説明

作業機械

【課題】グラップル等の作業アタッチメントが装着された作業機械において、アタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を可変自在に構成するにあたり、作業を中断することなく簡単にリリーフ圧を変更できるようにする。
【解決手段】グラップル用シリンダ8の駆動回路16、17のリリーフ圧として、第一リリーフ圧と第二リリーフ圧との二つのリリーフ圧をモニタ装置24によって設定できるようにすると共に、前記第一、第二リリーフ圧の何れかを、運転席26の左右側方に配される操作レバー27に設けたリリーフ圧選択ボタン23によって選択できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置や破砕装置等の作業アタッチメントが装着された作業機械の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、グラップルやクラッシャ、或いは油圧ブレーカなど、油圧アクチュエータの駆動に基づいて動作する作業アタッチメントが装着された作業機械があるが、このものにおいて、油圧アクチュエータの駆動力は、通常、油圧アクチュエータに圧油供給するアタッチメント用駆動回路のリリーフ圧によって決まるように構成されている。つまり、作業アタッチメントが例えばグラップルのように把持爪で対象物を把持する把持装置の場合、該把持装置の開閉力は、把持爪を開閉する油圧シリンダの駆動回路のリリーフ圧によって決まるようになっているが、このものにおいて、比較的強度の弱いコンクリートブロック等の対象物を把持する場合、把持爪の閉側の力、つまり把持力が強すぎると対象物を破損してしまう惧れがある一方、強度が高くて重量の重い鉄等の対象物を把持する場合には、把持力が弱いと対象物が落下してしまう惧れがある。また、作業アタッチメントがクラッシャのような破砕装置の場合、該破砕装置の破砕力は、破砕刃を開閉する油圧シリンダの駆動回路のリリーフ圧によって決まるが、この場合、リリーフ圧を耐久圧力ぎりぎりに設定すると、大きな破砕力を得られる一方で破砕装置にかかる負荷が大きくなり、また、リリーフ圧を低めに設定すると、破砕装置にかかる負荷は小さくなるが破砕力は低下する。
そこで従来、把持爪を有する把持装置において、把持爪を開閉する油圧アクチュエータの駆動回路に可変リリーフ弁を接続し、該可変リリーフ弁により駆動回路のリリーフ圧を変化せしめることで、オペレータが把持力を任意に変更できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−300146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1のものでは、駆動回路のリリーフ圧を変更するにあたり、オペレータがリリーフ圧設定器(把持力設定器)のダイヤルを回動操作し、該回動位置によって任意のリリーフ圧(把持力)を設定する構成になっている。このため、例えばグラップルやクラッシャで作業を行なう場合に、把持する対象物や破砕する対象物のなかに強度の強いものと弱いものとが含まれていて交互に把持したり破砕したりするような場合、オペレータは、作業の途中でいちいちリリーフ圧設定器のダイヤルを回動操作しなければならず、面倒であるばかりか、作業が中断して作業効率に劣るという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、油圧アクチュエータの駆動に基づいて動作する作業アタッチメントを装着してなる作業機械において、前記油圧アクチュエータに圧油供給するアタッチメント用駆動回路に可変リリーフ弁を接続し、該可変リリーフ弁によりアタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を可変自在に構成するにあたり、前記アタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を複数設定するリリーフ圧設定手段と、該リリーフ圧設定手段により設定された複数のリリーフ圧のうちの何れかを選択するべくオペレータが操作するリリーフ圧選択手段と、該選択操作手段により選択されたリリーフ圧にするべく可変リリーフ弁を制御する可変リリーフ弁制御手段とを設けると共に、前記リリーフ圧選択手段は、運転席の左右側方に配される操作レバーに設けた操作ボタン或いは操作スイッチ、または、運転席に座したオペレータの足元に配される足踏み式スイッチであることを特徴とする作業機械である。
請求項2の発明は、作業アタッチメントは、油圧アクチュエータの駆動に基づいて対象物を把持するべく動作する把持装置であることを特徴とする請求項1に記載の作業機械である。
請求項3の発明は、作業機械は、サイズや種類の異なる各種作業アタッチメントを交換可能に装着できる構成であると共に、リリーフ圧設定手段は、装着された各作業アタッチメントに対応するリリーフ圧をそれぞれ複数設定することを特徴とする請求項1に記載の作業機械である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、オペレータが操作レバーに設けられた操作ボタン或いは操作スイッチ、または足元に配された足踏み式スイッチを操作するだけで、作業の対象物に応じたアタッチメント用駆動回路のリリーフ圧の変更を行なえることになり、而して、作業中であっても作業を中断することなくリリーフ圧を簡単に変更できて、作業効率の向上に大きく貢献できる。
請求項2の発明にすることにより、把持装置で把持する対象物のなかに、鉄等の強度の強いものとコンクリートブロック等の強度の弱いものとが含まれていて交互に把持するような場合であっても、オペレータは、操作レバーに設けられた操作ボタン或いは操作スイッチを操作するだけで、把持する対象物の強度に合わせてアタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を簡単に変更できることになり、而して、対象物を破損したり落下させたりする不具合を確実に回避できると共に、作業効率の向上に大きく貢献できる。
請求項3の発明にすることにより、作業機械に、サイズや種類の異なる各種作業アタッチメントが装着されても、各々の作業アタッチメントに対応した複数のリリーフ圧を設定できると共に、該設定されたリリーフ圧の何れかを、操作レバーに設けられた操作ボタン或いは操作スイッチによって選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】グラップルが装着された油圧ショベルの側面図である。
【図2】グラップル用シリンダの油圧回路図である。
【図3】(A)は操作レバーの側面図、(B)は(A)のX矢視図、(C)はモニタ装置を示す図である。
【図4】モニタ装置により設定される作業アタッチメントのリリーフ圧を示す示す図である。
【図5】リリーフ圧とリリーフ圧選択ボタンのON/OFF操作との関係を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は作業アタッチメントとしてグラップル(本発明の作業アタッチメント、把持装置の一例である)2が装着された油圧ショベル(本発明の作業機械の一例である)であって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体3、該下部走行体3に旋回自在に支持される上部旋回体4、該上部旋回体4に装着されるフロント作業機5等から構成されており、さらに該フロント作業機5は、基端部が上部旋回体4に上下揺動自在に支持されるブーム6、該ブーム6の先端部に前後揺動自在に支持されるアーム7、該アーム7の先端部に装着されるグラップル2等から構成されているが、該グラップル2は、グラップル用シリンダ(本発明の油圧アクチュエータに相当する)8の駆動に基づいて複数の把持爪9が閉開動作することで、スクラップ、鉄、木材、コンクリート等の対象物を把持、或いは放すように構成された周知のものである。
尚、油圧ショベル1のフロント作業機5には、前記グラップル2に代えて、サイズや種類の異なる各種把持装置(例えば、ポリップバケット、把持爪付きバケット等)、或いはクラッシャやブレーカ等の破砕装置等、種々の作業アタッチメントを交換可能に装着することができる構成になっている。
【0009】
前記グラップル用シリンダの油圧制御回路を図2に示すと、該図2において、10はグラップル用シリンダ8の油圧供給源である油圧ポンプ、11はパイロット油圧源であるパイロットポンプ、12は油タンク、13はグラップル用シリンダ8に対する油給排制御を行なう制御バルブ、14はグラップル開閉用操作具15の操作に基づいて前記制御バルブ13にパイロット圧を出力するパイロットバルブである。
【0010】
前記制御バルブ13は、伸長側、縮小側のパイロットポート13a、13bを備えた三位置切換弁であって、両パイロットポート13a、13bにパイロット圧が入力されていない状態では中立位置Nに位置しているが、該制御バルブ13が中立位置Nのときにはグラップル用シリンダ8に対する油の給排は行なわれず、グラップル用シリンダ8は停止している。一方、伸長側パイロットポート13aにパイロット圧が入力されると、制御バルブ13は、油圧ポンプ10の吐出油をヘッド側駆動回路16を経由してグラップル用シリンダ8のヘッド側油室8aに供給する一方、ロッド側油室8bからの排出油を油タンク12に流す伸長側位置Xに切換る。これにより、グラップル用シリンダ8が伸長側に駆動して、把持爪9を閉側(対象物を把持する方向)に動作せしめる。また、縮小側パイロットポート13bにパイロット圧が入力されると、制御バルブ13は、油圧ポンプ10の吐出油をロッド側駆動回路17を経由してグラップル用シリンダ8のロッド側油室8bに供給する一方、ヘッド側油室8aからの排出油を油タンク12に流す縮小側位置Yに切換る。これにより、グラップル用シリンダ8が縮小側に駆動して、把持爪9を開側(対象物を放す方向)に動作せしめるように構成されている。
【0011】
一方、前記パイロットバルブ14は、グラップル開閉用操作具15が閉側(対象物を把持する側)に操作されると、前記制御バルブ13の伸長側パイロットポート13aにパイロット圧を出力し、また、グラップル開閉用操作具15が開側(対象物を放す側)に操作されると、制御バルブ13の縮小側パイロットポート13bにパイロット圧を出力するように構成されている。而して、グラップル開閉用操作具15の操作に基づいて、前述したように制御バルブ13が伸長側位置X、縮小側位置Yに切換わってグラップル用シリンダ8が伸縮駆動し、これにより把持爪9が閉開動作する構成になっている。
【0012】
さらに、前述したように、前記制御バルブ13からグラップル用シリンダ8のヘッド側油室8a、ロッド側油室8bへの圧油供給は、それぞれヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17を経由して行なわれることになるが、これらヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17には、油タンク12に至るヘッド側リリーフ油路18、ロッド側リリーフ油路19がそれぞれ接続されている。尚、前記ヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17は、本発明のアタッチメント用駆動回路に相当する。
【0013】
前記ヘッド側リリーフ油路18、ロッド側リリーフ油路19には、後述する制御装置20からの制御信号によりリリーフ圧が可変制御される電磁式のヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22がそれぞれ配設されている。そして、これらヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22によって、前記ヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17のリリーフ圧を変化せしめることができる構成になっている。尚、前記ヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22は、本発明の可変リリーフ弁に相当する。
【0014】
前記制御装置20は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、このものは、後述するように、リリーフ圧選択ボタン(本発明のリリーフ圧選択手段、および操作ボタンに相当する)23、モニタ装置(本発明のリリーフ圧設定手段に相当する)24からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前記ヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22に制御信号を出力する。尚、前記制御装置20は、本発明の可変リリーフ弁制御手段に相当する。
【0015】
ここで、前記図1において、25は油圧ショベル1に設けられる運転室であって、該運転室25には、オペレータが座する運転席26や前記モニタ装置24等が配設されている。さらに、運転席26の左右側方には、上部旋回体4の旋回やフロント作業機4を動かすための左右の操作レバー27が配されているが、該左右の操作レバー27のうち一方の操作レバー(本実施の形態では、左側の操作レバー)27の上部に、前記リリーフ圧選択ボタン23が設けられている(図3(A)、(B)参照。)。該リリーフ圧選択ボタン23は、オペレータの押し操作に基づいてOFF/ONが切換わる操作ボタンであって、本実施の形態では、オペレータが後述する第一リリーフ圧を選択する場合にはOFF側に、また、第二リリーフ圧を選択する場合にはON側に操作するように設定されているが、該リリーフ圧選択ボタン23のOFF/ON信号は、前述したように制御装置20に入力されるようになっている。
【0016】
また、モニタ装置24は、図3(C)に示す如く、液晶パネル等から形成されるディスプレイ部24aや複数の操作キー24bを備え、作業に応じた稼動条件を決めたり機体の各種状態やメンテナンス情報を知らせたりすることができる周知のものであるが、本実施の形態のモニタ装置24は、油圧ショベル1に装着される各種作業アタッチメント用油圧アクチュエータの駆動回路のリリーフ圧を設定するリリーフ圧設定機能を有している。
【0017】
而して、前記グラップル用シリンダ8の駆動回路のリリーフ圧は、モニタ装置24によって設定されることになるが、該リリーフ圧を設定する場合、図4に示す如く、グラップル用シリンダ8のヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17について、第一リリーフ圧GH1、GR1と、該第一リリーフ圧GH1、GR1よりも低圧の第二リリーフ圧GH2、GR2(GH1>GH2、GR1>GR2)との高低二段階のリリーフ圧をそれぞれ設定できるようになっている。この場合、例えば、第一リリーフ圧GH1、GR1として、グラップル2が鉄等の強度の高い対象物を把持する場合に適した開閉力が得られる値が設定され、また、第二リリーフ圧GH2、GR2として、コンクリートブロック等の強度の弱い対象物を把持する場合に適した開閉力が得られる値が設定されるが、これら第一、第二リリーフ圧GH1、GR1、GH2、GR2は、グラップル2に適合するリリーフ圧の範囲内で任意に設定できるようになっている。
【0018】
ここで、モニタ装置24は、前記図4に示す如く、グラップル2だけでなく、油圧ショベル1に装着される各種作業アタッチメントA、B、C・・・について、それぞれヘッド側駆動回路、ロッド側駆動回路の第一リリーフ圧AH1、AR1、BH1、BR1、CH1、CR1と、第二リリーフ圧AH2、AR2、BH2、BR2、CH2、CR2との高低二段階のリリーフ圧を設定できるようになっている。尚、前記作業アタッチメントA、B、Cは、該作業アタッチメントA、B、Cを駆動せしめる油圧アクチュエータが油圧シリンダであるため、ヘッド側駆動回路、ロッド側駆動回路について第一、第二リリーフ圧が設定されるようになっているが、油圧アクチュエータが正逆転する油圧モータである場合には、正転側駆動回路、逆転側駆動回路について第一、第二リリーフ圧がそれぞれ設定される。また、油圧ブレーカのように油の流れが一方向の油圧アクチュエータの場合には、該油圧アクチュエータへの圧油供給側の回路にのみ第一、第二リリーフ圧が設定される。
【0019】
さらに、本実施の形態では、後述するように、制御装置20からヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22に出力される制御信号の時間あたりの変化量を制限するレ−トリミッタが設けられているが、該レ−トリミッタの設定時間T(例えば、0.1〜0.3秒)もモニタ装置24によって任意に設定することができるようになっている(図4参照)。
【0020】
そして、前記モニタ装置24により設定された各種作業アタッチメントの第一、第二リリーフ圧は、例えば作業アタッチメントを交換したときに、オペレータがモニタ装置24において油圧ショベル1に装着された作業アタッチメントを選択することによって、前記制御装置20に入力されるようになっている。而して、グラップル2が装着されている場合には、モニタ装置24によりグラップル2を選択することによって、グラップル用シリンダ8のヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17の第一、第二リリーフ圧GH1、GR1、GH2、GR2の値が制御装置20に入力されるようになっている。
【0021】
前記制御装置20は、前述したように、モニタ装置24からグラップル用シリンダ8のヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17の第一、第二リリーフ圧GH1、GR1、GH2、GR2の値を入力すると共に、前記リリーフ圧選択ボタン23からOFF信号が入力された場合には、ヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17のリリーフ圧を第一リリーフ圧GH1、GR1にするべく、ヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22に対して制御信号を出力する。一方、リリーフ圧選択ボタン23からON信号が入力された場合には、ヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17のリリーフ圧を第二リリーフ圧GH2、GR2にするべく、ヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22に対して制御信号を出力する。この場合、第一リリーフ圧GH1、GR1と第二リリーフ圧GH2、GR2との切換えが急激に行なわれて回路に衝撃が発生しないように、制御装置20からヘッド側可変リリーフ弁21、ロッド側可変リリーフ弁22に出力される制御信号の時間あたりの変化量を制限するレ−トリミッタが設けられている。而して、オペレータがリリーフ圧選択ボタン23を押し操作してOFF/ON切換えることによって、グラップル用シリンダ8のヘッド側駆動回路16、ロッド側駆動回路17のリリーフ圧を、鉄等の強度の高い対象物を把持する場合に適した開閉力が得られる第一リリーフ圧GH1、GR1と、コンクリートブロック等の強度の弱い対象物を把持する場合に適した開閉力が得られる第二リリーフ圧GH2、GR2とに、ワンタッチで切換えることができるようになっている。
尚、グラップル2以外の作業アタッチメントが装着されている場合には、該作業アタッチメント用の第一、第二リリーフ圧が制御装置20に入力されると共に、制御装置20は、リリーフ圧選択ボタン23からOFF信号が入力された場合には、アタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を第一リリーフ圧にするべく可変リリーフ弁に対して制御信号を出力し、また、リリーフ圧選択ボタン23からON信号が入力された場合には、第二リリーフ圧にするべく可変リリーフ弁に対して制御信号を出力するように構成されている。
【0022】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1に作業アタッチメントとして装着されたグラップル2は、グラップル用シリンダ8の駆動に基づいて複数の把持爪9が対象物を把持、或いは放すべく閉開動作することになるが、前記グラップル用シリンダ8のヘッド側、ロッド側油室8a、8bに圧油供給するヘッド側、ロッド側駆動回路16、17には、制御装置20からの制御信号によりリリーフ圧が可変制御されるヘッド側、ロッド側可変リリーフ弁21、22が接続されており、そして、これらヘッド側、ロッド側可変リリーフ弁21、22によってヘッド側、ロッド側駆動回路16、17のリリーフ圧を可変せしめることで、グラップル2の開閉力を可変できることになる。さらに、前記ヘッド側、ロッド側駆動回路16、17のリリーフ圧はモニタ装置24によって設定されることになるが、この場合、第一リリーフ圧(例えば、グラップル2が鉄等の強度の高い対象物を把持する場合に適した開閉力が得られる値)と第二リリーフ圧(例えば、グラップル2がコンクリートブロック等の強度の弱い対象物を把持する場合に適した開閉力が得られる値)との二つのリリーフ圧を設定することができる。そして、オペレータは、前記モニタ装置24により設定された第一、第二リリーフ圧のうちの何れかを、運転席26の左右側方に配される操作レバー27に設けられたリリーフ圧選択ボタン23のOFF/ON操作によって選択することができると共に、制御装置20は、該リリーフ圧選択ボタン23によって選択された第一或いは第二リリーフ圧にするべくヘッド側、ロッド側可変リリーフ弁21、22を制御することになる。
【0023】
この結果、グラップル2で把持する対象物のなかに、鉄等の強度の強いものとコンクリートブロック等の強度の弱いものとが含まれていて交互に把持するような場合であっても、オペレータは、操作レバー27に設けられたリリーフ圧選択ボタン23をOFF/ONするだけのワンタッチ操作で、対象物の強度に合わせてグラップル用シリンダ8のヘッド側、ロッド側駆動回路16、17のリリーフ圧、つまりグラップル2の開閉力を変更できることになり、而して、作業を中断することなく対象物に応じたリリーフ圧の変更を簡単に行なえることになって、対象物を破損したり落下させたりする不具合を確実に回避できると共に、作業効率の向上に大きく貢献できる。
尚、本実施の形態では、バランスの良い開閉力を得るために、グラップル用シリンダ8のヘッド側、ロッド側の両方の駆動回路16、17に可変リリーフ弁21、22を接続して、両方の駆動回路16、17のリリーフ圧を同時に変更する構成になっているが、グラップル2の把持力は、把持爪9の閉側、つまりヘッド側駆動回路16の圧力によって決まるため、該ヘッド側駆動回路16のみリリーフ圧可変にして、ロッド側駆動回路17はリリーフ圧が変化しない構成にすることもできる。この場合には、ヘッド側駆動回路16にのみ第一、第二リリーフ圧が設定される。
【0024】
さらに、本実施の形態では、グラップル2だけでなく、油圧ショベル1に装着されるサイズや種類の異なる各種作業アタッチメントについても、各々の作業アタッチメントに対応して第一、第二リリーフ圧との二つのリリーフ圧を設定できる構成になっており、そして、これら第一、第二リリーフ圧の何れかを操作レバー27に設けられたリリーフ圧選択ボタン23によって選択できることになる。而して、例えば油圧ショベル1に装着される作業アタッチメントがクラッシャであって、鉄筋のように強度の強い対象物と木材のように強度の弱い対象物とを交互に破砕するような場合に、リリーフ圧選択ボタン23をOFF/ONするワンタッチの操作でクラッシャの駆動回路のリリーフ圧を変更できることになり、この結果、強度の強い対象物を破砕する場合にはリリーフ圧を高くして大きな破砕力を得ることができる一方、強度の弱い対象物を場合にはリリーフ圧を低くして耐圧力に余裕のある状態でクラッシャを使用することで、クラッシャにかかる負荷を軽くして耐久年数を長くすることができる。
【0025】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、上記実施の形態では、リリーフ圧選択ボタン23がOFFの場合には第一リリーフ圧が選択され、また、ONの場合には第二リリーフ圧が選択される構成になっているが、これとは逆に、リリーフ圧選択ボタン23がONの場合に第一リリーフ圧が選択され、また、OFFの場合に第二リリーフ圧が選択される構成であっても勿論よい。
また、リリーフ圧選択手段として、上記実施の形態では操作レバーに設けた操作ボタン(リリーフ圧選択ボタン23)が採用されているが、操作レバーに設けた操作スイッチであっても良い。
さらに、リリーフ圧選択手段としては、運転席に座したオペレータの足元に配される足踏み式スイッチでも良く、この場合においても、作業を中断することなく対象物に応じたリリーフ圧の変更を簡単に行うことができる。
さらに、上記実施の形態では、リリーフ圧設定手段(モニタ装置24)およびリリーフ圧選択手段(リリーフ圧選択ボタン23)によって、第一、第二の二つのリリーフ圧の設定と選択とを行なえる構成になっているが、これに限定されることなく、三つ以上のリリーフ圧の設定、選択を行なえるように構成することもできる。この様に三つ以上のリリーフ圧の設定、選択を行なえるように構成する場合、例えば、リリーフ圧設定手段として、設定されるリリーフ圧の数に対応する数のリリーフ圧選択ボタンを設け、何れかのリリーフ圧選択ボタンをON操作することでリリーフ圧を選択できるように構成すれば良いが、この場合には、誤って二つ以上のリリーフ圧選択ボタンをON操作した場合に優先度の高い方のリリーフ圧が選択されるように、リリーフ圧の優先順位を予め設定できるようにしておくことが望ましい。
さらに、リリーフ圧設定手段としては、上記実施の形態のようなモニタ装置24に限定されることなく、例えば、運転室に配設された操作パネル等に、リリーフ圧設定器を設けることもできる。
さらにまた、作業機械としては、油圧ショベルだけでなく、種々の把持装置や破砕装置等が作業アタッチメントとして装着された各種作業機械に本発明を実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、把持装置や破砕装置等の作業アタッチメントが装着された各種の作業機械において、アタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を可変自在に構成する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
2 グラップル
8 グラップル用シリンダ
16 ヘッド側駆動回路
17 ロッド側駆動回路
20 制御装置
21 ヘッド側可変リリーフ弁
22 ロッド側可変リリーフ弁
23 リリーフ圧選択ボタン
24 モニタ装置
27 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータの駆動に基づいて動作する作業アタッチメントを装着してなる作業機械において、前記油圧アクチュエータに圧油供給するアタッチメント用駆動回路に可変リリーフ弁を接続し、該可変リリーフ弁によりアタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を可変自在に構成するにあたり、前記アタッチメント用駆動回路のリリーフ圧を複数設定するリリーフ圧設定手段と、該リリーフ圧設定手段により設定された複数のリリーフ圧のうちの何れかを選択するべくオペレータが操作するリリーフ圧選択手段と、該選択操作手段により選択されたリリーフ圧にするべく可変リリーフ弁を制御する可変リリーフ弁制御手段とを設けると共に、前記リリーフ圧選択手段は、運転席の左右側方に配される操作レバーに設けた操作ボタン或いは操作スイッチ、または、運転席に座したオペレータの足元に配される足踏み式スイッチであることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
作業アタッチメントは、油圧アクチュエータの駆動に基づいて対象物を把持するべく動作する把持装置であることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
作業機械は、サイズや種類の異なる各種作業アタッチメントを交換可能に装着できる構成であると共に、リリーフ圧設定手段は、装着された各作業アタッチメントに対応するリリーフ圧をそれぞれ複数設定することを特徴とする請求項1に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168738(P2010−168738A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9899(P2009−9899)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】