングルームに入り込む日射量を検知する日射センサおよびサンヒーティングルームの室温を検知する温度センサを設け、該日射センサが検知した日射量および温度センサが検知した室温に応じてブラインドのフィン角度を自動調整するようにしたことを特徴とする住宅における温度調整システム。
【請求項2】
サンヒーティングルーム内にヒートポンプ給湯装置のコンプレッサーを設置し、サンヒーティングルームの室温を有効利用してコンプレッサーの熱効率を高めると共に、コンプレッサーからの低温化された排気を冷房用に用いることを可能にしたことを特徴とする、請求項1記載の温度調整システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−299314(P2009−299314A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153129(P2008−153129)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(506231766)株式会社ボスコ (3)
【Fターム(参考)】