説明

作業車両のアシストバー

【課題】作業効率および燃費を向上させた作業車両を提供する。
【解決手段】機体後部の、車体フレーム10上に設けたフロアフレーム21と、このフロアフレーム21の左右両端部であって、フロアフレーム21の上面に設けた左右フェンダ12と、この左右フェンダ12の間であって、フロアフレーム21上に設けた運転席8とを備え、フェンダ12に設けたネジ穴12a,12bを介して、フロアフレーム21に固設した支持部材22,24,25にアシストバー26の下部26a,26bを固定する。また、フェンダ12´の形状に合わせてフロアフレーム21の前後を架橋して設け、中途部を上方に凸状、かつ側方に突出させてなるアシストバー26´を有するフロアフレーム補強部材28に、フェンダ12´を覆設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、このフロアフレームの左右両端部であって、フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、この左右フェンダの間であって、フロアフレーム上に設けた運転席とを備える作業車両に関し、より詳細には、フェンダに設けた穴部を介して、フロアフレームに固設したフェンダ支持部材にアシストバーの下部を固定することに関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、従来の作業車両の一例としてのホイール式トラクタには、機体中央後部に有するトランスミッション31の上方に座席32を配設し、該座席32の左右側方であって、左右後輪33の前部及び上部を覆うようにフェンダ34が配設され、該フェンダ34の上面には凸状部分35を形成して、座席32に着座したオペレータが肘を置くことができるようにし、フェンダ34の前方には副変速レバーやPTO変速レバー等の中途部を挿通させるためのガイド孔36が欠設され、フェンダと車輪との間には泥除け板が介設されるので、フェンダを一体的に形成したものとし、部品点数の削減を図ることができる、という。(特許文献1)。
また、ミッションケース上部を同ケースの左右幅よりも広い略プレート部材により遮蔽し、このプレート端部とフェンダ間を連結したので、フェンダの中央部の支持強度を向上させたものもある。(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−225752号公報
【特許文献2】特開2000−313359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなトラクタでは、例えば、作業者が昇降ステップに上り、フェンダ上面に設けられた肘置きなどアシストバーに手をかけて、運転席に上がるときや、運転席に着座した作業者がアシストバーに肘を置く際、このアシストバーに作業者の体重がかかるためフェンダがある程度の耐荷重強度を必要とすることから、フェンダの厚みを増やしたり、別途フェンダを支持させる大型の補強部材を用いることで、機体の重量や組み立て部品点数の増加に伴い、燃費や組み立て作業性が低下するという問題があった。
そこで、この発明の目的は、作業効率および燃費を向上させた作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、該フロアフレームの左右両端部であって、前記フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、該左右フェンダの間であって、前記フロアフレーム上に設けた運転席とを備える作業車両において、前記フェンダに設けた穴部を介して、前記フロアフレームに固設した支持部材にアシストバーの下部を固定することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、該フロアフレームの左右両端部であって、前記フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、該左右フェンダの間であって、前記フロアフレーム上に設けた運転席とを備える作業車両において、前記フェンダの形状に合わせて前記フロアフレームの前後を架橋して設け、中途部を上方に凸状、かつ側方に突出させてなるアシストバーを有するフロアフレーム補強部材に、前記フェンダを覆設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、このフロアフレームの左右両端部であって、フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、この左右フェンダの間であって、フロアフレーム上に設けた運転席とを備える作業車両において、フェンダに設けた穴部を介して、フロアフレームに固設した支持部材にアシストバーの下部を固定するので、アシストバーをフェンダ上に直接固定せず、フロアフレーム上に支持部材介してフェンダ上面に強固に設けることができると同時に、フロアフレームの強度も支持部材などにより増強することができる。さらに組立前の部品搬送時などにおいてコンパクトに収納でき、作業性が向上する。従って、作業効率および燃費を向上させた作業車両を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、このフロアフレームの左右両端部であって、フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、この左右フェンダの間であって、フロアフレーム上に設けた運転席とを備える作業車両において、フェンダの形状に合わせてフロアフレームの前後を架橋して設け、中途部を上方に凸状、かつ側方に突出させてなるアシストバーを有するフロアフレーム補強部材に、フェンダを覆設するので、アシストバーをフェンダ上に直接固定せず、アシストバーが一体成形されたフロアフレーム補強部材を介してフロアフレーム上に強固に設けることができると同時に、フロアフレームおよびフェンダの強度もフロアフレーム補強部材により増強することができる。さらに組立時および部品搬送時などにおいて部品点数を減少させ、作業性が向上する。従って、作業効率および燃費を向上させた作業車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明の作業車両の一例としてのホイール式トラクタの側面図、図2は同平面図を示す。この例のホイール式のトラクタ1は、前輪2および後輪3を備え、前輪2の上方であって車体フレーム10上にボンネット4を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン5を備える。そして、ボンネット4の後部に連続して運転席8が設けられ、この運転席8内には、前部にハンドル6および、後部にシート7などが設けられる。なお、符号9は、運転席8の下方に設けられた昇降ステップ、符号11は機体後部に設けられたロプスフレームである。
【0010】
前記シート7は、後輪3の上方であって、機体両側部に設けられ、上部にアシストバー26を有する左右フェンダ12の間に配置される。この左右フェンダ12には、例えば、副変速レバーやPTOレバーなどの各種操作レバー13の下部を内設し、それら操作レバー13の上部を、上面に形成されている前後方向に長い溝穴を有するレバー溝14から突出させている左右操作レバーガイド15が備えられる。
【0011】
次に、本願発明の特徴であるアシストバーについて説明する。図3は、アシストバーの取付け構造を示す運転席付近の左側面図、図4はアシストバーの取付構造を示すフェンダを省いたフロアフレーム付近における左側面の斜視図を示す。
【0012】
車体フレーム10の後部には、シート7設置枠となる、後部を上方へ屈曲させた形状を有する左右フロアフレーム21が固設される。このフロアフレーム21の屈曲部を挟んで前後に架橋するようにフロアフレーム21などと同じ鉄材などの材質からなる支持部材22の両端が溶接などでフロアフレーム21に取り付けられる。
【0013】
この支持部材22の水平部分の内側部には、水平面にネジ穴23a,23bなどを有する前後に長い正面視略L字型のフェンダ支持部材23および、支持部材22の水平部分の外側部には、上方に突出するように設けられ、上端水平面にネジ穴24aなどを有する支持部材24がそれぞれ溶接などにより取り付けられる。なお、フェンダ支持部材23および支持部材24はそれぞれ鉄材などの材質から構成される。
【0014】
また、フロアフレーム21の上方へ屈曲した後端上面には、板状の鉄材などの材質からなり、ネジ穴25aを有する支持部材25が固設される。
【0015】
フェンダ12は、前部を下方に屈曲させるとともに、外側部より高さを低くした内側部に、フェンダ支持部材23に積載し、固定させるための水平部が設けられる。そして、外側部と内側部とに、アシストバー26およびフェンダ12を固定させるための複数のネジ穴(穴部)12a,12b,12c,12dなどが適宜設けられる。なお、フェンダ12は、例えば合成樹脂を原料としてブロー成形により構成される。
【0016】
アシストバー26は、例えば鉄材などの材質からなるもので、前端下部と後端下部とに取付部26a,26bを有し、前後方向に長い側面視略門形状であり、前部は作業者の乗降用グリップとして、後部は着座した作業者の肘載せなどに使用することができる。
【0017】
ここで、アシストバー26を取り付ける際、まず、フェンダ12の内側部の水平部をフェンダ支持部材23に積載させるとともに、フェンダ12の後部を支持部材25上に積載する。そして、フェンダ12のネジ穴12c,12dと、フェンダ支持部材23およびのネジ穴23a,23bとを一致させて、ボルトなどで締結し、フェンダ12を固定させる。なお、フェンダ12の前部および後部もボルトなどにより適宜固定される。
【0018】
次いで、アシストバー26の取付部である下部26a,26bを、それぞれ一致させたフェンダ12、支持部材24および支持部材25のネジ穴12a,12b,24a,25aに合わせ、支持部材24および支持部材25の下方よりボルト27などで締結させて、フロアフレーム21上に支持部材24を介した支持部材22と、支持部材25とを介してフェンダ12上面にアシストバー26が固定される。
【0019】
このように構成することで、アシストバー26をフェンダ12上に直接固定せず、フロアフレーム21上に支持部材24を介した支持部材22と、支持部材25とを介してフェンダ12上面に強固に設けることができると同時に、フロアフレーム12の強度も支持部材22などにより増強することができる。さらに、組立前の部品搬送時などにおいてコンパクトに収納でき、作業性が向上する。
【0020】
また、上述とは別の実施例として、アシストバー26´を支持部材22と一体に成形して、フロアフレーム21上に固設することもできる。図5は、フロアフレーム補強部材と一体に成形されたアシストバーを取り付けた運転席付近の左斜視図、図6はフロアフレーム補強部材と一体に成形されたアシストバーにフェンダを取り付けるときの左側面図を示す。
【0021】
この場合、鉄材などの材質からなる例えばパイプ状のフロアフレーム補強部材28は、フェンダ12´の形状に合わせて前部を下方に屈曲させ、中途部を上方に凸状、かつ側方に突出させてなるアシストバー26´がこのフロアフレーム補強部材28と一体に成形される。
【0022】
また、フェンダ12´のアシストバー26´が位置する中途部の外側端部は、アシストバー26´の突出の妨げにならない欠切29が設けられる。
【0023】
そして、フロアフレーム補強部材28の前端部をフロアフレーム21の前部に、フロアフレーム補強部材28の後端部をフロアフレーム21後部の上方へ屈曲した後端上面に溶接などで設けられた支持部材30に、それぞれ溶接などで固設し、フロアフレーム21に架橋するようにフロアフレーム補強部材28が取り付けられる。次いで、フェンダ12´がフロアフレーム補強部材28上に覆設される。このとき、フェンダ12´の前後中途部を、フロアフレーム補強部材28や支持部材30などに取り付けられた不図示のステーなどを介してボルト31などで締結し、フェンダ12´をフロアフレーム補強部材28や支持部材30などに固定させてもよい。
【0024】
このように構成することで、アシストバー26´をフェンダ12´上に直接固定せず、アシストバー26´が一体成形されたフロアフレーム補強部材28を介してフロアフレーム21上に強固に設けることができると同時に、フロアフレーム21およびフェンダ12´の強度もフロアフレーム補強部材28により増強することができる。さらに、組立時および部品搬送時などにおいて部品点数を減少させ、作業性が向上する。
【0025】
なお、アシストバー26,26´は、左右フェンダ12,12´の両方に備えることに限定されず、左右フェンダ12,12´のいずれか一方に備えてもよい。
【0026】
以上詳述したように、この例のトラクタ1は、機体後部の、車体フレーム10上に設けたフロアフレーム21と、このフロアフレーム21の左右両端部であって、フロアフレーム21の上面に設けた左右フェンダ12と、この左右フェンダ12の間であって、フロアフレーム21上に設けた運転席8とを備え、フェンダ12に設けたネジ穴12a,12b(穴部)を介して、フロアフレーム21に固設した支持部材22,24,25にアシストバー26の下部26a,26bを固定するものである。加えて、フェンダ12´の形状に合わせてフロアフレーム21の前後を架橋して設け、中途部を上方に凸状、かつ側方に突出させてなるアシストバー26´を有するフロアフレーム補強部材28に、フェンダ12´を覆設する。
【0027】
なお、上述の例では、作業車両の一例としてホイール式トラクタについて説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタのほか、建設作業機として、パワーショベル、ブルトーザなど、フェンダ上にアシストバーを備えたあらゆる作業車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の作業車両の一例としてのホイール式トラクタの側面図である。
【図2】本発明の作業車両の一例としてのホイール式トラクタの平面図である。
【図3】アシストバーの取付け構造を示す運転席付近の左側面図である。
【図4】アシストバーの取付構造を示すフェンダを省いたフロアフレーム付近における左側面の斜視図である。
【図5】フロアフレーム補強部材と一体に成形されたアシストバーを取り付けた運転席付近の左斜視図である。
【図6】フロアフレーム補強部材と一体に成形されたアシストバーにフェンダを取り付けるときの左側面図である。
【図7】従来のホイール式トラクタの運転席付近の正面模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 トラクタ
12,12´ フェンダ
12a,12b,12c,12d,23a,23b,24a,25a ネジ穴
21 フロアフレーム
22,24,25,30 支持部材
23 フェンダ支持部材
26,26´ アシストバー
26a,26b 下部
27,31 ボルト
28 フロアフレーム補強部材
29 欠切

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、
該フロアフレームの左右両端部であって、前記フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、
該左右フェンダの間であって、前記フロアフレーム上に設けた運転席と、
を備える作業車両において、
前記フェンダに設けた穴部を介して、前記フロアフレームに固設した支持部材にアシストバーの下部を固定することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
機体後部の、車体フレーム上に設けたフロアフレームと、
該フロアフレームの左右両端部であって、前記フロアフレームの上面に設けた左右フェンダと、
該左右フェンダの間であって、前記フロアフレーム上に設けた運転席と、
を備える作業車両において、
前記フェンダの形状に合わせて前記フロアフレームの前後を架橋して設け、中途部を上方に凸状、かつ側方に突出させてなるアシストバーを有するフロアフレーム補強部材に、前記フェンダを覆設することを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−1125(P2008−1125A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169920(P2006−169920)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】