説明

作業車の旋回制御装置

【課題】摩擦式油圧クラッチを兼用することにより走行駆動手段の構成の簡素化を図り、併せて、適切にブレーキ旋回状態を現出させることが可能となる作業車の旋回制御装置を提供する。
【解決手段】走行駆動手段が逆転クラッチの操作圧を変更することにより、ブレーキ旋回状態と逆転旋回状態とに切り換え自在に構成され、前記逆転旋回状態が指令されると、摩擦式油圧クラッチの操作圧を逆転旋回用操作圧にし且つブレーキ旋回状態が指令されるとブレーキ旋回用操作圧に調整するブレーキ旋回用処理を実行し、且つ、ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては、予め設定された初期操作圧を目標操作圧として設定し、その後は、ブレーキ旋回状態であると判別されるまで、初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を目標操作圧として設定して、摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の走行装置の駆動状態を直進駆動状態、旋回内側の走行装置が停止又は略停止するブレーキ旋回状態及び旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態に切り換え自在な走行駆動手段と、前記直進駆動状態、前記ブレーキ旋回状態及び前記逆転旋回状態のいずれかを選択して指令する走行駆動状態選択手段と、前記走行駆動状態選択手段の指令に基づいて、選択された駆動状態となるように前記走行駆動手段を制御する制御手段とが設けられた作業車の旋回制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車の旋回制御装置は、走行駆動状態選択手段にて駆動状態を選択することにより、左右一対の走行装置の駆動状態を直進駆動状態、旋回内側の走行装置が停止又は略停止するブレーキ旋回状態及び旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態の夫々に切り換えることが可能な構成として、作業状況に適した所望の旋回状態を現出させることができるようにしたものであるが、この種の作業車の旋回制御装置として、従来では、作業車の一例としてのコンバインに適用したものとして、次のように構成したものがあった。
【0003】
すなわち、前記走行駆動手段として、旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態を現出するための逆転旋回専用の摩擦式油圧クラッチと、旋回内側の走行装置の回動が停止又は略停止するブレーキ旋回状態を現出するためのブレーキ旋回専用の摩擦式油圧クラッチとを夫々各別に備えて、いずれかの摩擦式油圧クラッチを選択的に入り状態にすべく圧油供給路を切り換え、且つ、走行駆動状態選択手段にて選択された旋回状態に対応する操作圧となるように摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
尚、特許文献1に示すものでは、逆転旋回専用の摩擦式油圧クラッチ及びブレーキ旋回専用の摩擦式油圧クラッチとは別に、旋回内側の走行装置が機体進行方向に旋回外側の走行装置よりも低速度で回動する緩旋回状態を現出するための緩旋回専用の摩擦式油圧クラッチも備えられるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2000−264243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成においては、旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態を現出するための逆転旋回専用の摩擦式油圧クラッチと、旋回内側の走行装置の回動が停止又は略停止するブレーキ旋回状態を現出するためのブレーキ旋回専用の摩擦式油圧クラッチとが各別に設けられる構成であることから、それだけ摩擦式油圧クラッチの個数が多くなって走行駆動手段の構造が複雑となり、コスト高を招く不利があった。
【0006】
本発明の目的は、摩擦式油圧クラッチを兼用することにより走行駆動手段の構成の簡素化を図り、併せて、適切にブレーキ旋回状態を現出させることが可能となる作業車の旋回制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車の旋回制御装置は、左右一対の走行装置の駆動状態を直進駆動状態、旋回内側の走行装置が停止又は略停止するブレーキ旋回状態及び旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態に切り換え自在な走行駆動手段と、
前記直進駆動状態、前記ブレーキ旋回状態及び前記逆転旋回状態のいずれかを選択して指令する走行駆動状態選択手段と、
前記走行駆動状態選択手段の指令に基づいて、選択された駆動状態となるように前記走行駆動手段を制御する制御手段とが設けられたものであって、その第1特徴構成は、
前記走行駆動手段が、前記左右一対の走行装置のうちの旋回内側の走行装置に対して機体進行方向と逆方向に進行する推進力を伝える前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を変更することにより、前記ブレーキ旋回状態と前記逆転旋回状態とに切り換え自在に構成され、
油圧源から供給される圧油の供給圧を変更調整することにより前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整する操作圧調整手段と、前記左右一対の走行装置の回転速度を各別に検出する一対の走行速度検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記走行駆動状態選択手段にて前記逆転旋回状態が指令されると、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を逆転旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整する逆転旋回用処理を実行し、かつ、前記走行駆動状態選択手段にて前記ブレーキ旋回状態が指令されると、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧をブレーキ旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整するブレーキ旋回用処理を実行するように構成され、且つ、
前記ブレーキ旋回用処理として、前記ブレーキ旋回用操作圧としての目標操作圧を設定する目標操作圧設定処理、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧が前記目標操作圧となるように前記操作圧調整手段を制御する操作圧調整処理、及び、前記一対の走行速度検出手段の検出情報に基づいて前記走行駆動手段が前記ブレーキ旋回状態になっているか否かを判別するブレーキ旋回状態判別処理を夫々実行するように構成され、そして、
前記目標操作圧設定処理として、
前記走行駆動状態選択手段が前記直進駆動状態又は前記逆転旋回状態の指令から前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては、予め設定された初期操作圧を前記目標操作圧として設定し、その後は、前記ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態である判別されるまで、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行するように構成されている点にある。
【0008】
すなわち、前記走行駆動手段が、前記左右一対の走行装置のうちの旋回内側の走行装置に対して機体進行方向と逆方向に進行する推進力を伝える前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を変更することにより、前記ブレーキ旋回状態と前記逆転旋回状態とに切り換え自在に構成され、前記制御手段は、前記走行駆動状態選択手段にて前記逆転旋回状態が指令されると、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を逆転旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整する逆転旋回用処理を実行し、かつ、前記走行駆動状態選択手段にて前記ブレーキ旋回状態が指令されると、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧をブレーキ旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整するブレーキ旋回用処理を実行することになる。
【0009】
説明を加えると、旋回外側の走行装置に対しては機体進行方向に進行する推進力を伝えるようにしながら、機体進行方向と逆方向に進行する推進力を伝える前記摩擦式油圧クラッチの操作力を最大値に近い大きな操作力にすると旋回内側の走行装置が機体進行方向と逆方向に大きい推進力で駆動されるので前記逆転旋回状態になるが、前記摩擦式油圧クラッチの操作力を最大値よりも小さい操作力にすると、油圧クラッチの圧接力が弱くなり、機体進行方向と逆方向への推進力が前記逆転旋回状態に比べて小さい半伝動状態となって、その半伝動状態で駆動される旋回内側の走行装置に伝えられる機体進行方向と逆方向の推進力と、旋回外側の走行装置の駆動力により旋回内側の走行装置に与えられる機体進行方向の推進力とが均衡して、旋回内側の走行装置の回動が停止又は略停止する状態となる擬似的なブレーキ状態を現出させることで、前記ブレーキ旋回状態を得るのである。
【0010】
その結果、走行駆動手段は、1個の摩擦式油圧クラッチの操作圧を変更調整することにより、前記逆転旋回状態にて旋回を行う状態と、前記ブレーキ旋回状態にて旋回を行う状態とに切り換えて、夫々の旋回状態において旋回走行を行うことが可能となる。つまり、前記逆転旋回状態及び前記ブレーキ旋回状態のいずれが選択された場合においても、1個の摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整することによって選択された旋回状態を得ることができるので、前記逆転旋回状態だけを現出させるための専用の摩擦式油圧クラッチと前記ブレーキ旋回状態だけを現出させるための専用の摩擦式油圧クラッチとを各別に備える必要がなく、それだけ部品点数を少なくして構成を簡素にすることができる。
【0011】
そして、制御手段は、前記ブレーキ旋回用処理として、ブレーキ旋回用操作圧としての目標操作圧を設定する目標操作圧設定処理、摩擦式油圧クラッチの操作圧が目標操作圧となるように操作圧調整手段を制御する操作圧調整処理、及び、一対の走行速度検出手段の検出情報に基づいて走行駆動手段がブレーキ旋回状態になっているか否かを判別するブレーキ旋回状態判別処理を夫々実行し、目標操作圧設定処理として、ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては、予め設定された初期操作圧を前記目標操作圧として設定し、その後は、ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態であると判別されるまで、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行する。
【0012】
つまり、ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては、予め設定された初期操作圧を前記目標操作圧として設定して摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整するので、時間遅れの少ない状態で迅速にブレーキ旋回状態にさせ易いものとなり、しかも、一対の走行速度検出手段の検出情報に基づいてブレーキ旋回状態であると判別されるまで初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定するようにしたので、地面の硬軟等により、地面により走行装置に与える摩擦制動分が変動しても、適切にブレーキ旋回状態にさせることが可能となる。
【0013】
従って、第1特徴構成によれば、摩擦式油圧クラッチを兼用することにより走行駆動手段の構成の簡素化を図り、併せて、適切にブレーキ旋回状態にさせることが可能となる作業車の旋回制御装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記ブレーキ旋回状態判別処理として、前記一対の走行速度検出手段の検出情報に基づいて、旋回外側の走行装置の回転速度が判別条件切換用設定速度以上であるときは、旋回内側の走行装置の回転速度がブレーキ判定用速度未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別し、且つ、旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度未満であるときは、旋回外側の走行装置の回転速度に対する旋回内側の走行装置の回転速度の速度比率が設定比率未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別する処理を実行するよう構成されている点にある。
【0015】
すなわち、前記制御手段は、旋回外側の走行装置の回転速度が判別条件切換用設定速度以上の高速で走行しているときに、旋回内側の走行装置の回転速度が予め設定されているブレーキ判定用速度未満であるときは、左右の走行装置の速度差が充分大きくなっており作業車が小さめの旋回半径で旋回していることが明らかであるから、ブレーキ旋回状態であると判別するのである。
【0016】
ところで、圃場を走行するような作業車であれば、前記ブレーキ判定用速度として零速に近い非常に小さい値に設定しておくと、路面が軟弱な湿田状態であれば、実質的にはブレーキ旋回状態に対応する旋回状態になっていても、旋回内側の走行装置の回転速度が地面との摩擦による摩擦制動力が弱く、いつまでも前記ブレーキ判定用速度未満にならずにブレーキ旋回状態と判別できない等のおそれもあるので、前記ブレーキ判定用速度としては零速よりも設定量大きめの値に設定しておくことになる。
【0017】
そして、旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度未満の低速で走行しているときは、旋回外側の走行装置の回転速度に対する旋回内側の走行装置の回転速度の速度比率が設定比率未満であればブレーキ旋回状態になっていると判別する。つまり、旋回外側の走行装置が低速で走行しているときに旋回内側の走行装置が前記ブレーキ判定用速度未満であるか否かにより判別すると、左右の走行装置の速度差が小さくなるのでブレーキ旋回状態であるか否かを精度よく判別することができないおそれがあるが、旋回外側の走行装置の回転速度に対する旋回内側の走行装置の回転速度の速度比率が設定比率未満であるか否かにより判別することで、旋回外側の走行装置が判別条件切換用設定速度未満の低速で走行していても、左右の走行装置の速度差がそのときの速度に応じた旋回用の速度差であるか否か、言い換えると、ブレーキ旋回状態であるか否かを適切に判別することが可能となる。
【0018】
従って、第2特徴構成によれば、旋回外側の走行装置がどのような速度であっても、ブレーキ旋回状態であるか否かを適切に判別することが可能となる。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理を、前記初期操作圧として、前記ブレーキ旋回用操作圧の変動が予測される範囲における最低となる操作圧又はそれに近い操作圧を設定し、且つ、前記補正操作圧として、前記初期操作圧から圧力を漸増させた操作圧を設定する形態で実行するように構成されている点にある。
【0020】
すなわち、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧をブレーキ旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整することで擬似的なブレーキ状態を現出させる場合、圃場の路面の状況や走行速度の違い等に起因して前記ブレーキ旋回状態にするのに必要となるブレーキ旋回用操作圧は変動することが予測されるが、前記制御手段は、摩擦式油圧クラッチを操作するときの目標操作圧を設定する目標操作圧設定処理にて、前記初期操作圧として、前記ブレーキ旋回用操作圧の変動が予測される範囲における最低となる操作圧又はそれに近い操作圧を設定しておき、前記補正操作圧として、前記初期操作圧から圧力を漸増させた操作圧を設定することになる。
【0021】
このように目標操作圧を設定することで、圃場の路面の状況や走行速度がどのような状態であっても、走行駆動状態選択手段にてブレーキ旋回状態が指令された直後に摩擦式油圧クラッチの操作圧が強くなり過ぎて誤って逆転旋回状態に切り換わることを回避できることになり、しかも、前記補正操作圧として前記初期操作圧から圧力を漸増させた操作圧を設定することから、ブレーキ旋回状態が指令された直後において操作圧が不足していても徐々に操作圧が増大して的確にブレーキ旋回状態に切り換えることができる。そして、このように操作圧が漸増することで急激な操作圧の増大によるショックが少なく滑らかな旋回操作を行うことが可能となる。
【0022】
従って、第3特徴構成によれば、誤って逆転旋回状態に切り換わることや急激な操作圧の増大によるショックが生じることを回避して滑らかな旋回操作を行うことが可能となった。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理において、前記ブレーキ旋回状態判別処理にて前記ブレーキ旋回状態になっていると判別した後に、前記旋回内側の走行装置の回転速度が判別用閾値以上になったことを検出すると、そのときの前記補正操作圧から設定量低下させた値を前記目標操作圧として設定する操作圧低下処理を実行するように構成されている点にある。
【0024】
すなわち、前記目標操作圧設定処理において、前記ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態であると判別されるまで、前記初期操作圧から圧力を漸増させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行するが、ブレーキ旋回状態であることの判別が適切に行えないまま補正操作圧を漸増した結果、摩擦式油圧クラッチの操作圧が強くなり過ぎて前記逆転旋回状態に切り換わってしまうおそれがある。そして、このように前記逆転旋回状態に切り換わると、摩擦式油圧クラッチが強い圧接力による伝達状態になり、旋回内側の走行装置が比較的高速で逆転駆動されることになる。
【0025】
そこで、前記ブレーキ旋回状態判別処理にて前記ブレーキ旋回状態になっていると判別した後に、前記旋回内側の走行装置の回転速度が判別用閾値以上になったことを検出した場合には、前記逆転旋回状態に切り換わったおそれがあるので、このような場合には、補正操作圧から設定量低下させた値を前記目標操作圧として設定するのである。このことにより、旋回内側の走行装置が逆転駆動される状態になることを回避させることができる。
【0026】
従って、第4特徴構成によれば、補正操作圧が強くなり過ぎて誤って逆転旋回状態に切り換わることを回避することが可能となった。
【0027】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理において、前記走行駆動状態選択手段が前記直進駆動状態又は前記逆転旋回状態の指令から前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度よりも低い速度に設定された低速状態判別用速度未満であれば、前記操作圧低下処理を実行しないように構成されている点にある。
【0028】
すなわち、前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記低速状態判別用速度未満であれば、そのときの圃場の路面の状況によっては、前記ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態であると判別されるまで、前記初期操作圧から圧力を漸増させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行するときに、前記ブレーキ旋回状態と、旋回内側の走行装置が旋回外側の走行装置と同一回転方向に回転する状態で且つ旋回外側の走行装置の回転速度よりも低速で駆動される緩旋回状態とが繰り返し現出することがある。
【0029】
そして、前記緩旋回状態が現出したときに、旋回内側の走行装置の回転速度は前記ブレーキ旋回状態であると判別されるべき回転速度よりも高速になり、そのときに前記旋回内側の走行装置の回転速度が前記判別用閾値以上になったと誤判別されることがある。その結果、前記緩旋回状態であるにもかかわらず補正操作圧から設定量低下させた値を前記目標操作圧として設定する操作圧低下処理が行われると、摩擦式油圧クラッチの操作圧が不足してブレーキ旋回状態にならずに前記緩旋回状態が継続するおそれがある。
【0030】
そこで、前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記低速状態判別用速度未満であれば、前記操作圧低下処理を実行しないようにしているので、前記緩旋回状態が継続する不利を回避させることが可能となる。
【0031】
本発明の第6特徴構成は、第3特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理において、前記走行駆動状態選択手段が前記直進駆動状態又は前記逆転旋回状態の指令から前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度よりも低い速度に設定された極低速状態判別用速度未満であれば、前記走行駆動状態選択手段が前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては前記初期操作圧を前記目標操作圧として設定し、その後は、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行しないように構成されている点にある。
【0032】
第6特徴構成によれば、前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記極低速状態判別用速度未満である極低速走行状態であれば、旋回内側の走行装置が停止状態になるように、摩擦式油圧クラッチの操作圧が調整されても、旋回外側の走行装置による推進力により引きずられて連れ回りする状態になり易いものであり、このような連れ回り状態が発生すると、上記したような前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行するようにすると、却って操作圧が強くなりすぎて逆転旋回状態になり車体が急旋回するおそれが大きいものとなる。
【0033】
そこで、前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記極低速状態判別用速度未満である極低速走行状態であれば、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行しないようにして、逆転旋回状態になることを回避して適正なブレーキ旋回状態を行うことが可能となる。
【0034】
本発明の第7特徴構成は、第3特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記走行駆動状態選択手段が、直進を指令する直進指令状態と旋回を指令する旋回指令状態とに切り換え操作自在で且つ前記旋回指令状態において旋回半径の大小を示す旋回半径指標を指令する旋回半径指令手段と、ブレーキ旋回モードと逆転旋回モードとを選択して指令する旋回モード指令手段とから構成され、
前記制御手段が、
前記旋回モード指令手段にて前記ブレーキ旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記ブレーキ旋回状態が指令されたものであると判別して前記ブレーキ旋回用処理を実行し、かつ、前記旋回モード指令手段にて前記逆転旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記逆転旋回モードが指令されたものであると判別して前記逆転旋回用処理を実行するように構成され、且つ、
前記旋回モード指令手段にて前記ブレーキ旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令される場合には、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧として、前記初期操作圧よりも小さくかつ前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように前記操作圧調整手段を制御するブレーキ旋回モード用低速旋回処理を実行し、かつ、前記旋回モード指令手段にて前記逆転旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令される場合には、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧として、前記逆転旋回用操作圧よりも小さくかつ前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように前記操作圧調整手段を制御する逆転旋回モード用低速旋回処理を実行するように構成されている点にある。
【0035】
第7特徴構成によれば、前記旋回モード指令手段にて前記ブレーキ旋回モードが指令されている状態で、前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記ブレーキ旋回モード用低速旋回処理を実行し、前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記ブレーキ旋回状態が指令されたものであると判別して前記ブレーキ旋回用処理を実行する。
【0036】
一方、前記旋回モード指令手段にて前記逆転旋回モードが指令されている状態で、前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記逆転旋回モード用低速旋回処理を実行し、前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記逆転旋回状態が指令されたものであると判別して前記逆転旋回用処理を実行する。
【0037】
前記ブレーキ旋回モード用低速旋回処理や前記逆転旋回モード用低速旋回処理では、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧として、前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように前記操作圧調整手段を制御するので種々異なる大きさの旋回半径の旋回状態を指令することができる。
【0038】
従って、旋回モード指令手段にて所望の旋回モードを指令しておき、旋回半径指令手段にて所望の旋回半径を指令することができ、操作性のよい状態で種々異なる大きさの旋回半径の旋回状態を指令することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る作業車の旋回制御装置の実施形態を、作業車の一例としてのコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0040】
図1に示すように、右及び左のクローラ走行装置1,1で支持された車体の前部に、昇降シリンダ3にて横軸芯P1周りに駆動昇降自在に刈取部4が支持され、車体の前部の右側に運転部5が備えられ、運転部5の運転座席6の下側にエンジン7が備えられ、車体の後部の左側に脱穀装置8が備えられ、車体の後部の右側にグレンタンク9が備えられて、作業車の一例である自脱型のコンバインが構成されている。
【0041】
図2に示すように、エンジン7の動力が伝動ベルト19、入力プーリー17、入力軸16を介して、走行変速用の静油圧式無段変速装置11の入力軸に伝達され、一方、エンジン7の動力が伝動ベルト20及び刈取変速用の静油圧式無段変速装置21を介して刈取部4に伝達される構成となっている。
【0042】
次に図3を参照しながら、ミッションケース内部の伝動機構について説明する。
ミッションケース10の上部において入力軸22が支持され、入力軸22に伝動ギヤ23,24がスプライン構造により固定されている。前記静油圧式無段変速装置11の出力軸11cがミッションケース10の内部に挿入され、スプライン構造により伝動ギヤ24(入力軸22)に連結されている。又、ミッションケース10の上部に支持された副変速用伝動軸27に、高速ギヤ25及び低速ギヤ26が相対回転自在に外嵌され、伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26が咬合しており、シフト部材28がスプライン構造により副変速用伝動軸27に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これら伝動ギヤ23及び高速ギヤ25、伝動ギヤ24及び低速ギヤ26、シフト部材28により副変速装置が構成されており、シフト部材28を高速及び低速ギヤ25,26に咬合させることにより、入力軸22の動力が高低2段(低速及び高速)に変速されて、副変速用伝動軸27に伝達される構成となっている。
この副変速装置は、通常は、シフト部材28が高速ギヤ25に咬合する位置にスライド操作されて、高速位置が設定されている。
【0043】
前記ミッションケース10の下部に直進用伝動軸29が支持され、直進用伝動軸29に伝動ギヤ31が固定され、この伝動ギア31は副変速用伝動軸27に固定の伝動ギヤ30と咬合している。又、直進用伝動軸29には、左右一対の出力ギア32R、32Lが相対回転自在に外嵌され、且つ、左右一対の咬合部33R、33Lがスプライン構造により直進用伝動軸29に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。そして、右の出力ギヤ32Rと右の咬合部33Rの間で右のサイドクラッチ34が構成され、左の出力ギヤ32Lと左の咬合部33Lの間で左のサイドクラッチ34が構成されている。
【0044】
次に、右及び左のサイドクラッチ34について説明する。
直進用伝動軸29の右及び左側部の外面にスプライン部が形成されて、右の咬合部33R及び左の咬合部33Lが直進用伝動軸29のスプライン部に一体回転及びスライド自在に外嵌され、受け部材40が直進用伝動軸29のスプライン部に一体回転自在に外嵌されている。受け部材40及びバネ41により右及び左の咬合部33R,33Lが、右及び左の出力ギヤ32R,32Lの咬合側に付勢されている。右及び左の咬合部33R,33Lが右及び左の出力ギヤ32R,32Lに咬合することにより、右及び左のサイドクラッチ34の伝動状態となるのであり、直進用伝動軸29の動力が、右及び左のサイドクラッチ34を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達される。
又、右及び左の出力ギヤ32R,32Lと右及び左の咬合部33R,33Lとの間に夫々形成された油室内に作動油を供給することで、右及び左の咬合部33R,33Lと右及び左の咬合部33R,33Lとが、バネ41の付勢力に抗してそれらが離間する側にスライド操作されて、右及び左のサイドクラッチ34がクラッチ切り状態(遮断状態)となり、前記作動油を排出すると、バネ41の付勢力により右及び左のサイドクラッチ34がクラッチ入り状態(伝動状態)となる。
【0045】
前記ミッションケース10の下部には、左右の伝動軸35が同一軸芯上に左右に並ぶ状態で支持され、左右の伝動軸35に固定された左右の伝動ギヤ36が右の出力ギヤ32R及び左の出力ギア32Lに咬合しており、左右の伝動軸35に固定された左右の伝動ギヤ37が、右及び左の車軸38に固定された伝動ギヤ39夫々に咬合している。右及び左の車軸38は右及び左のクローラ走行装置1のスプロケットが連結されている。
【0046】
そして、左右のサイドクラッチ34が共にクラッチ入り状態であれば、入力軸22の動力が、副変速用伝動軸27、伝動ギヤ30,31、直進用伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されると機体は直進状態で走行する伝動状態となる。
【0047】
次に、車体を旋回走行させるための旋回用の伝動系の構造について説明する。
ミッションケース10内に伝動軸44が支持され、伝動軸44に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ45が、右の咬合部33Rの外周のギヤ部に咬合しており、伝動軸44と伝動ギヤ45との間に緩旋回クラッチ46が備えられている。緩旋回クラッチ46は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態(入り状態)に操作され、作動油が排出されることで遮断状態(切り状態)に操作される。
【0048】
直進用伝動軸29に旋回クラッチケース47が相対回転自在に外嵌されて、伝動軸44に固定された伝動ギヤ48と旋回クラッチケース47の外周部の伝動ギヤ47aとが咬合している。旋回クラッチケース47は左右対称に構成されており、旋回クラッチケース47と右及び左の出力ギヤ32R,32Lとの間に右及び左の旋回クラッチ49が構成されている。右及び左の旋回クラッチ49は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この右及び左の旋回クラッチ49は、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態となるように構成されている。
【0049】
前記緩旋回クラッチ46が伝動状態に操作されると、直進用伝動軸29の動力が右の咬合部33R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29よりも低速の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34のうちのいずれかを遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49のうちのサイドクラッチ34が遮断された側のものを伝動状態に操作すると、伝動状態となる旋回クラッチ49を介して直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lのいずれか一方に伝達され、それに対応する側の走行装置1に低速の動力が伝達される。そのとき、右又は左の出力ギヤ32R,32Lの他方のものは、直進用伝動軸29の動力がそのまま伝達される。
【0050】
前記伝動軸44には、伝動ギヤ52が相対回転自在に外嵌され、この伝動ギア52は、副変速用伝動軸27に一体回転自在に備えられた伝動ギヤ51が咬合している。そして、伝動軸44と伝動ギヤ52との間に摩擦式油圧クラッチとしての逆転クラッチ53が備えられている。逆転クラッチ53は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態(入り状態)に操作され、作動油が排出されることで遮断状態(切り状態)に操作され、又、この逆転クラッチ53は、作動油の供給圧を調整することで後述するような制動状態にも操作可能な構成となっている。
【0051】
前記逆転クラッチ53が伝動状態に操作されると、副変速用伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、直進用伝動軸29と逆方向の回転の動力として、旋回クラッチケース47に伝達される。右又は左のサイドクラッチ34のうちのいずれかを遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49のうちのサイドクラッチ34が遮断された側のものを伝動状態に操作すると、伝動状態となる旋回クラッチ49を介して直進用伝動軸29とは逆方向の回転の動力が右又は左の出力ギヤ32R,32Lのいずれか一方に伝達され、それに対応する側の走行装置1に逆方向の回転動力が伝達される。そのとき、右又は左の出力ギヤ32R,32Lの他方のものは、直進用伝動軸29の動力がそのまま伝達される。
【0052】
又、前記逆転クラッチ53に対する作動油の供給圧を調整することで伝動軸44の回動を阻止するような操作圧に調整されると制動状態にすることができ、この制動状態では、伝動軸44及び伝動ギヤ48を介して、旋回クラッチケース47が制動状態となる。右又は左のサイドクラッチ34のうちのいずれかを遮断状態に操作し、右又は左の旋回クラッチ49のうちのサイドクラッチ34が遮断された側のものを伝動状態に操作すると、右又は左の出力ギヤ32R,32Lのうち、サイドクラッチ34が遮断されていない側のものが制動状態となり、反対側のものは直進用伝動軸29の動力がそのまま伝達される。
【0053】
従って、前記緩旋回クラッチ46、前記逆転クラッチ53と、左右一対の走行装置1の駆動状態を直進状態と旋回状態とに切り換えるための左右のサイドクラッチ34とを主要構成として備える上記したようなミッションケース10内に備えられた伝動機構が走行駆動手段100に相当する。
【0054】
次に、図5を参照しながら、走行変速用の静油圧式無段変速装置11の操作について説明する。
静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pが、中立位置N、中立位置Nから前進Fの高速側及び後進Rの高速側に無段変速自在に構成されており、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mが高低2段に変速自在に構成されている。静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板を操作する油圧シリンダ59、油圧シリンダ59に作動油を給排操作する制御弁60が備えられて、運転部5に備えられた変速レバー61と制御弁60とが機械的に連係されている。これにより、変速レバー61を操作することによって、制御弁60が操作され油圧シリンダ59が作動して、変速レバー61の操作位置に対応する位置に静油圧式無段変速装置11のポンプ11Pの斜板を操作する。
【0055】
静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板を操作する油圧シリンダ62、油圧シリンダ62に作動油を給排操作する電磁操作式の制御弁63が備えられており、変速レバー61の握り部に変速スイッチ61aが備えられて、変速レバー61の変速スイッチ61aの操作信号がマイクロコンピュータを備えた制御装置64に入力されている。これにより、変速レバー61の変速スイッチ61aを操作することによって、制御装置64により制御弁63が操作され油圧シリンダ62が作動して、静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速及び低速位置に操作される構成となっている。
【0056】
そして、変速レバー61の操作位置を検出する操作位置センサー65が備えられ、機体の走行速度を検出するための左右の車軸の回転速度を検出する走行速度検出手段としての左右車軸回転センサー66R,66Lが備えられて、操作位置センサー65及び左右車軸回転センサー66R,66Lの検出値が制御装置64に入力されている。静油圧式無段変速装置11のモータ11Mの斜板が高速位置であるか低速位置であるかの検出は、変速レバー61の変速スイッチ61aの操作信号により制御装置64で認識される。
【0057】
次に、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の旋回クラッチ49、緩旋回クラッチ46、逆転クラッチ53に作動油を給排操作する油圧ユニット57について説明する。
図4に示すように、前記油圧ユニット57には、右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、リリーフ弁69、アンロード弁70、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、逆転旋回用パイロット弁74が備えられている。そして、静油圧式無段変速装置11の出力軸11cにより駆動される油圧ポンプ56からの外部配管58が油圧ユニット57に接続され、右旋回制御弁67が直進用伝動軸29の油路29bを介して右のサイドクラッチ34及び右の旋回クラッチ49に接続され、左旋回制御弁68が直進用伝動軸29の油路29bを介して左のサイドクラッチ34及び左の旋回クラッチ49に接続されている。
【0058】
前記右旋回制御弁67及び左旋回制御弁68は、夫々、供給位置67a,68a及び排出位置67b,68bの2位置に切り換え操作自在な電磁操作式に構成されて、排出位置67b,68bに復帰付勢されている。アンロード弁70は遮断位置70a及び排出位置70bの2位置に切り換え操作自在な電磁操作式に構成されて、遮断位置70aに復帰付勢されている。右及び左旋回制御弁67,68と直進用伝動軸29の油路29bとの間から分岐した油路75に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72が直列的に接続されており、旋回切換制御弁72が伝動軸44の油路44aを介して緩旋回クラッチ46及び逆転クラッチ53に接続されている。
【0059】
前記比例制御弁71は電磁比例減圧弁にて構成され、後述するように制御装置64から供給される制御電流を変更調整することで作動油の流路下手側における緩旋回クラッチ46や逆転クラッチ53への供給圧を変更調整することが可能な構成となっている。従って、この比例制御弁71が、油圧源から供給される圧油の供給圧を変更調整することにより逆転クラッチ53の操作圧を調整する操作圧調整手段を構成する。
【0060】
旋回切換制御弁72は、緩旋回位置72a及び逆転旋回位置72cに操作自在なパイロット操作式に構成されて、緩旋回位置72aに復帰付勢されている。油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して逆転旋回位置72cに操作するように逆転旋回用パイロット弁74が構成されている。前記逆転旋回用パイロット弁74は、旋回切換制御弁72にパイロット作動油を供給する供給位置とパイロット作動油の供給を停止して旋回切換制御弁72を緩旋回位置72aに復帰させる停止位置の2位置に切り換え操作自在な電磁操作式に構成されて、停止位置に復帰付勢されている。
【0061】
右旋回制御弁67及び左旋回制御弁68、アンロード弁70、比例制御弁71、逆転旋回用パイロット弁74は、後述するように、制御装置64によって制御操作される。
【0062】
そして、図5に示すように、直進指令位置Nに復帰付勢されており、その直進指令位置Nから右方向側の最大操作位置Rm及び左方向側の最大操作位置Lmにわたる旋回指令操作領域にわたり揺動操作自在な旋回レバー77が運転部5に備えられて、旋回レバー77の操作位置を検出する旋回指令位置検出手段としての旋回レバーセンサ80が備えられ、この旋回レバーセンサ80の検出情報が制御装置64に入力されている。
【0063】
旋回レバー77は直進指令位置N及びそれに連なる旋回指令操作領域にわたり移動操作自在であり、旋回レバーセンサ80は旋回レバー77が旋回指令操作領域にて前記直進指令位置から最も離れる最大操作位置(Rm、Lm)へ移動するほど大きい目標旋回力、言い換えると小さい旋回半径に対応する指令情報を制御装置64に指令する構成となっており、前記旋回レバー77と前記旋回レバーセンサ80とにより旋回半径指令手段200が構成される。従って、旋回半径指令手段200は、直進を指令する直進指令状態と旋回を指令する旋回指令状態とに切り換え操作自在で且つ前記旋回指令状態において旋回半径の大小を示す旋回半径指標を指令するように構成されている。
【0064】
又、緩旋回モード、ブレーキ旋回モード及び逆転旋回モードに切り換え指令する旋回モードスイッチ78が運転部5に備えられて、旋回モードスイッチ78の操作位置が制御装置64に入力されており、この旋回モードスイッチ78は緩旋回モードを指令する緩旋回位置、ブレーキ旋回モードを指令するブレーキ旋回位置、逆転旋回モードを指令する逆転旋回位置に切り換え操作自在に構成され、制御装置64が、旋回モードスイッチ78の操作位置に対応するように走行駆動手段100の駆動状態を切り換えるようになっている。
【0065】
前記旋回レバー77が直進指令位置Nに操作されると、右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作されて、右及び左のサイドクラッチ34、右及び左の旋回クラッチ49から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ34が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ49が半伝動状態に操作される。右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作されるから、油圧ポンプ56からの作動油はアンロード弁70を通してミッションケース10に戻される。
【0066】
これにより、入力軸22の動力が、副変速用伝動軸27、伝動ギヤ30,31、直進用伝動軸29、右及び左のサイドクラッチ34(右及び左の咬合部33R,33L)、右及び左の出力ギヤ32R,32L、伝動ギヤ36、伝動軸35、伝動ギヤ37,39、右及び左の車軸38を介して、右及び左のクローラ走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0067】
次に、旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されているときに旋回レバー77が旋回指令操作領域に操作された場合について説明する。
前記旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作され、旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに切り換えられ、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて伝動状態に操作される。
【0068】
この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ34の動力が、左の出力ギヤ32L及び左の旋回クラッチ49から右の旋回クラッチ49を介して右の出力ギヤ32Rに伝達され、直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29より少し低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されるのとほぼ同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72を介して、緩旋回クラッチ46に作動油が供給され始めるのであり、旋回レバー77が不感帯を外れてから直進指令位置から離れる方向に右側に移動操作されるほど比例制御弁71により緩旋回クラッチ46の操作圧が昇圧操作される。
【0069】
旋回レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により緩旋回クラッチ46の操作圧が昇圧操作されるのに伴って、直進用伝動軸29の動力が右の咬合部33R、伝動ギヤ45、緩旋回クラッチ46、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、直進用伝動軸29と同方向の回転で直進用伝動軸29よりも低速の動力が右の出力ギヤ32Rに伝達される。
【0070】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、緩旋回クラッチ46からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ46の操作圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が緩旋回クラッチ46からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、緩旋回クラッチ46の操作圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0071】
旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、緩旋回クラッチ46の操作圧が昇圧すると、緩旋回クラッチ46からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)を介して直進用伝動軸29の動力により駆動される左の出力ギヤ32Lよりも、緩旋回クラッチ46からの動力により右の出力ギヤ32Rが低速で駆動されることになり、機体は右に旋回する。このときの旋回状態が、旋回内側の走行装置が機体進行方向に旋回外側の走行装置よりも低速度で回動する低速回動旋回状態に対応する。
【0072】
前記旋回レバー77が直進指令位置Nから左方向に操作されて不感帯を外れると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに保持され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。これと同時に、前述した左側への旋回と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。又、旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、緩旋回クラッチ46の操作圧が高圧になると、右旋回操作と同様な操作が行われて、機体は左に旋回する。
【0073】
次に、旋回モードスイッチ78がブレーキ旋回位置に操作されているときに旋回レバー77が旋回指令操作領域に操作された場合について説明する。
旋回モードスイッチ78がブレーキ旋回位置に操作され、旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに切り換えられ、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので機体は緩やかに右に向きを変える。このときの制御装置64の制御状態がブレーキ旋回モード用低速旋回処理に対応する。
【0074】
旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されるのとほぼ同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(逆転旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ53に作動油が供給され始めるのであり、旋回レバー77が不感帯を外れてから直進指令位置から離れる方向に右側に移動操作されるほど比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作される。但し、このときに旋回レバー77が右方向に最大操作位置Rmまで操作されても、逆転クラッチ53の操作圧は、伝動軸44を逆転させるのではなく、伝動軸44の回転が停止する又は略停止する程度の操作圧となるように調整される。
【0075】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、逆転クラッチ53を介して制動される伝動軸44の制動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が逆転クラッチ53の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える(ブレーキ旋回モード用低速旋回処理に対応)。
【0076】
旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ53の操作圧が制動作用するように設定されている操作圧になると、その制動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って右の出力ギヤ32Rが制動状態となり、機体は右に旋回する。このときの旋回状態が、旋回内側の走行装置の回動が停止又は略停止するブレーキ旋回状態に対応する。
【0077】
従って、旋回レバー77の操作に伴って比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、右の出力ギヤ32Rに制動力が掛かる。つまり、伝動軸44に対してブレーキによって制動を掛ける状態と等しい擬似ブレーキ状態となる。
【0078】
旋回レバー77が直進指令位置Nから左方向に操作されて不感帯を外れると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。旋回レバー77の左側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ52の操作圧が高圧になると、右旋回操作と同様な操作が行われて、機体は左に旋回する。
【0079】
次に、旋回モードスイッチ78が逆転旋回位置に操作されているときに旋回レバー77が旋回指令操作領域に操作された場合について説明する。
旋回モードスイッチ78が逆転旋回位置に操作され、旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに切り換えられ、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)及び右の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ34(右の咬合部33R)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ49が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ49が半伝動状態であるので、機体は緩やかに右に向きを変える。このときの制御状態が逆転旋回モード用低速旋回処理に対応する。
【0080】
旋回レバー77が直進指令位置Nから右方向に操作されて不感帯を外れると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されるのとほぼ同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(逆転旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ53に作動油が供給され始めるのであり、旋回レバー77が直進指令位置から不感帯を外れて右側に移動操作されるほど比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作される。この逆転旋回状態では、旋回レバー77が右方向に最大操作位置Rmまで操作されると、逆転クラッチ53の操作圧は、逆転クラッチ53を完全に入り状態にして伝動軸44を直進用伝動軸29と逆方向に回転させるように調整される。
【0081】
旋回レバー77の操作に伴って比例制御弁71により逆転クラッチ53の操作圧が昇圧操作されるのに伴って、副変速用伝動軸27の動力が伝動ギヤ51,52、逆転クラッチ53、伝動軸44、伝動ギヤ48、旋回クラッチケース47及び右の旋回クラッチ49を介して、直進用伝動軸29と逆方向の回転の動力として右の出力ギヤ32Rに伝達される。
【0082】
この場合、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力と、逆転クラッチ53からの動力とが、同時に右の出力ギヤ32Rに伝達される状態となるので、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力が逆転クラッチ53からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。これにより、逆転クラッチ53の操作圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。このときの制御状態が後述の逆転旋回モード用低速旋回処理に対応する。
【0083】
そして、旋回レバー77の右側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ53の操作圧が高圧になると、逆転クラッチ53からの動力が左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ53からの動力により右の出力ギヤ32Rが駆動される。この状態において、左の出力ギヤ32Lに対して右の出力ギヤ32Rが逆方向に駆動されて機体は右に旋回する。このときの旋回状態が、旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態に対応する。
【0084】
次に、旋回レバー77が直進指令位置Nから左方向に操作された場合には、不感帯を外れると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに保持され、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)及び左の旋回クラッチ49に作動油が供給されて、左のサイドクラッチ34(左の咬合部33L)が遮断状態に操作され、左の旋回クラッチ49に作動油が伝動状態に操作される。これと同時に、前述と同様な操作が行われて機体は緩やかに左に向きを変える。旋回レバー77の左側への移動操作量が大きくなり、逆転クラッチ53の操作圧が高圧になると、右旋回の場合と同様な操作が行われて、機体は左に旋回する。
【0085】
図5に示すように、旋回レバー77の握り部に旋回状態切換スイッチ81が備えられ、緩旋回モードの場合、旋回レバー77を操作して旋回走行を行っている状態で旋回状態切換スイッチ81を押し操作すると、旋回切換制御弁72が緩旋回位置72aからブレーキ旋回位置72bに操作されて、上記したようなブレーキ旋回モードに切り換えることができる。このブレーキ旋回モードは旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81を押し操作している間だけであり、旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81から手を離して戻し操作すると緩旋回モードに戻る。
【0086】
又、ブレーキ旋回モードの場合、旋回レバー77を操作して旋回走行を行っている状態で、旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81を押し操作すると、逆転クラッチ53への操作圧が変更調整されて逆転旋回モードになり機体は旋回する。この逆転旋回モードは旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81を押し操作している間だけであり、旋回レバー77の旋回状態切換スイッチ81から手を離して戻し操作すると、ブレーキ旋回モードに戻る。
【0087】
従って、この実施形態では、旋回モードスイッチ78及び旋回状態切換スイッチ81が旋回モード指令手段300に対応することになる。そして、前記旋回半径指令手段200及び前記旋回モード指令手段300により、直進駆動状態、ブレーキ旋回状態及び逆転旋回状態のいずれかを選択して指令する走行駆動状態選択手段が構成される。
【0088】
次に、前記制御装置64による制御内容について説明を加える。
前記制御装置64は、前記走行駆動状態選択手段にて前記逆転旋回状態が指令されると、逆転クラッチ53の操作圧を逆転旋回用操作圧にすべく比例制御弁71を調整する逆転旋回用処理を実行し、かつ、前記ブレーキ旋回状態が指令されると、逆転クラッチ53の操作圧をブレーキ旋回用操作圧にすべく比例制御弁71を調整するブレーキ旋回用処理を実行するように構成され、且つ、前記ブレーキ旋回用処理として、前記ブレーキ旋回用操作圧としての目標操作圧を設定する目標操作圧設定処理、逆転クラッチ53の操作圧が前記目標操作圧となるように比例制御弁71を制御する操作圧調整処理、及び、左右車軸回転センサー66R,66Lの検出情報に基づいて走行駆動手段100がブレーキ旋回状態になっているか否かを判別するブレーキ旋回状態判別処理を夫々実行するように構成され、前記目標操作圧設定処理として、ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては、予め設定された初期操作圧を目標操作圧として設定し、その後は、前記ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態であると判別されるまで、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行するように構成されている。
【0089】
説明を加えると、制御装置64は、前記旋回モード指令手段300にて前記ブレーキ旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段200にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記ブレーキ旋回状態が指令されたものであると判別して前記ブレーキ旋回用処理を実行し、かつ、前記旋回モード指令手段300にて前記逆転旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段200にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記逆転旋回モードが指令されたものであると判別して前記逆転旋回用処理を実行するように構成されている。
【0090】
又、制御装置64は、前記ブレーキ旋回状態判別処理として、左右車軸回転センサー66R,66Lの検出情報に基づいて、旋回外側の走行装置の回転速度Voutが判別条件切換用設定速度Vs5以上であるときは、旋回内側の走行装置の回転速度Vinがブレーキ判定用速度Vs2未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別し、且つ、旋回外側の走行装置の回転速度Voutが前記判別条件切換用設定速度Vs5未満であるときは、旋回外側の走行装置の回転速度Voutに対する旋回内側の走行装置の回転速度Vinの速度比率(Vout/Vin)が設定比率(1/5)未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別する処理を実行するよう構成されている。
【0091】
前記制御装置64は、前記目標操作圧設定処理を、前記初期操作圧として、前記ブレーキ旋回用操作圧の変動が予測される範囲における最低となる操作圧又はそれに近い操作圧を設定し、且つ、前記補正操作圧として、前記初期操作圧から圧力を漸増させた操作圧を設定する形態で実行するように構成されている。説明を加えると、例えば、種々変化することが想定される圃場条件のうちで、走行装置の滑りが少ない乾田等のような最もブレーキ状態になり易い圃場においてブレーキ旋回状態を得られる最低値となる操作圧を実験結果等により求めて、その値を初期操作圧として設定するようにしている。
【0092】
さらに、制御装置64は、旋回モード指令手段300にて前記ブレーキ旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段200にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令される場合には、逆転クラッチ53の操作圧として、前記初期操作圧よりも小さくかつ前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように比例制御弁71を制御するブレーキ旋回モード用低速旋回処理を実行し、かつ、前記旋回モード指令手段300にて前記逆転旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段200にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令される場合には、逆転クラッチ53の操作圧として、前記逆転旋回用操作圧よりも小さくかつ前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように比例制御弁71を制御する逆転旋回モード用低速旋回処理を実行するように構成されている。
【0093】
具体的には、旋回半径指令手段200を構成する旋回レバー77の旋回指令操作領域における操作位置と目標操作圧との関係を、前記旋回指令操作領域における直進指令位置から離れる方向への移動量が大になるほど大きくなり、且つ、前記旋回指令操作領域の全範囲にわたって、前記旋回指令操作領域における直進指令位置から離れる方向への移動量が大になるほど、旋回レバー77の操作位置の単位量あたりの変化に対する目標操作圧の変化量を大側に変化させる二次関数に対応する関係として定めて、この二次関数に対応する関係として定められる前記旋回指令操作領域における直進指令位置から離れる方向への移動量と目標操作圧との関係、及び、旋回レバー77の操作位置に基づいて、その旋回レバー77の操作位置に対応する目標操作圧を求めて、その目標操作圧になるように比例制御弁71を制御するように構成されている。
【0094】
図6に示すように、前記緩旋回モードでは、旋回レバー77が最大操作位置にまで操作されたときに、左右一対の走行装置のうち旋回内側の走行装置の出力回転速度が反対側の走行装置の出力回転速度の約1/3の速度にまで減速される目標旋回状態が設定され(図6のラインL1参照)、前記ブレーキ旋回モードでは、旋回中心側の走行装置の出力回転速度が零となるような目標速度比率が設定され(図6のラインL2参照)、前記超信旋回モードでは、旋回内側の走行装置の出力回転速度が反対側の走行装置の駆動回転方向とは逆回転方向で反対側の走行装置の出力回転速度の約1/3の速度になるような目標速度比率が設定される(図6のラインL3参照)。
【0095】
そして、図7に示すように、予め実験等により、上記したような目標速度比率が得られるように旋回レバー77の操作位置と緩旋回クラッチ46及び逆転クラッチ53の目標操作圧(具体的には、比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係が、操作位置の単位量あたりの変化に対する目標操作圧の変化量を大側に変化させる二次関数に対応する関係として定められ、制御装置64に記憶されている。
【0096】
説明を加えると、図7中のラインL4は、緩旋回モード並びに逆転旋回モードにおける旋回レバー77の操作位置と緩旋回クラッチ46及び逆転クラッチ53の目標操作圧(比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係を示しており、図7中のラインL5はブレーキ旋回モードにおける旋回レバー77の操作位置と目標操作圧(比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係を示している。
【0097】
そして、ラインL4においては、旋回レバー77を最大操作位置Lm,Rmにまで操作したときには、緩旋回モードの場合には緩旋回クラッチ46が強い圧接力による完全な入り状態に操作され、逆転旋回モードの場合には逆転クラッチ53が強い圧接力による完全な入り状態に操作されるような操作圧(逆転旋回用操作圧に対応する)に設定されている。しかし、ラインL5においては、旋回レバー77を最大操作位置Lm,Rmにまで操作したときには、伝動軸44を逆転駆動するのではなく、旋回内側の走行装置1の回動が停止又は略停止する制動状態となるような逆転クラッチ53における操作圧に設定されている。従って、このラインL5における旋回レバー77の最大操作位置における目標操作圧がブレーキ旋回状態に対応する初期操作圧に対応するものとなる。
【0098】
以下、図8〜図11に示すフローチャートを参照しながら、制御装置64の旋回制御について説明する。尚、この処理は単位時間(5msec)毎に繰り返し行われることになる。
旋回レバー77が直進指令位置Nの不感帯内にあれば、アンロード弁70を排出位置70aに切り換える(ステップ1,2)。又、左旋回制御弁68及び右旋回制御弁67は共に遮断状態に保持する(ステップ3,4)。旋回レバー77が直進指令位置Nから不感帯を外れると、その操作方向が左方向であれば左旋回制御弁68を供給位置68aに切り換え、操作方向が右方向であれば右旋回制御弁67を供給位置67aに切り換え(ステップ5,6,7)、アンロード弁70を遮断位置70aに切り換える(ステップ8)。
【0099】
次に、目標操作圧設定処理を実行する(ステップ9)。この目標操作圧設定処理は、図9に示すように、ブレーキ旋回状態が指令されているか否か、すなわち、旋回モードスイッチにてブレーキ旋回モードが指令され且つ旋回レバーが最大操作位置Lm,Rmにまで操作されている状態であるか否かを判別し、ブレーキ旋回状態が指令された直後であり指令状態に対応する目標電流は出力されていない場合、及び、ブレーキ旋回モード以外の旋回モードが指令されている場合であれば、そのときの旋回モード及び旋回レバーの操作位置に対応する目標電流を求める(ステップ21,22,23,24)。尚、ステップ23のリセット処理は、後述するようなブレーキ旋回状態における目標操作圧の種々の補正内容等の制御情報をリセットする処理である。
【0100】
このとき、ブレーキ旋回状態が指令されていれば、ブレーキ旋回モードに対応する図7のラインL5にて設定されている相関関係と旋回レバーセンサ80の検出情報に基づいて、旋回レバー77の最大操作位置における目標操作圧、具体的には比例制御弁71に対する目標電流を求め、その目標電流を目標操作圧として設定することになる。この値が初期設定圧に対応する。ちなみに、このときの目標電流は約400mA程度に設定される。
【0101】
そして、このような目標電流(目標操作圧)が設定されると、その設定された目標電流に基づいて操作圧調整処理を実行する(ステップ10)。この操作圧調整処理は、図11に示すように、比例制御弁71に出力している出力電流が演算にて求めた目標電流に対して設定される目標不感帯内に収まるように出力電流を調整する(ステップ51,52)。このようにフィードフォワード処理にて出力電流を調整することで極力時間遅れの少ない状態で旋回レバー77の操作位置に対応する所望の旋回力が得られるようにしている。
【0102】
このように比例制御弁71にブレーキ旋回状態に対応する目標電流に対応する出力電流を出力すると、ブレーキ旋回状態になることが予測されるが、そのとき、ブレーキ旋回状態になったか否かをブレーキ旋回状態判別処理によって判別する(ステップ11)。すなわち、図10に示すように、左右車軸回転センサー66R,66Lの検出情報に基づいて、旋回外側の走行装置の回転速度Voutが判別条件切換用設定速度Vs5(100cm/sec)以上であるときは、旋回内側の走行装置の回転速度Vinがブレーキ判定用速度Vs2(20cm/sec)未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別し、旋回内側の走行装置の回転速度Vinがブレーキ判定用速度Vs2以上であればブレーキ旋回状態でないと判別する(ステップ41,42,44,45)。
【0103】
又、旋回外側の走行装置の回転速度Voutが前記判別条件切換用設定速度Vs5未満であるときは、旋回外側の走行装置の回転速度Voutに対する旋回内側の走行装置の回転速度Vinの速度比率(Vout/Vin)が設定比率(1/5)未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別し、前記速度比率(Vout/Vin)が前記設定比率以上であればブレーキ旋回状態でないと判別する(ステップ41,43,44,45)。例えば、旋回外側の走行装置の回転速度Voutが例えば40cm/secのときに旋回内側の走行装置の回転速度Vinが8cm/sec未満であれば設定比率未満になる。設定比率としては、1/5に限らず、それよりも少し小さめの比率にする等、適宜変更して実施してもよい。
【0104】
そして、目標操作圧設定処理において、ブレーキ旋回状態に対応する目標電流が出力されてから設定時間(100msec)が経過したのち、前記ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態であることを判別すると、そのときの目標操作圧が適切なものであるからその目標操作圧を維持する(ステップ22,26)が、ブレーキ旋回状態であることが判別されない場合には、ブレーキ旋回状態が指令されたときに、旋回外側の走行装置の回転速度Voutが前記判別条件切換用設定速度Vs5よりも低い速度に設定された極低速状態判別用速度Vs1(10cm/sec)以上であれば、そのときの目標電流を単位量(1mA)増加させるように補正し、その補正した目標電流を補正操作圧に相当する目標操作圧として設定する(ステップ26〜30)。そして、ブレーキ旋回状態であると判別されない状態が継続していると、ステップ29,30の処理を繰り返し実行することで、補正操作圧として初期操作圧から圧力を漸増させた操作圧を設定する形態で目標操作圧設定処理を実行することになる。
【0105】
さらに、一旦ブレーキ旋回状態であると判別されたが、その後、ブレーキ旋回状態でないと判別されるときは、旋回内側の走行装置に対応する左右車軸回転センサーの検出値を移動平均する処理を行って急激な変動による誤検出を防止する状態で、旋回内側の走行装置の回転速度Vinが判別用閾値Vs3(20cm/sec)以上になっていることを判別し(ステップ31,32)、且つ、ブレーキ旋回状態が指令されたときに旋回外側の走行装置の回転速度Voutが前記判別条件切換用設定速度Vs5よりも低い速度に設定された低速状態判別用速度Vs4(40cm/sec)以上であることを判別すると(ステップ33)、目標電流を設定量(30mA)減少させるように補正して、その補正した目標電流を補正操作圧に相当する目標操作圧として設定する(ステップ34,35)。この処理が設定量低下処理に対応するのであり、ブレーキ旋回状態が指令されたときに旋回外側の走行装置の回転速度Voutが低速状態判別用速度Vs4未満であれば、前記設定量低下処理は実行しないことになる。
【0106】
従って、この実施形態では、逆転クラッチ53を利用して、ブレーキ旋回状態と逆転旋回状態の夫々の旋回状態を現出させることができ、しかも、上述の如く制御することで、圃場条件の違い等にかかわらず適切にブレーキ旋回状態にすることが可能となるのである。
【0107】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る作業車の旋回制御装置の第2実施形態について説明する。この実施形態では、走行駆動手段の構成及び摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整するため制御処理の構成が異なる他は、第1実施形態の構成と同じであるから、異なる構成についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0108】
すなわち、この第2実施形態では、前記走行駆動手段100が、前記旋回状態における前記複数の旋回状態として、前記左右一対の走行装置1のうちの旋回内側の走行装置に対して伝えられる機体進行方向と逆方向に進行する推進力の大きさを逆転クラッチにて変更することにより、前記緩旋回状態、前記ブレーキ旋回状態、及び前記逆転旋回状態に切り換えるように構成されている。
【0109】
具体的には、図12に示すように、第1実施形態における逆転クラッチ53だけが設けられており、第1実施形態における緩旋回クラッチ46が削除される構成となっている。又、図13に示すように、緩旋回クラッチ46が削除されることから、流路の切り換え構成が不要であり、油圧ユニット57における旋回切換制御弁72と逆転旋回用パイロット弁74とが削除される構成となっている。そして、緩旋回モード、ブレーキ旋回モード、及び、逆転旋回モードの夫々において、前記逆転クラッチ53の操作圧を調整することで旋回内側の走行装置の駆動状態を変更させるようにしている。
【0110】
つまり、図14に示すように、旋回レバー77の操作位置と逆転クラッチ53の目標操作圧(比例制御弁71に供給する目標電流)との相関関係として、緩旋回モード、ブレーキ旋回モード、及び、逆転旋回モードの夫々に対応する3種類のラインL4〜L6が設定されている。逆転旋回用のラインL6、ブレーキ旋回用のラインL5については、第1実施形態と同様であり、緩旋回用のラインL4においては、旋回レバー77を最大操作位置Lm,Rmにまで操作したときには、旋回内側の走行装置が、直進用の回転動力が半伝動状態になっている旋回クラッチ49を介して伝達される前進方向への回転操作力や、地面との接触による連れ周りによる前進方向への回動を許容する程度の制動力がかかり、擬似的な緩旋回状態になるような操作圧に設定されている。
【0111】
従って、この実施形態では、1つの摩擦式油圧クラッチを用いて、緩旋回状態、ブレーキ旋回状態、逆転旋回状態の夫々の旋回状態を現出させることができるのである。
【0112】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0113】
(1)上記実施形態では、前記走行駆動選択手段としての旋回モード指令手段300と旋回半径指令手段200とを各別に備える構成としたが、このような構成に限らず、前記旋回半径指令手段を前記旋回モード指令手段に兼用する構成とするものでもよい。つまり、旋回半径指令手段を構成する旋回レバーが直進指令位置から旋回を指令する状態に切り換わり、順次、操作量が大きくなるほど、旋回半径を連続的に変更させるものでありながら、緩旋回状態である領域、ブレーキ旋回状態である領域、逆転旋回状態である領域に順次切り換わっていくように、旋回状態を切り換える構成としてもよい。
【0114】
(2)上記実施形態では、前記旋回モード指令手段として、旋回モードスイッチとは別に、旋回レバーの握り部に指操作可能な状態で旋回状態切換スイッチを設ける構成としたが、このような旋回状態切換スイッチを設けない構成としてもよい。
【0115】
(3)上記実施形態では、前記旋回半径指令手段として、直進指令位置及び旋回指令操作領域にわたり移動操作自在な旋回レバーを備える構成としたが、例えば回転式の操作ダイヤルや複数の押し操作式スイッチを備える構成等、各種形態で実施することができる。
【0116】
(4)上記実施形態では、作業車としてコンバインを示したが、本発明はコンバイン以外の農作業車や他の作業車にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】全体側面図
【図2】伝動構成を示す図
【図3】伝動構成を示す図
【図4】油圧回路図
【図5】制御ブロック図
【図6】旋回レバー操作位置と目標速度比率との相関関係を示す図
【図7】旋回レバー操作位置と目標操作圧との相関関係を示す図
【図8】制御動作のフローチャート
【図9】制御動作のフローチャート
【図10】制御動作のフローチャート
【図11】制御動作のフローチャート
【図12】伝動構成を示す図
【図13】油圧回路図
【図14】旋回レバー操作位置と目標操作圧との相関関係を示す図
【符号の説明】
【0118】
1 走行装置
53 摩擦式油圧クラッチ
64 制御手段
66R,66L 走行速度検出手段
71 供給圧調整手段
100 走行駆動手段
200 旋回半径指令手段
300 旋回モード指令手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行装置の駆動状態を直進駆動状態、旋回内側の走行装置が停止又は略停止するブレーキ旋回状態及び旋回内側の走行装置を機体進行方向と逆方向に進行するように駆動する逆転旋回状態に切り換え自在な走行駆動手段と、
前記直進駆動状態、前記ブレーキ旋回状態及び前記逆転旋回状態のいずれかを選択して指令する走行駆動状態選択手段と、
前記走行駆動状態選択手段の指令に基づいて、選択された駆動状態となるように前記走行駆動手段を制御する制御手段とが設けられた作業車の旋回制御装置であって、
前記走行駆動手段が、前記左右一対の走行装置のうちの旋回内側の走行装置に対して機体進行方向と逆方向に進行する推進力を伝える前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を変更することにより、前記ブレーキ旋回状態と前記逆転旋回状態とに切り換え自在に構成され、
油圧源から供給される圧油の供給圧を変更調整することにより前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を調整する操作圧調整手段と、前記左右一対の走行装置の回転速度を各別に検出する一対の走行速度検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記走行駆動状態選択手段にて前記逆転旋回状態が指令されると、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧を逆転旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整する逆転旋回用処理を実行し、かつ、前記走行駆動状態選択手段にて前記ブレーキ旋回状態が指令されると、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧をブレーキ旋回用操作圧にすべく前記操作圧調整手段を調整するブレーキ旋回用処理を実行するように構成され、且つ、
前記ブレーキ旋回用処理として、前記ブレーキ旋回用操作圧としての目標操作圧を設定する目標操作圧設定処理、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧が前記目標操作圧となるように前記操作圧調整手段を制御する操作圧調整処理、及び、前記一対の走行速度検出手段の検出情報に基づいて前記走行駆動手段が前記ブレーキ旋回状態になっているか否かを判別するブレーキ旋回状態判別処理を夫々実行するように構成され、そして、
前記目標操作圧設定処理として、
前記走行駆動状態選択手段が前記直進駆動状態又は前記逆転旋回状態の指令から前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては、予め設定された初期操作圧を前記目標操作圧として設定し、その後は、前記ブレーキ旋回状態判別処理にてブレーキ旋回状態であると判別されるまで、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行するように構成されている作業車の旋回制御装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記ブレーキ旋回状態判別処理として、
前記一対の走行速度検出手段の検出情報に基づいて、旋回外側の走行装置の回転速度が判別条件切換用設定速度以上であるときは、旋回内側の走行装置の回転速度がブレーキ判定用速度未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別し、且つ、旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度未満であるときは、旋回外側の走行装置の回転速度に対する旋回内側の走行装置の回転速度の速度比率が設定比率未満であれば前記ブレーキ旋回状態になっていると判別する処理を実行するよう構成されている請求項1記載の作業車の旋回制御装置。
【請求項3】
前記制御手段が、
前記目標操作圧設定処理を、前記初期操作圧として、前記ブレーキ旋回用操作圧の変動が予測される範囲における最低となる操作圧又はそれに近い操作圧を設定し、且つ、前記補正操作圧として、前記初期操作圧から圧力を漸増させた操作圧を設定する形態で実行するように構成されている請求項1又は2記載の作業車の旋回制御装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理において、
前記ブレーキ旋回状態判別処理にて前記ブレーキ旋回状態になっていると判別した後に、前記旋回内側の走行装置の回転速度が判別用閾値以上になったことを検出すると、そのときの前記補正操作圧から設定量低下させた値を前記目標操作圧として設定する操作圧低下処理を実行するように構成されている請求項3記載の作業車の旋回制御装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理において、
前記走行駆動状態選択手段が前記直進駆動状態又は前記逆転旋回状態の指令から前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度よりも低い速度に設定された低速状態判別用速度未満であれば、前記操作圧低下処理を実行しないように構成されている請求項4記載の作業車の旋回制御装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記目標操作圧設定処理において、
前記走行駆動状態選択手段が前記直進駆動状態又は前記逆転旋回状態の指令から前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられたときに、前記旋回外側の走行装置の回転速度が前記判別条件切換用設定速度よりも低い速度に設定された極低速状態判別用速度未満であれば、前記走行駆動状態選択手段が前記ブレーキ旋回状態の指令に切り換えられた直後においては前記初期操作圧を前記目標操作圧として設定し、その後は、前記初期操作圧から圧力を変更させた補正操作圧を前記目標操作圧として設定する処理を実行しないように構成されている請求項3〜5のいずれか1項に記載の作業車の旋回制御装置。
【請求項7】
前記走行駆動状態選択手段が、
直進を指令する直進指令状態と旋回を指令する旋回指令状態とに切り換え操作自在で且つ前記旋回指令状態において旋回半径の大小を示す旋回半径指標を指令する旋回半径指令手段と、ブレーキ旋回モードと逆転旋回モードとを選択して指令する旋回モード指令手段とから構成され、
前記制御手段が、
前記旋回モード指令手段にて前記ブレーキ旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記ブレーキ旋回状態が指令されたものであると判別して前記ブレーキ旋回用処理を実行し、かつ、前記旋回モード指令手段にて前記逆転旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小を指令する前記旋回半径指標が指令されると、前記逆転旋回モードが指令されたものであると判別して前記逆転旋回用処理を実行するように構成され、且つ、
前記旋回モード指令手段にて前記ブレーキ旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令される場合には、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧として、前記初期操作圧よりも小さくかつ前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように前記操作圧調整手段を制御するブレーキ旋回モード用低速旋回処理を実行し、かつ、前記旋回モード指令手段にて前記逆転旋回モードが指令され且つ前記旋回半径指令手段にて旋回半径の最小よりも大きな旋回半径を指令する前記旋回半径指標が指令される場合には、前記摩擦式油圧クラッチの操作圧として、前記逆転旋回用操作圧よりも小さくかつ前記旋回半径指標にて大きな旋回半径が指令されるほど小さくなる操作圧を設定して、その操作圧になるように前記操作圧調整手段を制御する逆転旋回モード用低速旋回処理を実行するように構成されている請求項3〜6のいずれか1項に記載の作業車の旋回制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−83174(P2010−83174A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251174(P2008−251174)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】