説明

作業装置の緊急停止システム、緊急停止装置及び作業装置

【課題】災害発生時に作業装置を安全に停止できるとともに、作業装置の周囲環境の変化や作業装置の異常の有無を把握できる作業装置の緊急停止システム及び緊急停止装置を提供すること。
【解決手段】緊急地震速報20等に基づいて生成された停止信号が入力されたとき作業装置5,6,7の動作を停止するための装置停止部55と、作業装置5,6,7の位置情報及び周辺環境の線量情報を検出するためのデータ計測部18と、データ計測部18による検出情報を、作業装置5,6,7の位置から遠隔地にある監視装置4に送信するための検出情報送信部27とを、作業装置5,6,7の緊急停止装置8に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業装置の緊急停止システム及び緊急停止装置に係り、特に作業中の作業装置を安全に自動停止するための緊急停止システム及び緊急停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害発生時、特に地震発生時に動作中の機器の緊急停止方法として、緊急地震速報で発信される震源地や到達時間、震度等の情報を基に、動作中の機器を停止するものがある。これに関する技術としては、例えば、緊急地震速報と、オンサイトに設置してある地震計からの地震情報とを利用して、製造工場における各種機器を最適に制御するための情報をそれぞれの機器に対して配信する地震防災システムがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−261888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、地震発生時に、設置位置が固定されている機器に対して動作を停止するためのトリガー信号を発信し、安全に停止する処理が記載されている。しかし、地震終了後に当該機器を再度起動する場合、地震に起因する作業環境の変化や当該機器本体の健全性を把握する手段がない。そのため、これらについての確認作業が完了しないと作業を再開できず、短時間での作業再開が困難である。
【0005】
上記問題を鑑み、本発明の目的は、災害発生時に作業装置を安全に停止できるとともに、作業装置の周囲環境の変化や作業装置の異常の有無を把握できる作業装置の緊急停止システム及び緊急停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、地震情報に基づいて生成された停止信号が入力されたとき、作業装置の動作を停止するための停止手段と、前記作業装置の状態情報及び周辺環境情報のうち少なくとも一方を検出するための検出手段と、前記検出手段による検出情報を、前記作業装置の位置から遠隔地にある外部端末に送信するためのデータ送信手段とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、災害発生時に作業装置を安全に停止しつつ、作業装置の周囲環境の変化や装置本体の異常の有無を短時間で把握できるので、作業装置の操作再開を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る原子力発電所内作業における、作業装置5,6,7と緊急停止装置8の機器配置を示す図。
【図2】本発明の第1の実施の形態における監視装置4の構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態における緊急停止装置8の構成図。
【図4】本発明の第1の実施の形態における制御装置11と緊急停止装置8の機能ブロック図。
【図5】本発明の第1の実施の形態における作業装置停止処理のフローチャート。
【図6】本発明の第1の実施の形態における停止信号発生処理で用いる停止判定基準の一例を示す図。
【図7】本発明の第1の実施の形態における屋外接地型作業装置5の停止動作の一例を示す図。
【図8】本発明の第1の実施の形態における低高度空中作業装置6の停止動作の一例を示す図。
【図9】本発明の第1の実施の形態における海上作業装置7の停止動作の一例を示す図。
【図10】本発明の第1の実施の形態における監視装置4に係る表示装置12の表示画面例。
【図11】本発明の第2の実施の形態における監視装置35の構成図。
【図12】本発明の第2の実施の形態における緊急停止装置40の構成図。
【図13】本発明の第2の実施の形態における制御装置38と緊急停止装置40の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。まず、本発明の好適な第1の実施の形態として、原子力発電所に係る作業に用いる作業装置について図を用いて説明する。なお、本実施の形態では、適用対象を原子力発電所に係る作業装置(屋外接地型作業装置、低高度空中作業装置、及び海上作業装置)としているが、災害発生時に人が緊急避難する必要がある場所及びその周辺での作業に用いる作業装置にも同様の構成で適用できる。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る原子力発電所内作業における、作業装置5,6,7と緊急停止装置8の機器配置を示す図である。この図に示す原子力発電所敷地内には、原子炉建屋1、タービン建屋2、免震重要棟3等の構造物が配置されており、当該発電所敷地は海に隣接している。免震重要棟3は作業装置5,6,7の作業位置から離れた場所に位置しており、免震重要棟3の内部には作業装置5,6,7を監視するための外部端末である監視装置4が設置されている。
【0011】
監視装置4は、屋外接地型作業装置(例えば、油圧ショベル、クレーン等の建設機械)5、低高度空中作業装置(例えば、消火用ヘリコプター等の作業用航空機)6、及び海上作業装置(例えば、クレーン船等の作業船舶)7等に搭載された緊急停止装置8との情報の送受信を行う。また、当該敷地内には、複数のエリア内地震計9が設置されており、各地震計9から出力される信号(地震動)は緊急停止装置8に入力されている。なお、各実施の形態に係る種々の装置・機器間において送受信(入出力)される信号は、全て有線、全て無線、又は有線と無線との組合せ等、様々な回線を利用して通信されている。
【0012】
図2を用いて監視装置4の詳細構成を説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態における監視装置4の構成図である。なお、先の図面と同じ部分には同じ符号を付して適宜説明を省略することがある(後の各図においても同様とする)。
【0013】
この図に示す監視装置4は、屋外接地型作業装置5、低高度空中作業装置6及び海上作業装置7と情報を送受信するための通信機10と、地震発生に伴う緊急停止時の各作業装置5,6,7の状態情報を記憶及び表示する処理や、各作業機械5,6,7を緊急停止するための停止信号を発生するための処理等を実行するための制御装置11と、緊急停止装置8から送信される各作業装置5,6,7の状態情報や周辺環境情報等の各種情報を表示するための表示装置12とを備えている。
【0014】
図3を用いて、本実施の形態における緊急停止装置8の詳細構成を説明する。図3は本発明の第1の実施の形態における緊急停止装置8の構成図である。各作業装置5,6,7に搭載された緊急停止装置8には、外部(例えば、気象庁等)から入力される緊急地震速報(地震発生情報)を取得するための情報取得装置としての携帯電話13と、緊急停止装置8が搭載された作業装置5,6,7の状態情報及びその周辺環境情報を検出するためのデータ計測部(検出手段)18と、携帯電話13とデータ計測部18等の情報に基づいて各作業装置5,6,7を緊急停止するための停止信号を生成及び出力する処理、遠隔地に設置された監視装置4とのデータの送受信をする処理等を実行するための信号処理装置14とが備えられている。
【0015】
データ計測部18としては、地震による作業装置5,6,7本体の振動を計測するための加速度センサ15と、作業装置5,6,7の状態情報の1つとして作業装置5,6,7の位置情報を計測するためのGPS受信機16と、作業装置5,6,7の周辺環境情報の1つとして作業装置の作業位置における放射線量を測定するための線量計17とが内蔵されている。また、GPS受信機16と信号処理装置14が外部と通信する必要があるため、通信用アンテナ19が緊急停止装置8の上部に設置されている。なお、地震後に津波が発生する場合があるので、緊急停止装置8は、防水仕様とし、津波が引いた後でも利用できる構造とすることが好ましい。
【0016】
図4を用いて監視装置4の制御装置11内の機能構成と、作業装置の緊急停止装置8内の機能構成を説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態における制御装置11と緊急停止装置8の機能ブロック図である。この図に示すように、制御装置11は、停止解除信号送信部21と、検出情報受信部22と、表示信号出力部71を備えている。また、緊急停止装置8は、停止信号出力部23と、装置停止部25と、情報変換部26と、検出情報送信部27と、停止解除信号受信部24を備えている。
【0017】
外部(気象庁)より発信された緊急地震速報20の情報は、携帯電話13へ入力される。携帯電話13、加速度センサ15及びエリア内地震計9の出力信号は、停止信号出力部23へ入力される。停止信号出力部23は、動作中の作業装置5,6,7を緊急停止させる停止信号を発生するためのものであり、停止信号出力部23では、携帯電話13、加速度センサ15及びエリア内地震計9の出力信号から得られる地震情報に基づいて、作業装置5,6,7の動作の停止の有無が判定される(この判定内容については図6を用いて後述する)。この判定の結果、停止が必要であると判断された場合には、停止信号出力部23から装置停止部25へ停止信号が出力される。停止信号の入力を受けた装置停止部25は、作業装置5,6,7の動作を停止する処理を実行する(この動作停止処理については図7,8,9を用いて後述する。)。
【0018】
その後、作業装置5,6,7が安全に停止したことが確認されたら、装置停止部25から情報変換部26に停止完了信号が出力される。停止完了信号が入力された情報変換部26は、GPS受信機16を作業装置5,6,7の位置情報に変換するとともに、線量計17の出力信号を作業装置5,6,7の位置における放射線量情報へと変換する。当該変換後の位置情報及び放射線量情報(検出情報)は検出情報送信部27に出力される。
【0019】
制御装置11における検出信号受信部22には、検出情報送信部27から検出情報が入力される。表示信号出力部71には、検出情報受信部22から検出情報が入力される。表示信号出力部71は、入力された検出情報に基づいて表示信号を生成するためのもので、生成された表示信号は表示装置12に出力される。表示装置12には、入力した表示信号に基づいて位置情報及び放射線量情報が表示される(表示画面の具体例は図10を用いて後述する)。
【0020】
なお、作業装置5,6,7を緊急停止した後に作業を再開する場合は、制御装置11における停止解除信号送信部21から緊急停止装置8における停止解除信号受信部24へ停止解除信号を送信する。これにより、停止解除信号受信部24は、装置停止部25によって実行されている作業装置5,6,7の停止を解除する。
【0021】
図5を用いて本実の形態における作業装置停止処理の詳細を説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態における作業装置停止処理のフローチャートである。この図において、作業装置停止処理が開始されると、緊急停止装置8は、まずステップS1において、緊急地震速報20、エリア内地震計9及び加速度センサ15の信号を読み込む。そして、ステップS2の停止信号発生処理において、それぞれ、緊急地震速報20から震源地、到達時間及び予測震度等の情報を解析する処理(S3)と、エリア内地震計9による地震動情報から作業敷地内の揺れを算出する処理(S4)と、加速度センサ15の出力電圧から各作業装置5,6,7の加速度(すなわち、地震による震動情報)を算出する処理(S5)を実行する。さらに、ステップS6において、ステップS3からステップS5で得られた情報を基にして、作業装置5,6,7の停止を実行する必要があるか否かを判定する(詳細は図6参照)。
【0022】
ステップS6において停止を決定した場合、ステップS7の機器停止処理において、停止信号を取得し(S8)、ステップS9で作業装置5,6,7の停止動作を生成する(各作業装置5,6,7の停止動作は後述する図7,8,9参照)。次に、ステップS10の装置状態検出処理において、GPS受信機16と線量計17の出力信号を取得後(S11)、GPS受信機16の出力信号から作業装置の位置を算出し(S12)、さらに、線量計17の出力信号から作業装置周囲の線量を算出し(S13)、当該位置情報と線量情報を緊急停止装置8内の記憶装置(図示せず)に保存する(S14)。最後に、ステップS15において、ステップS14で保存した位置情報と線量情報を監視装置4の制御装置11へ送信し、処理を終了する。
【0023】
なお、本実施の形態では、作業装置の位置情報(S12)と線量情報(S13)を、緊急停止処理後に1回のみ送信する構成としたが、停止処理開始後から停止解除まで所定の周期で送信する構成や、停止処理が開始される前の作業中から常時送信する構成としても良い。
【0024】
ここで、図6を用いて、ステップS6の停止実行判定処理における判定基準について説明する。図6は、本発明の第1の実施の形態における停止信号発生処理で用いる停止判定基準の一例を示す図である。
【0025】
図中の判定結果において、丸印が付された分類は停止信号が発生される場合を示しており、バツ印が付された分類は停止信号が発生されない場合を示している。この図に示す通り、停止信号出力部23が停止信号を発生しないと判定する条件は、緊急地震速報20で得られた震源地の情報によらず、エリア内地震計9による振動検出が未検知であり、かつ、加速度センサ15による振動検出が未検知の場合であり、その他の場合には停止信号が発生される。
【0026】
なお、緊急地震速報20は、地震発生前に予測・発令されるため、作業エリアと作業装置で揺れを検知する前の停止信号発生処理の起動トリガーに利用してもよい。また、エリア内地震計9と加速度センサ15のいずれか一方が故障したと判断される場合には、故障していないセンサ情報を基に判定するものとする。さらに、エリア内地震計9と加速度センサ15の両者から信号が取得できない場合は、緊急地震速報20のみで判定しても良いし、もしくは、監視装置4で監視している作業員が停止指令を出しても良い。
【0027】
次に、図7〜図9を用いて、本実施の形態に係る各作業装置5,6,7の停止動作についてそれぞれ説明する。
【0028】
図7は屋外接地型作業装置5の停止動作の一例を示す図である。この図に示す屋外接地型作業装置5は、油圧ショベルであり、多関節型のフロント作業装置80を備えている。フロント作業装置80の先端には、作業具としてバケット81が取り付けられている。当該作業装置5の場合、作業中にバケット81が地上から離れていると転倒や処理物落下の可能性があるので、装置停止部25からの出力に基づいて自動的にバケット81を地上へ下ろした姿勢(安定姿勢)に移行した後に電源を切り、動作を停止するものとする。なお、図7に示した油圧ショベル以外の建設機械等の作業装置についても、予め設定した安定姿勢へと自動で移動した後に電源を切ることで安全に停止することができる。
【0029】
図8は低高度空中作業装置6の停止動作の一例を示す図である。この図に示す低高度空中作業装置6は、停止信号の受信後、緊急停止装置8内で算出した位置情報を取得する。そして、緊急停止装置8内の記憶装置(図示せず)に予め入力しておいた緊急着陸場所28の位置情報を用いて、現在位置から当該緊急着陸位置までの着陸軌道29を自動生成し、地上に着陸するものとする。
【0030】
図9は海上作業装置7の停止動作例の一例を示す図である。この図に示す海上作業装置7は、停止信号の受信後、緊急停止装置8内で算出した位置情報を取得する。そして、緊急停止装置8内の記憶装置(図示せず)に予め入力しておいた緊急着岸場所30の位置情報を用いて、現在位置から当該緊急着岸位置までの着岸軌道31を自動生成し着岸するものとする。
【0031】
なお、低高度空中作業装置6の緊急着陸場所28と海上作業装置7の緊急着岸場所30は、監視装置4から緊急停止装置8に対して位置情報の書換信号を出力することで、任意の位置へ変更できる。
【0032】
次に、図10を用いて、監視装置4の表示装置12に表示される画面の一例について説明する。図10は、監視装置4に係る表示装置12の表示画面例である。この図に示す画面上部には、停止信号出力部23から停止信号が出力されているか否かに基づいて作業装置5,6,7が作業中又は緊急停止中かを表示するステータス表示部32と、作業装置5,6,7の緊急停止装置8から送信された位置情報(位置)及び線量情報(空間線量)等を表示するデータ表示部33が配置されている。そして、画面下部の作業装置状態表示部34には、GPS受信機16からの位置情報に基づいて演算された原子力発電所敷地内の各作業装置5,6,7の位置がコンピュータグラフィックス等で表示されており、これにより各作業装置5,6,7の位置関係を簡単に把握することができる。
【0033】
以上のように構成した本実施の形態の作業装置の緊急停止システムによれば、地震発生時に複数の情報(緊急地震速報、震度情報、加速度情報等)を用いて作業装置5,6,7を停止するか否かを判断することで、作業装置5,6,7を安全に停止できる。また、作業装置5,6,7の停止に伴って緊急停止装置8から監視装置4に作業装置5,6,7の状態情報(例えば、位置情報)及び周辺環境情報(例えば、放射線量情報)が送信されるので、地震に伴う作業装置5,6,7の周囲環境の変化や作業装置5,6,7本体の異常の有無を容易に把握することができる。これにより、地震による作業装置5,6,7の緊急停止後の作業再開までに要する時間を短縮することができる。
【0034】
また、上記の実施の形態では、監視装置4に出力された作業装置5,6,7の状態情報及び周辺環境情報を表示装置12に表示させているので、周囲環境の変化や異常の有無をさらに容易に把握することができる。さらに、監視装置4(制御装置11)から各作業装置5,6,7の緊急停止装置8に停止解除信号を送信することで複数の作業装置5,6,7の停止状態を一斉に解除することができるので、作業再開までの時間をさらに短縮することができる。
【0035】
次に本発明の好適な第2の実施の形態について、図11から図13を用いて説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と比較して、監視装置と緊急停止装置の構成が異なるが、それ以外の構成は同一であるものとする。以下、第1の実施の形態と異なる点を主に説明する。
【0036】
まず、図11を用いて監視装置35の詳細構成を説明する。図11は本発明の第2の実施の形態における監視装置35の構成図である。監視装置35は、緊急地震速報20を受信するための携帯電話13と、作業装置5,6,7と情報を送受信するための通信機10と、地震発生に伴う緊急停止時の各作業装置5,6,7の状態情報を記憶及び表示する処理や、各作業機械5,6,7を緊急停止するための停止信号を発生するための処理等を実行するための制御装置38と、各作業装置5,6,7の状態情報や周辺環境情報等の各種情報を表示するための表示装置12を備えている。
【0037】
次に、図12を用いて緊急停止装置40の詳細構成を説明する。図123は本発明の第2の実施の形態における緊急停止装置40の構成図である。この図に示す緊急停止装置40には、緊急停止装置40が搭載された作業装置5,6,7の状態情報及びその周辺環境情報を検出するためのデータ計測部(検出手段)18と、データ計測部18の情報から停止信号を出力する処理、遠隔地に設置した監視装置35とのデータ送受信をする処理等を実行するための信号処理装置41と、緊急停止装置40の上部に設置された通信用アンテナ19とが備えられている。
【0038】
また、図13を用いて監視装置35の制御装置38内の機能構成と、作業装置の緊急停止装置40内の機能構成を説明する。図13は、本発明の第2の実施の形態における制御装置38と緊急停止装置40の機能ブロック図である。この図に示すように、制御装置38は外部情報送信部49を備えており、緊急停止装置40は外部情報受信部52を備えている。
【0039】
外部より発信された緊急地震速報20の情報は、制御装置38に接続された携帯電話13へ入力される。携帯電話13とエリア内地震計9の出力信号は、制御装置38の外部情報送信部49へ入力される。外部情報送信部49からは緊急地震速報20及びエリア内地震計9の出力信号が送信され、これらは緊急停止装置40内の外部情報受信部52で受信される。外部情報受信部52で受信された緊急地震速報20及びエリア内地震計9の出力信号と、加速度センサ15の出力信号は、停止信号出力部23に入力される。停止信号出力部23では、携帯電話13、加速度センサ15及びエリア内地震計9の出力信号から得られる地震情報に基づいて、先の実施の形態と同様に作業装置5,6,7の動作の停止の有無が判定される。その他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0040】
上記のように、本実施の形態では、監視装置35(制御装置38)で受信した緊急地震速報20及びエリア内地震計の出力値を作業装置5,6,7の緊急停止装置8に送信している点が第1の実施の形態と異なる。しかし、このように作業装置の緊急停止システムを構成しても、地震発生時に複数の情報に基づいて作業装置5,6,7を安全に停止できるとともに、作業装置5,6,7の状態情報及び周辺環境情報に基づいて地震に伴う作業装置5,6,7及び周囲環境の変化等を容易に把握することができる。したがって、本実施の形態によっても、災害発生時に作業装置を安全に停止しつつ、作業装置の操作再開を短時間で行うことができる。
【0041】
なお、上記の各実施の形態では作業装置の状態情報及び周辺環境情報を検出する手段として、GPS受信機16及び線量計17を備えることとしたが、この他にも各作業装置5,6,7に異常が発生しているか否かを判定するために各作業装置5,6,7の稼働情報を検出するためのセンサ(エンジン回転数センサ、圧力センサ、冷却水温度センサ等)を設置し、当該センサからの出力値を作業装置の状態情報として利用しても良い。また、以上の説明から明らかなように、これら複数の検出手段のうち少なくとも1つの検出値を監視装置4に出力すれば本発明の効果は発揮される。
【0042】
また、上記の各実施の形態で示した構成は、地震発生時に原子力発電所及びその周囲で作業中の作業装置(例えば、屋外接地型作業装置5、低高度空中作業装置6、及び海上作業装置7)を対象としているが、当該構成は、地震発生時に人が緊急避難する必要がある場所及びその周辺での作業に用いる種々の作業装置にも同様の構成で適用可能である。そして、GPS受信機や通信機等の電波が届きにくい屋内や、水中又は地下等で作業する作業装置に対して上記の緊急停止装置を搭載する場合には、有線または無線中継機等を用いた通信環境を整備すれば、同様の構成で適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…原子炉建屋、2…タービン建屋、3…免震重要棟、4,35…監視装置、5…屋外接地型作業装置、6…低高度空中作業装置、7…海上作業装置、8,40…緊急停止装置、9…エリア内地震計、10…通信機、11,38…制御装置、12…表示装置、13…携帯電話、14…信号処理装置、15…加速度センサ、16…GPS受信機、17…線量計、18…データ計測部、19…通信用アンテナ、20…緊急地震速報、21…停止解除信号送信部、22…検出情報受信部、23…停止信号出力部、27…検出情報送信部、54…停止解除信号受信部、55…装置停止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震発生時に作業中の作業装置を緊急停止するための作業装置の緊急停止システムにおいて、
地震情報に基づいて前記作業装置の停止信号を出力するための停止信号出力手段と、
前記作業装置に搭載され、前記停止信号が入力されたとき前記作業装置の動作を停止するための停止手段と、
前記作業装置に搭載され、前記作業装置の状態情報及び周辺環境情報のうち少なくとも一方を検出するための検出手段と、
前記作業装置に搭載され、前記検出手段による検出情報を送信するための送信手段と、
前記作業装置の位置から遠隔地に設置され、前記検出情報を受信するための監視装置とを備えることを特徴とする作業装置の緊急停止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業装置の緊急停止システムにおいて、
前記監視装置は、
前記検出情報に基づいて表示信号を生成及び出力するための表示信号出力手段と、
前記表示信号に基づいて前記検出情報を表示するための表示手段とを備えることを特徴とする作業装置の緊急停止システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業装置の緊急停止システムにおいて、
前記監視装置は、前記作業装置の停止を解除する停止解除信号を送信するための停止解除信号送信手段を備えており、
前記停止手段は、前記停止解除信号に基づいて前記作業装置の停止状態を解除することを特徴とする作業装置の緊急停止システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の作業装置の緊急停止システムにおいて、
前記検出情報における前記状態情報には、前記作業装置の位置情報が含まれており、
前記検出情報における前記周辺環境情報には、前記作業装置の位置における放射線量情報が含まれていることを特徴とする作業機械の緊急停止システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の作業機械の緊急停止システムにおいて、
前記地震情報は、緊急地震速報、地震計による地震動情報、及び前記作業装置の振動情報の少なくとも1つであることを特徴とする作業機械の緊急停止システム。
【請求項6】
地震発生時に作業中の作業装置を緊急停止するための作業装置の緊急停止装置において、
地震情報に基づいて生成された停止信号が入力されたとき前記作業装置の動作を停止するための停止手段と、
前記作業装置の状態情報及び周辺環境情報のうち少なくとも一方を検出するための検出手段と、
前記検出手段による検出情報を、前記作業装置の位置から遠隔地にある外部端末に送信するための送信手段とを備えることを特徴とする作業装置の緊急停止装置。
【請求項7】
地震情報に基づいて生成された停止信号が入力されたとき、作業装置の動作を停止するための停止手段と、
前記作業装置の状態情報及び周辺環境情報のうち少なくとも一方を検出するための検出手段と、
前記検出手段による検出情報を、前記作業装置の位置から遠隔地にある外部端末に送信するための送信手段とを備えることを特徴とする作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−235200(P2012−235200A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100808(P2011−100808)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】