説明

作業車

【課題】 横エンジンボンネット、前エンジンボンネットを脱着自在に備え、上エンジンボンネットを上下揺動開閉自在に備えた作業車において、横エンジンボンネット及び前エンジンボンネットを強固に取付けることができながら、軽く脱着できるようにする。
【解決手段】 前エンジンボンネット12の上端側を、係合突起82と係合凹部の係合によってボンネット支持体25に連結する前ボンネット上用係合手段80を設け、横エンジンボンネット11の前端側上部を、係合突起62と係合凹部の係合によってボンネット支持体25に連結する横ボンネット前上用係合手段60を設けてある。上エンジンボンネット13の下降閉じ状態において、係合突起82と係合凹部を係合操作し、係合突起62と係合凹部を係合操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横エンジンボンネットと前エンジンボンネットを各別に脱着自在に備え、上エンジンボンネットをこの上エンジンボンネットの後端側に位置する支点まわりで上下揺動開閉自在に備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
すなわち、特許文献1に示されるものでは、横エンジンボンネットとしてのサイドカバー28、前エンジンボンネットとしてのフロントカバー29、上エンジンボンネットとしてのボンネット27を備えている。
【0003】
この種の作業車において、従来、横エンジンボンネットや前エンジンボンネットの取付け構造として、特許文献1に示されるものを開発した。
すなわち、サイドカバー28の前端側上部に係合突起49を設け、車体側のアーチ型フレーム20のサイド部20cに、孔58及びバネ材59を備えたキャッチャー50を設け、係合突起49がバネ材59の両脚部59bの間隔を押し広げながら孔58に入り込み、所定ストローク入り込むと、バネ材59の両脚部59bが弾性復元力によって係合突起49のくびれ部に入り込んで係合突起49が挟持され、これによってサイドカバー28の前端側上部が脱着自在に支持されるようにサイドカバー取付け構造を構成した。
また、フロントカバー29の上端側に係合突起56を設け、車体側のアーチ型フレーム20の主体部20aに、孔58及びバネ材59を備えたキャッチャー57を設け、係合突起56がバネ材59の両脚部59bの間隔を押し広げながら孔58に入り込み、所定ストローク入り込むと、バネ材59の両脚部59bが弾性復元力によって係合突起56のくびれ部に入り込んで係合突起59が挟持され、これによってフロントカバー29の上端側が脱着自在に支持されるようにフロントカバー取付け構造を構成した。
【0004】
【特許文献1】特開平8−72746号公報(段落〔0027〕,〔0028〕,〔0037〕−〔0051〕、図2、10−12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術を採用した場合、横エンジンボンネットや前エンジンボンネットが走行振動などで簡単に外れないように強固に支持されるようにすれば、係止突起が強力に挟持されるようにする必要があり、係止突起を強い挟持力に抗して抜き外すことによってエンジンボンネットを取り外さねばならず、取り外し操作が重くなりがちであった。また、係止突起を強い挟持力に抗して挿入操作することによってエンジンボンネットを取付けねばならず、装着操作も重くなりがちであった。
【0006】
本発明の目的は、横エンジンボンネットや横エンジンボンネットを強固に支持されるように取付けることができるものでありながら、軽く脱着することが可能となる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明にあっては、横エンジンボンネットと前エンジンボンネットを各別に脱着自在に備え、上エンジンボンネットをこの上エンジンボンネットの後端側に位置する支点まわりで上下揺動開閉自在に備えた作業車において、
前記横エンジンボンネットの前端側上部と、ボンネット支持体との間に、車体上下方向に係脱操作自在な係合突起と係合凹部を備えて成り、かつ、前記係合突起と前記係合凹部の係合によって横エンジンボンネットの水平方向での位置決めを行う横ボンネット係合手段を設け、
前記前エンジンボンネットの上端側と、ボンネット支持体との間に、車体上下方向に係脱操作自在な係合突起と係合凹部を備えて成り、かつ、前記係合突起と前記係合凹部の係合によって前エンジンボンネットの水平方向での位置決めを行う前ボンネット係合手段を設け、
前記上エンジンボンネットに、前記横ボンネット係合手段に対する横ボンネット押圧部、及び、前記前ボンネット係合手段に対する前ボンネット押圧部を設け、
前記上エンジンボンネットの下降閉じ状態において、前記横ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部を係合状態に操作するように横ボンネット係合手段に押圧作用し、前記前ボンネット押圧部が前ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部を係合状態に操作するように前ボンネット係合手段に押圧作用し、前記上エンジンボンネットの上昇開き状態において、前記横ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部の離脱を許容するように横ボンネット係合手段に対する押圧作用を解除し、前記前ボンネット押圧部が前ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部の離脱を許容するように前ボンネット係合手段に対する押圧作用を解除するように構成してある。
【0008】
すなわち、上エンジンボンネットを閉じると、この上ボンネットの前ボンネット押圧部が前ボンネット係合手段に押圧作用して前ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部が係合状態に操作され、前ボンネット押圧部による押圧作用によって係合突起と係合凹部の離脱が防止され、係合突起と係合凹部の係合によって前エンジンボンネットの水平方向での位置決めが行われる。これとともに、上ボンネットの横ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段に押圧作用して横ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部が係合状態に操作され、横ボンネット押圧部による押圧作用によって係合突起と係合凹部の離脱が防止され、係合突起と係合凹部の係合によって横エンジンボンネットの水平方向での位置決めが行われる。
そして、上エンジンボンネットを開くと、前ボンネット押圧部が前ボンネット係合手段に対する押圧作用を解除して、前ボンネット係合手段における係合突起と係合凹部の係合を解除操作することができ、かつ、横ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段に対する押圧作用を解除して、横ボンネット係合手段における係合突起と係合凹部の係合を解除操作することができる。
これにより、前ボンネット係合手段も横ボンネット係合手段も、上エンジンボンネットを開ければ、係合突起と係合凹部の係脱操作が軽く行えるものにしても、上エンジンボンネットを閉じておけば、前エンジンボンネットの前ボンネット係合手段による取付けが前ボンネット押圧部による押圧のために強固に行われ、横エンジンボンネットの横ボンネット係合手段による取付けが横ボンネット押圧部による押圧のために強固に行われるようになる。
【0009】
従って、本第1発明によると、前エンジンボンネットも横エンジンボンネットも、上エンジンボンネットを閉じておくことによって強固に支持させておくことができるものでありながら、前エンジンボンネット及び横エンジンボンネットを脱着する際、上エンジンボンネットを開けて前ボンネット押圧部及び横ボンネット押圧部の押圧作用を解除することにより、前ボンネット係合手段及び横ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部の係脱操作を軽く行って楽に脱着することができる。
【0010】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記上エンジンボンネットの前記横ボンネット押圧部及び前ボンネット押圧部を、弾性体によって構成してある。
【0011】
すなわち、横ボンネット押圧部及び前ボンネット押圧部が、上エンジンボンネットの閉じ力によって弾性変形し、横ボンネット係合手段や前ボンネット係合手段に対する押圧作用を弾性復元力によって確実に発揮するようにできる。また、ボンネットなどの製作誤差や歪に起因して前ボンネット係合手段や横ボンネット係合手段に上エンジンボンネットとの位置ずれなどが発生しても、押圧部の弾性変形によって吸収されて、横ボンネット押圧部や前ボンネット押圧部による横ボンネット係合手段や前ボンネット係合手段に対する押圧作用が確実に発揮されるようにすることができる。
【0012】
従って、本第2発明によると、製作誤差や歪の有無にかかわらず、横ボンネット押圧部や前ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段や前ボンネット係合手段に対して確実に押圧作用し、横エンジンボンネットや前エンジンボンネットの取付けが一層強固に行われるようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1、左右一対の駆動自在な後車輪2、車体前端部に設けたエンジン3が装備された原動部、車体後端部に設けた運転座席4が装備された運転部、運転座席4の後側近くに設けた転倒保護枠5を備えた自走車体の車体フレームの後部を構成しているミッションケース6の上部に、左右一対のリフトアーム7をミッションケース内に位置する油圧シリンダ(図示せず)によって上下に揺動操作されるように設け、前記ミッションケース6の下部に動力取り出し軸8を設けて、トラクタを構成してある。
【0014】
このトラクタは、車体フレームの後部にロータリ耕耘装置を前記リフトアーム7を利用したリンク機構によって昇降操作するように連結するとともに、エンジン3の駆動力を動力取り出し軸8からロータリ耕耘装置に伝達するように構成して、乗用型の耕耘機を構成するなど、各種の作業装置を昇降操作及び駆動自在に連結して各種の乗用型作業機を構成するものである。
【0015】
図1に示すように、原動部に、エンジンルームを形成するエンジンボンネット10を設けてある。図2,4などに示すように、このエンジンボンネット10は、エンジンルームの左右の横壁を形成する板金製の横エンジンボンネット11、エンジンルームの前壁を形成する一つの樹脂製の前エンジンボンネット12、エンジンルームの上壁を形成する一つの板金製の上エンジンボンネット13を備えて構成してある。前エンジンボンネット12に、エンジン冷却風が除塵板を介してエンジンルームに吸引される吸気口14、前エンジンボンネット12の下部の両横角部に配置した横作業灯15(図1参照)を設けてある。図18に示すように、各横作業灯15は、前エンジンボンネット12を構成する樹脂素材を成形する際に成形した樹脂製のリフレクタ15a、このリフレクタ15aの奥側に支持されたバルブ15b、前エンジンボンネット12に装着したレンズ15cを備えて構成してある。図1に示すように、上エンジンボンネット13の前端部に左右一対の前照灯16を設けてある。
【0016】
図3などに示すように、上エンジンボンネット13の後端側が、車体フレームに立設された車体前後方向視で門形の支持フレーム20の上部にヒンジ具21を介して支持されており、上エンジンボンネット13は、この上エンジンボンネット13の後端側に位置した前記ヒンジ具21の軸芯21aを支点にして上下に揺動操作されることにより、図2の如く上エンジンボンネット13の周縁が各横エンジンボンネット11及び前エンジンボンネット12の上端に沿うまで下降してエンジンルームを閉じた下降閉じ状態と、図1に二点鎖線で示す如くこの下降閉じ状態から上昇してエンジンルームを開放した上昇開き状態とに開閉する。
【0017】
図4,5に示すように、上エンジンボンネット13の前端側の内部に設けた閉じフック31、車体フレームを構成しているエンジン搭載フレーム23に立設された支持枠24の上端側に位置するボンネット支持体25の車体横方向での中心部に固設したロックピン32などを備えさせて、上エンジンボンネット13の閉じロック機構30を構成してある。
【0018】
前記閉じフック31は、上エンジンボンネット13の内部に架設された支持フレーム26に連結ピン33を介して揺動自在に支持されており、かつ、閉じフック31に連動しているロック解除ロッド34に連結された閉じばね35によってロック状態に揺動付勢されている。上エンジンボンネット13が下降操作されて下降閉じ状態に近づいていくと、前記支持フレーム26に設けてあるガイド片36が切欠き37によってロックピン32に外嵌していき、これに伴いロックピン32が閉じフック31の傾斜部に当接して閉じフック31を閉じばね35に抗して押し揺動操作しながら切欠き37の奥側に入っていき、上エンジンボンネット13が下降閉じ状態になると、ロックピン32が閉じフック31のくびれ部に対応して、閉じフック31が閉じバネ35のためにロックピン32に係合したロック状態に揺動操作された状態になり、閉じロック機構30は、閉じフック31とロックピン32の係合により、上エンジンボンネット13を下降閉じ状態に固定するようにロック状態になる。この状態において、前記ロック解除ロッド34の上エンジンボンネット13から外部に突出している端部に連結しているロック解除具38によってロック解除ロッド34を閉じばね35に抗して回動操作することにより、ロック解除ロッド34の閉じフック31に係合しているアーム部が閉じフック31を閉じばね35に抗して揺動操作してロックピン32から外し操作し、上エンジンボンネット13の閉じロック機構30による閉じロックを解除することができる。
【0019】
図2などに示すように、左右の横エンジンボンネット11は、この横エンジンボンネット11の後端側と前記支持フレーム20との間に設けた上下一対の横ボンネット後用係合手段40、横エンジンボンネット11の前端側下部と前記エンジン搭載フレーム23との間に設けた横ボンネット前下用係合手段50、横エンジンボンネット11の前端側上部と前記支持枠24との間に設けた横ボンネット前上用係合手段60のそれぞれによって脱着自在に取付けられるようになっている。
【0020】
図2,6,7に示すように、前記各横ボンネット後用係合手段40は、横エンジンボンネット11の後端側に位置する折り曲げ辺部11aに車体前後向きの貫通孔を設けるとともにこの貫通孔にクッション用のゴムリング41を装着することによって横エンジンボンネット11の後端側に設けた車体前後向きの係合凹部42と、前記支持フレーム20の車体上下向き部分に、この部分から車体前方向きに突出した連結ピンを付設して設けた車体前後向きの係合突起43とを備えて構成してある。
【0021】
すなわち、横エンジンボンネット11が支持フレーム20に車体前方側から寄せ操作されて係合突起43が係合凹部42に入り込むことにより、係合突起43と係合凹部42は、横エンジンボンネット11の後端側の車体上下方向及び車体横方向での位置決めを行うように係合状態になり、横エンジンボンネット11の後端側が横ボンネット後用係合手段40によって支持フレーム20に連結される。横エンジンボンネット11が支持フレーム20から車体前方側に離し操作されて係合凹部42が係合突起43から外れることにより、係合突起43と係合凹部42は係合解除状態になり、横エンジンボンネット11の後端側の横ボンネット後用係合手段40による支持フレーム20への連結が解除される。
【0022】
図2,4,8に示すように、前記横ボンネット前下用係合手段50は、横エンジンボンネット11の下端側の折り曲げ辺部11bから連結ピンを車体下方向きに突出させることによって、横エンジンボンネット11の前端側下部に設けた車体上下向きの係合突起51と、エンジン搭載フレーム23の外側面に連結した支持片52に車体上下向きの貫通孔を設けることによって、エンジン搭載フレーム23に設けた車体上下向きの係合凹部53を備えさせて構成してある。
【0023】
すなわち、横エンジンボンネット11の前端側が支持片52に車体上方側から寄せ操作されて係合突起51が係合凹部53に入り込むことにより、係合突起51と係合凹部53は、横エンジンボンネット11の前端側下部の車体前後方向及び車体横方向での位置決めを行うように係合状態になり、横エンジンボンネット11の前端側下部が横ボンネット前下用係合手段50によってエンジン搭載フレーム23に連結される。横エンジンボンネット11の前端側が支持片52から車体上方側に離し操作されて係合突起51が係合凹部53から抜け外れることにより、係合突起51と係合凹部53は係合解除状態になり、横エンジンボンネット11の前端側下部の横ボンネット前下用係止手段50によるエンジン搭載フレーム23への連結が解除される。
【0024】
図2,4,9−12に示すように、前記横ボンネット前上用係合手段60は、横エンジボンネット11の前端側上部の内面側から延出された取付けアーム61の延出端部に車体下方向きの折り曲げ片を設けることによって、横エンジンボンネット11の前端側上部に設けた車体上下向きの係合突起62と、前記支持枠24の前記ボンネット支持体25の端部に貫通孔を設けて備えさせた車体上下向きの係合凹部63とを備えさせて構成してある。
【0025】
すなわち、図9(イ)に示す如く取付けアーム61がボンネット支持体25に車体上方側から寄せ操作されて係合突起62が係合凹部63に車体上方側から係入されることにより、係合突起62と係合凹部63は、横エンジンボンネット11の前端側上部の水平方向での位置決めを行うように係合状態になり、横エンジンボンネット11の前端側上部が横ボンネット前上用係合手段60によってボンネット支持体25に連結される。図9(ロ)に示す如く取付けアーム61をボンネット支持体25から車体上方側に離し操作されて係合突起62が係合凹部63から車体上方側に抜き外されることにより、係合突起62と係合凹部63は係合解除状態になり、横エンジンボンネット11の前端側上部の横ボンネット前上用係合手段60によるボンネット支持体25への連結が解除される。
【0026】
図2に示すように、前エンジンボンネット12は、この前エンジンボンネット12の下端部と前記エンジン搭載フレーム23の間に設けた左右一対の前ボンネット下用係合手段70、前エンジンボンネット12の上端側と前記ボンネット支持体25の間に設けた左右一対の前ボンネット上用係合手段80のそれぞれによって脱着自在に取付けられるようになっている。
【0027】
図2,14,15に示すように、前記各前ボンネット下用係合手段70は、前エンジンボンネット12を成形する際に前エンジンボンネット12の前端側下部の横一端側に一体成形した係合突起71と、エンジン搭載フレーム23に切欠きを設けて備えさせた係合凹部72とを備えさせて構成してある。
【0028】
図14,15に示すように、係合突起71は、前エンジンボンネット12から突出した左右一対の支持片71aと、両支持片71aの端部どうしにわたって連結された横断面小判形の連結軸71bとを備えたヒンジ形に構成してあり、係合突起71の連結軸71bが係合凹部72に車体上方側から挿入されることにより、係合突起71と係合凹部72は、エンジン搭載フレーム23の切欠き内面と連結軸71bとの当たりによって前エンジンボンネット12の下部の車体前後方向での位置決めを行い、エンジン搭載フレーム23の側面と支持片71aとの当たりによって前エンジンボンネット下部の車体横方向での位置決めを行うように係合状態になり、前エンジンボンネット12の下部が前ボンネット下用係合手段70によってエンジン搭載フレーム23に連結される。係合突起71の連結軸71bが係合凹部72から車体上方側に抜き外されることにより、係合突起71と係合凹部72は係合解除状態になり、前エンジンボンネット下部の前ボンネット下用係合手段70によるエンジン搭載フレーム23への連結が解除される。
【0029】
図2,4,9−12に示すように、前記各前ボンネット上用係合手段80は、前エンジンボンネット12の上部の内面側に連結された取付け板81に車体下方向きの突起を設けることによって、前エンジンボンネット12の上端側に設けた車体上下向きの係合突起82と、前記支持枠24のボンネット支持体25の端部に連結された支持片83に貫通孔を設けることによって、ボンネット支持体25に設けた車体上下向きの係合凹部84とを備えさせて構成してある。
【0030】
すなわち、図9(イ)の如く取付け板81が支持片83に車体上方側から寄せ操作されて係合突起82が係合凹部84に係入されることにより、係合突起82と係合凹部84は、前エンジンボンネット12の上端側を水平方向に位置決めするように係合状態になり、前エンジンボンネット12の上端側が前ボンネット上用係合手段80によってボンネット支持体25に連結される。図9(ロ)の如く取り付け板81が支持片83から車体上方側に離し操作されて係合突起82が係合凹部84から抜け外れることにより、係合突起82と係合凹部84は係合解除状態になり、前エンジンボンネット12の上端側の前ボンネット上用係合手段80によるボンネット支持体25への連結が解除される。
【0031】
図2,4,9に示すように、上エンジンボンネット13が有する前記支持フレーム26の両端側に、前後一対の突部を備えたゴムブロック90を支持させ、左右のゴムブロック90の前側の突部により、前記左側の前ボンネット上用係合手段80と、前記右側の前ボンネット上用係合手段80とに各別に作用するように上エンジンボンネット13に設けた左右一対の前ボンネット押圧部91を構成し、左右のゴムブロック90の後側の突部により、左側の横エンジンボンネット12のための前記横ボンネット前上用係合手段60と、右側の横エンジンボンネット12のための前記横ボンネット前上用係合手段60とに各別に作用するように上エンジンボンネット13に設けた左右一対の横ボンネット押圧部92を構成してある。
【0032】
図9,13などに示すように、前記各ゴムブロック90は、ゴムブロック90の前記横ボンネット押圧部92の背後側に設けた一つの取付け突起93を前記支持フレーム26の支持孔26aに装着することによって支持フレーム26に取付けてある。支持フレーム26の前記支持孔26a、及び、ゴムブロック90の取付け突起93の前記支持孔26a内に嵌着する部分93aを、支持孔26aの軸芯に沿う方向視で矩形に形成してあり、各ゴムブロック90は、一つの取付け突起93で支持フレーム26に支持されるものでありながら、前ボンネット押圧部91が前ボンネット上用係合手段80に、横ボンネット押圧部92が横ボンネット前上用係合手段60にそれぞれ対応するように支持孔26a及び取付け突起部分93aの矩形によって回り止めされた状態で支持されている。
【0033】
図3、図9(ロ)に上エンジンボンネット13が下降閉じ状態に操作された状態での前記前ボンネット押圧部91及び前記横ボンネット押圧部92の状態を示し、図2、図9(イ)に上エンジンボンネット13が上昇開き状態に操作された状態での前記前ボンネット押圧部91及び前記横ボンネット押圧部92の状態を示すように、上エンジンボンネット13が閉じ操作されると、各前ボンネット押圧部91は、左右の前ボンネット上用係合手段80のうちの対応する方の前ボンネット上用係合手段80における取付け板81の上面側に当接することでこの前ボンネット上用係合手段80に押圧作用して、この前ボンネット上用係合手段80の係合突起82と係合凹部84を係合状態に操作し、各横ボンネット押圧部92は、左右の横エンジンボンネット11のうちの対応する方の横エンジンボンネット11のための横ボンネット前上用係合手段60における取付けアーム61の上面側に当接することでこの横ボンネット前上用係合手段60に押圧作用して、この横ボンネット前上用係合手段60の係合突起62と係合凹部63を係合操作するように構成してある。このとき、各前ボンネット押圧部91及び各横ボンネット押圧部92は、閉じロック機構30による上エンジンボンネット13の締め付け力のために弾性変形されて弾性復元力を発揮し、係合突起62と係合凹部63の間、係合突起82と係合凹部84の間にガタ付きが発生しにくいように係合突起62,82、と係合凹部63,84を押し付け操作する。
【0034】
上エンジンボンネット13が開き操作されると、各前ボンネット押圧部91は、前エンジンボンネット12の取付け板81から上方に離れて前ボンネット上用係合手段80に対する押圧作用を解除し、この前ボンネット上用係合手段80の係合突起82と係合凹部84が離脱操作されることを許容し、各横ボンネット押圧部92は、横エンジンボンネット11の取付けアーム61から上方に離れて横ボンネット前上用係合手段60に対する押圧作用を解除し、この横ボンネット前用係合手段60の係合突起62と係合凹部63が離脱操作されることを許容する。
【0035】
つまり、エンジン3を点検するなどの際、前エンジンボンネット12や左右の横エンジンボンネット11を次の要領で脱着することができるようになっている。
【0036】
すなわち、ロック解除具38を回動操作して閉じフック31を閉じばね35に抗して揺動操作し、閉じフック31がロックピン32から外れて閉じロック機構30による上エンジンボンネット13の閉じロックが解除されると、上エンジンボンネット13を軸芯21aまわりで上昇揺動操作する。図1に二点鎖線で示すように、上エンジンボンネット13が上昇開き状態になると、上エンジンボンネット13の内部に一端側が連結されている突っ張り杆95を使用して、上エンジンボンネット13を上昇開き状態に突っ張り杆95によって支持させる。これにより、上エンジンボンネット13の前ボンネット押圧部91が前ボンネット上用係合手段80に対する押圧作用を解除するとともにこの解除状態が維持された状態になると、前エンジンボンネット12の左右の取付け板81を支持片83から車体上方側に離れるように操作して、左右の前ボンネット上用係合手段80における係合突起82と係合凹部84を離脱操作する。すると、前エンジンボンネット12の上端側の左右の前ボンネット上用係合手段80によるボンネット支持体25に対する連結が解除される。この後、前エンジンボンネット12を左右の前ボンネット下用係合手段70の係合突起71の連結軸71bの軸芯まわりで車体前方側に若干揺動操作し、左右の前ボンネット下用係合手段70の係合突起71が係合凹部72に対して離脱可能な回動状態になると、前エンジンボンネット12をエンジン搭載フレーム23から持ち上げ操作して、左右の前ボンネット下用係合手段70の係合突起71と係合凹部72を離脱操作する。すると、前エンジンボンネット12の下端側の左右の前ボンネット下用係合手段70によるエンジン搭載フレーム23への連結が解除され、前エンジンボンネット12が車体側から外れる。
これに対し、左右の前ボンネット下用係合手段70の係合突起71と係合凹部72を係合操作する。すると、前エンジンボンネット12の下端側が左右の前ボンネット下用係合手段70によってエンジン搭載フレーム23に連結される。この後、左右の取付け板81を支持片83に車体上方側から寄せ操作して、左右の前ボンネット上用係合手段80の係合突起82と係合凹部84を係合操作する。すると、前エンジンボンネット12の上端側が左右の前ボンネット上用係合手段80によってボンネット支持体25に連結される。次に、上エンジンボンネット13を突っ張り杆95による突っ張り支持が解除された状態にして下降揺動操作して下降閉じ状態に操作する。すると、上エンジンボンネット13の左右の前ボンネット押圧部91が対応する前ボンネット上用係合手段80に押圧作用して、前ボンネット上用係合手段80の係合突起82と係合凹部84が係合状態にロックされ、前エンジンボンネット12をボンネット支持体25とエンジン搭載フレーム23によって支持されるように取付けることができる。このとき、上エンジンボンネット13の各前ボンネット押圧部91が閉じロック機構30による上エンジンボンネット13の締め付け力のために弾性変形されて前ボンネット上用係合手段80の係合突起82と係合凹部84を圧接操作し、各前ボンネット上用係合手段80の係合突起82と係合凹部84の間にガタ付きが発生しにくくなる。
【0037】
上エンジンボンネット13を突っ張り杆95によって上昇開き状態に維持させ、上エンジンボンネット13の横ボンネット押圧部92が横ボンネット前上用係合手段60に対する押圧作用を解除した状態に維持されると、横エンジンボンネット11の前端側をエンジン搭載フレーム23から持ち上げ操作して、横ボンネット前下用係合手段50の係合突起51と係合凹部53を離脱操作するとともに横ボンネット前上用係合手段60の係合突起62と係合凹部63を離脱操作する。すると、横エンジンボンネット11の前端側の横ボンネット前下用係合手段50によるエンジン搭載フレーム23への連結が解除され、横エンジンボンネット11の前端側の横ボンネット前上用係合手段60によるボンネット支持体25への連結が解除される。この後、横エンジンボンネット11を支持フレーム20から車体前方側に離し操作して上下の横ボンネット後用係合手段40の係合突起43と係合凹部42を離脱操作する。すると、横エンジンボンネット11の後端側の上下の横ボンネット後用係合手段40による支持フレーム20への連結が解除され、横エンジンボンネット11が車体側から外れる。
【0038】
これに対し、横エンジンボンネット11の後端側を支持フレーム20に車体前方側から寄せ操作して、上下の横ボンネット後用係合手段40の係合突起43と係合凹部42を係合操作する。すると、横エンジンボンネット11の後端側が上下の横ボンネット後用係合手段40によって支持フレーム20に連結される。この後、横エンジンボンネット11の前端側をエンジン搭載フレーム23に車体上方側から寄せ操作して、横ボンネット前下用係合手段50の係合突起51と係合凹部53を係合操作し、かつ、横ボンネット前上用係合手段60の係合突起62と係合凹部63を係合操作する。すると、横エンジンボンネット11の前端側が横ボンネット前下用係合手段50によってエンジン搭載フレーム23に、横ボンネット前上用係合手段60によってボンネット支持体25にそれぞれ連結される。次に、上エンジンボンネット13を突っ張り杆95による突っ張り支持が解除された状態にして下降揺動操作して下降閉じ状態にする。すると、上エンジンボンネット13の横ボンネット押圧部92が横ボンネット前上用係合手段60に押圧作用して、この横ボンネット前上用係合手段60の係合突起62と係合凹部63を係合状態にロックされ、横エンジンボンネット11をエンジン搭載フレーム23、ボンネット支持体25、支持フレーム20によって支持されるように取付けることができる。このとき、上エンジンボンネット13の横ボンネット押圧部92が閉じロック機構30による上エンジンボンネット13の締め付け力のために弾性変形されて横ボンネット前上用係合手段60の係合突起62と係合凹部63を圧接操作し、横ボンネット前上用係合手段60の係合突起62と係合凹部63の間にガタ付きが発生しにくくなる。
【0039】
図16などに示すように、前エンジンボンネット12の横側面部12aの後端側に、上下一対の位置決め片12cを一体成形してある。図17に示すように、各位置決め片12cは、前エンジンボンネット12の組み付け状態において、横エンジンボンネット11の前端部11cの内面側に入り込んで受け止め支持され、前エンジンボンネット12の横側面部12aの横エンジンボンネット11に対する車体横方向での位置決めを行うものである。すなわち、前エンジンボンネット12の横側面部12aと、横エンジンボンネット11の前端側とが近接し合う部位において、前エンジンボンネット12の横側面部12aでの外側面と、横エンジンボンネット11の前端側での外側面とが車体横方向に互いに位置ずれしないで同一平面上に位置した状態になって並ぶように位置決めを行うものである。
【0040】
〔別実施例〕
上記実施例の如く上エンジンボンネット13の押圧部91及び92を、ゴムブロック90によって構成して実施する他、スプリングによって構成して実施することによっても、本発明の目的を達成することができる。従って、ゴムブロック90、スプリング等を総称して弾性体90と呼称する。
【0041】
トラクタの他、草刈機など各種の車両にも本発明は適用できるのであり、これらトラクタ、草刈機などの車両を総称して作業車と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】エンジンボンネットの閉じ状態の縦断側面図
【図3】エンジンボンネットの開き状態の縦断側面図
【図4】エンジンボンネットの閉じ状態の横断正面図
【図5】閉じロック機構の側面図
【図6】上側の横ボンネット後用係合手段の断面図
【図7】下側の横ボンネット後用係合手段の断面図
【図8】横ボンネット前下用係合手段の断面図
【図9】(イ)は、前ボンネット押圧部及び横ボンネット押圧部の作用状態での側面図、(ロ)は、前ボンネット押圧部及び横ボンネット押圧部の押圧解除状態での側面図
【図10】横ボンネット押圧部の断面図
【図11】前ボンネット押圧部の断面図
【図12】横ボンネット前上用係合手段の平面図
【図13】ゴムブロックの取付け構造の断面図
【図14】前ボンネット下用係合手段の正面図
【図15】前ボンネット下用係合手段の断面図
【図16】横エンジンボンネット及び前エンジンボンネットの取り外し状態での側面図
【図17】前エンジンボンネットの位置決め部配設部での断面図
【図18】横作業灯の断面図
【符号の説明】
【0043】
11 横エンジンボンネット
12 前エンジンボンネット
13 上エンジンボンネット
60 横ボンネット係合手段
62 横ボンネット係合手段の係合突起
63 横ボンネット係合手段の係合凹部
80 前ボンネット係合手段
82 前ボンネット係合手段の係合突起
84 前ボンネット係合手段の係合凹部
90 弾性体
91 前ボンネット押圧部
92 横ボンネット押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横エンジンボンネットと前エンジンボンネットを各別に脱着自在に備え、上エンジンボンネットをこの上エンジンボンネットの後端側に位置する支点まわりで上下揺動開閉自在に備えた作業車であって、
前記横エンジンボンネットの前端側上部と、ボンネット支持体との間に、車体上下方向に係脱操作自在な係合突起と係合凹部を備えて成り、かつ、前記係合突起と前記係合凹部の係合によって横エンジンボンネットの水平方向での位置決めを行う横ボンネット係合手段を設け、
前記前エンジンボンネットの上端側と、ボンネット支持体との間に、車体上下方向に係脱操作自在な係合突起と係合凹部を備えて成り、かつ、前記係合突起と前記係合凹部の係合によって前エンジンボンネットの水平方向での位置決めを行う前ボンネット係合手段を設け、
前記上エンジンボンネットに、前記横ボンネット係合手段に対する横ボンネット押圧部、及び、前記前ボンネット係合手段に対する前ボンネット押圧部を設け、
前記上エンジンボンネットの下降閉じ状態において、前記横ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部を係合状態に操作するように横ボンネット係合手段に押圧作用し、前記前ボンネット押圧部が前ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部を係合状態に操作するように前ボンネット係合手段に押圧作用し、前記上エンジンボンネットの上昇開き状態において、前記横ボンネット押圧部が横ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部の離脱を許容するように横ボンネット係合手段に対する押圧作用を解除し、前記前ボンネット押圧部が前ボンネット係合手段の係合突起と係合凹部の離脱を許容するように前ボンネット係合手段に対する押圧作用を解除するように構成してある作業車。
【請求項2】
前記上エンジンボンネットの前記横ボンネット押圧部及び前ボンネット押圧部を、弾性体によって構成してある請求項1記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−55540(P2007−55540A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246106(P2005−246106)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】