説明

作業車両

【課題】エンジンやPTO軸の回転数を、既存の機器を用いることで効率的、かつ正確に計器パネルに表示できるとともに、型式の異なる車両生産においても、部品としての計器パネルを共用可能とし、コストダウンおよび生産性を向上させた作業車両を提供する。
【解決手段】エンジン発電機100を近傍に備えるエンジン6と、このエンジン6からの動力を作業機21に伝達するPTO軸60と、このPTO軸60およびエンジン6の回転数を、制御部109を介して表示する表示部19とを備え、エンジン発電機100は、このエンジン発電機100から発生するパルス信号を測定する信号測定部107を整流回路99に備え、制御部109は、信号測定部107が得たパルス信号に基づいて、エンジン発電機100の実回転数を介して算出したエンジン6およびPTO軸60の演算回転数を表示部19に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびPTO軸の回転数を操縦部の表示部に表示する作業車両に関するものであり、より詳細には、エンジン発電機は、このエンジン発電機から発生するパルス信号を測定する信号測定部を整流回路に備え、制御部は、信号測定部が得たパルス信号に基づいて、エンジン発電機の実回転数を介して算出したエンジンおよびPTO軸の演算回転数を表示部に表示する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業車両では、運転中のオペレータにエンジンおよびPTO軸の負荷状態を知らせるため、エンジンのクランク軸などに設けた検出器により検出したエンジンの回転数情報を、車両操縦部に備える計器パネルのタコメータに入力し、エンジン回転計で表示するとともに、エンジンの動力で駆動するPTO軸の定格回転域を、エンジン回転計の所定位置(エンジン回転定格と一致する位置)に一律に表示されているものがある。しかし、例えば、車両に搭載するエンジンの型式が異なると、それぞれのエンジン回転定格も異なり、エンジン回転定格と、PTO軸の速度段(減速比)とが一致しなくなる。その結果、PTO軸の回転定格が変化するため、エンジン回転計に予め表示されているPTO軸の定格回転域がずれることとなり、エンジン回転数を示す指針に伴う、PTO軸の定格回転を正しく表示できないとともに、車両生産時に、計器パネルを型式の異なる車両に兼用することができず、生産性が悪いという問題があった。また、PTO軸の回転数を計器パネルに正しく表示させる方法として、演算装置に、エンジンの回転数を検出するエンジン回転検出センサと、PTO油圧クラッチの入切を検出するPTOクラッチ検出センサと、PTO変速機構の変速位置を検出するPTO変速位置検出センサとを接続し、この演算装置によりこれら各センサの検出情報に基づいて求めたPTO軸の回転数を、PTO回転数指針メータに表示し、オペレータにPTO回転数を正確に認識させる(例えば、特許文献1)ものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平6ー153610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような作業車両では、エンジンやPTO軸の回転数を計器パネルに表示するために、エンジンなど様々な位置に複数の検出器を別途設置する必要があり、コスト高となるほか、生産性やメンテナンス性も低下させるという問題があった。
そこで、この発明の目的は、エンジンやPTO軸の回転数を、既存の機器を用いることで効率的、かつ正確に計器パネルに表示できるとともに、型式の異なる車両生産においても、部品としての計器パネルを共用可能とし、コストダウンおよび生産性を向上させた作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、エンジン発電機を近傍に備えるエンジンと、該エンジンからの動力を作業機に伝達するPTO軸と、該PTO軸および前記エンジンの回転数を、制御部を介して表示する表示部とを備える作業車両において、前記エンジン発電機は、該エンジン発電機から発生するパルス信号を測定する信号測定部を整流回路に備え、前記制御部は、前記信号測定部が得た前記パルス信号に基づいて、前記エンジン発電機の実回転数を介して算出した前記エンジンおよび前記PTO軸の演算回転数を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記PTO軸の演算回転数は、前記エンジン発電機の実回転数から前記エンジン発電機の駆動軸のプーリおよび前記エンジンの出力軸のプーリの減速増速比により算出した前記エンジンの演算回転数と、前記PTO軸の減速増速比とから算出することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記表示部は、前記PTO軸の演算回転数を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1および3に記載の作業車両において、前記表示手段は、定格回転域内の前記PTO軸の演算回転数を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、エンジン発電機を近傍に備えるエンジンと、このエンジンからの動力を作業機に伝達するPTO軸と、このPTO軸およびエンジンの回転数を、制御部を介して表示する表示部とを備える作業車両において、エンジン発電機は、このエンジン発電機から発生するパルス信号を測定する信号測定部を整流回路に備え、制御部は、信号測定部が得たパルス信号に基づいて、エンジン発電機の実回転数を介して算出したエンジンおよびPTO軸の演算回転数を表示部に表示するので、従来のように、エンジンおよびPTO軸の回転数を得るために、別途エンジンに検出器を設置する必要がなく、エンジン駆動に連動して回転(発電)するエンジン発電機から発生される信号を利用して容易に得たエンジンおよびPTO軸の回転数をそれぞれ独立させて表示部に表示することができる。従って、コストダウンおよび生産性を向上させた作業車両を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、PTO軸の演算回転数は、エンジン発電機の実回転数からエンジン発電機の駆動軸のプーリおよびエンジンの出力軸のプーリの減速増速比により算出したエンジンの演算回転数と、PTO軸の減速増速比とから算出するので、パルス信号の測定のみでエンジンの演算回転数と同時にPTO軸の演算回転数を容易に算出することができ、特に車両に搭載するエンジンの型式が異なっても、上記各減速増速比が明らかであれば、常にパルス信号の測定のみでエンジンの演算回転数と同時にPTO軸の演算回転数を容易に算出することができる。従って、容易な構成でエンジンとともにPTO軸の回転数を求めることができる、コストダウンを図った作業車両を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、表示部は、PTO軸の演算回転数を表示する表示手段を備えるので、PTO軸の回転数(演算)の表示を、エンジンの回転数(演算)の表示とは独立して表示でき、エンジンの型式(定格回転)を変えても、その型式に対応したPTO軸の演算回転数を計器パネルに正しく表示できるとともに、車両生産時に部品としての計器パネルを共用することができる。従って、コストダウンおよび生産性を向上させた作業車両を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、表示手段は、定格回転域内のPTO軸の演算回転数を表示するので、PTO軸の演算回転数が、算出されたPTO軸の演算回転数に対して一定幅内の定格回転域内に有するときのみランプを点灯させて、オペレータに最適なPTO軸の回転状態を知らせて、エンジンの負荷状況を認識させることができる。従って、操作性を向上させた作業車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明の一実施例に係る作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図、図2は、同トラクタの平面図である。
【0014】
この例の作業車両であるトラクタ1は、図1〜2に示すように、機体フレーム2の前後に前輪3および後輪4を備え、前輪3の上方にボンネット5を形成し、その内側には原動機部としてのエンジン6およびエンジン6の後方にクラッチハウジング7が配置され、さらにこのクラッチハウジング7の後方には、ミッションケース8が配設されており、エンジン6からの動力が前輪3および後輪4に伝達される。そして、ボンネット5の後部に連続して、機体フレーム2上には、キャビン9が設けられる。なお、トラクタ1の駆動部は、上述したようなホイール式に限定されず、クローラ式であってもよい。
【0015】
次に、キャビン9内には、車両の操縦部として、ブレーキペダルやクラッチペダル10などの操作ペダル、ステアリングハンドル11、シート12などが設けられる。また、ステアリングハンドル11の前方などには、車両の速度などを表示する計器パネルなどの表示部19が設けられる。さらに、シート12の両側方に有する左右フェンダ13には、例えば、主変速レバー、副変速レバー、PTO変速レバー14などの各種操作レバー22を突設する。そして、キャビン9の外周はそれぞれフロントガラス15、リヤガラス16、ドア17、屋根18などを取付けてもよい。なお、トラクタ1は、上述したキャビン仕様に限定されず、ロプス仕様であってもよい。
【0016】
そして、エンジン6からの動力は、ミッションケース8後端から突出した後述するPTO軸60に伝達され、このPTO軸60から、図示しないユニバーサルジョイントや三点リンク式などの作業機装着装置20を介して車両後端に装着された作業機21が駆動される。
【0017】
次に、動力伝達の構成について説明する。図3は、動力伝達系のスケルトン図、図4は、ミッションケース内部の断面展開図、図5は、ミッションケース後部内に有するPTO動力伝達機構の側面図を示す。この図3〜4に示すように、クラッチハウジング41内には多板式の主クラッチ43が収納され、クラッチペダル10に連係されている。また、エンジン6の出力軸44の回転が、主クラッチ43に入力され、この主クラッチ43の出力軸45は、車両後方に延出されたPTO入力軸46と同一軸心に備えられる。
【0018】
次いで、出力軸45の後端には、伝動歯車47とPTO三速爪47aが配置されており、PTO入力軸46には、PTO一速歯車48と、PTO二速歯車49と、PTO逆転歯車50とがそれぞれ遊嵌される。そして、PTO一速歯車48と、PTO二速歯車49と、伝動歯車47とは、主軸51に設けられた伝達歯車52,53,54にそれぞれ噛合っており、PTO逆転歯車50はカウンタ歯車55を介して伝達歯車56と噛合い、PTO変速レバー14の操作によりPTOクラッチスライダ57,58を摺動させて、伝達歯車52,53,56およびPTO三速爪47aからPTO一速歯車48やPTO二速歯車49あるいはPTO逆転歯車50の所望の歯車(段数)からPTO入力軸46に伝達されたエンジン40からの動力は、図4〜5に示すようにPTO中間軸90やPTO伝動軸91などのPTO動力伝達機構59を介して、PTO軸60に伝達され、作業機21を駆動させる。
【0019】
なお、PTO変速は、上述した方法に限定されず、PTO伝動軸91とPTO軸60との間に、図示しないPTO変速装置を設けてもよく、この場合、例えばPTO伝動軸91上に複数の歯数の異なる駆動歯車を設け、PTO軸60上に前記駆動歯車と噛合する従動歯車を回転自在に設け、該従動歯車の間のPTO軸60上に摺動可能、相対回転不能にシフタを設け、該シフタをPTO変速レバー14の操作により切り換えて、従動歯車と選択噛合させ、作業に応じた所望の段数にPTOを変速することもできる。
【0020】
次に、主軸51に固設された伝達歯車52,53,54,56は、主変速軸61に遊嵌される、主変速一速歯車62、主変速二速歯車63、主変速三速歯車64、主変速四速歯車65にそれぞれ噛合されている。この主変速軸61の軸方向摺動可能にスプライン嵌合される2つの主変速クラッチスライダ66,67は、キャビン9に有する不図示の主変速レバーに連係されている。この主変速レバーの操作により主変速クラッチスライダ66,67と、主変速一速歯車62、主変速二速歯車63、主変速三速歯車64、主変速四速歯車65のそれぞれに形成された爪との咬合を選択し、選択されたいずれか1つの上記主変速歯車62,63,64,65を介して主軸51から主変速軸61へ動力が伝達される。
【0021】
また、主変速軸61の車両進行方向前方延長部分には、正転側歯車68および逆転側歯車69がそれぞれ同一軸心上に遊嵌される。そして、キャビン9に有する不図示のリバーサレバーを操作することによりリバーサクラッチ70が前進側または後進側のいずれかに選択接続され、主変速軸61の回転は正転側歯車68または逆転側歯車69のいずれかに伝達される。ただし、リバーサレバーがニュートラル位置の場合は、回転は正転側歯車68および逆転側歯車69のいずれにも伝達されない。
【0022】
また、正転側歯車68は、伝達軸71に嵌合される歯車72に、逆転側歯車69はカウンタ軸73に嵌合されるカウンタ歯車74にそれぞれ噛合されており、このカウンタ歯車74は伝達軸71に嵌合される歯車75と噛合される。
【0023】
その結果、リバーサクラッチ70が前進側に接続されたときは、主変速軸61の回転動力が正転側歯車68を介して伝達軸71に伝達され、リバーサクラッチ70が後進側に接続されたときは、主変速軸61の回転動力が逆転側歯車69からカウンタ軸73を介して伝達軸71を逆転方向に回転させることを可能としている。
【0024】
伝達軸71に嵌合される歯車72は、正転側歯車68と噛合うとともに、副変速軸76の同軸線上であり車両進行方向前方に設けられる歯車77と噛合っている。副変速軸76には副変速シフタ78が嵌合されており、副変速軸76の前部と歯車77の後部との間を自在に摺動可能としている。
【0025】
この副変速シフタ78はキャビン27に有する不図示の副変速レバーによって操作され、副変速シフタ78の前部に形成された副変速シフタ歯78aが歯車77の後部位置77aに位置する状態の副変速三速(副変速高速段)、副変速シフタ歯78aと歯車77の後端に設けられた歯77bとが噛合う状態の副変速二速、副変速シフタ78の中央上部に形成された歯78bと伝達軸71の中央近傍に設けられた歯車79とが噛合う状態の副変速一速、副変速シフタ78に回転動力が伝達されない(ニュートラル)状態、そして副変速シフタ78後部の歯78cと不図示の超低速用歯車とが噛合う状態の副変速超低速(C速)とのそれぞれに切換可能とした副変速装置が構成される。
【0026】
これら副変速シフタ78の摺動による歯車噛合わせの選択で、伝達軸71の回転が三段の変速を経て出力され、副変速軸76に入力された回転動力は、副変速軸76に設けられた3つの歯車80,81,82などによって、後輪駆動系と前輪駆動系の二方向に出力される。
【0027】
ミッションケース42後方には後輪デフ装置83が配置され、副変速軸76の回転が、この副変速軸76の後端に形成された歯車82を介して後輪デフ装置83に入力され、それぞれ図示しないリアアクスルケース内の車軸などを介して後輪3が駆動する。なお、符号84はブレーキ装置である。
【0028】
次に、本願発明の特徴である、PTO軸の回転数の表示手段について、その具体的構成を説明する。図6はエンジン発電機の設置位置を示すエンジン近傍の正面図、図7はエンジン発電機の設置位置を示すエンジン近傍の左側面図、図8はエンジン発電機に備える電機回路内の構成模式図、図9は検出器を備えるPTO変速レバーの平面図、図10はエンジン回転計の近傍に表示手段を設置した表示部の正面図、図11はエンジン回転計の周縁部に表示手段を設置した表示部の正面図、図12はエンジン発電機の駆動により発生したパルス信号のアナログ波形(a)および同パルス信号を波形成形したデジタル波形(b)である。
【0029】
まず、図6〜7に示すように、エンジン6には、不図示のバッテリに充電する、車両各部で用いる電気を発電するための、エンジン発電機100としてのオルタネータが並設されている。このエンジン発電機100は、エンジン6の上方であって、エンジン6前部のカバー101上などに固設される。
【0030】
また、エンジン発電機100の前方には、エンジン発電機100の駆動軸102に嵌着されるプーリ103が設けられるとともに、エンジン6の前方には、エンジン6の図示しないクランクシャフトに接続した軸部材104に嵌着するプーリ105が設置される。さらに、プーリ105の上方には、エンジン6の図示しない冷却ファンを駆動するプーリ106が設けられる。
【0031】
そして、これらプーリ103と、プーリ105と、プーリ106とに無端状のベルト107が巻回され、エンジン6の駆動により回転する軸部材104のプーリ105からベルト107に伝達された動力により、プーリ103およびプーリ106を介して前記冷却ファンの駆動とともにエンジン発電機100が回転して発電される。なお、エンジン発電機100は周知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、エンジン発電機100には、図8に示すように、整流回路99が設けられている。この整流回路99内には、ダイオードなどの変換部108が備えられており、エンジン発電機100の発電によりステータコイル98などから得られた交流の電気が、変換部108で直流の電気に変換された後、前記バッテリに送電される。
【0033】
本願発明では、上記整流回路99内に信号測定部107が設置される。この信号測定部107は、エンジン発電機100の回転駆動(発電)に伴いエンジン発電機100の駆動軸102などから発生するパルス信号を測定し、データ処理して得られた測定値を制御部109に伝達するものである。
【0034】
次に、PTO軸60の変速段数を検出するために、例えば、PTO変速レバー14には、図9に示すように、リミットスイッチなどの検出器110が取付けられる。そして、この検出器110も制御部109に接続される。なお、検出器110の種類は、リミットスイッチに限定されず、例えば、光電スイッチや近接スイッチなどであってもよい。
【0035】
この検出器110は、例えばa接点を有するもので、レバー溝14aと、シフトレバー14bとの間のレバー溝14aの内側端部であって、各PTO変速位置に設置された、各変速段に対応する複数のリミットスイッチである検出器110aからなり、それぞれの検出器110aが制御部109に接続される。従って、シフトレバーを、所望するPTOの変速位置に摺動させると、シフトレバーが、その対応する検出器110aに接触し、接点を閉じることにより検出されたPTOの変速位置が、制御部109に伝達される。
【0036】
なお、検出器110の設置位置は、PTOクラッチスライダ57,58やPTO軸60近傍などであってもよいが、取付けやメンテナンスなどの面からPTO変速レバー14に設置することが好ましい。
【0037】
次に、操縦部に備える表示部19には、図10に示すように、中央近傍などの適宜位置に、制御部109に接続され、後述する制御部109によって算出されたエンジン6の演算回転数を示すタコメータ式などのエンジン回転計111が設置される。なお、エンジン回転計111は、タコメータ式に限定されず、例えばデジタル表示式など他の方法を用いてもよい。
【0038】
さらに、表示部19内であって、エンジン回転計111の近傍位置には、制御部109に接続され、後述する制御部109によって算出されたPTO軸60の演算回転数であって、PTO軸60の定格回転を示す点灯式のランプなどの表示手段112が設けられる。なお、表示手段112は、図11に示すような、表示部19の周縁部に設けてもよく、その設置位置は限定されない。また、表示手段112は、点灯式ランプに限定されず、例えばPTO軸60を識別できるような文字や絵を点灯表示させるなど他の方法を用いてもよい。
【0039】
ここで、エンジン6の駆動に伴い、PTO軸60の定格回転を、表示部19の表示手段112に表示させる際、まず、エンジン発電機100の駆動によりエンジン発電機100の駆動軸102などから発生するパルス信号を、整流回路99内の信号測定部107が測定する。その際、信号測定部107は、図12(a)に示すように、駆動軸102が1回転する間に駆動軸102から発生して得られたアナログ状のパルス信号の波形を、図12(b)に示すようなデジタル状のパルス信号の波形に成形し、パルス信号をデジタル変換する。なお、図9は、エンジン発電機100の駆動軸102の1回転当たりに発生する1つのパルス信号を示す一例として、パルス信号の極数が6極の場合を示したものである。
【0040】
次いで、信号測定部107は、駆動軸102の回転に伴い単位時間(例えば1秒)当たりに駆動軸102から発生するパルス信号の数を測定し、その結果を制御部109に伝達する。
【0041】
そして、制御部109は、信号測定部107から送られてきた、駆動軸102の1回転当たりに発生するパルス信号と、単位時間当たりに駆動軸102から発生するパルス信号の数とから、エンジン発電機100の実回転数(例えばrpm)を算出する。
【0042】
さらに、制御部109は、エンジン発電機100の実回転数から、エンジン発電機100の駆動軸102のプーリ103およびエンジン6の軸部材104(出力軸)のプーリ105の予め入力された既知の減速増速比により、エンジン6の実回転数に略等しいエンジン6の演算回転数を算出することができる。
【0043】
そして、制御部109には、上述したように、検出器110により検出した、PTO変速レバー14の摺動位置によって設定されたPTO変速段数が、検出器110によって伝達されている。従って、制御部109は、上記したエンジン6の演算回転数から、PTO変速段数に基づくPTO軸60の、予め入力された既知の減速増速比により、PTO軸60の実回転数に略等しいPTO軸60の演算回転数を算出することができる。
【0044】
次いで、制御部109は、エンジン6の演算回転数を、電気信号として表示部19のエンジン回転数計111に送信し、エンジン回転計111がエンジン6の演算回転数を表示する。
【0045】
一方、エンジンの型式によるエンジン6の定格回転に伴って、予めPTO軸60の定格回転数も決定されており、PTO軸60の演算回転数も一定に算出されることが好ましいが、エンジン6およびエンジン発電機100の駆動(負荷)状況により、エンジン発電機100の実回転数が上下に変化することで、PTO軸60の演算回転数も上下に変化して算出される。このため、制御部109は、算出したPTO軸60の演算回転数が、その中心回転数±数回転となる領域をPTO軸60の定格回転域(演算)とし、算出したPTO軸60の演算回転数が、上記定格回転域内に有するときに限り、このPTO軸60の演算回転数を電気信号として表示部19のPTO表示手段112に送信する。
【0046】
その結果、制御部109が、PTO軸60の演算回転数が定格回転域内に有していることを、表示手段112のランプを点灯させるなどして、オペレータにPTO軸60の定格回転を知らせることができる。また、上述とは逆に、制御部109は、PTO軸60の演算回転数が定格回転域内から外れた場合、表示手段112のランプを消灯させるなどして、オペレータにPTO軸60の定格回転域外であることを知らせることができる。
【0047】
以上のような構成により、従来のように、エンジン6およびPTO軸60の回転数を得るために、別途エンジン6に検出器を設置する必要がなく、エンジン6の駆動に連動して駆動するエンジン発電機100から発生されるパルス信号を利用して容易に得たエンジン6およびPTO軸60の演算回転数をそれぞれ独立させて表示部19に表示することができる。また、整流回路99内に信号測定部107を備えるので、別途検出器を設ける必要がなく、エンジン発電機100の発電により得られた交流の電気を直流に変換する既存の電気回路を用いてエンジン発電機100から発生するパルス信号を測定処理することができる。
【0048】
また、パルス信号の測定のみでエンジン6の演算回転数と同時にPTO軸60の演算回転数を容易に算出することができ、特に車両に搭載するエンジンの型式が異なっても、上述した各減速増速比が明らかであれば、常にパルス信号の測定のみでエンジン6の演算回転数と同時にPTO軸60の演算回転数を容易に算出することができる。
【0049】
そして、表示部19の計器パネルは、PTO軸60の演算回転数を表示する表示手段112の点灯式ランプを備えるので、PTO軸60の回転数(演算)の表示を、エンジン6の回転数(演算)の表示とは独立して表示でき、エンジンの型式(定格回転)を変えても、その型式に対応したPTO軸60の回転数を表示部19に正しく表示できるとともに、車両生産時に部品としての表示部19を共用することができる。
【0050】
さらには、PTO軸60の演算回転数が、算出されたPTO軸60の演算回転数に対して一定幅内の定格回転域内に有するときのみ表示手段112を点灯させて、オペレータに最適なPTO軸60の回転状態を知らせて、エンジン6の負荷状況を認識させることができる。
【0051】
以上詳述したように、この例のトラクタ1は、エンジン発電機100を近傍に備えるエンジン6と、このエンジン6からの動力を作業機21に伝達するPTO軸60と、このPTO軸60およびエンジン6の回転数を、制御部109を介して表示する表示部19とを備え、エンジン発電機100は、このエンジン発電機100から発生するパルス信号を測定する信号測定部107を整流回路99に備え、制御部109は、信号測定部107が得たパルス信号に基づいて、エンジン発電機100の実回転数を介して算出したエンジン6およびPTO軸60の演算回転数を表示部19に表示するものである。
【0052】
加えて、PTO軸60の演算回転数は、エンジン発電機100の実回転数からエンジン発電機100の駆動軸102のプーリ103およびエンジン6の軸部材104(出力軸)のプーリ105の減速増速比により算出したエンジン6の演算回転数と、PTO軸60の減速増速比とから算出し、表示手段112は、定格回転域内のPTO軸60の演算回転数を表示する。
【0053】
また、上述の例では、作業車両の一例としてホイール式トラクタ(農作業機)について説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、クローラ式トラクタなど、PTO動力伝達機構を備えたあらゆる作業車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る作業車両としてのホイール式トラクタの左側面図である。
【図2】同トラクタの平面図である。
【図3】動力伝達系のスケルトン図である。
【図4】ミッションケース内部の断面展開図である。
【図5】ミッションケース後部内に有するPTO動力伝達機構の側面図である。
【図6】エンジン発電機の設置位置を示すエンジン近傍の正面図である。
【図7】エンジン発電機の設置位置を示すエンジン近傍の左側面図である。
【図8】エンジン発電機に備える電機回路内の構成模式図である。
【図9】検出器を備えるPTO変速レバーの平面図である。
【図10】エンジン回転計の近傍に表示手段を設置した表示部の正面図である。
【図11】エンジン回転計の周縁部に表示手段を設置した表示部の正面図である。
【図12】エンジン発電機の駆動により発生したパルス信号のアナログ波形(a)および同パルス信号を波形成形したデジタル波形(b)である。
【符号の説明】
【0055】
19 表示部
60 PTO軸
99 整流回路
100 エンジン発電機
102 駆動軸
103,105,106 プーリ
104 軸部材
107 信号測定部
108 変換部
109 制御部
110 検出器
111 エンジン回転計
112 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン発電機を近傍に備えるエンジンと、
該エンジンからの動力を作業機に伝達するPTO軸と、
該PTO軸および前記エンジンの回転数を、制御部を介して表示する表示部と、
を備える作業車両において、
前記エンジン発電機は、該エンジン発電機から発生するパルス信号を測定する信号測定部を整流回路に備え、
前記制御部は、前記信号測定部が得た前記パルス信号に基づいて、前記エンジン発電機の実回転数を介して算出した前記エンジンおよび前記PTO軸の演算回転数を前記表示部に表示することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記PTO軸の演算回転数は、前記エンジン発電機の実回転数から前記エンジン発電機の駆動軸のプーリおよび前記エンジンの出力軸のプーリの減速増速比により算出した前記エンジンの演算回転数と、前記PTO軸の減速増速比とから算出することを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記表示部は、前記PTO軸の演算回転数を表示する表示手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
前記表示手段は、定格回転域内の前記PTO軸の演算回転数を表示することを特徴とする、請求項1および3に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−17156(P2010−17156A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182452(P2008−182452)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】