説明

作業車両

【課題】着座する方向が後方を向くように方向を変更した操縦席に着座した操縦者では、走行ペダルを操作して車体を前進または後進させることが困難な作業車両を、簡易構造で且つ安価に、着座する方向が後方を向くように方向を変更した操縦席に着座した操縦者であっても、走行ペダルを操作して車体を前進または後進させることができる作業車両とする技術を提供することを目的とする。
【解決手段】操縦者が着座して操縦を行うための操縦席6を車体に設けるとともに、車体の後部に作業機3を着脱可能に設けた作業車両1において、操縦席6の前下方に上下回動可能に設けられ、車体の前進または後進の操作を行うための走行ペダル20と、操縦席6の前側方に上下方向に延出して設けられ、走行ペダル20と連動連結して、走行ペダル20の回動を操作可能とする走行操作レバー10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に設けられるペダルに着脱可能に走行操作レバーを取付けて走行操作可能とする技術に関し、詳しくは、車体の前部と後部に作業機を配置し、車体中央の操作部において、前後一側に配置したペダルを前後他側に向いた状態で走行操作レバーにより前記ペダルを操作可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の後部に作業機を設けた作業車両、例えば、フロントローダの車体の後部にバックホーを設けたトラクターローダーバックホーは公知となっている。
このような作業車両の車体の後部に設けたバックホーを用いて作業する際、前記作業車両の操縦者は、着座する方向が後方を向くように方向を変更した操縦席に着座し、操縦席の後部に設けたバックホーの操作装置を操作することによって行う。
また、このような作業車両では、前方を向いた状態で前進または後進の操作を行うことが殆どであるため、車体の前進または後進の操作を行うための走行ペダルは、操縦席の前下方に設けられている。このため、バックホーにて作業している時に、車体を前進または後進させるためには、操縦者は、後方を向いて着座している状態から、操縦席を前方に向けて操作したり、操縦席はそのままで前側へ移動して操作したりしなければならない。以上のような作業車両においては、このように作業効率が悪く、また操縦者に過度負担が生じるものであった。
このような作業効率、また操縦者の負担を改善するための技術として、着座する方向が後方を向くように方向を変更した操縦席に着座した操縦者が操作可能な範囲に、作業車両の車体の内部で走行ペダルと連動連結させた調速レバーを備える技術は公知となっている。また、トランスミッション内部の前後進切り替え装置と連動させた微速スイッチを備える技術は公知となっている。例えば特許文献1または特許文献2の如くである。
以上のような技術によって、操縦者は、後方を向いて操縦席に着座したまま、作業車両を前進または後進させることができる。
【特許文献1】特開平9−13427号公報
【特許文献2】特開2007−331425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記作業車両の車体の内部で走行ペダルと連動させた調速レバーを備える技術や、トランスミッション内部の前後進切り替え装置と連動させた微速スイッチを備える技術は、その構成が複雑であり、また当該技術を備えるためには費用的負担が大きい。更に、このような技術をもともと備えていない走行車両に、このような技術を付け加えることは、時間的、費用的負担が大きい。
本発明は以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、操縦者が、後方を向いて操縦席に着座したままでは、走行ペダルを操作して車体を前進または後進させることが困難な前記作業車両であっても、安価かつ簡易構造で、操縦者が、後方を向いて操縦席に着座したままでも、走行ペダルを操作して車体を前進または後進させることができる作業車両とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、操縦者が着座して操縦を行うための操縦席を車体に設けるとともに、車体の前部と後部に作業機を着脱可能に設けた作業車両において、前記操縦席の前下方に上下回動可能に設けられ、車体の前進または後進の操作を行うための走行ペダルと、前記走行ペダルに着脱可能に設けられ、操縦席側に延出して、前記走行ペダルの回動を操作可能とする走行操作レバーとを備えたものである。
【0006】
請求項2においては、前記走行操作レバーの先端側に把手部を備え、前記走行操作レバーの基端側に係止部を備え、前記係止部と前記走行ペダルの踏部とを係止可能としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記走行操作レバーの基端側に走行速度を規制する延出部を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
即ち、請求項1においては、作業車両に設けられた走行ペダルから、操縦席の前側方へ走行操作レバーを延出して設けている。このため、着座する方向が後方を向くように方向を変更した操縦席に着座した操縦者であっても、前記走行操作レバーを操作して、前記走行ペダルを回動させることができる。したがって、操縦席の着座方向に関わらず、車体の前進または後進を容易に行うことができる。また、操縦者が、着座する方向が前方を向くように方向を変更した操縦席に着座して作業車両を操縦する際には、走行操作レバーを容易に外すことが可能である。
【0010】
請求項2においては、走行操作レバーの基端側に係止部を備えている。このため、前記係止部と前記走行ペダルの踏部とを係止可能とすることで、走行操作レバーの操作が安定し、加えて簡易構造で且つ安価に既存の走行ペダルに走行操作レバーを付設することが可能となる。
【0011】
請求項3においては、前記走行操作レバーの基端側に走行速度を規制する延出部を備え、走行ペダルが下方へ回動する幅を規制することで、着座する方向が後方を向くように方向を変更した操縦席に着座した操縦者であっても、安全に、車両を前進または後進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明の実施の形態である作業車両について説明する。なお以下においては、図中の矢印方向Fを前方として説明する。
【0014】
図1は作業車両1の全体側面図である。
図1に示す作業車両1は、トラクターローダーバックホーであり、作業機であるローダー2及び掘削装置3が車体に装着されている。作業車両1の車体の前後中央には操縦部4が設けられており、操縦部4の前方にローダー2が、後方に作業機である掘削装置3が配設されている。そして、作業車両1には、前輪8・8及び後輪7・7が装着されており、ローダー2及び掘削装置3を装着した状態で走行可能に構成されている。
積み込み装置であるローダー2は、支持マスト25、アーム26、バケット27、アームシリンダ28、バケットシリンダ29等を備え、支持マスト25にアーム26の基部とアームシリンダ28の基部とバケットシリンダ29の基部が支持される。左右の支持マスト25は作業車両1の車体(シャーシ)であるフレーム9の前後中途部に立設され、フレーム9の前部にはエンジンが載置され、該エンジンはボンネット30により覆われている。
掘削装置3は作業車両1の車体の後部に着脱自在に装着され、掘削装置3の操作は操縦席6の後方に配設された操作装置により行われる。
操縦部4には、ステアリングハンドル5、操縦席6、走行ペダル20等が配設されており、操縦席6の側方には走行変速装置及びローダー2の操作装置が配設されている。
操縦席6は、操縦者が着座して操縦を行うための操縦席であり、前後回転可能として、前方または後方向きに着座方向を設定可能に設けられている(以下、着座方向を前方向きに設定した操縦席6を、前方操縦席6aと、着座方向を後方向きに設定した操縦席6を、後方操縦席6bとする。)。
なお、操縦席6は、前後回転可能であることに特に限定するものではなく、前方操縦席6aと後方操縦席6bとをそれぞれ前後に配置する構成とした場合等、前方若しくは後方を向いて、操縦者が着座することができるあらゆる構成を含むものとする。
操縦席6の前右下方のステップ上には前進走行ペダル20aと後進走行ペダル20bが配設されており、前走行ペダル20aと後進走行ペダル20bに本発明の走行操作レバー10を着脱可能に取付けて、後方を向いて掘削装置3を操作する場合に、走行操作レバー10を操作して前進または後進可能としている(図3参照)。
走行操作レバー10は、棒材で構成され、基端側に取付部を形成して走行ペダル20に取付けて、先端(把手部14)を操縦席6の側方に突出するように設けられている。把手部14は、操縦者が後方操縦席6bに着座した状態で操縦者の手が届く位置に配置される。
【0015】
次ぎに、第一実施形態の作業車両の走行操作レバー10aについて、図2から図6を用いて説明する。
図2、図5で示すとおり、第一実施形態の走行操作レバー10aは、主に、棒材11a、係止部12a、把手部14とで構成されている。
棒材11aは、所定の長さを備える円柱またはパイプ状の棒材である。
係止部12aは、棒材11aの軸心方向を上下方向とした、下方(基端側)に備わる構成となっている。係止部12aは、挿入部13と係止プレート15からなり、棒材11aの下先端部を挿入部13としている。係止プレート15は、板状の部材で構成され、係止プレート15の一側端部が棒材11aの軸心方向に対して直角方向に挿入部13から突設して溶接等により固設されている。但し、係止プレート15の形状を板状の形状に限定するものではなく、ピンや突起等で構成することも可能である。挿入部13は後述するパイプ状の挿入部受け23に挿入できる直径と長さを有している。また、係止プレート15は走行ペダル20の踏部22a・22bに引っ掛けることができる大きさとしている。
把手部14は、棒材11aの上方(先端側)に備わり、棒材11aより径が大きく構成されている。
なお、本実施例においては、挿入部13は、棒材11aの下端部を挿入部13として構成されているが、挿入部13を逆円錐状の部材等として、棒材11aの下方最短部に一体的に設けた構成であってもよい。
【0016】
図3、図4で示すとおり、走行ペダル20は、車体の前進を操作する前進走行ペダル20aと、車体の後進を操作する後進走行ペダル20bとで構成されている。前進走行ペダル20a及び後進走行ペダル20bは、ロッド21a・21bと踏部22a・22bとで構成されている。ロッド21a・21bの基端側が上下回動可能に支持されて変速装置とロッド等を介して連結されている。踏部22a・22bは、平板状の部材で、その上下端部が「へ」字状に所定の角度折り曲げて構成され、ロッド21a・21bの先端側の上面に固設されている。
そして本実施例においては、前進走行ペダル20aに、走行操作レバー10aを取付けるための挿入部受け23が設けられている。但し、後進走行ペダル20bにも同様に挿入部受け23を設けることができ、また、前進走行ペダル20aと後進走行ペダル20bを一体的に構成してシーソー状に操作する場合にも、同様に挿入部受け23を設けることができる。挿入部受け23は、筒状の部材で構成され、少なくとも上側が開口し、挿入部13の外径より大きい内径を備え、挿入部受け23の筒内の奥行き長さは、少なくとも挿入部13の上下の長さよりも長く構成されている。
挿入部受け23は、踏部22aの前側に近接してロッド21aの側面に、その軸心が略上下方向を向くように固設される。つまり、挿入部受け23は、挿入部13が上方より挿入可能なように挿入部受け23の開口面が操縦席6側を向くようにして、ロッド21aの右側面に溶接等で固設されている。このとき、挿入部受け23の開口面(上面)はロッド21aの上面と略同じ高さとし、前記開口面と、踏部22aの前部に形成した折り曲げ部分の裏面との間に、走行操作レバー10aを挿入部13を中心に回動したときに、係止プレート15が挿入して係止されるような所定のスペースである係止スペース24が形成されている。
なお、踏部22a・22bの形状を上記のような形状に特に限定するものではなく、側面視「コ」字状等に形成することも可能であり、踏部22a・22bの前部に係止プレート15を回動したときに嵌合または係止される構造であればよい。挿入部受け23の前進走行ペダル20aへの固定方法は、溶接に限定するものではなく、ねじ等で固定する構成であってもよい。
【0017】
図6を用いて、走行操作レバー10aの走行ペダル20aへの取付け方法について説明する。
図6(a)で示すとおり、挿入部受け23の軸心と挿入部13の軸心とが一致するように、走行操作レバー10aの挿入部13を、挿入部受け23の上方から位置合わせをして挿入する。係止プレート15の裏面(下面)と、挿入部受け23の開口面(上面)とが当接すると、図6(b)で示すとおり、係止プレート15を回転させて、係止プレート15の一部が踏部22aの裏面側に位置するようにして、平面視で重複させる。こうして、係止プレート15と踏部22aとが係止され、即ち走行操作レバー10aと、走行ペダル20aとは係止されることとなり、一体的に上下方向に回動可能となる。
【0018】
棒材11aの長さは、走行操作レバー10aが前進走行ペダル20aに取付けられた際に、走行操作レバー10aの把手部14の上下高さ位置と、操縦席6の座部の上下高さ位置とが、同程度の高さ位置となるような長さに構成されている。
なお、棒材11aは円柱またはパイプ状の棒材であるが、本発明における棒材11aを係る形状に特に限定するものではなく、角柱の棒材等であってもよい。係止プレート15は板状の部材であるが、本発明における係止プレート15の形状を係る形状に限定するものではなく、ピン状の係止部12aが挿入部受け23に形成した溝等に係止される構成とすることも可能である。また、係止部12aが踏部22a・22b、または、ロッド21a・21bに挿入部13を挿入するための孔を開口し、係止プレート15に踏部22a・22b、または、ロッド21a・21bへの係合部を形成する構成であってもよく、走行操作レバー10aが走行ペダル20a・20bに係止するような形状であればよい。本実施例においては、走行操作レバー10aは、前進走行ペダル20aに取付けられているが、走行操作レバー10aは、後進走行ペダル20bに取付ける構成とした場合、或いは前進走行ペダル20aと後進走行ペダル20bの両方に取付ける構成とした場合であってよい。
【0019】
次ぎに、第二実施形態の作業車両の走行操作レバー10bについて、図7、図8を用いて説明する。なお、本実施形態における走行操作レバー10bは、第一実施形態と略同様の構成であるため、第一実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
図7、図8で示すとおり、第二実施形態の走行操作レバー10bは、主に、棒材11b、係止部12b、把手部14とで構成されている。
棒材11bの基端側は、ボルト等を螺接可能なようにネジ溝が設けられている。
係止部12bは、平板を側面視略逆U字状に形成した部材であって、逆U字底面の略中央部には、棒材10bの外径と略同一の内径の貫通口17を備えている。また前記逆U字両側面の上下方向略中央部には、上下方向に対して垂直に一側面に向かって開口する、係止溝18をそれぞれ備えている。係止溝18の上下方向の開口幅は、踏部22a・22bの厚さよりも大きく構成されている。
走行操作レバー10bは、棒材11bの下方を、貫通口17に貫入させ、U字底面を境にして上下をボルト等で固定して構成されている。
【0020】
走行操作レバー10bの前進ペダル20aへの取付けは、係止溝18と踏部22aとを嵌合させることによって行う。こうして、係止溝18と踏部22aとが係止され、即ち走行操作レバー10bと、ペダル20aとは係止されることとなる。但し、係止溝18をロッド21a・21bの大きさに合わせて開口し、走行操作レバー10bをロッド21a・21bに取付けて操作できるようにすることも可能である。
【0021】
次ぎに、第三実施形態の作業車両の走行操作レバー10cについて、図9、図10を用いて説明する。なお、本実施形態における走行操作レバー10cは、第一実施形態と略同様の構成であるため、第一実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0022】
図9、図10で示すように、走行操作レバー10cは、主に、棒材11a、係止部12a、把手部14、延出部19とで構成されている。
延出部19は、棒材11aの底面直径と略同一の直径である底面、及び所定の高さを備える逆円錐状の部材である。延出部19は、前記延出部19の底面と、棒材11aの底面とを一致さて、棒材11aの基端側、すなわち係止部12(挿入部13)の下方に延出するように、棒材11aに溶接等で固設され、または一体的に設けられている。前記所定の高さとは、走行レバー10cが、前進走行ペダル20aへ取付けられた際に、少なくとも延出部19の先端部が挿入部受け23の下面から突出し、前進走行ペダル20aを回動させた際には、前記先端部が操作部4の床面に当接して、前進走行ペダル20aの回動を一定の範囲以下で規制することができるような高さをいう。
【0023】
なお、延出部19を逆円錐状の部材とすること、また、延出部19を、前記逆円錐の底面と、棒材11aの底面とを一致するようにして、係止部12の下方に延出するように設けること等、延出部19の形状、その取付け位置、及びその取付け方法等を、上記のような構成に特に限定するものではない。また、走行操作レバー10cの形状も上記のような形状に特に限定するものではない。即ち、走行操作レバー10cを走行ペダル20aに設けた走行ペダル20を、所定の範囲で下方に回動させた際、延出部19と、操縦部4の床面とが当接するような構成であればよい。
例えば、棒材11aの基端側の形状を、挿入部受け23に挿入可能、且つ棒材11aの基端側から所定の長さまで延出するような形状(逆円錐状、逆四角錐状等)に形成して、延出部19とした場合でもかまわない。
延出部19を平板状の部材とし、該板状部材の一側端を棒材11aの軸方向に対して直角方向に突出するように(側面視略T字状となるように、)、棒材11aの基端側に設けた構成とした場合や、延出部19を側面視略L字状に形成された棒材とし、該側面視略L字状の棒材の一側端を棒材11aの基端側に設けた構成とした場合でもかまわない。
また、走行操作レバー10cは、走行操作レバー10aに延出部19を設けた構成となっているが、走行操作レバー10bに延出部19を設けた構成としてもよい。
棒材11aの基端側から延出する延出部19の長さ、延出部19の棒材11aへの取付け位置、取付け角度等を変更することにより、前進走行ペダル20aの回動可能な範囲を適宜変更することも可能である。また、走行操作レバー10cの構成を、走行操作レバー10aに延出部19を設けた構成とした場合においては、係止プレート15の棒材11aに対する上下取付け位置を変更することによっても、前進走行ペダル20aの回動可能な範囲を適宜変更することも可能である。
【0024】
以上のように、本発明における作業車両1は、前輪8・8及び後輪7・7を設け、前部にローダー2を装着し、後部に掘削装置3を装着し、中央部に操縦部4が設けられている。操縦部4には、前方または後方向ききに着座方向を設定可能なように前後に回転可能にして操縦席6を設け、操縦部4の床面近傍には、走行ペダル20a・20bを設けている。操縦席6の側方には、走行操作装置及びローダー2の操作装置が配設されている。操縦席6の後方には、掘削装置3の操作装置が配設されている。
こうして、前方操縦席6aに着座した操縦者は、ローダー2の操作装置を操作して、ローダー2を作動させ、及び/或いは走行ペダル20a・20bの踏部22a・22bを自己の足で踏むことにより、走行ペダル20a・20bを上下に回動させて、車体を前進または後進させる。
一方、後方操縦席6bに着座した操縦者は、後方操縦席6bの後方に配設された操作装置を操作して、掘削装置3を作動させる。また、走行ペダル20a・20bは、操縦席6の前下方、操縦部4の床近傍に設けられている。このため、後方操縦席6bに着座した操縦者が、走行ペダル20a・20bを直接操作する、例えば自己の手で走行ペダル20a・20bを把手等して操作することによって、走行ペダル20a・20bを上下に回動させることは、極めて困難である。
しかしながら、本発明における作業車両1においては、走行操作レバー10a・10b・10cが、走行操作レバー10a・10b・10cの基端側を走行ペダル20a・20bに連動連結して、操縦席6の前側方に上下方向に、延出して設けられている。
このため、操縦者が後方操縦席6bに着座した場合であっても、操縦者は走行操作レバー10a・10b・10cの先端側を把手して、走行操作レバー10a・10b・10cを回動することにより、関節的に走行ペダル20a・20bを回動させることができる。
したがって、操縦席6の着座方向に関わらず、車体の前進または後進の操作を容易に行うことができる。
【0025】
本発明における走行操作レバー10a・10b・10cは、その先端側に、棒材11a・11bよりも径が大きい把手部14を備えた構成となっている。また、走行操作レバー10a・10b・10cが、走行ペダル20a・20bに設けられた際には、把手部14の上下高さ位置と、操縦席6の座部の上下高さ位置とは、同程度の高さ位置となるように構成されている。
このため、後方操縦席6bに着座した操縦者は、走行操作レバー10a・10b・10cを把手しやすく、走行操作レバー10a・10b・10cの操作性を向上させることとなる。
したがって、後方操縦席6bに着座した操縦者は、車体の前進または後進の操作をより容易に行うことができる。
なお、把手部14に、複数或いは単数の溝や、凸部を備えた構成とすること、また把手部14の材質を軟質素材、例えばゴムで構成すること等により、把手部14のグリップ性が向上し、操縦者は、把手部14をより把手しやすくなる。
【0026】
走行操作レバー10a・10b・10cは、その基端側に係止部12a・12bを備えた構成となっている。走行操作レバー10a・10b・10cが、走行ペダル20a・20bに取付けられた際には、係止部12a・12bと、走行ペダル20a・20bとが係止するように構成されている。
このため、走行ペダル20a・20bに取付けられた走行操作レバー10a・10b・10cを上方に持ち上げて、前進走行ペダル20a・20bを上方に回動させても、走行操作レバー10a・10b・10cが、走行ペダル20a・20bから離脱するような状況が起こりにくくなる。
したがって、走行操作レバー10a・10b・10cの操作をより容易且つ安定させることが可能となる。また、操縦者が後方操縦席6bに着座した状態では前進または後進の操作を行うことが困難な作業車両を、このような構成とすることについても、簡易構造で且つ安価に実現することができる。
【0027】
係止部12a・12bと、走行ペダル20a・20bが当接する部分をゴム等の摩擦抵抗の大きい素材で形成することにより、走行操作レバー10a・10b・10cが走行ペダル20a・20bから容易に離脱することを防止することができる。また、挿入部13の外径と挿入部受け23の内径とを極力同一に近づけた構成とすること、或いは、係止溝18の上下方向の幅と、踏部22a・22bの厚さを極力同一に近づけた構成とすることで、走行操作レバー10a・10b・10cの回動時のガタツキや、走行操作レバー10a・10b・10cが走行ペダル20a・20bから容易に離脱することを防止することができる。更に、踏部22aの上端側の形状を側面視略S字状に形成し、該上端側の裏面に形成される係止スペース24と、係止プレート15との厚みとを略同一とすることでも、走行操作レバー10aの回動時のガタツキ等を防止することができる。
【0028】
走行操作レバー10cは、棒材11aの底面直径と略同一の直径である底面、及び所定の高さを備える逆円錐状の部材である延出部19を、棒材11aの基端側に延出するように、前記延出部19の底面と、棒材11aの底面とを一致さて、棒材11aに溶接等で一体的に固設されている。
このため、走行操作レバー10cを走行ペダル20a・20bに取付ける際には、挿入部受け23と挿入部13の軸心とを一致させるような厳密な位置合わせを必要とせず、逆円錐状である延出部19の先端を、挿入部受け23の開口部に挿入することで取付けることができる。更には、挿入部受け23の内径と挿入部13の外形を略同一と下場合でも、容易に走行操作レバー10cを走行ペダル20に取付けることができる。
また、図10で示すとおり、走行操作レバー10cを前進走行ペダル20aへの取付けると、少なくとも延出部19の先端部が挿入部受け23から突出することとなる。そして、前進走行ペダル20a・20bを所定の範囲で下方に回動させた際、延出部19の先端部が、操縦部4の床面に当接することとなる。こうして、前進走行ペダル20aの回動を一定の範囲に規制している。したがって、後方操縦席6bに着座した操縦者であっても、安全に車体を前進または後進走行させることが可能な作業車両を、簡易構造で、且つ安価に実現することができる。
走行ペダル20a・20bに延出部19を設ける構成とした場合でも、走行ペダル20a・20bの回動を規制することは可能である。しかし、走行操作レバー10cのように、延出部19を走行操作レバー10に設けた構成とした場合であれば、走行ペダル20a・20bから、走行操作レバー10を容易に取外すことができるため、走行ペダル20a・20bの回動を規制している状態も容易に解消することができる。
更に、延出部19と走行操作レバー10との取付け(取外し)を容易とする構成、例えば、建築現場用足場クランプ等のようなパイプや角筒同士を容易に連結可能とする連結具等で互いを取付けるような構成とすることで、走行ペダル20a・20bの上下回動の規制幅を容易に変更することができ、走行ペダル20a・20bの上下回動の規制幅の微調整を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】作業車両の全体側面図。
【図2】第一実施形態における走行操作レバー10aの全体斜視図。
【図3】操縦部を示した概略後方斜視図。
【図4】第一実施形態における走行ペダルの概略側面図。
【図5】操縦部を示した概略後方斜視図。
【図6】(a)は、第一実施形態における走行操作レバーの走行ペダルへの取付け方法を示した図、(b)は、第一実施形態における走行操作レバーの走行ペダルへの取付け方法を示した図。
【図7】第二実施形態における走行操作レバーの全体斜視図。
【図8】操縦部を示した概略後方斜視図。
【図9】第三実施形態における走行操作レバーの全体斜視図。
【図10】操縦部を示した概略側面図。
【符号の説明】
【0030】
1 作業車両
3 掘削装置
6 操縦席
10 走行操作レバー
10a 第一実施形態における走行操作レバー
10b 第二実施形態における走行操作レバー
10c 第三実施形態における走行操作レバー
12a 係止部
12b 係止部
13 挿入部
14 把手部
15 係止プレート
19 延出部
20 走行ペダル
23 挿入部受け
24 係止スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦者が着座して操縦を行うための操縦席を車体に設けるとともに、車体の前部と後部に作業機を着脱可能に設けた作業車両において、
前記操縦席の前下方に上下回動可能に設けられ、車体の前進または後進の操作を行うための走行ペダルと、
前記走行ペダルに着脱可能に設けられ、操縦席側に延出して、前記走行ペダルの回動を操作可能とする走行操作レバーとを備える作業車両。
【請求項2】
前記走行操作レバーの先端側に把手部を備え、前記走行操作レバーの基端側に係止部を備え、前記係止部と前記走行ペダルの踏部とを係止可能とすることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行操作レバーの基端側に走行速度を規制する延出部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−58615(P2010−58615A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225255(P2008−225255)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】