説明

併用医薬

【課題】1−チオ−D−グルシトール化合物と、ビグアナイド薬等を組み合わせてなる医薬の提供。
【解決手段】(A)一般式(I)


で表される1−チオ−D−グルシトール化合物と、(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上、
を組み合わせてなる医薬。該医薬は糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防・治療効果が優れ、かつ、副作用が見られない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の治療に有用な医薬に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、SGLT2阻害剤とビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上を組み合わせてなる医薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病はインスリン作用不足による慢性の高血糖を主な特徴とする疾患群であり、種々の代謝異常を伴う。その治療は食事・運動療法が基本であるが、これらの方法で血糖コントロールが十分にできない場合は経口糖尿病治療薬による薬物治療が行われる。しかし、糖尿病患者の病態によっては、単剤による薬物治療では良好な血糖コントロールの達成が困難な場合があり、また、副作用の発現により薬物を十分な用量、または十分な期間使用できないなどの問題が生じる。例えば2型糖尿病患者に対してビグアナイド薬を単独で使用した場合には、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値を7%以下に低下させることができる確率が25%程度しかないとの文献報告がある(非特許文献1参照)。また、スルホニル尿素薬を単独で使用した場合には、低血糖発現、体重増加等の副作用に加えて、糖尿病病態の進行に伴いβ細胞が疲弊しインスリン分泌能が低下した患者では、高血糖改善作用が不十分となることが知られている。また、インスリン感受性増強薬を単独で使用した場合には、体重増加、浮腫、心不全、肝障害等の副作用が発現することがあるという問題点が知られている。また、インスリンを単独で使用した場合には、低血糖や体重増加という問題点が知られている。また、α−グルコシダーゼ阻害剤を単独で使用した場合には、腹部症状の副作用が発現することがあるという問題点が知られている。また、GLP−1作動薬を単独で使用した場合には、治療上の問題点として悪心・嘔吐が知られている。さらには、2型糖尿病患者では長期間高血糖状態に曝されることによりβ細胞の機能が低下するという問題点が生じることが知られているが、多くの糖尿病治療薬では、血糖値を低下させてもβ細胞の機能低下を十分に抑制できない。
このような単剤での治療における問題を解決する手段として、異なる作用機序の糖尿病薬を組み合わせる併用療法が検討されている。しかし、上記の単剤使用時の問題点を改善することができる組み合わせは少ない。例えば、スルホニル尿素薬で認められる低血糖発現の副作用は、他の糖尿病治療薬と併用するとさらにリスクが高まることが知られている。また、スルホニル尿素薬やインスリン感受性増強薬で認められる体重増加は、他の糖尿病治療薬と併用しても改善しないことが多い。したがって、良好な血糖コントロールを達成し、かつ、副作用の発現が少ない、複数の医薬の新たな組み合わせが求められている。
【0003】
血液中のグルコースは腎臓の糸球体で濾過された後、近位尿細管の起始部に存在するナトリウム−グルコース共輸送担体(sodium-dependent glucosecotransporter:SGLT
)を介して再吸収される。1−チオ−D−グルシトール化合物(特許文献1参照)に代表されるSGLT2阻害剤は、グルコースに低親和性で輸送能の大きいSGLT2の活性を阻害し、種々の動物モデルにおいて尿糖排泄促進に基づく血糖低下作用を示す。
【0004】
最近、インスリン感受性増強薬の副作用がSGLT2阻害剤との併用により軽減されるとの報告があるが(特許文献2参照)、血糖低下作用の増強を目的としたSGLT2阻害剤とインスリン感受性増強薬の併用医薬の報告は無い。また、SGLT2阻害剤とジペプジルペプチターゼIV阻害剤との併用に関する記載がある(特許文献3および4参照)。しかし、本発明のSGLT2阻害剤とビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダー
ゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上とを組み合わせてなる医薬に関する報告はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/073197号国際公開公報
【特許文献2】EP1381361号特許公報
【特許文献3】WO2009/022007号国際公開公報
【特許文献4】WO2009/022010号国際公開公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】糖尿病学(基礎と臨床)、p949−p954、2007、西村書店
【発明の概要】
【0007】
本発明は、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症などの予防・治療効果が優れ、かつ副作用が見られないなどの特徴を有する、複数の医薬を組み合わせてなる新規な医薬を提供することを課題とする。
本発明はまた、当該医薬を用いた糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、SGLT2阻害作用を有する1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上とを組み合わせることにより顕著な血糖降下作用、膵β細胞疲弊の抑制および副作用の軽減が引き起こされることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明は、
(1)(A)一般式(I)
【化1】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン
、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上、
を組み合わせてなる医薬、
【0010】
(2)(A)一般式(I)
【化2】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬またはインスリン感受性増強薬、
を組み合わせてなる、(1)に記載の医薬、
【0011】
(3)(A)の一般式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物が、
は、C1−6アルキル基、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、またはC1−6アルコキシ基を示し、
およびRは水素原子を示し、
は、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、またはC1−6アルキルチオ基を示す、
である、(1)または(2)に記載の医薬、
【0012】
(4)1−チオ−D−グルシトール化合物が、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ
−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−(4−メチルベンジル)フェ
ニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−[4−(メチルスルファニル
)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−(4−エチルベンジル)フェ
ニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エチルベンジル)−2−メトキシ−
4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−[4−(プロパン−2−イル
)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[2−メトキシ−4−メチル−5−[4−(プロ
パン−2−イル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、および
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2
−メトキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトール
からなる群より選択される化合物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬、
【0013】
(5)1−チオ−D−グルシトール化合物が、(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5
−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールである、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬、
【0014】
(6)ビグアナイド薬が塩酸メトホルミンである、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬、
【0015】
(7)インスリン分泌促進薬がグリピザイド、グリベンクラミド、またはグリメピリドである、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬、
【0016】
(8)インスリン分泌促進薬がグリピザイドである、(7)に記載の医薬、
【0017】
(9)インスリン感受性増強薬がピオグリタゾンである、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬、
【0018】
(10)ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤がシタグリプチンまたはビルダグリプチンである、(1)および(3)〜(5)のいずれかに記載の医薬、
【0019】
(11)α−グルコシダーゼ阻害剤がボグリボース、ミグリトールまたはアカルボースである、(1)および(3)〜(5)のいずれかに記載の医薬、
【0020】
(12)(A)一般式(I)
【化3】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上、
を同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法、
【0021】
(13)(A)一般式(I)
【化4】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬またはインスリン感受性増強薬、
を同時または別々に患者に投与することを含む、(12)に記載の糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法、
【0022】
(14)糖尿病が2型糖尿病である、(12)または(13)に記載の糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法、および
【0023】
(15)糖尿病合併症が、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、脳血管障害、虚血性心疾患、または末梢動脈疾患である、(12)〜(14)のいずれかに記載の糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の複数の医薬を組み合わせてなる医薬は、それぞれ単剤と比較して優れた糖化ヘモグロビン(GHb)値低下作用および血漿中グルコース濃度低下作用を示した。また、本発明の複数の医薬を組み合わせてなる医薬は、糖尿病の病態進行に伴う血漿インスリン濃度の低下を抑制した。さらに、本発明の複数の医薬を組み合わせてなる医薬は、単剤の副作用(体重増加、低血糖懸念)を軽減した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
「C1−6アルキル基」とは、炭素数1−6個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、3−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。
【0026】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
【0027】
「製薬学的に許容される塩」とは、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸などの無機酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ベンゼン
スルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、エタンスルホン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、ガラクタル酸、ナフタレン−2−スルホン酸などの有機酸との塩、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどの1種または複数の金属イオンとの塩、アンモニア、アルギニン、リシン、ピペラジン、コリン、ジエチルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、ベンザチンなどのアミンとの塩が挙げられる。
【0028】
本発明の化合物は、各種溶媒和物としても存在し得る。また、医薬としての適用性の面から水和物の場合もある。
本発明の化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、平衡化合物、これらの任意の割合の混合物、ラセミ体等を全て含む。
本発明で使用する式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物の製造方法は、WO2006/073197号国際公開公報に開示されている。
式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物のうち、好ましい化合物は、優れたSGLT2阻害活性を示す点から、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ
−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IA))、
【化5】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−(4−メチルベンジル)フェ
ニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IB))、
【化6】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−[4−(メチルスルファニル
)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IC))、
【化7】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−(4−エチルベンジル)フェ
ニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(ID))、
【化8】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エチルベンジル)−2−メトキシ−
4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IE))、
【化9】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−[4−(プロパン−2−イル
)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IF))、
【化10】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[2−メトキシ−4−メチル−5−[4−(プロ
パン−2−イル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IG))、
【化11】

(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2
−メトキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトール(式(IH))である。
【化12】

さらに好ましい化合物は、(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシ
ベンジル)−2−メトキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールであり、好ましくはその水和物である。
【0029】
本発明の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とビグアナイド薬とを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0030】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とビグアナイド薬とを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0031】
ビグアナイド薬は、肝臓での糖新生を抑制し、末梢組織におけるインスリン感受性を増加させ、腸からのグルコース吸収を阻害する薬剤である。ビグアナイド薬としては、例えば、メトホルミンおよびブホルミンがある。特に血糖降下作用、副作用等の観点からメトホルミンが好ましく、中でも塩酸メトホルミンが好ましい。これらのビグアナイド薬は公知の物質であり、特にメトホルミンおよび塩酸メトホルミンは、Emil A. Werner and James Bell, J. Chem. Soc, 121, 1922, 1790-1794に開示されており、GLUCOPHAGE(商標)
として市販されているものを用いることができる。
【0032】
本発明の他の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とインスリン分泌促進薬とを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0033】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とインスリン分泌促進薬とを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0034】
インスリン分泌促進薬は、膵β細胞からのインスリン分泌を促進する薬剤である。インスリン分泌促進薬としては、例えば、スルホニル尿素薬(グリピザイド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリクラジド、アセトヘキサミド、トルブタミド、グリクロピラミド、クロールプロパミド、トラザミド)、グリニド薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド)がある。特に血糖降下作用の観点から、特に好ましくはスルホニル尿素薬であるグリピザイド、グリベンクラミド、グリメピリド、が挙げられる。これらのインスリン分泌促進薬は公知の物質であり、市販されているもの等を用いることができる。
【0035】
本発明の他の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とインスリン感受性増強薬とを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0036】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とインスリン感受性増強薬とを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0037】
インスリン感受性増強薬は、末梢組織および肝臓におけるインスリン感受性を改善する薬剤である。インスリン感受性増強薬としては、例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンがある。特に血糖降下作用、副作用等の観点からピオグリタゾンが好ましく、中でもピオグリタゾンの塩酸塩が好ましい。これらのインスリン感受性増強薬は公知の物質であり、市販されているもの等を用いることができる。
【0038】
本発明の他の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とインスリンとを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0039】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とインスリンとを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0040】
インスリンとしては、例えば、ヒトインスリン製剤(ヒトインスリン注射液、生合成ヒト中性インスリン注射液、ヒトイソフェンインスリン水性懸濁注射液、生合成ヒトイソフェンインスリン水性懸濁注射液、生合成ヒト二相性イソフェンインスリン水性懸濁注射液、ヒトインスリン水性懸濁注射液)、インスリンアナログ製剤(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリングラルギン、インスリンデテミル)が好ましく、中でもヒトインスリン製剤が好ましい。インスリンには、超即効型、即効型、二相型、中間型および持効型等の各種タイプが含まれるが、これらは患者の病態に応じて選択・投与することができる。これらのインスリン製剤は公知の物質であり、市販されているもの等を用いることができる。
【0041】
本発明の他の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とジペプチジルペプチダーゼI
V阻害剤とを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0042】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤とを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0043】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素は、インクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)を不活性化し、GLP−1およびGIPは、インスリン分泌およびグルコース恒常性の調節において重要な役割を担っている。ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は、これらのペプチドの不活性化を抑制し、かつ、膵β細胞からのグルコース依存性インスリン分泌を増強する薬剤である。ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤としては、例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、SK−0403、carmegliptin、KRP−104およびSYR−472があり、特にシタグリプチンおよびビルダグリプチンが好ましい。これらのジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤は公知の物質であり、市販されているもの等を用いることができる。
【0044】
本発明の他の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とα−グルコシダーゼ阻害剤とを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0045】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とα−グルコシダーゼ阻害剤とを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0046】
α−グルコシダーゼ阻害剤は、アミラーゼ、マルターゼ、α−デキストリナーゼ、スクラーゼ等の消化酵素を阻害し、小腸からの炭水化物の吸収を遅らせる薬剤である。α−グルコシダーゼ阻害剤としては、例えば、ボグリボース、ミグリトールおよびアカルボースが好ましい。これらのα−グルコシダーゼ阻害剤は公知の物質であり、市販されているもの等を用いることができる。
【0047】
本発明の他の1つの態様は、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とGLP−1作動薬とを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
【0048】
また、式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物とGLP−1作動薬とを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【0049】
GLP−1作動薬は、ヒトGLP−1受容体を活性化することでインスリン分泌作用を示す薬剤である。GLP−1作動薬は、ペプチドでも、ペプチド以外の化合物でもよい。GLP−1作動薬としては、例えば、リラグルチド、エクセナチド、タスポグルチドおよびアルビグルチドが好ましく、特にリラグルチドが好ましい。これらのGLP−1作動薬
は公知の物質であり、市販されているもの等を用いることができる。
本発明の他の1つの態様は、表Aに示すような、有効成分Aもしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と有効成分Bとを組み合わせてなる医薬である。当該医薬は、好ましくは糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症のための医薬である。
また、表Aに示すような、有効成分Aもしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と有効成分Bとを同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法である。
【表A−1】

【表A−2】


【表A−3】




【表A−4】


【表A−5】

【表A−6】


【表A−7】



【表A−8】

【0050】
「糖尿病」とは、1型糖尿病、2型糖尿病、特定の原因によるその他の型の糖尿病を包含する。本発明の医薬の対象疾患としては、1型糖尿病、2型糖尿病が好ましい。
【0051】
「糖尿病関連疾患」とは、肥満、高インスリン血症、糖代謝異常、高脂質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質代謝異常、高血圧、うっ血性心不全、浮腫、高尿酸血症、痛風などが挙げられる。
「糖尿病合併症」は、急性合併症および慢性合併症に分類される。
「急性合併症」には、高血糖(ケトアシドーシスなど)、高血糖高浸透圧性症候群、乳酸アシドーシス、低血糖、感染症(皮膚、軟部組織、胆道系、呼吸系、尿路感染など)などが挙げられる。
「慢性合併症」には、細小血管症(糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症)、大血管症(脳血管障害、虚血性心疾患、末梢動脈疾患)などが挙げられる。
【0052】
「治療」とは、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症等の疾患を既に発症している患者に対して本発明の医薬を投与することを意味する。当該治療行為には、上記疾患に由来する症状を和らげるための対症療法が含まれる。また、病気を回復させたり、部分的に回復させたりする治療や、病気の進行を止めたり、遅くしたりする治療も含まれる。
【0053】
「予防」とは、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症等の疾患が発症するリスクを有する患者に当該疾患が発症する前から本発明の医薬を投与することを意味する。
【0054】
本発明に係る医薬は、これら有効成分を単一の製剤(配合剤)または別々に製剤化して得られる2種以上の製剤とすることができる。上記製剤は、通常行われる手段に従って、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、あるいは無菌性溶液、懸濁液剤などの注射剤とすることができる。これらの有効成分を別々に製剤化して2種以上の製剤とした場合には、個々の製剤を同時または一定の時間間隔を空けて投与することが可能である。当該2種以上の製剤は、1日にそれぞれ異なる回数で投与することもできる。本発明に係る医薬は、全身的または局所的に、経口投与または非経口投与することができる。これらの有効成分を別々に製剤化して2種以上の製剤とした場合には、個々の製剤を異なる経路で投与することもできる。
【0055】
本発明に係る医薬を異なる2種の製剤とする場合は、同時に、または極めて短い間隔で投与する可能性が高いため、例えば、市販されている医薬の添付文書や販売パンフレット等の文書に、それぞれを併用する旨を記載するのが好ましい。また、1−チオ−D−グルシトール化合物と、ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上とをそれぞれ含む製剤からなるキットとするのも好ましい。
【0056】
本発明の医薬の投与量は、投与対象、投与方法等により異なるが、例えば経口投与の場合は、糖尿病患者に対して、1日に
(1)1−チオ−D−グルシトール化合物を0.1〜50mg、好ましくは0.5〜25mg;
(2)ビグアナイド薬を10〜3000mg;
(2−1)メトホルミンを100〜3000mg、好ましくは300〜3000mg;
(2−2)ブホルミンを10〜500mg、好ましくは30〜150mg;
(3)インスリン分泌促進薬を0.5〜2000mg;
(3−1)グリメピリドを0.5〜100mg、好ましくは1〜10mg;
(3−2)グリベンクラミドを0.5〜100mg、好ましくは1〜10mg;
(3−3)アセトヘキサミドを10〜2000mg、好ましくは100〜1000mg;
(3−4)トルブタミドを100〜2000mg、好ましくは300〜2000mg;
(3−5)グリクロピラミドを50〜2000mg、好ましくは100〜500mg;
(3−6)クロールプロパミドを10〜1000mg、好ましくは50〜500mg;
(3−7)グリピザイドを0.5〜2000mg、好ましくは2〜40mg;
(3−8)トラザミドを10〜2000mg、好ましくは50〜500mg;
(3−9)グリクラジドを10〜500mg、好ましくは30〜200mg;
(4)インスリン感受性増強薬を1〜100mg;
(4−1)ピオグリタゾンを1〜100mg、好ましくは10〜50mg;
(5)インスリンを1〜3000単位、好ましくは10〜1000単位;
(6)ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤を1〜300mg;
(6−1)シタグリプチンを1〜300mg、好ましくは20〜100mg;
(6−2)ビルダグリプチンを1〜300mg、好ましくは20〜100mg;
(7)α−グルコシダーゼ阻害剤を0.2〜1000mg;
(7−1)ボグリボースを0.2〜100mg、好ましくは0.5〜10mg;
(7−2)ミグリトールを10〜1000mg、好ましくは100〜500mg;
(7−3)アカルボースを10〜1000mg、好ましくは100〜500mg;
となるように投与することが好ましい。
また、注射剤として投与する場合は、糖尿病患者に対して、1日に
(1)インスリンを1〜100単位、好ましくは4〜100単位;
(2)GLP−1作動薬を0.001〜300mg;
(2−1)リラグルチドを0.1〜10mg、好ましくは0.3〜3mg;
(2−2)エクセナチドを0.001〜0.1mg、好ましくは0.005〜0.05mg;
(2−3)アルビグルチドを0.3〜300mg、好ましくは1〜100mg;
となるように投与することが好ましい。
ビグアナイド薬の投与回数は、2〜3回に分けるのが一般的ある。一方、1−チオ−D−グルシトール化合物は、長時間SGLT2阻害作用を持続させることが可能である。したがって、1日1回投与型の配合剤とするためには、本発明の1−チオ−D−グルシトール化合物に「徐放化されたビグアナイド薬」を組み合わせて使用することが好ましい。
【0057】
ここで、「徐放化されたビグアナイド薬」は、公知の方法に従って得ることができる。例えば、WO96/08243号公報に記載の徐放化方法や特表2003−520759号公報に記載の方法を用いて徐放化することが可能である。
【0058】
上記製剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤等の経口剤が好ましい。具体的には、例えば、上記の有効成分を同時に或いは別個に、マンニトール、乳糖等の賦形剤と混合後、造粒して、直接または他の経口用添加剤、具体的には、賦形剤(ブドウ糖、白糖、マンニトール、乳糖、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、プルラン等の糖および糖アルコール系の賦形剤、微結晶セルロース等のセルロース系の賦形剤、トウモロコシデンプン等のデンプン系の賦形剤、無水リン酸水素カルシウム等の無機系の賦形剤等)、結合剤(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系の結合剤等)、崩壊剤(カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム等のセルロース系の崩壊剤、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン系の崩壊剤等)、流動化剤(軽質無水ケイ酸等の無機系流動化剤等)、滑沢剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム等)等と混合して、カプセルに充填してカプセル剤としたり、打錠して錠剤としたりすることが可能である。
【0059】
本発明の1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上との配合比は、投与対象、投与方法等により異なるが、例えば、本発明の医薬をヒトに投与する場合には、1−チオ−D−グルシトール化合物1質量部に対してビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻
害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上を0.1〜1000質量部の割合で組み合わせた場合に、個々の薬剤を投与する場合よりも優れた血糖降下作用を得ることが可能である。特に、1−チオ−D−グルシトール化合物1質量部に対して、ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上を0.1〜100質量部で組み合わせることが好ましい。これにより、それぞれの薬剤を単独で投与した場合よりも少量で、充分な効果を得ることができる。また、インスリンの過分泌による低血糖や体重増加を起こさないため、副作用の少ない医薬とすることが可能である。
【0060】
本発明に係る医薬の治療対象となる患者としては、十分な食事、運動療法を行っても良い血糖コントロールが得られずに薬物療法の導入が必要な患者であって、経口糖尿病治療薬の単独投与でも良い血糖コントロールが得られずにさらに異なる機序の薬剤の追加が必要な患者が好ましい。
【0061】
本発明の医薬は、例えば以下のような処方によって製造することが可能である。
(製剤例1)錠剤
1錠中に
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ
−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール(以下、化合物A) 5mg
メトホルミン塩酸塩 500mg
微結晶セルロース 70mg
ヒドロキシプロピルセルロース 25mg
カルボキシメチルスターチナトリウム 30mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
を含む直径13mmの錠剤を得た。
【0062】
(製剤例2)錠剤
1錠中に
化合物A 5mg
ピオグリタゾン塩酸塩 16.53mg
微結晶セルロース 48mg
乳糖 50mg
ヒドロキシプロピルセルロース 5mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 14mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
を含む直径7mmの錠剤を得た。
【0063】
(製剤例3)錠剤
1錠中に
化合物A 5mg
グリメピリド 4mg
微結晶セルロース 61mg
乳糖 50mg
ヒドロキシプロピルセルロース 5mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 14mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
を含む直径7mmの錠剤を得た。
【0064】
(製剤例4)錠剤
1錠中に
化合物A 5mg
シタグリプチン 50mg
微結晶セルロース 45mg
マンニトール 69mg
ヒドロキシプロピルセルロース 10mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 20mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
を含む直径8mmの錠剤を得た。
【実施例】
【0065】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例1
<試験項目>
糖尿病マウスにおける化合物Aと塩酸メトホルミンとの長期併用効果
<試験方法>
1群8例の雄性db/dbマウス(11週齢、日本クレア株式会社)に化合物A(3mg/kg,1日1回)、ビグアナイド薬である塩酸メトホルミン(50mg/kgおよび150mg/kg,1日2回、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を、単独あるいは両薬物を併用して27日間反復経口投与した。正常血糖の対照には、8例のdb/mマウス(11週齢、日本クレア株式会社)を用いた。
【0066】
反復投与開始前および投与27日目に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血球画分を得た。血球画分を溶血処理した後、糖化ヘモグロビン(GHb)値の測定は自動グリコヘモグロビン分析計(東ソー株式会社)を用い、アフィニティーカラムクロマトグラフィー法によって行った。また、反復投与27日目より16時間絶食した条件下で尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。さらに、反復投与開始前および投与27日目に非絶食条件下で尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿インスリン濃度の測定は、インスリン測定用キット(レビス:インスリン−マウス[Hタイプ]、株式会社シバヤギ)を用い、酵素免疫測定法によって行った。
【0067】
<結果1>
GHb変化量(%)を平均値±標準誤差で表し、表1に示した。化合物A 3mg/kgと塩酸メトホルミン 300mg/kgの併用群は、単独投与群よりも顕著なGHb変化量(%)の低下を示した。2元配置分散分析の結果、GHb変化量(%)に対して化合物A 3mg/kg群と塩酸メトホルミン 300mg/kg群の有意な交互作用が認められた。
【0068】
【表1】

GHb変化量(%)=反復投与後のGHb値(%)−反復投与開始前のGHb値(%)
*: P<0.05, 化合物A 3mg/kg群と塩酸メトホルミン 300mg/kg群の交互作用(2元配置分散分析)
【0069】
<結果2>
絶食下血漿グルコース濃度を平均値±標準誤差で表し、Student’s t−testにて比較検定して表2に示した。化合物A 3mg/kgと塩酸メトホルミン 300mg/kgの併用群は、各単独投与群よりも顕著な絶食下血漿グルコース濃度の低下を示した。
【0070】
【表2】

§§: P<0.01 vs. 塩酸メトホルミン 100mg/kg群
††: P<0.01 vs. 化合物A 3mg/kg群
#: P<0.05 vs. 塩酸メトホルミン 300mg/kg群
【0071】
<結果3>
非絶食下の血漿インスリン(IRI)濃度変化量を平均値±標準誤差で表し、Student’s t−testにて比較検定して表3に示した。化合物A 3mg/kgと塩酸メトホルミン 300mg/kgの併用群は、血漿IRI濃度の低下に対して各単独投与群よりも顕著な抑制効果を示した。
【0072】
【表3】

血漿IRI濃度変化量(ng/mL)=反復投与後の血漿IRI濃度(ng/mL)−反復投与開始前の血漿IRI濃度(ng/mL)
§: P<0.05 vs. 塩酸メトホルミン 100mg/kg群
†: P<0.05 vs. 化合物A 3mg/kg群
##: P<0.01 vs. 塩酸メトホルミン 300mg/kg群
【0073】
試験例2
<試験項目>
糖尿病マウスにおける化合物Aとグリピザイドとの併用効果
<試験方法>
ICRマウス(チャールス・リバー株式会社)に高脂肪食(D12492、Research Diets, Inc.)を3週間負荷した後に、ストレプトゾシン(シグマアルドリッチジャパン株式会社、以下STZ)を腹腔内投与して糖尿病を発症させた。1群11〜12例の高脂肪食負荷STZ誘発糖尿病マウス(15週齢)に非絶食下で化合物A(1mg/kg)、インスリン分泌促進薬であるグリピザイド(10mg/kg、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。経時的に尾静脈より採血を行い、血漿グルコース濃度の測定は、自己検査用グルコース測定器(メディセーフ ミニ GR−102、テルモ株式会社)を用い、GOD比色法によって行った。
<結果>
薬物投与後8時間までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、Welch t−testにて比較検定して表4に示した。化合物Aとグリピザイドとの併用群は、各単独投与群と比較して顕著なΔ血漿グルコースAUCの低下を示した。
【0074】
【表4】

†: P<0.05 vs. 化合物A 1mg/kg群
##: P<0.01 vs. グリピザイド 10mg/kg群
【0075】
試験例3
<試験項目>
糖尿病マウスおよび正常マウスにおける化合物Aとグリメピリドとの併用効果
<試験方法>
1群10例の雌性KKAyマウス(糖尿病マウス;4週齢、日本クレア株式会社)および雌性C57BLマウス(正常マウス;4週齢、日本クレア株式会社)に非絶食下で化合物A(10mg/kg)、インスリン分泌促進薬であるグリメピリド(0.5mg/kg、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。経時的に尾静脈より採血を行い、血漿グルコース濃度の測定は、自己検査用グルコース測定器(グルテストNeoスーパー 株式会社三和化学研究所)を用い、GDH電極法によって行った。
<結果>
薬物投与後3時間までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表5および表6に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとグリメピリドの主効果および交互作用を検定した。KKAyマウス(糖尿病マウス)では、化合物Aとグリメピリドとの併用群は単独投与群と比較して顕著なΔ血漿グルコースAUCの低下を示した。一方、正常血糖C57BLマウス(正常マウス)では、化合物Aとグリメピリドとの併用群はグリメピリド単独投与群と同等のΔ血漿グルコースAUCの低下を示した。すなわち、正常血糖動物において化合物Aをグリメピリドと併用した場合、グリメピリドの血糖低下作用が増強されることは無かった。以上の結果より、化合物Aとグリメピリドの併用では副作用である低血糖の軽減が期待出来ると考えられた。
【0076】
【表5】

化合物A 10mg/kg群の主効果: P<0.001
グリメピリド 0.5mg/kg群の主効果: P<0.0001
化合物A 10mg/kg群とグリメピリド 0.5mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分
析)
【0077】
【表6】

化合物A 10mg/kg群の主効果: P=0.5516
グリメピリド 0.5mg/kg群の主効果: P<0.0001
化合物A 10mg/kg群とグリメピリド 0.5mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分
析)
【0078】
試験例4
<試験項目>
糖尿病マウスにおける化合物Aとグリメピリドとの長期併用効果
<試験方法>
1群7または8例の雌性KKAyマウス(4週齢、日本クレア株式会社)に化合物A(0.03%混餌、自由摂取)、インスリン分泌促進薬であるグリメピリド(0.5mg/kg、1日1回、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を単独あるいは両薬物を併用して8週間反復経口投与した。
4週および8週目に、非絶食下で薬物投与1時間後に尾静脈より採血を行った。血漿グルコース濃度の測定は、自己検査用グルコース測定器(グルテストNeoスーパー、株式会社三和化学研究所)を用い、GDH電極法によって行った。また、反復投与開始前、投与4週および8週目の各日に体重測定を行った。
<結果>
反復投与4週および8週目の血漿グルコース濃度を平均値±標準誤差で表し、表7および表8に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとグリメピリドの主効果および交互作用を検定した。反復投与4週および8週目とも、化合物Aとグリメピリドとの併用群は各単独投与群に比較して顕著な血漿グルコース濃度の低下を示した。
反復投与開始前からの体重変化率(%)を平均値±標準誤差で表し、Dunnet’s
testにて検定して表9および表10に示した。グリメピリドを投与した病態マウスでは反復投与4週、8週目とも病態対照マウスに比べて体重が上昇傾向であるのに対し、化合物Aまたは両薬物を併用投与した病態マウスでは、病態対照マウスに比較して有意な体重の減少が認められた。
以上の結果より、グリメピリドと化合物Aの併用により、血漿グルコース濃度が顕著に低下すると共に、グリメピリドの体重増加が抑制されたことから、グリメピリドの副作用の軽減が期待出来ると考えられた。
【0079】
【表7】

データは薬物投与1時間後の血漿グルコース濃度を表す。
化合物A 0.03%混餌群の主効果: P<0.05
グリメピリド 0.5mg/kg群の主効果: P<0.001
化合物A 0.03%混餌群とグリメピリド 0.5mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散
分析)
【0080】
【表8】

データは薬物投与1時間後の血漿グルコース濃度を表す。
化合物A 0.03%混餌群の主効果:P<0.0001
グリメピリド 0.5mg/kg群の主効果:P<0.0001
化合物A 0.03%混餌群とグリメピリド 0.5mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散
分析)
【0081】
【表9】

体重変化率(%)は反復投与開始前の体重からの変化率を表す。
***: P<0.001 vs. 病態対照群
【0082】
【表10】

体重変化率(%)は反復投与開始前の体重からの変化率を表す。
***: P<0.001 vs. 病態対照群
【0083】
試験例5
<試験項目>
糖尿病マウスにおける化合物Aとグリベンクラミドとの併用効果
<試験方法>
ICRマウス(チャールス・リバー株式会社)に高脂肪食(D12492、Research Diets, Inc.)を3週間負荷した後に、ストレプトゾシン(シグマアルドリッチジャパン株式会社、以下STZ)を腹腔内投与して糖尿病を発症させた。1群10〜12例の高脂肪食負荷STZ誘発糖尿病マウス(12週齢)に非絶食下で化合物A(1mg/kg)、インスリン分泌促進薬であるグリベンクラミド(10mg/kg、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。
<結果>
薬物投与後8時間までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表11に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとグリベンクラミドの主効果および交互作用を検定した。化合物Aとグリベンクラミドとの併用群は、単独投与群と比較して顕著なΔ血漿グルコースAUCの低下を示した。
【0084】
【表11】

化合物A 1mg/kg群の主効果: P<0.0001
グリベンクラミド 10mg/kg群の主効果: P<0.05
化合物A 1mg/kg群とグリベンクラミド 10mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散
分析)
【0085】
試験例6
<試験項目>
糖尿病マウスにおける化合物Aとピオグリタゾンとの長期併用効果
<試験方法>
1群8例の雄性db/dbマウス(7週齢、日本クレア株式会社)に化合物A(3mg/kg,1日1回)、インスリン感受性増強薬であるピオグリタゾン(10mg/kg,1日1回、シグマアルドリッチジャパン株式会社)を、単独あるいは両薬物を併用して27日間反復経口投与した。正常血糖の対照には、8例のdb/mマウス(7週齢、日本クレア株式会社)を用いた。
投与開始前および27日間の反復投与後に、非絶食下で尾静脈より採血を行い、遠心分離して血球画分および血漿を得た。血球画分を溶血処理した後、糖化ヘモグロビン(GHb)値の測定は自動グリコヘモグロビン分析計(東ソー株式会社)を用い、アフィニティーカラムクロマトグラフィー法によって行った。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。血漿インスリン濃度の測定は、インスリン測定用キット(レビス:インスリン−マウス[Hタイプ]およびインスリン−マウス[Tタイプ]、株式会社シバヤギ)を用い、酵素免疫測定法によって行った。
<結果1>
GHb変化量(%)を平均値±標準誤差で表し、表12に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとピオグリタゾンの主効果および交互作用を検定した。化合物Aとピオグリタゾンとの併用群は各単独投与群と比較して顕著なGHb変化量(%)の低下を示した。
【0086】
【表12】

GHb変化量(%)=反復投与後のGHb値(%)−反復投与前のGHb値(%)
化合物A 3mg/kg群の主効果: P<0.0001
ピオグリタゾン 10mg/kg群の主効果: P<0.0001
化合物A 3mg/kg群とピオグリタゾン 10mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分
析)
<結果2>
非絶食下血漿グルコース濃度を平均値±標準誤差で表し、表13に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとピオグリタゾンの主効果および交互作用を検定した。化合物Aとピオグリタゾンの併用群は、各単独投与群よりも顕著な非絶食下血漿グルコース濃度の低下を示した。
【0087】
【表13】

化合物A 3mg/kg群の主効果: P<0.0001
ピオグリタゾン 10mg/kg群の主効果: P<0.0001
化合物A 3mg/kg群とピオグリタゾン 10mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分
析)
<結果3>
非絶食下の血漿インスリン(IRI)濃度変化量を平均値±標準誤差で表し、表14に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとピオグリタゾンの主効果および交互作用を検定した。化合物Aとピオグリタゾンとの併用群は、非絶食下血漿IRI濃度変化量に対して顕著な増加を示した。2元配置分散分析の結果、非絶食下血漿IRI濃度変化量に対して化合物Aおよびピオグリタゾンの有意な交互作用が認められた。以上の結果から、化合物Aとピオグリタゾンの併用により各単独投与群と比較して優れた血糖コントロールが得られ、糖毒性による膵β細胞の疲弊を相乗的に抑制すると考えられた。
【0088】
【表14】


化合物A 3mg/kg群の主効果: P=0.2101
ピオグリタゾン 10mg/kg群の主効果: P<0.001
化合物A 3mg/kg群とピオグリタゾン 10mg/kg群の交互作用: P<0.01(2元配置分散分析)
【0089】
試験例7
<試験項目>
糖尿病ラットにおける化合物Aとインスリンとの併用効果
<試験方法>
SDラット(7週齢、チャールス・リバー株式会社)にストレプトゾシン(シグマアルドリッチジャパン株式会社、以下STZ)を腹腔内投与して糖尿病を発症させた。STZ誘発糖尿病ラット(8週齢)にインスリン徐放剤(1ペレット、Linplant;LinShin Canada、Inc.)の皮下植え込み術あるいは擬似手術を施し、1週間後に非絶食下で化合物A 1mg/kgを単回経口投与した。経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GO
D法によって行った。
<結果>
薬物投与後8時間までの血漿グルコース濃度曲線下面積(血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表15に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとインスリンの主効果および交互作用を検出した。化合物Aとインスリンとの併用群は単独投与群と比較して顕著な血漿グルコースAUCの低下を示した。
【0090】
【表15】

化合物A 1mg/kg群の主効果: P<0.01
インスリン徐放剤群の主効果: P<0.0001
化合物A 1mg/kg群とインスリン徐放剤群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分析)
【0091】
試験例8
<試験項目>
糖尿病ラットにおける化合物Aとシタグリプチンとの併用効果
<試験方法>
1群8例の雄性Zucker fattyラット(10週齢)に絶食後、化合物A(1mg/kg)、DPP−IV阻害剤であるシタグリプチン(0.3mg/kg)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。投与1時間後にグルコース溶液(2g/kg)を経口投与し、経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。
<結果>
グルコース負荷後120分までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表16に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとシタグリプチンの主効果および交互作用を検定した。Zucker fattyラットでは、経口グルコース負荷後に血漿グルコース濃度上昇が認められ、耐糖能異常を示した。化合物Aとシタグリプチンとの併用群は、グルコース負荷後の血漿グルコース濃度の上昇に対して各単独投与群よりも顕著な抑制効果を示した。
【0092】
【表16】


化合物A 1mg/kg群の主効果:P<0.001
シタグリプチン 0.3mg/kg群の主効果:P<0.05
化合物A 1mg/kg群とシタグリプチン 0.3mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分析)
【0093】
試験例9
<試験項目>
糖尿病ラットにおける化合物Aとビルダグリプチンとの併用効果
<試験方法>
1群8例の雄性Zucker fattyラット(15週齢)に絶食後、化合物A(1mg/kg)、DPP−IV阻害剤であるビルダグリプチン(3mg/kg)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。投与1時間後に、グルコース溶液(2g/kg)を経口投与し、経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った
<結果>
グルコース負荷後120分までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表17に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとビルダグリプチンの主効果および交互作用を検定した。Zucker fattyラットでは、経口グルコース負荷後に血漿グルコース濃度上昇が認められ、耐糖能異常を示した。化合物Aとビルダグリプチンとの併用群は、グルコース負荷後の血漿グルコース濃度の上昇に対して各単独投与群よりも顕著な抑制効果を示した。
【0094】
【表17】

ビルダグリプチン 3mg/kg群の主効果: P<0.05
化合物A 1mg/kg群とビルダグリプチン 3mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分析)
【0095】
試験例10
<試験項目>
糖尿病ラットにおける化合物Aとボグリボースとの併用効果
<試験方法>
1群6例の雄性Zucker fattyラット(10週齢)に絶食後、化合物A(1mg/kg)、α−グルコシダーゼ阻害剤であるボグリボース(0.1mg/kg)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。投与1分後に可溶性デンプン溶液(2g/kg)を経口投与し、経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。
<結果>
グルコース負荷後120分までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースA
UC)を平均値±標準誤差で表し、表18に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとボグリボースの主効果および交互作用を検定した。Zucker fattyラットでは、経口グルコース負荷後に血漿グルコース濃度上昇が認められ、耐糖能異常を示した。化合物Aとボグリボースとの併用群は、グルコース負荷後の血漿グルコース濃度の上昇に対して各単独投与群よりも顕著な抑制効果を示した。
【0096】
【表18】

ボグリボース 0.1mg/kg群の主効果: P<0.001
化合物A 1mg/kg群とボグリボース 0.1mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分析)
【0097】
試験例11
<試験項目>
糖尿病ラットにおける化合物Aとミグリトールとの併用効果
<試験方法>
1群6例の雄性Zucker fattyラット(9週齢)に絶食後、化合物A(0.5mg/kg)、α−グルコシダーゼ阻害剤であるミグリトール(3mg/kg)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。投与1分後に、可溶性デンプン溶液(2g/kg)を経口投与し、経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。
<結果>
グルコース負荷後120分までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表19に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとミグリトールの主効果および交互作用を検定した。Zucker fattyラットでは、経口グルコース負荷後に血漿グルコース濃度上昇が認められ、耐糖能異常を示した。化合物Aとミグリトールとの併用群は、グルコース負荷後の血漿グルコース濃度の上昇に対して各単独投与群よりも顕著な抑制効果を示した。
【0098】
【表19】

化合物A 0.5mg/kg群の主効果: P<0.05
ミグリトール 3mg/kg群の主効果: P<0.0001
化合物A 0.5mg/kg群とミグリトール 3mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分析)
【0099】
試験例12
<試験項目>
糖尿病ラットにおける化合物Aとアカルボースとの併用効果
<試験方法>
1群6例の雄性Zucker fattyラット(11週齢)に絶食後、化合物A(1mg/kg)、α−グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(1mg/kg)を、単独あるいは両薬物を併用して単回経口投与した。投与1分後に、可溶性デンプン溶液(2g/kg)を経口投与し、経時的に尾静脈より採血を行い、遠心分離して血漿を得た。血漿グルコース濃度の測定は、グルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業株式会社)を用い、ムタロターゼ・GOD法によって行った。
<結果>
グルコース負荷後120分までの血漿グルコース濃度曲線下面積(Δ血漿グルコースAUC)を平均値±標準誤差で表し、表20に示した。2元配置分散分析にて、化合物Aとアカルボースの主効果および交互作用を検定した。Zucker fattyラットでは、経口グルコース負荷後に血漿グルコース濃度上昇が認められ、耐糖能異常を示した。化合物Aとアカルボースとの併用群は、グルコース負荷後の血漿グルコース濃度の上昇に対して各単独投与群よりも顕著な抑制効果を示した。
【0100】
【表20】


化合物A 1mg/kg群の主効果群: P<0.01
アカルボース 1mg/kg群の主効果: P<0.01
化合物A 1mg/kg群とアカルボース 1mg/kg群の交互作用: 有意差無し(2元配置分散分析)
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明により、副作用が少なく、かつ、多くの糖尿病患者に効果的な血糖降下作用を有する、優れた糖尿病予防または治療薬を得ることができる。更には高血糖によって生じる様々な糖尿病性の合併症、例えば、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、脳血管障害、虚血性心疾患、末梢動脈疾患の予防または治療薬を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)
【化1】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上、
を組み合わせてなる医薬。
【請求項2】
(A)一般式(I)
【化2】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬またはインスリン感受性増強薬、
を組み合わせてなる、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
(A)の一般式(I)で表される1−チオ−D−グルシトール化合物が、
は、C1−6アルキル基、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、またはC1−6アルコキシ基を示し、
およびRは水素原子を示し、
は、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基、またはC1−6アルキルチオ基を示す、
である、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
1−チオ−D−グルシトール化合物が、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エトキシベンジル)−2−メトキシ
−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−(4−メチルベンジル)フェ
ニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−[4−(メチルスルファニル
)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−(4−エチルベンジル)フェ
ニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(4−エチルベンジル)−2−メトキシ−
4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−3−[4−(プロパン−2−イル
)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[2−メトキシ−4−メチル−5−[4−(プロ
パン−2−イル)ベンジル]フェニル]−1−チオ−D−グルシトール、および
(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[4−クロロ−5−(4−エチルベンジル)−2
−メトキシフェニル]−1−チオ−D−グルシトール
からなる群より選択される化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
1−チオ−D−グルシトール化合物が、(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[5−(
4−エトキシベンジル)−2−メトキシ−4−メチルフェニル]−1−チオ−D−グルシトールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
ビグアナイド薬が塩酸メトホルミンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
インスリン分泌促進薬がグリピザイド、グリベンクラミド、またはグリメピリドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項8】
インスリン分泌促進薬がグリピザイドである、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
インスリン感受性増強薬がピオグリタゾンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項10】
ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤がシタグリプチンまたはビルダグリプチンである、請求項1および3〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
α−グルコシダーゼ阻害剤がボグリボース、ミグリトールまたはアカルボースである、請求項1および3〜5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項12】
(A)一般式(I)
【化3】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B)ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬、インスリン感受性増強薬、インスリン、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1作動薬からなる群より選ばれる1種以上、
を同時または別々に患者に投与することを含む、糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法。
【請求項13】
(A)一般式(I)
【化4】

[式中、
は、水素原子、C1−6アルキル基、−OR、またはハロゲン原子を示し、
は、水素原子、水酸基、または−ORを示し、
およびRは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1−8アルキル基、または−ORを示し、
は、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)ハロゲン原子で置換されてもよいC1−8アルキル基、(v)−OR、または(vi)−SRを示し、
は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1−6アルキル基を示す]
で表される1−チオ−D−グルシトール化合物もしくはその製薬学的に許容される塩またはそれらの水和物と、
(B) ビグアナイド薬、インスリン分泌促進薬またはインスリン感受性増強薬、
を同時または別々に患者に投与することを含む、請求項12に記載の糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法。
【請求項14】
糖尿病が2型糖尿病である、請求項12または13に記載の糖尿病、糖尿病関連疾患ま
たは糖尿病合併症の予防または治療方法。
【請求項15】
糖尿病合併症が、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、脳血管障害、虚血性心疾患、または末梢動脈疾患である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の糖尿病、糖尿病関連疾患または糖尿病合併症の予防または治療方法。

【公開番号】特開2013−6854(P2013−6854A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191753(P2012−191753)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【分割の表示】特願2011−540651(P2011−540651)の分割
【原出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】