説明

作業車

【課題】 機体に立設したフレームの上部に、運転席の上方に位置するルーフを設けた作業車において、機体振動によるルーフの振動を防止すべく補強部材を設けて該補強部材にルーフを固定すると共に、該補強部材とルーフとが機体振動によって接触することによる接触音の発生を防止する。
【解決手段】 ルーフ20の下面側の前後方向中途部において該ルーフ20を左右方向に横切るように配置された補強部材33をフレーム19に設け、この補強部材33とルーフ20下面との間に隙間44を形成するための介在部43を補強部材33とルーフ20との間に設け、この介在部43を介してルーフ20が補強部材33に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャノピやキャビン等を備えていて、運転席の上方に位置するルーフを備えた作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャノピを備えた作業車としてバックホーがあり、前記キャノピは、機体に立設されたフレームの上部に、運転席の上方に位置するルーフを備えている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−64721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記キャノピのルーフを金属製の薄板材によって形成すると、機体の振動によりルーフが振動して(ばたついて)振動音が発生するという問題がある。
そこで、ルーフの下面側の前後方向中途部に、該ルーフを左右方向に横切るように配置された補強部材を、該ルーフを支持するフレームに設け、この補強部材にルーフの下面を接当させて該ルーフを補強部材に溶接固定することにより該ルーフを補強し、該ルーフの振動を防止することが考えられている。
しかしながら、補強部材に対するルーフの溶接部位が長いと、溶接ひずみによって、ルーフに波状のうねりができ、ルーフの外観を損ねるという問題が生じる。
【0004】
したがって、溶接部位はできるだけ短い方がよいが、溶接部位を短くすると、溶接ひずみによって、ルーフと補強部材との間の溶接部位以外の部分に微小すきまが生じ、機体の振動によってルーフと補強部材とが接触することによるびびり音(接触音)が発生するという新たな問題が生じる。
そこで、本発明は、機体振動によるルーフの振動を防止すべく補強部材を設けて該補強部材にルーフを固定すると共に、該補強部材とルーフとが機体振動によって接触することによる接触音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、機体に立設したフレームの上部に、運転席の上方に位置するルーフを設けた作業車において、
ルーフの下面側の前後方向中途部において該ルーフを左右方向に横切るように配置された補強部材をフレームに設け、この補強部材とルーフの下面との間に隙間を形成するための介在部を補強部材とルーフとの間に設け、この介在部を介してルーフが補強部材に固定されていることを特徴とする。
前記介在部は、ルーフ自体を上方側から下方側に凹ませることによりルーフの下面から下方に突出するように該ルーフに一体形成され、この介在部を補強部材に溶接固定しているのがよい。
【0006】
また、前記介在部は、ルーフとは別体で形成されていて、ルーフ下面及び補強部材上面側に溶接固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補強部材にルーフを固定することにより、ルーフの振動を防止できると共に、補強部材とルーフの間に介在部を設けてこれらの間に積極的に隙間を設けることにより、ルーフ下面と補強部材とが接触することによる接触音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図3において、1は作業車として例示するバックホーであり、該バックホー1は、下部の走行装置2と、該走行装置2上に上下軸回りに左右旋回自在に設けられた機体(旋回体)3と、該機体3の前部に備えられた作業装置4と、キャノピ(日よけ装置)5とを備えている。
走行装置2は、前後一側のスプロケット6と、他側のアイドラ7と、これらスプロケット6とアイドラ7との間に配置された転輪8とに亘って無端帯状の弾性クローラ9を巻き掛けると共に、該弾性クローラ9を周方向に循環回走して走行可能としたクローラ式走行装置2によって構成されている。
【0009】
機体3は、走行装置2上に上下方向の旋回軸回りに回動自在に支持された旋回台10に、エンジン、ラジエータ、燃料タンク、運転席11等を搭載してなり、運転席11は、旋回台10の後部側の左右方向中途部に位置している。
作業装置4は、旋回台10の前部に上下軸回りに左右揺動自在に設けたスイングブラケット12に、左右軸回りに回動自在に枢支連結されたブーム13と、該ブーム13に左右軸回りに回動自在に枢支連結されたアーム14と、該アーム14に左右軸回りに回動自在に枢支連結されたバケット15とを備え、これらブーム13、アーム14、バケット15を油圧シリンダからなるブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18によって揺動動作可能としている。
【0010】
キャノピ5は、図1〜図7に示すように、機体3に立設されたロプスの機能を有する4柱式のフレーム19と、このフレーム19の上部に設けられたルーフ20とから構成され、ルーフ20は運転席11の上方に位置している。
フレーム19は、パイプ材から構成されていて、運転席11の前方側に位置する左右一対の前支柱部21と、運転席11の後方側に位置する左右一対の後支柱部22と、左右方向で同じ側にある前支柱部21と後支柱部22の上端側同志を連結する左右の側枠部23とを有する。
【0011】
左右各前支柱部21の下端には取付部材24が固定され、この取付部材24を介して前支柱部21が旋回台10上に取付固定されている。
左右後支柱部22は下端部同志が連結部25によって相互に連結され、該連結部25には取付部材26が固定され、この取付部材26は旋回台10に立設された支持フレームに付固定され、該支持フレームはボンネット27内に配置されている。
また、左右前支柱部21の下部側は前下枠材28によって相互に連結されており、左右後支柱部22の下部側は、後下枠材29によって相互に連結されている。
【0012】
左右の各側枠部23は前後方向中途部(中央側)で前後に分割されており、これら前後の構成部23a,23bに内嵌固定された連結部材30によって、側枠部23の前後の構成部23a,23bが相互に連結されている。
左右側枠部23の前部は前上枠材31によって相互に連結され、左右側枠部23の後部は後上枠材32によって相互に連結されており、この後上枠材32は後方側に突出するように屈曲されている。
また、左右の側枠部23(の後側の構成部23b)は、該左右の側枠部23間の前後方向中途部(中央側)に左右方向に配置されたパイプ材からなる補強部材33によって連結されている。
【0013】
ルーフ20は、金属製の薄板材から形成され、天板部34と、この天板部34の側縁部の前後部から下方側に延設された前後の側壁部35,36と、天板部34の前後縁から下方側に延設された前後の壁部37,38とを有する。
このルーフ20の天板部34は、フレーム19の左右の側枠部23間に配置され、その前後方向中途部の左右縁部は、該天板部34の下面とフレーム19の補強部材との間に隙間44が形成されるように、側枠部23の左右方向内側面上部に溶接等によって固着されている。
【0014】
このルーフ20の天板部34の前部は、フレーム19の左右側枠部23間から前方に突出しており、天板部34の後部は、フレーム19の左右側枠部23間から後方に突出している。
このルーフ20の前側の側壁部35の後縁部はフレーム19の側枠部23の前部に溶接等によって固着され、後側の側壁部36の前縁部はフレーム19の側枠部23の後部に溶接等によって固着されている。
また、天板部34と後壁部38とのコーナー部分の左右方向中央側が後上枠材32に溶接等によって固着されている。
【0015】
天板部34の前部には、天板部34自体を下方側から上方に向けて凹ませることにより上方に突出する突出部39が左右方向に延びるように形成されており、天板部34の前後方向中途部の左右両側及び後部には、天板部34自体を上方側から下方に向けて凹ませることにより下方に突出する樋溝40、41が形成され、左右両側の樋溝40は前後方向直線状に形成され、後部側の樋溝41は後方に向けて突出する円弧状(湾曲状)に形成されていて、天板部34上の雨水等の水が、左右側部の樋溝40の前端部と突出部39の左右両端部との間から下方側に排水されるように構成されている。
【0016】
また、天板部34の前後方向中途部には、上方から見て補強部材33を前後方向に横切るように前後方向に延びる補強部42が形成され、この補強部42は、天板部34の剛性をアップさせるべく、天板部34自体を下方側から上方に向けて凹ませることにより、上方突出状に形成されており、本実施の形態では、左右方向に間隔をおいて3つ形成されている。
また、天板部34の前後方向中途部の、フレーム19の補強部材33対応位置(補強部材33上方位置)には、天板部34自体を上方から下方側に凹ませることにより該天板部34下面から下方に突出するように該ルーフ20に一体形成されていて、天板部34の下面と補強部材33との間に介在する介在部43が設けられている。
【0017】
この介在部43は、その下面がフレーム19の補強部材33に接当することにより、天板部34と補強部材33との間の隙間44を保持しており、この隙間44は、機体3の振動によってルーフ20の天板部34とフレーム19の補強部材33とが接触しない程度の間隔とされている。
また、介在部43の底壁43aは、パイプ材からなる補強部材33に面接触するように側面視円弧状に形成されており、該介在部43の底壁43aの前後部が補強部材33に左右方向に亘って溶接固定されており、これによって機体3の振動によってルーフ20の天板部34が振動するのを防止している(図1、図2においてC部は溶接ビードを示す)。
【0018】
なお、介在部43は1つでもよいが、本実施の形態では、左右方向に間隔をおいて複数個(図例では4つ)形成されている。また、介在部43は、図例では、天板部34の補強部42間に1つづつ、左右の各補強部42の左右方向外方側にそれぞれ1つ形成されている。
また、介在部43はルーフ20に一体形成されてなくてもよく、図8に示すように、別体で形成して、天板部34下面に溶接固定してもよい。
また、ルーフ20とは別体で形成された介在部43をフレーム19の補強部材33に先に溶接固定しておいて、フレーム19にルーフ20を取り付ける際にこの介在部43に天板部34を溶接固定するようにしてもよい。
【0019】
本実施の形態では、フレーム19の補強部材33とルーフ20の天板部34下面との間に隙間44を形成するための介在部43を天板部34自体を凹ませることにより形成し、この介在部43を補強部材33に溶接していることにより、天板部34に溶接ひずみが生じるのを防止(抑制)することができ、ルーフ20の外観品質を向上することができる。
また、介在部43も天板部34を補強する働きがある。
本発明は、キャノピ5以外にキャビンのルーフ20の振動を抑えるのに採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)はキャノピのルーフ取付部分の側面断面図、(b)はA部の拡大図である。
【図2】(a)はルーフの補強部分の正面断面図、(b)はB部の拡大図である。
【図3】バックホーの側面図である。
【図4】キャノピの側面図である。
【図5】キャノピの平面図である。
【図6】キャノピの前部側の正面図である。
【図7】キャノピの後部側の背面図である。
【図8】他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
2 走行装置
3 機体
11 運転席
19 フレーム
20 ルーフ
33 補強部材
38 隙間
43 介在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(3)に立設したフレーム(19)の上部に、運転席(11)の上方に位置するルーフ(20)を設けた作業車において、
ルーフ(20)の下面側の前後方向中途部において該ルーフ(20)を左右方向に横切るように配置された補強部材(33)をフレーム(19)に設け、この補強部材(33)とルーフ(20)の下面との間に隙間(38)を形成するための介在部(43)を補強部材(33)とルーフ(20)との間に設け、この介在部(43)を介してルーフ(20)が補強部材(33)に固定されていることを特徴とする作業車。
【請求項2】
介在部(43)は、ルーフ(20)自体を上方側から下方側に凹ませることによりルーフ(20)の下面から下方に突出するように該ルーフ(20)に一体形成され、この介在部(43)を補強部材(33)に溶接固定していることを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
介在部(43)は、ルーフ(20)とは別体で形成されていて、ルーフ(20)下面及び補強部材(33)上面側に溶接固定されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−82785(P2006−82785A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272106(P2004−272106)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】