説明

保水性硬化体用セメント組成物、セメントミルク、保水性硬化体及び保水性硬化体の製造方法

【課題】 セメントミルクを開粒度アスファルト等へ充填する際の作業性を改善するとともに、該セメントミルクが硬化した後には該硬化体が高い吸水性と高強度を発揮しうるような手段を提供することを一の課題とする。
【解決手段】 開粒度アスファルト又はポーラスコンクリートの空隙中に充填し保水性の硬化体を構成する保水性硬化体用セメント組成物であって、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、II型無水石膏、及びゼオライトを含有することを特徴とする保水性硬化体用セメント組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性硬化体の製造に用いられるセメント組成物、セメントミルク、保水性硬化体及び保水性硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面の温度上昇を抑制する観点から、15〜30%の空隙率を有する開粒度アスファルトやポーラスコンクリート等(以下、開粒度アスファルト等ともいう)の空隙中に、保水作用のある材料を含んだセメントミルクを浸透させ、これを硬化させてなる保水性舗装が知られている。
該保水性舗装は、雨水等の水分を保水性材料に一時的に蓄えておき、晴天時の温度上昇に伴ってこの水分を蒸発させることにより、潜熱によって路面等の温度上昇を抑制するものであり、ヒートアイランド現象の防止策として注目されている。
【0003】
ところで、この保水性舗装の施工等に用いられるセメントミルクは、開粒度アスファルト等の空隙中に浸透させる必要があることから、低粘度であって流動性に優れたものでなければならず、一般には、60〜120%という高水/粉体比のものが使用される。
【0004】
また、開粒度アスファルト等の空隙中で水和硬化した該セメントミルクは、該開粒度アスファルト等とともに道路面を構成するものとなるため、車両の通過等による衝撃が加えられる状態で長期間使用された場合にも、容易に破壊されないような高い強度を有することが求められる。
【0005】
従来、この種の保水性舗装に関しては、例えば下記特許文献1乃至4に記載のような技術的手段が公知となっている。
【特許文献1】特開平10−46513号公報
【特許文献2】特開2001−303504号公報
【特許文献3】特開2004−169449号公報
【特許文献4】特開2005−48403号公報
【0006】
しかしながら、これら特許文献1乃至4に記載されたような従来技術においても、開粒度アスファルト等の空隙に充填させるためにセメントミルクとして優れた流動性を発揮させ、しかも、該セメントミルクを硬化させた後には、高い吸水性と道路面に要求される高い強度とを発揮させるような手段は開示されていない。
【0007】
また、舗装以外の種々の用途においても、これらの特性を同時に発揮させうる手段が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、セメントミルクを開粒度アスファルト等へ充填する際の作業性を改善するとともに、該セメントミルクが硬化した後には該硬化体が高い吸水性と高強度を発揮しうるような手段を提供することを一の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明は、開粒度アスファルト又はポーラスコンクリートの空隙中に充填し保水性の硬化体を構成する保水性硬化体用セメント組成物であって、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、II型無水石膏、及びゼオライトを含有することを特徴とする保水性硬化体用セメント組成物を提供する。
【0010】
また、好ましくは、前記ゼオライトが、30〜60重量%含まれてなることを特徴とする前記保水性硬化体用セメント組成物を提供する。
また、好ましくは、SO3/Al23モル比が、0.8〜1.4であることを特徴とする前記保水性硬化体用セメント組成物を提供する。
また、好ましくは、ポルトランドセメントが20〜40重量%、前記カルシウムアルミネートが5〜15重量%、前記II型無水石膏が5〜15重量%含まれてなることを特徴とする前記保水性硬化体用セメント組成物を提供する。
また、好ましくは、水酸化カルシウムおよび炭酸リチウムが含まれてなることを特徴とする前記保水性硬化体用セメント組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記何れかの保水性硬化体用セメント組成物100重量部に対し、水80〜120重量部を混合してなることを特徴とするセメントミルクを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記セメントミルクを、開粒度アスファルト又はポーラスコンクリート中に浸透させてなることを特徴とする保水性硬化体を提供する。
【0013】
また、本発明は、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、II型無水石膏およびゼオライトを含有する保水性硬化体用セメント組成物と、水とを混合してセメントミルクを調製し、該セメントミルクを開粒度アスファルト又はポーラスコンクリート中に浸透させることを特徴とする保水性硬化体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート及びII型無水石膏を含む水硬性材料を用い、これにゼオライトを組み合わせることにより、充填時には作業性に優れたセメントミルクを調製することが可能となり、しかも、該セメントミルクを開粒度アスファルト等の空隙中に浸透させ、硬化させた後には、優れた吸水性を有するとともに、高い強度を発現し耐久性に優れた硬化体を構成するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る保水性硬化体用セメント組成物は、水硬性材料として、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート及びII型無水石膏を含むものである。
ポルトランドセメントとしては、JISに規定された普通ポルトランドセメントを好適に使用できるが、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のポルトランドセメントを使用することができる。他のポルトランドセメントとしては、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、耐流酸塩ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント等が挙げられる。
【0016】
また、本発明において用いられるカルシウムアルミネートとしては、例えば11CaO・7Al23・CaF2、11CaO・7Al23・CaCl2、非晶質11CaO・7Al23・CaF2、12CaO・7Al23、CaO・Al23、CaO・2Al23、4CaO・3Al23・SO3、非晶質11CaO・7Al23・CaCl2、非晶質12CaO・7Al23等のカルシウムアルミネートを使用でき、さらに、これらを含有してなるジェットセメントやアルミナセメント等を使用することもできる。
該カルシウムアルミネートのうち、特に、CaO・Al23、11CaO・7Al23・CaF2、11CaO・7Al23・CaCl2、非晶質11CaO・7Al23・CaF2、12CaO・7Al23、非晶質11CaO・7Al23・CaCl2、非晶質12CaO・7Al23が好適であり、これを採用することによって短時間での強度発現性に優れたものとなる。
【0017】
前記水硬性材料においては、SO3/Al23モル比が、0.8〜1.4であることが好ましく、0.9〜1.3であることがより好ましく、1.0〜1.2であることが更に好ましい。水硬性材料のSO3/Al23モル比を上記範囲とすることにより、前記保水性硬化体用セメント組成物をゼオライトと混合して開粒度アスファルト等へ充填した際の中長期的な強度発現性(例えば、材例7日圧縮強度)が大幅に改善される。
また、水硬性材料のSO3/Al23モル比が上記範囲であれば、硬化体は自己収縮量が少なく、しかも、低温時においても安定した強度発現性を有するものとなる。
【0018】
一方、本発明において用いるゼオライトは、ケイ素(Si)とアルミニウム(Al)とが酸素(O)を介して結合し、このSi−O−Al−O−Siの構造が三次元的に組み合わさった構造を有するものである。
従って、このようなゼオライトを用いることにより、高い圧縮強度を有しつつ優れた吸水性能を発揮するものとなる。
【0019】
さらに、該ゼオライトは、アルミニウム(+3価)とケイ素(+4価)が酸素(−2価)を互いに共有し、ケイ素の周りが電気的に中性、アルミニウムの周りが−1価となるものであるため、この負電荷を補償するべく陽イオンを吸着固定する性質を有する。
従って、該ゼオライトを用いることにより、六価クロム等の有害な重金属を吸着固定でき、環境汚染を低減できるという効果もある。
【0020】
また、該ゼオライトとしては、粒径75μm以下のものや、塩基置換容量が150meq/100g以上の純度のものを好適に使用することができる。
【0021】
本発明の保水性硬化体用セメント組成物は、前記ポルトランドセメントを、好ましくは20〜40重量%含有し、前記カルシウムアルミネートを、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは6〜12重量%含有し、前記II型無水石膏を、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは6〜11重量%含有する。
また、保水性硬化体用セメント組成物は、前記ゼオライトを好ましくは30〜60重量%含有する。
【0022】
保水性硬化体用セメント組成物が、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、前記II型無水石膏、及びゼオライトを、上記範囲で含有したものであれば、セメントミルクを調製する際に水材料比を低く抑えつつも流動性に優れたセメントミルクを調製でき、開粒度アスファルト等への充填作業性が良好となる。さらに、該セメントミルクが開粒度アスファルト等の空隙内部で硬化した後には、優れた吸水性と高い強度とを併せ持つ硬化体となる。
【0023】
また、溶解度の遅いII型無水石膏を上記範囲で用いることにより、水和反応時の瞬結を防止し、短時間の強度発現に有効なエトリンガイトが生成し、かつ過剰なエトリンガイトが生成せず、モノサルフェートへの転移も緩やかになるSO3/Al23のモル比1.4〜0.8とすることが可能となる。従って、優れた作業性を有するとともに、自己収縮量が小さく、しかも安定した強度発現性を発揮しうるものとなる。
【0024】
また、本発明に係る保水性硬化体用セメント組成物中には、水酸化カルシウム(消石灰)や、炭酸リチウム、石灰石粉が含まれていることが好ましい。
【0025】
炭酸リチウムは、カルシウムアルミネートの反応を促進するとともに、アルカリ骨材反応を抑制するので、安定性の高いコンクリートが得られ、作業性が良好となる機能を有する。該炭酸リチウムは、前記保水性硬化体用セメント組成物中、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.2〜1.0重量%、更に好ましくは0.25〜0.75重量%とする。斯かる範囲で含有させると、可使時間を確保するとともに経済性にも優れたものとなる。
【0026】
該炭酸リチウムの粉末度は限定されないが、好適には平均粒径10μm以下、好適には7μm以下、更に好適には5μm以下とすることが望ましい。炭酸リチウムの粉末度を上記範囲とすることにより、反応性が高まり、強度発現性を更に改善すると共に、低温時の安定性をより良好にすることができる。
尚、該炭酸リチウムの粒径は、レーザー回折式粒度分布装置(型番;マイクロトラックSRA 7995−10−30、LEEDS&NORTHRUP株式会社製)で測定した平均値を示す。
【0027】
また、該炭酸リチウムは、面間隔が2.812Åの結晶面(0.0.2)の回折ピークから測定した結晶度指数が半値幅で0.20以上のものが特に好ましい。
このような、結晶性が低く、より反応性の高い炭酸リチウムを使用することにより、強度発現性を更に改善するとともに、低温時の安定性をより良好にすることができる。
ここで、結晶度指数については、粉末X線回折装置(型番;ロータフレックスRU−200型、株式会社リガク製)で測定した半値幅を示す。
【0028】
また、水酸化カルシウム(消石灰)は、前記保水性硬化体用セメント組成物中、1〜3重量%とすることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係る保水性硬化体用セメント組成物中には、本発明の作用効果を阻害しない範囲内において、これ以外の成分を添加することができる。
他の成分の具体例としては、石灰石粉末、高炉スラグ粉、及び他の吸水性材料等が挙げられる。高炉スラグ粉としては、例えば、JIS A 6206の「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定された高炉スラグ微粉末や、JIS A 5011の「高炉スラグ骨材」に規定された高炉スラグ粗骨材又は高炉スラグ細骨材を粉砕したもの等を好適に使用することができる。
また、他の吸水性材料としては、パーライト、バーミキュライト、ベントナイト等の無機材料や、吸水性樹脂のような有機材料、あるいは吸水性を有する公知の多孔質フィラー等を使用できる。
【0030】
本発明に係るセメントミルクは、上記のような構成の保水性硬化体用セメント組成物を水と混合したものである。水材料比については特に限定されないが、作業性と強度の観点からは、前記保水性硬化体用セメント組成物100重量部に対し、水80〜120重量部となる配合が好ましい。
【0031】
また、必要に応じて適宜セメント用混和剤等を添加してセメントミルクを調製してもよく、混和剤としては、クエン酸等のオキシカルボン酸やリグニンスルホン酸等の公知の凝結遅延剤や、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルフォン酸系、メラミン系等の公知の減水剤を使用することができる。
【0032】
本発明に係る保水性硬化体の製造方法は、上述のような構成のセメントミルクを調製した後、該セメントミルクを開粒度アスファルト又はポーラスコンクリートの空隙内部へと浸透させ、硬化させるものである。セメントミルクの調製手段や、開粒度アスファルト等への浸透手段などについては、従来公知の種々の手段を採用することが可能である。
【0033】
対象となる前記開粒度アスファルトやポーラスコンクリートとしては、上記のようなセメントミルクを浸透させうる空隙を有するものであれば特に限定されるものではない。該開粒度アスファルト等は、通常、空隙率が10%以上であり、好ましくは15%以上、30%以下のものである。
これらの開粒度アスファルトやポーラスコンクリートの具体例としては、路面の舗装として構成されたものが最も一般的であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
カルシウムアルミネートとして、アルミナセメント(ラファージュ社製、カルシウムアルミネートの主成分はCaO・Al23)7重量部、早強ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)24重量部、II型無水石膏(廃脱硫塩石膏)6.5重量部、炭酸リチウム(日本科学産業社製、平均粒径9.6μm、半値幅0.24)0.5重量部、消石灰2重量部、石灰石粉(近江鉱業社製、LP200)10重量部、高炉水砕スラグ粉末(住友金属工業社製、スミットメント)およびゼオライト(日東粉化工業社製、SP#2300)50重量部を混合し、実施例1の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0036】
(実施例2)
石灰石粉を0重量部とし、ゼオライトを60重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして実施例2の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0037】
(実施例3)
アルミナセメントを10.5重量部、普通ポルトランドセメントを36重量部、II型無水石膏を10重量部、消石灰を3重量部、石灰石粉を10重量部、ゼオライトを30重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして実施例3の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0038】
(実施例4)
アルミナセメントを9重量部、普通ポルトランドセメントを30重量部、II型無水石膏を8重量部、消石灰を2.5重量部、ゼオライトを40重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして実施例4の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0039】
(実施例5)
普通ポルトランドセメントを22.5重量部、II型無水石膏を8重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして実施例5の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0040】
(実施例6)
アルミナセメントを10重量部、普通ポルトランドセメントを20.5重量部、II型無水石膏を7重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして実施例6の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0041】
(実施例7)
アルミナセメントを17重量部、普通ポルトランドセメントを13重量部、II型無水石膏を7重量部、消石灰を2.5重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして実施例7の保水性硬化体用セメント組成物を調製した。
【0042】
(比較例1)
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)50重量部と、ゼオライト(日東粉化工業社製、SP#2300)50重量部とを混合し、比較例1のセメント組成物を調製した。
【0043】
上記実施例、比較例および参考例のセメント組成物の配合を、下記表1に示す。
尚、表1中に、上記の原料組成より求めたSO3/Al23モル比を併せて示す。
【表1】

【0044】
(圧縮強度)
上述のようにして調製した得た実施例および比較例の各保水性硬化体用セメント組成物100重量部に、凝結遅延剤(住友大阪セメント社製、ジェットセッター、主成分:クエン酸)0.2〜0.4重量部、水100重量部をそれぞれ加え、ハンドミキサーにて均一に混合して、調整後30分経過時までのPロート流下時間がおよそ9〜12秒の範囲内となるようにセメントミルクを調製し、内寸4×4×16cmの型枠に打設した。
そして、材齢3時間となる直前に脱型して材齢3時間での圧縮強度を測定するとともに、材齢1日で脱型した後、材齢7日まで水中養生を行い材齢7日の圧縮強度を測定した。圧縮強度については、それぞれ、JIS R 5201の圧縮強さ試験に準じて試験を行った。結果を表2に示す。
【0045】
(吸水率試験)
同様にして調製した各セメントミルクを内寸4×4×16cmの型枠に打設し、材齢3日で脱型することによって供試体を作成した。該供試体を24時間水中に浸漬させて吸水状態の重量(W1)を測定した後、60℃の通風式乾燥機内に24時間放置して乾燥させた状態の重量(W0)を測定し、次式に基づいて最大吸水率を算出した。
最大吸水率(%)=(W1−W0)/W0×100
結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に示したように、本発明の実施例では、吸水性と強度とを併せ持つ硬化体が構成されている。特に、ポルトランドセメントを20〜40重量%、カルシウムアルミネートを5〜15重量%、II型無水石膏を5〜15重量%、ゼオライトを30〜60重量%含有する実施例1〜6では、優れた吸水性と高い強度とを併せ持つ優れた硬化体が構成されていることが認められる。
【0048】
(参考例1)
石灰石粉およびゼオライトを0重量部とすることを除き、他は実施例1と同様にして参考例1のセメント組成物を調製した。
【0049】
(参考例2)
石灰石粉およびゼオライトを0重量部とすることを除き、他は実施例7と同様にして参考例2のセメント組成物を調製した。
【0050】
参考例1及び2のセメント組成物の配合を下記表3に示す。
【表3】

【0051】
該参考例1および2のセメント組成物について、実施例と同様の圧縮強度試験を行ったところ、下記表4の結果が得られた。
【0052】
【表4】

【0053】
斯かる参考例1および2のセメント組成物は、前記実施例1および7のセメント組成物を構成する水硬性材料のみからなるものであるが、これらは、材齢3時間および材齢7日の圧縮強度が同程度であり、強度発現性にあまり差がないことが認められる。
これに対し、該参考例1および2と同一配合の水硬性材料を使用し、これにゼオライトを加えた前記実施例1と実施例7とを比較すると、前記表2に示したように、材齢7日の圧縮強度において実施例1の方が実施例7よりも顕著に優れた結果を示している。
このような結果からも、ゼオライトとの組み合わせにおいては、上述のように、ポルトランドセメントを20〜40重量%、カルシウムアルミネートを5〜15重量%、II型無水石膏を5〜15重量%、ゼオライトを30〜60重量%とする配合が、他の配合と比べて顕著に優れた効果を奏することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開粒度アスファルト又はポーラスコンクリートの空隙中に充填し保水性の硬化体を構成する保水性硬化体用セメント組成物であって、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、II型無水石膏、及びゼオライトを含有することを特徴とする保水性硬化体用セメント組成物。
【請求項2】
前記ゼオライトが、30〜60重量%含まれてなることを特徴とする請求項1記載の保水性硬化体用セメント組成物。
【請求項3】
前記ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート及びII型無水石膏のSO3/Al23モル比が、0.8〜1.4であることを特徴とする請求項1又は2記載の保水性硬化体用セメント組成物。
【請求項4】
前記ポルトランドセメントが20〜40重量%、前記カルシウムアルミネートが5〜15重量%、前記II型無水石膏が5〜15重量%含まれてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の保水性硬化体用セメント組成物。
【請求項5】
さらに、水酸化カルシウムおよび炭酸リチウムが含まれてなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の保水性硬化体用セメント組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の保水性硬化体用セメント組成物100重量部に対し、水80〜120重量部を混合してなることを特徴とするセメントミルク。
【請求項7】
請求項6記載のセメントミルクを、開粒度アスファルト又はポーラスコンクリート中に浸透させてなることを特徴とする保水性硬化体。
【請求項8】
ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、II型無水石膏およびゼオライトを含有する保水性硬化体用セメント組成物と、水とを混合してセメントミルクを調製し、該セメントミルクを開粒度アスファルト又はポーラスコンクリート中に浸透させることを特徴とする保水性硬化体の製造方法。

【公開番号】特開2007−238369(P2007−238369A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62481(P2006−62481)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】