説明

作業車輌

【課題】エンジンユニットの後側を防振支持機構を介して支持し且つ一対の車輌フレームに連結されるエンジンマウントブラケットの小型化を図る。
【解決手段】エンジンユニットの取付フランジに連結されるフライホイールカバーは、フライホイール本体を囲繞するカバー本体と、スタータユニットのスタータ駆動軸及びフライホイール本体を連結するギヤ列を収容するようにカバー本体から径方向外方へ膨出された膨出部とを有する。エンジンマウントブラケットの側面は、上面が平面視において前記カバー本体とオーバーラップし且つ底面が前記カバー本体より後方側に位置するように、側面視において前高後低状に傾斜されている。前記膨出部は、車輌前後方向に関し前記取付フランジと前記一対の側面の一方との間から前記一方の側面より車輌幅方向外方へ延在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記左右一対の車輌フレームに左右一対の前側防振支持機構及び後側防振支持機構を介して防振支持されるエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記エンジンユニットを始動させる為のスタータユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置された位置で前記左右一対の車輌フレームの後端側に連結され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションとを備えた作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の車輌フレームに左右一対の前側防振支持機構及び後側防振支持機構を介して直接又は間接的に支持されたエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されたフライホイールユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間された状態で前記一対の車輌フレームの後端側に連結されたトランスミッションとを備えた作業車輌において、前記後側防振支持機構を前記フライホイールユニットよりも上方に位置させることで前記エンジンユニットの支持安定化を図る構成が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記特許文献1には、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記左右一対の車輌フレームに左右一対の前側防振支持機構及び後側防振支持機構を介して防振支持されるエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置された位置で前記左右一対の車輌フレームの後端側に連結され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションと、前記エンジンユニットの左右側面にそれぞれ連結された左右一対のエンジン前側取付ステーと、前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記エンジンユニットの後端面に連結されたエンジン後側取付ステーと、前記一対の車輌フレームにそれぞれ固着された左右一対のフレーム側取付ステーと、上面が前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記一対の車輌フレームに直接的に連結されたエンジンマウントブラケットとを備え、前記一対の前側防振支持機構が前記一対のエンジン前側取付ステーと前記一対のフレーム側取付ステーとの間に介挿され、且つ、前記後側防振支持機構が前記エンジン後側取付ステーと前記エンジンマウントブラケットの上面との間に介挿されている作業車輌が提案されている。
【0004】
前記特許文献1に記載の作業車輌は、前記後側防振支持機構を前記一対の前側防振支持機構よりも上方に配置させることができ、従って、前側防振支持機構及び後側防振支持機構が上下方向に関し略同一位置に配置される構成に比して、前記エンジンユニットの支持安定化を図ることができる点で有用である。
しかしながら、以下の点において改善の余地があった。
【0005】
前記エンジンマウントブラケットは、前記一対の車輌フレームの上面に載置された左右一対の側面と、前記一対の側面の上端を連結する上面であって、前記後側防振支持機構が載置される上面とを有しており、前記側面及び前記上面は、前記フライホイールユニットと車輌前後方向同一位置に位置している。
即ち、前記エンジンマウントブラケットは、側面視において前記側面が前記フライホイールユニットとオーバーラップし且つ平面視において前記上面が前記フライホイールユニットとオーバーラップするように構成されている。
【0006】
ところで、前記作業車輌には、前記エンジンユニットを始動させる為のスタータユニットが備えられる。
前記スタータユニットは、スタータ本体と、前記スタータ本体から延在されたスタータ駆動軸と、前記スタータ駆動軸及び前記フライホイールユニットのフライホイール本体を作動連結するギヤ列とを有しており、前記ギヤ列は前記フライホイールユニットのフライホイールカバーに収容される。
【0007】
詳しく説明すると、前記エンジンユニットは、エンジン本体と、前記エンジン本体から後方へ延在された出力軸と、前記エンジン本体の後端から径方向外方へ延在された取付フランジとを有している。
そして、前記フライホイールユニットは、前記出力軸に連結されるフライホイール本体と、前記フライホイール本体を囲繞するように前記取付フランジの後端面に連結されるフライホイールカバーとを有しており、前記フライホイールカバーは、前記フライホイール本体を囲繞するカバー本体と、前記ギヤ列を囲繞するように前記カバー本体から径方向外方へ膨出された膨出部とを有している。
【0008】
従って、前記特許文献1に記載のように、前記エンジンマウントブラケットの前記側面が側面視において略垂直方向に延びるように構成されている場合には、前記カバー本体及び前記膨出部を含む前記フライホイールカバーの全体を覆うように前記エンジンマウントブラケットを車輌幅方向に大型化しなければならず、その結果、前記エンジンマウントブラケットが連結される前記一対の車輌フレームの左右離間幅も大きくしなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−103430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記左右一対の車輌フレームに少なくとも左右一対の前側防振支持機構及び少なくとも一つの後側防振支持機構を介して防振支持されるエンジンユニットと、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記エンジンユニットを始動させる為のスタータユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置された位置で前記左右一対の車輌フレームの後端側に連結され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションと、前記エンジンユニットの左右側面にそれぞれ連結された左右一対のエンジン前側取付ステーと、前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記エンジンユニットの後端面に連結されたエンジン後側取付ステーと、前記一対の車輌フレームにそれぞれ固着された左右一対のフレーム側取付ステーと、上面が前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記一対の車輌フレームに直接又は間接的に連結されるエンジンマウントブラケットとを備え、前記一対の前側防振支持機構が前記一対のエンジン前側取付ステーと前記一対のフレーム側取付ステーとの間に介挿され、且つ、前記後側防振支持機構が前記エンジン後側取付ステーと前記エンジンマウントブラケットの上面との間に介挿されている作業車輌において、前記エンジンマウントブラケットの可及的な小型化を図り得る作業車輌の提供を一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームに支持されるエンジンユニットと、前記エンジンユニットを前記車輌フレームに防振支持させる為の防振支持機構であって、前記エンジンユニットの左右両側に配設された少なくとも左右一対の前側防振支持機構及び前記エンジユニットの後側に配設された少なくとも一つの後側防振支持機構を含む防振支持機構と、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記エンジンユニットを始動させる為のスタータユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置された位置で前記左右一対の車輌フレームの後端側に連結され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションと、前記エンジンユニットの左右側面にそれぞれ連結された左右一対のエンジン前側取付ステーと、前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記エンジンユニットの後端面に連結されたエンジン後側取付ステーと、前記一対の車輌フレームにそれぞれ固着された左右一対のフレーム側取付ステーと、上面が前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記一対の車輌フレームに直接又は間接的に連結されるエンジンマウントブラケットとを備え、前記一対の前側防振支持機構が前記一対のエンジン前側取付ステーと前記一対のフレーム側取付ステーとの間に介挿され、且つ、前記後側防振支持機構が前記エンジン後側取付ステーと前記エンジンマウントブラケットの上面との間に介挿されている作業車輌であって、前記フライホイールユニットより後方側において前記一対の車輌フレームの間を連結するブリッジフレームを備え、前記エンジンマウントブラケットは、左右一対の側面と、前記一対の側面の下端から車輌幅方向外方へ略水平に延び、前記ブリッジフレームの左右両端側の上面に連結される左右一対の底面と、前記一対の側面の上端同士を連結するように略水平に延びる前記上面とを有し、前記エンジンユニットは、エンジン本体と、前記エンジン本体から後方へ延在された出力軸と、前記エンジン本体の後端から径方向外方へ延在された取付フランジとを有し、前記フライホイールユニットは、前記出力軸に連結されるフライホイール本体と、前記フライホイール本体を囲繞するように前記取付フランジの後端面に連結されるフライホイールカバーとを有し、前記スタータユニットは、前記取付フランジの前面に取り付けられるスタータ本体と、前記スタータ本体から前記取付フランジを貫通して後方側へ延在されたスタータ駆動軸と、前記スタータ駆動軸及び前記フライホイール本体を作動連結するギヤ列とを有し、前記フライホイールカバーは、前記フライホイール本体を囲繞するカバー本体と、前記ギヤ列を囲繞するように前記カバー本体から径方向外方へ膨出された膨出部とを一体的に有しており、前記エンジンマウントブラケットの前記一対の側面は、前記上面が平面視において前記カバー本体とオーバーラップし且つ前記底面が前記カバー本体より後方側に位置するように、側面視において前高後低状に傾斜されており、前記膨出部は、車輌前後方向に関し前記取付フランジと前記一対の側面の一方との間から前記一対の側面の一方より車輌幅方向外方へ延在されている作業車輌を提供する。
【0012】
好ましくは、前記一対の車輌フレームは、前記一対のフレーム側取付ステーがそれぞれ固着される左右一対のフロントフレームと、前端側が前記一対のフロントフレームの後端側にそれぞれ直接又は間接的に連結され且つ後端側が前記トランスミッションのミッションケースの両側面にそれぞれ直接又は間接的に連結される左右一対のメインフレームであって、前記ブリッジフレームが連結される左右一対のメインフレームとを含み、前記一対のメインフレームは、前端側の内表面がスペーサを介して対応する前記フロントフレームの後端側の外表面に連結される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る作業車輌によれば、エンジンユニットの後端面に連結されるエンジン後側取付ステーと共働して後側防振支持機構を挟持するエンジンマウントブラケットの一対の側面が側面視において前高後低状に傾斜され、且つ、フライホイールカバーのうちスタータユニットのギヤ列を収容する膨出部が車輌前後方向に関し前記エンジンユニットの後端面に設けられた取付フランジと前記一対の側面の一方との間から前記一対の側面の一方より車輌幅方向外方へ延在されているので、前記エンジンマウントブラケットを車輌幅方向に小型化することができる。
さらに、前記エンジンマウントブラケットが一対の車輌フレームの間を連結するブリッジフレームの上面に載置された状態で該ブリッジフレームに連結されているので、前記エンジンユニットの支持安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る作業車輌の一実施の形態であるトラクタの斜視図である。
【図2】図2は、前記作業車輌の車体部分を左前方から視た斜視図である。
【図3】図3は、前記車体部分を右前方から視た斜視図である。
【図4】図4は、前記車体部分を左側方から視た側面図である。
【図5】図5は、前記作業車輌における前側防振支持機構近傍の拡大斜視図である。
【図6】図6は、図4におけるVI-VI線に沿った断面の後方斜視図である。
【図7】図7は、図4におけるVI-VI線に沿った断面の背面図である。
【図8】図8は、前記防振支持機構近傍の縦断面図である。
【図9】図9は、前記作業車輌におけるエンジンユニットの車輌フレームへの組み付け作業工程を示す分解斜視図である。
【図10】図10は、前記作業車輌におけるエンジンマウントブラケット近傍の側面図である。
【図11】図11は、前記エンジンマウントブラケット近傍の平面図である。
【図12】図12は、前記作業車輌におけるフライホイールユニット近傍の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る作業車輌の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る作業車輌1であるトラクタの斜視図を示す。
又、図2及び図3に、それぞれ、前記作業車輌1の車体部分をそれぞれ左前方及び右側方から視た斜視図を示す。
さらに、図4に、前記車体部分を左側方から視た側面図を示す。
なお、本明細書において「左」及び「右」は、特段の説明が無い限り、車輌の後方から前方を向いた状態を基準にした方向を示している。
【0016】
図1〜図4に示すように、前記作業車輌1は、左右一対の車輌フレーム10と、車輌前方側及び後方側にそれぞれ配設された左右一対の前輪21及び左右一対の後輪22と、前記一対の車輌フレーム10に支持されたエンジンユニット40と、前記エンジンユニット40の後端面に連結されたフライホイールユニット50と、前記エンジンユニット40を始動させる為のスタータユニット55と、前記エンジンユニット40から前記フライホイールユニット50を介して作動的に回転動力を入力するトランスミッション60とを備えている。
【0017】
前記一対の車輌フレーム10は、図2及び図3に示すように、板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びている。
本実施の形態においては、前記一対の車輌フレーム10は、車輌前方側に位置し且つ平面視略直線状に延びる左右一対のフロントフレーム11と、前記一対のフロントフレーム11より車輌幅方向外方側に位置し且つ側面視において前端側が対応する前記フロントフレーム11の後端側とオーバーラップした状態で該フロントフレーム11に連結された左右一対のメインフレーム12であって、平面視略直線状に後方側へ延びる左右一対のメインフレーム12とを含んでいる。
前記トランスミッション60は、前記フライホイールユニット50から後方へ離間された状態で、前記一対のメインフレーム12の後端側に連結されるミッションケース61を有している。
なお、図中の符号75は、前記フライホイールユニット50から前記トランスミッション60に回転動力を作動連結する為の伝動軸である。
【0018】
本実施の形態においては、図2等に示すように、前記一対のメインフレーム12は、前端側の内表面がスペーサ13を介して対応する前記フロントフレーム11の後端側の外表面に連結されている。
斯かる構成によれば、前記一対のフロントフレーム11の左右離間幅及び前記一対のメインフレーム12の左右離間幅をそれぞれ独立して設定することができる。
【0019】
前記左右一対の前輪21は、前記一対の車輌フレーム10に支持されたフロントアクスルユニット30の両端部に操舵可能に連結されている。
前記一対の後輪22は、前記トランスミッション60におけるミッションケース61の両側壁にそれぞれ連結された左右一対のリヤアクスルユニット(図示せず)の車輌幅方向外端部に連結されている。
【0020】
前記エンジンユニット40は、防振支持機構70を介して前記一対の車輌フレーム10に防振支持されている。
前記防振支持機構70は、図2〜図4に示すように、前記エンジンユニット40の両側にそれぞれ少なくとも一つ配設された左右一対の前側防振支持機構70Fと、及び前記エンジンユニットの後側に少なくとも一つ配設された後側防振支持機構70Rとを含んでいる。
なお、本実施の形態においては、2つの前記後側防振支持機構70Rが、前記エンジンユニット40の車輌幅方向中心線を基準にして左右対称に配置されているが、これに代えて、1つの前記後側防振支持機構70Rを前記エンジンユニット40の車輌幅方向中心線上に配置させることも可能である。
【0021】
図5に、前記前側防振支持機構70F近傍の拡大斜視図を示す。
又、図6及び図7に、それぞれ、図4におけるVI-VI線に沿った断面の後方斜視図及び背面図を示す。
前記作業車輌1は、図2〜図5に示すように、前記エンジンユニット40の左右側面にそれぞれ連結された左右一対のエンジン前側取付ステー45と、前記一対の車輌フレーム10(本実施の形態においては前記一対のフロントフレーム11)にそれぞれ固着された左右一対のフレーム側取付ステー11Fとを備えており、前記一対の前側防振支持機構70Fは、前記一対のエンジン前側取付ステー45と前記一対のフレーム側取付ステー11Fとの間にそれぞれ介挿されている。
【0022】
さらに、前記作業車輌1は、図4,図6及び図7に示すように、前記フライホイールユニット50より上方に位置するように前記エンジンユニット40の後端面に連結されたエンジン後側取付ステー46と、上面283が前記フライホイールユニット50より上方に位置するように前記一対の車輌フレーム10に直接又は間接的に連結されるエンジンマウントブラケット28とを備えており、前記後側防振支持機構70Rは、前記エンジン後側取付ステー36と前記エンジンマウントブラケット28の上面283との間に介挿されている。
【0023】
図8に、前記防振支持機構70の縦断面図を示す。
本実施の形態においては、前記前側防振支持機構70F及び前記後側防振支持機構70Rは同一構成とされている。
【0024】
図5〜図8に示すように、前記防振支持機構70は、上面及び下面を有する弾性部材71と、下面が前記弾性部材71の上面に固着される第1ベース部材72と、上面が前記弾性部材71の下面に固着される第2ベース部材73と、前記第1ベース部材72から上方へ延在するように前記第1ベース部材72に固着された第1ボルト軸74と、前記第2ベース部材73から下方へ延在するように前記第2ベース部材73に固着された第2ボルト軸75とを有している。
【0025】
ここで、前記エンジンユニット40を前記防振支持機構70を介して前記一対の車輌フレーム10に組み付けるエンジンユニット40の組み付け作業工程について説明する。
【0026】
まず、前記エンジンユニット40の前側の前記一対の車輌フレーム10への組み付け作業工程について説明する。
前記エンジン前側取付ステー45は、図5に示すように、前記エンジンユニット40の側面に連結されるエンジン取付面45aと、前記エンジン取付面45aから車輌幅方向外方へ略水平に延びるエンジン前側水平取付面45bとを有しており、前記エンジン前側水平取付面45bには前記第1ボルト軸74が挿通される取付孔が形成されている。
前記フレーム側取付ステー11Fは、前記エンジン前側水平取付面45bの下方において該エンジン前側水平取付面45bと対向するフレーム側水平取付面11bを有するように対応する前記車輌フレーム10に固着されており、前記フレーム側水平取付面11bには前記第2ボルト軸75が挿通される取付孔が形成されている。
【0027】
前記エンジンユニット40は、吊り上げられた状態から下降されることで前記一対の車輌フレーム10上に載置される。ここで、前記前側防振支持機構70Fは、前記エンジンユニット40の下降工程に先立って、前記エンジン前側取付ステー45又は前記フレーム側取付ステー11Fの何れか一方に装着されている。
【0028】
例えば、前記前側防振支持機構70Fを前記エンジン前側取付ステー45に予め装着させる場合には、前記エンジン前側取付ステー45の前記エンジン前側水平取付面45bの前記取付孔に前記第1ボルト軸74を下方から挿入して、前記第1ボルト軸74の上方延在部分に装着されるナット等の締結部材76を介して前記第1ベース部材72と前記エンジン前側水平取付面45bとを締結する。
その後、前記前側防振支持機構70Fが装着された状態の前記エンジンユニット40を上方から下降させて、前記第2ボルト軸75を前記フレーム側取付ステー11Fの前記フレーム側水平取付面11bの前記取付孔に挿入させ、前記第2ボルト軸75の下方延在部分に装着されるナット等の締結部材76を介して前記第2ベース部材73と前記フレーム側水平取付面11bとを締結する。
【0029】
これに代えて、前記前側防振支持機構70Fを前記フレーム側取付ステー11Fに予め装着させる場合には、前記第2ボルト軸75を前記フレーム側取付ステー11Fの前記フレーム側水平取付面11bの前記取付孔に挿入させ、前記第2ボルト軸75の下方延在部分に装着されるナット等の締結部材76を介して前記第2ベース部材73と前記フレーム側水平取付面11bとを締結する。
その後、前記フレーム側取付ステー11Fに装着されている前記前側防振支持機構70Fの前記第1軸74が前記エンジン前側取付ステー45の前記エンジン前側水平取付面45bの前記取付孔に挿入されるように、前記エンジンユニット40を上方から下降させ、前記第1ボルト軸74の上方延在部分に装着されるナット等の締結部材76を介して前記第1ベース部材72と前記エンジン前側水平取付面45bとを締結する。
【0030】
このように、前記エンジンユニット40を前記前側防振支持機構70Fを介して前記一対の車輌フレーム10に支持させる為には、前記エンジンユニット40を上方から下降させて前記一対の車輌フレーム10上に載置させる際に、前記第1軸74又は前記第2軸72を対応する取付孔に挿通させる必要がある。
【0031】
次に、前記エンジンユニット40の後側の前記一対の車輌フレーム10への組み付け作業工程について説明する。
前述の通り、本実施の形態においては、前記後側防振支持機構70Rは、前記エンジンユニット40の後端面に連結される前記エンジン後側取付ステー46と前記エンジンマウントブラケット28との間に介挿されている。
【0032】
詳しくは、前記作業車輌1は、図6及び図7に示すように、前記フライホイールユニット50より後方側において前記一対の車輌フレーム10(本実施の形態においては前記一対のメインフレーム12)の間を連結するブリッジフレーム27を有しており、前記エンジンマウントブラケット28は前記ブリッジフレーム27に上方から載置された状態で該ブリッジフレーム27に連結されている。
【0033】
前記ブリッジフレーム27は、図6及び図7に示すように、前記一対の車輌フレーム10の内表面に当接される左右一対の取付フランジ271と、前記一対の取付フランジ271の間を連結する連結部272とを有している。
【0034】
前記取付フランジ271は、外表面が対応する前記車輌フレーム10の内表面と当接された状態でボルト等の締結部材を介して対応する前記車輌フレーム10に締結されている。
【0035】
前記連結部272は、前記一対の取付フランジ271の内表面の間を連結している。
本実施の形態においては、図6及び図7に示すように、前記連結部272は、略垂直に沿った状態で前記一対の取付フランジ271の内表面の間を連結する垂直面部272aと、前記垂直面部272aの上端から略水平に延びる水平面部272bとを有している。
【0036】
さらに、前記ブリッジフレーム27は、前記一対の取付フランジ271の上端面に上方に開くように形成された凹部内に位置するように前記水平面部272bの左右両端側の上面に固着された左右一対の載置部273を有している。
前記載置部273は略水平に沿った上面を有しており、前記エンジンマウントブラケット28は前記載置部273の前記上面に載置された状態でボルト等の締結部材を介して固定されている。
【0037】
前記エンジンマウントブラケット28は、図6及び図7に示すように、左右一対の側面281と、前記一対の側面281の下端から車輌幅方向外方へ略水平に延び、前記ブリッジフレーム27の左右両端側の上面(本実施の形態においては前記一対の載置部273の上面)に締結部材を介して連結される左右一対の底面282と、前記一対の側面281の上端同士を連結するように略水平に延びる前記上面283とを有している。
前記エンジンマウントブラケット28の前記上面283には、前記後側防振支持機構70Rの前記第2軸75が挿通可能な取付孔が形成されている。
【0038】
前記エンジン後側取付ステー46は、図6及び図7に示すように、前記フライホイールユニット50より上方に位置するように前記エンジンユニット40の後端面から後方へ延びるエンジン後側水平取付面46bを有している。
本実施の形態においては、前記エンジン後側取付ステー46は、前記エンジンユニット40の後端面に連結されるエンジン取付面46aを有しており、前記エンジン後側水平取付面46bは、前記エンジン取付面46aから後方へ略水平に延びている。
前記エンジン後側水平取付面46bには、前記後側防振支持機構70Rの前記第1軸74が挿通可能な取付孔が形成されている。
【0039】
前記エンジンユニット40の後側は、前記エンジンユニット40の前側と同様に、前記後側防振支持機構70Rを前記エンジン後側取付ステー46又は前記エンジンマウントブラケット28の何れか一方に予め装着させた状態で、前記エンジンユニット40を上方から下降させることで、前記車輌フレーム10に組み付けることも可能であるが、この組み付け方法によれば、前記エンジンユニット40を上方から下降させる際に前記一対の前側防振支持機構70F及び前記後側防振支持機構70Rの全てにおいて前記第1軸74又は前記第2軸75を対応する前記取付孔に挿通させる必要があり、前記エンジンユニット40の前記車輌フレーム10への組み付け作業が非常に困難になる。
【0040】
この点に関し、本実施の形態に係る前記作業車輌1においては、前述の通り、前記エンジン後側取付ステー46と共働して前記後側防振支持機構70Rを挟持する前記エンジンマウントブラケット58が、前記一対の車輌フレーム10の間を連結する前記ブリッジフレーム27に対して上方から連結可能とされている。
【0041】
斯かる構成によれば、図9に示すように、前記エンジンユニット40,前記フライホイールユニット50,前記エンジン後側取付ステー46,前記後側防振支持機構70R及び前記エンジンマウントブラケット28を予め組み立ててエンジン側アッセンブリ400を形成し、前記エンジン側アッセンブリ400を前記車輌フレーム10を含むフレーム側アッセンブリ100上に載置させてから前記締結部材によって前記エンジン側アッセンブリ400及び前記フレーム側アッセンブリ100を連結させることができる。
従って、前記エンジンユニット40の前記車輌フレーム10への組み付け作業効率を向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、前記エンジンマウントブラケット28が、前記一対の車輌フレーム10に直接的に載置されるのではなく、前記一対の車輌フレーム10の間を連結する前記ブリッジフレーム27の上面に載置されている。
斯かる構成によれば、前記エンジンユニット40の支持安定化を図ることができる。
【0043】
本実施の形態に係る前記作業車輌1は、さらに下記構成を備えることにより、前記エンジンマウントブラケット28の小型化を図っている。
図10及び図11に、それぞれ、前記エンジンマウントブラケット28近傍の側面図及び平面図を示す。
又、図12に、前記フライホイールユニット50近傍の横断平面図を示す。
【0044】
即ち、前記エンジンユニット40は、図2〜図4及び図10〜図12等に示すように、両側面に前記エンジン前側取付ステー45が連結され且つ後端面に前記エンジン後側取付ステー46が連結されるエンジン本体41と、前記エンジン本体41から後方へ延在された出力軸42と、前記エンジン本体41の後端から径方向外方へ延在された取付フランジ43とを有している。
【0045】
前記フライホイールユニット50は、図6及び図10〜図12等に示すように、前記出力軸42に連結されるフライホイール本体51と、前記フライホイール本体51を囲繞するように前記取付フランジ43の後端面に連結されるフライホイールカバー52とを有している。
【0046】
前記スタータユニット55は、図5,図6及び図9〜図10等に示すように、前記取付フランジ43の前面に取り付けられるスタータ本体56と、前記スタータ本体56から前記取付フランジ43を貫通して後方側へ延在されたスタータ駆動軸(図示せず)と、前記スタータ駆動軸及び前記フライホイール本体51を作動連結するギヤ列(図示せず)とを有している。
【0047】
前記スタータユニット55の前記ギヤ列は前記フライホイールカバー52に収容されている。
即ち、前記フライホイールカバー52は、図6,図9及び図10等に示すように、前記フライホイール本体51を囲繞する背面視略円形のカバー本体52aと、前記ギヤ列を囲繞するように前記カバー本体52aから径方向外方へ膨出された膨出部52bとを一体的に有している。
図7に示すように、前記膨出部52bは、前記フライホイール本体51の回転軸線を通る仮想垂直面VPより車輌幅方向一方側で且つ前記回転軸線を通る仮想水平面HPより上方側に位置している。
【0048】
前記エンジンマウントブラケット28の前記一対の側面281は、図10及び図11に示すように、前記上面283が平面視において前記カバー本体52aとオーバーラップし且つ前記底面282が前記カバー本体52aより後方側に位置するように、側面視において前高後低状に傾斜されており、且つ、前記膨出部52bが車輌前後方向に関し前記取付フランジ43と前記一対の側面281の一方との間から前記一対の側面281の一方より車輌幅方向外方へ延在するように左右離間幅が設定されている。
【0049】
斯かる構成によれば、前記エンジン後側取付ステー46との間に前記後側防振支持機構70Rを挟持し且つ前記フライホイールユニット50をカバーする前記エンジンマウントブラケット28の可及的な小型化を図ることができる。
【0050】
即ち、前記エンジンマウントブラケット28の前記一対の側面部281が側面視において略垂直方向に沿っているとすると、前記膨出部52bを含む前記フライホイールカバー52の全体を覆うように前記エンジンマウントブラケット28を構成する必要があり、前記一対の側面部281の左右離間幅が長くなり、その結果、前記一対のメインフレーム12の左右離間幅も大きくしなければならない。
これに対し、本実施の形態においては、前記エンジンマウントブラケット28の前記一対の側面部281の左右離間幅を可及的に小さくすることができ、これにより、前記一対のメインフレーム12の左右離間幅も可及的に小さくすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 作業車輌
10 車輌フレーム
11 フロントフレーム
11F フレーム側取付ステー
12 メインフレーム
13 スペーサ
27 ブリッジフレーム
28 エンジンマウントブラケット
281 エンジンマウントブラケットの側面
282 エンジンマウントブラケットの底面
283 エンジンマウントブラケットの上面
40 エンジンユニット
41 エンジン本体
42 出力軸
43 取付フランジ
45 エンジン前側取付ステー
46 エンジン後側取付ステー
50 フライホイールユニット
51 フライホイール本体
52 フライホイールカバー
52a カバー本体
52b 膨出部
55 スタータユニット
60 トランスミッション
70F 前側防振支持機構
70R 後側防振支持機構
VP 仮想垂直面
HP 仮想水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面が略垂直に沿った状態で互いに対向するように車輌前後方向に延びる左右一対の車輌フレームと、前記一対の車輌フレームに支持されるエンジンユニットと、前記エンジンユニットを前記車輌フレームに防振支持させる為の防振支持機構であって、前記エンジンユニットの左右両側に配設された少なくとも左右一対の前側防振支持機構及び前記エンジユニットの後側に配設された少なくとも一つの後側防振支持機構を含む防振支持機構と、前記エンジンユニットの後端面に連結されるフライホイールユニットと、前記エンジンユニットを始動させる為のスタータユニットと、前記フライホイールユニットから後方へ離間配置された位置で前記左右一対の車輌フレームの後端側に連結され、前記エンジンユニットから前記フライホイールユニットを介して作動的に回転動力を入力するトランスミッションと、前記エンジンユニットの左右側面にそれぞれ連結された左右一対のエンジン前側取付ステーと、前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記エンジンユニットの後端面に連結されたエンジン後側取付ステーと、前記一対の車輌フレームにそれぞれ固着された左右一対のフレーム側取付ステーと、上面が前記フライホイールユニットより上方に位置するように前記一対の車輌フレームに直接又は間接的に連結されるエンジンマウントブラケットとを備え、前記一対の前側防振支持機構が前記一対のエンジン前側取付ステーと前記一対のフレーム側取付ステーとの間に介挿され、且つ、前記後側防振支持機構が前記エンジン後側取付ステーと前記エンジンマウントブラケットの上面との間に介挿されている作業車輌であって、
前記フライホイールユニットより後方側において前記一対の車輌フレームの間を連結するブリッジフレームを備え、
前記エンジンマウントブラケットは、左右一対の側面と、前記一対の側面の下端から車輌幅方向外方へ略水平に延び、前記ブリッジフレームの左右両端側の上面に連結される左右一対の底面と、前記一対の側面の上端同士を連結するように略水平に延びる前記上面とを有し、
前記エンジンユニットは、エンジン本体と、前記エンジン本体から後方へ延在された出力軸と、前記エンジン本体の後端から径方向外方へ延在された取付フランジとを有し、
前記フライホイールユニットは、前記出力軸に連結されるフライホイール本体と、前記フライホイール本体を囲繞するように前記取付フランジの後端面に連結されるフライホイールカバーとを有し、
前記スタータユニットは、前記取付フランジの前面に取り付けられるスタータ本体と、前記スタータ本体から前記取付フランジを貫通して後方側へ延在されたスタータ駆動軸と、前記スタータ駆動軸及び前記フライホイール本体を作動連結するギヤ列とを有し、
前記フライホイールカバーは、前記フライホイール本体を囲繞するカバー本体と、前記ギヤ列を囲繞するように前記カバー本体から径方向外方へ膨出された膨出部とを一体的に有しており、
前記エンジンマウントブラケットの前記一対の側面は、前記上面が平面視において前記カバー本体とオーバーラップし且つ前記底面が前記カバー本体より後方側に位置するように、側面視において前高後低状に傾斜されており、
前記膨出部は、車輌前後方向に関し前記取付フランジと前記一対の側面の一方との間から前記一対の側面の一方より車輌幅方向外方へ延在されていることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記一対の車輌フレームは、前記一対のフレーム側取付ステーがそれぞれ固着される左右一対のフロントフレームと、前端側が前記一対のフロントフレームの後端側にそれぞれ直接又は間接的に連結され且つ後端側が前記トランスミッションのミッションケースの両側面にそれぞれ直接又は間接的に連結される左右一対のメインフレームであって、前記ブリッジフレームが連結される左右一対のメインフレームとを含み、
前記一対のメインフレームは、前端側の内表面がスペーサを介して対応する前記フロントフレームの後端側の外表面に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−173603(P2010−173603A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21473(P2009−21473)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】